生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_蒸留廃液の濃縮方法
出願番号:2007024500
年次:2008
IPC分類:C02F 1/04,B01D 1/26,C12G 3/12,A23K 1/06


特許情報キャッシュ

林 國興 JP 2008188520 公開特許公報(A) 20080821 2007024500 20070202 蒸留廃液の濃縮方法 国立大学法人 鹿児島大学 504258527 國分 孝悦 100090273 林 國興 C02F 1/04 20060101AFI20080725BHJP B01D 1/26 20060101ALI20080725BHJP C12G 3/12 20060101ALI20080725BHJP A23K 1/06 20060101ALI20080725BHJP JPC02F1/04 DB01D1/26 AC12G3/12A23K1/06 2 1 OL 8 2B150 4B015 4D034 4D076 2B150CC07 4B015NB01 4B015NP06 4D034AA26 4D034BA01 4D034CA14 4D076AA03 4D076AA14 4D076AA24 4D076BA08 4D076BB23 4D076BC01 4D076DA25 4D076DA35 4D076EA12Z 4D076GA10 4D076HA06 4D076JA10 本発明は蒸留廃液の濃縮方法に関し、特に、蒸留濃縮廃液を飼料化するために用いて好適な技術に関する。 近年、焼酎の生産量が飛躍的に増大し、それに伴って莫大な焼酎粕が排出されるようになった。焼酎粕の処理は、従来は海洋投棄することにより安易に解決されていたが、近年、環境への配慮などにより法的規制が厳しくなり、陸上での処理を余儀なくされている。 焼酎粕を処理する方法としては、焼酎粕を鶏(ブロイラー、産卵鶏)、豚、または牛の配合飼料に用いて処理する方法が挙げられ、現在すでに多くの焼酎粕処理工場が建設されている。焼酎粕を飼料化するためには、まず、固液分離法により焼酎粕を固体部分と液体部分とに分離する。固体部分に関しては、多くの有機成分が含まれており、そのまま飼料化して用いることができる。 一方、液体部分に関しては、現在は、焼酎粕廃液は水分が70wt%程度に濃縮されて廃棄されている。それ以上に濃縮しようとすると、焼酎粕濃縮廃液の粘度が急激に上昇し、流動性が失われてしまう。その一方で、液体部分には多くの有機成分が含まれているため、液体部分(以下、焼酎粕廃液と称す)を飼料に利用するための様々な研究もなされている。 焼酎粕廃液には、蛋白質やNFE(炭水化物)などが多く含まれており、さらには多量のポリフェノールを含んでいる。飼料に焼酎粕濃縮廃液を添加することができれば、肉に抗酸化性を付与し、脂肪の酸化を抑制することにより、風味の劣化を抑制し、ドリップロスを少なくすることができる。したがって、機能性を有する配合飼料原料として使用することができる。また、焼酎粕のみならず、ウイスキー、ブランデー、あるいはバイオエタノールの製造によって生じる蒸留粕(焼酎粕も含む)についても同様に、固体分離法により液体部分を分離すると、液体部分(蒸留廃液)には、蛋白質やNFE(炭水化物)などが多く含まれており、飼料に蒸留濃縮廃液を添加することができれば、そのまま飼料化して用いることができる。 但し、水分が70wt%程度の蒸留濃縮廃液を飼料に添加すると、飼料全体の水分が上昇し、飼料が固まりやすくなってしまう。例えば、水分が70wt%程度になるまで濃縮した蒸留濃縮廃液を飼料に3wt%添加すると、飼料全体の水分が2.1%増加し、飼料が固まりやすくなってしまう。 これに対し、水分が50wt%程度になるまで濃縮した蒸留濃縮廃液を用いて、水分が70wt%程度の蒸留濃縮廃液を用いた場合と同等の効果を得るためには、飼料に2.1wt%添加するだけでよく、飼料全体の水分は1.1%しか増加せず、飼料の性状にはほとんど影響を及ぼさない。そこで、この蒸留廃液を水分が50wt%程度にまで濃縮することができれば、飼料の水分をかびが発生せず固まりにくい範囲内の水分に抑えることができる。 そこで、濃縮液の流動性を向上させて濃縮する方法について、例えば、特許文献1には、焼酎粕廃液に油脂を添加して濃縮する技術が開示されている。特開平4−16277号公報 しかしながら、特許文献1に記載の技術は、専ら焼酎粕廃液から水分を取り除くために用いられる技術であるため、様々な不都合が生じている。例えば、特許文献1に記載の蒸発濃縮装置では、焼酎粕廃液の濃縮を行う際に加熱乾燥させるため、焼酎粕廃液に含まれる蛋白質の熱変性が起こり、焼酎粕廃液の栄養価が損なわれてしまう。また、加熱乾燥を行う際に焼酎粕廃液及び添加した油脂の酸化が起こり、焼酎粕廃液の栄養価がさらに損なわれてしまう。 本発明は前述の問題点に鑑み、配合飼料原料として使用できる程度に蒸留廃液を濃縮できるとともに蒸留廃液の栄養価を維持できるようにすることを目的としている。 本発明の蒸留廃液の濃縮方法は、蒸留粕から固体部分が取り除かれた蒸留廃液に油脂を加える工程と、前記油脂を加えた蒸留廃液を水蒸気雰囲気において80℃以下の温度で濃縮する工程とを有することを特徴とする。なお、蒸留粕とは、焼酎、ウイスキー、ブランデー等の蒸留酒、あるいはバイオエタノールの製造によって生じる粕を指す。 本発明によれば、蒸留廃液に油脂を添加して水蒸気雰囲気において80℃以下の温度で濃縮するようにした。これにより、配合飼料原料として使用できる程度に蒸留廃液を濃縮できるとともに蒸留廃液の栄養価を維持することができる。したがって、濃縮した蒸留濃縮廃液を飼料に添加すれば、風味の劣化を抑制し、ドリップロスを少なくすることができる。 本発明者は、鋭意研究の成果、蒸留廃液に油脂を添加して水蒸気雰囲気において80℃以下の温度で濃縮することにより、蒸留廃液の栄養価が損なわれない蒸留濃縮廃液を作製することができることを見いだした。 また、本発明の濃縮方法によって得られる蒸留濃縮廃液には、添加した油脂がそのまま含まれている。油脂を添加しないと、1/20の容積に濃縮したあたりから蒸留廃液の粘度が急激に上昇してしまうため、水分を70wt%程度に濃縮するのが限界である。それ以上に濃縮しようとすると、蒸留廃液が固化してしまい、濃縮装置から取り出すこと、及び運送時の積み下ろしが極めて困難になるとともに、飼料への添加が困難になる。添加する油脂は粘度を低下させる機能を有しており、油脂を含んだ蒸留廃液を濃縮すれば、水分を50wt%程度に濃縮しても固化しない程度に粘度を抑えることができ、最大で水分が約25wt%程度まで濃縮することができる。 なお、添加する油脂は、植物性油脂または動物性油脂のどちらでもよく、蒸留廃液に対して加える油脂が0.2wt%未満の場合は、粘度を低下させる効果が不十分であり、5.0wt%を超えると、飼料原料として配合できなくなる。したがって、添加する油脂の量は、蒸留廃液に対して0.2〜5.0wt%であることが好ましい。 また、本発明の濃縮方法では、水蒸気雰囲気において80℃以下の温度で濃縮している。80℃以下の温度で濃縮する理由としては、蒸留廃液に含まれる蛋白質が80℃以上で熱変性を起こしてしまうため、濃縮時の温度は80℃以下である必要がある。また、水蒸気雰囲気において嫌気的条件で濃縮を行う理由としては、酸素が含まれている状態であると、蒸留廃液に含まれている成分及び添加した油脂の酸化が起こり、蒸留廃液の栄養価が損なわれてしまう。したがって、酸素が極力含まれていない雰囲気で濃縮を行う必要がある。 次に、本発明の蒸留廃液の濃縮方法についての実施例として焼酎粕を濃縮する例について説明する。 まず、焼酎粕廃液を抽出するために、焼酎粕を固液分離法により固体部分と液体部分とに分離した。この時に、分離された液体部分(焼酎粕廃液)の水分量を測定したところ、水分は98wt%であり、乾物含量は2wt%であった。 次に、速度調節可能なポンプを用いて焼酎粕廃液に対して2.0wt%の割合で飼料用油脂(チキンオイル)を、抽出した焼酎粕廃液とともに蒸発缶に送り込んだ。図1は、本実施例で用いた3重効用濃縮装置の外観構造の概略を示す図であり、図2は、蒸発缶の詳細な構造を示す拡大図である。 図1に示すように、供給液(飼料用油脂が添加された焼酎粕廃液)1が最初に第1の蒸発缶6に送られる。第1の蒸発缶6内の雰囲気は、第2の蒸発缶7と第3の蒸発缶8とを経由して送られる水蒸気ガスの加熱蒸気3で満たされている。加熱蒸気3は常に第3の蒸発缶8に供給され、そして、第2の蒸発缶7を経由して第1の蒸発缶6から放出され、冷却水4によって冷却されて回収される。なお、第1〜第3の蒸気缶6〜8内の温度は、70℃〜80℃に保たれている。 そして、図2に示すように、第1及び第2の蒸発缶6、7を経由して濃縮された供給液1が最終的に第3の蒸発缶8の上部から供給され、加熱蒸気3の雰囲気のもとで濃縮される。そして、濃縮された焼酎粕濃縮廃液2が第3の蒸発缶8の下部から濃縮液タンク(図示せず)に供給され、取り除かれた水分は凝縮水5として別途回収される。 本実施例では、このような3重効用濃縮装置を用いて焼酎粕廃液を3段階で濃縮し、水分が約40wt%の焼酎粕濃縮廃液を作製した。 次に、濃縮液タンクに回収された焼酎粕濃縮廃液の成分及び粘度について測定を行った。焼酎粕濃縮廃液の成分については、成分比を測定した。比較のために、飼料用油脂を添加していない焼酎粕廃液を同じ方法で水分が約70wt%になるまで濃縮した焼酎粕濃縮廃液についても成分比を測定した。その結果を表1に示す。 表1に示すように、粗蛋白質、粗灰分、及びNFE(炭水化物)の量は、比較例と比べて十分に残っていることが確認された。 また、焼酎粕濃縮廃液の粘度については、粘度の測定を行った。比較のため、飼料用油脂を添加していない焼酎粕廃液を同じ方法で水分が96.4、90.9、87.2、64.3、54.5wt%になるまで濃縮した5つの焼酎粕濃縮廃液についても粘度の測定を行った。その結果を表2に示す。 表2に示すように、油脂を添加しない場合では、水分が54.5wt%になるまで濃縮すると、焼酎粕濃縮廃液の粘度が測定できない程度に流動性がなくなり、固化してしまう。ところが本実施例で濃縮した焼酎粕濃縮廃液は、水分が40wt%になるまで濃縮しても流動性が保たれていることが確認できた。 次に、本実施例で作製した焼酎粕濃縮廃液を飼料に添加して、その給与効果について調べた。本実施例で用いる飼料は、表3に示すように、とうもろこしやアルファルファなどが含まれており、本実施例では、飼料に対して焼酎粕濃縮廃液を5wt%添加した。比較のために、表3に示すような成分比の飼料を比較例として用意し、焼酎粕濃縮廃液の給与効果についてTBARS(過酸化物の指標値)、筋肉ドリップロス、及び筋肉グリコーゲンの量を測定した。 図3は、本実施例と比較例とにおけるTBARSの測定値を示す図である。TBARSは、過酸化物の指標であり、肉に対する酸化性を意味するものである。本実施例では、比較例と比べてTBARSの値が減少しており、肉に対して抗酸化性が増加していることがわかる。 図4は、本実施例と比較例とにおける筋肉ドリップロスの測定値を示す図である。筋肉ドリップロスは、貯蔵中の肉汁の漏出量を意味するものであり、本実施例では、比較例と比べて筋肉ドリップロスが減少しており、肉汁の漏出量が少なくなることがわかる。 図5は、本実施例と比較例とにおける筋肉グリコーゲンの測定値を示す図である。筋肉グリコーゲンは、多ければ多いほど肉味が増加するものであり、本実施例では、比較例と比べて筋肉グリコーゲンが増加しており、肉味が良くなることがわかる。 以上のように、本実施例によれば、飼料用油脂を添加して3重効用濃縮装置を用いて水蒸気雰囲気において80℃以下の温度で濃縮を行うことにより、水分が40wt%程度になるまで濃縮しても焼酎粕濃縮廃液に流動性を残すことができ、さらには、蛋白質、糖質、脂質、ビタミン等の栄養価も損なわれないようにすることができる。これにより、飼料に添加すれば、肉に対して抗酸化性を増加させ、肉汁の漏出量を少なくし、さらには肉味もよくすることができる。本発明の実施例で用いた3重効用濃縮装置の外観構造の概略を示す図である。本発明の実施例で用いた3重効用濃縮装置の蒸発缶の詳細な構造を示す拡大図である。本発明の実施例と比較例とにおけるTBARSの測定値を示す図である。本発明の実施例と比較例とにおける筋肉ドリップロスの測定値を示す図である。本発明の実施例と比較例とにおける筋肉グリコーゲンの測定値を示す図である。符号の説明 1 供給液 2 焼酎粕濃縮廃液 3 加熱蒸気 4 冷却水 5 凝縮水 6 第1の蒸発缶 7 第2の蒸発缶 8 第3の蒸発缶 蒸留粕から固体部分が取り除かれた蒸留廃液に油脂を加える工程と、 前記油脂を加えた蒸留廃液を水蒸気雰囲気において80℃以下の温度で濃縮する工程とを有することを特徴とする蒸留廃液の濃縮方法。 前記油脂を加える工程においては、前記蒸留廃液に対して前記油脂を0.2〜5.0重量%加えることを特徴とする請求項1に記載の蒸留廃液の濃縮方法。 【課題】配合飼料原料として使用できる程度に蒸留廃液を濃縮できるとともに蒸留廃液の栄養価を維持できるようにする。【解決手段】飼料用油脂を添加して3重効用濃縮装置を用いて水蒸気雰囲気において80℃以下の温度で濃縮を行うようにして、水分が40wt%程度になるまで濃縮しても焼酎粕濃縮廃液に流動性を残し、さらには、蛋白質、糖質、脂質、ビタミン等の栄養価も損なわれないようにして、焼酎粕濃縮廃液を飼料に添加した場合には、肉に対して抗酸化性を増加させ、肉汁の漏出量を少なくし、さらには肉味もよくすることができるようにする。【選択図】図1


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特許公報(B2)_蒸留廃液の濃縮方法

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タイトル:特許公報(B2)_蒸留廃液の濃縮方法
出願番号:2007024500
年次:2011
IPC分類:C02F 1/04,B01D 1/26,C12G 3/12,A23K 1/06


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林 國興 JP 4686725 特許公報(B2) 20110225 2007024500 20070202 蒸留廃液の濃縮方法 国立大学法人 鹿児島大学 504258527 國分 孝悦 100090273 林 國興 20110525 C02F 1/04 20060101AFI20110427BHJP B01D 1/26 20060101ALI20110427BHJP C12G 3/12 20060101ALI20110427BHJP A23K 1/06 20060101ALI20110427BHJP JPC02F1/04 DB01D1/26 AC12G3/12A23K1/06 C02F1/02−18 特開昭64−018489(JP,A) 2 2008188520 20080821 7 20091209 齊藤 光子 本発明は蒸留廃液の濃縮方法に関し、特に、蒸留濃縮廃液を飼料化するために用いて好適な技術に関する。 近年、焼酎の生産量が飛躍的に増大し、それに伴って莫大な焼酎粕が排出されるようになった。焼酎粕の処理は、従来は海洋投棄することにより安易に解決されていたが、近年、環境への配慮などにより法的規制が厳しくなり、陸上での処理を余儀なくされている。 焼酎粕を処理する方法としては、焼酎粕を鶏(ブロイラー、産卵鶏)、豚、または牛の配合飼料に用いて処理する方法が挙げられ、現在すでに多くの焼酎粕処理工場が建設されている。焼酎粕を飼料化するためには、まず、固液分離法により焼酎粕を固体部分と液体部分とに分離する。固体部分に関しては、多くの有機成分が含まれており、そのまま飼料化して用いることができる。 一方、液体部分に関しては、現在は、焼酎粕廃液は水分が70wt%程度に濃縮されて廃棄されている。それ以上に濃縮しようとすると、焼酎粕濃縮廃液の粘度が急激に上昇し、流動性が失われてしまう。その一方で、液体部分には多くの有機成分が含まれているため、液体部分(以下、焼酎粕廃液と称す)を飼料に利用するための様々な研究もなされている。 焼酎粕廃液には、蛋白質やNFE(炭水化物)などが多く含まれており、さらには多量のポリフェノールを含んでいる。飼料に焼酎粕濃縮廃液を添加することができれば、肉に抗酸化性を付与し、脂肪の酸化を抑制することにより、風味の劣化を抑制し、ドリップロスを少なくすることができる。したがって、機能性を有する配合飼料原料として使用することができる。また、焼酎粕のみならず、ウイスキー、ブランデー、あるいはバイオエタノールの製造によって生じる蒸留粕(焼酎粕も含む)についても同様に、固体分離法により液体部分を分離すると、液体部分(蒸留廃液)には、蛋白質やNFE(炭水化物)などが多く含まれており、飼料に蒸留濃縮廃液を添加することができれば、そのまま飼料化して用いることができる。 但し、水分が70wt%程度の蒸留濃縮廃液を飼料に添加すると、飼料全体の水分が上昇し、飼料が固まりやすくなってしまう。例えば、水分が70wt%程度になるまで濃縮した蒸留濃縮廃液を飼料に3wt%添加すると、飼料全体の水分が2.1%増加し、飼料が固まりやすくなってしまう。 これに対し、水分が50wt%程度になるまで濃縮した蒸留濃縮廃液を用いて、水分が70wt%程度の蒸留濃縮廃液を用いた場合と同等の効果を得るためには、飼料に2.1wt%添加するだけでよく、飼料全体の水分は1.1%しか増加せず、飼料の性状にはほとんど影響を及ぼさない。そこで、この蒸留廃液を水分が50wt%程度にまで濃縮することができれば、飼料の水分をかびが発生せず固まりにくい範囲内の水分に抑えることができる。 そこで、濃縮液の流動性を向上させて濃縮する方法について、例えば、特許文献1には、焼酎粕廃液に油脂を添加して濃縮する技術が開示されている。特開平4−16277号公報 しかしながら、特許文献1に記載の技術は、専ら焼酎粕廃液から水分を取り除くために用いられる技術であるため、様々な不都合が生じている。例えば、特許文献1に記載の蒸発濃縮装置では、焼酎粕廃液の濃縮を行う際に加熱乾燥させるため、焼酎粕廃液に含まれる蛋白質の熱変性が起こり、焼酎粕廃液の栄養価が損なわれてしまう。また、加熱乾燥を行う際に焼酎粕廃液及び添加した油脂の酸化が起こり、焼酎粕廃液の栄養価がさらに損なわれてしまう。 本発明は前述の問題点に鑑み、配合飼料原料として使用できる程度に蒸留廃液を濃縮できるとともに蒸留廃液の栄養価を維持できるようにすることを目的としている。 本発明の蒸留廃液の濃縮方法は、蒸留粕から固体部分が取り除かれた蒸留廃液に油脂を加える工程と、前記油脂を加えた蒸留廃液を水蒸気雰囲気において80℃以下の温度で濃縮して水分が25%〜50%の濃縮廃液を得る工程とを有することを特徴とする。なお、蒸留粕とは、焼酎、ウイスキー、ブランデー等の蒸留酒、あるいはバイオエタノールの製造によって生じる粕を指す。 本発明によれば、蒸留廃液に油脂を添加して水蒸気雰囲気において80℃以下の温度で濃縮するようにした。これにより、配合飼料原料として使用できる程度に蒸留廃液を濃縮できるとともに蒸留廃液の栄養価を維持することができる。したがって、濃縮した蒸留濃縮廃液を飼料に添加すれば、風味の劣化を抑制し、ドリップロスを少なくすることができる。 本発明者は、鋭意研究の成果、蒸留廃液に油脂を添加して水蒸気雰囲気において80℃以下の温度で濃縮することにより、蒸留廃液の栄養価が損なわれない蒸留濃縮廃液を作製することができることを見いだした。 また、本発明の濃縮方法によって得られる蒸留濃縮廃液には、添加した油脂がそのまま含まれている。油脂を添加しないと、1/20の容積に濃縮したあたりから蒸留廃液の粘度が急激に上昇してしまうため、水分を70wt%程度に濃縮するのが限界である。それ以上に濃縮しようとすると、蒸留廃液が固化してしまい、濃縮装置から取り出すこと、及び運送時の積み下ろしが極めて困難になるとともに、飼料への添加が困難になる。添加する油脂は粘度を低下させる機能を有しており、油脂を含んだ蒸留廃液を濃縮すれば、水分を50wt%程度に濃縮しても固化しない程度に粘度を抑えることができ、最大で水分が約25wt%程度まで濃縮することができる。 なお、添加する油脂は、植物性油脂または動物性油脂のどちらでもよく、蒸留廃液に対して加える油脂が0.2wt%未満の場合は、粘度を低下させる効果が不十分であり、5.0wt%を超えると、飼料原料として配合できなくなる。したがって、添加する油脂の量は、蒸留廃液に対して0.2〜5.0wt%であることが好ましい。 また、本発明の濃縮方法では、水蒸気雰囲気において80℃以下の温度で濃縮している。80℃以下の温度で濃縮する理由としては、蒸留廃液に含まれる蛋白質が80℃以上で熱変性を起こしてしまうため、濃縮時の温度は80℃以下である必要がある。また、水蒸気雰囲気において嫌気的条件で濃縮を行う理由としては、酸素が含まれている状態であると、蒸留廃液に含まれている成分及び添加した油脂の酸化が起こり、蒸留廃液の栄養価が損なわれてしまう。したがって、酸素が極力含まれていない雰囲気で濃縮を行う必要がある。 次に、本発明の蒸留廃液の濃縮方法についての実施例として焼酎粕を濃縮する例について説明する。 まず、焼酎粕廃液を抽出するために、焼酎粕を固液分離法により固体部分と液体部分とに分離した。この時に、分離された液体部分(焼酎粕廃液)の水分量を測定したところ、水分は98wt%であり、乾物含量は2wt%であった。 次に、速度調節可能なポンプを用いて焼酎粕廃液に対して2.0wt%の割合で飼料用油脂(チキンオイル)を、抽出した焼酎粕廃液とともに蒸発缶に送り込んだ。図1は、本実施例で用いた3重効用濃縮装置の外観構造の概略を示す図であり、図2は、蒸発缶の詳細な構造を示す拡大図である。 図1に示すように、供給液(飼料用油脂が添加された焼酎粕廃液)1が最初に第1の蒸発缶6に送られる。第1の蒸発缶6内の雰囲気は、第2の蒸発缶7と第3の蒸発缶8とを経由して送られる水蒸気ガスの加熱蒸気3で満たされている。加熱蒸気3は常に第3の蒸発缶8に供給され、そして、第2の蒸発缶7を経由して第1の蒸発缶6から放出され、冷却水4によって冷却されて回収される。なお、第1〜第3の蒸気缶6〜8内の温度は、70℃〜80℃に保たれている。 そして、図2に示すように、第1及び第2の蒸発缶6、7を経由して濃縮された供給液1が最終的に第3の蒸発缶8の上部から供給され、加熱蒸気3の雰囲気のもとで濃縮される。そして、濃縮された焼酎粕濃縮廃液2が第3の蒸発缶8の下部から濃縮液タンク(図示せず)に供給され、取り除かれた水分は凝縮水5として別途回収される。 本実施例では、このような3重効用濃縮装置を用いて焼酎粕廃液を3段階で濃縮し、水分が約40wt%の焼酎粕濃縮廃液を作製した。 次に、濃縮液タンクに回収された焼酎粕濃縮廃液の成分及び粘度について測定を行った。焼酎粕濃縮廃液の成分については、成分比を測定した。比較のために、飼料用油脂を添加していない焼酎粕廃液を同じ方法で水分が約70wt%になるまで濃縮した焼酎粕濃縮廃液についても成分比を測定した。その結果を表1に示す。 表1に示すように、粗蛋白質、粗灰分、及びNFE(炭水化物)の量は、比較例と比べて十分に残っていることが確認された。 また、焼酎粕濃縮廃液の粘度については、粘度の測定を行った。比較のため、飼料用油脂を添加していない焼酎粕廃液を同じ方法で水分が96.4、90.9、87.2、64.3、54.5wt%になるまで濃縮した5つの焼酎粕濃縮廃液についても粘度の測定を行った。その結果を表2に示す。 表2に示すように、油脂を添加しない場合では、水分が54.5wt%になるまで濃縮すると、焼酎粕濃縮廃液の粘度が測定できない程度に流動性がなくなり、固化してしまう。ところが本実施例で濃縮した焼酎粕濃縮廃液は、水分が40wt%になるまで濃縮しても流動性が保たれていることが確認できた。 次に、本実施例で作製した焼酎粕濃縮廃液を飼料に添加して、その給与効果について調べた。本実施例で用いる飼料は、表3に示すように、とうもろこしやアルファルファなどが含まれており、本実施例では、飼料に対して焼酎粕濃縮廃液を5wt%添加した。比較のために、表3に示すような成分比の飼料を比較例として用意し、焼酎粕濃縮廃液の給与効果についてTBARS(過酸化物の指標値)、筋肉ドリップロス、及び筋肉グリコーゲンの量を測定した。 図3は、本実施例と比較例とにおけるTBARSの測定値を示す図である。TBARSは、過酸化物の指標であり、肉に対する酸化性を意味するものである。本実施例では、比較例と比べてTBARSの値が減少しており、肉に対して抗酸化性が増加していることがわかる。 図4は、本実施例と比較例とにおける筋肉ドリップロスの測定値を示す図である。筋肉ドリップロスは、貯蔵中の肉汁の漏出量を意味するものであり、本実施例では、比較例と比べて筋肉ドリップロスが減少しており、肉汁の漏出量が少なくなることがわかる。 図5は、本実施例と比較例とにおける筋肉グリコーゲンの測定値を示す図である。筋肉グリコーゲンは、多ければ多いほど肉味が増加するものであり、本実施例では、比較例と比べて筋肉グリコーゲンが増加しており、肉味が良くなることがわかる。 以上のように、本実施例によれば、飼料用油脂を添加して3重効用濃縮装置を用いて水蒸気雰囲気において80℃以下の温度で濃縮を行うことにより、水分が40wt%程度になるまで濃縮しても焼酎粕濃縮廃液に流動性を残すことができ、さらには、蛋白質、糖質、脂質、ビタミン等の栄養価も損なわれないようにすることができる。これにより、飼料に添加すれば、肉に対して抗酸化性を増加させ、肉汁の漏出量を少なくし、さらには肉味もよくすることができる。本発明の実施例で用いた3重効用濃縮装置の外観構造の概略を示す図である。本発明の実施例で用いた3重効用濃縮装置の蒸発缶の詳細な構造を示す拡大図である。本発明の実施例と比較例とにおけるTBARSの測定値を示す図である。本発明の実施例と比較例とにおける筋肉ドリップロスの測定値を示す図である。本発明の実施例と比較例とにおける筋肉グリコーゲンの測定値を示す図である。符号の説明 1 供給液 2 焼酎粕濃縮廃液 3 加熱蒸気 4 冷却水 5 凝縮水 6 第1の蒸発缶 7 第2の蒸発缶 8 第3の蒸発缶 蒸留粕から固体部分が取り除かれた蒸留廃液に油脂を加える工程と、 前記油脂を加えた蒸留廃液を水蒸気雰囲気において80℃以下の温度で濃縮して水分が25%〜50%の濃縮廃液を得る工程とを有することを特徴とする蒸留廃液の濃縮方法。 前記油脂を加える工程においては、前記蒸留廃液に対して前記油脂を0.2〜5.0重量%加えることを特徴とする請求項1に記載の蒸留廃液の濃縮方法。


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