生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_フーリエ変換赤外振動円二色性分光法を使用したキラル分子の反応モニタリング
出願番号:2006535412
年次:2013
IPC分類:G01N 21/19,G01N 21/35,G01N 21/75


特許情報キャッシュ

ナフィ,ローレンス,エイ. クオ,チャンニン. ドゥコル,リナ,ケイ. JP 5313450 特許公報(B2) 20130712 2006535412 20041013 フーリエ変換赤外振動円二色性分光法を使用したキラル分子の反応モニタリング バイオ トゥールズ インク 506128318 BIO TOOLS,INC. 平田 忠雄 100071526 ナフィ,ローレンス,エイ. クオ,チャンニン. ドゥコル,リナ,ケイ. US 10/685,319 20031014 20131009 G01N 21/19 20060101AFI20130919BHJP G01N 21/35 20060101ALI20130919BHJP G01N 21/75 20060101ALI20130919BHJP JPG01N21/19G01N21/35 ZG01N21/75 Z G01N21/00−21/01 21/17−21/61 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 特開2005−069998(JP,A) 特開2000−206036(JP,A) D. Tsankov, T. Eggimann, and H. Wieser ,Alternative Design for Improved FT-IR/VCD Capabilities,Applied Spectroscopy,1995年,Vol. 49, No. 1,pp. 132-138 14 US2004034427 20041013 WO2005038439 20050428 2007524845 20070830 18 20071012 西村 直史 本発明は、分光法と分光計とを使用する化学反応モニタリングの分野に関する。特に、本発明は、近赤外(NIR)分光法及び中赤外(MIR)分光法の分野、及びキラル分子の識別装置の使用、及び反応時の一つの鏡像体の他の鏡像体に対する過剰率に関する。 キラル分子は、右手と左手が重ね合わせることができないのと同様に、鏡像がそれ自身に重ね合わせることができない分子である。キラル分子の、化学反応の進行をモニタすること(反応モニタリングとも呼ばれる)は、反応混合物の2つの量或いは性質の測定に関わる。1つの量は、混合物中に存在する分子種の各々の濃度(量或いは分別組成)である。この量は、化学反応過程における時間関数として多数の波長を通して吸収スペクトルから直接決定され得る。吸収スペクトルは、何らかの方法で、反応する化学物質の濃度に関係するであろう。第2の性質は、存在するキラル分子種の各々のパーセント鏡像体過剰率(以下、%EE)である。1つのキラル分子種の%EEは、キラル分子の1つの鏡像体(特定の鏡像形態)の濃度と同分子の逆鏡像体の濃度との差を分子の全濃度(2つの鏡像体の濃度の和)で割ってこれに100を掛けたもの(%)として定義される。単一キラル分子種の%EEは、例えば光学回転(OR)又は円偏光二色性(CD)のような任意の光学活性形態を使用して測定され得る。キラル分子種の化学反応のモニタリング時に、化合物の濃度のみならず該化合物の鏡像体の%EEもモニタすることが望ましい場合がある。 キラル化学物質の化合物、特に医薬剤の生成時、該化合物の特定の鏡像体を多く、他の鏡像体を少なく生成することが望ましい場合がある。そのような状況では、所望の生成物が最大に生成されるように、化学反応をモニタすることが有益である。実際に、この最大を達成するためには、反応条件と変数、例えば反応室の圧力、温度、触媒及び化学物質濃度を注意深く管理することが要求される。如何なる1つの条件の変動或いは変化によっても、所望の生成物が少なくなり得よう。 化合物を量産しようとする場合、最適な条件を決定するのに多大な努力が要る。よって、生成が起こるべき条件を考える際、%EEを知ることが有益である。ここに記述する方法により、%EEのリアルタイムなモニタリングが可能となり、条件の調節を、調節の結果を観察しながら行うことができる。このため、%EEモニタリングは、生成時に、適切な生成物が生成されていること、かつ該生成物が最大となっていることを確認するために使用できることを認識するであろう。仮に望ましくない結果が観察されても、最適な結果を達成するように反応条件を変更できる。従来技術のモニタリング方法は、%EEのリアルタイムなモニタリングを可能とするには不十分であった。 典型的には、円偏光二色性(CD)測定に使用される分光計には、可視・紫外(Vis-UV)領域用タイプと、中赤外(MIR)領域用フーリエ変換振動円二色性(FT-VCD)分光計と呼ばれるタイプの2つのタイプがある。また、OR計も、Vis-UV領域の固定単一波長点用に市販されている。 スペクトルのVis-UV領域(14,000〜50,000cm−1)用CD分光計は、所望のスペクトルを生成するのに全ての波長を通して目的のスペクトルを逐次走査することが必要な分散型機器に基づいている。しかしながら、目的の全ての分子が上で定義したようなVis-UV領域で電子遷移を有するとは限らない。加えて、時間依存の研究はスペクトル走査に必要な時間が有限であるため難しく、分散型技術はリアルタイムな反応モニタリングには適さない。 反応過程をモニタする別の方法はキラルクロマトグラフィーである。これは、時間とカラム及び溶離液を含むシステムの長期的メンテナンス費を要する化合物の2つの鏡像体の物理的分離に関わる。加えて、キラルクロマトグラフィーを使用してリアルタイムに反応をモニタすることは可能ではない。 スペクトルのMIR領域(800〜4,000cm−1)用CD分光計は、全ての波長を同時に測定するフーリエ変換(FT)分光計に普通基づいている。赤外円二色性分光計は、分子の化学結合の振動遷移のスペクトルを測定する。振動円二色性(VCD)スペクトルと呼ばれるこれらのスペクトルは、分子の構造と立体構造に関して容易に解釈される多数の遷移を所有する。FT‐VCD分光計で行う化学反応速度測定は、一速度実験時に全スペクトルにわたり同時に行うことができ、上で定義したVis-UV領域用CD分光計のような分散型走査分光計よりも明らかな利点を提供する。よってFT‐VCDはリアルタイムな反応モニタリングに適する。 スペクトルの近赤外(NIR)領域は、MIR領域とVis-UV領域との間にあって4,000cm−1と14,000cm−1との間の振動数にわたる。NIR領域は、基本スペクトルが振動遷移に基づいており従って多数の利用可能な遷移を有するばかりでなく分子の構造と立体構造に対してMIR領域と同じ感度を有するため魅力的である。 従来技術では、化学反応時にキラル種の%EEをモニタするMIR領域又はNIR領域で利用可能なFT‐VCD方法がない。更に、従来技術は、FT‐VCD測定が、存在する全てのキラル分子種に対して同時に反応をモニタするようにフローセル或いは任意の他の方法を使用してリアルタイムで実行され得ることを示唆しない。 分散型走査CD分光計の技術はVis-UVで利用可能である。しかしながら、それは単に一度に1つの選択波長で使用できるだけであり、よって存在分子について構造の情報が欠如する。加えて、Vis-UV領域で例えばOR又はCDにより2個以上のキラル分子に関わる反応の進行をモニタするのに単一波長のみが利用可能である場合、該波長でこれらのキラル分子のOR又はCDの重なりがあるならば、存在する任意のキラル分子の%EEを同時に追従するのは可能ではない。 FT‐VCD機器を使用して赤外吸収(FT-IR)スペクトルとVCDスペクトルとを同時に得ることができることにより、多数の種の%EEを同時に決定できる。時間の関数としての付随するFT-IRスペクトルにより、存在する全ての化学物質種の濃度が同時に決定される。この情報を化学反応のFT‐VCD測定値と組み合わせると、各種の見掛けの%EEを通常のFT-IRスペクトルから得られたその濃度で割ることにより、存在する全てのキラル種の%EEを得ることができる。 ここで述べる方法は、反応混合物を分析計のビーム中にもたらすフローセル或いは該反応混合物のいくらかをフローセルへ移動させることを必要とする或いは必要としない反応容器の付近へ赤外線光を直接もたらす光ファイバーのいずれかを使用する反応種のリアルタイムな分析を含む。FT-IR吸収スペクトルから得られる各存在種の濃度による各存在種のVCDスペクトルに対する寄与を規格化することによって、全てのキラル種の%EEを利用可能な振動FT-IR吸収スペクトルとFT-VCDスペクトルとで同時にモニタできる。 VCDを使用する%EE決定の初期の文献は、分散型走査VCD分光計或いはFT-VCD分光計を使用した測定に基づいていた。殆どの従来測定は、最初に純粋な鏡像体のVCDスペクトルを記録してから化学反応或いは%EEの変化した試料のVCDを測定することに基づいた振動数帯域に対して、フローセルを使用することがなく、静的であった。単一種或いは反応生成物の濃度を決定するのにIRスペクトルのみを使用した一方、キラル試料分子の鏡像体の%EEを決定するのにVCD強度の大きさおよび符号を使用できた。各測定は非常に多くの作成分析時間を要した。分散型分光計のVCDスペクトルを測定するのにかかる長い走査時間のために、1つの比較的狭いスペクトル領域に対してさえも、反応過程の時間において反応過程を追従する機会がなかった。%EEのFT-VCD測定では、静止セルの使用は、リアルタイムに変化をモニタする可能性を妨げた。本発明は、フローセルの使用又は光ファイバーサンプリングを介してキラルの種の連続的に変化する化学反応をアットラインとオンラインの両方でリアルタイムにモニタリングできる。 %EEを決定するためのOR及びVCDの相対的メリットの最近の比較は、ORが多くの場合VCDより正確だったことを示す。しかしながら、ORが非常に小さい場合或いは1つ以上のキラル種が混合物として存在する場合の何れかの場合、VCD測定から決定した%EEは合理的な精度についての明確な利点を提供する。いずれの場合でも、ORは単一波長キラルモニタリングに制限されており、任意のキラル種の%EEを、2個以上のそのような種が存在するなら、%EEの変化とともに、追従できない。 VCDの最も単純な応用の1つは、特定のキラル分子の鏡像異性体の混合物からなるサンプルの鏡像体過剰率(EE)を決定することである。サンプルのパーセントEE(%EE)は、両方の鏡像異性体の量(濃度)の合計に対する、1つの鏡像異性体の量の、他の鏡像異性体の量を超える過剰量として定義される。鏡像異性体Aの鏡像異性体Bに対する%EEは、以下の等式で表される。1.%EE(A)=(NA−NB)100%/(NA+NB)上記式中、NAは鏡像異性体Aのモル数、NBは鏡像異性体Bの対応量を示す。従って、鏡像異性体Aの光学的に純粋なサンプルの%EEは100%となり、ラセミ混合物(50%のA及び50%のB)の値は0%となる。鏡像異性体Bの光学的に純粋なサンプルの値は−100%となる。 VCD分光法においては、結果的に、スペクトルに同時に測定される多数のスペクトル・バンドが得られる。これらのバンドは、振動光学的活性強度の測定に役立つだけではなく、測定されるキラル分子の構造的特異性の測定も可能であり、サンプル中における1を超えるキラル種の%EEを同時に決定することさえ可能である。 鏡像異性体AのVCDスペクトルの大きさ、又は光学活性の他の形の大きさは、鏡像異性体Aの%EEに直接的かつ一次的に関係している。特に、VCDは100%EEのサンプルに対して最大値を有し、ラセミ混合体に対する全体のスペクトルに対してゼロであり、また、−100%EEのサンプル(純粋な鏡像異性体Bのサンプル)に対して負数の最大値を有している。しかしながら、VCDの大きさは鏡像異性体の濃度の変化に基づいて変化することもできる。 溶液の%EEを分析する方法には、光学活性種を包含する反応を提供すること、及びその中で反応が行われるチャンバーへのリアル・タイムのアクセスが可能な装置を提供することが含まれる。このようなアクセス手段としては、反応チャンバー(反応室)から器具類までのセル流路(フローセル)又は光ファイバー経路を挙げることができる。このような方法を実施するために用いられる器具類は、反応チャンバー内の材料のVCDスペクトル及びIRスペクトルを発生させることができる。 VCD及びIRの分光光度の測定後、VCDスペクトル及びIRスペクトルは、利用可能な統計的プログラム技術を用いて、存在する各光学活性種(キラル種)から各寄与分に分解される。混合体中に存在する各光学活性種のIR寄与分は、存在する各光学活性種の濃度に比例する係数として表される。VCD寄与分は、存在する各キラル種の濃度と%EEとの積に比例する係数として表される。存在する各キラル種に対するIR係数によってVCD係数を割り算すると、存在する各キラル種の濃度から独立した各キラル種の%EEを表す新しいVCD係数が得られる。これで、存在する各鏡像異性体の反応チャンバーにおける%EEの分析が完了する。当業者であれば、複合混合体における各キラル種に対するIR及びVCD係数が、利用可能な統計的なプログラムを用いることによって、既知の各純粋なキラル種のIR及びVCDスペクトルのスペクトルから決定できることがわかる。ここで、VCD係数は、断片的な(フラクショナルな)EEによる掛け算によって真の濃度係数に関係することになる見かけの係数である。 FT−VCD分光計の光学的ブロック図が図1に示される。光源(LS)2は、典型的に、MIR領域においては、所与の温度に加熱される特別なセラミック材料であり、NIR領域においては、タングステン・ハロゲン・ランプである。波長選択手段(G)4は、FT光学干渉計における全波長をフーリエ周波数で同定するために用いられる。直線偏光子(P)6は、例えば、垂直偏光のような単一偏光状態を形成するために必要とされる。偏光モジュレータ(PM)8は、偏光を左円偏光と右円偏光との間で切り替える。サンプルは、サンプル位置(S)10に配置される。光は、上記光学要素を通過した後、検知器(D)12で検知される。VCDに対する信号は、分離され、ロックイン増幅器(LIA)16によって処理され、その出力信号(CD)18は、VCDスペクトル(ΔA)24を生成するコンピュータ(DIV)22による割り算により、通常の赤外線伝送信号(TR)20に対して比率化される。 基本的なVCD分光計に関する上述の説明は先行技術においてよく知られており、より精巧で複雑なVCD分光計もまた知られている。実験方法は、BioTools, Inc., Wauconda, IL, USAから入手可能な二円偏光モジュレーテッドVCD分光計で実証される。この分光計は、IR及びVCDの両方のスペクトルを出力することができる。IR及びVCDの両方のスペクトルは、室温で、800−2000cm−1のスペクトル範囲における4cm−1の解像度で収集される。0.1mmの光路及びフッ化バリウムの窓(International Crystal Laboratories, Garfield, NJ, USA)を有するセル流路は、サンプル位置10で用いられる。反応流体は、VCD及びIR分光光度測定用のセル流路に配管を通してポンプで注入される。 実験は、1つの鏡像異性体の既知の濃度が、反対の鏡像異性体の既知の濃度で修正されることで行われる。従って、溶液中の両方の鏡像異性体の濃度は、一回で知られることになる。このことは、実験プロセスに対するキャリブレーション曲線をシュミレートし、反応それ自身をシュミレートする。VCD分光計は、24個の時間ブロックの10分測定を連続して行うように設定される。この10分ブロックのうち、1分はIR測定に用いられ、9分はVCD測定に用いられる。当業者であれば、有効なスペクトルを得るために要する時間は分光計及び測定されるサンプルの組成に依存して変化するので、このようなタイミングが望ましい結果を得るために必須ではないことがわかる。 このような実験の結果は、図2及び図3に示される。当初溶液は、Aldrich Chemical Companyから入手され、さらなる精製することなく用いられた、四塩化炭素(CCl4)中における8ミリリットルの3.14M(1R)−(+)−α−ピネンであった。各偶数番号の時間ブロックの初めに、以下の体積の3.14M(1S)−(−)−α−ピネン溶液(0.5、0.5、0.5、0.5、0.5、0.5、1.0、1.0、1.0、1.0、1.0ミリリットル)が、8ミリリットルの当初溶液に注入された。奇数番号の時間ブロックからの結果が分析され、図2に表されている。化合物(ピネン)の濃度が変化しないので、IRスペクトルは変化しない。その追加(注入)に対応した%EEは、(追加なし)100%40、88.2%42、77.8%44、68.4%46、60%48、52.4%50、45.5%52、33.3%54、23.1%56,14.3%58、6.7%60、及び0%62である。VCD測定値は、純粋な(1R)−(+)−α−ピネンからピネンのラセミ混合物まで変化する。ラセミ混合物62のスペクトルは、実質的に器具システムのバックグラウンドである。従って、反応過程の間の時間内のいくつかのポイントにおけるVCDスペクトルの測定値から、時間内のそのポイントにおける溶液の%EEを決定することができるが、これは、ただピネンの濃度が変化しなかったからにすぎない。この実験は、純粋な鏡像異性体溶液がラセミ混合物に変化する反応を再現している。このタイプの実験は従来技術で知られている。 単一の波長または個々のスキャンされたピークにおいて単にモニターする従来方法に対して、%EEの測定を改善する試みにおいて、統計学的分析のためにFT−VCDスペクトル全体における全てのポイントを同時に考慮する部分最小2乗法(PLS)として知られる統計学的方法が用いられた。このPLS分析は、Grams/32AI(6.00)(米国NH州、SalemのGalactic Industries社)中のPLSplus/IQモジュール・ソフトウェアを使用して実施された。PLS分析の利点の1つは、それが「全スペクトル」分析を実施できるということである。個々のピークを選択せずに、ある大きなスペクトル領域が使用でき、かつ加工前のスペクトルが溶媒−減算およびベースライン補正無しで使用できる。データのPLS分析において、高濃度の鏡像異性体を含むスペクトルは、低濃度のスペクトルよりも重く秤量される。従って、PLS法はVCD定量分析用の優れたツールであると考えられる。この実験では、900cm−1と1350cm−1間のVCDスペクトルが分析された。図3は、本実験のPLS分析の結果を示す。横軸は既知の添加からの実測%EEであり、縦軸はPLS分析を用いた算出%EEである。鏡像異性体の実測濃度とPLSで決定された濃度の相関係数は、0.9984(1.0000が完全であるが)である。%EEの標準偏差は1.15%であり、これは当該方法が1%近くまで精確であることを示している。従って、VCDおよびPLS分析の組合せは、%EEの精確な分析をもたらすことができる。 もし我々がこの時点で式1に戻って参照する場合、我々は、%EEを決定する計算の分母が溶液中に存在する化合物の濃度であることを理解できる。当該式中で(NA+NB)によって表されるこの濃度は、IRスペクトル単独から決定され得る。なぜなら、IRスペクトルは化合物の濃度に直接関連するからである。もし濃度に何ら変化が無ければ、先の具体例に示されたように、%EEはVCDスペクトル単独の分析から決定できる。これら2つの構成要素は独立して決定され得ることが重要である。なぜなら、ある化合物が化学的に反応して別の化合物を形成する所の複雑な反応においては、化合物の濃度と%EEの両方が変化する可能性があり、その場合VCDスペクトル単独では%EEを決定するのに十分ではないからである。図4において、IRおよびVCDスペクトルのプロットがCCl4中の(+)−ショウノウおよび(+)−ボルネオールの1.0M溶液について表されている。図5において、これら2つの種の濃度もまた変化する場合の2つの種の混合物についての%EEの決定を説明するプロットが示されている。ここで、最初のプロット(上の左側)においては、IR単独が濃度をモニターするように使用されている。第2のプロット(上の右側)は複合VCDの分析から得られるショウノウおよびボルネオールの見掛け濃度を示しているが、これらの見掛け値は%EE値により減じられており、%EE値もまたこれら2つの種について変化している。VCDスペクトルがIRから得られる濃度によって正規化される場合、溶液中の2つの分子の%EEにおける変化は、第3のプロット(下の中心側)に示されるように決定される。図6、7および8は、図5における3つのプロットを構成するのに使用される数値データの表を示す。この実験の増加した複雑性にかかわらず、PLS法によって分析する場合に与えられる両化合物の%EEについて1.5%以下の標準偏差を達成することができた。従って、本方法は、生体分子反応の反応速度をモニターするのに必須の精度を有する。 本明細書において記載された本発明は、あるPLS分析システムと共にFT−IRとFT−VCD分光分析の組合せを用いることによって複数のキラルな種の濃度および%EEを同時にモニターすることを可能にする。絶対%EE値の測定には、大きなSN比を有する当該種のVCDスペクトルを得るために、各化合物の純粋あるいはほぼ純粋な鏡像異性体を伴うキャリブレーション(較正)を行わなければならない。これらの予備的較正があれば、反応速度は、FT−IRとFT−VCDスペクトルの同時の時間依存性測定によって精確に追跡できる。相対%EEの測定には、事前の構成が不要であり、反応はリアルタイムでモニターできる。 本明細書で実施された実験はあるFT−VCD装置内のフローセル(flow cell)システムを使用したが、光ファイバ・サンプリングシステムを使用することができる。従来技術において、光ファイバは、ある容器内の化学反応についてのFT−MIRおよびFT−NIR吸収情報を収集するのに適合されている。ファイバを通じての円偏光の制御と関連する問題の故に、従来技術を%EEのモニタリングに拡大適用する事は自明ではない。これらの問題は2つの基本的な方法で克服できる。1つの方法は、ビームの直線偏光6および円偏光変調8より前に、スペクトロメータ4からの赤外光を反応容器に供給するようにファイバを使用し、これを、放射光をフローセル領域および通常の方法におけるサンプリングへもたらす唯一の手段とすることである。このような光ファイバシステムは、試料に関するデータをアットライン又はオンラインで収集することが必要とされ、かつ試料をスペクトロメータの試料室に運ぶ必要が無い場所に光を配置することを可能にする。上述したFT−IR/FT−VCD法と共に想定され得る第2の方法は、偏光変調8の後方に光ファイバを配置し光ファイバが反応容器内に円偏光変調光を直接供給し生のCDスペクトルを収集することを可能にすることと、光ファイバによって光を検出器12へ戻し、試料フローセル10を不要とすることである。どちら場合でも、光ファイバは、化学反応に関与する全てのキラルな種の組成および%EEのリアルタイム測定を実施する中心的な方法において使用される。 当該好ましい実施形態の詳細な記述は、具体例としてのみ意図されており、本明細書に記載された本発明の範囲を意図していない。図1は、FT−VCD分光計のブロック図である。図2は、3.14M(1R)−(+)−α−ピネン及び3.14M(1S)−(−)−α−ピネンの、%EEに対するVCDスペクトル曲線である。図3aは、α−ピネンの、実際の%EEに対する予測された%EEの関係を示すグラフである。図3bは、図3aのグラフを作成するのに用いられる実験結果を数値で示す表である。図4は、四塩化炭素(CCl4)中における1.0M溶液としての(+)−ショウノウ(樟脳)及び(+)−ボルネオールの、IRスペクトル曲線及びVCDスペクトル曲線である。図5aは、ショウノウ及びボルネオールの、実際の濃度に対する予測された濃度の関係(これらの濃度をモニターするためIRスペクトルを用いている)を示すグラフである。図5bは、ショウノウ及びボルネオールの、実際の濃度に対する予測された濃度の関係(これらの濃度をモニターするためVCDスペクトルを用いている)を示すグラフである。図5cは、ショウノウ及びボルネオールの、実際の%EEに対する予測された%EEの関係(IRスペクトルによって正常化されたVCDスペクトルを用いている)を示すグラフである。図6は、図5aのグラフを作成するのに用いられるデータを示す表である。図7は、図5bのグラフを作成するのに用いられるデータを示す表である。図8は、図5cのグラフを作成するのに用いられるデータを示す表である。 ある化学反応に関与する複数のキラルな種の分子の鏡像体過剰率をモニターする方法であって、 ある化学溶液中で化学反応が生じている際に当該化学溶液の中間赤外線領域における複数のフーリエ変換振動円偏光二色性スペクトルおよびフーリエ変換吸収スペクトルを取得する手段と、 前記複数のフーリエ変換振動円偏光二色性および吸収スペクトルをスペクトル収集の時間の関数として順序付ける手段と、 前記フーリエ変換振動円偏光二色性および吸収スペクトルを分析して時間の関数として各キラルな分子の濃度および鏡像体過剰率を同時に決定する手段を備えるモニター方法。 ある化学反応に関与する複数のキラルな種の分子の鏡像体過剰率をモニターする方法であって、 ある化学溶液中で化学反応が生じている際に当該化学溶液の近赤外線領域における複数のフーリエ変換振動円偏光二色性スペクトルおよびフーリエ変換吸収スペクトルを取得する手段と、 前記複数のフーリエ変換振動円偏光二色性および吸収スペクトルをスペクトル収集の時間の関数として順序付ける手段と、 前記フーリエ変換振動円偏光二色性および吸収スペクトルを分析して時間の関数として各キラルな分子の濃度および鏡像体過剰率を同時に決定する手段を含んで構成されるモニター方法。 前記化学溶液はフローセルの手段によりモニターされる、請求項1に記載の方法。 前記化学溶液はフローセルの手段によりモニターされる、請求項2に記載の方法。 前記化学溶液は、フローセルを伴う或いは伴わない光ファイバ結合されたアクセサリの手段によりモニターされる、請求項1に記載の方法。 前記化学溶液は、フローセルを伴う或いは伴わない光ファイバ結合されたアクセサリの手段によりモニターされる、請求項2に記載の方法。 ある溶液中の複数のキラルな種の分子の鏡像体過剰率を測定する方法であって、 前記溶液のIRスペクトルから濃度係数を取得し、 前記溶液のVCDスペクトルの見掛けの濃度係数を取得し、 IRスペクトルからの濃度係数により前記VCDスペクトルの見掛けの濃度係数を除算してパーセント鏡像体過剰率を得る各工程を含む方法。 IRスペクトルおよび/または係数を取得する前記工程、およびVCDスペクトルを取得する前記工程は同時に行われる、請求項7に記載の方法。 反応室中の複数のキラルな種の分子の鏡像体過剰率をモニターする方法であって、 前記分子を含む反応室を準備し、 前記反応室中の分子のIRスペクトルとVCDスペクトルの両方を生成するための装置を準備し、 前記装置を使用して前記反応室中の分子のIRスペクトルとVCDスペクトルを取得し、 前記IRスペクトルから個々の種の濃度係数を求め、かつ前記VCDスペクトルから個々の種の見掛けの係数を求め、 前記IRスペクトル中の個々の種の対応する濃度係数により前記VCDスペクトル中に存在する個々の種の見掛けの濃度係数を除算し、それにより、反応の過程の間に前記反応室中に存在する個々の種のパーセント鏡像体過剰率を取得する各工程を含む方法。 更に、前記反応室と前記装置の間に光ファイバの経路を準備する工程を含む、請求項9に記載の方法。 更に、注目する分子のIRスペクトルから濃度係数およびVCDスペクトルの見掛け濃度係数を提供する工程と、前記VCDおよびIR濃度係数を除算することにより注目する分子のパーセント鏡像体過剰率を決定する工程を含む、請求項9に記載の方法。 更に、部分最小2乗分析を用いて、既知濃度での分子のIRスペクトルおよびVCDスペクトルとの比較により前記IRスペクトルの濃度係数と前記VCDスペクトルの見掛け濃度係数を決定する工程を含む、請求項11に記載の方法。 更に、前記反応室に接続されたフローセルを含み、IRスペクトルおよびVCDスペクトルの両方を生成するための前記装置を前記フローセルに近接して配置する、請求項10に記載の方法。 前記反応室の周囲温度は制御可能であり、注目する特別の分子のパーセント鏡像体過剰率情報が前記反応室の温度、圧力または他の条件を制御するように用いられる、請求項13に記載の方法。


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