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タイトル:公開特許公報(A)_抄紙工程リジェクトからの糖類及び製紙用填料の製造方法
出願番号:2007036362
年次:2008
IPC分類:C12P 19/14,D21H 17/67


特許情報キャッシュ

権藤 あい子 仲亀 誠司 JP 2008199906 公開特許公報(A) 20080904 2007036362 20070216 抄紙工程リジェクトからの糖類及び製紙用填料の製造方法 王子製紙株式会社 000122298 権藤 あい子 仲亀 誠司 C12P 19/14 20060101AFI20080808BHJP D21H 17/67 20060101ALI20080808BHJP JPC12P19/14 AD21H17/67 4 1 OL 11 4B064 4L055 4B064AF01 4B064CA21 4B064CB07 4B064CD24 4B064DA16 4L055AG04 4L055AG98 4L055AH01 4L055BD10 4L055FA20 4L055FA22 バイオマスからエタノールや乳酸などの微生物による発酵生産の原料となる糖類を製造し、その糖類製造後の残渣も製紙原料として有効に利用する技術に関する。 地球温暖化を防止するため、地球温暖化ガスの一つである二酸化炭素の削減の取り組みが、広く行われてきており、その一環として、カーボーンニュートラルであるバイオマスを原料にした、石油製品の代替品の生産が検討されている。その中でも、多糖類を加水分解することで得られるグルコースなどの糖類を出発物質にした有用物質の生産についての研究が多く行われている。(例えば、非特許文献1参照) 多糖類から糖類を得る方法の一つとして、酸を用いた加水分解法がある。例えば、濃硫酸を用いる方法は、185℃の水蒸気を用いた前加水分解処理によって、ヘミセルロースを分離回収し、次に、80%の硫酸を用いて、主加水分解を行う。その後、5〜10%程度の希硫酸を用いて後加水分解を行うことで、グルコースを得るという方法である。(例えば非特許文献2参照)しかし、この方法はグルコースの二次分解が起きるため、グルコースの収率が低いことや、酸を高圧下で使用するために、耐酸耐圧の反応容器を必要とすることや、硫酸の回収をするためのコストが高くなるなどの問題点がある。 多糖類から糖類を得るためのもう一つの方法として、酵素を用いた加水分解法がある。その中でもセルラーゼを用いる方法が特に研究されている。この方法は、セルロースをセルラーゼで加水分解を行う方法であるが、グルコースの二次分解が生じないため、理論値通りの収率が得られる。反応条件が穏和であるために、耐酸耐圧の反応容器を必要としない。また、環境汚染の心配がない等の利点がある。(例えば非特許文献2参照)セルラーゼは、セルロースのβ‐1,4グリコシド結合を加水分解する酵素の総称であり、エンドグルカナーゼ(EC 3.2.1.4)、セロビオハイドロラーゼ(EC 3.2.1.91)及びベータグルコシダーゼ(EC 3.2.1.21)からなる。また、セルラーゼを生産する微生物は、細菌類や糸状菌など広範に亘っている。(例えば非特許文献2参照) 上記のように、酵素による加水分解法は、酸加水分解法と比べて利点があるものの、製造コストのさらなる削減が求められており、このため安価な原料が求められている。また、この原料は、リグニン含量が低く、それに加えてセルロースからグルコースへの分解率が高い原料が求められている。リグニン含量が低い原料が好ましい理由としては、リグニンはセルロースを被覆して、セルラーゼの反応性を低くするため、リグニン含量が高いと、リグニンを除去するための前処理工程が必要となるためである。(例えば非特許文献2参照)また、セルロースの分解率が高い原料が求められている理由としては、糖類の生産性をあげるためである。例えば、原料中のセルロースの分解率が低いと、投入エネルギー(反応時間、反応回数、反応容器など)を大きくしなければいけないため、コストが増加してしまうために好ましくない。 リグニン含量が低く、セルロース分解率が高い原料として、化学パルプに由来する紙類があるが、その中でも古紙等は原料として適しており、古紙を原料とした糖化や発酵の研究が行われている(例えば、特許文献1、特許文献2)。しかし、古紙は多くの場合、紙の原料として再利用されているため、糖化原料として使用することは好ましくない。このため、リグニンの少ないセルロース資源で、紙としての再生利用と競合しない原料が望まれている。 一方、製紙産業では、パルプ化・調成・抄紙・塗工といった工程を経て紙が製造されている。これらの工程中で発生する排水には、製紙原料であるパルプ繊維分、澱粉や合成接着剤などの接着剤を主とする有機物や、内添用填料や塗工用顔料などとして利用されている白色無機粒子を主とする無機物、パルプ化工程で洗い出されたリグニン、微細繊維、古紙由来の製紙用填料、それに付着した印刷インキ等が含まれている。また、一般的に工場の境界から排出される直前に設置される排水処理設備に送られる経路上で、これらの排水には上記有機物・無機物などに加えて、砂や埃なども多く含まれる。 このような排水から沈殿や浮上などを利用したクラリファイア等の排水処理設備を利用して分離、回収された製紙スラッジは、流動床炉やストーカ炉等の焼却炉で製紙スラッジ中の有機物を燃焼させてエネルギーを回収すると同時に、スラッジの減容化が図られた後、産業廃棄物として埋め立て処分されている。環境保全の必要性から産業廃棄物の低減は急務であり、また、資源の有効利用の観点からは、廃棄物のリサイクル性が要求されている。現在、焼却灰の一部は、セメントや土壌改良剤、堆肥、また、製紙用白色無機粒子などとして利用することが考えられている。(例えば、特許文献3、特許文献4) ここで、特に抄紙工程での水の排出・回収では下記のことが行われている。 各種パルプ化工程で製造されたクラフトパルプ、古紙パルプ、機械パルプなどの各種パルプを、配合、叩解、薬品や填料、染料等の添加等を行って調成された紙料が、通常2.5〜3.0%の濃度で抄紙工程に送られる。 この高濃度紙料は、抄物の種類や操業条件により0.4〜1.0%程度に希釈される。希釈された紙料はヘッドボックスの手前で、最終的な除塵が行われる。除塵装置として、パルプ繊維より重い異物を除く装置に渦流式クリーナー、パルプ繊維より大きい異物を除く装置として密閉型のスクリーンが主に使われている。除塵工程では、アクセプトパルプとリジェクトに分けられ、クリーナーやスクリーンのリジェクトは、再度クリーナー、スクリーン処理を繰り返して、紙料として最大限利用するシステムとなっている。クリーナーの最終的なリジェクトをテールと呼ぶが、このテールは紙料として利用されず、製紙スラッジとして排出されている。クリーナーから出た直後のテールは、パルプ化工程等のスクリーン装置によって、繊維塊、塵、砂粒などの異物はおおよそ除去され、排水処理施設近くの排水に比べて異物が少ない。 アクセプトパルプは、ヘッドボックスを通りワイヤー上に噴出される。ワイヤーパートを離れる湿紙の濃度は20%程度にまでなるので大量の水がワイヤーを通して排出されることになる。この排水は、ほぼヘッドボックス濃度の二分の一程度の濃度で、繊維分を含有しており、一般にこの種のパルプ懸濁水は白水と呼ばれている。白水は、前記の高濃度紙料の希釈や、パルプ化工程など、排出する場所に応じて、循環させて利用されている。 ワイヤーパート、およびプレスパートではワイヤトリムや紙切れ時のクーチロールおよびプレスロールで発生するウェットブローク、ドライパート以降では紙切れ時に発生するドライヤ、カレンダおよびリールにおけるブローク、枠先におけるむき紙、ワインダ、カッタなどの仕上げ機械などで発生するドライブロークと呼ばれる損紙が生じる。ブロークは、抄紙機の階下に設けられたウェットブロークパルパ、ドライブロークパルパで粗離解された後、調成工程のブローク離解機やブローク叩解機で処理されて、原料として再利用される。 このように、製紙工場では、紙料として抄紙機に送られても、抄紙機上に留まらずリジェクトされるものが多量に存在するが、製紙工場内で循環させて利用されている。 一般に、紙の白色度、不透明度などの光学特性や平滑性等を改善するために、通常パルプを主成分とする紙料に内添用填料として白色無機粒子を添加して抄紙が行われる。また、印刷適性の改善を主目的に、白色無機粒子と接着剤を主成分とする顔料塗工層を紙の上に設けることも広く行われている。このような内添用、あるいは塗工用に使用される製紙用白色無機粒子としては、例えば、カオリン、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、硫化亜鉛、二酸化チタン、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、硫酸バリウム、サチンホワイト、タルク、シリカ等を主体に、さらに必要に応じてプラスチックピグメントと称される有機顔料の1種あるいは2種類以上が適宜混合されて使用されている。このため、抄紙工程におけるリジェクト、およびリジェクトのテールには、パルプ繊維以外に、上記白色無機粒子が多く含まれているという特徴がある。 酵素を用いた糖類の製造方法に、製紙スラッジに含まれるパルプ繊維分を糖質原料として利用する検討が行われている(例えば、特許文献5、非特許文献3、非特許文献4)。ここで、製紙スラッジを糖質原料として利用する場合には、沈殿や浮上などを利用したクラリファイア等の固形分分離装置を利用して回収された濃縮物を回収、利用することが容易であり、一般的である。しかし、上記のように、排水処理設備通過後の製紙スラッジには異物が多く、これらの製紙スラッジを原料として糖類を製造する場合には、糖化前、あるいは糖化後の糖から、これらの異物を除去する操作が必要である。 製紙スラッジから、製紙用填料を製造する技術も前記のように検討されている。(例えば、特許文献3、特許文献6)ここで、製紙用填料は、製紙スラッジを焼却して減容した焼却灰から白色無機粒子を製造しており、本願の特許とは製造方法を異にする。特開平2005−278602号公報特開平2002−238590号公報特開平2002−308619号公報特開平2004−182538号公報特開平2004−89177号公報特開平2000−178024号公報バイオマスエネルギーの特性とエネルギー変換・利用技術(2002年,(株)NTS)セルロースの事典(2000年, 朝倉書店, セルロース学会編), pp.300-316, p.404-408.Evaluation of paper sludge for amenability to enzymatic hydrolysis and conversion to ethanol. Lee R. Lynd et al., p.50, Tappi Journal, 2001.Conversion of paper sludge to ethanol in a semicontinuous solids-fed reactor., Zhiliang Fan et. al, 26, pp. 93-101, Bioprocess Biosyst. Eng., 2003.Methods for measuring cellulase activities, Thomas M. Wood and K. Mahalingeshwara Bhat, vol. 160, p.92, Methods in Enzymology. 上記した従来の各種方法は、スラッジから無機物を得る場合には焼却し、有機物を得る場合には、複雑な分離を必要とする手法ばかりである。そこで、本発明は、廃棄物の発生場所の特性を生かし、簡単な工程で経済的に廃棄物を利用する方法を提案することを課題とする。 本発明者らは、上記課題に基づいて鋭意研究を行った結果、本発明に到達した。即ち、本発明は、以下の(1)〜(4)の構成を採用する。(1) リグノセルロース由来のケミカルパルプを主成分とする紙の抄紙時に発生するリジェクトを抄紙工程より直接採取し、これにセルラーゼを加えて加水分解を行うことによる糖類の製造と同時に、糖類採取後の残渣を製紙用填料とすることを特徴とする糖類、および製紙用填料の製造方法。(2) 上記(1)に記載のリジェクトが、抄紙機前の除塵工程におけるリジェクトのテールであることを特徴とする糖類、及び製紙用填料の製造方法。(3) リジェクトを含む排水を他の一般排水と混ぜることなく直接的に採取し、そのまま、あるいは固形分を脱水した後に、加水分解を行うことを特徴とする上記(2)に記載の糖類、及び製紙用填料の製造方法。(4) リジェクトを含む排水を他の一般排水と混ぜることなく、かつ凝集沈澱処理を行わず直接採取し、そのまま、あるいはフィルターにより固形分を集めた後に、加水分解を行うことを特徴とする上記(2)または(3)に記載の糖類、及び製紙用填料の製造方法。 本発明により、糖化原料として未利用の資源から安定に供給可能であり、不純物の少ない糖類を安価に生産することができた。また、糖化後の残渣を製紙原料として再利用することができる。 本発明に用いられるリグノセルロースとしては、パルプの原料となれば、どのようなものでも良く、木材、ケナフ、マニラ麻、タケ、バガス、麦わら、コットンリンター、アシ、亜麻、楮、三椏のいずれでも用いることができる。また、これらの材が、単独に使用されても複数の種類を使用しても良い。例えば木材であれば、マツ、スギ、モミ、トウヒ、ダグラスファー、ラジアータパイン等の針葉樹や、ブナ、カバ、ハンノキ、カエデ、ユーカリ、ポプラ、アカシア、ラワン、アスペン、ゴム等の広葉樹を含む。 本発明で用いられる化学パルプは、化学的に脱リグニンを行う方法であれば、どのような方法で製造されていてよく、例えば、「紙パルプ製造技術シリーズ(1)クラフトパルプ」(紙パルプ技術協会編)に記載のアルカリパルプ法、サルファイトパルプ法、クラフトパルプ法などを用いることができる。また、例えば「パルプの洗浄・精選・漂白」(紙パルプ技術協会編)に記載の酸素、オゾン、塩素、二酸化塩素、アルカリ抽出、次亜塩素酸、過酸化物、亜硫酸、ハイドロサルファイトを用いた漂白工程を用いることができる。上記、化学パルプを使用する紙の抄紙工程としては、ケミカルパルプ単独、及びまたは古紙パルプや機械パルプの混合物を用いることができる。しかし、サーモメカニカルパルプ、メカニカルパルプなどの機械パルプや機械パルプを含む古紙パルプはリグニンを含むため、糖類製造の原料として好ましくない。したがって、ケミカルパルプが主成分であることが好ましい。ケミカルパルプの割合は50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは100%である。 本発明における抄紙工程のリジェクトとは、代表的には、抄紙機前の除塵工程において、紙料として好ましいものと、好ましくない異物に分別する工程から排出されたものである。その他には、抄紙機上で紙として留まらず白水やブロークとして排出されたものも含まれる。一例としては、循環中にオーバーフローして廃棄される白水(繊維分と填料を含む)や、これとオーバーフローした塗料廃棄物が混合したものなどが挙げられる。 抄紙機前の除塵工程について詳しく説明すると、この工程では、例えば形状、比重、固さなどの違いを利用して除去する工程のことをさす。除塵工程で使用される装置は、良質な紙料と異物を分離するものであればどのような装置でもよく、例えば、渦流式クリーナー、解放型低振動ロータリースクリーン、密閉圧力型スクリーンなどがあげられる。また、これらのスクリーンとクリーナーを、例えば「抄紙」(紙パルプ技術協会編)に書かれているようなスクリーニングシステムで使用することもできる。 本発明におけるリジェクトのテールとは、複数のスクリーンやクリーナーなどを組み合わせて除塵を行った際、その工程の最も後に発生するリジェクトのことを指す。このリジェクトのテールは、排水処理工程において、単純沈澱、あるいは凝集沈澱により回収される。この汚泥は、通常スラッジと呼ばれている。 本発明のリジェクトとは、これら抄紙工程中のクリーナー、スクリーン等の個々の装置からのリジェクト、及びリジェクトのテールのことを言う。本発明では、リジェクトやリジェクトのテールを排水処理工程を経ずに直接利用することで、製紙スラッジに含まれる様々な異物の混入を回避できる。 本発明におけるリジェクトは、その排出口から直接採取し、糖化反応に用いられる。また、採取したリジェクトは、そのまま糖化反応に供するか、あるいは脱水して、糖化反応に供することができる。また、本発明におけるセルラーゼ反応時のリジェクトの濃度は、高ければ生産される糖濃度も高くなるため好ましく、糖化槽で撹拌できる濃度であればいずれでも良い。一般的には20%以下が好ましいが、連続糖化においては更に高濃度で行うことができる。 リジェクトにセルラーゼを加えて加水分解をさせる反応容器は、使用する酵素の最適条件にあったpH、温度に保つことができるものが好ましく、撹拌装置を具備するものが好ましい。反応容器には、リジェクトの添加装置と、反応後の糖類を含む溶液を回収できる装置を有していることが望ましい。また、反応容器が限外ろ過膜を有し、限外ろ過膜で反応液を処理することで、セルラーゼは反応系内に保持しつつ、連続的に反応容器の外で糖類を回収できる装置も使用することができる。 本発明におけるリジェクトを所望する濃度に希釈するために添加する溶媒は、セルラーゼ反応を妨げるものや、反応後の精製を困難にする無機分やパルプ以外の有機分を多量に含まなければ、どのようなものでも使用できる。また、溶媒中にセルラーゼが含まれていても良い。 本発明におけるリジェクトの糖化反応容器への添加方法は、どのような方法でも構わないが、リジェクトを分散させた溶液を連続的に、あるいは非連続的に添加することができる。また、乾燥や脱水したリジェクトを連続的に、あるいは非連続的に添加することができる。 本発明におけるリジェクト中には、パルプ繊維以外の有機分・無機分が含まれてもよく、例えば、蒸解工程や漂白工程、調成工程で添加される薬品・填料類、原料であるリグノセルロースに由来する成分、原料であるリグノセルロースと薬品との反応物が含まれていてもよい。しかし、反応容器中に残留する残渣を、製紙原料に添加したときに異物となる不純物は、不純物の除去に要する分画手段、また反応後の溶液中から、不純物を除去する工程を簡便にするためのコストを低くするために、少ない方が好ましい。不純物の定量は、例えば、反応後の溶液を濾紙を用いて、ろ過を行った後、Tappi法(T213−om85)に従って夾雑物の大きさと数により測定することができる。 本発明に使用するセルラーゼは特に限定されないが、リジェクトの状況に応じて、それぞれのpHおよび温度条件に適した条件で作用するセルラーゼを選択するのが良い。例えば、反応溶液がpH4から5の酸性領域では、トリコデルマ(Trichoderma)属、アクレモニウム属(Acremonium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ファネロケエテ(Phanerochaete)属、トラメテス属(Trametes)などの由来のセルラーゼ製剤を使用することができ、pH6から7の中性域では、フーミコラ(Humicola)属等由来のセルラーゼを使用することができ、pH8以上のアルカリ域では、バチルス(Bacillus)属等の由来のセルラーゼ製剤を使用することができる。リジェクトあるいはリジェクトのテールの反応に使用するセルラーゼの種類は特に限定されず、通常の微生物の培養によって得たセルラーゼを用いることもできるし、市販のセルラーゼを用いることもできる。セルラーゼの添加量は、所望の時間使用する酵素の特性を勘案して、適量を加える。例えばトリコデルマ属由来の市販酵素の場合、濾紙崩壊活性で0.01〜300単位のセルラーゼを添加し、50℃で糖化し、加水分解により生じたグルコースを分離、採取する。また、セルラーゼには、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリビニルピロリドン、テトラヒドロフリルアルコール、グリセリンや水を含んでもよい。また、上記微生物を培養した際に生産される酵素や代謝産物、例えばセルラーゼ以外のヘミセルラーゼや、リグニン分解酵素などの酵素やタンパク質、あるいは有機酸などを含んでいても良い。 本発明における反応時のpHは、使用するセルラーゼが作用する範囲、および、リジェクトのテールに含まれる無機物を化学変化させない範囲であれば、どのようなpHであっても良い。所望するpHへの調整は、酸を用いる場合であれば、例えば硫酸、リン酸、塩酸、炭酸及び有機酸などを添加することで調整することができる。また、アルカリを用いる場合であれば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウムなどを添加することで、所望するpHに調整して使用することができる。また、緩衝液を使用することで、所望とするpHに調整することができる。 本発明における反応温度は、使用するセルラーゼが作用する範囲であれば、どのような温度でも構わないが、5〜80℃が好ましい。 本発明における反応時間は、反応に使用するセルラーゼの種類、pH、反応温度、リジェクト濃度などの条件によるが、ある時点における糖化率が、それ以上の反応を行っても増加しない状態にまで、反応を行うことが望ましい。例えば、市販セルラーゼであるトリコデルマ由来のセルラーゼを、リジェクトの乾燥重量に対して50質量%、pH5.0、反応温度50℃、リジェクト濃度質量3%攪拌下で反応を行ったところ、12時間で有機分の95%糖化された。 本発明における反応後の溶液は、糖類以外の不純物を除去しない状態でも使用できるが、反応後の溶液を精製し、さらに純度の高い糖を作製することができる。反応液の精製に使用できる装置としては、上記のパルプの精製工程に使用する装置を単独で、あるいは組み合わせて使用することができる。例えば振動スクリーン、密閉加圧式スクリーン、遠心力型スクリーン、渦流クリーナーが使用できる。また、これらのスクリーンとクリーナーを、上記のような多段方式、多重方式、カスケード方式で組み合わせて使用することもできる。また、遠心分離、イオン交換、限外ろ過、逆浸透膜などの方法を用いて反応後の糖類の精製を行うことができる。 以上に記述した条件で、リジェクトのテールを原料として糖化反応を行い、製紙スラッジの糖化反応と比較検討したところ、リジェクトのテールを原料とした方が、不純物がより少なく、糖化の原料として優れていることが明らかになった。 また、糖化反応後には糖液と残渣を常法に従いフィルターで分離することができる。残渣には、白色無機粒子、および未反応のパルプが含まれているが、異物や結束繊維などは非常に少なく、そのまま、あるいは、脱水後、紙料に使用して問題ない。添加量は、目的の紙を製造するために必要な灰分量と同等になる量を添加することができる。例えば、目標紙中灰分15%の紙を作製するために、灰分25%相当分の糖化反応後残渣を投入したパルプを使用して、JIS P 8222に従って手抄き紙を調製した場合、残渣の代わりに炭酸カルシウムを25%添加して手抄き紙を同様に調製した場合とで、同等の紙質が得られた。 以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、もちろん本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、以下の実施例、及び比較例において、%とあるものは、すべて質量%であり、パルプ繊維スラリーへの添加剤の添加量は、絶乾紙料質量に対する質量%で示した。<実施例1> リジェクトのテールからの糖類の生産 国内産広葉樹チップ70%、ユーカリ材30%からなる混合広葉樹チップを原料として、クラフトパルプを製造し、紙を製造している工場の抄紙機前の除塵工程より、発生したリジェクトのテールを採取した。リジェクト中の水分、灰分、ホロセルロース量、セルロース量、リグニン量を下記の試験方法で測定した。表1にその結果を示す。ホロセルロース絶乾重量25g相当のリジェクトのテールを有り姿で159.2g秤りとった。これに、1Mリン酸緩衝液(pH7.0)を100mlと、最終重量が1000gになるように蒸留水を加え、標準離解機(熊谷理機工業(株)製)を用いて、離解を行った。離解後のリジェクト溶液は、5リッター容三角フラスコに移して、振とう培養機(高崎科学器械(株)製)を用いて、50℃、110rpmでプレインキュベーションを行った。20分後、リジェクト溶液の温度が、50℃に達したことを確認してから、セルラーゼREX−35(明治製菓製)2.5g添加して、反応を開始した。サンプリングは、酵素添加直後と、12時間後および24時間後に行った。三角フラスコから1mlマイクロチューブに分取し、100℃で10分間煮沸を行って酵素を失活させた。その後、13000rpm、20分間、微量高速遠心機MX-301((株)トミー精工)を用いて遠心を行い、上清を非特許文献5に記載のフェノール-硫酸法を用いて全糖量の測定を行った。検量線の作製には、グルコースを用いた。リジェクトを反応させた際の糖化率の変化を図1に示す。ここで、糖化率とは、添加したホロセルロース重量に対して生成した糖重量の比率のことをいう。 この結果、24時間後にはリジェクト中のホロセルロースは91%加水分解されていることがわかった。24時間反応後の三角フラスコ中の反応液は、反応液と未反応物を分離するために、ブッフナー漏斗上においた乾燥重量を測定済の濾紙No.5C(Advantec社製)を用いて、吸引ろ過を行った。吸引濾過後の濾紙は、105℃で恒量になるまで乾燥後、重量を測定することで残渣量を測定した。この結果残渣量は、82.6gであり、仕込んだリジェクト中に含まれる灰分量と未反応のホロセルロース量の和とほぼ同じであった。また、この残渣中の灰分は、93.8%であった。また、重量測定後の濾紙を用いて、残渣中の夾雑物の測定を行った。この結果、夾雑物量は1.3mm2/m2であった。残渣量、夾雑物量の結果を表2に示す。<試験法>(1) 水分:Japan Tappi 紙パルプ試験方法No.56に準拠して、測定した。(2) 灰分:Tappi法(T211 om−85)に準拠して測定した。(3) ホロセルロース量:Japan Tappi 紙パルプ試験方法No.65に準拠して測定した。(4) セルロース量:Japan Tappi 紙パルプ試験方法No.60に準拠して測定した。(5) Japan Tappi 紙パルプ試験方法No.61に準拠して測定した。(6) 夾雑物量:Tappi法(T213−om85)に準拠して測定した。<比較例1> ペーパースラッジから糖類の製造 原料には、実施例1のリジェクトの代わりに、実施例1のリジェクトを得た工場の排水を、凝集沈澱処理したクラリファイアより得たペーパースラッジを用いた。原料以外は、実施例1と同様に行った。実施例1と比較例1の成分の比較を表1に示すが、原料として好ましくないリグニン量は約120倍高かった。ペーパースラッジの糖化率の変化を図1に示す。実施例1と比較例1は共に同じ重量のホロセルロースを反応に用いたが、比較例1の糖化率は、実施例1の糖化率の60%程度であった。また、夾雑物量は表2に示すが、1609mm2/m2であった。この量は、実施例1と比べると、約1200倍高く原料として好ましくなかった。 * 対絶乾リジェクト重量 * 対絶乾残渣重量<実施例2> 糖類製造後残渣を製紙原料としての再利用 実験用ナイアガラビーターを用いて、広葉樹晒クラフトパルプと針葉樹晒クラフトパルプを9対1の比率で混合し、カナダ標準フリーネス(CSF)455mlに混合叩解した。このパルプ繊維スラリー(パルプ濃度2.0%)にカチオン化澱粉(商品名:エース K100、王子コンスターチ社製)0.6%、硫酸アルミニウム0.6%、実施例1で作製した糖化反応後残渣27%(灰分として25%相当)、歩留向上剤(商品名:DR−1500、ハイモ社製)を前記の順で添加し紙料とした。この紙料を用いて、実験用角型シートマシンで坪量90g/m2の紙を調製し、プレスにより脱水後、室内にて送風乾燥した。この手抄きシートを23℃、50%RHの条件下24時間調湿した後、品質評価を行った。各物性の測定は、下記の方法に従った。<試験法>(1) 引張強度;JIS P 8113に準拠して測定し、裂断長(km)で示した。(2) 引裂強度:JIS P 8116に準拠して測定した。(3) 白色度;JIS P 8148(ISO 2470)に準拠して測定した。(4) 不透明度;JIS P 8138に準拠して測定した。(5) ベック平滑度;JIS P 8119に準拠して測定した。(6) 紙中灰分測定;JIS P 8128(ISO 2144)に準拠して測定した。<比較例2> 炭酸カルシウムを製紙原料として利用 実施例2の糖化反応後残渣25%の代わりに、炭酸カルシウム(商品名:TP121、奥多摩工業社製)25%を添加し、実施例2と同様にして手抄きシートを作製した。得られた紙を実施例1と同様にして、品質評価を行った。 実施例2と比較例2における成分表を表3に、品質評価結果を表4に示す。 表4から、実施例2と比較例2で、同程度の品質の紙が得られた。したがって、糖化反応後残渣を内添填料として紙料に直接投入して使用することができた。 安価かつ安定に供給可能であり、リグニン含量および不純物含量が低く、通常廃棄されている抄紙工程より発生するリジェクトおよびリジェクトのテールを原料としたセルラーゼの加水分解反応により、不純物の少ない糖類を安価に生産することができる。また、その糖化反応後残渣を内添填料として製紙用パルプに添加して、再利用することができる。実施例1と比較例1の糖化率の変化を示した図である。リグノセルロース由来のケミカルパルプを主成分とする紙の抄紙時に発生するリジェクトを抄紙工程より直接採取し、これにセルラーゼを加えて加水分解を行うことによる糖類の製造と同時に、糖類採取後の残渣を製紙用填料とすることを特徴とする糖類、および製紙用填料の製造方法。請求項1に記載のリジェクトが、抄紙機前の除塵工程におけるリジェクトのテールであることを特徴とする糖類、及び製紙用填料の製造方法。リジェクトを含む排水を他の一般排水と混ぜることなく直接的に採取し、そのまま、あるいは固形分を脱水した後に、加水分解を行うことを特徴とする請求項2に記載の糖類、及び製紙用填料の製造方法。リジェクトを含む排水を他の一般排水と混ぜることなく、かつ凝集沈澱処理を行わず直接採取し、そのまま、あるいはフィルターにより固形分を集めた後に、加水分解を行うことを特徴とする請求項2または3に記載の糖類、及び製紙用填料の製造方法。 【課題】 廃棄物の発生場所の特性を生かし、簡単な工程で経済的に廃棄物を利用する方法を提案することを課題とする。 【解決手段】 リグノセルロース由来のケミカルパルプを主成分とする紙の抄紙時に発生するリジェクトを抄紙工程より直接採取し、これにセルラーゼを加えて加水分解を行うことによる糖類の製造と同時に、糖類採取後の残渣を製紙用填料とすることを特徴とする糖類、および製紙用填料の製造方法。このリジェクトとしては、抄紙機前の除塵工程におけるリジェクトのテールが好ましく、リジェクトを含む排水を他の一般排水と混ぜることなく直接的に採取し、そのまま、あるいは固形分を脱水した後に、加水分解を行うことが良い。 【選択図】 図1


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