生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_ポリフェノール類の製造方法、バニリンの製造方法、プロトカテク酸の製造方法、バニリン酸の製造方法
出願番号:2007025349
年次:2007
IPC分類:C07C 45/00,C07C 47/58,C07C 51/00,C07C 65/03,C07C 65/21


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山本 麻由 藤岡 宏樹 二村 泰弘 山本 健二 JP 2007291065 公開特許公報(A) 20071108 2007025349 20070205 ポリフェノール類の製造方法、バニリンの製造方法、プロトカテク酸の製造方法、バニリン酸の製造方法 山本 健二 502165942 積水化学工業株式会社 000002174 安富 康男 100086586 諸田 勝保 100119529 山本 麻由 藤岡 宏樹 二村 泰弘 山本 健二 JP 2006038382 20060215 JP 2006086295 20060327 C07C 45/00 20060101AFI20071012BHJP C07C 47/58 20060101ALI20071012BHJP C07C 51/00 20060101ALI20071012BHJP C07C 65/03 20060101ALI20071012BHJP C07C 65/21 20060101ALI20071012BHJP JPC07C45/00C07C47/58C07C51/00C07C65/03 AC07C65/21 E 5 1 OL 12 4H006 4H006AA02 4H006AC45 4H006AC46 4H006BB31 4H006BC10 4H006BC11 4H006BJ50 4H006BN30 4H006BP30 4H006BS30本発明は、草食動物の糞からバニリン等のポリフェノール類を高い収率で製造することができるポリフェノール類の製造方法、バニリンの製造方法、プロトカテク酸の製造方法及びシリンガ酸の製造方法に関する。従来、家畜として飼われている牛、馬、ヤギ、羊等の草食動物の排泄物は、その処置方法として有益な手段がなく、野積みによる堆肥化がなされていた。しかしながら、年間8900万t(2001年推計)にもおよぶと言われる家畜排泄物は、糞尿からの悪臭による農家と普通住宅の混在の困難化や、生活廃水や家畜糞尿に起因する水質、土壌汚染等の社会問題となっていた。これらの公害を防ぐため、家畜排泄物の適切なる処理が求められ、平成16年11月1日に「家畜排泄物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」が施行された。管理基準の制定として、糞の処理・保管施設(固形状の家畜排泄物の管理施設)は、床をコンクリートその他不浸透性材料で築造し、適当な覆い及び側壁を有するものとすると述べられ、尿やスラリーの処理・保管施設(液状の家畜排泄物の管理施設)は、コンクリートその他の不浸透性材料で築造した構造の貯留槽とすることと定められている。また、家畜排泄物は、野積みにすることなく施設において管理すること、施設に破損があるときは遅滞なく修繕を行うこと、送風装置等を設置している場合には、その維持管理を適切に行うこと、年間の発生量、処理の方法及び処理の方法別の数量について記録すること等も定められている。そのため、従来行われていた家畜排泄物の野積みによる堆肥化が不可能となった。このような糞尿問題を解決するため、現在、糞の新たな処理法として、高温高圧の水熱反応を用いた発電エネルギー循環を宮崎県川南町や静岡大学研究グループで開発が試みられている。しかしながら、これらの装置は、巨大で移動させるのは不可能な大きさであり、民間で簡易に使用することができないものであったため、より簡易な装置及び方法で家畜排泄物の処理方法が求められている。ところで、バニリン等の植物ポリフェノールは、薬物の材料や食品や化粧品の香料に使用される有用な香料である。しかし、例えば、バニリンは、本来植物バニラから抽出し製造されてきたが、このような方法では、大量の原料から微量しか採ることができないという問題があった。バニリンを工業的に生産する方法としては、例えば、特定の細菌を培養し抽出する方法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2等参照)。しかしながら、これらの方法は、複雑かつ多くの工程を要するため安価にバニリンを生産することは困難であった。特許文献3には、パルプの廃材等のリグニンから超臨界水処理での加水分解による有用な植物ポリフェノールを分解回収する方法が報告されている。しかしながら、特許文献3に記載の方法により得られるバニリン等の植物ポリフェノールの収量はかなり少量であり、多量のバニリン等の植物ポリフェノールを製造する方法とは言い難く、また、目的物である植物ポリフェノール以外の化合物も多く抽出されてしまい、その中から植物ポリフェノールを精製するのに多大な手間を要するといった問題もあった。特開平11−69990号公報特表2003−520580号公報特開平11−292799号公報本発明は、上記現状に鑑み、草食動物の糞からバニリン等のポリフェノール類を高い収率で製造することができるポリフェノール類の製造方法、バニリンの製造方法、プロトカテク酸の製造方法及びシリンガ酸の製造方法を提供することを目的とする。本発明は、草食動物の糞を亜臨界状態の水によって100〜300℃で処理する工程を有するポリフェノール類の製造方法である。また、本発明は、草食動物の糞を亜臨界状態の水によって150〜300℃で処理する工程を有するバニリンの製造方法である。また、本発明は、草食動物の糞を亜臨界状態の水によって150〜250℃で処理する工程を有するプロトカテク酸の製造方法である。また、本発明は、草食動物の糞を亜臨界状態の水によって100〜250℃で処理する工程を有するバニリン酸の製造方法である。また、本発明は、草食動物の糞を亜臨界状態の水によって100〜250℃で処理する工程を有するシリンガ酸の製造方法である。以下に本発明を詳述する。本発明者らは、家畜の糞尿には、家畜の腸内で消化しきれずに排泄される食物繊維(主にリグニン)が多量に含まれていることに着目し、該家畜の糞尿の再資源化、すなわち、高付加価値産物(ポリフェノール類)の生産を目的に鋭意検討した結果、所定の温度範囲内で亜臨界状態の水を用いて家畜の糞を処理することで、高純度のバニリン等のポリフェノール類を極めて高い収率で製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明のポリフェノール類の製造方法は、草食動物の糞を亜臨界状態の水によって処理する工程を有する。本発明のポリフェノール類の製造方法では、草食動物の糞を原料とする。草食動物の糞を原料とすることで、目的とするバニリン等のポリフェノール類を高収率で製造することができる。この理由は、以下の通りであると考えられる。例えば、原料として植物を用い、該植物を直接亜臨界状態の水で処理することによっても、ポリフェノール類を得ることも可能であるが、原料の植物には非常に雑多な物質が複雑に含まれていることから、目的とする物質(バニリン等)を効率よく製造することはできない。これに対し、草食動物は、その胃や腸内の微生物や細菌の酵素等の働きにより、牧草等の飼料が消化される過程でセルロース等が除かれ、原料となるリグニンが精製されるためであると考えられる。上記草食動物としては、家畜として飼育されている動物であれば特に限定されず、例えば、牛、馬、ヤギ、羊等が挙げられる。なかでも、リグニンの精製が単胃動物に比べてより高度となることから、反芻動物であることが好ましく、具体的には、牛、ヤギ、羊等が好適である。本発明のポリフェノール類の製造方法では、上記草食動物の糞を亜臨界状態の水で処理をする。本発明では、処理の媒体として水を用いるため、安価であることに加え、無毒であることから環境に悪影響を与えず、回収等のコストを抑えることができる。更に、亜臨界状態の水を用いることから、亜臨界状態の水中では雑菌やプリオン等の異常タンパク質等の分解が進むため、本発明により得られるポリフェノール類中にこれらの雑菌や異常タンパク質が混入することを防ぐことができる。また、本発明のポリフェノール類の製造方法において、処理の媒体は、主成分が水であることが好ましい。上記亜臨界状態とは、超臨界状態以外の状態の水であって、反応時の圧力、温度をそれぞれP、Tとしたときに、0.1<P/Pc<1.0かつ0.5<T/Tc、又は、0.1<P/Pcかつ0.5<T/Tc<1.0の状態の水を意味する。なお、Pc及びTcは、それぞれ水の臨界圧力及び臨界温度を表し、水は、647K以上かつ22MPa以上において超臨界状態になる。従って、圧力が0.1MPaを超えて22MPa未満かつ温度が324Kを超える場合、又は、圧力が0.1MPaを超えかつ温度が324Kを超えて647K未満である場合に、水は亜臨界状態となる。なお、上記亜臨界状態の水で上記草食動物の糞を処理する際には、必要に応じてメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコールや、二酸化炭素、窒素、酸素、ヘリウム、アルゴン、空気等の常温常圧で気体である流体等を併用してもよい。上記亜臨界状態の水で上記草食動物の糞を処理する際の温度の下限は100℃であり、上限は300℃である。100℃未満であると、目的物であるポリフェノール類以外の物質の生成量が増加してしまい、目的物であるポリフェノール類の生成が煩雑となる。300℃を超えると、目的物であるポリフェノール類が分解又は他の物質に転換してしまう。なお、亜臨界状態の水で処理する際の温度は、上記常温常圧で気体である流体を併用する場合は、併用する流体の種類や量に合わせて適宜変更してもよい。上記亜臨界状態の水で上記草食動物の糞を処理する際の圧力は、水が上述した亜臨界状態を保つ範囲内であれば特に限定されないが、好ましい下限2.7MPa、好ましい上限は6.0MPaである。2.7MPa未満であると、目的物であるポリフェノール類以外の生成量が増加し、目的物であるポリフェノール類の生成が煩雑となることがあり、6.0MPaを超えると、目的物であるポリフェノール類が分解又は他の物質に転換してしまうことがある。上記亜臨界状態の水で上記草食動物の糞を処理する際の時間としては特に限定されず、使用する草食動物の糞の種類等によって適宜最適な時間が選択されるが、例えば、牛糞を用いた場合、好ましい下限は30分/g、好ましい上限は60分/gである。30分/g未満であると、未分解状態の牛糞が多く、目的物であるポリフェノール類の生成が不充分となることがあり、60分/gを超えると目的物であるポリフェノール類の分解又は他の物質に転換してしまうことがある。上記亜臨界状態の水で上記草食動物の糞を処理する時間は、60分/gであることが最も好ましい。上記亜臨界状態の水を用いて上記草食動物の糞を処理する方法としては、例えば、図1に示すような簡単な処理装置を用いて行うことができる。図1(a)は、本発明のポリフェノール類の製造方法で使用可能な処理装置の一例を模式的に示す正面図であり、(b)は、その側面図である。なお、本発明のポリフェノール類の製造方法で使用可能な処理装置は、草食動物の糞と亜臨界状態の水とを上述した条件で処理することができるものであれば、図1に示す構造のものに限定されることはない。図1に示すように、本発明で使用可能な処理装置1は、主に管状の製造容器2と、製造容器2を収容し、半円柱状の下部容器3と上部容器4とが蝶着された構造の収容容器とから構成されている。上記収容容器は、図1(b)に示すように、内部に製造容器2を収容できるよう下部容器3と上部容器4とが対峙する面に溝が、その長さ方向に平行な方向に設けられている。更に、該溝部分の周囲には、収納した製造容器2を加熱するヒーターと温度センサーとが埋め込まれており、上記ヒーターによる製造容器2の加熱温度の制御することができるようになっている。製造容器2は、原料である草食動物の糞と亜臨界状態の水とを反応させるための容器であり、これらを収容するための空間を有する中空構造の容器である。製造容器2は、亜臨界状態の水を用いる過酷な反応条件下で反応を行うため、このような条件に耐えられる材質及び肉厚の容器が使用される。具体的な材質としては、例えば、炭素鋼、Ni、Cr、V、Mo等の特殊鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、ハステロイ、チタン又はこれらにガラス、セラミック、カーバイト等をライニング処理した鋼材、他の金属をクラッドした鋼材等が挙げられる。製造容器2の形状としては特に限定されず、例えば、槽型、管型、特殊形状等任意の形状が挙げられる。なかでも、耐熱、耐圧性能が必要であるので槽型又は管型が好ましい。なお、製造容器2が管型である場合、直線状の管であってもよく、コイル状に巻いた構造の菅や、U字型に折り曲げられた構造の管であってもよい。また、製造容器2内には金属ボールや所定形状の障害物が備えられていることが好ましい。内部に金属ボール等障害物が備えられていると、上記草食動物の糞と亜臨界状態の水との反応時に、亜臨界状態にある水に乱流が生じ攪拌効率が高められ、反応効率を上げることができる。更に、製造容器2が金属ボール等で充填されていると容器を振とうするだけで攪拌効率が高くなり好ましい。製造容器2が上記金属ボールで充填されている場合、その充填率の好ましい下限は20体積%、好ましい上限は80体積%である。この範囲外であると、上述した攪拌効率が悪くなることがある。上記金属ボールの材料としては特に限定されず、例えば、上述した製造容器2を構成する材料と同じ材料が挙げられる。また、その直径は、特に限定されず、例えば、製造容器2の内部空間の大きさに合わせて上述した充填率となるよう適宜調整される。なお、直径の異なる2種以上の金属ボールを用いれば、充填率を向上させることができ、攪拌効率を上げることができるため、より好ましい。また、製造容器2内にはオリフィスがあいている板が備えられていることが好ましい。製造容器2内にオリフィスがあいている板が備えられていると、振とうにより乱流が発生するので攪拌効率が高められ反応効率を上げることができる。このような板の材料としては特に限定されず、例えば、上述した製造容器2を構成する材料と同じ材料が挙げられる。また、上記板の大きさ、並びに、オリフィスの数及び大きさ等は、特に限定されず、製造容器2の内部空間の大きさ等を考慮して適宜決定される。上記収容容器(下部容器3及び上部容器4)を構成する材料としては特に限定されず、例えば、上述した製造容器2と同様の材料や、セラミック等が挙げられる。図1に示した処理装置1を用いて草食動物の糞を亜臨界状態の水で処理するには、まず、下部容器3と上部容器4とに設けられた溝に製造容器2を収納する。このとき、図1(a)及び(b)に示すように、製造容器2の両末端部分は、外部に突出した状態となっている。次に、所定量の水と草食動物の糞とを製造容器2に送り込み、温度センサーで温度をモニタリングしながらヒーターで製造容器2内の水が亜臨界状態となるまで加熱する。そして、所定の時間草食動物の糞と亜臨界状態の水とを反応させた後、氷水等を用いて製造容器2を冷却し、製造容器2内を常温常圧に戻す。なお、本発明のポリフェノール類の製造方法では、上記草食動物の糞と水とを混合し、この混合物を加熱及び加圧して混合物中の水を亜臨界状態にしてもよいし、上記草食動物の糞に亜臨界状態にした水を加えてもよい。すなわち、上述した処理装置1を用いる場合、製造容器2中に草食動物の糞と水とを供給してから加熱及び加圧して水を亜臨界状態としてもよく、製造容器2に供給した草食動物の糞に亜臨界状態の水を供給してもよく、更に、製造容器2に収容した亜臨界状態の水中に草食動物の糞を供給してもよい。本発明により製造されるポリフェノール類としては、使用する草食動物の糞により特に限定されないが、例えば、プロトカテク酸、バニリン酸、シリンガ酸、バニリン等が挙げられる。なお、上記プロトカテク酸は、抗がん剤の原料として使用され、上記バニリンは、香料として使用される物質である。これらのポリフェノール類を亜臨界状態の水を用いて製造する方法もまた、それぞれ本発明の1つである。すなわち、本発明のバニリンの製造方法は、草食動物の糞を亜臨界状態の水によって150〜300℃で処理する工程を有するものである。本発明のプロトカテク酸の製造方法は、草食動物の糞を亜臨界状態の水によって150〜250℃で処理する工程を有するものである。本発明のバニリン酸の製造方法は、草食動物の糞を亜臨界状態の水によって100〜250℃で処理する工程を有するものである。本発明のシリンガ酸の製造方法は、草食動物の糞を亜臨界状態の水によって100〜250℃で処理する工程を有するものである。本発明のポリフェノール類の製造方法による処理後の物質から、ポリフェノール類を同定する方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、処理後の水溶液に高速クロマトグラフィー(カラム:Shim−pak CLC−ODS、島津製作所製)を行い、その後、質量分析(カラム:TSK−GELODS−80TM(4.6×150mm)、東ソー社製、分析装置:Waters社製)する方法等が挙げられる。本発明のポリフェノール類の製造方法により製造されるポリフェノール類の収率としては、原料とする草食動物の糞の種類等によるが、例えば、草食動物の糞として牛糞を用いた場合、プロトカテク酸の収率は5〜10μg/mL、バニリン酸の収率は10〜50μg/mL、シリンガ酸の収率は5〜10μg/mL、バニリンの収率は10〜50μg/mL程度となる。本発明のポリフェノール類の製造方法によると、草食動物の糞に上述した亜臨界状態の水を処理することで、高純度のポリフェノール類を高い収率で製造することができる。また、本発明のポリフェノール類の製造方法により処理を行った後の物質は、窒素に富んでおりかつ滅菌されているため、特に後処理を施すことなく土壌に戻すことができ、更に処理後の物質を肥料として転換することもできる。また、上記亜臨界状態の水に代えて亜臨界又は超臨界状態の二酸化炭素を用いて上記草食動物の糞を処理することにより、上記ポリフェノール類を得ることができる。上記亜臨界又は超臨界状態の二酸化炭素を用いて草食動物の糞を処理する場合、その処理条件は、上述した亜臨界状態の水による処理条件と異なることとなり、例えば、処理温度は、亜臨界状態の水で処理するよりも低温での処理が可能となる。本発明のポリフェノール類の製造方法によれば、培養方法等を用いることなく従来の方法に比べて極めて高い収率で、高純度のバニリン等のポリフェノールを、容易かつ安価に製造することができる。また、本発明のポリフェノール類の製造方法で得られたポリフェノール類は、生花を長持ちさせることができる。以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。(実施例1)牛糞1gと蒸留水4mLを製造容器(管型容器、SUS316製、Tube Bomb Reacter、内容積10mL:AKICO社製)に入れ、200℃、2MPaに加熱及び加圧して亜臨界状態とした水による処理を行った。処理装置は、バッチ式を使用した。60分間反応後、氷水に容器ごとつけて冷却した。得られた水溶液について、高速液体クロマトグラフィーを島津製作所製のカラム「Shim−pak CLC−ODS」を用い、移動相;H2O 2902.95mL、メタノール 31.5mL、プロパノール 5.55mL、酢酸 60mL、酢酸ナトリウム 8.17g、カラム温度50℃、流速1mL/分、検出波長280nmの条件で行った。化合物の同定には、質量分析を行い、東ソー社製のカラム「TSK−GELODS−80TM(4.6×150mm)」を用い、移動相;H2O 2902.95mL、メタノール 31.5mL、プロパノール 5.55mL、酢酸 60mL、酢酸アンモニウム 2.56g、カラム温度50℃、流速1mL/分、検出波長280nmの条件で行った。各ピークにについて質量分析装置(Waters社製)により分析したところ、バニリン33.7μgに相当する質量の物質、プロトカテク酸4.9μgに相当する質量の物質、バニリン酸13.8μgに相当する質量の物質及びシリンガ酸5.8μgに相当する質量の物質の存在を確認できた。(実施例2)処理条件を250℃、3MPaとした亜臨界状態の水を用いた以外は、実施例1と同様に処理を行った。その後、得られた水溶液について、実施例1と同様の条件で高速液体クロマトグラフィーを用い、更に、実施例1と同様にして化合物の同定を行った。各ピークにについて質量分析装置(Waters社製)により分析したところ、バニリン46.2μgに相当する質量の物質の存在を確認できた。(実施例3)ヤギ糞1gを用いた以外は、実施例1と同様にして処理を行った。その後、得られた水溶液について、実施例1と同様の条件で高速液体クロマトグラフィーを行い、更に、実施例1と同様にして化合物の同定を行った。各ピークにについて質量分析装置(Waters社製)により分析したところ、バニリン、バニリン酸に相当する質量の物質の存在を確認できた。(実施例4)馬糞1gを用いた以外は、実施例1と同様にして処理を行った。その後、得られた水溶液について、実施例1と同様の条件で高速液体クロマトグラフィーを行い、更に、実施例1と同様にして化合物の同定を行った。各ピークにについて質量分析装置(Waters社製)により分析したところ、バニリン、バニリン酸に相当する質量の物質の存在を確認できた。(実施例5)牛糞1gと蒸留水4mLを製造容器(管型容器、SUS316製、Tube Bomb Reacter 、内容積10mL:AKICO社製)に入れ、100〜300℃、0.2〜7.1MPaに加熱及び加圧して亜臨界状態とした水による処理を行った。その後、実施例1と同様にして化合物の同定を行い、プロトカテク酸、バニリン酸、シリンガ酸及びバニリンを生成した。生成したバニリン酸、バニリン、シリンガ酸及びプロトカテク酸の生成結果を図2〜5に示した。(比較例1)トラ糞1gを用いた以外は、実施例1と同様の条件で処理を行った。その後、得られた水溶液について、実施例1と同様の条件で高速液体クロマトグラフィーを行い、更に、実施例1と同様にして化合物の同定を行った。その結果、全くピークが観察されなかった。(比較例2)80℃水で処理した以外は、実施例1と同様の条件で処理を行った。その後、得られた水溶液について、実施例1と同様の条件で高速液体クロマトグラフィーを行い、更に、実施例1と同様にして化合物の同定を行った。その結果、バニリン酸及びシリンガ酸に相当する質量の物質の存在は確認できたが、プロトカテク酸及びバニリンの存在は確認できなかった。(比較例3)処理条件を350℃とした超臨界水を用いた以外は、実施例1と同様の条件で処理を行った。その後、得られた水溶液について、実施例1と同様の条件で高速液体クロマトグラフィーを行い、更に、実施例1と同様にして化合物の同定を行った。その結果、プロトカテク酸、シリンガ酸、バニリン酸、バニリンの存在は確認できなかった。(実施例6)牛糞1gと蒸留水4mLを製造容器(管型容器、SUS316製、Tube Bomb Reacter、内容積10mL:AKICO社製)に入れ、250℃、3MPaに加熱、加圧し亜臨界状態とした水により60分間処理を行った。処理装置は、バッチ式を使用した。60分間反応後、氷水に容器ごとつけて冷却した。得られた溶液をそれぞれ5倍希釈、10倍希釈し、ヒャクニチソウ(サンプル数=2)を室温18〜25℃(昼は日光あり、夜は暗い状態)に放置し、目視評価を行った。結果を表1に示した。(比較例4)実施例6で得られた溶液(ポリフェノール類)に代えて、木酢液商品名「ひのき木酢液」(フジメディカル社製)を500倍に希釈した溶液を用いた以外は、実施例6と同様にして評価を行った。結果を表1に示した。(比較例5)実施例6で得られた溶液(ポリフェノール類)に代えて、蒸留水を用いた以外は、実施例6と同様にして評価を行った。結果を表1に示した。本発明によれば、草食動物の糞からバニリン等のポリフェノール類を高い収率で製造することができるポリフェノール類の製造方法、及び、バニリンの製造方法を提供することができる。(a)は、本発明のポリフェノール類の製造方法において使用可能な処理装置の一例を模式的に示す正面図であり、(b)は、(a)に示した処理装置の側面図である。実施例5で生成したバニリン酸の生成結果を示すグラフである。実施例5で生成したバニリンの生成結果を示すグラフである。実施例5で生成したシリンガ酸の生成結果を示すグラフである。実施例5で生成したプロトカテク酸の生成結果を示すグラフである。符号の説明1 処理装置2 製造容器3 下部容器4 上部容器草食動物の糞を亜臨界状態の水によって100〜300℃で処理する工程を有することを特徴とするポリフェノール類の製造方法。草食動物の糞を亜臨界状態の水によって150〜300℃で処理する工程を有することを特徴とするバニリンの製造方法。草食動物の糞を亜臨界状態の水によって150〜250℃で処理する工程を有することを特徴とするプロトカテク酸の製造方法。草食動物の糞を亜臨界状態の水によって100〜250℃で処理する工程を有することを特徴とするバニリン酸の製造方法。草食動物の糞を亜臨界状態の水によって100〜250℃で処理する工程を有することを特徴とするシリンガ酸の製造方法。 【課題】草食動物の糞から高純度のバニリン等のポリフェノール類を高い収率で、容易かつ安価に製造することができるポリフェノール類の製造方法、バニリンの製造方法、プロトカテク酸の製造方法及びシリンガ酸の製造方法を提供する。【解決手段】草食動物の糞を亜臨界状態の水によって100〜300℃で処理する工程を有するポリフェノール類の製造方法。【選択図】図1


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特許公報(B2)_ポリフェノール類の製造方法、バニリンの製造方法、プロトカテク酸の製造方法、バニリン酸の製造方法

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タイトル:特許公報(B2)_ポリフェノール類の製造方法、バニリンの製造方法、プロトカテク酸の製造方法、バニリン酸の製造方法
出願番号:2007025349
年次:2013
IPC分類:C07C 45/00,C07C 47/58,C07C 51/00,C07C 65/03,C07C 65/21


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山本 麻由 藤岡 宏樹 二村 泰弘 山本 健二 JP 5122827 特許公報(B2) 20121102 2007025349 20070205 ポリフェノール類の製造方法、バニリンの製造方法、プロトカテク酸の製造方法、バニリン酸の製造方法 山本 健二 502165942 宮崎 伊章 100104581 山本 麻由 藤岡 宏樹 二村 泰弘 山本 健二 JP 2006038382 20060215 JP 2006086295 20060327 20130116 C07C 45/00 20060101AFI20121220BHJP C07C 47/58 20060101ALI20121220BHJP C07C 51/00 20060101ALI20121220BHJP C07C 65/03 20060101ALI20121220BHJP C07C 65/21 20060101ALI20121220BHJP JPC07C45/00C07C47/58C07C51/00C07C65/03 AC07C65/21 AC07C65/21 E C07C 37/54 C07C 45/80 C07C 47/575 C07C 47/58 C07C 51/00 C07C 65/03 C07C 65/21 C07B 61/00 C07B 63/00 C02F 1/00 B09B 1/00−5/00 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) CAplus(STN) REGISTRY(STN) 特開平11−292799(JP,A) 特開平09−168367(JP,A) 特開2003−116390(JP,A) 特開2004−173688(JP,A) 特開2002−113348(JP,A) Scientific Agriculture,Vol.32,p.502-506 (1952). 5 2007291065 20071108 11 20091117 小久保 敦規本発明は、草食動物の糞からバニリン等のポリフェノール類を高い収率で製造することができるポリフェノール類の製造方法、バニリンの製造方法、プロトカテク酸の製造方法及びシリンガ酸の製造方法に関する。従来、家畜として飼われている牛、馬、ヤギ、羊等の草食動物の排泄物は、その処置方法として有益な手段がなく、野積みによる堆肥化がなされていた。しかしながら、年間8900万t(2001年推計)にもおよぶと言われる家畜排泄物は、糞尿からの悪臭による農家と普通住宅の混在の困難化や、生活廃水や家畜糞尿に起因する水質、土壌汚染等の社会問題となっていた。これらの公害を防ぐため、家畜排泄物の適切なる処理が求められ、平成16年11月1日に「家畜排泄物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」が施行された。管理基準の制定として、糞の処理・保管施設(固形状の家畜排泄物の管理施設)は、床をコンクリートその他不浸透性材料で築造し、適当な覆い及び側壁を有するものとすると述べられ、尿やスラリーの処理・保管施設(液状の家畜排泄物の管理施設)は、コンクリートその他の不浸透性材料で築造した構造の貯留槽とすることと定められている。また、家畜排泄物は、野積みにすることなく施設において管理すること、施設に破損があるときは遅滞なく修繕を行うこと、送風装置等を設置している場合には、その維持管理を適切に行うこと、年間の発生量、処理の方法及び処理の方法別の数量について記録すること等も定められている。そのため、従来行われていた家畜排泄物の野積みによる堆肥化が不可能となった。このような糞尿問題を解決するため、現在、糞の新たな処理法として、高温高圧の水熱反応を用いた発電エネルギー循環を宮崎県川南町や静岡大学研究グループで開発が試みられている。しかしながら、これらの装置は、巨大で移動させるのは不可能な大きさであり、民間で簡易に使用することができないものであったため、より簡易な装置及び方法で家畜排泄物の処理方法が求められている。ところで、バニリン等の植物ポリフェノールは、薬物の材料や食品や化粧品の香料に使用される有用な香料である。しかし、例えば、バニリンは、本来植物バニラから抽出し製造されてきたが、このような方法では、大量の原料から微量しか採ることができないという問題があった。バニリンを工業的に生産する方法としては、例えば、特定の細菌を培養し抽出する方法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2等参照)。しかしながら、これらの方法は、複雑かつ多くの工程を要するため安価にバニリンを生産することは困難であった。特許文献3には、パルプの廃材等のリグニンから超臨界水処理での加水分解による有用な植物ポリフェノールを分解回収する方法が報告されている。しかしながら、特許文献3に記載の方法により得られるバニリン等の植物ポリフェノールの収量はかなり少量であり、多量のバニリン等の植物ポリフェノールを製造する方法とは言い難く、また、目的物である植物ポリフェノール以外の化合物も多く抽出されてしまい、その中から植物ポリフェノールを精製するのに多大な手間を要するといった問題もあった。特開平11−69990号公報特表2003−520580号公報特開平11−292799号公報本発明は、上記現状に鑑み、草食動物の糞からバニリン等のポリフェノール類を高い収率で製造することができるポリフェノール類の製造方法、バニリンの製造方法、プロトカテク酸の製造方法及びシリンガ酸の製造方法を提供することを目的とする。本発明は、草食動物の糞を亜臨界状態の水によって100〜300℃で処理する工程を有するポリフェノール類の製造方法である。また、本発明は、草食動物の糞を亜臨界状態の水によって150〜300℃で処理する工程を有するバニリンの製造方法である。また、本発明は、草食動物の糞を亜臨界状態の水によって150〜250℃で処理する工程を有するプロトカテク酸の製造方法である。また、本発明は、草食動物の糞を亜臨界状態の水によって100〜250℃で処理する工程を有するバニリン酸の製造方法である。また、本発明は、草食動物の糞を亜臨界状態の水によって100〜250℃で処理する工程を有するシリンガ酸の製造方法である。以下に本発明を詳述する。本発明者らは、家畜の糞尿には、家畜の腸内で消化しきれずに排泄される食物繊維(主にリグニン)が多量に含まれていることに着目し、該家畜の糞尿の再資源化、すなわち、高付加価値産物(ポリフェノール類)の生産を目的に鋭意検討した結果、所定の温度範囲内で亜臨界状態の水を用いて家畜の糞を処理することで、高純度のバニリン等のポリフェノール類を極めて高い収率で製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明のポリフェノール類の製造方法は、草食動物の糞を亜臨界状態の水によって処理する工程を有する。本発明のポリフェノール類の製造方法では、草食動物の糞を原料とする。草食動物の糞を原料とすることで、目的とするバニリン等のポリフェノール類を高収率で製造することができる。この理由は、以下の通りであると考えられる。例えば、原料として植物を用い、該植物を直接亜臨界状態の水で処理することによっても、ポリフェノール類を得ることも可能であるが、原料の植物には非常に雑多な物質が複雑に含まれていることから、目的とする物質(バニリン等)を効率よく製造することはできない。これに対し、草食動物は、その胃や腸内の微生物や細菌の酵素等の働きにより、牧草等の飼料が消化される過程でセルロース等が除かれ、原料となるリグニンが精製されるためであると考えられる。上記草食動物としては、家畜として飼育されている動物であれば特に限定されず、例えば、牛、馬、ヤギ、羊等が挙げられる。なかでも、リグニンの精製が単胃動物に比べてより高度となることから、反芻動物であることが好ましく、具体的には、牛、ヤギ、羊等が好適である。本発明のポリフェノール類の製造方法では、上記草食動物の糞を亜臨界状態の水で処理をする。本発明では、処理の媒体として水を用いるため、安価であることに加え、無毒であることから環境に悪影響を与えず、回収等のコストを抑えることができる。更に、亜臨界状態の水を用いることから、亜臨界状態の水中では雑菌やプリオン等の異常タンパク質等の分解が進むため、本発明により得られるポリフェノール類中にこれらの雑菌や異常タンパク質が混入することを防ぐことができる。また、本発明のポリフェノール類の製造方法において、処理の媒体は、主成分が水であることが好ましい。上記亜臨界状態とは、超臨界状態以外の状態の水であって、反応時の圧力、温度をそれぞれP、Tとしたときに、0.1<P/Pc<1.0かつ0.5<T/Tc、又は、0.1<P/Pcかつ0.5<T/Tc<1.0の状態の水を意味する。なお、Pc及びTcは、それぞれ水の臨界圧力及び臨界温度を表し、水は、647K以上かつ22MPa以上において超臨界状態になる。従って、圧力が0.1MPaを超えて22MPa未満かつ温度が324Kを超える場合、又は、圧力が0.1MPaを超えかつ温度が324Kを超えて647K未満である場合に、水は亜臨界状態となる。なお、上記亜臨界状態の水で上記草食動物の糞を処理する際には、必要に応じてメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコールや、二酸化炭素、窒素、酸素、ヘリウム、アルゴン、空気等の常温常圧で気体である流体等を併用してもよい。上記亜臨界状態の水で上記草食動物の糞を処理する際の温度の下限は100℃であり、上限は300℃である。100℃未満であると、目的物であるポリフェノール類以外の物質の生成量が増加してしまい、目的物であるポリフェノール類の生成が煩雑となる。300℃を超えると、目的物であるポリフェノール類が分解又は他の物質に転換してしまう。なお、亜臨界状態の水で処理する際の温度は、上記常温常圧で気体である流体を併用する場合は、併用する流体の種類や量に合わせて適宜変更してもよい。上記亜臨界状態の水で上記草食動物の糞を処理する際の圧力は、水が上述した亜臨界状態を保つ範囲内であれば特に限定されないが、好ましい下限2.7MPa、好ましい上限は6.0MPaである。2.7MPa未満であると、目的物であるポリフェノール類以外の生成量が増加し、目的物であるポリフェノール類の生成が煩雑となることがあり、6.0MPaを超えると、目的物であるポリフェノール類が分解又は他の物質に転換してしまうことがある。上記亜臨界状態の水で上記草食動物の糞を処理する際の時間としては特に限定されず、使用する草食動物の糞の種類等によって適宜最適な時間が選択されるが、例えば、牛糞を用いた場合、好ましい下限は30分/g、好ましい上限は60分/gである。30分/g未満であると、未分解状態の牛糞が多く、目的物であるポリフェノール類の生成が不充分となることがあり、60分/gを超えると目的物であるポリフェノール類の分解又は他の物質に転換してしまうことがある。上記亜臨界状態の水で上記草食動物の糞を処理する時間は、60分/gであることが最も好ましい。上記亜臨界状態の水を用いて上記草食動物の糞を処理する方法としては、例えば、図1に示すような簡単な処理装置を用いて行うことができる。図1(a)は、本発明のポリフェノール類の製造方法で使用可能な処理装置の一例を模式的に示す正面図であり、(b)は、その側面図である。なお、本発明のポリフェノール類の製造方法で使用可能な処理装置は、草食動物の糞と亜臨界状態の水とを上述した条件で処理することができるものであれば、図1に示す構造のものに限定されることはない。図1に示すように、本発明で使用可能な処理装置1は、主に管状の製造容器2と、製造容器2を収容し、半円柱状の下部容器3と上部容器4とが蝶着された構造の収容容器とから構成されている。上記収容容器は、図1(b)に示すように、内部に製造容器2を収容できるよう下部容器3と上部容器4とが対峙する面に溝が、その長さ方向に平行な方向に設けられている。更に、該溝部分の周囲には、収納した製造容器2を加熱するヒーターと温度センサーとが埋め込まれており、上記ヒーターによる製造容器2の加熱温度の制御することができるようになっている。製造容器2は、原料である草食動物の糞と亜臨界状態の水とを反応させるための容器であり、これらを収容するための空間を有する中空構造の容器である。製造容器2は、亜臨界状態の水を用いる過酷な反応条件下で反応を行うため、このような条件に耐えられる材質及び肉厚の容器が使用される。具体的な材質としては、例えば、炭素鋼、Ni、Cr、V、Mo等の特殊鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、ハステロイ、チタン又はこれらにガラス、セラミック、カーバイト等をライニング処理した鋼材、他の金属をクラッドした鋼材等が挙げられる。製造容器2の形状としては特に限定されず、例えば、槽型、管型、特殊形状等任意の形状が挙げられる。なかでも、耐熱、耐圧性能が必要であるので槽型又は管型が好ましい。なお、製造容器2が管型である場合、直線状の管であってもよく、コイル状に巻いた構造の菅や、U字型に折り曲げられた構造の管であってもよい。また、製造容器2内には金属ボールや所定形状の障害物が備えられていることが好ましい。内部に金属ボール等障害物が備えられていると、上記草食動物の糞と亜臨界状態の水との反応時に、亜臨界状態にある水に乱流が生じ攪拌効率が高められ、反応効率を上げることができる。更に、製造容器2が金属ボール等で充填されていると容器を振とうするだけで攪拌効率が高くなり好ましい。製造容器2が上記金属ボールで充填されている場合、その充填率の好ましい下限は20体積%、好ましい上限は80体積%である。この範囲外であると、上述した攪拌効率が悪くなることがある。上記金属ボールの材料としては特に限定されず、例えば、上述した製造容器2を構成する材料と同じ材料が挙げられる。また、その直径は、特に限定されず、例えば、製造容器2の内部空間の大きさに合わせて上述した充填率となるよう適宜調整される。なお、直径の異なる2種以上の金属ボールを用いれば、充填率を向上させることができ、攪拌効率を上げることができるため、より好ましい。また、製造容器2内にはオリフィスがあいている板が備えられていることが好ましい。製造容器2内にオリフィスがあいている板が備えられていると、振とうにより乱流が発生するので攪拌効率が高められ反応効率を上げることができる。このような板の材料としては特に限定されず、例えば、上述した製造容器2を構成する材料と同じ材料が挙げられる。また、上記板の大きさ、並びに、オリフィスの数及び大きさ等は、特に限定されず、製造容器2の内部空間の大きさ等を考慮して適宜決定される。上記収容容器(下部容器3及び上部容器4)を構成する材料としては特に限定されず、例えば、上述した製造容器2と同様の材料や、セラミック等が挙げられる。図1に示した処理装置1を用いて草食動物の糞を亜臨界状態の水で処理するには、まず、下部容器3と上部容器4とに設けられた溝に製造容器2を収納する。このとき、図1(a)及び(b)に示すように、製造容器2の両末端部分は、外部に突出した状態となっている。次に、所定量の水と草食動物の糞とを製造容器2に送り込み、温度センサーで温度をモニタリングしながらヒーターで製造容器2内の水が亜臨界状態となるまで加熱する。そして、所定の時間草食動物の糞と亜臨界状態の水とを反応させた後、氷水等を用いて製造容器2を冷却し、製造容器2内を常温常圧に戻す。なお、本発明のポリフェノール類の製造方法では、上記草食動物の糞と水とを混合し、この混合物を加熱及び加圧して混合物中の水を亜臨界状態にしてもよいし、上記草食動物の糞に亜臨界状態にした水を加えてもよい。すなわち、上述した処理装置1を用いる場合、製造容器2中に草食動物の糞と水とを供給してから加熱及び加圧して水を亜臨界状態としてもよく、製造容器2に供給した草食動物の糞に亜臨界状態の水を供給してもよく、更に、製造容器2に収容した亜臨界状態の水中に草食動物の糞を供給してもよい。本発明により製造されるポリフェノール類としては、使用する草食動物の糞により特に限定されないが、例えば、プロトカテク酸、バニリン酸、シリンガ酸、バニリン等が挙げられる。なお、上記プロトカテク酸は、抗がん剤の原料として使用され、上記バニリンは、香料として使用される物質である。これらのポリフェノール類を亜臨界状態の水を用いて製造する方法もまた、それぞれ本発明の1つである。すなわち、本発明のバニリンの製造方法は、草食動物の糞を亜臨界状態の水によって150〜300℃で処理する工程を有するものである。本発明のプロトカテク酸の製造方法は、草食動物の糞を亜臨界状態の水によって150〜250℃で処理する工程を有するものである。本発明のバニリン酸の製造方法は、草食動物の糞を亜臨界状態の水によって100〜250℃で処理する工程を有するものである。本発明のシリンガ酸の製造方法は、草食動物の糞を亜臨界状態の水によって100〜250℃で処理する工程を有するものである。本発明のポリフェノール類の製造方法による処理後の物質から、ポリフェノール類を同定する方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、処理後の水溶液に高速クロマトグラフィー(カラム:Shim−pak CLC−ODS、島津製作所製)を行い、その後、質量分析(カラム:TSK−GELODS−80TM(4.6×150mm)、東ソー社製、分析装置:Waters社製)する方法等が挙げられる。本発明のポリフェノール類の製造方法により製造されるポリフェノール類の収率としては、原料とする草食動物の糞の種類等によるが、例えば、草食動物の糞として牛糞を用いた場合、プロトカテク酸の収率は5〜10μg/mL、バニリン酸の収率は10〜50μg/mL、シリンガ酸の収率は5〜10μg/mL、バニリンの収率は10〜50μg/mL程度となる。本発明のポリフェノール類の製造方法によると、草食動物の糞に上述した亜臨界状態の水を処理することで、高純度のポリフェノール類を高い収率で製造することができる。また、本発明のポリフェノール類の製造方法により処理を行った後の物質は、窒素に富んでおりかつ滅菌されているため、特に後処理を施すことなく土壌に戻すことができ、更に処理後の物質を肥料として転換することもできる。また、上記亜臨界状態の水に代えて亜臨界又は超臨界状態の二酸化炭素を用いて上記草食動物の糞を処理することにより、上記ポリフェノール類を得ることができる。上記亜臨界又は超臨界状態の二酸化炭素を用いて草食動物の糞を処理する場合、その処理条件は、上述した亜臨界状態の水による処理条件と異なることとなり、例えば、処理温度は、亜臨界状態の水で処理するよりも低温での処理が可能となる。本発明のポリフェノール類の製造方法によれば、培養方法等を用いることなく従来の方法に比べて極めて高い収率で、高純度のバニリン等のポリフェノールを、容易かつ安価に製造することができる。また、本発明のポリフェノール類の製造方法で得られたポリフェノール類は、生花を長持ちさせることができる。以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。(実施例1)牛糞1gと蒸留水4mLを製造容器(管型容器、SUS316製、Tube Bomb Reacter、内容積10mL:AKICO社製)に入れ、200℃、2MPaに加熱及び加圧して亜臨界状態とした水による処理を行った。処理装置は、バッチ式を使用した。60分間反応後、氷水に容器ごとつけて冷却した。得られた水溶液について、高速液体クロマトグラフィーを島津製作所製のカラム「Shim−pak CLC−ODS」を用い、移動相;H2O 2902.95mL、メタノール 31.5mL、プロパノール 5.55mL、酢酸 60mL、酢酸ナトリウム 8.17g、カラム温度50℃、流速1mL/分、検出波長280nmの条件で行った。化合物の同定には、質量分析を行い、東ソー社製のカラム「TSK−GELODS−80TM(4.6×150mm)」を用い、移動相;H2O 2902.95mL、メタノール 31.5mL、プロパノール 5.55mL、酢酸 60mL、酢酸アンモニウム 2.56g、カラム温度50℃、流速1mL/分、検出波長280nmの条件で行った。各ピークにについて質量分析装置(Waters社製)により分析したところ、バニリン33.7μgに相当する質量の物質、プロトカテク酸4.9μgに相当する質量の物質、バニリン酸13.8μgに相当する質量の物質及びシリンガ酸5.8μgに相当する質量の物質の存在を確認できた。(実施例2)処理条件を250℃、3MPaとした亜臨界状態の水を用いた以外は、実施例1と同様に処理を行った。その後、得られた水溶液について、実施例1と同様の条件で高速液体クロマトグラフィーを用い、更に、実施例1と同様にして化合物の同定を行った。各ピークにについて質量分析装置(Waters社製)により分析したところ、バニリン46.2μgに相当する質量の物質の存在を確認できた。(実施例3)ヤギ糞1gを用いた以外は、実施例1と同様にして処理を行った。その後、得られた水溶液について、実施例1と同様の条件で高速液体クロマトグラフィーを行い、更に、実施例1と同様にして化合物の同定を行った。各ピークにについて質量分析装置(Waters社製)により分析したところ、バニリン、バニリン酸に相当する質量の物質の存在を確認できた。(実施例4)馬糞1gを用いた以外は、実施例1と同様にして処理を行った。その後、得られた水溶液について、実施例1と同様の条件で高速液体クロマトグラフィーを行い、更に、実施例1と同様にして化合物の同定を行った。各ピークにについて質量分析装置(Waters社製)により分析したところ、バニリン、バニリン酸に相当する質量の物質の存在を確認できた。(実施例5)牛糞1gと蒸留水4mLを製造容器(管型容器、SUS316製、Tube Bomb Reacter 、内容積10mL:AKICO社製)に入れ、100〜300℃、0.2〜7.1MPaに加熱及び加圧して亜臨界状態とした水による処理を行った。その後、実施例1と同様にして化合物の同定を行い、プロトカテク酸、バニリン酸、シリンガ酸及びバニリンを生成した。生成したバニリン酸、バニリン、シリンガ酸及びプロトカテク酸の生成結果を図2〜5に示した。(比較例1)トラ糞1gを用いた以外は、実施例1と同様の条件で処理を行った。その後、得られた水溶液について、実施例1と同様の条件で高速液体クロマトグラフィーを行い、更に、実施例1と同様にして化合物の同定を行った。その結果、全くピークが観察されなかった。(比較例2)80℃水で処理した以外は、実施例1と同様の条件で処理を行った。その後、得られた水溶液について、実施例1と同様の条件で高速液体クロマトグラフィーを行い、更に、実施例1と同様にして化合物の同定を行った。その結果、バニリン酸及びシリンガ酸に相当する質量の物質の存在は確認できたが、プロトカテク酸及びバニリンの存在は確認できなかった。(比較例3)処理条件を350℃とした超臨界水を用いた以外は、実施例1と同様の条件で処理を行った。その後、得られた水溶液について、実施例1と同様の条件で高速液体クロマトグラフィーを行い、更に、実施例1と同様にして化合物の同定を行った。その結果、プロトカテク酸、シリンガ酸、バニリン酸、バニリンの存在は確認できなかった。(実施例6)牛糞1gと蒸留水4mLを製造容器(管型容器、SUS316製、Tube Bomb Reacter、内容積10mL:AKICO社製)に入れ、250℃、3MPaに加熱、加圧し亜臨界状態とした水により60分間処理を行った。処理装置は、バッチ式を使用した。60分間反応後、氷水に容器ごとつけて冷却した。得られた溶液をそれぞれ5倍希釈、10倍希釈し、ヒャクニチソウ(サンプル数=2)を室温18〜25℃(昼は日光あり、夜は暗い状態)に放置し、目視評価を行った。結果を表1に示した。(比較例4)実施例6で得られた溶液(ポリフェノール類)に代えて、木酢液商品名「ひのき木酢液」(フジメディカル社製)を500倍に希釈した溶液を用いた以外は、実施例6と同様にして評価を行った。結果を表1に示した。(比較例5)実施例6で得られた溶液(ポリフェノール類)に代えて、蒸留水を用いた以外は、実施例6と同様にして評価を行った。結果を表1に示した。本発明によれば、草食動物の糞からバニリン等のポリフェノール類を高い収率で製造することができるポリフェノール類の製造方法、及び、バニリンの製造方法を提供することができる。(a)は、本発明のポリフェノール類の製造方法において使用可能な処理装置の一例を模式的に示す正面図であり、(b)は、(a)に示した処理装置の側面図である。実施例5で生成したバニリン酸の生成結果を示すグラフである。実施例5で生成したバニリンの生成結果を示すグラフである。実施例5で生成したシリンガ酸の生成結果を示すグラフである。実施例5で生成したプロトカテク酸の生成結果を示すグラフである。符号の説明1 処理装置2 製造容器3 下部容器4 上部容器草食動物の糞を亜臨界状態の水によって100〜300℃、6.0MPa以下で処理する工程を有することを特徴とするポリフェノール類の製造方法。草食動物の糞を亜臨界状態の水によって150〜300℃、6.0MPa以下で処理する工程を有することを特徴とするバニリンの製造方法。草食動物の糞を亜臨界状態の水によって150〜250℃、6.0MPa以下で処理する工程を有することを特徴とするプロトカテク酸の製造方法。草食動物の糞を亜臨界状態の水によって100〜250℃、6.0MPa以下で処理する工程を有することを特徴とするバニリン酸の製造方法。草食動物の糞を亜臨界状態の水によって100〜250℃、6.0MPa以下で処理する工程を有することを特徴とするシリンガ酸の製造方法。


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