タイトル: | 公開特許公報(A)_水中で剥離する層状複水酸化物およびその製造法 |
出願番号: | 2007053693 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C01F 7/16,C07C 59/08 |
奥宮 毅 池松 大作 成田 榮一 平原 英俊 會澤 純雄 JP 2008214127 公開特許公報(A) 20080918 2007053693 20070305 水中で剥離する層状複水酸化物およびその製造法 テイカ株式会社 000215800 赤岡 迪夫 100060368 赤岡 和夫 100124648 奥宮 毅 池松 大作 成田 榮一 平原 英俊 會澤 純雄 C01F 7/16 20060101AFI20080822BHJP C07C 59/08 20060101ALI20080822BHJP JPC01F7/16C07C59/08 6 OL 9 特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年9月7日 第50回粘土科学討論会実行委員会発行の「第50回粘土科学討論会講演要旨集」に発表 1.テフロン 4G076 4H006 4G076AA10 4G076AA18 4G076AB10 4G076AC01 4G076BF10 4G076CA08 4G076DA15 4G076DA16 4H006AA01 4H006AA02 4H006AB12 4H006AB99 4H006AC93 4H006BN10 4H006BS10 4H006BS70 本発明は、層状複水酸化物の中間層に乳酸マグネシウムをインターカレートすることにより、水中で剥離する性質を付与した層状複水酸化物およびその製造法に関する。 層状複水酸化物(LDH)は、一般式〔M2+1−xM3+x(OH)2〕x+〔An−x/n・yH2O〕で表される陰イオン交換能をもつ層状化合物である。その結晶構造は、2価金属イオンの一部を3価金属イオンが置換した正八面体の水酸化物層(基本層)と、陰イオンと層間水からなる中間層からできている。LDHの特徴は、基本層の金属イオンの種類とその比ならびに中間陰イオンの種類の組み合わせが多様なことである。これまで多くの種類のLDHが合成され、また無機および有機陰イオンインターカレーションによる取り込みについて多くの研究が行われている。 一般にLDHでは基本層の電荷密度が大きく、基本層と中間層との間の静電引力が強いため、多くの粘土鉱物に見られるような層間の剥離現象は起こりにくいとされている。従って水中で容易に剥離するLDHに関する報告は少ないが、その一つとして特開2004−189671号公報がある。ここでは中間層の陰イオンとして芳香族アミノカルボン酸、特にp−アミノ安息香酸をインターカレートすることにより、水またはエタノール等の低級アルコール中で剥離した状態で分散している分散液が得られることを報告している。これは芳香族アミノカルボン酸イオンをインターカレートすることにより、CO32−イオンをインターカレートしたLDHに比べて基本層の距離が拡大された結果であると説明されている。しかしながらこのLDHの剥離現象は、p−アミノ安息香酸のような芳香族アミノカルボン酸の良溶媒であるエタノール中では完全であるが、溶解度が小さい水中では不完全である。このため水中で実質上完全に剥離する新しいタイプのLDHに対して要望が存在する。 本発明者らは、先にWO2006/068118においてLDHの中間層に酢酸のMg,ZnまたはCe塩をインターカレーションした水中剥離型LDHを開示した。このLDHは水中でナノサイズの微粒子として分散し、透明な分散ゾルを形成する。この分散ゾルを例えば金属基板に塗布し乾燥すると緻密な透明な膜を形成し、これを高温で焼成することにより耐スクラッチ性の硬い皮膜が得られる。このためこのLDHは水系金属保護コーティング組成物のビヒクルまたは防錆顔料として有用である。また、このLDHは化粧水、クリームまたはファンデーションのような化粧品に保湿剤または安定化剤として使用することもできる。 しかしながらMg等の2価金属の酢酸塩をインターカレートしたLDHは、その水性分散液や乾燥後の粉体が独特の酢酸臭を有し、そのため無臭の水中剥離型LDHの提供が望まれる。 本発明は、式(I): Mg1−xAlx(OH)2 (I)(式中、xは0.2ないし0.33である。)の金属複水酸化物の基本層と、乳酸マグネシウムおよび層間水が該基本層の中間にインタレートされている累積物よりなる層状複水酸化物を提供する。 さらに本発明は、式(II): 〔(Mg1−xAlx(OH)2〕〔(CO3)x/2・yH2O〕(式中、xは0.2ないし0.33であり、yは0より大きい実数である。)の炭酸型層状複水酸化物を熱分解するステップ; 生成する熱分解物を乳酸マグネシウムの水溶液へ添加し、反応させるステップ; 生成する固体の反応生成物を反応液から分離するステップ; 分離した固体を乾燥し、粉砕するステップ;を含む本発明の層状複水酸化物の製造法を提供する。式(II)の炭酸型LDHはハイドロタルサイトとして知られている。 本発明のLDHは水に剥離した状態のナノサイズの微粒子として分散する。この分散液または分散ゾルは半透明で、これも脱水乾燥すれば元のLDHへ復元する。このため例えば金属基板の上に分散液またはゾルを塗布、乾燥し、場合により焼成して耐スクラッチ性の透明な硬い塗膜を形成することができる。さらに剥離した分散状態のLDHを公知の防錆顔料を含む水系塗料に配合して防錆効果を高めることができ、またエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のエマルションもしくは懸濁液に配合して複合体シートを形成し、補強または熱分解温度を上昇させることができる。 本発明のLDHは炭酸型LDHと、インターカレートすべき乳酸マグネシウムから出発し、他のアニオンをインターカレートしたLDHの製造のための再構築法に類似した方法に従って製造することができる。 再構築法とは、炭酸型LDHを予め400℃〜800℃の温度で焼成して炭酸イオンの大部分を除去した熱分解物を水中で他のアニオンと反応させ、再構築したLDHを生成させる方法である。本発明では乳酸マグネシウムの水溶液へ炭酸型LDHの熱分解物を加え、常温で反応させる。 式(II)の炭酸型LDHはハイドロタルサイトとして天然に存在し、または公知の方法で合成することができる。このものは、例えばDHT−6として協和化学工業(株)から発売されている。炭酸型LDHの熱分解物に対する乳酸マグネシウムの比は、Al2O3に換算した熱分解物中のAl含量と少なくとも等モルであることが好ましい。反応は常温(25℃)で10〜30時間攪拌または振とうして行うことが好ましい。反応後固体の反応生成物を濾過、遠心等によって分離し、100℃以下で乾燥し、粉砕して本発明のLDHを得る。 固体生成物は、X線回折像において層状構造であるLDH特有の回折パターンが見られ、炭酸型LDHと比較してピークが低角度側にシフトしていることから、基本層間の距離が層間に乳酸マグネシウムが取り込まれた結果拡大したことを示唆する。 FT−IRスペクトルからは取り込まれたマグネシウム塩に対応するカルボン酸に由来する吸収スペクトルが確認された。 乳酸マグネシウムを取り込んだLDHは水および乳酸水溶液に分散する時迅速に半透明なゲルへ変化し、水中でデラミネーションすることを示した。 これらの性質を利用して、本発明のLDHは金属基材の保護コーティング材料として有用である。本発明LDHの水分散液(コロイド溶液およびゾル)は、基材に塗布し、乾燥することによりそれ自体で透明皮膜を形成する。乾燥した皮膜を350℃以上の高温で焼成することにより、非常に硬い耐スクラッチ性の透明保護皮膜が得られる。 本発明のLDHは、公知の水系金属保護コーティング組成物にフィラーとして添加することもできる。金属保護コーティング組成物に、マイカ、タルク、カオリンなどのフレーク状フィラーを配合し、フレークの長軸方向への配向によって腐食因子の侵入に対するバリヤー層を形成させることは公知である。これらのフレーク状フィラーを本発明のLDHで代替することにより、同じ原理で腐食因子に対するバリヤー層を形成させることができる。剥離した状態にある本発明のLDHは公知のフレーク状フィラーよりもアスペクト比が有意に大きく、かつ厚みが約6〜10nmであって、炭酸型LDHの厚み約40〜50nmよりも有意に小さい。そのため匹敵する長径を有する炭酸型LDHよりも一層長軸方向への配向が容易であるため、より有効なバリヤー層を形成する。 デラミネーションしたLDHは高分子材料へ複合化し、補強および難燃化し得る。例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体の場合、エマルションまたは懸濁液へLDHの分散液を添加し、テフロンシート上に塗布、乾燥して得た複合シートは、LDHの配合量に比例して引張強度が上昇し、5wt%配合時に3.8MPaの最大値を示し、伸び率も最大となった。熱分解温度は25wt%まで配合した場合に向上することが示された。この熱分解温度向上は、分散したLDH層が大気中の空気がEVA中に侵入することを防ぎ、燃焼による高分子鎖の切断を阻害したことが推測される。第I部 極性溶媒中で剥離するLDHの製造実施例1 乳酸マグネシウム0.28mol/L(56.7g/L)水溶液へ、予め700℃において20時間熱処理を行ったMg−Al系炭酸型複水酸化物(協和化学工業(株)製DHT−6;炭酸LDH)の0.28mol/L(96.3g/L)水溶液を加える。15時間室温で攪拌後、得られた固形生成物(ゲル)を濾過して分離し、90℃乾燥機中10時間乾燥し、粉砕した。このものをMg−Lact/LDHと呼ぶ。比較例1 乳酸マグネシウムを酢酸マグネシウムに変更する以外は実施例1と同様の操作を行い、Mg−Ac/LDHを得た。第II部 LDHのキャラクタリゼーション(水分散体の可視光透過率)Mg−Lact/LDH、Mg−Ac/LDHおよび炭酸LDHの0.5%水分散体を各々作成し、可視光線領域(400nm〜780nm)における透過率を分光光度計(ダブルビーム直接比率測光方式自記分光光度計:島津製作所製UV3100型)にて1cm石英セルを用い測定した。炭酸LDHでは、400nm〜780nmの可視光領域では、透過率が殆ど0%であったが、Mg−Lact/LDH、Mg−Ac/LDHでは、上記波長域における透過率が、いずれの領域においても50%以上を示していた。このことはMg−Lact/LDH、Mg−Ac/LDHは水中で実質上完全に剥離してコロイド溶液を生成するのに対し、炭酸LDHはLDHの結晶構造を保持したままの粒子として分散していることを示している。透過率測定における一連の測定結果から、カルボン酸のMg塩を内包させるだけで生じるこの大きな相違の要因は、層状複水酸化物が水の添加により上述した“剥離現象”が生じて「剥離型複水酸化物」を形成し、これらが水中で微細に分散して、高い透過率を実現したものと考えられる。なお、本発明のカルボン酸の多価金属塩を、溶媒に分散してその分散状態を確認したところ、極性溶媒、特に水に対する分散性に優れていた。(原子間力顕微鏡観察)Mg−Lact/LDH、Mg−Ac/LDHおよび炭酸LDHを水に分散し、原子間力顕微鏡(日本ビーコ製ナノプローブ顕微鏡ナノスコープIII)で厚さを観察すると、それぞれ8.7nm、6.8nm、49.6nmとなっていた。このことからも、Mg−Lact/LDH、Mg−Ac/LDHが水に分散することによって、炭酸LDHと異なり、水中で層間剥離することを証明している。 第III部 金属保護コーティングとしての使用Mg−Lact/LDHの造膜性Mg−Lact/LDHの粉体の3.0%水分散体を調整しガラス板上に各種No.の標準バーコーターを用いて塗装し、90℃で48時間乾燥しフィルムを形成した。いずれの場合においても、バインダー等は全く使用しなかったにもかかわらず、なめらかな透明薄膜が形成された。得られた各薄膜に対し、電磁膜厚計(ケット科学研究所社製電磁誘導式膜厚計:LE−200J)を用いて膜の厚みを測定した。用いたバーコーターNo.と得られた薄膜の厚み(μm)は表1の通り。上記で作成した各薄膜に対し、水分散体の場合と同様、400nm〜750nm領域での可視光透過率を分光光度計にて測定したところ、いずれの薄膜においても、その透過率は70%以上を示していた。つぎに作成したフィルムを保持したガラスプレートを焼成炉にいれ、500℃の温度環境下で1時間焼成し、その後、塗膜硬度をJIS K5600−5−4 ひっかき硬度(鉛筆法)にて確認した。 結果を表2に示す。焼成により、耐スクラッチ性の硬いフィルムになった。第IV部 化粧品添加剤本発明のLDH(Mg−Lact/LDH)は、水中で剥離してコロイド溶液ないしゾルを形成するので、クリーム、乳液、化粧水、ファンデーションなどの皮膚化粧品増粘剤又は保湿剤として添加することができる。以下にその例を示す。 化粧水 成分 重 量 L−アルギニン 1.5 クエン酸ナトリウム 0.05 防腐剤 0.2 1,3−ブチレングリコール 3.0 グリチルリチンジカリウム 0.1 ピロリドンカルボン酸ナトリウム 2.0 クエン酸 適 量 香料 0.05 Mg−Lact/LDH 2.0 精製水 適 量 合 計 100 乳液 成分 重 量 ステアリン酸 0.2 セチルアルコール 1.5 ワセリン 6.0 スクアラン 6.0 グリセロール 2.0 2−エチルヘキサン酸エステル 0.5 ソルビタンモノオレエート 2.0 ジプロピレングリコール 2.0 トリエタノールアミン 1.0 香料 0.1 Mg−Lact/LDH 0.1 精製水 78.6 合 計 100 バニシングクリーム 成分 重 量 ステアリン酸 7.5 ステアリルアルコール 4.0 ステアリン酸ブチル 5.5 パラヒドロキシ安息香酸エチル 0.5 香料 0.1 Mg−Lact/LDH 0.2 精製水 73.8 合 計 100 ファンデーション 成分 重 量 タルク 20.5 マイカ 34.5 カオリン 5.5 二酸化チタン 10.0 光輝顔料(チタンマイカ) 3.0 ステアリン酸亜鉛 1.0 黄色酸化鉄 2.8 黒色酸化鉄 0.2 ナイロンパウダー 10.0 スクワラン 6.0 ミスチリン酸オクチルドデシル 2.0 ワセリン 2.5 パラヒドロキシ安息香酸エチル 0.5 香料 0.1 Mg−Lact/LDH 0.5 合計 100 第V部 悪臭評価Mg−Lact/LDHおよびMg−Ac/LDHをシャーレに10gずつ採取し、そのシャーレを10人のパネラーに順に嗅いでもらい、下記評価基準に準じて評価を行った。(評価) ◎:臭いが全く感じられない。 ○:臭いが感じられない。 △:若干の臭いを感じる。 ×:刺激臭を感じる。 評価結果を表3に示す。Mg−Ac/LDH(酢酸マグネシウム/LDH)からなる剥離型複水酸化物では、刺激臭がすることが確認されていたが、本発明品では、刺激臭がない剥離型複水酸化物を製造することが可能になった。 式(I): Mg1−xAlx(OH)2 (I)(式中、xは0.2ないし0.33である。)の金属複水酸化物の基本層と、乳酸マグネシウムおよび層間水が該基本層の中間にインタカレートされている累積物よりなる層状複水酸化物。 Al2O3に換算した基本層に対し、少なくとも等モルの乳酸マグネシウムがインターカレートされている請求項1の複水酸化物。 水中でナノサイズの粒子に剥離させてなる請求項1または2の複水酸化物。 式(II): 〔(Mg1−xAlx(OH)2〕〔(CO3)x/2・yH2O〕(式中、xは0.2ないし0.33であり、yは0より大きい実数である。)の炭酸型層状複水酸化物を熱分解するステップ; 生成する熱分解物を乳酸マグネシウムの水溶液へ加えるステップ; 反応した固体生成物を反応液から分離するステップ;および 分離した固体を乾燥し、粉砕するステップ;を含む請求項1の層状複水酸化物の製造法。 炭酸型層状複水酸化物の熱分解は400℃〜800℃の温度で行われる請求項4の方法。 Al2O3に換算した熱分解した炭酸型層状複水酸化物に対し、少なくとも等モルの乳酸マグネシウムを反応させる請求項4の方法。 【課題】層状複水酸化物(LDH)の中間層に乳酸マグネシウムをインターカレートすることにより、水中において可逆的に剥離する層状複水酸化物及びその製造方法を提供する。【解決手段】式(I): Mg1−xAlx(OH)2 (I)(式中、xは0.2ないし0.33である。)の金属複水酸化物の基本層と、乳酸マグネシウムおよび層間水が該基本層の中間にインタカレートされている累積物よりなる層状複水酸化物。【選択図】なし