タイトル: | 公開特許公報(A)_テトラヒドロピランを溶媒とするラジカル反応方法 |
出願番号: | 2007055549 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C07B 61/00,C07C 15/24,C07C 1/26,C07C 321/18,C07C 319/18,C07F 7/08,C07C 13/45,C07C 13/48,C07C 1/28 |
安田 浩 柳 日馨 JP 2008214286 公開特許公報(A) 20080918 2007055549 20070306 テトラヒドロピランを溶媒とするラジカル反応方法 昭和電工株式会社 000002004 公立大学法人大阪府立大学 505127721 大家 邦久 100081086 林 篤史 100121050 安田 浩 柳 日馨 C07B 61/00 20060101AFI20080822BHJP C07C 15/24 20060101ALI20080822BHJP C07C 1/26 20060101ALI20080822BHJP C07C 321/18 20060101ALI20080822BHJP C07C 319/18 20060101ALI20080822BHJP C07F 7/08 20060101ALI20080822BHJP C07C 13/45 20060101ALI20080822BHJP C07C 13/48 20060101ALI20080822BHJP C07C 1/28 20060101ALI20080822BHJP JPC07B61/00 BC07C15/24C07C1/26C07C321/18C07C319/18C07F7/08 WC07C13/45C07C13/48C07C1/28 14 OL 9 4H006 4H049 4H006AA02 4H006AA05 4H006AC13 4H006AC24 4H006AC28 4H006AC63 4H006BB25 4H006TA04 4H049VN01 4H049VP04 4H049VQ02 4H049VQ76 4H049VR21 4H049VR23 4H049VS02 4H049VS76 4H049VT53 4H049VV16 4H049VW32 本発明はラジカル反応において、テトラヒドロピランを反応溶媒として用いて反応を行う方法に関する。 ラジカル反応はイオン反応、協奏反応と並んで最も基本的な化学反応である(マーチ有機化学下巻14章,丸善(2002);非特許文献1)。ラジカル反応の重要な応用として有機化学工業中間体(特開平7−109264公報;特許文献1)の合成や、ポリマーの合成(特開平7−252327公報;特許文献2)などがある。ラジカル反応は反応操作の簡便さと優れた反応性が特徴であるが、ラジカルの反応性の高さ故に反応溶媒から水素ラジカルが引き抜かれるために副反応をおこし、意図した化合物が合成できないことや溶媒由来の分離困難な副生物ができることがある。このため、水素が引き抜かれにくい炭化水素系の溶媒が主に反応溶媒として用いられる。炭化水素溶媒として代表的なヘキサンは原料の有機化合物やラジカル試剤を溶解させる能力が低く適応できる反応に限りがある。また、水素が引き抜かれにくいベンゼンは毒性が高いという問題がある。マーチ有機化学下巻14章,丸善(2002)特開平7−109264号公報特開平7−252327公報 本発明の課題は、ラジカル反応において、原料の有機化合物やラジカル試剤に対する溶解能が高く、安全な炭化水素系溶媒を使用するラジカル反応方法を提供することにある。 本発明者等は、前記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、ラジカル反応において、テトラヒドロピランを反応溶媒として用いることにより前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明は下記1〜14のラジカル反応方法に関する。1.ラジカル反応の溶媒にテトラヒドロピランを用いることを特徴とするラジカル反応方法。2.ラジカル反応がラジカル連鎖移動を伴う前記1に記載のラジカル反応方法。3.連鎖を構成する分子間ラジカル反応の速度が1×104M-1s-1(25℃)以上である前記1または2に記載のラジカル反応方法。4.ラジカル反応が還元的ラジカル反応である前記1から3のいずれかに記載のラジカル反応方法。5.還元的ラジカル試剤がスズヒドリド化合物である前記4に記載のラジカル反応方法。6.スズヒドリド化合物が、トリメチルスズヒドリド、トリエチルスズヒドリド、トリプロピルスズヒドリド、トリブチルスズヒドリド、ジメチルフェニルスズヒドリド、トリフェニルスズヒドリド及びトリトルイルスズヒドリドから選択される少なくとも1種である前記5に記載のラジカル反応方法。7.還元的ラジカル試剤がシリルヒドリド化合物である前記4に記載のラジカル反応方法。8.シリルヒドリド化合物が、トリメチルシリルヒドリド、トリエチルシリルヒドリド、トリプロピルシリルヒドリド、トリブチルシリルヒドリド、ジメチルブチルシリルヒドリド、ジメチルフェニルシリルヒドリド、トリフェニルシリルヒドリド、トリトルイルシリルヒドリド、及びトリス(トリメチルシリル)シリルヒドリド化合物から選択される少なくとも1種である前記7に記載のラジカル反応方法。9.ラジカル反応がラジカル付加反応である前記1から3のいずれかに記載のラジカル反応方法。10.ラジカル付加試剤がチオール化合物である前記9に記載のラジカル反応方法。11.チオール化合物が脂肪族チオール化合物及び芳香族チオール化合物から選択される少なくとも1種である前記10に記載のラジカル反応方法。12.ラジカル反応が4員環、5員環、6員環または7員環を生成する環化反応である前記1または2に記載のラジカル反応方法。13.反応基質に対してラジカル試剤を1.01〜1.5mol当量用いる前記1または2に記載のラジカル反応方法。14.テトラヒドロピランを反応基質に対して2〜50倍質量用いる前記1に記載のラジカル反応方法。 本発明の反応の溶媒にテトラヒドロピランを用いることを特徴とするラジカル反応方法によれば、ラジカルの反応性故に反応溶媒から水素ラジカルが引き抜かれるために生ずる、溶媒由来の分離困難な副生物が抑制され、意図した化合物が高収率で合成できる。これまで用いられている代表的なヘキサンに比べて有機化合物やラジカル試剤を溶解させる能力が高く適応できる反応が広いこと、また、水素が引き抜かれにくいベンゼンは毒性が高いのに比べて毒性が低いという利点がある。 以下に本発明の具体的内容について詳細に説明する。 本ラジカル反応方法において、ラジカル反応を開始させるためには、先ず、ラジカルを発生させなくてはならない。ラジカルの発生方法には熱、光、酸化、還元、ラジカル化合物などを用いる方法がある。(1)熱を用いる方法では、過酸化物やアゾ化合物を加熱分解させてラジカルを発生させる。(2)光を用いる方法では、カルボニル化合物に光を照射させることによりラジカルを発生させる。(3)酸化を用いる方法では一電子酸化反応を利用し、反応基質から直接ラジカルを発生させる。(4)還元を用いる方法では一電子還元剤を用いて、反応基質から直接ラジカルを発生させる。(5)ラジカル化合物を用いる方法では、ラジカル化合物自体をラジカル開始剤、またはラジカル化合物と別の化合物との組み合わせでラジカル開始剤としてラジカル反応を行う。 本反応方法では上記(1)〜(5)に記したラジカル種でラジカル反応を行うことができるが、ラジカルの連鎖移動を伴う反応が適する。特に分子間でラジカルの連鎖移動を伴う反応が好適である。本反応方法を、下記反応式(1)〜(4)に示す、ラジカル開始剤として触媒量のアゾビスイソブチロニトリル1、ラジカル試剤としてトリノルマルブチルスズヒドリド3を用いたアルキルブロマイド5の還元反応を例にして説明する。 反応(1)、(2)はラジカル種が発生する段階であり、ラジカル開始剤1の分解により生じたラジカル2がラジカル試剤3と反応し、ラジカル連鎖移動を行うラジカル種4が生成する。反応(3)、(4)はラジカル連鎖移動する段階であり、ラジカル種4がアルキルブロマイド5と反応し、新たなラジカル種6が生成を繰り返す。式(3)のように分子間でラジカル反応の連鎖移動が起こる場合、ラジカル反応の速度が1×104M-1s-1(25℃)以上であると反応溶媒のテトラヒドロピランからの水素引き抜き反応が相対的に遅く、溶媒由来の不純物を抑制することができる。 本反応方法では、ラジカルの発生にラジカル開始剤を用いることができる。ラジカル開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどのペルオキシド化合物、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイルなどの有機過酸化物、N−ブロモスクシンイミドなどの窒素化合物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスシアノ吉草酸などのアゾ化合物などが用いられる。また、トリエチルボラン、ジエチル亜鉛、トリエチルアルミニウムなども開始剤として用いることができる。ラジカル開始剤は反応基質に対して0.005から1当量用いられ、好適には0.005〜0.3当量である。本発明では熱及び光によるラジカル開始剤のラジカル発生が好適である。 本反応方法に用いる反応基質については特に制限はないが、アルキル化合物、アルケニル化合物、アルキニル化合物、アリル化合物、アリール化合物、ベンジル化合物などが好適である。これらの化合物の中には窒素、酸素、硫黄などのヘテロ原子やカルボニル基、水酸基、アミノ基などの官能基が含まれていてもよい。 本反応方法におけるラジカル反応には制限はないが、還元的ラジカル反応とラジカル付加反応が好適である。還元的ラジカル反応とは反応基質と還元的ラジカル試剤が反応し、反応基質が最終的に水素化される反応である。ラジカル付加反応とは不飽和結合を有する反応基質の不飽和結合にラジカル試剤が付加する反応である。ラジカル付加反応は分子間でも分子内反応でもよい。分子内付加反応、すなわち環化反応に用いる場合には4員環から7員環が生成する反応が好適である。 本反応方法に用いるラジカル試剤には特に制限はない。 還元的ラジカル試剤としては、トリメチルスズヒドリド、トリエチルスズヒドリド、トリプロピルスズヒドリド、トリブチルスズヒドリド、ジメチルフェニルスズヒドリド、トリフェニルスズヒドリド、トリトルイルスズヒドリドなどのスズヒドリド化合物、トリメチルシリルヒドリド、トリエチルシリルヒドリド、トリプロピルシリルヒドリド、トリブチルシリルヒドリド、ジメチルブチルシリルヒドリド、ジメチルフェニルシリルヒドリド、トリフェニルシリルヒドリド、トリトルイルシリルヒドリド、トリス(トリメチルシリル)シリルヒドリドなどのシリルヒドリド化合物を単独あるいはチオールと併用して用いることができる。 ラジカル付加試剤としてはチオール化合物がある。用いることができるチオール化合物として、メタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、ブタンチオール、ヘキサンチオール、シクロペンチルチオール、シクロヘキサンチオールなどの脂肪族チオール化合物、チオフェノール、o−メチルチオフェノール、m−メチルチオフェノール、p−メチルチオフェノール、ナフチルチオールなどの芳香族チオール類などが用いられる。 反応基質に対してラジカル試剤は少なくとも1モル当量使用される。本発明においては、ラジカル試剤は反応基質に対して過剰量用いる。ラジカル試剤の量が反応基質に対して当モルでは反応が実質的に完結せず、また2倍モル量以上では反応を促進させるなどの利点がなくなってしまい、更に反応終了時に未反応のラジカル試剤を処理しなければならないという問題がある。好適には、反応基質に対して1.01〜1.50モル当量用いる。さらに好ましくは、1.01〜1.35モル当量である。 本発明においては、反応溶媒としてテトラヒドロピランを用いることが必須である。 ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒との混合溶媒も使用することができるが、回収、再利用をする観点からテトラヒドロピランを単独で用いることが望ましい。テトラヒドロピランは、通常特別の前処理をすることなく使用される。反応基質に対して2〜50倍質量、好適には5〜30倍質量用いられる。 また、テトラヒドロピランは蒸留回収後、適宜脱水処理をして再使用することができ、これにより溶媒の使用量を低減することができる。 本反応は、通常窒素、アルゴンなどの不活性雰囲気下で行われる。 通常、テトラヒドロピラン、反応基質、ラジカル開始剤、ラジカル試剤を混合撹拌させることにより行われる。反応温度は通常0℃から反応液の還流温度以下で行われ、好ましくは25℃から反応液の還流温度である。 以下に本発明について代表的な例を示し具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。 なお、実施例における各成分の分析はガスクロマトグラフ装置(アジレント製,6890N)を用い、分析カラムとしてJ&W製DB−1カラム(長さ30m、直径0.32mm、膜厚1μm)を用いた。また、難揮発物質の分析には高速液体クロマトブラフ装置(SHIMADZU製,LC−2010HT)を用い、分析カラムとして関東化学製RP−18(ODS)フェルドキャップ処理を用いた。実施例1: アルゴン雰囲気下、50mlナスフラスコに撹拌子、1−ブロモメチルナフタレン0.22g(1mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)34mg(0.2mmol)、トリブチルスズヒドリド0.35g(1.2mmol)、テトラヒドロピラン20mlを加え80℃で2時間撹拌した。反応液を一部サンプリングし、GCで定量したところ、1−メチルナフタレンの収率は87%であった。比較例1: 実施例1において、テトラヒドロピランの代わりにベンゼン20mlを加えた以外は同一の操作を行った。1−メチルナフタレンの収率は87%であった。比較例2: 実施例1において、テトラヒドロピランの代わりにトルエン20mlを加えた以外は同一の操作を行った。1−メチルナフタレンの収率は76%であった。ベンジルアルコールの収率は11%であった。実施例2: アルゴン雰囲気下、30mlナスフラスコに撹拌子、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)32.8mg(0.20mmol)、テトラヒドロピラン10ml、1−オクチン110.2mg(0.98mmol)、1−ヘキサンチオール141.9mg(1.2mmol)を順に加え80℃で1時間撹拌した。反応液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーで精製し、1−オクテニルヘキシルスルフィド169.7mg(収率66%)を得た。実施例3: アルゴン雰囲気下、30mlナスフラスコに撹拌子、V65(アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル)51.7mg(0.21mmol)、テトラヒドロピラン10ml、1−オクテン112.2mg(11.11mmol)、トリストリメチルシリルシラン298.3mg(1.2mmol)を順に加え70℃で1時間撹拌した。反応液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーで精製し、1−オクチルトリストリメチルシラン336.8mg(収率85%)を得た。実施例4:環化反応 アルゴン雰囲気下、4−(2−ブロモフェニル)−1−ブテン0.22g(1mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)34mg(0.2mmol)、トリブチルスズヒドリド0.35g(1.2mmol)、テトラヒドロピラン(THP)20mlを加え80度で2時間撹拌した。反応液を一部サンプリングし、GCで定量した。結果を表1に示した。比較例3: 実施例24において、テトラヒドロピランの代わりにベンゼン(Bz)20mlを加えた以外は同一の操作を行った。結果を表1に示した。比較例4: 実施例4において、テトラヒドロピランの代わりにトルエン(Tol)20mlを加えた以外は同一の操作を行った。結果を表1に示した。 ラジカル反応の溶媒にテトラヒドロピランを用いることを特徴とするラジカル反応方法。 ラジカル反応がラジカル連鎖移動を伴う請求項1に記載のラジカル反応方法。 連鎖を構成する分子間ラジカル反応の速度が1×104M-1s-1(25℃)以上である請求項1または2に記載のラジカル反応方法。 ラジカル反応が還元的ラジカル反応である請求項1から3のいずれかに記載のラジカル反応方法。 還元的ラジカル試剤がスズヒドリド化合物である請求項4に記載のラジカル反応方法。 スズヒドリド化合物が、トリメチルスズヒドリド、トリエチルスズヒドリド、トリプロピルスズヒドリド、トリブチルスズヒドリド、ジメチルフェニルスズヒドリド、トリフェニルスズヒドリド及びトリトルイルスズヒドリドから選択される少なくとも1種である請求項5に記載のラジカル反応方法。 還元的ラジカル試剤がシリルヒドリド化合物である請求項4に記載のラジカル反応方法。 シリルヒドリド化合物が、トリメチルシリルヒドリド、トリエチルシリルヒドリド、トリプロピルシリルヒドリド、トリブチルシリルヒドリド、ジメチルブチルシリルヒドリド、ジメチルフェニルシリルヒドリド、トリフェニルシリルヒドリド、トリトルイルシリルヒドリド、及びトリス(トリメチルシリル)シリルヒドリド化合物から選択される少なくとも1種である請求項7に記載のラジカル反応方法。 ラジカル反応がラジカル付加反応である請求項1から3のいずれかに記載のラジカル反応方法。 ラジカル付加試剤がチオール化合物である請求項9に記載のラジカル反応方法。 チオール化合物が脂肪族チオール化合物及び芳香族チオール化合物から選択される少なくとも1種である請求項10に記載のラジカル反応方法。 ラジカル反応が4員環、5員環、6員環または7員環を生成する環化反応である請求項1または2に記載のラジカル反応方法。 反応基質に対してラジカル試剤を1.01〜1.5mol当量用いる請求項1または2に記載のラジカル反応方法。 テトラヒドロピランを反応基質に対して2〜50倍質量用いる請求項1に記載のラジカル反応方法。 【課題】ラジカル反応において分子内のみならず分子間反応においても使用できる極性溶媒を選択して、炭化水素系溶媒の溶解力の不足や毒性の高さなどの課題を解決する。【解決手段】ラジカル反応の溶媒にテトラヒドロピランを用いることを特徴とするラジカル反応方法。【選択図】なし