タイトル: | 特許公報(B2)_医薬品製剤の溶出試験方法 |
出願番号: | 2007007786 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | G01N 33/15 |
四方田 千佳子 JP 5433844 特許公報(B2) 20131220 2007007786 20070117 医薬品製剤の溶出試験方法 公益財団法人ヒューマンサイエンス振興財団 803000056 特許業務法人前田特許事務所 110001427 滝田 清暉 100087631 中村 成美 100136342 四方田 千佳子 20140305 G01N 33/15 20060101AFI20140213BHJP JPG01N33/15 A G01N 33/15 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 特開2000−070967(JP,A) 特開昭63−036814(JP,A) 特開平09−306460(JP,A) 特開2004−359293(JP,A) 特開2005−077250(JP,A) 10 2008175603 20080731 15 20100108 吉田 将志 本発明は、医薬品製剤に含まれる特定成分の溶出性を評価する医薬品製剤の溶出試験方法に関し、更に詳しくは、特に皮膚適用製剤の評価に好適な、薬物の放出挙動を簡便に且つ正確に予測することができる医薬品製剤の溶出試験方法に関する。 皮膚適用製剤は、皮膚への作用を目的とした局所製剤として使用されている。また、経口投与した場合にバイオアベイラビリティーが低い医薬品は、注射剤として使用されることが多いが、注射剤以外の剤形として経皮吸収型の皮膚適用製剤も広く検討されている。 皮膚適用製剤の品質評価方法としては、現在、欧州薬局方(EP)および米国薬局方(USP)に、溶出試験のベッセル内に製剤を固定する装置を設置する方法や、パドル部分を改変した溶出試験法など数種が収載されている。しかしながら、日本薬局方(日局)には、皮膚適用製剤の品質評価法は未だ収載されておらず、EPまたはUSPに収載された方法が用いられているというのが現状である。 例えば、パドルオーバーディスク法については、皮膚適用製剤をそのまま試験液に曝すため、塗り薬については使用できない。また、貼付剤については、製剤が水分を吸収して膨潤し、明らかに皮膚に適用した際の状態とは異なるため、正確な薬物の放出挙動を予測することができないという問題がある。これについては、人口汗を試験液として用いると、製剤の膨潤を防止し得ること等が知られているが(非特許文献1〜3)、十分に満足のできる効果は得られていない。森本雍憲,小林大介,夏目秀視,沼尻幸彦:医薬品研究,30,556-558(1999)平船寛彦,島村剛史,上田秀雄,沼尻幸彦,小林大介,森本雍憲:医療薬学,30, 723-729(2004)Shimamura, T., Tairabune, T., Kogo, T., Ueda, H., Numajiri, S., Kobayashi, D., Morimoto, Y.: Chem. Pharm. Bull., 52,167-171(2004) また、皮膚適用製剤の溶出試験では、従来から、製剤が直接試験液に接しないようにする目的で、試験液と製剤を隔てる透析膜やミリポア膜が使用されている。例えば、クロニジンおよびニトログリセリン経皮吸収製剤に、FDAの推奨する時計皿にテフロンメッシュを組み合わせた器具を使用するパドル法を適用した場合には、製剤のバッチ間の品質管理を有効に行なうことができることが判明している(非特許文献4〜6)。その他にも、ディスクに皮膚適用製剤を保持させ多孔質膜で覆う放出試験方法等が知られている(特許文献1および2)。Shah,V.P., Tymes,N.W., Skelly, A.P.:Pharm.Res.,6,346-351(1989)Shah, V.P., Lesko L.J., Williams, R.L.:Eur.J.Pharm.Biopharm., 41,163-167(1995)Shah,V.P., Elkins,J.,Hanus,J., Noorizadeh,C., Skelly,J.P.: Pharm.Res., 8,55-59(1991)特開平8-114487号公報特開2005-77250号公報 しかしながら、これらの方法は、何れも高価な装置を使用するだけでなく、試料の充填も煩雑であるため、安価で、簡便に皮膚適用製剤の品質評価を行なうことのできる装置や、品質評価方法の開発が求められていた。 また、皮膚適用製剤と同様に、座剤等の内用固形製剤以外の製剤についても、安価で、簡便に製剤の品質評価を行なうことのできる装置や、品質評価方法の開発が求められていた。 従って本発明の目的は、安価で、簡便に医薬品製剤の品質評価を行なうことのできる、医薬品製剤の溶出試験方法を提供することにある。 本発明者等は、上記の諸目的を達成するために鋭意検討した結果、医薬品製剤から放出される物質を透過し得る多孔シートを用いて試料を密封した場合には、試料を直接水と接触させることなく、簡便に且つ正確に、放出された薬物の種類と量を測定することが可能であり、これによって、薬物の放出挙動を予測することができることを見出し、本発明に到達した。 即ち本発明の医薬品製剤の溶出試験方法は、医薬品製剤から放出される物質を透過し得る熱融着可能な多孔シートを少なくとも一部に用いた高分子シートによって対象医薬品製剤を密封してなる医薬品製剤の溶出試験用試料バッグを調製し、該試料バッグの少なくとも前記多孔シート面と試験液を動的に接触させた後、該医薬品製剤から放出され前記試験液中に溶解した物質を分析することを特徴とする医薬品製剤の溶出試験方法である(請求項1)。 また前記試料バッグは、多孔シート片上の左右上下何れかの箇所に医薬品製剤を載せた後、該医薬品を包むように多孔シートを左右又は上下に二つ折りにし、解放されている3辺を接合して密封することにより調製することができる(請求項2)だけでなく、医薬品製剤から放出される物質を透過し得る熱融着可能な多孔シート、及び該シートと熱融着可能な高分子シートによって測定対象とする医薬品製剤を密閉封入すること(請求項3)によって調製することもできる。 更に、本発明における前記多孔シート面と試験液の動的な接触は、該多孔シート面に試験液を流すことによって行っても(請求項4)、前記試料バッグを試験液中に入れて該試験液を攪拌することによって行っても良い(請求項5)。 本発明においては、密封を確実にする上から、測定対象とする医薬品製剤の密閉封入を、熱融着によって行うことが好ましく(請求項6)、上記溶出試験を日本薬局方に定められた溶出試験器を用いて行うことが、標準化の観点から好ましい(請求項7)。 本発明の試験方法は、前記医薬品製剤が皮膚適用製剤である場合に特に有効である(請求項8)。 本発明の溶出試験に際しては、前記試料バッグの多孔シート表面から放出される物質を速やかに試験液全体に拡散させるために、該試料バッグを試験液中のいずれかの箇所に固定し、試験液を攪拌することが好ましい(請求項9)。また、溶出試験器を使用しない場合には、試験液の攪拌をマグネティックスターラーを用いて行うこともできる(請求項10)。 本発明の溶出試験方法は、熱融着可能な多孔シートを少なくとも一部に用いた高分子材料により対象医薬品製剤を密封して溶出試験を行なうため、高価な専用装置を必要とすることなく、安価で、簡便に且つ正確に皮膚適用製剤の品質評価を行なうことができる。 以下、本発明の医薬品製剤の溶出試験方法について詳細に説明する。 本発明の医薬品製剤の溶出試験方法は、医薬品製剤から放出される物質を透過し得る熱融着可能な多孔シートを少なくとも一部に用いた高分子シートによって対象医薬品製剤を密封してなる医薬品製剤の溶出試験用試料バッグを調製し、該試料バッグの少なくとも前記多孔シート面と試験液を動的に接触させた後、該医薬品製剤から放出されて前記試験液中に溶解した物質を分析する方法である。 皮膚適用製剤等の医薬品製剤の溶出試験では、製剤が試験液に何らかの形で接することを避け、試験中、なるべく薬物の放出が自然になされるように条件設定をすることが望ましい。本発明においては、試料バッグで医薬品製剤を密封することによって、バッグ内部に内包される医薬品製剤を直接試験液に触れさせることなく多孔シートの孔から薬物を放出させるため、その挙動は使用状態に近似しており、薬物の放出挙動を簡便に且つ正確に予測することが可能となる。 本発明の溶出試験方法においては、医薬品製剤の溶出試験用試料バッグとして本発明のバッグ材料を用いることができるだけでなく、多孔シートに、直接、貼付剤等の医薬品を貼り付けた後、多孔シート同士を熱融着して前記医薬品を密封し、使用することも可能である。 例えば、多孔シート片上の左右上下何れかの箇所に医薬品製剤を載せた後、該医薬品を包むように多孔シートを左右又は上下に二つ折りにし、解放されている3辺を接合して密封したり、医薬品製剤から放出される物質を透過し得る熱融着可能な多孔シート、及び該シートと熱融着可能な高分子シートによって測定対象とする医薬品製剤を密閉封入することができる。 上記多孔シートは、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、酢酸セルロース、親水性ポリビニリデンフロライド、ナイロン、疎水性ポリビニリデンフロライド、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、セルロース混合エステル等、熱融着可能な公知の多孔性高分子シートの中から適宜選択して使用することができる。試験液が内部に侵入しない限り、孔の大きさは任意であり、メッシュのようなものでも良い。 また上記高分子シートは、前記多孔シートと熱融着可能な高分子シートである限り特に制限はなく、前記した多孔シートであっても、多孔性を有しないシートであっても良い。 上記多孔性を有しないシートは、上記多孔性シートと同じ高分子からなっていても良いことは当然であるが、更に、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ビニルアセテートやエチレン酢酸ビニル共重合体などの共重合樹脂、ポリエチレンテレフタラートなどのポリエステル樹脂等の公知の熱融着性高分子シートの中から、前記多孔シートと熱熔融温度が近く、熱融着可能な高分子シートを適宜選択しても良い。 対象医薬品製剤を上記多孔シート等に密封する際には、多孔シートだけを用いて密封しても、その一部を多孔シートとし、それ以外の部分を多孔シート以外の熱融着可能な高分子シートとしても良いが、軟膏剤等の皮膚適用製剤の場合には、一部分を多孔シートとし、それ以外の部分を非多孔性の熱融着可能な高分子シートとすることが好ましい。軟膏剤を非多孔シート上に塗ることによって、多孔シート上に塗ることにより派生する、軟膏の不都合な浸みだしを防ぐことができる。なお、軟膏を塗布した後に反対側の多孔シートを、塗布した軟膏に軽く接触させても良い。 医薬品製剤が、貼付剤のような皮膚適用製剤である場合には、貼付剤の皮膚に適用する面を多孔シートに向けて封入する。 また、座剤や錠剤については、座剤や錠剤を移動可能な状態でバッグ内に密封すれば良い。 対象医薬品製剤の密封方法としては、多孔シート同士、あるいは、多孔シートと高分子シートによって密封できれば良いため、両面テープで密封しても良いが、密封性の高さ、及び、両面テープからの揮発物の混入を防止する上から、特に熱融着によって医薬品製剤を密封封入することが好ましい。 また、対象医薬品製剤を密封する上記多孔シート等は、予め試験液またはメタノール、エタノール、イソプロパノール等の溶媒を用いて多孔シート表面を処理したものを使用してもよい。 特に疎水性の強い多孔シートを使用する場合には、多孔シートの孔を、予め試験液等を通すことにより濡らしておくことが好ましい。 このようにして得られた試料バッグの多孔シート面と試験液とを、該多孔シート表面に試験液を循環させるなどの方法によって動的に接触させた後、吸光度測定法や液体クロマトグラフ法等の公知の方法によって、試験液中に溶出した物質を分析することができる。 試験バッグを試験液中に入れる場合には適宜試験液を攪拌することが必要であるが、試料バッグから溶出する物質が拡散する程度に攪拌される限り、その攪拌方法は特に制限されることはない。該攪拌方法としては、例えば、パドル、マグネチックスターラー等を用いた攪拌方法が挙げられる。 溶出試験器を用いる場合にはパドルで攪拌されるが、溶出試験器を使用しない場合、即ち、ビーカーや三角フラスコ等を用いて溶出試験を行なう場合には、パドルによる攪拌だけでなく、簡便さの観点から、マグネティックスターラーを使用することも可能である。 なお、攪拌に際しては、パドル等の攪拌器具が、試料バッグに直接接触しないようにすることが好ましい。 また、溶出試験に際しては、日本薬局方に定められた溶出試験器、即ち、ベッセル、パドル、ディスク、シリンダー等を用いて溶出試験を行なうことができる他、単なるビーカーや三角フラスコ等を用いることも可能である。 例えば、ベッセルに一定の試験液を入れ、熱融着可能な多孔シートと熱融着可能な高分子シートで医薬品製剤を密閉封入してなる試料バッグを投入した後、パドルで攪拌し、溶出試験を行なうことができる。 温度、試験液、パドルの回転数等の条件については、特に制限はないが、適宜、溶出試験の対象となる医薬品製剤の種類に適した条件に設定される。 また、試料バッグを試験液に曝す際、試料バッグの多孔表面が試験液に浸漬されていれば特に問題はないが、試料バッグが浮く場合には、試料バッグを何れかの箇所に固定したり、重りをつけて沈めても良い。 重りをつけて底部に沈める方法は、ベッセルの中央部に試料バッグを固定する部材を設置する方法より簡便であるので特に好ましい。重りの形状に特に制限はないが、硝子製ベッセル等を傷つけない、滑らかな表面とすることが望ましい。 本発明の溶出試験方法は、バッグ内部に内包される医薬品製剤が直接試験液に触れることがなく、且つ、多孔シートの孔から放出される薬物の量を測定することによって薬物の放出挙動を予測するものであるため、胃腸等で消化吸収される経口投与型製剤ではなく、皮膚適用製剤、座剤、膣剤、組織内埋め込み剤、粘膜適用剤、眼軟膏剤などの、大量の体液を介さずに薬剤が体内に放出され吸収される医薬品の評価に用いることができる。 特に、パップ剤、プラスター剤等の貼付剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、スティック剤などの皮膚適用製剤の評価に好適である。 本発明の医薬品製剤の溶出試験用バッグ材料は、元来円筒状であっても(図1)、1枚または2枚のシートを貼り合わせたもの(図2)であっても良い。何れにしても、図1に示されるような円筒状の高分子シートを、図3に示されるように円筒をつぶした場合に、少なくとも一方の面が医薬品製剤から放出される物質を透過しうる多孔性シートとなり得ることが必要である。従って、2枚のシートを貼り合わせる場合には、少なくとも一方のシートは多孔性である。 図1に示すように円筒状高分子シート等からなるバッグ材料の内部に医薬品製剤を配置した後、開口している両縁部を熱シール等によって密封する(図3)。これにより、医薬品製剤をバッグ内に密封した溶出試験用試料として用いることができる。以下、医薬品製剤をバッグ内に密封したものを「試料バッグ」という。 本発明の医薬品製剤の溶出試験用バッグ材料は、医薬品製剤から放出される物質を透過し得る熱融着可能な多孔シートと、該シートと同型且つ熱融着可能な高分子シートを重ね合わせ、4辺のうちの1〜3辺を熱融着させた形状とすることもできる(図4および図5参照)。 該バッグ材料の熱融着されていない部分から、多孔シートと熱融着可能な高分子シートの間に、上記した医薬品製剤の配置方法と同様にして医薬品製剤を配置した後、残りの辺を熱融着等によって密封し、溶出試験用試料として用いることもできる。本発明では、熱融着に替えて両面接着テープを使用しても良い。 また、本発明の医薬品製剤の溶出試験用バッグ材料は、医薬品製剤から放出される物質を透過し得る熱融着可能な多孔シートと、該シートと同型且つ熱融着可能な高分子シートを重ね合わせ、3辺を熱融着させ、残りの辺を図6に示されるような開閉可能なチャックとすることができる。 この態様の場合には、該バッグ材料の開閉可能なチャックを開き、多孔シートと熱融着可能な高分子シートの間に、上記した医薬品製剤の配置方法と同様にして医薬品製剤を配置した後、チャックを閉めるだけで医薬品製剤の溶出試験用試料として用いることができる。この場合には作業が非常に簡便であるだけでなく、用いた医薬品製剤の種類によっては、バッグ内部を洗浄して再使用することもできるので経済的である。 以下、実施例によって、本発明の溶出試験用バッグ材料および薬物溶出試験方法を更に詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。<試験製剤> 皮膚適用製剤として、下記の表に示した8種類のフェルビナク貼付剤を用いた。 A〜DおよびF〜Hの7製剤は、フェルビナク70mgを含有する貼付剤(10cm×14cm)で、Eの1製剤のみが、半分のサイズ(10cm×7cm)であり、フェルビナク35mgを含有する貼付剤であった。 また、A〜Dの4製剤は、ポリアクリル酸などを基材とする含水ゲル様製剤、E〜Hの4製剤は、メタクリル酸・アクリル酸n-ブチルコポリマーやスチレン・イソブチレン・スチレンブロック共重合体等を基材とする固い高分子層からなるテープ様製剤であった。<溶出試験実験条件> 溶出試験器は、NTR-6100(富山産業(株)製)にオートサンプラー-Wを接続して用いた。特に記載しない場合は、パドル法の試験方法に従って、試験液としてpH6.0のリン酸緩衝液900mLを用い、32℃で、毎分50回転の条件で試験を行った。 各試験液採取時間に試験液を10mLずつ分注し、かわりに、同量の試験液を補充した。 パドルオーバーディスク用ディスクとしては、USP Apparatus 5に収載されているパドルオーバーディスク用ディスクに準拠して作成されているパドルオーバーディスク(富山産業(株)製)を使用した。USP Apparatus 6 のシリンダーとしては、TTSシリンダー(富山産業(株)製)を用いた。 また、直径47mmのメンブランフィルター膜(ミリポア社製)を装着できるセルとして軟膏ディスク(Hanson Research社製)を使用した。 メンブランフィルターとしては、セルロース混合エステル(HA;ミリポア社製)、ナイロンメンブレンフィルター(HN;ミリポア社製)、オムニポアメンブレンフィルター(JH;ミリポア社製)、親水性デュラポアフィルター(HVLP;ミリポア社製)、及び疎水性デュラポアフィルター(HVHP;ミリポア社製)を用いた。なお孔径は、全て0.45μmのものを使用した。<溶出試験液中のフェルビナク含量の測定> 採取試験液中のフェルビナク含量は、HPLCを用いて測定した。HPLC装置は、Agilent 1100シリーズ(横河アナリティカルシステムズ(株)製)、カラムは、MightysilRP-18 GP150 [4.6×150mm])(関東化学(株)製)を用いた。移動相はリン酸(1→1000):アセトニトリル=1:1、検出波長は254nmとし、流速1mL/分の条件で測定を行った。なお、前記リン酸濃度は日本薬局方の規定に基づく記載であり、リン酸1mgを溶解して1000mlの溶液を調製したことを意味する。 USP、EPにはパドル法の別法として、パドル部分の代わりに、シリンダーと呼ばれる円筒型の金属製装置を取り付ける試験法が収載されている。そこで、製剤Cを用いて、パドルオーバーディスク法とシリンダー法により溶出試験を行なった。 先ず、2枚のHVLP膜を用意し、1枚のHVLP膜に粘着面を向けてフェルビナク貼付剤を貼り付け、貼付剤の裏面を覆うようにもう1枚のHVLP膜を重ね、貼付剤を封入するように2枚のHVLP膜の4辺を熱溶着して、封をした試料バッグを準備した。 次に、パドルオーバーディスク法については、上記のようにして調製した試料バッグを、パドルオーバーディスク(富山産業(株)製)にセットして溶出試験を行なった。 シリンダー法については、図7の右側に示すようなTTSシリンダー(Hanson Research社製)に、上記のようにして得られた試料バッグを挿入して、溶出試験を行なった。 実施例1の結果を、図7(左側)に示す。貼付剤を封入した試料バッグをパドルオーバーディスクにセットして、パドルの下に配置して溶出試験を行なった場合でも、シリンダーに挿入して溶出試験を行なった場合でも、同様の放出挙動が得られることが確認された。 特殊な装置を用いることなく、溶出試験の試料として供することができるよう、実施例1と同様の方法によりA〜Hの8製剤をHVLP膜で密封して試料バッグを調製し、パドル法で溶出試験を行なった。その結果を図8に示す。<比較例> 欧州薬局方(EP)に収載されている、メンブランフィルターを用いて行なうパドルオーバーエクストラクションセル法(European Pharmacopeia 5.0,p231〜231)と類似の状況で溶出試験を行ない、本発明との比較を行なった。 具体的には、軟膏ディスク(Hanson Research社製)に、各製剤を粘着層を上側にして両面テープで貼り付け、その上に孔径0.45μm、47mm径のメンブランフィルター(HVLP膜)を置き、メンブランフィルターを押さえるリングを締め付けた後ベッセル底部に沈め、パドル法で溶出試験を行った。図9に結果を示す。 以上の実施例2および比較例の結果から、本発明の溶出試験方法は、従来の高分子膜を使用する試験方法と比較して、特殊な機器を使用することなく簡便に実施することができ、しかも従来法と同様の溶出結果を得られることから、皮膚適用製剤等の医薬品の評価に有用であることが確認された。 上記したように、本発明の医薬品製剤の溶出試験方法は、従来のような特殊な装置を用いることなく、試験液入りのビーカーに試料バッグを入れてマグネティックスターラーで攪拌するだけでも良いので、安価で、簡便に溶出試験を行なうことができ、産業上極めて有用である。本発明の溶出試験用バッグ材料の1例を示す図である。本発明の溶出試験用バッグ材料の1例を示す図である。本発明の溶出試験用バッグ材料の使用態様(溶出試験用試料バッグ)を示す図である。本発明の溶出試験用バッグ材料の1例を示す図である。本発明の溶出試験用バッグ材料の1例を示す図である。本発明の溶出試験用バッグ材料のチャック構造を示す図である。パドルオーバーディスク法とシリンダー法との間における製剤Cからのフェルビナクの放出特性の比較を示す図である。パドルオーバーディスク法による8製剤のフェルビナクの放出特性を示す図である。パドルオーバーエクストラクションセル法による8製剤のフェルビナクの放出特性を示す図である。符号の説明1 溶出試験用バッグ材料2 縁部3 医薬品製剤4 熱融着部5 開閉チャック 医薬品製剤から放出される物質を透過し得る熱融着可能な多孔シートを少なくとも一部に用いた高分子シートによって、対象医薬品製剤を密封してなる医薬品製剤の溶出試験用試料バッグを調製し、該試料バッグの少なくとも前記多孔シート面と試験液を動的に接触させた後、該医薬品製剤から放出され前記試験液中に溶解した物質を分析することを特徴とする、医薬品製剤の溶出試験方法。 前記試料バッグが、多孔シート片上の左右上下何れかの箇所に医薬品製剤を載せた後、該医薬品を包むように多孔シートを左右又は上下に二つ折りにし、解放されている3辺を接合して密封することにより調製される、請求項1に記載された医薬品製剤の溶出試験方法。 前記試料バッグが、医薬品製剤から放出される物質を透過し得る熱融着可能な多孔シート、及び該シートと熱融着可能な高分子シートによって測定対象とする医薬品製剤を密閉封入することにより調製される、請求項1または2の何れかに記載された医薬品製剤の溶出試験方法。 前記多孔シート面と試験液の動的な接触を、該多孔シート面に試験液を流すことによって行う、請求項1〜3の何れかに記載された医薬品製剤の溶出試験方法。 前記多孔シート面と試験液の動的な接触を、前記試料バッグを試験液中に入れて該試験液を攪拌することによって行う、請求項1〜3の何れかに記載された医薬品製剤の溶出試験方法。 測定対象とする医薬品製剤の密閉封入を、熱融着によって行う、請求項1〜5の何れかに記載された医薬品製剤の溶出試験方法。 上記溶出試験を、日本薬局方に定められた溶出試験器を用いて行う、請求項5または6に記載された医薬品製剤の溶出試験方法。 前記医薬品製剤が皮膚適用製剤である、請求項1〜7の何れかに記載された医薬品製剤の溶出試験方法。 溶出試験に際し、前記試料バッグを試験液中のいずれかの箇所に固定する、請求項1〜8の何れかに記載された医薬品製剤の溶出試験方法。 前記溶出試験に際し、試験液の攪拌をマグネティックスターラーを用いて行う、請求項5〜9の何れかに記載された医薬品製剤の溶出試験方法。