生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_水中で剥離する層状複水酸化物、その製造方法および用途
出願番号:2006548989
年次:2012
IPC分類:C01F 7/00,C09D 201/00,C09D 7/12,C09D 5/08,C09D 5/02,A61K 8/26,A61K 8/27,A61K 8/03,A61K 8/06,A61Q 1/00


特許情報キャッシュ

池松 大作 奥宮 毅 JP 5022038 特許公報(B2) 20120622 2006548989 20051220 水中で剥離する層状複水酸化物、その製造方法および用途 テイカ株式会社 000215800 赤岡 迪夫 100060368 赤岡 和夫 100124648 池松 大作 奥宮 毅 JP 2004370532 20041222 20120912 C01F 7/00 20060101AFI20120823BHJP C09D 201/00 20060101ALI20120823BHJP C09D 7/12 20060101ALI20120823BHJP C09D 5/08 20060101ALI20120823BHJP C09D 5/02 20060101ALI20120823BHJP A61K 8/26 20060101ALI20120823BHJP A61K 8/27 20060101ALI20120823BHJP A61K 8/03 20060101ALI20120823BHJP A61K 8/06 20060101ALI20120823BHJP A61Q 1/00 20060101ALI20120823BHJP JPC01F7/00 CC09D201/00C09D7/12C09D5/08C09D5/02A61K8/26A61K8/27A61K8/03A61K8/06A61Q1/00 C01F7、17 CA/REGISTRY(STN) 特開2007−039549(JP,A) 特表2002−503619(JP,A) 特表平09−511211(JP,A) 特開2004−351452(JP,A) 特開2001−098225(JP,A) 特開2000−191943(JP,A) 特開2002−302550(JP,A) Microporous Materials,1997年,10,163-172 Solid State Ionics,1997年,98,73-84 9 JP2005023329 20051220 WO2006068118 20060629 17 20081030 天野 宏樹 本発明は、インターカレーションされるゲスト化合物として酢酸の多価金属塩を選択することにより、水中で剥離する性質を付与した層状複水酸化物、その製造方法および使用方法に関する。 層状複水酸化物(LDH)は、一般式〔M2+1−xM3+x(OH)2〕x+〔An−x/n・yH2O〕で表される陰イオン交換能をもつ層状化合物である。その結晶構造は、2価金属イオンの一部を3価金属イオンが置換した正八面体の水酸化物層(基本層)と、陰イオンと層間水からなる中間層からできている。LDHの特徴は、基本層の金属イオンの種類とその比ならびに中間陰イオンの種類の組み合わせが多様なことである。これまで多くの種類のLDHが合成され、また無機および有機陰イオンインターカレーションによる取り込みについて多くの研究が行われている。 一般にLDHでは基本層の電荷密度が大きく、基本層と中間層との間の静電引力が強いため、多くの粘土鉱物に見られるような層間の剥離現象は起こりにくいとされている。従って水中で容易に剥離するLDHに関する報告は少ないが、その一つとして特開2004−189671号公報がある。ここでは中間層の陰イオンとして芳香族アミノカルボン酸、特にp−アミノ安息香酸をインターカレートすることにより、水またはエタノール等の低級アルコール中で剥離した状態で分散している分散液が得られることを報告している。これは芳香族アミノカルボン酸イオンをインターカレートすることにより、CO32−イオンをインターカレートしたLDHに比べて基本層の距離が拡大された結果であると説明されている。しかしながらこのLDHの剥離現象は、p−アミノ安息香酸のような芳香族アミノカルボン酸の良溶媒であるエタノール中では完全であるが、溶解度が小さい水中では不完全である。このため水中で実質上完全に剥離する新しいタイプのLDHに対して要望が存在する。上記要望を満たすため、一面において本発明は、式(I):M(II)1−xM(III)x(OH)2の金属複水酸化物よりなる基本層と、該基本層間の中間層にインカレートされたMgの酢酸塩および層間水より構成され、水中で可逆的に剥離する層状複水酸化物を提供する。式(I)中、M(II)はMg、M(III)はAlでありxは0.2ないし0.33である。他の面において、本発明は層状複水酸化物の製造方法を提供する。この方法は、式(II):〔M(II)2+1−xM(III)3+x(OH)2〕〔(CO3)x/2・yH2O〕(式中、M(II),M(III)およびxは先の定義に同じであり、yは0より大きい実数である。)の炭酸型層状複水酸化物を400℃以上の温度に加熱して分解し、この熱分解物を酢酸のMg塩と水中において反応させ、生成する固体を反応液から分離し、乾燥後粉砕するステップよりなる。式(II)においてM(II)がマグネシウムの炭酸型LDHはハイドロタルサイトとして知られる。 本発明のLDHは剥離した状態で水に分散して分散液ないし分散ゾルを形成する。この分散液は水中で剥離しないLDHの同一濃度の分散液に比較して可視光領域の光に対して著しく高い透過率を示し、剥離の結果ナノサイズの微粒子として分散していることを証明する。この分散液または分散ゾルを脱水乾燥すれば元のLDHへ復元する。このため例えば金属基板の上に分散液またはゾルを塗布、乾燥すると緻密な透明皮膜を形成する。この皮膜を高温で焼成することにより耐スクラッチ性の硬い塗膜を形成する。このため本発明のLDHのゾルは、単独または公知の防錆顔料を配合して金属素材の防錆塗料として有用である。または公知の水系防錆塗料に配合して防錆性能を向上させることもできる。 他の用途として、保湿剤または安定化増粘剤として化粧品に配合することができる。プラスチックの難燃化を兼ねた補強フィラーとしても有用である。対応する炭酸型LDHおよび酢酸ナトリウムを中間層にインターカレートしたLDHと比較した、本発明のLDHのX線回折チャートである。本発明のLDHの製造に使用した各種原料および酢酸ナトリウムを中間層にインターカレートしたLDHと比較した、本発明のLDHのFT−IRスペクトルのチャートである。本発明のLDHを異なる量の水と接触させた時の図1の同様なX線回折チャートである。図3の水と接触させた本発明のLDH試料を、90℃で1時間乾燥した後のX線回折チャートである。図3の水と接触させた本発明のLDH試料を、150℃で1時間乾燥した後のX線回折チャートである。最良の実施形態 本発明の水中で剥離するLDHは、炭酸型LDHとインターカレートすべき酢酸の多価金属塩から出発し、アニオンをインターカレートしたLDHの製造のための再構築法に類似した方法に従って製造することができる。 再構築法とは、炭酸型LDHを予め400℃〜800℃の温度で焼成して炭酸イオンの大部分を除去した熱分解物を水中で他のアニオンと反応させ、再構築されたLDHを生成させる方法である。本発明においては、炭酸型LDHの熱分解物と、Mg,ZnまたはCeより選ばれた多価金属酢酸塩を水中において反応させる。 出発原料の炭酸型LDHは式(II):〔M(II)2+1−xM(III)3+x(OH)2〕〔(CO3)x/2・yH2O〕を有し、M(II)はMg,Znまたはその混合物であり、M(III)はAlであり、xは0.2ないし0.33の数である。これらはハイドロタルサイト類として天然に存在し、公知の方法に従って合成することもできる。また合成ハイドロタルサイト類のいくつかは、例えば協和化学工業株式会社(日本東京)から市販されている。 反応は、多価金属酢酸塩の水溶液へ炭酸型LDHの熱分解物を加え、攪拌下室温で行うことができる。炭酸型LDHの熱分解物に対する多価金属酢酸塩の比は、Al2O3に換算した熱分解物中のAl含量と少なくとも等モルである。一般に反応生成物はゲル状である。このゲルを反応混合物から濾過、遠心等によって分離し、100℃以上の温度で乾燥し、粉砕することによって本発明LDHが得られる。このもののX線回折パターンは原料の炭酸型LDHおよび多価金属酢酸塩の代りにナトリウム塩を再構築に使用したLDHのX線回折パターンと比較すると、ピークが低角度側にシフトしており、基本層間の距離が大きくなったことを示唆する。また、本発明のLDHの赤外線吸収スペクトルは、再構築において酢酸ナトリウムを使用したLDHのIRスペクトルのカルボキシル基に由来する1360〜1390cm−1付近の吸収が見られず、1390〜1430cm−1に特徴的なピークが見られる。このことから、再構築によって取り込まれた多価金属塩は酢酸ナトリウムを使用して再構築したLDHとは異なる態様で基本層に化学結合していることが示唆される。しかしながらこの結合様式は未だ解明されていない。 本発明のLDHは、公知の芳香族アミノカルボン酸をインターカレートしたLDHと違って水中で実質上完全に剥離(デラミネーション)し、粘稠なコロイド溶液またはゾルを形成する。このことは本発明のLDH(乾燥品)を異なる量の水で水和(湿潤)し、その状態でX線回折分析を行うと、水の量が増大するにつれピークが次第に低角度側に移動し、最終的にはこのピークが消失することによって証明される。このピークの低角度側への移動は、中間層へ水分子が侵入し、基本層間の層間距離を次第に拡大し、ついには結晶構造が破壊されることを示している。しかしながら水和および剥離により結晶構造を失ったLDHを完全に乾燥すると、元の乾燥LDHと同じX線回折パターンを取り戻し、剥離は可逆的であることを示す。 本発明のLDHの水分散液は、同じ濃度の炭酸型LDHの水分散液と比較して、可視光に対して遥かに高い透過率を示す。これは剥離の結果LDHがより小さいナノサイズの粒子として分散しているからである。 これらの性質を利用して、本発明のLDHは金属基材の保護コーティング材料として有用である。本発明LDHの水分散液(コロイド溶液およびゾル)は、基材に塗布し、乾燥することによりそれ自体で透明皮膜を形成する。乾燥した皮膜を350℃以上の高温で焼成することにより、非常に硬い耐スクラッチ性の透明保護皮膜が得られる。 本発明のLDHは、公知の水系金属保護コーティング組成物にフィラーとして添加することもできる。金属保護コーティング組成物に、マイカ、タルク、カオリンなどのフレーク状フィラーを配合し、フレークの長軸方向への配向によって腐食因子の侵入に対するバリヤー層を形成させることは公知である。これらのフレーク状フィラーを本発明のLDHで代替することにより、同じ原理で腐食因子に対するバリヤー層を形成させることができる。剥離した状態にある本発明のLDHは公知のフレーク状フィラーよりもアスペクト比が有意に大きく、かつ厚みが約6〜10nmであって、炭酸塩型LDHの厚み約40〜50nmよりも有意に小さい。そのため匹敵する長径を有する炭酸塩型LDHよりも一層長軸方向への配向が容易であるため、より有効なバリヤー層を形成する。 水系コーティング組成物のビヒクル(バインダー)は常乾型および熱硬化型の水溶液、エマルションおよびディスパージョンから選ぶことができる。その具体例は、アルキド樹脂、オイルフリーポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシエステル(エポキシアクリレート)樹脂、フェノール樹脂、アミノプラスト樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ゴム、それらの混合物および変性樹脂を含む。 添加する場合、防錆顔料は、鉛、クロム等の有害重金属を含まない顔料が好ましく、その例はリン酸亜鉛、リン酸カルシウム、トリポリリン酸アルミニウムのようなリン酸塩系、モリブデン酸亜鉛などのモリブデン酸塩系、ホウ酸亜鉛、ホウ酸カルシウム、メタホウ酸バリウムのようなホウ酸塩系、カルシウム置換シリカ系防錆顔料を含む。 水系金属保護コーティング組成物は塗料分野において当業者には良く知られており、そのフォーミュレーションについてこれ以上の説明は不必要であろう。 他の用途として、本発明のLDHは保湿剤、安定化増粘剤、体質顔料などとして化粧水、乳液、クリーム、ファンデーションなどの化粧品に配合することができる。 以下の実施例は、本発明を例証する目的で提供され、限定を意図しない。実施例中「部」および「%」は特記しない限り重量基準による。第I部 水中で剥離するLDHの製造実施例I−1 Mg−Al系炭酸型LDH(協和化学工業(株)製DHT−6)を700℃において20時間加熱して熱分解物を得た。この熱分解物96.3gを酢酸マグネシウム・4水塩0.28mol/L(60g/L)水溶液1Lへ加え、室温で15時間攪拌した後、生成した固体(ゲル)を濾過して分離し、90℃で10時間乾燥し、粉砕して再構築したLDHを得た。このものをLDH I−1と呼ぶ。実施例I−2 酢酸マグネシウム水溶液を酢酸セリウム・1水塩0.28mol/L(94g/L)水溶液に変更したことを除き、実施例I−1の操作を繰り返し、LDH I−2を得た。実施例I−3 酢酸マグネシウム水溶液を酢酸亜鉛・2水塩0.28mol/L(61.5g/L)水溶液に変更したことを除き、実施例I−1の操作を繰り返し、LDH I−3を得た。実施例I−4 Na2CO3の1mol/L水溶液2Lに、ZnCl2の1mol/L水溶液2.6Lと、AlCl3の1mol/L水溶液1.4Lを、反応液のpHを7に保ちながら滴下した。40℃で1時間熟成した。デカンテーションにより反応混合物から塩化イオンを除去した後、NaCO31mol/L水溶液2Lを加え、5時間加熱還流した。固体生成物を濾過分離し、水洗後60℃で24時間減圧乾燥・粉砕し,Zn−Al系炭酸型LDHとした。 次にこのZn−Al系炭酸型LDHを450℃において20時間加熱して熱分解物を得た。この熱分解物115.1gを酢酸亜鉛0.28mol/L(61.5g/L)水溶液1Lへ加え、室温で15時間攪拌した後、固体を含む反応混合物を100℃で蒸発乾固し、粉砕した。得られた生成物をLDH I−4と呼ぶ。実施例I−5 Mg−Zn−Al系炭酸型LDH(協和化学工業(株)製アルカマイザー)を700℃において20時間加熱して熱分解物を得た。この熱分解物65.3gを酢酸マグネシウム・4水塩0.14mol/L(30.0g/L)水溶液1Lへ加え、室温で48時間攪拌した後、生成した固体(ゲル)を濾過して分離し、 90℃で10時間乾燥した後粉砕し、LDH I−5を製造した。比較例I−1 酢酸マグネシウム水溶液を酢酸ナトリウム0.28mol/L(23g/L)に変更したことを除き、実施例I−1の操作を繰り返した。生成物をLDH I−6と呼ぶ。第II部 第I部で製造したLDHのキャラクタリゼーションX線回折その1 LDH I−1,I−2,I−6(比較品)と、市販のMg−Al系炭酸型LDH(協和化学工業(株)製DHT−6)についてX線回折分析を行った。測定は日本フィリップス社製粉末X線回折装置MPD1880型を用い、測定にはCu管球を用い、電圧40kV、電流30mAの条件で2θ=3〜25°までを走査した。結果を図1のグラフに示す。図中曲線Aは市販のMg−Al系炭酸型LDH、BはLDH I−6、CはLDH I−1、DはLDH I−2のチャートである。 曲線C,Dは曲線Aに比較してピークが低角度側に移動しており、基本層間にそれぞれ酢酸マグネシウムおよび酢酸セリウムが取り込まれ、層間距離が拡大したことを示唆している。これに対し曲線Bではピークの低角度側への移動が見られず、層間距離の拡大はないものと考えられる。X線回折その2 試料として、LDH I−1を0%、50%および70%のイオン交換水で混練したものを用い、その1と同じ機器および同じ条件を用いてX線回折を行った。結果を図3のグラフに示す。図中曲線Eは水0%(乾燥品)、Fは水50%およびGは水70%混練品のチャートである。水の量が増加するにつれ、ピークは低角度側へ移動し、ついに消失するに至る。このことは基本層間に水分子が侵入し、層間距離をさらに拡大し、ついに剥離により結晶構造が破壊されたことを示している。X線回折その3 その2で用いたLDH I−1の50%および70%水混練品をそれぞれ90℃で1時間、および90℃で1時間次いで温度を150℃に上げて1時間乾燥したものを試料とし、その1と同じ機器同じ条件でX線回折を実施し、水と混練する前のLDH I−1のX線回折チャートと比較した。図4に90℃1時間乾燥品のチャートを、図5に90℃1時間プラス150℃1時間乾燥品のチャートを示す。図中、曲線HおよびKは水で混練前のLDH I−1、IおよびLは水50%混練品、JおよびMは70%水混練品のチャートである。水分子の侵入により層間距離が拡大した、および層間が剥離して結晶構造を失ったLDHは、乾燥によって元のLDHへ復元し、乾燥条件を強くするにつれピーク強度も元のLDHと殆んど同じ程度に回復することが見られる。FT−IR分析 パーキンエルマー社製FT−IR分光光度計を用い、KBr錠剤法によりLDH I−1、I−2、I−6(比較品)のFR−IR測定を行い、市販のMg−Al系炭酸型LDH(DHT−6)およびその乾燥品、それに原料物質である酢酸および酢酸マグネシウムのFT−IRチャートと比較した。結果を図2のグラフに示す。 見られるとおり、LDH I−1とLDH I−2のIRスペクトルは非常に似ているが、DHT−6およびLDH I−6のスペクトルとは一致しないので、本発明のLDH(LDH I−1およびI−2)にあっては、LDH I−6のように酢酸がイオンとして基本層に取り込まれているのではなく、多価金属酢酸塩が別の化学結合によってインターカレートされていることを示唆する。LDH水分散液の可視光透過率 LDH I−1および市販のMg−Al系炭酸型LDH(DHT−6)の1%水分散液を調製し、ダブルビーム自記分光光度計(島津製作所製UV3100型)で1cm石英セルを用いて400〜780nmの可視光波長領域において透過率を測定した。すべての波長においてDHT−6の分散液の透過率は殆んど0%であったが、LDH I−1の分散液は50%以上であった。このことは本発明のLDHは水中で実質上完全に剥離してコロイド溶液を生成するのに対し、DHT−6はLDHの結晶構造を保持したままの粒子として分散していることを示している。第III部 金属保護コーティングとしての使用実施例III−1水中で剥離したLDHの造膜性 LDH I−1の粉末の3%水分散液を調製し、ガラス板に各種No.の標準バーコーターを用いて塗装し、90℃で48時間乾燥し、フィルムを形成した。本発明のLDHの水分散液は単独でフィルムを形成した。用いたバーコーターとフィルムの乾燥膜厚(μm)を表1に示す。 生成させた各フィルムについて、ダブルビーム自記分光光度計(島津製作所製UV−3100型)を用いて400〜750nmの可視光波長領域における光透過率を測定したところ、いずれの波長においても70%以上の透過率を示した。 次に上のフィルムを保持したガラスプレートを焼成炉に入れ、500℃で1時間焼成し、JIS K 5600−5−4に従って鉛筆硬度を測定した。結果を表2に示す。 焼成により、耐スクラッチ性の硬いフィルムになった。実施例III−2 LDH水分散ゾルをビヒクルとする金属保護コーティング組成物 本発明のLDHの水または水/エタノール混液分散液を調製し、表3に示す金属基板に塗装し、焼付してテストパネルを作成した。塗装方法、焼付条件、塗膜膜厚も表3に示されている。 実験No.1−7に使用した塗料は、第I部で製造したLDH I−1の水分散液、No.8はLDH I−2の水分散液、No.9はLDH I−4の水:エタノール=7:3混液中の分散液、No.16はLDH I−5の水分散液である。各塗料のLDH濃度は表3に示したとおりである。No.10〜14に使用した塗料は、LDH I−1のほかに添加成分を含み、それらの処方は表4に与えられている。比較用のパネルとして、塗装を施さないボンデ処理鋼板およびMg−Al系炭酸型LDH(DHT−6)を塗装したものを用いた。 使用した軟鋼板は、脱脂軟鋼板SPCC−SB(JIS G 3141)、亜鉛メッキ鋼板は脱脂亜鉛メッキ鋼板SGCCである。電着塗装は対極としてステンレス鋼板を使用し、直流10V,3分で行った。防錆試験防錆試験1: 作成したパネルを機内温度35℃に保った塩水噴霧試験装置に入れ、5%NaCl溶液を8時間および24時間噴霧し、錆の発生を観察した。防錆試験2:機内温度20℃、相対湿度80%に保った恒温恒湿室にテストパネルを入れ、24時間後の錆の発生を観察した。 結果を表5に示す。考察 表5に示した結果は、本発明のLDHを1%以上含む分散液からの塗膜は、他の添加成分を含まなくても有意な防錆効果を示し、他の添加成分を含む3%以上のLDH分散液は満足な防錆効果を示す。このことから、本発明のLDHは水系防錆塗料のビヒクルとして有用であることが証明される。実施例III−3 水系コーティング組成物へのLDHの配合 有機ポリマーをフィルム形成成分とする水系塗料組成物へ本発明のLDHを配合し、金属基板へ塗装し、テストパネルを作成し、防錆試験を行った。テストパネルの作成実施例III−3−1 水系エポキシエステル樹脂ディスパージョン(大日本インキ化学工業(株)製ウォーターゾールCD540、不揮発分40%)28.6gに、LDH I−1 2.4g、イオン交換水10g、1mm径のガラスビーズ140gを添加し、ペイントコンディショナーで30分間分散した。これに上記樹脂ディスパージョン27.0gとドライヤー(大日本インキ化学工業(株)製ディックネート3110)0.7gを追加し、さらに15分間分散し、濾過してP/B比(顔料/バインダー樹脂固形分重量比)0.11の塗料を製造した。 この塗料を脱脂した軟鋼板SPCC−SB(JIS G 3141)に乾燥膜厚30μmになるようにバーコーターを用いて塗装し、室温で1週間乾燥し、テストパネルを作成した。実施例III−3−2 LDH I−1をLDH I−2へ変更することを除き、実施例III−3−1を繰り返してテストパネルを作成した。実施例III−3−3 LDH I−1をLDH I−4へ変更することを除き、実施例III−3−1を繰り返してテストパネルを作成した。実施例III−3−4 LDH I−1 2.4gをLDH I−1 4.4gと炭酸カルシウム17.8の混合物へ変換することを除き、実施例III−3−1を繰り返してテストパネルを作成した。塗料のP/B比は1.0であった。実施例III−3−5 LDH I−1 2.4gを、LDH I−1 4.4g、炭酸カルシウム13.4g、トリポリリン酸アルミニウム(テイカ(株)製K−WHITE#105)4.4gの混合物へ変換することを除き、実施例III−3−1を繰り返してテストパネルを作成した。塗料のP/B比は1.0であった。実施例III――3−6 ウォーターゾールCD−540を水溶性ウォーターゾールCD−520(大日本インキ化学工業(株)製水溶性アルキド樹脂、不揮発分40%)へ変換することを除き、実施例III−3−1を繰り返してテストパネルを作成した。実施例III−3−7 アクリル樹脂エマルション(大日本インキ化学工業(株)製ボンコート5410、不揮発分50%)24.9gに、LDH I−1 2.4gをあらかじめイオン交換水46g中で剥離させた分散ゾルを加え、RPM3000において高速ディスパーミルで5分間分散し、これにボンコート5410を20g追加し、さらに10分間分散した。この塗料を用いて実施例III−3−1と同じ条件で軟鋼板に塗装し、室温で1週間乾燥してテストパネルを作成した。実施例III−3−8(カチオン電着塗料)アミン変性エポキシ樹脂エマルション エポキシ当量約950のビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シエル(株)製エポン1004)1900部をブチルセロソルブ1012部に溶解し、80〜100℃に加熱してからジエチルアミン124部を滴下し、ついで120℃に2時間保持してアミン価42のアミン付加エポキシ樹脂の溶液を得た。別にアミン価100のダイマー酸型ポリアミド樹脂(ヘンケル白水(株)製バーサミド460)1000部をメチルエチルケトン429部に溶解し、130〜150℃に加熱還流により生成水を留去し、さらに水の留出が止むまで150℃に約3時間保持し、該ポリアミド樹脂の末端アミノ基をケチミン化した。得られた溶液を60℃に冷却してから上のアミン付加エポキシ溶液と混合して100℃に加熱し、1時間保持後室温に冷却して固形分68%、アミン価65のポリアミド変性アミン付加エポキシ樹脂ワニスを得た。 このワニス103部(固形分として70部)に、2−エチルヘキサノールブロックトリレンジイソシアネート30部(固形分)と10%酢酸15部を混合し、強く攪拌しながら脱イオン水150部を約15分を要して滴下し、固形分34%のカチオン電着用エマルションを製造した。顔料ペースト 上で製造したワニス(固形分68%)5部に、10%酢酸2.6部、二酸化チタン顔料17部、クレー8部、カーボンブラック0.3部、ジオクチルスズオキサイド2部、LDH I−1 5部を混合し、イオン交換水を加えて固形分50%とし、これを粒径10μm以下になるようにボールミルで40分間分散混合し、顔料ペーストを製造した。電着塗料および電着塗装 上で製造したエマルション315部と、顔料ペースト80部と、脱イオン水を混合して固形分20%のカチオン電着塗料を製造した。この塗料をリン酸亜鉛処理鋼板ボンテ#144を陰極とし、電圧250Vで乾燥膜厚20μmに電 着し、水洗した後160℃で30分間加熱してテストパネルを作成した。実施例III−3−9 基板をリン酸亜鉛鋼板(ボンデ#144)に変更したことを除いて実施例III−3−1を繰り返し、テストパネルを作成した。比較例III−3−1 LDH I−1を添加しなかったことを除き、実施例III−3−1を繰り返し、テストパネルを作成した。比較例III−3−2 LDH I−1を炭酸カルシウムに変更したことを除き、実施例III−3−1を繰り返し、テストパネルを作成した。比較例III−3−3 LDH I−1をMg−Al系炭酸型LDHに変更したことを除き、実施例III−3−1を繰り返し、テストパネルを作成した。比較例III−3−4 LDH I−1をタルク(日本タルク(株)製タルクSSS)に変更したことを除き、実施例III−3−1を繰り返し、テストパネルを作成した。比較例III−3−5 顔料ペーストに添加するLDH I−1を炭酸カルシウムに変更したことを除き、実施例III−3−8を繰り返し、テストパネルを作成した。比較例III−3−6 塗料にLDH I−1を添加しなかったことを除き、実施例III−3−9を繰り返し、テストパネルを作成した。塩水噴霧試験 実施例および比較例のテストパネルにナイフでクロスカットを入れ、35℃に保った塩水噴霧試験装置に入れ、所定時間5%塩化ナトリウム水溶液を噴霧し、平面部のブリスターおよび錆の発生、カット部からの腐食幅を調べた。結果を表6に示す。考察 実施例と比較例の結果から、本発明のLDHは水系塗料へ添加する時防錆効果を発揮するが、水中で剥離しない炭酸型LDHには防錆効果がないことを証明する。第IV部 化粧品添加剤 本発明のLDHは、水中で剥離してコロイド溶液ないしゾルを形成するので、クリーム、乳液、化粧水、ファンデーションなどの皮膚化粧品に安定化増粘剤または保湿剤として添加することができる。以下にその例を示す。化粧水成分 重量部L−アルギニン 1.5クエン酸ナトリウム 0.05防腐剤 0.21,3−ブチレングリコール 3.0グリチルリチンジカリウム 0.1ピロリドンカルボン酸ナトリウム 2.0クエン酸 適量香料 0.05LDH I−1 2.0精製水 適量合計 100乳液成分 重量部ステアリン酸 0.2セチルアルコール 1.5ワセリン 6スクアラン 6グリセロール 22−エチルヘキサン酸エステル 0.5ソルビタンモノオレエート 2ジプロピレングリコール 2トリエタノールアミン 1香料 0.1LDH I−1 0.1精製水 78.6合計 100バニシングクリーム成分 重量部ステアリン酸 7.5ステアリルアルコール 4ステアリン酸ブチル 5.5パラヒドロキシ安息香酸エチル 0.5香料 0.1LDH I−1 0.2精製水 73.8合計 100ファンデーション成分 重量部タルク 20.5マイカ 34.5カオリン 5.5二酸化チタン 10光輝顔料(チタンマイカ) 3ステアリン酸亜鉛 1黄色酸化鉄 2.8黒色酸化鉄 0.2ナイロンパウダー 10スクワラン 6ミリスチン酸オクチルドデシル 2ワセリン 2.5パラヒドロキシ安息香酸エチル 0.5香料 0.1LDH I−1 0.5合計 100 M(II)1−xM(III)x(OH)2 (I)(式中、M(II)はMg、M(III)はAl,xは0.2ないし0.33である。)の金属複水酸化物よりなる基本層と、該基本層間の中間層にインターカレートされたMgの酢酸塩および層間水より構成され、水中において可逆的に剥離する層状複水酸化物。 式(II):〔M(II)2+1−xM(III)3+x(OH)2〕〔(CO3)x/2・yH2O〕(式中、M(II),M(III),xは請求項1の定義に同じであり、yは0より大きい実数である。)の炭酸型層状複水酸化物を熱分解するステップ;生成する熱分解物をMgの酢酸塩の水溶液へ加え、反応させるステップ;固体の反応生成物を反応液から分離するステップ;および分離した固体を乾燥し、粉砕するステップ;を含む請求項1の層状複水酸化物の製造方法。 炭酸型層状複水酸化物の熱分解は400℃〜800℃の温度で行われる請求項2の方法。 熱分解した炭酸型層状複水酸化物と反応させる酢酸塩の量は、Al2O3に換算した熱分解物と少なくとも等モルである請求項2の方法。 フィルム形成成分として請求項1の層状複水酸化物を含んでいる金属保護コーティング組成物。 顔料をさらに含んでいる請求項5の組成物。 請求項5または6の組成物を金属基板に塗装し、350℃以上の温度で焼成することを含む耐スクラッチ性コーティングフィルムの形成方法。 保湿又は安定化に有効量の請求項1の層状複水酸化物を含んでいる化粧料。 化粧水、乳液、クリームまたはファンデーションの形である請求項8の化粧料。


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