タイトル: | 公開特許公報(A)_小腸内部位特異的薬物デリバリーのための腸溶性コーティング基剤で被覆した腸溶性製剤 |
出願番号: | 2007041004 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | A61K 47/38,A61K 9/22 |
草木 史枝 小久保 宏恭 佐久間 信至 山下 伸二 JP 2008044927 公開特許公報(A) 20080228 2007041004 20070221 小腸内部位特異的薬物デリバリーのための腸溶性コーティング基剤で被覆した腸溶性製剤 信越化学工業株式会社 000002060 奥山 尚一 100099623 有原 幸一 100096769 松島 鉄男 100107319 河村 英文 100114591 草木 史枝 小久保 宏恭 佐久間 信至 山下 伸二 JP 2006043752 20060221 JP 2006199255 20060721 A61K 47/38 20060101AFI20080201BHJP A61K 9/22 20060101ALI20080201BHJP JPA61K47/38A61K9/22 4 OL 13 4C076 4C076AA45 4C076AA94 4C076BB05 4C076EE33J 4C076FF25 4C076GG33 本発明は、経口摂取した腸溶性製剤において、胃内滞留中及び胃排出直後は薬物を放出せず、小腸内部位の特定部分に特異的に薬物をデリバリーするための腸溶性製剤の製造に関する。また、上記の目的の薬物デリバリーを達成するために設計された腸溶性コーティング基剤で被覆した腸溶性腸溶性製剤の製造方法に関する。 腸溶性コーティングは、主として酸に弱い薬物を胃酸から保護する一方、胃壁に対して刺激又は障害を与える薬物から胃粘膜を保護する等の様々な目的で広く使用されてきた。この様な腸溶性コーティングを実現するためには、人の消化管内の物理的・生理的環境及び消化管内移動時間を考慮した製剤設計が提案されてきている。すなわち、生理的環境については、一般に健常者の消化管内は胃から小腸へかけて生理的pHが酸性(pH約1.8〜4.5)から中性(pH約6.5〜8.0)へと変化し、小腸と大腸の間には本質的には差は無いとされている。また、人における製剤の胃内滞留時間は、0.5〜10時間であり、個人差が大きい上に摂食状態や投与される製剤の大きさによってもかなり影響を受けるが、小腸通過時間のバラツキは比較的小さく、一般的に3±1時間と言われている。 従来、小腸の特定部位に選択的に薬物を放出・デリバリーさせる方法については、これまで様々な研究がなされており、腸溶性製剤や徐放性製剤のような古典的方法(非特許文献1)の他にも、腸溶持続放出型製剤、時限放出型腸溶性製剤等が提案されている(特許文献1〜3)。しかしながら、従来の方法はいずれも部位選択性が不十分であったり、コーティング層に酸を加えるため安定性の観点から適用できる主薬が制限されたり(特許文献2〜3)、製剤の構造が複雑なため実用性に乏しいという難点があった(特許文献1)。例えば、徐放性製剤は持続的に薬物が放出されているため、製剤が胃内に滞留する時間や小腸を移動するまでの過程においても、かなりの放出が起こるという難点があった。また、腸溶性製剤においても、胃内での薬物の放出は押さえるものの、小腸上部への移行段階で急激に放出が開始されるために、薬物が腸内の目的部位に到達するまでにその大部分が吸収又は分解によって失われると言うこともあった。 更に、近年、薬物の中にはその消化管吸収性において食事の負の影響を受けるものがあることが見出されてきた。これまで、多くの薬物に対する食事の影響は、食後の高吸収性(食事の正の影響)を示すことが多かったが、近年の医薬品や開発品の中には食事の負の影響、すなわち食後の低吸収性を示す例が見られており、患者は服用時に食事の制限や食間服用等投薬方法に不自由を感じるケースが生じるようになった。この様な投薬における制限は、例えば慢性的疾患の治療薬に適用する場合には患者に恒常的に負担を与え、コンプライアンスの低下に繋がる。 一般に、胃、小腸上部から中部にかけて、食事成分はその殆どが吸収されているため、小腸下部や大腸付近では食事の成分はほぼ無いものと考えることが出来る。また、小腸下部での薬物吸収は小腸上部と同等であると考えられる薬物も多いため、小腸中部から下部で薬物を選択的にデリバリーできれば、食事の影響を受けることなく、効率的に薬物を体内に吸収することが可能となる。特許第3185206号公報特開平07−089849号公報WO 01−23000号公報Chemical&Pharmaceutical Bulletine (40),3035−3041,1992 本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、小腸内部位特異的に薬物をデリバリーすることの出来る腸溶性コーティング基剤を用いて、腸溶性製剤を提供しようとするものである。 本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究を行った結果、腸溶性高分子がpH依存的に溶解するという特性を応用し、これら腸溶性高分子及び必要に応じてその他の賦形剤等の組み合わせを用いて腸溶性コーティングを行った腸溶性製剤の特定のpHにおける溶出特性を規定すると、小腸内部の特定部位において速やかに崩壊し、薬物のデリバリーを制御することが出来る事を見出し、本発明を完成するに至ったものである。 本発明の腸溶性製剤によれば、生体内の小腸内部位で特異的(小腸中部以降)に薬物をデリバリーすることが出来る。これにより、胃内における薬物の保護や薬物の体内吸収性・生物学的利用能を向上したり、食事成分の少ない小腸下部への薬物のデリバリーによって、食事の負の影響を低減し、患者へのコンプライアンスを向上することが可能となる。 以下、本発明につき更に詳しく説明する。 本発明の腸溶性製剤は、薬物を含有する内核に、小腸内部位特異的に薬物をデリバリーするように設計された腸溶性高分子からなる皮膜層からなることを特徴とする経口用製剤である。また、日本薬局方14改正で規定する溶出試験において、日本薬局方第1液(pH1.2)では薬物の溶出が認められず、かつ日本薬局方第2液(pH6.8)では20分以降に薬物を溶出する小腸内部位に特異的に薬物をデリバリーするための腸溶性コーティング基剤で被覆した腸溶性製剤である。 従来、pH依存溶解性の腸溶性高分子を用いた腸溶性製剤において、薬物の溶出特性は基剤の腸溶性高分子の溶解性をそのまま反映すると考えられてきた。しかしながら、本発明を検討する中で、腸溶性高分子基剤自体のpH溶解性及び得られた製剤の溶出特性と、実際の生体内での腸溶性皮膜製剤の薬物放出性は、相関はあるものの必ずしも一致しないことが分かった。よって、これ迄詳細に解析していないこれらの条件を詳しく規定することで、実際の生体内の部位特異的な薬物のデリバリーが可能となることが分かった。 本発明の腸溶性製剤において、「日本薬局方溶出試験(第1,2法)に規定された方法で行い、試験液を日局第1液(pH1.2)では薬物の溶出が認められず」とは、試料6個について2時間試験を行った時、個々の試料からの溶出率が全て5質量%以下であることをいう。ただし、この時のパドルの回転数は50回転である。また、「日局第2液(pH6.8)では20分以降に薬物を溶出する」とは、試料6個について試験開始から20分までの間、個々の試料からの溶出率が全て0〜5質量%である状態をいう。なお、日局第2液での薬物溶出時間は20分以降、好ましくは60分以降である。 本発明の腸溶性製剤は、小腸内部位特異的に薬物をデリバリーするものであるが、本発明の目的を実現するためには、小腸中部以後、すなわち空腸や回腸までの任意の部位で薬物を放出させることが好ましい。また、最も好ましくは小腸中部から下部(空腸から回腸)の任意の部位で薬物等を放出させることが望ましい。 したがって、薬物としてはこれらの部位で放出されるものが好ましく、特に限定されるものではないが、例えば、塩酸トリエンチン等のウィルス病治療薬、アレンドロネート等のビスホスホネート系骨代謝改良剤、α−グルコシダーゼ阻害剤、アルドース還元阻害剤、抗フィルス・HIVプロテアーゼ阻害剤、抗ウィルス・HIV逆転写酵素阻害剤等、通常食前空腹時、食間、起床時等、食事の影響を受けないように不規則な服用が指定されている薬物等が挙げられる。 本発明の腸溶性コーティング基剤で被覆される対象は、例えば、上記薬物をヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等の結合剤やコーンスターチ、結晶セルロース、乳糖等の賦形剤等と共に顆粒化又は錠剤化したものや、白糖、白糖とコーンスターチの混合物、結晶セルロース、リン酸カルシウムやシリカ等の球形核粒子上に前記結合剤や賦形剤等と共にレイヤリングした粒子又はこれらを詰めてカプセル化したもの等が挙げられる。 腸溶性コーティング基剤としては、セルロース系では、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、セルロースアセテートサクシネート、メチルセルロースフタレート、ヒドロキシメチルエチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルアセテートマレエート、ヒドロキシプロピルメチルトリメリテート、カルボキシメチルエチルセルロース等が挙げられ、ビニル系では、ポリビニルブチレートフタレート、ポリビニルアルコールアセテートフタレートが挙げられ、アクリル系では、メタクリル酸とアクリル酸エチルの共重合体、例えばメタクリル酸/エチルアクリレート、メタクリル酸/メチルメタクリレート(オイドラギットL及びS)等が挙げられる。 本発明においては、これらのうち、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、メタクリル酸とアクリル酸エチルの共重合体等が好ましく、とりわけヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、メタアクリル酸メチル/メタアクリル酸の共重合体が好ましい。中でも、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートは、有機溶剤系コーティングが主のメタアクリル酸メチル/メタクリル酸の共重合体に比べて、コーティング方法が有機溶剤系/水系/乾式と幅広く、主薬の性質に応じて自由に選択が出来る点で最も好ましい。 目的とする薬物デリバリーが可能な腸溶性コーティング基剤は、従来の製造方法を用いる事が可能である。上述した腸溶性コーティング基剤の多くが、pH依存溶解特性を発現するためにイオン性解離基を有する分子構造をとっている。 例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートの場合、所定のpHで溶解を開始させるためには、解離基のサクシノイル基の含有量を調整することで制御が可能となる。生体の小腸内部のpHは上部から中部、下部へと移行するに従い、pH約4.5〜8.0まで変化するといわれており、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートからなるコーティング皮膜がより高pH側で溶解するように設計をすれば、これを用いて腸溶性コーティングをした腸溶性製剤は、小腸中部から下部において薬物を放出するようになると考えられる。ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートが高pH側で溶解するためには、第一にサクシノイル基含有量を好ましくは0.1〜10質量%、特に好ましくは3〜8質量%とすることが望ましい。このとき、基剤中におけるその他の置換基の含有量は、メトキシル基が好ましくは12〜28質量%、より好ましくは20〜26質量%、ヒドロキシプロポキシル基が好ましくは4〜23質量%、より好ましくは5〜10質量%、また、アセチル基が好ましくは2〜16質量%、より好ましくは5〜14質量%である。 更に、サクシノイル基含有量に対するアセチル基含有量の割合は、好ましくは1.25〜5、より好ましくは1.5〜3.5である。1.25未満では低pH側で溶解してしまう場合があり、5を超えると疎水性が高くなり、溶解しなくなる場合がある。 また、メタアクリル酸メチル/メタクリル酸の共重合体の場合は、「医薬品添加物規格」に記載されているメタクリル酸コポリマーSが好ましいが、上記の溶解性を満足させるために、メタアクリル酸の含有量が25〜34.5質量%が好ましい。 得られた腸溶性コーティング基剤を用いて単独の皮膜を作成した場合、0.1NのNaOH水溶液(pH13)で崩壊することと、日局第2液(pH6.8)で1時間後、好ましくは1.5時間後も崩壊せず、pH7.0以上で2時間以内、より好ましくはpH7.5以上で2時間以内に崩壊するように分子構造を設計すると、目的の腸溶性コーティング基剤が得られる。 本発明の腸溶性製剤を調製するために、上記の腸溶性コーティング基剤は1種でも良いが、2種以上の複数を配合して用いても良い。 これらの腸溶性コーティング基剤は、ポリマーを有機溶剤に溶解して用いるか又は水性ラテックスあるいは水分散液としてコーティングに用いることが出来る。更には、ポリマー粉末を直接対象に噴霧供給し同時に可塑剤をスプレーする乾式コーティングに用いることも出来る。 また、コーティング組成物(コーティング液)は、腸溶性コーティング基剤以外に賦形剤としてタルクを混合することが望ましく、その混合割合としては、腸溶性コーティング基剤100質量部に対し1〜100質量部、好ましくは3〜50質量部である。 腸溶性コーティング組成物は、必要に応じて、クエン酸トリエチル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、トリアセチン、ジブチルフタレート等の可塑剤や流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、みつろう、ラウリルアルコール、セチルアルコール等の高級アルコール類、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸類、カルナバロウ等の高級脂肪酸エステル類、オリーブ油、グリセリンモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類等のワックス類を含有することも出来る。上記可塑剤やワックス類は1種でも良いが、2種以上の複数を配合しても良い。中でも、可塑剤としてはクエン酸トリエチル、グリセリン酢酸脂肪酸エステルが好ましい。その他、通常製剤学的に認められる薬物、組成物の分散性を良くする界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム等)、着色剤、顔料、甘味料等を加えても良い。 コーティングの装置は、従来公知の手段、例えばスプレーコーティングの場合は、パンコーティング装置、ドラムタイプコーティング装置、流動層コーティング装置、撹拌流動コーティング装置を用いて行えばよく、これらの装置に付帯するスプレー装置にはエアースプレー、エアレススプレー、3流体スプレー等いずれをも用いることが出来る。乾式の場合は、例えば遠心流動コーティング装置、パンコーティング装置、流動層コーティング装置、遠心転動流動層コーティング装置等が挙げられる。 上述のコーティング組成物とコーティング装置を組み合わせて、薬物を含有する錠剤、顆粒剤あるいはカプセル剤等の内核に腸溶性コーティングを行う。コーティングの操作終了後に、常法による乾燥、熱処理、つや出し操作、糖衣掛け、他のコーティング基剤を用いるコーティング等を行っても良い。 本発明のコーティング技術によりコーティングされる腸溶性製剤としては、錠剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤等が挙げられる。また、これらの固形製剤表面にコーティングされる被覆量は、腸溶性製剤の種類、形、大きさ、表面状態、更に腸溶性製剤中に含まれる薬剤及び添加剤の性質等によって異なるが、おおむね固形製剤の質量に対して腸溶性基剤のコーティング質量を基準として3〜100質量%、好ましくは10〜100質量%、特に好ましくは10〜50質量%である。被覆量が3質量%よりも少ない場合は、十分な耐酸性及びラグタイムが得られず、結果として小腸内部位で特異的に薬物を放出することが出来ない場合があり、また被覆量が100質量%を超えると腸内でも皮膜が溶解しきらず小腸内で薬物を放出しないままに、製剤が大腸へ到達または排泄される可能性があり好ましくない場合がある。 この様にして製造された腸溶性製剤は、日本薬局方第14改正の溶出試験において日局第1液及び精製水中で2時間の試験の後も薬物を溶出せず、且つ日局第2液において薬物を放出し始めるまでの時間が、試験開始から、好ましくは20分以上240分未満、更に好ましくは30分以上120分未満のラグタイムを示すことが望ましい。 以上の設計に基づく腸溶性製剤では、動物の生体内において小腸内部位で特異的に薬物のデリバリーが可能となることが分かった。 以下に実施例及び比較例を示し本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。溶解試験用サンプル片の作製: 表1に示すpH依存溶解性を有する、各種腸溶性コーティング基剤を調製した。実施例1〜8及び比較例1〜3で用いた腸溶性コーティング基剤の20質量%エタノール/水(質量比8/2)溶液を用いて、ガラスキャストにより100μm厚のフィルム紙片を調製した。得られたフィルム片を、10×10mmの正方形に切り出し皮膜の溶解試験用サンプル片とした。 各種サンプルのpH依存溶解性を評価するため、日本薬局方第14改正の「崩壊試験」に準じてn=6の崩壊試験を行った。なお、試験液は第1液(pH1.2)、第2液(pH6.8)、及びpH7.6と8.0のリン酸緩衝液又はpH8.6ホウ酸緩衝液、更に0.1NのNaOH水溶液を用いた。薬物含有素顆粒の作製: 核顆粒(ノンパレル101 20〜24#;フロイント産業社製)3300gを遠心流動コーティング装置(CF coater CF−360;フロイト産業社製)に仕込み、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC TC−5E;信越化学工業社製)の5質量%エタノール・水(質量比5/5)溶液を噴霧しながら、テオフィリン1200g、サラゾスルファピリジン2400g、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC HPC−SSL;日本曹達社製)36gを散布して顆粒を作製した。この顆粒一粒中のテオフィリンの含有量は0.1mg、サラゾスルファピリジンは0.2mgであった。[実施例1] 上記で調製した薬物含有素顆粒に腸溶性コーティングを行った。腸溶性コーティング液は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS;信越化学工業社製;メトキシル基23.9質量%、ヒドロキシプロポキシル基7.6質量%、アセチル基11.4質量%、サクシノイル基6.2質量%)100質量部に対してタルク30質量部を混合後、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートの固形分濃度が7質量%になるようにエタノール/水(8/2)混合溶液を調製したものである。 上記薬物含有素顆粒の作製に従って得られた薬物含有顆粒360gを、転動型流動層コーティング装置(Multiplex MP−01:パウレック社製)に仕込み、給気温度60℃、排気温度42℃、回転数200rpm、スプレー速度15g/min、スプレーエアー30L/minで素顆粒に対してコーティング組成物中の固形分質量が39質量%増となるようにコーティングを行った。[実施例2] 実施例1のヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートを置換基の含有率が異なるヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS;メトキシル基24.0質量%、ヒドロキシプロポキシル基7.5質量%、アセチル基13.0質量%、サクシノイル基5.2質量%)に代えた以外は、実施例1と同様の方法でコーティングを行った。[実施例3] 実施例1のヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートを置換基の含有率が異なるヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS;メトキシル基24.2質量%、ヒドロキシプロポキシル基7.5質量%、アセチル基12.5質量%、サクシノイル基4.3質量%)に代えた以外は、実施例1と同様の方法でコーティングを行った。[実施例4] 実施例1のヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートを置換基の含有率が異なるヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS;メトキシル基24.3質量%、ヒドロキシプロポキシル基7.7質量%、アセチル基12.5質量%、サクシノイル基4.1質量%)に代えた以外は実施例1と同様の方法でコーティングを行った。[実施例5] 実施例1のヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートをメタクリル酸メチルとメタアクリル酸の共重合体(メタクリル酸コポリマー S;Eudragit S;メタクリル酸含有率:29.2質量%:ローム・アンド・ハース社製)に代えた以外は実施例1と同様の方法でコーティングを行った。[実施例6] 実施例1のコーティング質量を、素顆粒に対してコーティング組成物中の固形分質量が26質量%増となるようにコーティングを行った以外は、実施例1と同様の方法で行った。[実施例7] 実施例3のタルクを3質量部、素顆粒に対してコーティング組成物中の固形分質量が30.9質量%増となるようにコーティングを行った以外は、実施例3と同様の方法でコーティングを行った。[実施例8] 実施例1のHPMCAS100質量部に対して、タルク30質量部、クエン酸トリエチル35質量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.3質量部の混合組成物で、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートの固形分濃度が7質量%濃度になるように水溶液を調製し、実施例1と同様の薬物含有素顆粒360gを、転動型流動層コーティング装置に仕込み、給気温度80℃、排気温度44℃、回転数200rpm、スプレー速度7.5g/min、スプレーエアー30L/minで、素顆粒に対して、コーティング組成物中の固形分質量が49.6質量%増となるようにした。[比較例1] 実施例1のヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートをヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS;信越化学工業社製;メトキシル基23.0質量%、ヒドロキシプロポキシル基7.2質量%、アセチル基9.5質量%、サクシノイル基11.1質量%)に代えた以外は実施例1と同様の方法でコーティングを行った。[比較例2] 実施例1のヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートをヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS;信越化学工業(株)社製;メトキシル基22.3質量%、ヒドロキシプロポキシル基7.1質量%、アセチル基7.8質量%、サクシノイル基15.4質量%)に代えた以外は実施例1と同様の方法でコーティングを行った。[比較例3] 実施例1のヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートをメタクリル酸メチルとメタクリル酸の共重合体(メタクリル酸コポリマー L;Eudragit L;メタクリル酸含有率:48.1質量%:ローム・アンド・ハース社製)に代えた以外は実施例1と同様の方法でコーティングを行った。[評価1・in vitro溶出試験] 実施例1〜8及び比較例1〜3で調製したコーティング製剤について、日本薬局方溶出試験(パドル法、50rpm)に準じて薬物の溶出特性を評価した。なお、試験液は日局第1液(pH1.2)、日局第2液(pH6.8)及びpH7.6のリン酸緩衝液を用いた。得られた結果を表2に示す。また、代表として薬物含有素顆粒、実施例1〜3、実施例7、比較例1の日局第2液中での溶出プロファイルを図1に示す。また、薬物含有素顆粒、実施例1〜3のpH7.6のリン酸緩衝液中の溶出プロファフィルを図2に示す。 表2の結果の通り実施例1〜8において得られた製剤の物性は、胃内酸性条件を想定した日局第1液中では2時間後も製剤が崩壊せず、薬物の溶出は認められなかった。更に、小腸内環境を想定した日局第2液中では目標とするラグタイムを満足するものであった。 また、図2よりpH7.6では実施例1〜3の製剤の全てについて、ラグタイム5〜10分後に薬物が溶出された。pH7.6は一般的に小腸下部でのpH環境に近いことから、図1の小腸上・中部の環境に近いpH6.8では薬物を放出しない実施例2や3においても、薬物溶出が認められたことは、製剤が確実に小腸下部付近にデリバリー後、部位特異的に薬物を溶出させることが可能であることが推定できた。[評価2・in vivo試験] Wistar系雄性ラット(約250g)を一昼夜絶食した後、水0.5mLと共に、実施例1〜4、7、8、比較例1、2で得られた製剤1粒を経口投与した。投与後毎時8時間まで、頚静脈より採血した。得られた血漿中のテオフィリン及びスルファピリジン濃度をHPLCにより測定した。別に、薬物水溶液を用いて、同様の検討を行った。検体数はn=5で行い、解析値は平均を取った。 大腸到達後、主薬の1つであるサラゾスルファピリジンは細菌によりアゾ基が還元され、スルファピリジンと5−アミノサリチル酸に分解される。テオフィリン及びスルファピリジンが血中に最初に検出される時点をそれぞれ、製剤崩壊・薬物溶出開始時間、大腸到達時間とした。 得られた結果を表3に示す。また、代表として実施例1、実施例3の代表的な1検体について、血中濃度のプロファイルをそれぞれ図3と図4に示す。実施例3に示される様に、in vitroの溶出試験では、日局2液で2時間後も薬物が放出されなくても、基剤が特定の条件の溶出特性を満たしていればin vivoで薬物を放出することが可能であることが分かった。また、これらの結果から示される様に、実施例1〜4、7〜8及び比較例1〜2で得られた腸溶性製剤の薬物動態(表3)は、製剤の大腸到達を示すスルファピリジンの検出開始時間が4〜4.5時間目であることと、テオフィリンの血中濃度検出開始時間との差を勘案して、実施例1〜2と8では差が2時間前後で小腸中部、実施例3〜4と7では差が1時間以内で小腸下部、比較例1〜2は差が3時間以上で胃から小腸上部にかけて薬物が崩壊、デリバリーされていると推察できる。日局第2液中での溶出プロファイルを示す図である。pH7.6のリン酸緩衝液中での溶出プロファイルを示す図である。実施例1の血中濃度のプロファイルを示す図である。実施例3の血中濃度のプロファイルを示す図である。 日本薬局方第14改正で規定される溶出試験において、日本薬局方第1液(pH1.2)では薬物の溶出が認められず、かつ日本薬局方第2液(pH6.8)では20分以降に薬物を溶出する小腸内部位に特異的に薬物をデリバリーするための腸溶性コーティング基剤で被覆した腸溶性製剤。 上記腸溶性コーティング基剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートと、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートと、メタクリル酸コポリマーと、カルボキシメチルエチルセルロースとからなる一群から選ばれる請求項1に記載の腸溶性製剤。 上記腸溶性コーティング基剤が、サクシノイル基含有量が0.1〜10質量%であるヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、又はメタクリル酸含有率が25〜34.5質量%であるメタクリル酸コポリマーである請求項2に記載の腸溶性製剤。 上記腸溶性コーティング基剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートであって、サクシノイル基含有量が0.1〜10質量%であり、アセチル基含有量が5〜14質量%であり、該サクシノイル基含有量に対する該アセチル基含有量の割合が1.25〜5である請求項2に記載の腸溶性製剤。 【課題】小腸内部位特異的に薬物をデリバリーすることの出来る腸溶性コーティング基剤を用いて、腸溶性製剤を提供する。【解決手段】日本薬局方14改正で規定する溶出試験において、日本薬局方第1液(pH1.2)では薬物の溶出が認められず、かつ日本薬局方第2液(pH6.8)では20分以降に薬物を溶出する小腸内部位に特異的に薬物をデリバリーするための腸溶性コーティング基剤で被覆した腸溶性製剤を提供する。腸溶性コーティング基剤が、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートと、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートと、メタクリル酸コポリマーと、カルボキシメチルエチルセルロースとからなる一群から選ばれる。【選択図】 なし