タイトル: | 公開特許公報(A)_歯科用X線造影性ペースト組成物 |
出願番号: | 2007024355 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | A61K 6/097,A61K 49/04 |
ウォルシュ ローレンス ジェイ 加藤 伸一 苅谷 周司 佐藤 拓也 JP 2008189576 公開特許公報(A) 20080821 2007024355 20070202 歯科用X線造影性ペースト組成物 株式会社ジーシー 000181217 野間 忠之 100070105 ウォルシュ ローレンス ジェイ 加藤 伸一 苅谷 周司 佐藤 拓也 A61K 6/097 20060101AFI20080725BHJP A61K 49/04 20060101ALI20080725BHJP JPA61K6/097A61K49/04 A 7 OL 8 4C085 4C089 4C085HH05 4C085JJ20 4C085KA26 4C085KB05 4C085KB07 4C085KB12 4C085KB23 4C085KB24 4C085KB25 4C085KB26 4C085KB28 4C085KB30 4C085LL20 4C089AA01 4C089AA20 4C089BA03 4C089BA05 4C089BA08 4C089BA11 4C089BA13 4C089BA14 4C089BA16 4C089BA18 4C089BC03 4C089BE15 4C089CA03 4C089CA06 本発明は、歯牙診察時のX線撮影において、小さな窩洞や脱灰部位を確認し易くするために一時的に窩洞や脱灰部の凹部に充填し、X線撮影後は水洗やスケーラ等の歯科用器具の使用により簡単に除去でき、しかもX線造影性に優れた歯科用X線造影性ペースト組成物に関するものである。 X線撮影による診断は、歯科界において一般的で且つ重要な診断方法である。例えば保存修復時に、齲蝕による脱灰の様子や窩洞の様子を確認するために、脱灰部位や窩洞にX線造影性を持つ組成物を充填してX線撮影を行う。このX線造影性を持つ組成物として、従来は仮封材として販売されていた組成物を流用していた。この従来の仮封材には熱可塑性樹脂(例えばテンポラリーストッピング)、水硬性仮封材、仮封セメント(例えばユージノールセメント、脂肪酸セメント、ポリカルボン酸セメント等)、レジン系仮封材等がある(例えば、特許文献1〜4参照。)。 しかしながら、仮封材は充填してから数日間〜1週間ほど口腔内に残すことを目的として作られており、充填後には硬化して窩洞内に留まるように設計されているので、歯科用インスツルメントの先端さえ入らないような小さな窩洞からの除去が困難という問題があった。また従来の仮封材では操作性が悪いという問題もあった。例えば、セメント系仮封材では粉成分と液成分との練和が必要であったり、レジン系仮封材ではレジンを光硬化させるために光照射器を用いた光照射の操作が必要であったり、熱可塑性樹脂では軟化させるために加熱をする必要がある等、煩雑な手続きが必要であったのである。更に仮封材の本来の目的にはX線造影性が必要とされないために、小さな窩洞や脱灰部位に少量適用する場合には造影が十分ではないという問題もあった。特開平6−65020号公報特開平8−188516号公報特開平9−77625号公報特開2002−275017号公報 そこで本発明は、撮影後の除去が簡単で、単にペースト状組成物を充填するだけの操作なので煩雑な手続きが不要であり、それにも拘わらず少量でも十分なX線造影性を有する歯科用X線造影性ペースト組成物を提供することを課題とする。 本発明者等は前記課題を解決するために鋭意検討した結果、多価アルコールと、この多価アルコール及び水に溶解・膨潤する粉状高分子物質と、水と、粉状のX線造影材とを含有しており、多価アルコールと水との合計重量が粉状高分子物質の重量の所定の割合とした歯科用X線造影性ペースト組成物とすると、小さな窩洞や脱灰部位に速やかに充填することができ、更に水洗やスケーラ等の歯科用器具の使用によって簡単に窩洞から除去できることを見出して本発明を完成した。 即ち本発明は、(a)多価アルコール:3〜25重量%と、(b)該多価アルコール及び水に溶解・膨潤する粉状高分子物質:0.5〜10重量%と、(c)水:10〜30重量%と、(d)粉状のX線造影材:25〜80重量%とを含有しており、(a)多価アルコールと(c)水との合計重量が(b)粉状高分子物質の重量の3〜25倍であることを特徴とする歯科用X線造影性ペースト組成物であり、(e)フッ素化合物を更に0.01〜5重量%含有している場合や、(f)添加剤を更に15重量%以下含有している場合があり、この添加剤としては、緩衝材,甘味料,着色料,保存料,防腐剤,防カビ剤,pH調整剤,香料から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。 このような歯科用X線造影性ペースト組成物において、(d)粉状のX線造影材としては、硫酸バリウム,タングステン酸カルシウム,酸化ストロンチウム,酸化ジルコニウム,酸化ビスマス,酸化ランタン,酸化亜鉛,リン酸ジルコニウム,次炭酸ビスマス,硫酸ビスマス,ケイ酸ジルコニウム,フッ化イッテルビウム,ストロンチウムガラス,バリウムガラスから選ばれる1種又は2種以上が使用でき、(a)多価アルコールとしては、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ブチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールから選ばれる1種又は2種以上が使用でき、(b)多価アルコール及び水に溶解・膨潤する粉状高分子物質としては、カルボキシメチルセルロース,カルボキシメチルセルロースナトリウム,カルボキシメチルセルロースカルシウム,メチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシメチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロースのセルロース化合物から選ばれる1種又は2種以上が好ましく使用できる。 本発明に係る歯科用X線造影性ペースト組成物は、水及び水溶性の物質と粉状のX線造影材とを主成分とするものであるから、撮影後は特に水洗やスケーラ等の歯科用器具の使用によって除去が簡単で煩雑な手続きが不要でありながら操作性に優れ、更に粉状のX線造影材を多量に含有しているので少量でも十分なX線造影性を持つ優れた歯科用X線造影性ペースト組成物である。 以下、本発明に係る歯科用X線造影性ペースト組成物について説明する。(a)成分である多価アルコールは、歯科用X線造影性ペースト組成物の乾燥を防止し,湿潤性を持たせ、歯科用X線造影性ペースト組成物を長時間安定させるために必要である。この多価アルコールとしては、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ブチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールから選ばれる1種又は2種以上が好ましく使用でき、その配合量は歯科用X線造影性ペースト組成物全体の3〜25重量%である。3重量%未満では歯科用X線造影性ペースト組成物中で後述するX線造影剤が分離してしまい長期保存ができず、25重量%を超えて配合すると後述する(d)成分である粉状のX線造影材の配合量が少なくなってX線造影性が低下する。 (b)成分である多価アルコール及び水に溶解・膨潤する粉状高分子物質は、(a)成分である多価アルコール及び後述する(c)成分である水に溶解・膨潤して後述する(d)成分である粉状のX線造影材の沈降を防止するために必要である。この粉状高分子物質としては、カルボキシメチルセルロース,カルボキシメチルセルロースナトリウム,カルボキシメチルセルロースカルシウム,メチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシメチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロースのセルロース化合物から選ばれる1種又は2種が好ましく使用でき、その配合量は歯科用X線造影性ペースト組成物全体の0.5〜10重量%である。0.5重量%未満では歯科用X線造影性ペースト組成物の粘度が低く、窩洞への充填後に簡単に流されてしまい、10重量%を超えて配合すると歯科用X線造影性ペースト組成物の粘度が高く小さな窩洞への充填が難しくなってしまう。 (c)成分である水は、(b)成分である粉状高分子物質を(a)成分である多価アルコールと共に溶解・膨潤させる溶媒の役目をなすと共に(a)成分である多価アルコールの刺激性を低下させるものとして必要であり、(b)成分である粉状高分子物質の溶解率が(a)成分である多価アルコールより高いので価格の高い(a)成分である多価アルコールの使用量を低下させるのにも貢献する。その配合量は歯科用X線造影性ペースト組成物全体の10〜30重量%である。10重量%未満では歯科用X線造影性ペースト組成物の粘度が高くなり過ぎて操作性が悪くなり窩洞に充填し難くなる傾向があり、30重量%を超えて配合すると他の成分の総合的な配合割合が減り、例えば(d)成分である粉状のX線造影性の効果が減少してしまう虞がある。 そして、(a)成分である多価アルコールと(c)成分である水との合計重量は(b)成分である粉状高分子物質の重量の3〜25倍であることが必要である。これは、(a)成分である多価アルコールと(c)成分である水との合計重量、即ち液成分の合計重量が(b)成分である粉状高分子物質の重量の3倍未満では(b)成分である粉状高分子物質が液成分中に完全に溶解・膨潤しないか、又は溶解・膨潤しても歯科用X線造影性ペースト組成物の粘度が高くなり過ぎて(d)成分である粉状のX線造影性を歯科用X線造影性ペースト組成物中に均一に分散混合することができないからである。 (d)成分である粉状のX線造影材は、本発明の主目的であるX線造影性を与えるために必要であり、硫酸バリウム,タングステン酸カルシウム,酸化ストロンチウム,酸化ジルコニウム,酸化ビスマス,酸化ランタン,酸化亜鉛,リン酸ジルコニウム,次炭酸ビスマス,硫酸ビスマス,ケイ酸ジルコニウム,フッ化イッテルビウム,ストロンチウムガラス,バリウムガラスの1種又は2種以上が使用できる。この粉状のX線造影材は、歯科用X線造影性ペースト組成物中に25〜80重量%である。25重量%未満では歯科用X線造影性ペースト組成物の使用量が少ないときに適切なX線造影性が得られず、80重量%を超えると歯科用X線造影性ペースト組成物の長期保存性が悪くなる。 本発明に係る歯科用X線造影性ペースト組成物は前述の各成分以外に、齲蝕予防効果を持つ(e)成分であるフッ素化合物を配合すると、X線撮影の際に歯科用X線造影性ペースト組成物を歯面に適用すれば、同時に齲蝕を予防することが可能になる。即ち、本発明に係る歯科用X線造影性ペースト組成物はその使用が歯面の齲蝕による脱灰による窩洞や極微少な窩洞への充填であるで、このときに同時にフッ素化合物を窩洞に適用すれば、齲蝕になり易い窩洞の予防を行うこともできるのである。添加するフッ素化合物は歯科用X線造影性ペースト組成物中に0.01〜5重量%配合することが好ましく、特に好ましくは0.05〜2重量%である。0.01重量%未満であると齲蝕の予防に十分な再石灰化効果が得られ難く、5重量%を超えると暫間とはいえ人体への安全性の面で好ましくない。 本発明に係る歯科用X線造影性ペースト組成物には、更に(f)成分として添加剤を配合することができる。この(f)成分としての添加剤は、従来から口腔用の組成物に用いられている各種の緩衝材,甘味料,着色料,保存料,防腐剤,防カビ剤,pH調整剤,香料等を挙げることができる。 この(f)成分である添加剤は、本発明に係る歯科用X線造影性ペースト組成物の主成分を構成するものではないので、その配合量は15重量%以下であることが必要であり、15重量%を超えて配合すると、他の主成分の配合量が減少して本発明の本来の目的を達成できなくなる虞がある。 以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。<実施例> 表1に示した配合で実施例及び比較例の歯科用X線造影性ペースト組成物を作製し、下記の試験を行い評価した。結果を纏めて表1に示す。<X線造影性> X線造影性の試験は「JIS T 6609-1;2005 ウォーターベースセメント−第1部:粉液型酸−塩基性セメント」を参考に行った。即ち、フッ素樹脂製リング(内径15mm,厚さ1mm)の下部にポリエステル製シートを置き、試験体を充填し上部にポリエステル製シートを載せ、ガラス板により圧接し試験片とした。また人歯エナメル質を耐水研磨器により1mmの厚さに研磨して試験体とした。 X線フィルムを厚さ2mm以上の鉛シートの上に載せ、その上部に試験片及びアルミニウムステップウェッジ(厚さ0.5mm〜6mmまで0.5mmステップ)を置くと共に、各試験体も並べて置いて、X線フィルムとの距離400mm,管電圧65kV,電流10mA,X線照射時間0.3秒間の各条件でX線撮影を行った。X線フィルムを現像・定着し、写真濃度計を用いて試験片像の光学濃度が相当するアルミニウム相当の厚さ(mm)を、このフィルムの光学濃度から比較評価した。人歯エナメル質とX線造影性とが同等、あるいはそれ以下の場合、実質的にX線造影性組成物として役に立たないと判断した。尚、人歯エナメル質のX線造影性は2.1mmであった。 <保存性> 各試験体をコンポジットレジン用シリンジに充填し、60℃,RH75%に保存し1週間後までのペーストの状態を目視にて観察した。 <窩洞からの除去性> ヒト抜去第3大臼歯に直径2mm,深さ2mmの円筒形窩洞を形成し、各実施例及び比較例の組成物を充填し、その後、歯科用スプレー「スプレービット4000L:GC社製」により窩洞から水洗・除去できるまでの時間を測定した。 表1より明らかなように、実施例1〜実施例15に示された本発明に係る歯科用X線造影性ペースト組成物は、人歯エナメル質に比較して十分に高いX線造影性を示し、保存性も良好であり、使用後も容易に水洗・除去できることが分かる。(a)多価アルコール:3〜25重量%と、(b)該多価アルコール及び水に溶解・膨潤する粉状高分子物質:0.5〜10重量%と、(c)水:10〜30重量%と、(d)粉状のX線造影材:25〜80重量%とを含有しており、(a)多価アルコールと(c)水との合計重量が(b)粉状高分子物質の重量の3〜25倍であることを特徴とする歯科用X線造影性ペースト組成物。(e)フッ素化合物を更に0.01〜5重量%含有している請求項1に記載の歯科用X線造影性ペースト組成物。(f)添加剤を更に15重量%以下含有している請求項1又は2に記載の歯科用X線造影性ペースト組成物。(f)添加剤が、緩衝材,甘味料,着色料,保存料,防腐剤,防カビ剤,pH調整剤,香料から選ばれる1種又は2種以上である請求項3に記載の歯科用X線造影性ペースト組成物。(d)粉状のX線造影材が、硫酸バリウム,タングステン酸カルシウム,酸化ストロンチウム,酸化ジルコニウム,酸化ビスマス,酸化ランタン,酸化亜鉛,リン酸ジルコニウム,次炭酸ビスマス,硫酸ビスマス,ケイ酸ジルコニウム,フッ化イッテルビウム,ストロンチウムガラス,バリウムガラスから選ばれる1種又は2種以上である請求項1から4のいずれか1項に記載の歯科用X線造影性ペースト組成物。(a)多価アルコールが、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ブチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールから選ばれる1種又は2種以上である請求項1から5のいずれか1項に記載の歯科用X線造影性ペースト組成物。(b)多価アルコール及び水に溶解・膨潤する粉状高分子物質が、カルボキシメチルセルロース,カルボキシメチルセルロースナトリウム,カルボキシメチルセルロースカルシウム,メチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシメチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロースのセルロース化合物から選ばれる1種又は2種以上である請求項1から6のいずれか1項に記載の歯科用X線造影性ペースト組成物。 【課題】X線撮影後の除去が簡単で、単にペースト状組成物を充填するだけの操作なので煩雑な手続きが不要であり、それにも拘わらず少量でも十分なX線造影性を有する歯科用X線造影性ペースト組成物を提供する。【解決手段】歯科用X線造影性ペースト組成物を、(a)多価アルコール:3〜25重量%と、(b)該多価アルコール及び水に溶解・膨潤する粉状高分子物質:0.5〜10重量%と、(c)水:10〜30重量%と、(d)粉状のX線造影材:25〜80重量%とを含有しており、(a)多価アルコールと(c)水との合計重量が(b)粉状高分子物質の重量の3〜25倍であるように構成する。更に、(e)フッ素化合物:0.01〜5重量%や、(f)添加剤として緩衝材,甘味料,着色料,保存料,防腐剤,防カビ剤,pH調整剤,香料から選ばれる1種又は2種以上:15重量%以下を含有させてもよい。【選択図】なし