生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_タンパク質の精製方法
出願番号:2007066589
年次:2007
IPC分類:C07K 1/22,C07K 14/805,C07K 14/76


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田中 剛 松永 是 原田 学 林 泰圭 JP 2007284425 公開特許公報(A) 20071101 2007066589 20070315 タンパク質の精製方法 農工大ティー・エル・オー株式会社 801000072 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 的場 ひろみ 100101317 大野 詩木 100134935 田中 剛 松永 是 原田 学 林 泰圭 JP 2006077100 20060320 C07K 1/22 20060101AFI20071005BHJP C07K 14/805 20060101ALI20071005BHJP C07K 14/76 20060101ALI20071005BHJP JPC07K1/22C07K14/805C07K14/76 8 OL 8 4H045 4H045AA20 4H045BA10 4H045BA50 4H045CA42 4H045DA70 4H045EA34 4H045GA26 本発明は、糖化されていないタンパク質の精製方法に関する。 分子生物学、バイオテクノロジー分野等において、ビオチンや有機蛍光色素、フェロセン誘導体、ジゴキシゲニン等の小分子化合物で生体分子をマーキングするタンパク質の化学標識はその基盤技術である。蛍光標識抗体を例にすると、免疫測定による抗原測定、免疫染色による細胞中のタンパク質の発現解析等、用途は極めて広範囲に及ぶ。 タンパク質への化学物質の標識は、両者を化学架橋剤を用いて共有結合させることによって行われ、その後反応しなかった未反応の化学物質を除去する操作(タンパク質精製)が必要となる。従来、当該タンパク質の精製には、透析、限外濾過、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー等の手段が用いられている。 しかしながら、透析による方法では、長時間(2〜3日)を要し、限外濾過による方法では、フィルター付き遠沈管による遠心処理(遠心機)が必要であり、またそのフィルターが高価であるという問題がある。また、アフィニティークロマトグラフィーによる場合、低pHによりタンパク質が溶出する、中和処理等の煩雑なプロセスが必要となる、低pH処理の際にタンパク質の変性を引き起こす可能性がある、装置が高価である、といった問題がある。また、ゲル濾過クロマトグラフィーやイオン交換クロマトグラフィーによる方法では、タンパク質溶液の容量がおおよそ100μl以下及び/又はタンパク質濃度がおおよそ100μg以下であるといった極微量サンプルには適応できないという問題がある。更に、イオン交換クロマトグラフィーによる方法では、塩濃度変化、pH変化によるタンパク質の溶出が必要となるため、プロセス後脱塩、バッファー交換が必要な場合がある、等の種々の問題がある。 一方、フェニルボロン酸等のボロン酸誘導体を基材に固定化したものを不溶性担体として用いるボロン酸アフィニティークロマトグラフィーは、アルカリ条件下において、そのジオール基と糖のシスジオール基が共有結合することから、糖化タンパク質の分離・精製に広く用いられている (非特許文献1)。 しかしながら、ボロン酸アフィニティークロマトグラフィーが糖化されていないタンパク質(非糖化タンパク質ともいう。)の分離に使用された報告は全くない。Koyama and Terauchi "Synthesis and application of boronic acid-immobilized porous polymer particles: a novel packing for high-performance liquid affinity chromatography." J Chromatogr B Biomed Appl 679:31-40(1996) 本発明は、非糖化タンパク質を、短時間で簡便に、しかも極微量サンプルであっても容易に精製が可能な精製方法を提供することを目的とする。 従来、フェニルボロン酸等のボロン酸化合物を結合させた不溶性担体を充填剤とするアフィニティクロマトグラフィーは、ボロン酸と糖部分が親和性を有することから、糖化タンパク質の分離・濃縮に用いられる。 しかるところ、本発明者らは、溶液のコンディションをできるだけ変えずに、極微量サンプルを扱えるタンパク質の精製方法について検討したところ、固定相としてボロン酸化合物を結合させたシリカ系不溶性担体を用いることにより、糖化されていないタンパク質がボロン酸に強固に結合すると共に、溶出操作により簡単に溶出でき、精製が可能であることを見出した。 すなわち、本発明は、非糖化タンパク質の精製方法であって、等電点5−8の粗タンパク質を含有する溶液(pH6−9)を、ボロン酸化合物を結合させたシリカ系不溶性担体に吸着させ、次いで溶出操作を行うことを特徴とする非糖化タンパク質の精製方法に係るものである。 本発明によれば、非糖化タンパク質の精製操作を、pH変化や塩濃度変化を伴わない比較的穏和な条件で、簡易・簡便に実行できる。また、この精製方法は簡易型チップで行うことができることから、極微少量のサンプルであっても精製が可能となる。 本発明おける「非糖化タンパク質」は、糖化されていないタンパク質であればタンパク質の種類は特に限定されるものではなく、抗原、受容体、レクチン、ホルモン、結合性タンパク質、酵素、マーカータンパク質及びこれらの化学標識体等のいずれのものでもよい。 非糖化タンパク質は、その等電点が5−8であるタンパク質であり、例えば、ヘモグロビン(pI 6.8-7.0)、アルブミン(pI 5.0-6.0)、ミオグロビン (pI 6.55)、ヒト炭酸脱水酵素B (pI 6.85)及び塩基性ミオグロビン (pI 7.35)等が挙げられ、好ましくは、ボロン酸化合物との吸着能が良好である点から6.5〜7.5であるものが好ましい。また、親水性のタンパク質であるのが好ましい。 当該タンパク質を標識するための標識化学物質としては、分子生物学、バイオテクノロジーの分野等において、生体分子のマーキングに使用される小分子化合物が挙げられ、例えば蛍光色素(例えば、フルオレセイン、フィコエリトリン、ユーロピウム、フィコシアニン、アロフィコシアニン、ローダミン、テキサスレッド、ウンベリフェロン等の誘導体)、オリゴペプチド(例えば、ヒスチジンタグ等)、ビオチン誘導体、フェロセン誘導体、ジゴキシゲニン、グルタチオン等が挙げられる。 タンパク質への化学物質の標識は、一般に、ジメチルスホキサイド等の適当な有機溶媒の存在下、架橋剤(例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)、N−ヒドロキシスクシイミド、グルタルアルデヒド、アジピン酸ジヒドラジド等)を用いて、4℃〜室温(30℃)で、タンパク質と標識化学物質を反応させることにより行われる。 本発明において「粗タンパク質」とは、精製前のタンパク質、例えば、化学標識体の場合には、非糖化タンパク質と標識化学物質から化学標識されたタンパク質を製造する標識化反応における反応混合物、すなわち化学標識非糖化タンパク質(化学標識体ともいう。)、未反応の標識化学物質及び反応試薬を含むもの等が挙げられる。 本発明の方法においては、斯かる粗タンパク質を溶液中に溶解させたものを、ボロン酸化合物を結合させたシリカ系不溶性担体に吸着させる。 ここで、用いる溶液は緩衝液が好ましく、緩衝液としては、具体的には、酢酸アンモニウム溶液、タウリン緩衝液、N-[2-ヒドロキシエチル]ピペラジン-N'-[3-プロパンスルホン酸](EPPS)、3‐モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)等が挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせたものでもよいが、好ましくは酢酸アンモニウム溶液、酢酸アンモニウム/MOPS混液等が挙げられ、より好ましくは50〜300mMの酢酸アンモニウム溶液が挙げられる。また、当該緩衝液には、適宜塩化マグネシウム等の塩類を含ませてもよく、例えば50〜300mM酢酸アンモニウム及び/又は10〜30mMMOPS混液に1〜100mM塩化マグネシウムを加えた溶液が挙げられる。 ボロン酸化合物としては、ジヒドロキシボリル基を構造上有していればよく、たとえば、(1−アミノ−2−フェニルエチル)ボロン酸、[3−[(アミノカルボニル)アミノ]フェニル]ボロン酸、(4−アミノフェニル)ボロン酸、[3−(ハイドロオキシ)フェニル]ボロン酸塩酸塩、[2−(ハイドロキシアミノ)フェニル]ボロン酸、[4−(ハイドロオキシアミノ)フェニル]ボロン酸塩酸塩等が挙げられ、特にアミノ基を有するボロン酸誘導体が好ましい。 また、シリカ系不溶性担体としては、例えば、ゾルゲル法や溶解法で作製される非晶質シリカが挙げられ、多孔性、非多孔性、いずれのものでも使用できる。 形状は、ビーズ状、テストプレート状、チューブ状、ディスク状、球状、スティック状、ラテックス状等の何れの形状のものでもよいが、ビーズ状のものが好ましい。 本発明においては、特に、ゾルゲル法で作成された多孔性、非晶質シリカビーズをコアとし、その表面にアミノフェニルボロン酸を結合させたものが好ましい。また、さらにその粒径が1μm〜500μmのものが好ましく、70μm〜120μmのものがより好ましい。斯かるボロン酸化合物が結合したシリカ系不溶性担体としては、市販の「Prosep−PB」(ミリポア社)等を使用することができる。 後記実施例1に示すように、等電点が5−8のタンパク質は、斯かるボロン酸化合物を結合させたシリカ系不溶性担体に完全に吸着される。 当該ボロン酸化合物を結合させたシリカ系不溶性担体は、粗タンパク質を吸着させる前に、上記緩衝溶液で平衡化することが好ましい。また、粗タンパク質を吸着させた後に、標識化学物質等のボロン酸に吸着しない不純物を除去する点からタンパク質を溶解させたときの緩衝液で洗浄することが好ましい。 上記担体に吸着された、非糖化タンパク質は、ボロン酸に対して親和性の強い成分を含む溶液を用いた溶出操作により速やかに溶出される(実施例1及び2)。 斯かる溶液としては、例えば、ソルビトール等の糖質含有溶液、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、(2-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]エタンスルホン酸等の水酸基を有する化合物を含有する溶液やリン酸溶液等が挙げられる。これらは適宜1種又は2種以上組み合わせて用いてもよい。 斯かる溶出液は、pH6−9、より好ましくはpH6.5−8.5のものが使用される。このうち、好ましくは、50〜300 mMのソルビトール溶液であり、特に好ましくは、50〜300mMソルビトール及び50〜500mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン混液である。 また、当該溶液には、ナトリウム、カリウム、リチウム等の塩類を含まないのが好ましい。 本発明の精製方法は、上記の処理手段を実行できるものであれば、その手法は限定されないが、好ましくは液体クロマトグラフィーの形態とするのが好ましい。 そして、上述したように本発明の非糖化タンパク質のボロン酸化合物結合担体への吸着は、溶出操作施行後、直ちに精製されたタンパク質の回収が可能であることから、装置全体を簡易型のチップ(例えば、カード型微小デバイス、ピペットチップにビーズを充填した簡易クロマトグラフィー)とすることで、タンパク質溶液の容量が大凡100μl以下及び/又はタンパク質濃度が大凡100μg以下であるといった極微量サンプルに対してもその精製が可能となる。実施例1 タンパク質の吸着・溶出評価(1)高速クロマトグラフィーを用いたボロン酸クロマトグラフィーによるHbA1cの分離 ボロン酸修飾ガラスビーズ(「Prosep−PB」(ミリポア社))懸濁液500 μlをカラムへ充填し, Loading Buffer (250 mM 酢酸アンモニウム+50 mM MgCl2+20 mM MOPS(3-Morpholinopropanesulfonic acid)混合溶液, pH 8.3) 10 mlを流すことでカラムを平衡化した。 400 μg/ml ヘモグロビンまたはアルブミン 500 μlをLoading bufferで溶解後、当該溶液をカラムへ導入しビーズへ吸着させた。吸着後、Loading buffer 10mlを流すことでカラムを洗浄した。 流速600 μl/minで Loading Bufferに対するElution Buffer (100 mM Tris + 200 mM ソルビトール混合溶液, pH 8.3 ) の割合を1分間に1.0 %ずつ変化させることで濃度勾配をつくり、ビーズに吸着したタンパク質の溶出を行った。溶出液はUV測定器によりそれぞれの溶出液の吸光度 (280 nm) を測定した。 その結果、ヘモグロビン及びアルブミンについては、それぞれカラムに吸着後、溶出液を添加するとそれぞれ100%及び50%溶出できることが分かった(表1)。アルブミンは、ヘモグロビンと比較して溶出量が小さくなったのは、アルブミンの等電点(5〜6)が酸性に偏っているためカラムへの吸着量が少なくなったことによると考えられた。 また、濃度を50〜600μgまで変化させた場合においても吸着率に差異は見られなかった。ボロン酸は糖鎖との結合能があることが知られているが、本条件においては糖鎖の有無にかかわらず、ビーズ上に非糖化タンパク質が結合し、溶出できることが確認された(図1)。(2)タンパク質結合のpH依存性の評価 上記条件でLoading BufferのpHを5〜8まで変化させた時のHbA1cの溶出プロファイルを図2に示す。この結果、少なくともヘモグロビンの吸着・溶出にはpH7以上の溶液が必要であることが分かった。(3)各種等電点を有するタンパク質の吸着評価 各種等電点を有するタンパク質をボロン酸修飾ビーズ(「Prosep−PB」(ミリポア社))と反応させ、等電点電気泳動により確認したところ、ミオグロビン (pI 6.55)、ヒト炭酸脱水酵素B (pI 6.85)、塩基性ミオグロビン (pI 7.35)の結合が確認され、ウシ炭酸脱水酵素B (pI 5.85)、レクチン (pI 8.15)においては結合が見られなかった。これらのことから、中性付近のタンパク質に対するアフィニティーが高いことが示唆された。参考例1 HbA1c、抗ヘモグロビン抗体についても上記実施例1と同様に実験を行った。表2に結果を示す。 参考例2 フェロセン標識タンパク質の精製(1)フェロセン標識タンパク質の作製 フェロセンカルボキシル誘導体 (以下、フェロセン)をジメチルスルフォキサイド(DMSO)1mlに溶解した (A液)。1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl) carbodiimidehydrochloride (EDC) (0.14 mmol) とN- Hydroxy succinimide (NHS) (0.14 mmol) をDMSO 1 mlに溶解した (B液)。A液をB液に滴下し、攪拌しながら室温で3 時間反応させ、フェロセンにサクシンイミド基を導入した(フェロセン活性化エステル)。0.13 M NaHCO3 緩衝液中の抗ヘモグロビン抗体 (3mg/ml ; 300 μl) に、フェロセン : 抗体のモル比が100:1になるようにフェロセン活性化エステル溶液を加え、4℃で一晩攪拌した。(2)フェロセンとヘモグロビンとの分離条件の評価 (1)の混合液を実施例1と同様のプロトコールで分離操作を行った。 600 μlを1フラクションとして回収し、そこに含まれるヘモグロビン量をBradford法に基づくタンパク質定量により測定した。また、あわせて各フラクションの280 nmの吸光度を測定した。ここで、フェロセン誘導体、タンパク質ともに280 nmの吸光が確認される。タンパク質の溶出を開始する前のフラクション(No 1−3)において280 nmの吸光が確認されたが、タンパク質は検出されなかったことから、未反応のフェロセン誘導体がビーズに結合せずに溶出したと考えられた(図3)。一方、わずかに吸光度が確認される溶出後フラクション(No 13−15)においてのみタンパク質が検出された。 さらに、タンパク質画分の電気化学的性質を評価するために、Cyclic Voltammetry (CV) の測定を行った結果、タンパク質を含むフラクションにおいても電気化学シグナルが得られたことから、フェロセン標識タンパク質が精製できていることが示された。ボロン酸結合シリカビーズを用いたクロマトグラフィーの溶出プロファイル各pHの溶液を用いたタンパク質の溶出プロファイル未反応フェロセン誘導体とタンパク質の分離を示したグラフ 非糖化タンパク質の精製方法であって、等電点5−8の粗タンパク質を含有する溶液(pH6−9)を、ボロン酸化合物を結合させたシリカ系不溶性担体に吸着させ、次いで溶出操作を行うことを特徴とする非糖化タンパク質の精製方法。 溶出操作が、ソルビトール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、(2-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]エタンスルホン酸及びリン酸から選ばれる1種以上を含有する溶出液(pH6−8)を用いて行うものである請求項1記載の方法。 非糖化タンパク質が、抗原、受容体、レクチン、ホルモン、結合性タンパク質、酵素、マーカータンパク質及びこれらの化学標識体から選ばれるものである請求項1又は2記載の方法。 非糖化タンパク質が、ヘモグロビン、アルブミン、ミオグロビン、ヒト炭酸脱水酵素B、塩基性ミオグロビン及びこれらの化学標識体から選ばれるものである請求項1又は2記載の方法。 粗タンパク質含有溶液が、酢酸アンモニウム溶液である請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。 溶出液が、塩類を含まないものである請求項2〜5のいずれか1項記載の方法。 標識化学物質が、蛍光色素、オリゴペプチド、ビオチン誘導体、フェロセン誘導体、ジゴケシゲニン又はグルタチオンである請求項3〜6のいずれか1項記載の方法。 液体クロマトグラフィーを用いて、吸着及び溶出操作を行うものである請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。 【課題】非糖化タンパク質を、短時間で簡便に、しかも極微量サンプルであっても容易に精製が可能な精製方法を提供する。【解決手段】非糖化タンパク質の精製方法であって、等電点5−8の粗タンパク質を含有する溶液(pH6−8)を、ボロン酸化合物を結合させたシリカ系不溶性担体に吸着させ、次いで溶出操作を行うことを特徴とする非糖化タンパク質の精製方法。【選択図】なし


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