タイトル: | 公開特許公報(A)_尿酸検出方法およびキット |
出願番号: | 2007038929 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | G01N 33/50,G01N 21/76 |
久保 博昭 本間 浩 JP 2008203067 公開特許公報(A) 20080904 2007038929 20070220 尿酸検出方法およびキット 東レ株式会社 000003159 久保 博昭 本間 浩 G01N 33/50 20060101AFI20080808BHJP G01N 21/76 20060101ALI20080808BHJP JPG01N33/50 AG01N33/50 HG01N33/50 QG01N21/76 6 OL 7 2G045 2G054 2G045CB09 2G045CB16 2G045DA01 2G054AB05 2G054CA30 2G054CE03 2G054EA01 本発明は、爪、毛髪、皮膚などの固体の生体試料から尿酸を検出する方法および尿酸を検出するためのキットに関する。 臨床医療の分野において、血液中の尿酸値が異常に高い状態は、高尿酸血症とて知られている。高尿酸血症の初期は自覚症状がなく、放置しておくと尿酸が結晶化して関節や腎臓に沈着し、痛風、腎臓障害、血管障害、心臓発作を引き起こす原因となる。そこで、高尿酸血症の早期発見のために、血液中の尿酸値の定量検出が求められている。 従来、血液中の尿酸値を測定する方法としては、還元性をもつ尿酸によりリンタングステン酸をリンタングステン酸ブルーに還元し、分光器などで吸光度を測定する方法や、尿酸由来の293nmの吸収が酵素反応によって消失することを用いた紫外部吸収法などが知られている。しかしながら、上記手法は、検体として血液を用いるために採血が必要であり、被験者への負担が大きく、また、血液中に含まれる他の還元性代謝産物により検出が妨害される問題があった。そこで、尿酸の検出法としては非侵襲的、簡便かつ特異性の高い検出方法が望まれていた。 一方、血糖値の非侵襲的な診断法として、毛髪といった血液以外の生体試料を用い、これらに含まれる糖化タンパクの量を検出する方法が報告されている(非特許文献1)。しかしながら、爪、皮膚、毛髪といった血液以外の生体試料に含まれる尿酸を高効率でかつ特異性高く抽出する方法がないことから、尿酸に特異的定量検出は困難とされていた。「分析化学」, 2005, Vol.54, No.9, 743-748. 本発明は、上述したような実状に鑑み、非侵襲的かつ、爪、皮膚、毛髪といった血液以外の生体試料に含まれる尿酸を効率よく、かつ特異性高く抽出することができ、簡便に尿酸を検出する方法およびキットを提供することを目的とする。 上述した課題を解決するため、本発明は、固体の生体試料から塩基性溶媒により尿酸を抽出する工程を含む尿酸の検出方法を提供する。 本発明に係る好ましい尿酸の検出方法は、尿酸を抽出する塩基性溶媒として、pH8〜12の水溶液やアンモニア水を用いる。また、対象とする好ましい固体の生体試料は、爪、毛髪、皮膚である。また、好ましい本発明の尿酸の検出方法は、尿酸を化学発光物質ルミノールによる化学発光の存在又は強度を測定することにより検出又は定量するものである。 また、本発明は、塩基性溶媒と化学発光物質とを備えた尿酸を検出するためのキットを提供する。 本発明に係る尿酸の検出方法は、爪、皮膚、毛髪等の固体の生体試料に含まれる尿酸を特異性高く、効率よく抽出することができ、非侵襲的かつ簡便に尿酸を検出することができる。 以下、本発明をより詳細に説明する。 本発明に係る尿酸の検出方法は、固体の生体試料を塩基性溶媒により尿酸を抽出する工程を有する。 尿酸を抽出する塩基性溶媒としては、標的とする尿酸を効率的に抽出することができ、かつ生体試料自体を破壊する等により尿酸以外の成分の抽出がされにくい溶媒を用いることが好ましい。具体的には、pHが8〜12である水溶液を好ましく用いることができる。例えば、pH8〜12に調整されたリン酸緩衝液等の緩衝液を用いて尿酸を効率的に抽出することができる。また、塩基性溶媒としては、アンモニア水、特にpHが8〜12に調整されたアンモニア水を、尿酸を特異的にかつ効率的に抽出することができることから、好適に用いることができる。具体的には、0.1Mアンモニア水を用いることが特に好ましい。 尿酸を抽出する塩基性溶媒としてアンモニア水を用いる場合、尿酸を抽出する際のアンモニア水の温度は特に限定されないが、20〜60℃で抽出操作を行う方が、短時間で抽出を完了できることから好ましい。また、尿酸の抽出で用いるアンモニア水の濃度は特に限定されないが、0.01〜50%を挙げることができる。尿酸を抽出する時間は、アンモニア水の温度、濃度に依存するが、上記の温度、濃度においては、1〜24時間であれば十分に尿酸を抽出することができる。具体的には、0.1Mアンモニア水を用いて50℃に加温することで、約30分で抽出を完了することができる。 本発明に係る尿酸の抽出方法で用いる固体の生体試料としては、爪、毛髪、皮膚を挙げることができるが、これに限定されない。爪、毛髪を用いる場合、生体試料の長期保存が可能で、尿や血液では得ることのできない過去の尿酸値の情報を得ることができることからより好ましい。本発明に係る尿酸の検出方法は、固体の生体試料が微量でも十分検出が可能である。例えば、後述するような高感度に尿酸を検出することができる方法を適用すれば、毛髪100マイクログラムからでも十分に尿酸を検出することができる。 尿酸の検出は、抽出された尿酸を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に代表されるクロマトグラフィーによって直接分析することで行うことができる。尿酸を上記のような塩基性溶媒で抽出することにより、夾雑物が少ない状態で尿酸を特異的に抽出できるので、通常行われる条件に従って簡便に検出又は定量することができる。 また、微量の生体試料から尿酸を検出する場合には、尿酸の酸化反応を触媒するオキシダーゼであるウリカーゼを尿酸に作用させて生成する過酸化水素を既知の方法で検出又は定量する方法、ウリカーゼによって分解される尿酸由来の紫外光吸収(292〜293nm)の吸光度減衰を測定する方法などを適用することが好ましい。 ここで、尿酸にウリカーゼを作用させて生成する過酸化水素を検出又は定量する方法としては、生成した過酸化水素と発色基質(EHSPT(N−エチル−2−ヒドロキシ−N−トルイジン)、4AA(4−アミノアンチピリン)など)にペルオキシダーゼを酸化縮合させて生じる赤紫色キノン色素の吸光度(546nm)を測定することによるウリカーゼ・ペルオキシダーゼ法、生成する過酸化水素をメタノールとともにカタラーゼを作用させて生じたホルムアルデヒドを測定するカタラーゼ法、ルミノールが過酸化水素と反応するときに発せられる化学発光を測定するルミノール法などが挙げられる。 ルミノール反応は、還元性物質であるルミノールが過酸化水素に代表される酸化性物質により3−アミノフタル酸に変換される反応において、中間体として3−アミノフタル酸の励起一重項状態が生成し、基底状態になるときに460nmの光を発する反応である。本発明に係る尿酸の検出において、このルミノール反応を用いることができる。具体的には、抽出した尿酸と酵素ウリカーゼとの反応により生じた過酸化水素をルミノールと反応させ、化学発光により発生する460nmの光の有無又は強度を化学発光分析装置等を用いて測定することにより、尿酸を検出又は定量することができる。 本発明の尿酸検出用キットは、上記の検出方法において用いる塩基性溶媒と化学発光物質であるルミノールとを含むものである。塩基性溶媒としては、pHが8〜12である水溶液が好ましく、またアンモニア水、特にpHが8〜12に調整されたアンモニア水を好適に用いることができる。具体的には、0.1Mアンモニア水を用いることが特に好ましい。 本発明に係る尿酸の検出方法によれば、爪、毛髪、皮膚等の固体の生体試料から効率的に尿酸を抽出することができ、非侵襲的かつ簡便に尿酸を検出することができる。特に、正確な尿酸値を定量検出する場合など高精度な検出が要求される場合において、本発明に係る尿酸の検出方法によれば、尿酸を効率よく抽出できることから、尿酸以外の還元物質による検出誤差を最小限にすることができ、定量的に尿酸値を正確に検出することができる。 以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。 (実施例1)(毛髪からの尿酸の検出) 本実施例では臨床所見として痛風と診断された痛風患者Aおよび健常者Bの毛髪を生体試料とした。 痛風患者Aおよび健常者Bの毛髪をそれぞれ、0.7mgずつ採取した。毛髪を切断後、37℃のエタノール(和光純薬製)中で10分間洗浄し、エタノールを除去後、瑪瑙製の乳鉢、乳棒で粉末にした後、0.1Mアンモニア水(pH11)(和光純薬製)を0.5ミリリットル加え、40℃で1時間かけて尿酸を抽出し、遠心後、上澄み液をHPLCの試料とした。 上澄み液5マイクロリットルに含まれる尿酸をポストカラム−化学発光検出HPLCにより定量検出を行った。HPLC用のカラムとして、C18逆相カラム(関東化学製)を用い、移動相はフェリシアン化カリウム(20マイクロモル/リットル)を含んだリン酸二水素カリウム液(50ミリモル/リットル)で、ポストカラム反応液はフェロシアン化カリウム(250ミリモル/リットル)とルミノール(1ミリモル/リットル)を含んだ水酸化ナトリウム水溶液(600ミリモル/リットル)を用いた。移動相と反応液の流速は各々1ミリリットル/分で行った。検出器は化学発光検出器(相馬光学製)を用いた。 HPLC分析の結果、尿酸由来のピークが5.2分後に検出された(図1)。そのピーク強度から尿酸量を算出したところ、痛風患者Aの尿酸値は毛髪1mgあたり161.3ng/mgであったのに対し、健常者Bは19.3ng/mgであった。その結果を表1に示す。 また、上澄み液50マイクロリットルにウリカーゼ0.1mg/mlを10マイクロリットル添加し、37℃で10分間加温後、その溶液6マイクロリットルをHPLCにより分析したところ、5.2分後にみられたピークが消失した。このことから、尿酸由来のピークであることが示された。 以上の結果から、痛風患者Aは健常者Bに比べて毛髪1mg中に約8倍の尿酸が含まれていることが分かり、毛髪から十分に検出可能な尿酸が効率的に抽出されたことが明らかになった。 (実施例2)(爪からの尿酸の検出) 本実施例では臨床所見より痛風と診断された痛風患者Aおよび健常者Bの爪を生体試料とした。 痛風患者Aおよび健常者Bの爪をそれぞれ、0.5mgずつ採取した。爪を37℃のエタノール(和光純薬製)中で10分間洗浄し、エタノールを除去後、0.1Mアンモニア水(pH11)(和光純薬製)を0.5ミリリットル加え、40℃で1時間かけて尿酸を抽出し、遠心後、上澄み液をHPLCの試料とした。 上澄み液5マイクロリットルに含まれる尿酸をポストカラム−化学発光検出HPLCにより定量検出を行った。HPLC用のカラムとして、C18逆相カラム(関東化学製)を用い、移動相はフェリシアン化カリウム(20マイクロモル/リットル)を含んだリン酸二水素カリウム液(50ミリモル/リットル)で、ポストカラム反応液はフェロシアン化カリウム(250ミリモル/リットル)とルミノール(1ミリモル/リットル)を含んだ水酸化ナトリウム水溶液(600ミリモル/リットル)を用いた。移動相と反応液の流速は各々1ミリリットル/分で行った。検出器は化学発光検出器(相馬光学製)を用いた。 HPLC分析の結果、尿酸由来のピークが5.2分後に検出された(図2)。そのピーク強度から尿酸量を算出したところ、痛風患者Aの尿酸値は爪1mgあたり58.3ng/mgであったのに対し、健常者Bは27.5ng/mgであった。その結果を表2に示す。 また、上澄み液50マイクロリットルにウリカーゼ0.1mg/mlを10マイクロリットル添加し、37℃で10分間加温後、その溶液6マイクロリットルをHPLCにより分析したところ、5.2分後にみられたピークが消失した。このことから、尿酸由来のピークであることが示された。 以上の結果から、痛風患者Aは健常者Bに比べて爪1mg中に約2倍の尿酸が含まれていることが分かり、毛髪から十分に検出可能な尿酸が効率的に抽出されたことが明らかになった。図1は、本発明に係る尿酸の検出方法において、実施例1において、痛風患者Aおよび健常者Bの毛髪から抽出した尿酸を測定したHPLCチャートである。図2は、本発明に係る尿酸の検出方法において、実施例2において、痛風患者Aおよび健常者Bの爪から抽出した尿酸を測定したHPLCチャートである。符号の説明1 毛髪に含まれる不純物由来のHPLCのピーク2 毛髪に含まれる尿酸由来のHPLCのピーク3 爪に含まれる不純物由来のHPLCのピーク4 爪に含まれる尿酸由来のHPLCのピーク 固体の生体試料中に含まれる尿酸を検出する方法であって、該生体試料中の尿酸を塩基性溶媒で抽出する工程を含むことを特徴とする尿酸の検出方法。 塩基性溶媒がpH8〜12の水溶液である請求項1に記載の尿酸の検出方法。 塩基性溶媒がアンモニア水である請求項1又は2に記載の尿酸の検出方法。 固体の生体試料が爪、毛髪又は皮膚である請求項1〜3のいずれかに記載の尿酸の検出方法。 尿酸をルミノールによる化学発光の有無又は強度を測定することにより検出又は定量する工程を含む請求項1〜4のいずれかに記載の尿酸の検出方法。 塩基性溶媒およびルミノールを含む尿酸検出用キット。 【課題】爪、毛髪、皮膚などの固体の生体試料から効率的に尿酸を抽出することができ、検出する方法を提供する。【解決手段】本発明は、固体の生体試料から塩基性溶媒により尿酸を抽出する工程を含む尿酸の検出方法を提供する。塩基性溶媒としてアンモニア水を用いて、また化学発光物質ルミノールを用いることで、効率よく尿酸を検出することができる。【選択図】なし