生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_アスコルビン酸含有液剤
出願番号:2007013451
年次:2008
IPC分類:A61K 31/375,A61K 47/26,A61K 47/20,A61K 47/02,A61P 43/00,A61P 37/02,A61P 39/06,A23L 1/302,A23L 1/30


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堂本 隆史 武井 拓人 JP 2008179553 公開特許公報(A) 20080807 2007013451 20070124 アスコルビン酸含有液剤 大正製薬株式会社 000002819 佐鳥 宗一 100115406 堂本 隆史 武井 拓人 A61K 31/375 20060101AFI20080711BHJP A61K 47/26 20060101ALI20080711BHJP A61K 47/20 20060101ALI20080711BHJP A61K 47/02 20060101ALI20080711BHJP A61P 43/00 20060101ALI20080711BHJP A61P 37/02 20060101ALI20080711BHJP A61P 39/06 20060101ALI20080711BHJP A23L 1/302 20060101ALN20080711BHJP A23L 1/30 20060101ALN20080711BHJP JPA61K31/375A61K47/26A61K47/20A61K47/02A61P43/00 111A61P37/02A61P39/06A23L1/302A23L1/30 Z 5 OL 8 4B018 4C076 4C086 4B018LB08 4B018MD01 4B018MD19 4B018MD25 4B018MD28 4B018ME02 4C076AA12 4C076BB01 4C076CC07 4C076DD24Q 4C076DD41 4C076DD43 4C076DD55 4C076DD57T 4C076DD60 4C076DD67T 4C076EE30 4C076EE53T 4C076FF52 4C076FF63 4C086AA01 4C086AA02 4C086BA18 4C086MA03 4C086MA05 4C086MA17 4C086MA52 4C086NA03 4C086ZB07 4C086ZC02 本発明は、アスコルビン酸又はその塩、還元糖、タウリン及び亜硫酸塩を含有してなる液剤に関し、医薬品、医薬部外品及び食品の分野に利用できる。 アスコルビン酸(ビタミンC)は生体内において、コラーゲンを合成する作用、活性酸素を消去する作用や、免疫力を高める作用などが報告されており、非常に重要な栄養素である。 ところで、アスコルビン酸は水溶液中で不安定であり、弱酸性からアルカリ性で空気中の酸素によって酸化され、酸性では加水分解されることが知られている。一方で、内服液剤(飲料)においては、服用性や栄養の面から還元糖やタウリンを配合すると、アスコルビン酸の安定性がさらに低下するという問題があった(非特許文献1及び2参照)。 しかしながら、ドリンク剤等の内服液剤においては、アスコルビン酸を単独で配合させるよりも、タウリンや還元糖等と共に配合させることが栄養、風味の観点から好ましいことから、アスコルビン酸、タウリン及び還元糖を含有する液剤中のアスコルビン酸を充分に安定化する方法が望まれていた。 ここで、液剤中のアスコルビン酸の安定化に関しては、容器内を窒素置換する方法や液剤のpHを高くする方法等が従来から行われている。また、特開昭56−165272にはメタリン酸を添加することによる水溶液中でのアスコルビン酸の安定化方法が開示されており(特許文献1参照)、特開2000−198723にはキレート剤を添加することによる液剤中でのアスコルビン酸の安定化方法が開示されている(特許文献2参照)。また、ポリフェノールを添加することによる水溶液中でのアスコルビン酸の安定化方法としては、特開平6−9630にクロロゲン酸を添加する方法(特許文献3参照)、特開平4−99771にフラボノイドを添加することによる方法(特許文献4参照)が開示されている。特開昭56−165272号公報特開2000−198723号公報特開平6−9630号公報特開平4−99771号公報日本食品科学工学会誌 Vol.48 No.4 Page.268-276 (2001)Spec Publ R Soc Chem No.223 Page.107-112 (1998) そこで、上述したような従来から知られていた安定化方法を用いて、還元糖及びタウリンを含有する液剤中のアスコルビン酸の安定化を試みたところ、容器内の窒素置換や、メタリン酸、キレート剤、ポリフェノールの添加による方法では、充分なアスコルビン酸の安定化効果が得られなかった。また、液剤のpHを高くする方法においては、還元糖及びタウリン存在下ではアスコルビン酸はかえって不安定となることがわかった。 よって、本発明の目的は、還元糖及びタウリンを含有する液剤中においてもアスコルビン酸を安定に含有する液剤を提供することにある。 上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、亜硫酸塩を配合することにより、還元糖及びタウリンを含有する液剤中においてもアスコルビン酸又はその塩を安定化することができることを見出し、本発明を完成した。 すなわち本発明は、アスコルビン酸又はその塩、還元糖、タウリン及び亜硫酸塩を含有することを特徴とする液剤である。 本発明により、還元糖及びタウリンを含有する液剤中で、アスコルビン酸又はその塩を安定に含有する液剤を提供することが可能になった。 本発明に使用するアスコルビン酸とは、L−アスコルビン酸又はその誘導体(L−アルコルビン酸2−グルコシド、L−アスコルビン酸−2−リン酸エステル等)であり、塩とは、例えばナトリウム塩又はカルシウム塩のような薬理学的に許容される塩である。なお、本発明のアスコルビン酸又はその塩の含有(配合)量は、アスコルビン酸に換算して、例えば液剤中で0.1〜2.0W/V%である。 本発明の還元糖とは、水溶液中で還元性を有する糖であり、ブドウ糖、果糖、ショ糖等が挙げられる。ブドウ糖は分子式C6H12O6で表されるアルドヘキソースであって、グルコース、デキストロースともいう。果糖は分子式C6H12O6で表されるアラビノヘキスロースであって、フルクトース、レブロースともいう。ショ糖は分子式C12H22O11で表され、スクロース、砂糖ともいう。ショ糖そのものは非還元糖であるが、水溶液中でブドウ糖及び果糖に分解され、これらの糖は還元性を有する。還元糖の含有(配合)量は、風味の観点から液剤中で1〜30W/V%が好ましい。 本発明のタウリンとは、分子式C2H7NO3Sで表され、2−アミノエタンスルホン酸ともいう。本発明に使用するタウリンの含有(配合)量は適宜選択して使用でき、例えば液剤中で0.15〜3.0W/V%である。 本発明の亜硫酸塩とは、液剤中で亜硫酸イオンに解離する塩であり、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。本発明に使用する亜硫酸塩の含有(配合)量は適宜選択して使用でき、アスコルビン酸1質量部に対して通常0.001〜1質量部であり、アスコルビン酸又はその塩の安定性を向上させるという観点からは、0.01〜0.4質量部が好ましい。 本発明にかかる液剤のpHは、2.5〜7.0であり、好ましくは3.0〜5.0である。pH2.5未満の酸性域ではアスコルビン酸又はその塩が加水分解され不安定になることから好ましくなく、pHが7.0を超える領域では、酸化分解の影響により、やはりアスコルビン酸又はその塩が分解されて不安定になることから好ましくない。これらは本発明の亜硫酸塩の配合をもってしてもアスコルビン酸又はその塩の安定性を維持できない程度のものである。また、本発明の液剤のpHを上記範囲に保つために、必要に応じてpH調整剤が配合される。pH調整剤としては、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、乳酸、コハク酸などの有機酸及びそれらの塩類、塩酸などの無機酸、水酸化ナトリウムなどの無機塩基などが挙げられる。 本発明の液剤にはその他の成分として、アスコルビン酸以外のビタミン類、ミネラル類、タウリン以外のアミノ酸及びその塩類、生薬、生薬抽出物、カフェイン、ローヤルゼリーなどを本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。 さらに必要に応じて、抗酸化剤、着色剤、香料、矯味剤、界面活性剤、溶解補助剤、保存剤、本発明の還元糖以外の甘味料などの添加物を本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。 特に本発明の液剤において、糖アルコールを配合することにより、さらに風味を向上させることができる。糖アルコールとしては、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール等が挙げられる。これらは、単独で配合してもよく、また、2種以上を組み合わせて配合してもよい。ただし糖アルコールには緩下作用があるので、1回服用量は1〜40gで最大無作用量以下に設定する必要がある。 本発明の液剤は、常法により調製することができ、その方法は特に限定されるものではない。通常、各成分を秤量し適量の精製水で溶解した後、pHを調整し、さらに精製水を加えて容量調整し、必要に応じてろ過、滅菌処理することにより得られる。 本発明の液剤は、例えばシロップ剤、ドリンク剤などの医薬品や医薬部外品などの各種製剤、健康飲料などの各種飲料に適用することができる。 以下に実施例、比較例及び試験例を挙げ、本発明をより詳しく説明する。実施例は本発明の実施の形態を具体的に示す例であり、試験例は実施例を評価した試験の例である。 実施例1 本発明の液剤 比較例1 タウリン及び還元糖を含有しないことから、アスコルビン酸の安定性が保たれた液剤 比較例2 比較例1に亜硫酸ナトリウムを配合した液剤 比較例3 タウリンを含有するが、還元糖を含有しないことから、アスコルビン酸の安定性が保たれた液剤 比較例4 還元糖を含有するが、タウリンを含有しないことから、アスコルビン酸の安定性が保たれた液剤 比較例5 タウリン及び還元糖を含有することから、アスコルビン酸の安定性が著しく低下した液剤 比較例6〜8 従来の安定化技術を用いてアスコルビン酸の安定化を図ろうとした液剤 比較例9 比較例5に対して窒素置換を施していない液剤 製造方法 表1に記載の処方の各成分を秤量して精製水に溶解させ全量を50mLとした後pHを4.6に調整することで、本発明の実施例及び比較例の液剤を得た。得られた液剤を茶褐色ガラスビンに充填し、必要に応じてヘッドスペースの窒素置換を行った後にキャップを施した。 試験例 アスコルビン酸の安定性試験 実施例1及び比較例1〜9の液剤について、安定性試験を、以下の試験方法に従い実施した。 試験方法 実施例1及び比較例1〜9で得た液剤を65℃恒温槽にて1週間保存した。これらの液剤を液体クロマトグラフ法(カラム:YMC-PACK Polyamine−II(YMC)、移動相: 50mM リン酸二水素アンモニウム水溶液:アセトニトリル=2:3、流速:1mL/min、検出波長:245nm)により定量した。 調製直後のアスコルビン酸含量に対する65℃1週間後の残存率を表2に示した。表2から明らかなように、還元糖及びタウリンを含有しない場合やどちらか一方を含有する場合と比較して、還元糖及びタウリンを含有する場合は、アスコルビン酸の安定性が大きく低下した(比較例1、3〜5)。亜硫酸塩を配合した実施例1は、対応する比較例5と比較してアスコルビン酸の安定性が大きく改善されていた。この安定化効果は還元糖及びタウリンを含有しない場合の安定化効果(比較例1及び2)よりも大きかった。この結果から亜硫酸ナトリウムを含有させることにより、還元糖及びタウリンを含有する液剤においてアスコルビン酸を安定に含有させることができることが明らかとなった。また、従来のアスコルビン酸の安定化方法に用いられるメタリン酸ナトリウム、クロロゲン酸、カテキンをそれぞれ添加した比較例6〜8ではアスコルビン酸の安定化は図れず、窒素置換による安定化効果も充分なものではなかった(比較例5及び9)。 実施例2 アスコルビン酸 1.00g 硝酸チアミン 0.01g 塩酸ピリドキシン 0.01g タウリン 1.00g ニコチン酸アミド 0.02g 無水カフェイン 0.05g ショ糖 10.00g クエン酸 0.50g クエン酸ナトリウム 適量 安息香酸ナトリウム 0.06g 亜硫酸ナトリウム 0.10g ミックスフルーツフレーバー 0.10g 上記成分を精製水に溶解した後、pHを3.5に調整し、精製水を加えて全量を100mLとした。この液をろ紙でろ過し、滅菌装置を用いて、ろ液を80℃で25分間加熱滅菌した後、ガラス瓶に充填しキャップを施して液剤を得た。 実施例3 アスコルビン酸 0.50g リン酸リボフラビンナトリウム 0.02g グルコン酸カルシウム 1.00g アスパラギン酸マグネシウム 1.00g 硝酸チアミン 0.01g 塩酸ピリドキシン 0.01g タウリン 3.00g 無水カフェイン 0.05g ブドウ糖 4.00g トレハロース 2.00g キシリトール 2.00g ステビア抽出物 0.03g リンゴ酸 0.20g クエン酸 0.40g クエン酸ナトリウム 適量 安息香酸 0.06g 亜硫酸ナトリウム 0.20g ミックスフルーツフレーバー 0.10g 上記成分を精製水に溶解した後、pHを4.0に調整し、精製水を加えて全量を100mLとした。この液をろ紙でろ過し、滅菌装置を用いて、ろ液を80℃で25分間加熱滅菌した後、ガラス瓶に充填しキャップを施して液剤を得た。 実施例4 アスコルビン酸ナトリウム 0.50g フマル酸第一鉄 0.003g リン酸リボフラビンナトリウム 0.02g 塩酸ピリドキシン 0.01g タウリン 1.00g ニコチン酸アミド 0.02g 無水カフェイン 0.05g 果糖ブドウ糖液糖 4.00g マルチトール 4.00g ソルビトール 3.00g アセスルファムカリウム 0.03g クエン酸 0.50g クエン酸ナトリウム 適量 安息香酸ナトリウム 0.06g 亜硫酸ナトリウム 0.10g ミックスフルーツフレーバー 0.10g 上記成分を精製水に溶解した後、pHを4.5に調整し、精製水を加えて全量を100mLとした。この液をろ紙でろ過し、滅菌装置を用いて、ろ液を80℃で25分間加熱滅菌した後、ガラス瓶に充填しキャップを施して液剤を得た。 上記の実施例2〜4は、アスコルビン酸の安定性が改善されていた。 本発明の液剤を用いて、アスコルビン酸又はその塩、還元糖及びタウリンを含有する安定な内服液剤、ドリンク剤、飲料等を提供できる。 アスコルビン酸又はその塩、還元糖、タウリン及び亜硫酸塩を含有することを特徴とする液剤。 還元糖がショ糖、ブドウ糖及び果糖からなる群より選ばれる1種又は2種以上である請求項1に記載の液剤。 亜硫酸塩が亜硫酸ナトリウム及びピロ亜硫酸ナトリウムの少なくとも1種である請求項1に記載の液剤。 pHが2.5〜7.0である請求項1〜3のいずれか1項に記載の液剤。 アスコルビン酸又はその塩、還元糖及びタウリンを含有する液剤において、亜硫酸塩を含有させることにより、液剤中のアスコルビン酸又はその塩を安定化する方法。 【課題】還元糖及びタウリンを含有する液剤中でアスコルビン酸又はその塩を安定に含有する液剤を提供する。【解決手段】アスコルビン酸又はその塩、還元糖、タウリン及び亜硫酸塩を含有することを特徴とする液剤。【選択図】なし


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特許公報(B2)_アスコルビン酸含有液剤

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_アスコルビン酸含有液剤
出願番号:2007013451
年次:2013
IPC分類:A61K 31/375,A61K 31/7048,A61K 31/7004,A61K 31/185,A61K 9/08,A61K 47/26,A61K 47/02,A61P 43/00,A61P 37/02,A61P 39/06,A23L 1/302,A23L 1/30


特許情報キャッシュ

堂本 隆史 武井 拓人 JP 5266644 特許公報(B2) 20130517 2007013451 20070124 アスコルビン酸含有液剤 大正製薬株式会社 000002819 堂本 隆史 武井 拓人 20130821 A61K 31/375 20060101AFI20130801BHJP A61K 31/7048 20060101ALI20130801BHJP A61K 31/7004 20060101ALI20130801BHJP A61K 31/185 20060101ALI20130801BHJP A61K 9/08 20060101ALI20130801BHJP A61K 47/26 20060101ALI20130801BHJP A61K 47/02 20060101ALI20130801BHJP A61P 43/00 20060101ALI20130801BHJP A61P 37/02 20060101ALI20130801BHJP A61P 39/06 20060101ALI20130801BHJP A23L 1/302 20060101ALI20130801BHJP A23L 1/30 20060101ALI20130801BHJP JPA61K31/375A61K31/7048A61K31/7004A61K31/185A61K9/08A61K47/26A61K47/02A61P43/00 111A61P37/02A61P39/06A23L1/302A23L1/30 Z A61K 31/00−31/80 A61K 47/00−47/48 A23L 1/30 A23L 1/302 A61P 37/02 A61P 39/06 A61P 43/00 CAPlus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開2006−166902(JP,A) 米国特許第06261589(US,B1) 特開平06−247855(JP,A) 国際公開第2001/043702(WO,A1) PISCHETSRIEDER,M. et al,Special Publication - Royal Society of Chemistry,1998年,Vol.223,p.107-112 小関宏明 他, ,日本食品科学工学会誌,2001年,Vol.48, No.4,p.268-276 5 2008179553 20080807 7 20100115 荒巻 真介 本発明は、アスコルビン酸又はその塩、還元糖、タウリン及び亜硫酸塩を含有してなる液剤に関し、医薬品、医薬部外品及び食品の分野に利用できる。 アスコルビン酸(ビタミンC)は生体内において、コラーゲンを合成する作用、活性酸素を消去する作用や、免疫力を高める作用などが報告されており、非常に重要な栄養素である。 ところで、アスコルビン酸は水溶液中で不安定であり、弱酸性からアルカリ性で空気中の酸素によって酸化され、酸性では加水分解されることが知られている。一方で、内服液剤(飲料)においては、服用性や栄養の面から還元糖やタウリンを配合すると、アスコルビン酸の安定性がさらに低下するという問題があった(非特許文献1及び2参照)。 しかしながら、ドリンク剤等の内服液剤においては、アスコルビン酸を単独で配合させるよりも、タウリンや還元糖等と共に配合させることが栄養、風味の観点から好ましいことから、アスコルビン酸、タウリン及び還元糖を含有する液剤中のアスコルビン酸を充分に安定化する方法が望まれていた。 ここで、液剤中のアスコルビン酸の安定化に関しては、容器内を窒素置換する方法や液剤のpHを高くする方法等が従来から行われている。また、特開昭56−165272にはメタリン酸を添加することによる水溶液中でのアスコルビン酸の安定化方法が開示されており(特許文献1参照)、特開2000−198723にはキレート剤を添加することによる液剤中でのアスコルビン酸の安定化方法が開示されている(特許文献2参照)。また、ポリフェノールを添加することによる水溶液中でのアスコルビン酸の安定化方法としては、特開平6−9630にクロロゲン酸を添加する方法(特許文献3参照)、特開平4−99771にフラボノイドを添加することによる方法(特許文献4参照)が開示されている。特開昭56−165272号公報特開2000−198723号公報特開平6−9630号公報特開平4−99771号公報日本食品科学工学会誌 Vol.48 No.4 Page.268-276 (2001)Spec Publ R Soc Chem No.223 Page.107-112 (1998) そこで、上述したような従来から知られていた安定化方法を用いて、還元糖及びタウリンを含有する液剤中のアスコルビン酸の安定化を試みたところ、容器内の窒素置換や、メタリン酸、キレート剤、ポリフェノールの添加による方法では、充分なアスコルビン酸の安定化効果が得られなかった。また、液剤のpHを高くする方法においては、還元糖及びタウリン存在下ではアスコルビン酸はかえって不安定となることがわかった。 よって、本発明の目的は、還元糖及びタウリンを含有する液剤中においてもアスコルビン酸を安定に含有する液剤を提供することにある。 上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、亜硫酸塩を配合することにより、還元糖及びタウリンを含有する液剤中においてもアスコルビン酸又はその塩を安定化することができることを見出し、本発明を完成した。 すなわち本発明は、アスコルビン酸又はその塩、還元糖、タウリン及び亜硫酸塩を含有することを特徴とする液剤である。 本発明により、還元糖及びタウリンを含有する液剤中で、アスコルビン酸又はその塩を安定に含有する液剤を提供することが可能になった。 本発明に使用するアスコルビン酸とは、L−アスコルビン酸又はその誘導体(L−アルコルビン酸2−グルコシド、L−アスコルビン酸−2−リン酸エステル等)であり、塩とは、例えばナトリウム塩又はカルシウム塩のような薬理学的に許容される塩である。なお、本発明のアスコルビン酸又はその塩の含有(配合)量は、アスコルビン酸に換算して、例えば液剤中で0.1〜2.0W/V%である。 本発明の還元糖とは、水溶液中で還元性を有する糖であり、ブドウ糖、果糖、ショ糖等が挙げられる。ブドウ糖は分子式C6H12O6で表されるアルドヘキソースであって、グルコース、デキストロースともいう。果糖は分子式C6H12O6で表されるアラビノヘキスロースであって、フルクトース、レブロースともいう。ショ糖は分子式C12H22O11で表され、スクロース、砂糖ともいう。ショ糖そのものは非還元糖であるが、水溶液中でブドウ糖及び果糖に分解され、これらの糖は還元性を有する。還元糖の含有(配合)量は、風味の観点から液剤中で1〜30W/V%が好ましい。 本発明のタウリンとは、分子式C2H7NO3Sで表され、2−アミノエタンスルホン酸ともいう。本発明に使用するタウリンの含有(配合)量は適宜選択して使用でき、例えば液剤中で0.15〜3.0W/V%である。 本発明の亜硫酸塩とは、液剤中で亜硫酸イオンに解離する塩であり、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。本発明に使用する亜硫酸塩の含有(配合)量は適宜選択して使用でき、アスコルビン酸1質量部に対して通常0.001〜1質量部であり、アスコルビン酸又はその塩の安定性を向上させるという観点からは、0.01〜0.4質量部が好ましい。 本発明にかかる液剤のpHは、2.5〜7.0であり、好ましくは3.0〜5.0である。pH2.5未満の酸性域ではアスコルビン酸又はその塩が加水分解され不安定になることから好ましくなく、pHが7.0を超える領域では、酸化分解の影響により、やはりアスコルビン酸又はその塩が分解されて不安定になることから好ましくない。これらは本発明の亜硫酸塩の配合をもってしてもアスコルビン酸又はその塩の安定性を維持できない程度のものである。また、本発明の液剤のpHを上記範囲に保つために、必要に応じてpH調整剤が配合される。pH調整剤としては、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、乳酸、コハク酸などの有機酸及びそれらの塩類、塩酸などの無機酸、水酸化ナトリウムなどの無機塩基などが挙げられる。 本発明の液剤にはその他の成分として、アスコルビン酸以外のビタミン類、ミネラル類、タウリン以外のアミノ酸及びその塩類、生薬、生薬抽出物、カフェイン、ローヤルゼリーなどを本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。 さらに必要に応じて、抗酸化剤、着色剤、香料、矯味剤、界面活性剤、溶解補助剤、保存剤、本発明の還元糖以外の甘味料などの添加物を本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。 特に本発明の液剤において、糖アルコールを配合することにより、さらに風味を向上させることができる。糖アルコールとしては、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール等が挙げられる。これらは、単独で配合してもよく、また、2種以上を組み合わせて配合してもよい。ただし糖アルコールには緩下作用があるので、1回服用量は1〜40gで最大無作用量以下に設定する必要がある。 本発明の液剤は、常法により調製することができ、その方法は特に限定されるものではない。通常、各成分を秤量し適量の精製水で溶解した後、pHを調整し、さらに精製水を加えて容量調整し、必要に応じてろ過、滅菌処理することにより得られる。 本発明の液剤は、例えばシロップ剤、ドリンク剤などの医薬品や医薬部外品などの各種製剤、健康飲料などの各種飲料に適用することができる。 以下に実施例、比較例及び試験例を挙げ、本発明をより詳しく説明する。実施例は本発明の実施の形態を具体的に示す例であり、試験例は実施例を評価した試験の例である。 実施例1 本発明の液剤 比較例1 タウリン及び還元糖を含有しないことから、アスコルビン酸の安定性が保たれた液剤 比較例2 比較例1に亜硫酸ナトリウムを配合した液剤 比較例3 タウリンを含有するが、還元糖を含有しないことから、アスコルビン酸の安定性が保たれた液剤 比較例4 還元糖を含有するが、タウリンを含有しないことから、アスコルビン酸の安定性が保たれた液剤 比較例5 タウリン及び還元糖を含有することから、アスコルビン酸の安定性が著しく低下した液剤 比較例6〜8 従来の安定化技術を用いてアスコルビン酸の安定化を図ろうとした液剤 比較例9 比較例5に対して窒素置換を施していない液剤 製造方法 表1に記載の処方の各成分を秤量して精製水に溶解させ全量を50mLとした後pHを4.6に調整することで、本発明の実施例及び比較例の液剤を得た。得られた液剤を茶褐色ガラスビンに充填し、必要に応じてヘッドスペースの窒素置換を行った後にキャップを施した。 試験例 アスコルビン酸の安定性試験 実施例1及び比較例1〜9の液剤について、安定性試験を、以下の試験方法に従い実施した。 試験方法 実施例1及び比較例1〜9で得た液剤を65℃恒温槽にて1週間保存した。これらの液剤を液体クロマトグラフ法(カラム:YMC-PACK Polyamine−II(YMC)、移動相: 50mM リン酸二水素アンモニウム水溶液:アセトニトリル=2:3、流速:1mL/min、検出波長:245nm)により定量した。 調製直後のアスコルビン酸含量に対する65℃1週間後の残存率を表2に示した。表2から明らかなように、還元糖及びタウリンを含有しない場合やどちらか一方を含有する場合と比較して、還元糖及びタウリンを含有する場合は、アスコルビン酸の安定性が大きく低下した(比較例1、3〜5)。亜硫酸塩を配合した実施例1は、対応する比較例5と比較してアスコルビン酸の安定性が大きく改善されていた。この安定化効果は還元糖及びタウリンを含有しない場合の安定化効果(比較例1及び2)よりも大きかった。この結果から亜硫酸ナトリウムを含有させることにより、還元糖及びタウリンを含有する液剤においてアスコルビン酸を安定に含有させることができることが明らかとなった。また、従来のアスコルビン酸の安定化方法に用いられるメタリン酸ナトリウム、クロロゲン酸、カテキンをそれぞれ添加した比較例6〜8ではアスコルビン酸の安定化は図れず、窒素置換による安定化効果も充分なものではなかった(比較例5及び9)。 実施例2 アスコルビン酸 1.00g 硝酸チアミン 0.01g 塩酸ピリドキシン 0.01g タウリン 1.00g ニコチン酸アミド 0.02g 無水カフェイン 0.05g ショ糖 10.00g クエン酸 0.50g クエン酸ナトリウム 適量 安息香酸ナトリウム 0.06g 亜硫酸ナトリウム 0.10g ミックスフルーツフレーバー 0.10g 上記成分を精製水に溶解した後、pHを3.5に調整し、精製水を加えて全量を100mLとした。この液をろ紙でろ過し、滅菌装置を用いて、ろ液を80℃で25分間加熱滅菌した後、ガラス瓶に充填しキャップを施して液剤を得た。 実施例3 アスコルビン酸 0.50g リン酸リボフラビンナトリウム 0.02g グルコン酸カルシウム 1.00g アスパラギン酸マグネシウム 1.00g 硝酸チアミン 0.01g 塩酸ピリドキシン 0.01g タウリン 3.00g 無水カフェイン 0.05g ブドウ糖 4.00g トレハロース 2.00g キシリトール 2.00g ステビア抽出物 0.03g リンゴ酸 0.20g クエン酸 0.40g クエン酸ナトリウム 適量 安息香酸 0.06g 亜硫酸ナトリウム 0.20g ミックスフルーツフレーバー 0.10g 上記成分を精製水に溶解した後、pHを4.0に調整し、精製水を加えて全量を100mLとした。この液をろ紙でろ過し、滅菌装置を用いて、ろ液を80℃で25分間加熱滅菌した後、ガラス瓶に充填しキャップを施して液剤を得た。 実施例4 アスコルビン酸ナトリウム 0.50g フマル酸第一鉄 0.003g リン酸リボフラビンナトリウム 0.02g 塩酸ピリドキシン 0.01g タウリン 1.00g ニコチン酸アミド 0.02g 無水カフェイン 0.05g 果糖ブドウ糖液糖 4.00g マルチトール 4.00g ソルビトール 3.00g アセスルファムカリウム 0.03g クエン酸 0.50g クエン酸ナトリウム 適量 安息香酸ナトリウム 0.06g 亜硫酸ナトリウム 0.10g ミックスフルーツフレーバー 0.10g 上記成分を精製水に溶解した後、pHを4.5に調整し、精製水を加えて全量を100mLとした。この液をろ紙でろ過し、滅菌装置を用いて、ろ液を80℃で25分間加熱滅菌した後、ガラス瓶に充填しキャップを施して液剤を得た。 上記の実施例2〜4は、アスコルビン酸の安定性が改善されていた。 本発明の液剤を用いて、アスコルビン酸又はその塩、還元糖及びタウリンを含有する安定な内服液剤、ドリンク剤、飲料等を提供できる。アスコルビン酸又はその塩及びL−アスコルビン酸2−グルコシドからなる群から選ばれる1種又は2種以上、還元糖、タウリン及び亜硫酸塩を含有することを特徴とする液剤。還元糖がショ糖、ブドウ糖及び果糖からなる群より選ばれる1種又は2種以上である請求項1に記載の液剤。亜硫酸塩が亜硫酸ナトリウム及びピロ亜硫酸ナトリウムの少なくとも1種である請求項1に記載の液剤。pHが2.5〜7.0である請求項1〜3のいずれか1項に記載の液剤。アスコルビン酸又はその塩及びL−アスコルビン酸2−グルコシドからなる群から選ばれる1種又は2種以上、還元糖及びタウリンを含有する液剤において、亜硫酸塩を含有させることにより、液剤中のアスコルビン酸又はその塩及びL−アスコルビン酸2−グルコシドからなる群から選ばれる1種又は2種以上を安定化する方法。


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