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タイトル:公表特許公報(A)_低溶解性薬物、ポロキサマーおよび安定化ポリマーの安定化された医薬用固体組成物
出願番号:2006546396
年次:2007
IPC分類:A61K 47/34,A61K 47/38,A61K 9/16,A61K 31/472,A61K 31/4706,A61P 43/00,A61P 3/06


特許情報キャッシュ

マーシャル デイヴィッド クリュー ラヴィ マイソール シャンカー ダニエル トッド スミセイ ワレン ケニオン ミラー ドウェーン トーマス フリーセン JP 2007517015 公表特許公報(A) 20070628 2006546396 20041220 低溶解性薬物、ポロキサマーおよび安定化ポリマーの安定化された医薬用固体組成物 ファイザー・プロダクツ・インク 397067152 室伏 良信 100096666 マーシャル デイヴィッド クリュー ラヴィ マイソール シャンカー ダニエル トッド スミセイ ワレン ケニオン ミラー ドウェーン トーマス フリーセン US 60/533,848 20031231 A61K 47/34 20060101AFI20070601BHJP A61K 47/38 20060101ALI20070601BHJP A61K 9/16 20060101ALI20070601BHJP A61K 31/472 20060101ALI20070601BHJP A61K 31/4706 20060101ALI20070601BHJP A61P 43/00 20060101ALI20070601BHJP A61P 3/06 20060101ALI20070601BHJP JPA61K47/34A61K47/38A61K9/16A61K31/472A61K31/4706A61P43/00 111A61P3/06 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NA,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW IB2004004260 20041220 WO2005065656 20050721 33 20060829 4C076 4C086 4C076AA31 4C076BB01 4C076CC11 4C076EE23 4C076EE32 4C076FF06 4C076GG09 4C086AA10 4C086BC29 4C086BC30 4C086MA03 4C086MA05 4C086MA34 4C086MA41 4C086NA02 4C086ZC20 4C086ZC33 本発明は、水性使用環境に投与された際に、溶解した薬物の物理安定性が良好であり、濃度が向上している、低溶解性薬物、ポロキサマーおよび安定化ポリマーを含む粒子を含む固体組成物に関する。 非晶質薬物およびポリマーの組成物を形成することが望ましいことがある。そのような組成物を形成する1つの理由は、難溶性薬物の水中濃度をそのような技法で向上させることができるためである。例えば、CuratoloらのEP0901786A2号では、薬物が非晶質でありポリマー中に分散されている、難溶性薬物およびポリマーであるヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートの医薬用噴霧乾燥分散液の形成が開示されている。Curatoloらに開示された噴霧乾燥分散液は、他の方法で形成された分散液に比べて、また単独の結晶性薬物に比べて水中濃度が高い。 同様に、他の発明者らは、薬物のポリマー中組成物を形成することで水中濃度が向上することを認識していた。Nakamichiらの米国特許第5,456,923号では、低溶解性薬物および各種ポリマーの二軸押出で成形される固体分散体が開示されている。 ポロキサマー(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体)は、第一に静脈内脂肪乳剤中の乳化剤として、またエリキシルおよびシロップの透明性を維持するための可溶化剤および安定化剤として医薬分野で各種用途に日常的に使用されている。ポロキサマーは湿潤剤としても、軟膏、坐剤基剤およびゲル中でも、また錠剤の結合剤およびコーティングとしても使用される。 ポロキサマーおよび薬物の組成物を形成することは公知である。Xu,et al.,Programmable Drug Delivery from an Erodible Association Polymer System,Pharmaceutical Research,Vol.10,No.8,pp.1144−1152(1993)では、Pluronic127(ポロキサマー)およびセルロースアセテートフタレート(CAP)の侵食性の会合性ポリマーシステムが溶液流延法により調製された。テオフィリンを5%含む組成物が調製された。調剤の目的は、プログラム可能な溶解した薬物の濃度時間プロファイルを与える送達系を提供することにあった。Xuらは、CAP含有量が50%(w/w)を超えるCAP/Pluronicブレンドでは、単一のガラス転移温度(Tg)しか有さない単一の混和性相が形成されると述べている。Xuらは、CAPが50〜100重量%の各種CAP/Pluronic127ブレンドからの薬物の放出速度を測定した。 Chenらの米国特許第6,368,622号では、薬物とポロキサマーの混合物が開示されている。特定の実施形態では、融点が72〜82℃で、ガラス転移温度が約−19℃の薬物フェノフィブラートがポロキサマーおよびマンニトールと共に溶融される。データは組成物中の薬物が市販の製剤と比べ溶解速度が速いことを示したが、濃度向上は実証されなかった。 Gabelらの米国特許出願公開第US2001/0036959A1号では、融点が113〜116℃でガラス転移温度が約39℃の薬物カルベジロールを5重量%を超える濃度で含む組成物が開示されている。調整にはポロキサマーを含むことが好ましい。組成物は溶融法または噴霧乾燥により形成することができる。 Clancyらの欧州特許明細書EP0836475B1号では、有効成分の親水性ポロキサマーポリマー中固体組成物が開示されている。組成物は、ポロキサマーを溶融し、その中に有効成分を分散するか、1種または複数の有機溶媒中に有効成分およびポロキサマーを溶解することで形成される。溶媒を蒸発させ、溶融したポロキサマーを冷却および粉砕して製剤を得る。 WO99/21534号では、難溶性の薬物、および(a)飽和ポリグリコール化グリセリドと(b)ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロック共重合体の混合物を含む賦形剤を含む組成物が開示されている。組成物は溶融法により成形される。 また、欧州特許出願第1027886A2号では、非晶質薬物をTgが高いポリマー中に分散することで物理安定性が向上した分散液を形成することができることが記されている。しかし、いくつかの薬物については、そのような分散液で得られる濃度の向上および生物学的利用率の向上が依然として限定的である可能性があり、生物学的利用率が不完全である可能性がある。すなわち、薬物がすべて吸収される訳ではない。 非晶質薬物およびポリマーの組成物を形成することで多くの問題が生じ得る。非晶質薬物および相当な量のポロキサマーを含む固体組成物を形成することによる1つの問題は、薬物が経時的に結晶化し、性能が低下する可能性があるということである。非晶質の低溶解性薬物を含む組成物を形成する際のもう1つの問題は、薬物の分解速度が遅いという不都合があり、生物学的利用率が低いということである。投与された薬物の吸収が不完全である、すなわち生物学的利用率が低い場合、血中薬物濃度の変動が大きくなることが多く、暴露が摂食状態に大きく依存することが多い。したがって、物理的に安定な非晶質薬物を与え、かつ水溶液中の薬物濃度を向上させ、生物学的利用率を向上させる方法および製剤を提供することが引き続き求められている。 第1の態様では、固体組成物は、少なくとも約5重量%の、その相当部分が非晶質である低溶解性薬物と、少なくとも5重量%のポロキサマーと、安定化ポリマーとを含む複数の粒子を含む。安定化ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートからなる群から選択される。 第2の態様では、本発明は、(1)低溶解性薬物、ポロキサマー、安定化ポリマーおよび溶媒を含む溶液を形成するステップと、(2)溶液から溶媒を除去して固体組成物を形成するステップとを含む固体組成物の調製方法に関する。固体組成物は、少なくとも5重量%の低溶解性薬物、および少なくとも5重量%のポロキサマーを含む。安定化ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートからなる群から選択される。 本発明の様々な態様は以下の利点の1つまたは複数を与える。第一に、組成物は、難溶性薬物用の水性使用環境中に溶解した薬物の濃度を向上させる。本発明者らは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース系ポリマー中に分散したいくつかの低溶解性薬物に関する問題として、薬物の溶解速度が低下する場合があることを発見した。ポロキサマーは、低溶解性薬物の溶解速度を著しく高め、かつ/または非晶質の低溶解性薬物を含む固体組成物により与えられる溶解した薬物の濃度を維持することが可能である。溶解速度を高めることで、溶解した薬物の濃度もしくは生物学的利用率またはその両方を高めることができる。 第二に、安定化ポリマーを加えることで粒子の物理安定性が向上する。ポロキサマーは、ポリエチレンオキシド(PEO)部分およびポリプロピレンオキシド(PPO)部分からなるブロック共重合体である。ポロキサマーの融点は約45〜約60℃である。通常は10〜30℃である周囲温度で、PEO部分は最終的に凝縮および結晶化して半結晶性PEO領域を形成するが、PPO部分は依然として非晶質領域である。これらのPPO領域のガラス転移温度(Tg)は約−65℃と比較的低い。結果として、非晶質PPO領域内に分散している任意の溶質は、5〜40℃という常温の保存温度で高い移動度を有する。薬物をポロキサマー中に分散させた後、ポロキサマーをその融点未満の温度にすると、PEOは一般に結晶化し、薬物は主に非晶質PPO領域中に留まり、そこでは薬物は一般的に高い移動度を有する。一般に、薬物/PPO領域のTgは、純粋なPPO領域のTgと純粋な非晶質薬物のTgの間にある。そのような領域のTgの正確な値はまた、領域中の薬物およびPPOの相対量にも依存し、それより程度は小さいが、薬物とPPOの相互作用にも依存する。本発明者らは、薬物/PPO領域のTgが保存温度未満であり、PPO領域中の薬物の濃度がその溶解度を超える場合に、薬物が経時的に結晶化する傾向にあり、そのため非晶質組成物が不安定になることを発見した。 さらに、薬物およびポロキサマーを含む粒子のTgが低くなると、固体組成物の製造がより困難になる。例えば、非晶質薬物を含む固体組成物を形成する効率的で費用対効果の高い方法では、噴霧乾燥などの溶媒をベースとする方法を用いる。下記で論じるように、この方法では、薬物およびポロキサマーを一般的な溶媒に溶解させて溶液を形成する。次に、この溶液を噴霧し、溶媒を蒸発によって速やかに除去する。十分な速度で確実に溶媒を除去して薬物および/またはポロキサマーの相分離を回避するために、高温を使用することがある。そのような高温によって、Tgの低い薬物/ポロキサマー粒子の回収が困難になり、結果的に収率が低くなり、プロセスが非効率的になる。 主に薬物およびポロキサマーを含む粒子の物理安定性を向上するために、本発明者らは、粒子に安定化ポリマーを含めることで、Tg値が相対的に高い非晶質相を有する組成物が得られ、結果として固体組成物の物理安定性が向上し、固体組成物を形成する上での処理オプションが増加することを発見した。すなわち、主要な薬物含有相のTgが、相対湿度(RH)約10%未満で測定した際に少なくとも約40℃、好ましくは少なくとも約45℃、より好ましくは少なくとも約50℃になるのに十分な量で、安定化ポリマーが存在することが好ましい。得られた固体組成物の物理安定性は、薬物およびポロキサマーから本質的になり、薬物担持量が同一であるが、安定化ポリマーを含まない対照組成物と比べて向上している。 本発明の上記および他の目的、特徴および利点は、以下の発明の詳細な説明を検討すればより容易に理解されよう。 本発明は、低溶解性薬物、ポロキサマーおよび安定化ポリマーの粒子を含む固体組成物に関する。本発明の固体組成物は、in vitroおよびin vivo使用環境に溶解した薬物の高い濃度を得ることができるのに十分な量のポロキサマーを含む。固体組成物は物理安定性を良好にするために安定化ポリマーを含み、したがって固体組成物中の薬物は周囲保存条件で経時的に非晶質形にとどまる傾向にある。固体組成物、好適なポロキサマー、安定化ポリマーおよび低溶解性薬物の性質、組成物の製造方法、ならびに濃度向上の測定方法を下記で詳しく論じる。ポロキサマー 薬物を含む粒子は、薬学分野では「ポロキサマー」としても知られるポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体を含む。ポロキサマーは、一般に分子量が約2000〜約15,000ダルトンの範囲であり、下記の一般式を有する結晶性または半結晶性材料である。 HO(C2H4O)a(C3H6O)b(C2H4O)aH(式中、特定のグレードに応じて、aは約10〜約150であり、ポリエチレンオキシドまたはポリオキシエチレンの繰り返し単位のブロック(以下、PEO部分と呼ぶ)を表し、bは約20〜約60であり、ポリプロピレンオキシドまたはポリオキシプロピレンの繰り返し単位のブロック(以下、PPO部分と呼ぶ)を表す。)好適なポロキサマーは、ニュージャージー州マウントオリーブのBASF CorporationからPLURONICおよびLUTROLという商品名で市販されている。好ましいポロキサマーの分子量は少なくとも約4,700ダルトンであり、融点は少なくとも約45℃であるため周囲温度では固体である。 ポロキサマーの好ましいグレードとしては、その仕様が表1に示されるポロキサマー188(PLURONIC F68)、ポロキサマー237(PLURONIC F87)、ポロキサマー338(PLURONIC F108)、ポロキサマー407(PLURONIC F127)、およびそれらのポロキサマーの混合物が挙げられる。 安定化ポリマー 安定化ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群から選択される。これらのうち、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートおよびカルボキシメチルエチルセルロースがより好ましい。これらのポリマーはそれぞれポロキサマーに比べてガラス転移温度が高い。これらのポリマーはそれぞれ生理学的に関連性のあるpH(例えば1〜8)で、水溶液中での少なくともある程度の溶解度を有する。もちろん、特定の安定化ポリマーを選択する場合には、安定化ポリマーが不利な形で薬物と化学的に反応するものであってはならない。 薬物、ポロキサマーおよび安定化ポリマーの固体粒子 薬物、ポロキサマーおよび安定化ポリマーの固体粒子は、最高30℃の温度、10%未満の相対湿度(RH)で固体である。組成物の全質量を小さく保つには、粒子が少なくとも約5重量%の薬物を含むことが好ましい。粒子は、より好ましくは少なくとも約10重量%の薬物、さらに好ましくは少なくとも約20重量%の薬物を含む。一実施形態では、粒子の薬物担持量は多くなる。薬物担持量とは、固体組成物中の薬物の重量分率を意味する。本実施形態では、薬物は、下記で論じる粒子のガラス転移温度に応じて、粒子の少なくとも約40重量%、少なくとも約45重量%、あるいは少なくとも約50重量%の量で存在することができる。薬物のそのような多い担持量は、医薬組成物の全質量を低い値に保つ上で望ましい。下記で論じる高いTg(>50℃)を有する物理的に安定な組成物によって、薬物担持量を多くすることが可能になる。 粒子中の薬物の少なくとも相当な部分が非晶質である。「非晶質」とは、薬物が非結晶状態にあるという意味である。本明細書でいう薬物の「相当な部分」という用語は、固体粒子中の薬物の少なくとも75重量%が結晶形ではなく非晶質形であるという意味である。固体組成物中に非晶質状態で存在する薬物の割合が増大するにつれて、使用環境中での薬物の水中濃度が向上する傾向にあることがわかった。したがって、粒子中の薬物の「相当な部分」は非晶質であり、好ましくは薬物は「ほぼ完全に非晶質であり」、したがって結晶形の薬物の量は10重量%を超えない。結晶性薬物の量は、粉末X線回折、走査型電子顕微鏡(SEM)分析、示差走査熱量測定(DSC)、または任意の他の標準的な定量測定により測定することができる。最も好ましくは、固体組成物は結晶性薬物を実質的に含まない。 粒子中のポロキサマーの量は、粒子の少なくとも約5重量%から90%程度の範囲とすることができる。本発明者らは、粒子中にこの広い範囲でポロキサマーを含めることにより、溶解度、生物学的利用率またはその両方が向上した組成物が得られることを発見した。 粒子は安定化ポリマーも含む。本明細書に記載のように、粒子に安定化ポリマーを含めることによって、物理安定性を向上し、生物学的利用率を向上し、薬物濃度を向上し、あるいはこれらの利点の任意の1つまたは全部を得ることができる。粒子中の安定化ポリマーの量は、本明細書に開示の通り、粒子中の薬物およびポロキサマーの相対量に依存する。一般に、粒子は、安定化ポリマーを少なくとも約5重量%から最大約90重量%まで含む。 固体組成物中の非晶質薬物は、ポロキサマーおよび安定化ポリマーに密着している。非晶質薬物は、粒子中の純粋相として、ポロキサマーおよび安定化ポリマー全体に均一に分布する薬物の固溶液(すなわち分子分散液)として、あるいはこれらの状態またはその中間に位置する状態の任意の組み合わせとして存在することができる。いかなる理論に拘束されることも望ましくないが、ポロキサマーの2つの異なるブロック部分、すなわちポロキサマーのPEOおよびPPO部分は各粒子中に異なる相として存在すると考えられる。既に論じたように、PEO部分は半結晶性である、例えば層状シートの形態であることができ、薬物が存在する場合でも薬物をほとんど含まない。もう1つの相は非晶質PPOおよび安定化ポリマーで構成され、薬物の全部または一部がこの相に均一に溶解している。いくつかの場合、特に薬物担持量が高い場合では、主に非晶質薬物からなる第3の相が存在することもある。したがって、薬物は主にPPO部分に存在し、かつPPO部分および安定化ポリマー全体に均一に分布することができ、または薬物は粒子全体に分散する薬物が高濃度の領域として存在することができ、あるいは薬物はこれらの2つの状態またはその中間に位置する状態の任意の組み合わせであることができる。薬物が高濃度の非晶質領域が存在する場合、これらの領域は一般に非常に小さく、すなわち約1μm未満の大きさである。好ましくは、そのような領域は約100nm未満の大きさである。粒子は、薬物がポロキサマーおよび安定化ポリマー全体に均一に分散していることを示す単一のガラス転移温度を有することができ、あるいは薬物が高濃度の相および薬物が低濃度の非晶質相と対応する2つのガラス転移温度を有することができる。したがって、粒子中の薬物が非晶質である一方、組成物中のポロキサマーの一部は結晶または半結晶状態であることができる。通常、材料の結晶性を測定するPXRDまたは他の定量的方法による本発明の固体組成物の分析により、ポロキサマーの結晶性または半結晶性部分と関連するピークが示される。 本発明の固体組成物は物理安定性が良好である。本明細書でいう「物理的に安定である」(physically stable)または「物理安定性」(physical stability)とは、分散液中に存在する非晶質薬物が25℃およびRH10%未満の周囲保存条件で結晶化する傾向にあるという意味である。したがって、他の組成物より物理的に安定な固体組成物は、固体組成物中での薬物結晶化速度が低い。したがって、本発明の組成物は、25℃およびRH10%で3週間保存中に、薬物の約10重量%未満しか結晶化しないだけの安定性を有する。好ましくは25℃およびRH10%で3週間保存中に、より好ましくは25℃およびRH10%で3カ月保存後でも、薬物の約5重量%未満しか結晶化しない。 いかなる特定の理論または作用機序に拘束されることも望ましくないが、一般に、非晶質薬物およびポリマーを含む物理的に安定な粒子は以下の2つの分類に分けられると考えられる。(1)熱力学的に安定な粒子(固体組成物中の非晶質薬物の結晶化の推進力がほとんどまたは全く存在しない)。(2)動力学的に安定または準安定な粒子(非晶質薬物を結晶化する推進力が存在するが、薬物の移動性が低いため、結晶化速度が許容可能なレベルに到達するのが妨害または遅延される)。 熱力学的に安定な粒子を得るには、ポリマー中の非晶質薬物の溶解度を、粒子の薬物担持量とほぼ同等以上にしなければならない。薬物担持量とは、固体粒子中の薬物の重量分率を意味する。この場合では結晶核生成への推進力が非常に小さいため、粒子は溶解度をわずかに超える薬物担持量を有し、依存として物理的に安定であることができる。「わずかに超える」とは、ポロキサマー中の薬物の溶解度より10〜20%多い薬物担持量を意味する。これらの条件下では、非晶質薬物を結晶化する推進力は存在しない。結果として、粒子は熱力学的に安定となる。 薬物およびポリマーを含む固体粒子中の薬物担持量がポリマー中の薬物の溶解度を10%〜20%超える(すなわち、固体組成物で薬物が過飽和である)場合、粒子は熱力学的に安定ではなく、薬物が高濃度の相に非晶質薬物が相分離する推進力が存在する。そのような薬物が高濃度な相の性質は、非晶質かつ微視的(サイズが約1μm未満)であってもよく、非晶質で比較的に大きく(サイズが約1μm超)てもよく、結晶性であってもよい。したがって、相分離の後、組成物は以下の2つ以上の相からなることができる。(1)主に薬物を含む薬物が高濃度の相、(2)ポロキサマーおよび安定化ポリマー中に分散する非晶質薬物を含む相、(3)ポロキサマーの半結晶性PEO部分を含む相。薬物が高濃度の相にある非晶質薬物は、経時的に非晶質形から低エネルギー結晶形に転換することができる。所与の薬物担持量について、(1)薬物含有相中の非晶質薬物の分子移動度が小さいほど、(2)薬物が高濃度の相から非晶質薬物が結晶化する傾向が小さいほど、そのような粒子の物理安定性が一般に大きくなる。 分子移動度は、高いTg値を有する固体粒子を形成することで調整することができる。薬物含有相のTgは、粒子中の薬物の分子移動度の間接的な基準である。薬物含有相のTgと固体組成物の保存温度(Tstorage)の比(ケルビン)は、所与の保存温度での相対的薬物移動度を正確に示す。相分離を最小限に抑えるには、非晶質薬物の粒子中での移動度を低くすることが望ましい。これは、約1を超える固体粒子のTg/Tstorage比を維持することで実現される。通常の保存温度は40℃程度の高さであり得るため、薬物含有相のTgは少なくとも約40℃、より好ましくは少なくとも約45℃、最も好ましくは少なくとも約50℃であることが好ましい。Tgは、薬物含有粒子の含水量の関数である一方で、薬物含有粒子が暴露される相対湿度の関数であるため、これら粒子のTg値は、相対湿度が低い、すなわち飽和の約10%未満(またはRH約10%以下)の空気で平衡化された粒子のTgを意味する。 安定化ポリマーは、本発明の固体組成物中に、主要な薬物含有相のTgが少なくとも40℃、より好ましくは少なくとも45℃、さらに好ましくは少なくとも50℃となるのに十分な量で存在することが好ましい。これを実現するのに必要な安定化ポリマーの量が、存在する薬物およびポロキサマーの量および特性に依存することは、当業者には理解されよう。好ましい実施形態では、安定化ポリマーは、粒子の最低Tgが少なくとも40℃、より好ましくは少なくとも45℃、さらに好ましくは少なくとも50℃となるのに十分な量で存在する。 一実施形態では、ポロキサマーは粒子の主要な非薬物成分である。本実施形態では、固体組成物中のポロキサマーと安定化ポリマーの質量比は約1を超え、約1.5を超えてもよく、約2を超えてもよい。粒子は安定化ポリマーを約5重量%〜約40重量%含むことができる。薬物の特性に応じて、少なくとも5重量%、10重量%または20重量%といった少量の安定化ポリマーを固体組成物に含めることで、粒子のTgを十分に上昇させて物理安定性を向上することができる。 ポロキサマーが粒子の主要成分である本実施形態は、ガラス転移温度が周囲保存条件に近いかそれより高い薬物について特に有用である。いかなる理論に拘束されることも望ましくないが、薬物のTgが高くなるほど、粒子のTgも高くなり、固体粒子中の非晶質薬物の分子移動度も低くなると考えられる。結果として、中程度から高いTg値を有する低溶解性薬物および多量のポロキサマーで形成された固体粒子はそれ自体高いTg値を有する傾向があり、そのため非晶質薬物の物理安定性を向上させる少量の安定化ポリマーを必要とする。したがって、本実施形態における単独の薬物のTgは、少なくとも約20℃であればよいが、好ましくは少なくとも約30℃、さらに好ましくは少なくとも約40℃である。(特記なき限り、本明細書でいうTgは、相対湿度10%未満で測定したTgを意味する。)薬物のTgは、動的機械分析装置(DMA)、膨張計、誘電分析装置および示差走査熱量分析(DSC)による当技術分野で公知の標準的分析技術を用いて測定することができる。 別の実施形態では、安定化ポリマーは粒子の主要な非薬物成分を構成する。本実施形態は、ガラス転移温度が低いか、あるいは溶解速度または生物学的利用率が低いという不都合がある薬物について特に有用である。第1の場合では、ガラス転移温度が40℃未満の薬物を含む粒子はそれでも、多量の安定化ポリマーを含むことで、40℃を超える粒子のガラス転移温度を有することができる。本実施形態は、ガラス転移温度は高いが、溶解速度、生物学的利用率またはその両方が低いという不都合がある薬物についても有用である。主に非晶質薬物および安定化ポリマーからなる分子分散液に比較的少量のポロキサマーを加えることで、溶解速度、生物学的利用率またはその両方を著しく向上することができる。本実施形態では、固体組成物中の安定化ポリマーとポロキサマーの質量比は約1を超え、約1.5を超えてもよく、約2を超えてもよい。粒子はポロキサマーを約5重量%〜約40重量%含むことができる。薬物の特性に応じて、少なくとも粒子の5重量%、10重量%または20重量%といった少量のポロキサマーを粒子に含めることで、溶解速度、生物学的利用率またはその両方を向上することができる。 低溶解性薬物 「薬物」という用語は慣用的であり、動物、特にヒトに投与した際に有益な予防および/または治療特性を有する化合物を意味する。好ましくは、薬物は「低溶解性薬物」であり、したがって薬物の生理学的に関連性のあるpH(例えばpH1〜8)での最低水溶性溶解度は約0.5mg/mL以下である。本発明は薬物の水溶性溶解度が低下するほど有用性が高まる。したがって、本発明の組成物は、水溶性溶解度が約0.1mg/mL未満の低溶解性薬物について好ましく、水溶性溶解度が約0.05mg/mL未満の低溶解性薬物についてより好ましく、水溶性溶解度が約0.01mg/mL未満の低溶解性薬物についてさらに好ましい。水溶性溶解度(mg/mL)が、USPがシミュレートした胃腸緩衝液を含む任意の生理学的に関連性のある水溶液(例えばpH値が1〜8の水溶液)で観察される最小値であり、用量がmg単位である場合、薬物の用量−水溶性溶解度比は約10mLを超え、より典型的には約100mLを超えると一般にいうことができる。したがって、用量−水溶性溶解度比は、用量(mg)を水溶性溶解度(mg/mL)で割ることで計算することができる。 薬物の好ましいクラスとしては、降圧薬、抗不安薬、抗凝固薬、抗痙攣薬、血糖降下薬、鬱血除去薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、抗悪性腫瘍薬、β遮断薬、抗炎症薬、抗精神病薬、向知性薬、コレステロール低下薬、抗アテローム性動脈硬化症薬、抗肥満薬、自己免疫障害薬、抗性交不能薬、抗菌薬および抗真菌薬、催眠薬、抗パーキンソン病薬、抗アルツハイマー病薬、抗生物質、抗うつ薬、抗ウイルス薬、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤、ならびにコレステリルエステル転移タンパク質(CETP)阻害剤が挙げられるが、それだけに限定されない。 各命名された薬物は、薬物の任意の薬学的に許容できる形態を含むと理解されたい。「薬学的に許容できる形態」とは、立体異性体、立体異性体混合物、鏡像異性体、溶媒和物、水和物、同形体(isomorphs)、結晶多形、擬似結晶(psedomorphs)、中性形、塩形およびプロドラッグを含む任意の薬学的に許容できる誘導体または変形を意味する。降圧薬の具体例としては、プラゾシン、ニフェジピン、ベシル酸アムロジピン、トリマゾシンおよびドキサゾシンが挙げられる。血糖降下薬の具体例としてはグリピジドおよびクロルプロパミドが挙げられる。抗性交不能薬の具体例としてはシルデナフィルおよびクエン酸シルデナフィルが挙げられる。抗悪性腫瘍薬の具体例としてはクロランブシル、ロムスチンおよびエキノマイシンが挙げられる。イミダゾール型抗悪性腫瘍薬の具体例としてはツブラゾール(tubulazole)が挙げられる。抗高コレステロール血症薬の具体例としてはアトルバスタチンカルシウムが挙げられる。抗不安薬の具体例としては塩酸ヒドロキシジンおよび塩酸ドキセピンが挙げられる。抗炎症薬の具体例としてはベタメタゾン、プレドニゾロン、アスピリン、ピロキシカム、バルデコキシブ、カルプロフェン、セレコキシブ、フルルビプロフェンおよび(+)−N−{4−[3−(4−フルオロフェノキシ)フェノキシ]−2−シクロペンテン−1−イル}−N−ヒドロキシウレアが挙げられる。バルビツレートの具体例としてはフェノバルビタールが挙げられる。抗ウイルス薬の具体例としてはアシクロビル、ネルフィナビルおよびビラゾールが挙げられる。ビタミン/栄養剤の具体例としてはレチノールおよびビタミンEが挙げられる。β遮断薬の具体例としてはチモロールおよびナドロールが挙げられる。催吐薬の具体例としてはアポモルヒネが挙げられる。利尿薬の具体例としてはクロルサリドンおよびスピロノラクトンが挙げられる。抗凝固薬の具体例としてはジクマロールが挙げられる。強心薬の具体例としてはジゴキシンおよびジギトキシンが挙げられる。アンドロゲンの具体例としては17−メチルテストステロンおよびテストステロンが挙げられる。鉱質コルチコイドの具体例としてはデスオキシコルチコステロンが挙げられる。ステロイド系催眠薬/麻酔薬の具体例としてはアルファキサロンが挙げられる。アナボリック剤の具体例としてはフルオキシメステロンおよびメタンステノロン(methanstenolone)が挙げられる。抗うつ薬の具体例としてはスルピリド、[3,6−ジメチル−2−(2,4,6−トリメチル−フェノキシ)−ピリジン−4−イル]−(1−エチルプロピル)−アミン、3,5−ジメチル−4−(3’−ペントキシ)−2−(2’,4’,6’−トリメチルフェノキシ)ピリジン、ピロキシジン(pyroxidine)、フルオキセチン、パロキセチン、ベンラファキシンおよびセルトラリンが挙げられる。抗生物質の具体例としてはカルベニシリンインダニルナトリウム、塩酸バカンピシリン、トロレアンドマイシン、塩酸ドキシサイリン(doxycyline)、アンピシリンおよびペニシリンGが挙げられる。抗感染薬の具体例としては塩化ベンザルコニウムおよびクロルヘキシジンが挙げられる。冠血管拡張薬の具体例としてはニトログリセリンおよびミオフラジンが挙げられる。催眠薬の具体例としてはエトミデートが挙げられる。炭酸脱水酵素阻害剤の具体例としてはアセタゾラミドおよびクロルゾラミド(chlorzolamide)が挙げられる。抗真菌薬の具体例としてはエコナゾール、テルコナゾール、フルコナゾール、ボリコナゾールおよびグリセオフルビンが挙げられる。抗原虫薬の具体例としてはメトロニダゾールが挙げられる。駆虫薬の具体例としてはチアベンダゾール、オクスフェンダゾールおよびモランテルが挙げられる。抗ヒスタミン薬の具体例としてはアステミゾール、レボカバスチン、セチリジン、デカルボエトキシルオラタジン(decarboethoxyloratadine)およびシンナリジンが挙げられる。抗精神病薬の具体例としてはジプラシドン、オランゼピン(olanzepine)、塩酸チオチキセン、フルスピリレン、リスペリドンおよびペンフルリドール(penfluridole)が挙げられる。胃腸薬の具体例としてはロペラミドおよびシサプリドが挙げられる。セロトニンアンタゴニストの具体例としてはケタンセリンおよびミアンセリンが挙げられる。麻酔薬の具体例としてはリドカインが挙げられる。血糖降下薬の具体例としてはアセトヘキサミドが挙げられる。制吐薬の具体例としてはジメンヒドリナートが挙げられる。抗菌薬の具体例としてはコトリモキサゾールが挙げられる。ドーパミン作動薬の具体例としてはL−DOPAが挙げられる。抗アルツハイマー病薬の具体例としてはTHAおよびドネペジルが挙げられる。抗潰瘍薬/H2アンタゴニストの具体例としてはファモチジンが挙げられる。鎮静薬/催眠薬の具体例としてはクロルジアゼポキシドおよびトリアゾラムが挙げられる。血管拡張薬の具体例としてはアルプロスタジルが挙げられる。抗血小板薬の具体例としてはプロスタサイクリンが挙げられる。ACE阻害剤/降圧薬の具体例としてはエナラプリル酸およびリシノプリルが挙げられる。テトラサイクリン系抗生物質の具体例としてはオキシテトラサイクリンおよびミノサイクリンが挙げられる。マクロライド系抗生物質の具体例としてはエリスロマイシン、クラリスロマイシンおよびスピラマイシンが挙げられる。アザライド系抗生物質の具体例としてはアジスロマイシンが挙げられる。グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤の具体例としては[R−(R*S*)]−5−クロロ−N−[2−ヒドロキシ−3−{メトキシメチルアミノ}−3−オキソ−1−(フェニルメチル)プロピル−1H−インドール−2−カルボキサミドおよび5−クロロ−1H−インドール−2−カルボン酸[(1S)−ベンジル−(2R)−ヒドロキシ−3−((3R,4S)−ジヒドロキシ−ピロリジン−1−イル−)−3−オキシプロピル]アミドが挙げられる。コレステリルエステル転移タンパク質(CETP)阻害剤の具体例としては、[2R,4S]4−[(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジル)−メトキシカルボニル−アミノ]−2−エチル−6−トリフルオロメチル−3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−カルボン酸エチルエステル、[2R,4S]4−[アセチル−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジル)−アミノ]−2−エチル−6−トリフルオロメチル−3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−カルボン酸イソプロピルエステル、[2R,4S]4−[(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジル)−メトキシカルボニル−アミノ]−2−エチル−6−トリフルオロメチル−3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−カルボン酸イソプロピルエステル、(2R)−3−[[3−(4−クロロ−3−エチルフェノキシ)フェニル][[3−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]メチル]アミノ]−1,1,1−トリフルオロ−2−プロパノール、いずれもその全体があらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる共同所有の米国特許出願第09/918,127号および第10/066,091号に開示されている薬物、ならびにいずれもその全体があらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる以下の特許および公開出願、すなわちDE19741400A1号、DE19741399A1号、WO9914215A1号、WO9914174号、DE19709125A1号、DE19704244A1号、DE19704243A1号、EP818448A1、WO9804528A2号、DE19627431A1号、DE19627430A1号、DE19627419A1号、EP796846A1号、DE19832159号、DE818197号、DE19741051号、WO9941237A1号、WO9914204A1号、WO9835937A1号、特開平11−049743号、WO200018721号、WO200018723号、WO200018724号、WO200017164号、WO200017165号、WO200017166号、EP992496号およびEP987251号に開示されている薬物が挙げられる。 本発明は、疎水性薬物と共用すると特に有用である。従来の知識とは異なり、本発明の組成物により与えられる薬物の水中濃度および生物学的利用率の相対的向上度は一般に、溶解度が低下して疎水性が上昇するにつれて向上する。実際、本発明者らは、本質的に水に不溶性で疎水性が高く、あるセットの物性で特徴付けられる疎水性薬物のサブクラスを認識した。本明細書で「疎水性薬物」と呼ばれるこのサブクラスでは、本発明のポリマーを用いて調剤した際に、水中濃度および生物学的利用率が劇的に向上している。 疎水性薬物の第1の特性は、極めて低い水溶性溶解度である。極めて低い水溶性溶解度とは、生理学的に関連性のあるpH(pH1〜8)での最低水溶性溶解度が約10μg/ml未満、通常は約1μg/ml未満であるという意味である。 第2の特性は、非常に高い用量−溶解度比である。水溶性溶解度が非常に低いため、薬物が従来の方法で経口投与された際に、胃腸管の流体からの薬物の吸収が劣ったり遅くなったりすることが多い。著しく溶解度の低い薬物では、用量(経口で与えられる薬物の質量)が増大するにつれて、吸収がますます困難になる。したがって、疎水性薬物の第2の特性は、非常に高い用量(mg)の溶解度(mg/ml)に対する比(ml)となる。「非常に高い用量−溶解度比」とは、用量−溶解度比が少なくとも1000ml、少なくとも5,000ml、さらには少なくとも10,000mlの値を有することができるという意味である。 疎水性薬物の第3の特性は、極めて疎水性が高いことである。極めて疎水性が高いとは、薬物のLogP値が少なくとも4.0の値、少なくとも5.0の値、さらには少なくとも5.5の値を有することができるという意味である。LogPとは、薬物のオクタノール中溶解度と薬物の水中溶解度の比の底が10の対数として定義され、疎水性の広く許容される基準となっている。LogPは、実験的に測定するか、当技術分野で公知の方法を用いて計算することができる。LogPの計算値は、計算方法によってClogP、AlogPおよびMlogP等と呼ばれることが多い。 疎水性薬物の第4の特性は、融点が低いことである。一般に、このサブクラスの薬物の融点は約150℃以下であり、多くの場合は約140℃以下である。 まず、これら4つの特性の一部または全部の結果として、疎水性薬物は通常、絶対的生物学的利用率が非常に低くなる。すなわち、このサブクラスの薬物の絶対的生物学的利用率は、非分散状態で経口投与した際に約10%未満であり、より多くの場合約5%未満である。そのような薬物をポロキサマーと併用することで、薬物の溶解速度、生物学的利用率またはその両方を向上することができる。疎水性薬物は、溶解速度が低く、絶対的生物学的利用率が低い傾向にある。ポロキサマーは、薬物の溶解速度を高める溶解促進剤として働くことができる。また、固体組成物を水性使用環境に導入した場合、本明細書でさらに論じるように、疎水性薬物は分配されて水性環境中にポロキサマーミセルが形成され、溶解した薬物の濃度が高くなる。安定化ポリマーはポロキサマー/薬物システムの安定性を向上する機能を有する。結果として、疎水性薬物、ポロキサマーおよび安定化ポリマーを含む固体組成物は、物理安定性と濃度向上の独自の組み合わせを与える。 薬物、ポロキサマーおよび安定化ポリマーを含む粒子の製造方法 薬物、ポロキサマーおよび安定化ポリマーを含む粒子は、薬物の少なくとも相当な部分(すなわち少なくとも約75重量%)が非晶質状態となるような、溶媒法、熱的方法または機械的方法など任意の従来の方法により形成することができる。 薬物、ポロキサマーおよび安定化ポリマーの粒子は、溶媒法で形成することが非常に適当である。本発明の固体組成物のTgが高いため、粒子中の薬物の相分離を最小限にして固体材料を形成できる処理条件の選択が可能になる。相分離とは、粒子中の多量の薬物が、非晶質薬物が高濃度の領域に分離するという意味である。相分離が生じて薬物が高濃度の領域が形成された場合、溶媒が速やかに除去される条件を選択することで、領域を非常に小さく、一般的には約1μmのサイズ、好ましくは約200nm未満のサイズにする。 溶媒法では、低溶解性薬物、ポロキサマーおよび安定化ポリマーを一般的な溶媒に溶解する。本明細書で「一般的な」とは、化合物の混合物であり得る溶媒が薬物、ポロキサマーおよび安定化ポリマーを溶解するという意味である。薬物、ポロキサマーおよび安定化ポリマーが溶解した後で、溶媒を蒸発除去するか非溶媒と混合することで除去する。例示的な方法としては、噴霧乾燥、噴霧コーティング(パンコーティング、流動層コーティング等)、回転蒸発、ならびにポリマーおよび薬物の溶液とCO2、水または他の非溶媒の速やかな混合による沈殿が挙げられる。好ましくは、溶媒を除去することで薬物の少なくとも相当な部分が非晶質状態になる。 溶媒処理に好適な溶媒は、融点150℃以下で揮発性であることが好ましい。また、溶媒は、毒性が比較的小さい必要があり、固体組成物から日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)ガイドラインに従って許容できるレベルにまで除去されなければならない。溶媒をこのレベルにまで除去するには、棚乾燥などの後続の処理ステップが必要になることがある。好ましい溶媒としては、水;メタノールおよびエタノールなどのアルコール;アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンなどのケトン;ならびにアセトニトリル、塩化メチレンおよびテトラヒドロフランなど他の溶媒が挙げられる。少量のジメチルアセトアミドまたはジメチルスルホキシドなどの低揮発性溶媒を揮発性溶媒との混合物として使用してもよい。ポロキサマー、安定化ポリマーおよび薬物がプロセスを実行可能にする上で十分可溶性である限り、メタノール50%−アセトン50%などの溶媒の混合物を、水との混合物と同様に使用してもよい。一般に、低溶解性薬物が疎水性であるために非水性溶媒が好ましく、したがって溶媒は水を約30重量%未満しか含まない。 溶媒は噴霧乾燥で除去することができる。「噴霧乾燥」という用語は従来から使用され、液体混合物を小さい液滴に細かくするステップ(噴霧)と、液滴から溶媒を蒸発させる強い推進力が存在する噴霧乾燥装置中で混合物から溶媒を速やかに除去するステップとを含む方法を広く意味する。噴霧乾燥法および噴霧乾燥装置はPerry’s Chemical Engineers’Handbook,pages 20−54 to 20−57(Sixth Edition 1984)に一般的に記載されている。噴霧乾燥の方法および装置に関する詳細はMarshall,“Atomization and Spray−Drying,”50 Chem.Eng.Prog.Monogr.Series 2(1954)およびMasters,Spray Drying Handbook(Fourth Edition 1985)で考察されている。一般に、溶媒蒸発の強力な推進力は、噴霧乾燥装置内での溶媒の分圧を、液滴が乾燥する温度で溶媒の蒸気圧を大幅に下回るように維持することで与えられる。これは、(1)噴霧乾燥装置内の圧力を部分真空(例えば0.01〜0.50気圧)に維持するか、(2)液滴を温暖な乾燥ガスと混合するか、(3)(1)および(2)の両方により実現される。また、溶媒の蒸発に必要な熱の少なくとも一部を噴霧液の加熱により与えることができる。 薬物、ポロキサマーおよび安定化ポリマーを含む溶媒を含む供給材料は、各種条件下で噴霧乾燥することができ、さらには許容できる特性を有する組成物を生成することができる。例えば、各種ノズルを使用して噴霧液を噴霧することにより、噴霧液を噴霧乾燥室に小さな液滴の集まりとして導入することができる。形成される液滴が十分に小さく、(溶媒の蒸発により)十分に乾燥して噴霧乾燥室の壁に粘着するかそれをコートすることがない限り、本質的にいかなる種類のノズルを用いて溶液を噴霧してもよい。 最大液滴サイズは、サイズ、形状および噴霧乾燥機内のフローパターンの関数として広範囲で変化するが、一般に、液滴はノズルを出る際に直径が約500μm未満でなければならない。固体組成物の形成に使用できるノズルの種類としては例えば、2流体ノズル、噴水型ノズル、フラットファン型ノズル、加圧ノズルおよび回転噴霧器が挙げられる。好ましい実施形態では、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、本発明の譲受人に譲渡された同時係属の米国特許出願第10/351,568号に詳しく開示されている加圧ノズルが使用される。 噴霧液は、広範囲の温度および流量で1つまたは複数の噴霧ノズルに送ることができる。一般に、噴霧液の温度は、溶媒の凝固点をわずかに超えた温度から、(溶液を加圧することによる)その周囲圧力での沸点を約20℃超える温度、場合によってはさらに高い温度までのいかなる範囲であってもよい。噴霧液の噴霧ノズルに対する流量は、ノズルの種類、噴霧乾燥機のサイズ、ならびに乾燥ガスの入口温度および流量などの噴霧乾燥条件に応じて広範囲で変化し得る。一般に、噴霧乾燥法で噴霧液から溶媒を蒸発するためのエネルギーは主に乾燥ガスに由来する。 乾燥ガスは原則として本質的にいかなるガスであってもよいが、安全上の理由で、また固体組成物中の薬物または他の材料の望ましくない酸化を最小限に抑えるために、窒素、窒素が高濃度の空気またはアルゴンなどの不活性ガスを使用する。通常、乾燥ガスは乾燥室に約60℃〜約300℃、好ましくは約80℃〜約240℃の温度で導入する。 液滴の表面−体積比および溶媒を蒸発させる推進力が大きいため、液滴の凝固時間が短縮される。凝固時間は約20秒未満、好ましくは約10秒未満、より好ましくは1秒未満でなければならない。この速やかな凝縮は、粒子を、薬物が高濃度の相とポリマーが高濃度の相に分離する代わりに薬物およびポリマーの均一な相として維持するのに重要であることが多い。好ましい実施形態では、噴霧乾燥機の高さおよび容量は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,763,607号に詳しく記載されているように、液滴が噴霧乾燥機の内部表面に衝突する前に乾燥するのに十分な時間を与えるように調整される。 本発明者らは、噴霧乾燥組成物の特性は噴霧乾燥条件に応じて大きく変化し得るものの、出口での排出乾燥ガスの温度またはTOUTは、薬物の相分離を最小限に抑えた固体粒子を製造する上で重要であることを発見した。一般には、溶媒を速やかに除去して液滴を速やかに凝固することが望ましい。従来の噴霧乾燥用途では、これはTOUTを上昇させることで実現される。しかし、TOUTが粒子のガラス転移温度より高い場合、噴霧乾燥プロセス時に粒子中の薬物の移動度が高くなり、薬物が組成物中で相分離することがあり、最終的に結晶化することがある。したがって、相分離した薬物の量を最小限にした粒子は、TOUTを固体組成物のガラス転移温度未満に維持した場合に最も得られる可能性が高い。好ましくは、TOUTは固体粒子のTgプラス20℃(Tg+20℃)未満、好ましくはTg未満である。組成物のTgが高くなるほど、相分離した薬物の量が最小限の粒子を製造する一方でTOUTが高くなる。 凝固した後、固体粉末は通常、噴霧乾燥室内に約5〜60秒とどまり、さらに固体粉末から溶媒を蒸発させる。固体組成物が乾燥機を出る際の最終溶媒含有量は低くなければならない。これにより固体組成物中の薬物分子の移動度が低くなって、その安定性が高まるためである。一般に、固体組成物が噴霧乾燥室を出る際の固体組成物の溶媒含有量は10重量%未満、好ましくは2重量%未満でなければならない。固体組成物を形成した後、トレー乾燥、流動層乾燥、マイクロ波乾燥、ベルト乾燥、回転乾燥、減圧乾燥、および当技術分野で公知の他の乾燥方法などの好適な乾燥方法で乾燥して残った溶媒を除去することができる。 噴霧乾燥法および噴霧乾燥装置は、PerryのChemical Engineers’Handbook,Sixth Edition(R.H.Perry,D.W.Green,J.O.Maloney,eds.)McGraw−Hill Book Co.1984,pages 20−54 to 20−57に一般的に記載されている。噴霧乾燥の方法および装置に関する詳細はMarshall,“Atomization and Spray−Drying,”50 Chem.Eng.Prog.Monogr.Series 2(1954)で考察されている。 他の実施形態では、固体組成物は回転蒸発法で形成される。この方法では、薬物、ポロキサマーおよび安定化ポリマーを上記の一般的な溶媒に溶解する。次に、溶媒を回転蒸発で除去する。得られた高濃度のシロップまたは固体は、次に高真空ライン上で乾燥することができる。得られた固体は、乳鉢と乳棒を用いるか当技術分野で公知の他の粉砕法により小さい粒子に成形することが好ましい。粒子は篩い分け、必要に応じて乾燥して所望の特性を有する材料を得ることができる。 他の実施形態では、粒子は、薬物、ポロキサマーおよび安定化ポリマーのコーティング液をシード核に噴霧することで形成される。シード核は、デンプン、微結晶セルロース、糖またはワックスなどの任意の好適な材料から、溶融または噴霧凝固、押出/球形化、造粒、噴霧乾燥などの任意の公知の方法により製造することができる。 コーティング液はそのようなシード核に、パンコーティング装置(例えば日本国東京のフロイント産業(株)から入手可能なハイコーター、英国リバプールのManestyから入手可能なAccela−Cota)、流動層コーティング装置(例えばニュージャージー州ラムジーのGlatt Air Technologiesおよびスイス、ブーベンドルフのNiro Pharma Systemsから入手可能なワースター(Wurster)コーティング装置またはトップ噴霧器)および回転造粒機(例えばフロイント産業(株)から入手可能なCFグラニュレーター)などの医薬分野で公知のコーティング装置を用いて噴霧することができる。 濃度向上 本発明の固体組成物は濃度が向上している。「濃度が向上している」という用語は、使用環境中の薬物の濃度を対照組成物に比べて向上させるのに十分な量でポロキサマーが組成物中に存在するという意味である。本明細書でいう「使用環境」とは、哺乳動物、特にヒトなどの動物の胃腸管、皮下(subdermal)腔、鼻腔、口腔、くも膜下腔、眼腔、耳腔、皮下(subcutaneous)腔、膣管、動脈および静脈血管、肺管または筋肉内組織のin vivo環境、あるいはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはモデル絶食十二指腸(MFD)溶液などの試験液のin vitro環境とすることができる。濃度向上はin vivo溶解試験またはin vivo試験のいずれかで測定することができる。モデル絶食十二指腸(MFD)溶液またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中のin vitro溶解試験での薬物濃度の向上は、in vivoの性能および生物学的利用率を適切に表すと判定された。適切なPBS溶液は、リン酸ナトリウム(Na2HPO4)20mM、リン酸カリウム(KH2PO4)47mM、NaCl87mMおよびKCl0.2mMを含み、NaOHでpH6.5に調整された水溶液である。適切なMFD溶液は、タウロコール酸ナトリウム7.3mMおよび1−パルミトイル−2−オレイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン1.4mMがさらに存在する同一のPBS溶液である。特に、本発明の組成物の溶解試験は、MFDまたはPBS溶液を加え、撹拌により溶解を促進することで行うことができる。 一態様では、本発明の組成物を水性使用環境に投与した場合、最大薬物濃度(MDC)は対照組成物の少なくとも1.25倍である。言い換えれば、対照組成物が与えるMDCが100μg/mLの場合、本発明の組成物は少なくとも125μg/mLのMDCを与える。より好ましくは、本発明の組成物が与える薬物のMDCは対照組成物の少なくとも2倍、さらに好ましくは少なくとも3倍、最も好ましくは少なくとも5倍である。 対照組成物は、慣習的に単独の非分散薬物(例えば、通常はその最も熱力学的に安定な結晶形での単独の結晶性薬物。薬物の結晶形が未知である場合、対照は単独の非晶質薬物であってもよい)、または薬物プラス試験組成物中のポロキサマーおよび安定化ポリマーの重量と等しい重量の不活性希釈剤である。不活性とは、希釈剤が濃度を向上させないという意味である。 好ましくは、固体組成物は、安定化ポリマー中の等量の薬物担持量の非晶質薬物からなるがポロキサマーを含まない粒子から本質的になる対照組成物と比べて濃度が向上している。 あるいは、本発明の組成物は、水性使用環境における濃度時間曲線下面積(AUC)が、使用環境に導入した時点から使用環境に導入後約270分までの任意の少なくとも90分間で、対照組成物の少なくとも1.25倍である。より好ましくは、本発明の組成物が与える水性使用環境におけるAUCは対照組成物の少なくとも2倍、さらに好ましくは少なくとも3倍、最も好ましくは少なくとも5倍である。 あるいは、本発明の組成物をヒトまたは他の動物に経口投与した場合、血漿または血清中の薬物濃度のAUCは、適切な対照組成物を投与した際に観察される値の少なくとも1.25倍である。好ましくは、血液AUCは対照組成物の少なくとも約2倍、好ましくは少なくとも約3倍、好ましくは少なくとも約4倍、好ましくは少なくとも約6倍、好ましくは少なくとも約10倍、さらに好ましくは少なくとも約20倍である。そのような組成物の相対的生物学的利用率が対照組成物の約1.25倍〜約20倍であるということもできることに留意されたい。したがって、in vitro、in vivoまたはその両方の性能基準に適合していると評価される組成物は本発明の一部である。 あるいは、本発明の組成物をヒトまたは他の動物に経口投与した場合、血漿または血清中の最大薬物濃度(Cmax)は、適切な対照組成物を投与した際に観察される値の少なくとも1.25倍である。好ましくは、血液Cmaxは対照組成物の少なくとも約2倍、好ましくは少なくとも約3倍、好ましくは少なくとも約4倍、好ましくは少なくとも約6倍、好ましくは少なくとも約10倍、さらに好ましくは少なくとも約20倍である。 薬物濃度の向上を評価する典型的なin vitro試験は、(1)試験媒体に十分な量の試験組成物(すなわち、低溶解性薬物、ポロキサマーおよび安定化ポリマーの組成物)を撹拌しながら投与して、薬物がすべて溶解した場合に、薬物の理論濃度が薬物の平衡濃度の少なくとも2倍となるようにし、(2)別の試験で適量の対照組成物を等量の試験媒体に加え、(3)試験媒体中の試験組成物の測定されたMDCおよび/またはAUCが対照組成物により与えられる値の少なくとも1.25倍であるかどうかを測定することで行うことができる。このような溶解試験を行う際に、試験組成物または対照組成物の使用量は、すべての薬物が溶解した場合に、薬物濃度が薬物の溶解度(すなわち平衡濃度)の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも10倍、最も好ましくは少なくとも100倍となるような量である。超低溶解性薬物、ポロキサマーおよび安定化ポリマーのいくつかの試験組成物については、MDCを測定するためさらに多量の試験組成物を投与する必要がある場合がある。 通常、溶解した薬物の濃度は、試験媒体をサンプリングし、MDCおよび/またはAUCを確認できるように試験媒体中の薬物濃度を時間に対してプロットすることにより時間の関数として測定される。MDCは、試験期間にわたって測定された溶解した薬物の最大値とする。水性AUCは、組成物を水性使用環境に導入した時点(時間がゼロに等しい)から使用環境に導入後270分(時間が270分に等しい)までの任意の90分間にわたる濃度時間曲線を積分することで計算される。通常、組成物が急速に、すなわち約30分以内にMDCに達する場合、AUCの計算に使用される時間間隔はゼロに等しい時間から90分に等しい時間である。しかし、上記の任意の90分間にわたる組成物のAUCが本発明の基準を満たす場合、形成された組成物は本発明の範囲内であると考えられる。 測定の誤りをもたらすとみられる薬物粒子を回避するために、試験溶液を濾過または遠心分離する。通常、「溶解した薬物」は0.45μmシリンジフィルターを通過する材料、あるいは遠心分離後の上澄液にとどまる材料とする。濾過は、Scientific Resourcesから商標TITAN(登録商標)として販売されている13mm、0.45μmのポリビニリデンジフルオリドシリンジフィルターを用いて行うことができる。濾過は通常、ポリプロピレン微小遠心分離管中、13,000Gで60秒間遠心分離することで行う。他の同様の濾過または遠心分離方法を用いることができ、有用な結果を得ることができる。例えば、他の種類のマイクロフィルターを用いて、上記で特定されたフィルターで得られる値よりやや高いか低い値(±10〜40%)を得ることができ、一方でなお好ましい組成物を同定することができる。この「溶解した薬物」の定義は、モノマーの溶媒和薬物分子を包含するだけでなく、薬物凝集体、ポリマーと薬物の混合物の凝集体、ミセル、ポリマーミセル、コロイド粒子またはナノ結晶などのサブミクロン寸法のポリマー/薬物凝集体、ポリマー/薬物錯体、および特定の溶解試験において濾液または上澄液中に存在する他のそのような薬物含有種などの広範な種を包含すると認識される。 あるいは、本発明の組成物は、ヒトまたは他の動物に経口投与した場合の生物学的利用率またはCmaxが向上している。組成物中の薬物の相対的生物学的利用率およびCmaxは、そのような測定を行う従来の方法を用いて動物またはヒトにおいてin vivoで試験することができる。クロスオーバー研究などのin vivo研究を使用して、薬物およびポロキサマーの組成物の相対的生物学的利用率またはCmaxが上記の対照組成物と比べて向上しているかどうかを判定することができる。in vivoクロスオーバー研究では、低溶解性薬物、ポロキサマーおよび安定化ポリマーを含む試験組成物を試験対象の群の半分に投与して、適切なウォッシュアウト期間(例えば1週間)の後で、同一の対象に上記の対照組成物を投与する。この群の他の半分には最初に対照組成物を、次に試験組成物を投与する。相対的生物学的利用率は、試験群について求めた血液(血清または血漿)中の薬物濃度時間曲線下面積(AUC)を、対照組成物により与えられる血中AUCで割った値として測定する。好ましくは、この試験組成物/対照組成物比を各対象について測定し、研究での全対象について比の平均値を求める。同様に、Cmaxは、試験群の時間に対する血中薬物濃度を対照組成物により与えられる値で割った値から求めることができる。CmaxおよびAUCのin vivo測定は、縦座標(y軸)方向の薬物の血清または血漿中濃度を横座標(x軸)方向の時間に対してプロットすることで行うことができる。投与を容易にするために、投与ビヒクルを使用して用量を投与することができる。投与ビヒクルは水が好ましいが、組成物を溶解したり、薬物のin vivo溶解度を変化させたりしない限り、試験または対照組成物を懸濁させる材料を含んでいてもよい。CmaxおよびAUCの測定は公知の手順であり、例えばWelling,“Pharmacokinetics Processes and Mathematics,”ACS Monograph 185(1986)に記載されている。 物理安定性の向上 一実施形態では、薬物、ポロキサマーおよび安定化ポリマーの固体粒子は対照組成物と比べて物理安定性が向上している。物理安定性の向上を測定するために、対照組成物は単独のポロキサマー中の同じ薬物担持量を有する粒子から本質的になるが、安定化ポリマーを含まない。 物理安定性の向上は、本発明の薬物、ポロキサマーおよび安定化ポリマーを含む「試験組成物」中の薬物の結晶化速度を、対照組成物中の薬物の結晶化速度と比較することで測定することができる。薬物の結晶化速度は、通常の保存環境内で、試験組成物または対照組成物中で結晶化状態にある薬物の割合を経時的に求めることで測定することができる。これは、X線回折、DSC、固相NMRまたは走査型電子顕微鏡(「SEM」)分析などの任意の標準的物理測定により測定することができる。物理的に安定な試験組成物中の薬物の結晶化速度は、対照組成物中の薬物より遅い。好ましくは、試験組成物中の薬物の結晶化速度は、対照組成物中の薬物の結晶化速度の90%未満、より好ましくは80%未満である。したがって、例えば、対照組成物中の薬物が1%/週の速度で結晶化した場合、試験組成物中の薬物は0.9%未満/週の速度で結晶化する。多くの場合、対照組成物中の薬物の結晶化速度の約10%未満(または所与の例について約0.1%未満/週)といった遥かに劇的な向上が観察される。 物理安定性の相対的向上度は、本発明の組成物により得られる物理安定性の向上を特徴付けるために使用することができる。「物理安定性の相対的向上度」は、(1)対照組成物の薬物結晶化速度と(2)試験組成物の薬物結晶化速度の比として定義付けられる。例えば、対照組成物中の薬物が10重量%/週の速度で結晶化し、試験組成物中の薬物が5重量%/週の速度で結晶化する場合、物理安定性の相対的向上度は2となる(10重量%/週÷5重量%/週)。好ましくは、本発明の組成物の物理安定性の相対的向上度は、同量の薬物およびポロキサマーから本質的になるが安定化ポリマーを含まない対照組成物に対して少なくとも約1.25、好ましくは少なくとも約2.0、より好ましくは少なくとも3.0である。 物理安定性を評価する上で特定の保存条件および保存時間を便宜的に選択することができる。組成物が上記の安定性基準に適合しているかどうかを試験するのに用いることができる安定性試験では、試験組成物および対照組成物を25℃、RH10%で3週間保存する。試験組成物での安定性の向上は3〜5日間といった短時間で明らかであり、ある薬物ではさらに短い保存時間を使用することができる。安定性試験は、例えば40℃、RH25%または40℃、RH75%で1〜3週間といった高温高湿条件で行うことで促進してもよい。 添加剤および剤形 (例えばRemington:The Science and Practice of Pharmacy(20th ed.,2000)に記載されている)当技術分野で公知の添加剤を含む他の従来の製剤賦形剤を、本発明の組成物に使用することができる。一般に、充填剤、崩壊剤、色素、結合剤、潤滑剤、流動化剤、香料などの添加剤を慣習的な目的のために通常量で、組成物の特性に悪影響を与えずに使用することができる。これらの添加剤は、薬物/ポリマー組成物が形成された後で、組成物を錠剤、カプセル、坐剤、懸濁液、懸濁液用粉末、クリーム、経皮パッチ、デポー剤などに調剤するために使用することができる。 本発明の組成物は経口、経鼻、直腸、膣、皮下、静脈内および肺を含むがそれだけに限定されない各種経路により送達することができる。一般に、経口経路が好ましい。 本発明の組成物は、粒子の液体媒体中懸濁液として送達されるような各種形態で調剤することができる。そのような懸濁液は製造時に液体またはペーストとして調剤することができ、あるいは乾燥粉末として調剤し、それより後だが経口投与の前に液体、通常は水を加えることもできる。懸濁液として構成されるそのような粉末は、分包または構成用経口粉末(OPC)製剤と呼ばれることが多い。このような剤形は任意の公知の手順で調剤および再構成することができる。最も単純なアプローチは、単純に水を加え撹拌することで再構成される乾燥粉末として剤形を調剤することである。あるいは、組み合わせて撹拌することで経口懸濁液を形成する液体および乾燥粉末として剤形を製剤することができる。さらに別の実施形態では、最初に第1の粉末に水を加えて溶液を形成し、その溶液に第2の粉末を組み合わせて撹拌して懸濁液を形成することにより再構成される2つの粉末として剤形を調剤することができる。 一般に、薬物の組成物を乾燥状態で長期保存用に調剤することが好ましい。これにより薬物の化学および物理安定性が向上するためである。組成物中の非晶質薬物の結晶性状態への転換は、(1)組成物のTgおよび(2)Tstorageの相対値に関連しているため、本発明の固体組成物中の薬物は、比較的低い温度および低い相対湿度で保存した場合、より長期間非晶質状態にとどまる傾向がある可能性がある。また、水の吸収を防止するためにそのような組成物を包装するか、水の吸収を防止もしくは遅延させるために乾燥剤などの吸水性材料を含めることにより、保存中の組成物のTgを高めて非晶質状態を保持することができる。同様に、より低温で保存して非晶質状態の保持を向上させることもできる。 本発明の他の特徴および実施形態は以下の実施例から明らかである。以下の実施例は、本発明の意図する範囲を制限するのではなく、本発明を例示するために示される。(実施例1) 固体組成物を以下の噴霧乾燥プロセスで形成した。組成物は、メシル酸ネルフィナビルまたはビラセプト(登録商標)としても知られる低溶解性HIVプロテアーゼ阻害剤N−(1,1−ジメチルエチル)デカヒドロ−2−[(2R,3R)−2−ヒドロキシ−3−[(3−ヒドロキシ−2−メチルベンゾイル)アミノ]−4−(フェニルチオ)ブチル]−3−イソキノリンカルボキサミド(3s,4aS,8aS)−モノメタンスルホネート(「薬物1」)(溶解度はpH6.5のPBS中で約20μg/mL、TgはRH5%未満で119℃)50重量%、ポロキサマー407(PLURONIC F127、ニュージャージー州マウントオリーブのBASF Corporationから入手可能)30重量%、および安定化ポリマーヒドロキシプロピルメチルセルロース(ミシガン州ミッドランドのDow Chemical Co.から入手可能でTgは相対湿度5%未満で約150℃のHPMC E3 Prem LV、METHOCEL(登録商標))20重量%からなっていた。ビラセプト2.5重量%、Pluronic F127 1.5重量%、HPMC1.0重量%、メタノール85.5重量%および水9.5重量%を含む噴霧液を形成した。ポリマーおよび薬物がすべて溶解するまで溶液を混合した。高圧ポンプを使用して噴霧液を、加圧ノズル(Delavan LTVのモデルWG−126)を備えた噴霧乾燥機(液体供給プロセス容器付きのNiro型XP携帯噴霧乾燥機(「PSD−1」))に送った。PSD−1は5フィート9インチのチャンバーの増設を備えていた。チャンバーの増設は、乾燥機の垂直方向の長さを伸ばすために噴霧乾燥機に追加した。長さが伸びたことで乾燥機内での滞留時間が長くなり、噴霧乾燥機の角張った部分に到達する前に生成物が乾燥することが可能になった。噴霧乾燥機は、1/16インチのドリル穴を有し、開口面積が1%である316SS円形散気板も備えていた。この小さい開口面積により乾燥ガスの流れを方向付け、噴霧乾燥機内の生成物の再循環を最小限に抑えるようにした。運転中、ノズルを散気板と同一平面上に置いた。噴霧液をノズルに約120g/分、圧力230psigで送った。脈動減少装置を用いてノズルの脈動を最小限に抑えた。乾燥ガス(例えば窒素)を、散気板を通して流量約2000g/分、入口温度約175℃で導入した。蒸発した溶媒および乾燥ガスは約45℃の温度で噴霧乾燥機から排出された。噴霧乾燥組成物はサイクロン内で回収し、薬物1 50重量%、Pluronic 30重量%、HPMC 20重量%を含んでいた。したがって、ポロキサマーと安定化ポリマーの質量比は1.5(30重量%÷20重量%)であった。得られた組成物のTgをDSCによりRH5%未満で測定したところ約107℃であった。 こうして形成された固体組成物を40℃、RH75%で3週間保存した前後の薬物結晶性を、Bruker AXS D8 Advance回折計を用いた粉末X線回折(PXRD)で調査した。サンプル(約100mg)を、バックグラウンド信号を生成しないようにカップの底としてSi(511)プレートを取り付けたLuciteサンプルカップ中に充填した。サンプルをφ平面内で30rpmの速度で回転させて結晶配向効果を最小限に抑えた。X線源(KCuα、λ=1.54Å)を電圧45kV、電流40mAで運転した。各サンプルのデータを、走査速度1.8秒/ステップ、ステップサイズ0.04°/ステップの連続検出走査モードで27分間にわたって収集した。ディフラクトグラムを4°〜30°の2θ範囲で収集した。 40℃、RH75%で3週間保存した前後の実施例1の固体組成物は、組成物中の薬物がほぼ完全に非晶質であることを示す回折パターンを示し、結晶性薬物に特徴的である鋭いピークは全くみられなかった。これは、40℃、RH75%で3週間保存後、薬物の非晶質形が組成物中で安定であることを実証している。 実施例1の固体組成物を以下のin vitro溶解試験で評価した。各試験では複製した微小遠心分離管に組成物を加えた。組成物の4.21mgサンプルを各管に加え、すべての薬物が溶解した場合に薬物の合計濃度が1000μg/mLになるようにした。各管を37℃恒温室に入れ、タウロコール酸ナトリウム0.5重量%および1−パルミトイル−2−オレイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(NaTC/POPC、重量比4/1)をpH6.5、290mOsm/kgで含むPBS1.8mL(モデル絶食十二指腸溶液、「MFDS」)を各管に加えた。ボルテックスミキサーを用いて約60秒間、サンプルを速やかに混合した。サンプルを13,000G、37℃で1分間遠心分離した。次に、得られた上澄液をサンプリングし、メタノールで1:6(体積比)で希釈した後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した。各管の内容物をボルテックスミキサー上で混合し、次のサンプルを採取するまで37℃で静置した。サンプルを4、10、20、40、90および1200分後に収集した。 対照(C1)として、単独の結晶性薬物1をMFDS1.8mLに、すべての薬物が溶解した場合の薬物濃度が1000μg/mLとなるのに十分な量で加えた。 第2の対照(C2)として、ポロキサマーを含まないことを除いて実施例1と同様の組成物を形成した。対照C2は、薬物1 50重量%およびHPMC50重量%からなっていた。組成物は、薬物1 292mgおよびHPMC250mgからなる噴霧液をアセトン:水の50.7:8w/w混合物58.7gm中で最初に形成することにより形成した。この溶液は、Cole Parmer 74900シリーズ律速シリンジポンプを通して70ml/時の速度で「ミニ」噴霧乾燥装置に供給した。噴霧液は、Spraying Systems Co.の2流体ノズルModel No.SU1Aを通して、流量1SCFMで窒素の加熱流を用いて噴霧した。噴霧液は直径11cmのステンレス室に対して噴霧した。加熱ガスはステンレス室に入口温度110℃で入り、周囲温度でから排出された。得られた固体組成物を濾紙上に収集し、減圧乾燥し、乾燥器内に保存した。十分な量の組成物を加えて、すべての薬物が溶解した場合の濃度が3000μg/mLとなるようにしたことを除けば上記の通りである手順を用いる溶出試験でこの組成物を試験した。 実施例1ならびに対照C1およびC2の溶出試験の結果を表2に示す。 これらのサンプルで得た薬物の濃度を使用して、最初の90分間の最大薬物濃度(「MDC90」)および濃度時間曲線下面積(「AUC90」)を測定した。結果を表3に示す。 データは、本発明の組成物が対照組成物C1とC2の両方に比べて濃度が向上していたことを示す。実施例1のMDC90は対照C1の3.3倍であり、実施例1のAUC90は対照C1の3.5倍であった。実施例1のMDC90は対照C2の3.1倍であり、実施例1のAUC90は対照C2の3.1倍であった。 実施例1の固体組成物の安定性を加速保存試験で評価した。組成物を高温高湿条件で保存して材料に起こる物理的変化の速度を測定し、通常の保存環境でのより長期の保存期間をシミュレートした。組成物のサンプルを40℃/RH75%で3週間保存した。保存後、組成物を上記のようにin vitroで試験して薬物1の濃度向上を実証した。結果を表4に示す。 これらのサンプルで得られた薬物濃度を使用して最初の90分間のMDC90とAUC90を測定した。結果を表5に示す。保存前の溶出試験の結果を比較のために再度示す。 データは、本発明の組成物が40℃/RH75%で3週間保存後に安定的に濃度が向上していたことを示す。(実施例2〜4) 薬物1を含む固体組成物を、様々な量のポロキサマー407ならびに安定化ポリマーであるヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートを用いて下記のように調製した。表6は実施例2〜4の組成物を示す。実施例1の組成物は比較用に含まれる。相対湿度10%未満で測定した各組成物のTgも表6に含まれる。 対照組成物C3をポリマーであるヒドロキシプロピルセルロースを用いて製造した。 実施例2の固体組成物を、噴霧液が薬物1 7gm、PLURONIC F127 7g、HPMC E3 PREM LV 6g、メタノール342gおよび水38gからなることを除いて実施例1に記載の通りの噴霧乾燥プロセスを用いて調製した。 実施例3、4およびC3の固体組成物を以下のように「ミニ」噴霧乾燥機を用いて噴霧乾燥した。薬物1、PLURONIC F127および安定化ポリマーをアセトン24gに溶解した。対照C3では、噴霧液中の全固体濃度は2重量%であった。実施例3および4では、噴霧液中の全固体濃度は4重量%であった。各溶液は、Cole Parmer 74900シリーズ律速シリンジポンプを通して30ml/時の速度で「ミニ」噴霧乾燥装置に供給した。噴霧液は、Spraying Systems Co.の2流体ノズルModel No.SU1Aを通して、流量1SCFMで窒素の加熱流を用いて噴霧した。噴霧液は直径11cmのステンレス室に対して噴霧した。加熱ガスはステンレス室に入口温度80℃で入り、周囲温度で排出された。得られた固体組成物を濾紙上に収集し、減圧乾燥し、乾燥器内に保存した。 実施例2〜4およびC3の固体組成物をin vitroで試験して薬物1の濃度向上を実証した。各試験では、十分な量の組成物を各管に加え、すべての薬物が溶解した場合に薬物の合計濃度が1000μg/mLになるようにした。各管を37℃恒温室に入れ、PBS1.8mLを加えた。試験を上記のように行った。結果を表7に示す。 対照(C4)として、単独の結晶性薬物1をPBS中で試験し、十分な量の材料を加えてすべての薬物が溶解した場合の薬物濃度が1000μg/mLとなるようにした。 これらのサンプルで得られた薬物濃度を使用して最初の90分間のMDC90とAUC90を測定した。結果を表8に示す。 データは、本発明の組成物が単独の結晶性薬物(C4)と比べて濃度が向上していたことを示す。実施例2〜4のMDC90は結晶性対照の44〜73倍であり、実施例2〜4のAUC90は結晶性対照の72〜129倍であった。さらに、実施例2〜4では、異なるセルロース系ポリマーであるヒドロキシプロピルセルロースを用いた場合に比べて濃度が向上していた。(実施例5) トルセトラピブ(「薬物2」)としても知られ、pH6.5のPBS中での溶解度が1μg/mL未満であり、RH5%未満でのTgが約30℃である低溶解性コレステリルエステル転移タンパク質阻害剤[2R,4S]4−[(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジル)−メトキシカルボニル−アミノ]−2−エチル−6−トリフルオロメチル−3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−カルボン酸エチルエステルを含む固体組成物を形成した。組成物は、薬物2 25重量%、PLURONIC F127 50重量%およびHPMCAS−MF25重量%からなっていた。したがって、ポロキサマーと安定化ポリマーの質量比は2であった(50重量%÷25重量%)。噴霧液が薬物2 0.8重量%、Pluronic F127 1.6重量%、HPMCAS−MF 0.8重量%およびアセトン96.8重量%からなり、溶液供給速度が60mL/時であり、乾燥ガスの入口温度が85℃であったことを除いて実施例2〜4に記載の通りの噴霧乾燥プロセスを用いて、組成物を形成した。 こうして形成された固体組成物をin vitroで試験して薬物2の濃度向上を実証した。十分な量の組成物を各管(複製)に加え、すべての薬物が溶解した場合に薬物の合計濃度が1000μg/mLになるようにした。各管を37℃恒温室に入れ、PBS1.8mLを加えた。試験を上記のように行った。結果を表9に示す。 対照(C5)は単独の結晶性薬物2からなっており、PBS中で試験し、十分な量の材料を加えてすべての薬物が溶解した場合の薬物濃度が1000μg/mLとなるようにした。 これらのサンプルで得られた薬物濃度を使用して最初の90分間のMDC90とAUC90を測定した。結果を表10に示す。 データは、本発明の固体組成物が単独の結晶性薬物(C4)と比べて濃度が向上していたことを示す。実施例5の固体組成物のMDC90は対照の455倍を超えており、一方で実施例5の組成物のAUC90は対照の303倍を超えていた。(実施例6) 薬物2 40重量%、PLURONIC F127 30重量%およびHPMCAS−MF30重量%を含む固体組成物を形成した。したがって、ポロキサマーと安定化ポリマーの質量比は1であった(30重量%÷30重量%)。回転蒸発法を使用して以下のように固体組成物を形成した。最初に、薬物2 0.4g、PLURONIC F127 0.3gおよびHPMCAS−MF 0.3gを丸底フラスコ中のメタノール15mLに加え、室温で2時間撹拌した。次に、フラスコを30℃浴中で120rpmで回転させながら、溶液からメタノールを減圧(約0.1気圧未満)除去した。得られた材料を次にフラスコから除去し、液体窒素中で冷却し、乳鉢と乳棒で粉砕した。 こうして形成された固体組成物をin vitroで試験して薬物2の濃度向上を実証した。十分な量の組成物を各管(複製)に加え、すべての薬物が溶解した場合に薬物の合計濃度が1000μg/mLになるようにした。各管を37℃恒温室に入れ、PBS1.8mLを加えた。試験を上記のように行った。結果を表11に示す。 これらのサンプルで得られた薬物濃度を使用して最初の90分間のMDC90とAUC90を測定した。結果を表12に示す。単独の結晶性薬物2からなる対照5(C5)を比較のため再度示す。 データは、本発明の固体組成物が単独の結晶性薬物(C5)と比べて濃度が向上していたことを示す。実施例6の固体組成物のMDC90は対照の267倍を超えており、一方で実施例6の組成物のAUC90は対照の163倍を超えていた。 実施例6の固体組成物の安定性を保存試験で評価した。組成物を25℃/RH10%で3週間保存し、保存前後の薬物結晶性を評価した。サンプルは、上記実施例1に記載のようにPXRDを用いて試験した。25℃、RH10%で3週間保存した前後の実施例6の固体組成物は、組成物中の薬物がほぼ完全に非晶質であることを示す回折パターンを示し、結晶性薬物に特徴的である鋭いピークは全くみられなかった。(実施例7) 薬物2 25重量%、HPMCAS−HF65重量%およびPLURONIC F127 10重量%を含む固体組成物を形成した。回転蒸発法を使用して実施例6に記載のように固体組成物を形成した。 こうして形成された固体組成物をin vitroで試験して薬物2の濃度向上を実証した。十分な量の組成物を各管(複製)に加え、すべての薬物が溶解した場合に薬物の合計濃度が1000μg/mLになるようにした。各管を37℃恒温室に入れ、PBS1.8mLを加えた。試験を上記のように行った。結果を表13に示す。 対照(C6)として、薬物2 25重量%およびHPMCAS−HF75重量%からなる組成物を、実施例6に記載の回転蒸発法を用いて形成した。組成物をin vitroで試験し、十分な量の材料をPBSに加えてすべての薬物が溶解した場合の薬物濃度が1000μg/mLとなるようにした。 これらのサンプルで得られた薬物濃度を使用して最初の90分間のMDC90とAUC90を測定した。結果を表10に示す。1200分時点での薬物濃度(C1200)も表10に示す。単独の結晶性薬物2からなる対照5(C5)を比較のため再度示す。 データは、本発明の固体組成物が、ポロキサマーを含まない対照組成物(C6)に比べて濃度が向上しており、また単独の結晶性薬物(C5)と比べて濃度が向上していたことを示す。実施例7の固体組成物のMDC90は対照C6の56倍を超えており、一方で実施例7の組成物のAUC90は対照C6の50倍を超えていた。実施例7の組成物により与えられる、対照例C6と比較した薬物2の濃度向上は、1200分後の溶解した薬物の濃度(C1200)がより高いことから明らかなように、溶解速度が上昇したためである。 上記明細書で使用した用語および表現は、本明細書では制限されることなく説明の表現として使用され、そのような用語および表現の使用にあたって、開示および説明された特徴の等価物またはその一部を排除することを意図するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲のみによって定義および限定されると認識される。複数の粒子を含む固体組成物であって、該粒子は、 (a)少なくとも約5重量%の、その相当な部分が非晶質である低溶解性薬物と、 (b)少なくとも約5重量%のポロキサマーと、 (c)ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートからなる群から選択される安定化ポリマーとを含む固体組成物。 前記粒子の最低ガラス転移温度が、相対湿度約10%未満で少なくとも約40℃である、請求項1に記載の固体組成物。 前記粒子の最低ガラス転移温度が、相対湿度約5%未満で少なくとも約45℃である、請求項2に記載の固体組成物。 前記粒子の最低ガラス転移温度が、相対湿度約5%未満で少なくとも約50℃である、請求項2に記載の固体組成物。 前記薬物のガラス転移温度が、相対湿度約5%未満で少なくとも約20℃である、請求項1に記載の固体組成物。 前記薬物のガラス転移温度が、相対湿度約5%未満で少なくとも約30℃である、請求項1に記載の固体組成物。 前記安定化ポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートおよびカルボキシメチルエチルセルロースからなる群から選択される、請求項1に記載の固体組成物。 前記ポロキサマーがポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー338およびポロキサマー407からなる群から選択される、請求項1に記載の固体組成物。 前記薬物が降圧薬、抗不安薬、抗凝固薬、抗痙攣薬、血糖降下薬、鬱血除去薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、抗悪性腫瘍薬、β遮断薬、抗炎症薬、抗精神病薬、向知性薬、コレステロール低下薬、抗アテローム性動脈硬化症薬、抗肥満薬、自己免疫障害薬、抗性交不能薬、抗菌薬および抗真菌薬、催眠薬、抗パーキンソン病薬、抗アルツハイマー病薬、抗生物質、抗うつ薬、抗ウイルス薬、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤、ミクロソームトリグリセリド転移タンパク質阻害剤、ならびにコレステリルエステル転移タンパク質阻害剤からなる群から選択される、請求項1に記載の固体組成物。 前記薬物が疎水性薬物である、請求項1に記載の固体組成物。 前記薬物がN−(1,1−ジメチルエチル)デカヒドロ−2−[(2R,3R)−2−ヒドロキシ−3−[(3−ヒドロキシ−2−メチルベンゾイル)アミノ]−4−(フェニルチオ)ブチル]−3−イソキノリンカルボキサミド(3s,4aS,8aS)−モノメタンスルホネート、[2R,4S]4−[(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジル)−メトキシカルボニル−アミノ]−2−エチル−6−トリフルオロメチル−3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−カルボン酸エチルエステル、またはその薬学的に許容できる形態からなる群から選択される、請求項1に記載の固体組成物。 前記ポロキサマーが十分な量で存在することにより、前記組成物をin vivoまたはin vitro水性使用環境に投与した後の濃度が、前記薬物および前記安定化ポリマーの分散液から本質的になる対照組成物に比べて向上しており、前記濃度向上が (a)前記水性使用環境中の最大薬物濃度(MDC)が、前記対照組成物により与えられるMDCの少なくとも1.25倍であること、および (b)前記組成物を前記水性使用環境に導入した時点から前記水性使用環境に導入後約270分までの任意の少なくとも90分間での前記水性使用環境における濃度時間曲線下面積(AUC)が、前記対照組成物により与えられるAUCの少なくとも1.25倍であることのうち少なくとも1つを特徴とする、請求項1に記載の固体組成物。 前記ポロキサマーが十分な量で存在することにより、前記組成物をin vivo使用環境に投与した後の濃度が、前記薬物および前記安定化ポリマーの分散液から本質的になる対照組成物に比べて向上しており、前記濃度向上が (a)最大血中濃度(Cmax)が前記対照組成物により与えられるCmaxの少なくとも1.25倍であること、および (b)相対的生物学的利用率が前記対照組成物に対して少なくとも1.25倍であることのうち少なくとも1つを特徴とする、請求項1に記載の固体組成物。 前記粒子中の前記薬物の物理安定性が、25℃、RH10%で3週間保存した場合に、前記薬物および前記ポロキサマーから本質的になる対照組成物に比べて向上している、請求項1に記載の固体組成物。 前記粒子中の前記薬物の物理安定性の相対的向上度が、同量の薬物およびポロキサマーから本質的になるが安定化ポリマーを含まない対照組成物に対して少なくとも1.25である、請求項1に記載の固体組成物。 前記物理安定性の相対的向上度が少なくとも約2.0である、請求項15に記載の固体組成物。 前記薬物の約10重量%未満が、25℃、RH10%で3週間保存時に結晶化する、請求項1に記載の固体組成物。 溶媒をベースとする方法により製造される、請求項1から17のいずれか一項に記載の固体組成物。 前記溶媒をベースとする方法が噴霧乾燥である、請求項18に記載の固体組成物。 物理安定性が向上した固体組成物は非晶質の低溶解性薬物、ポロキサマーおよび安定化ポリマーを含む。組成物は、保存時の物理安定性が良好であり、水性使用環境に投与した場合、溶解した薬物の濃度が向上している。


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