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タイトル:特許公報(B2)_サンプリング方法、サンプリング装置、logD測定方法及びlogD測定システム
出願番号:2006535149
年次:2009
IPC分類:G01N 1/00,G01N 1/36,G01N 1/10,G01N 30/06,G01N 30/72


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堂田 征史 JP 4329816 特許公報(B2) 20090626 2006535149 20050913 サンプリング方法、サンプリング装置、logD測定方法及びlogD測定システム 萬有製薬株式会社 000005072 長谷川 芳樹 100088155 清水 義憲 100128381 深石 賢治 100128107 堂田 征史 JP 2004268600 20040915 20090909 G01N 1/00 20060101AFI20090820BHJP G01N 1/36 20060101ALI20090820BHJP G01N 1/10 20060101ALI20090820BHJP G01N 30/06 20060101ALN20090820BHJP G01N 30/72 20060101ALN20090820BHJP JPG01N1/00 101PG01N1/00 101KG01N1/28 YG01N1/10 HG01N30/06 ZG01N30/72 C G01N 1/00、30/00〜37/00 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開昭63−175765(JP,A) 特許第3295014(JP,B2) 特許第3351615(JP,B2) 8 JP2005016841 20050913 WO2006030784 20060323 15 20080825 西村 直史 本発明は、液体をサンプリングするサンプリング方法、サンプリング装置、並びに当該サンプリング方法に基づくlogD測定方法及びlogD測定システムに関する。 多くの医薬品に関して、薬物の吸収性、代謝性及び溶解性等と薬物として用いられる化合物の疎水性との間には相関がある。従来から化合物の疎水性を示す指標としてlogD(水とオクタノールとの分配係数)が求められている(例えば、以下特許文献1〜3参照)。特開2001−124756号公報特許第3444872号公報特許第3523207号公報 logDを求める方法として、上記特許文献1〜3に記載されているように、HPLC(High Performance Liquid Chromatography:高速液体クロマトグラフィー)における保持時間に基づきlogDを算出するものがある。しかしながら、この方法は算出されるlogDが推定値であるため、以下に述べるような実測値を用いる方法に比べて誤差が生じやすいという問題がある。 また、logDを求める別の方法として、攪拌フラスコ法がある。攪拌フラスコ法は、フラスコに測定対象の化合物、水及びオクタノールを入れて振とうし、化合物の水における濃度とオクタノールにおける濃度とをそれぞれ実測してその測定値に基づいてlogDを求める。 攪拌フラスコ法において、それぞれの溶液の濃度を測定する方法として、水とオクタノールとを分液して測定する方法があるが、この分液操作は煩雑であり多検体を一括で処理するには向いていない。また、そもそも分液操作では容器等に吸着を生じるため誤差が生じるおそれがある。 また、リキッドハンドラー等により水溶液とオクタノールとをそれぞれサンプリングする方法がある。しかしながら、水層がオクタノール層の下側に位置しているため、通常この方法では、水溶液をサンプリングする際にオクタノールが混入してしまいコンタミネーションが発生する問題がある。特に、logDが4〜6程度の大きい値の場合、水溶液における濃度はオクタノールにおける濃度の1/104〜1/106となるので、オクタノールのわずかな混入がlogD算出の際には、致命的な問題となる。 本発明は上記のような問題を解決するためになされたものであり、2種類の液体が2層に分かれている液体から混入を生じさせず、かつ簡易に下層の液体をサンプリングすることができるサンプリング方法、サンプリング装置、並びに当該サンプリング方法に基づくlogD測定方法及びlogD測定システムを提供することを目的とする。 上記目的を達成するために、本発明に係るサンプリング方法は、管状の先端部を備え当該先端部を上方から液体に挿入して当該先端部から当該液体を抽出する抽出手段を用いて、上層の液体と下層の液体との2層に分かれた液体を含んで構成される液体から当該下層の液体をサンプリングするサンプリング方法であって、上層の液体と互いに混合しないプラグ用液体を抽出手段の先端部に注入するプラグ注入ステップと、プラグ注入ステップにおいてプラグ用液体が注入された抽出手段により、下層の液体を抽出する抽出ステップと、を含むことを特徴とする。 このサンプリング方法では、プラグ注入ステップにおいてプラグ用液体を注入手段の先端部に注入する。続く抽出ステップにおいて、下層の液体を抽出するために抽出手段を液体に挿入して抽出手段の先端部が上層の液体を通過する際、プラグ用液体が上層の液体を撥ねて注入手段に混入することを防ぐ。即ち、下層の液体を抽出する際の上層の液体によるコンタミネーションが発生することを防ぐ。また、プラグ用液体の注入も簡易に行えることから簡易なサンプリングが可能である。 また、上層の液体は、所定の化学物質が溶解したオクタノールであり、下層の液体は、当該所定の化学物質が溶解したバッファー液であり、プラグ用液体は、バッファー液である、ことが望ましい。この構成によれば、logDを算出するため等の溶液のサンプリングを、オクタノールの混入を生じさせずに容易に行うことができる。 本発明に係るlogD測定方法は、管状の先端部を備え当該先端部を上方から液体に挿入して当該先端部から当該液体を抽出する抽出手段を用いて、上層である所定の化学物質が溶解したオクタノールと下層である当該所定の化学物質が溶解したバッファー液との2層に分かれた液体を含んで構成される液体から当該バッファー液をサンプリングして当該化学物質のlogDを測定するlogD測定方法であって、オクタノールと互いに混合しないプラグ用液体を抽出手段の先端部に注入するプラグ注入ステップと、プラグ注入ステップにおいてプラグ用液体が注入された抽出手段により、バッファー液を抽出する抽出ステップと、抽出ステップにおいて抽出されたバッファー液における化学物質の濃度を測定するバッファー液中濃度測定ステップと、バッファー液中濃度測定ステップにおいて測定された濃度に基づいてlogDを算出するlogD算出ステップと、を含むことを特徴とする。 このlogD算出方法では、上記のサンプリング方法によりサンプリングしたバッファー液における化学物質の濃度を測定して当該測定した濃度に基づきlogDを算出する。この方法によれば、上述したようにコンタミネーションを発生させずかつ容易にバッファー液をサンプリングすることができるので、バッファー液における化学物質の濃度を正確に測定することができる。従って、容易かつ正確にlogDを算出することができる。なお、ここでバッファー液とは、logDを測定する際に化学物質を溶解させる一方の媒質であり、例えば、水やリン酸水溶液等が相当する。 また、バッファー液中濃度測定ステップにおける濃度の測定は質量分析計を用いて行われることが望ましい。この構成によれば、バッファー液における化学物質の濃度が低い場合でも正確に濃度が測定でき、特にlogDが4〜6程度の大きい値をとる場合でも、正確なlogDを算出することができる。 また、オクタノールにおける化学物質の濃度を測定するオクタノール中濃度測定ステップを更に含み、logD算出ステップにおいて、バッファー液中濃度測定ステップ及びオクタノール中濃度測定ステップにおいて測定された濃度に基づいてlogDを算出する、ことが望ましい。この構成によれば、オクタノールにおける濃度の実測値に基づいたより正確なlogDを算出することができる。 また、オクタノール中濃度測定ステップは、オクタノールを抽出して希釈し、当該希釈したオクタノールにおける化学物質の濃度を、質量分析計を用いて測定することにより化学物質の濃度を測定する、ことが望ましい。この構成によれば、オクタノールにおける濃度がバッファー液における濃度に比べて高い場合等でも正確にlogDを算出することができる。 本発明は、上記の方法の発明を提供する他に、以下のようにサンプリング装置及びlogD測定システムの発明を提供することができる。 本発明に係るサンプリング装置は、管状の先端部を備え当該先端部を上方から液体に挿入して当該先端部から当該液体を抽出する抽出手段と、上層の液体と互いに混合しないプラグ用液体を抽出手段の先端部に注入するプラグ注入手段と、プラグ注入手段によりプラグ用液体が注入された抽出手段を下層の液体を抽出するように制御する抽出制御手段と、を備えることを特徴とする。 本発明に係るlogD測定システムは、上層である所定の化学物質が溶解したオクタノールと下層である当該所定の化学物質が溶解したバッファー液との2層に分かれた液体を含んで構成される液体から当該バッファー液をサンプリングして当該化学物質のlogDを測定するlogD測定システムであって、管状の先端部を備え当該先端部を上方から液体に挿入して当該先端部から当該液体を抽出する抽出手段と、オクタノールと互いに混合しないプラグ用液体を抽出手段の先端部に注入するプラグ注入手段と、プラグ注入手段によりプラグ用液体が注入された抽出手段を、バッファー液を抽出するように制御する抽出制御手段と、抽出制御手段による制御において抽出されたバッファー液における化学物質の濃度を測定するバッファー液中濃度測定手段と、バッファー液中濃度測定手段により測定された濃度に基づいてlogDを算出するlogD算出手段と、を備えることを特徴とする。 本発明によれば、プラグ用液体が上層の液体を撥ねて注入手段に混入することを防ぐので、下層の液体を抽出する際の上層の液体によるコンタミネーションが発生することを防ぐ。また、プラグ用液体の注入も簡易に行えることから簡易なサンプリングが可能である。本発明の実施形態におけるlogD測定システムの構成を模式的に示した図である。本発明の実施形態におけるサンプリング方法及びlogD測定方法における処理のフローを示したである。サンプリングの各フェーズを模式的に示した図である。プラグ用液体を用いていない場合の試料をHPLCで分離して質量分析計にかけたときのピークのグラフである。プラグ用液体を用いた場合の試料をHPLCで分離し質量分析計にかけたときのピークのグラフである。本実施形態により質量分析計で濃度を測定したlogDの測定値とUVを用いた方法で濃度を測定したlogDの測定値との散布図である。本実施形態により測定したlogDの実測値と文献値との散布図である。符号の説明 10…測定システム、11…シリンジ、11a…ニードル、12…ウェルプレート、12a…ウェル、13…オートサンプラー、14…HPLC、15…質量分析計、16…制御分析用PC、50a…オクタノール、50b…バッファー液、51…プラグ用液体。 以下、図面とともに本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。 図1は、本発明に係るlogD測定システム10の実施形態の構成を模式的に示した図である。logD測定システム10は、化合物等の化学物質のlogDをバッファー液及びオクタノールに溶解した当該化合物の濃度を実測することにより測定するものである。濃度を実測する際には、化合物が溶解したバッファー液及びオクタノールを抽出して行う。ここで、バッファー液はlogDを測定する際に化合物を溶解させる一方の媒質であり、例えば、水やリン酸水溶液等が相当する。なお、logDはpH毎に異なる値を取るので、例えば製薬の目的でlogDを測定する場合は、バッファー液として人体の体液と同じpH7.4の液体を用いることが好ましい。例えばpH7.4のリン酸水溶液は、例えばNaH2PO4水溶液とNa2HPO4水溶液とを用いて調整することができる。バッファー液として用いるリン酸水溶液の濃度は、10〜200mM程度であるのが好ましい。 ところで、上述したようにlogDが4〜6程度の大きい値をとる場合、バッファー液における濃度はオクタノールにおける濃度の1/104〜1/106となるので、バッファー液の抽出の際のオクタノールのわずかな混入がlogD算出の際には、致命的な問題となる。例えば、後述するようにバッファー液を2.5μl抽出するとし、10%のコンタミネーションを許したとする。化合物のlogDが4だとすると、バッファー液における濃度はオクタノールにおける濃度の1/104である。この場合のオクタノールの混入の許容量は、抽出量(2.5μl)×濃度比(1/104)×許容率(10%)でわずか25plとなる。従って、本システム10においては、バッファー液の抽出の際のオクタノールの混入を十分に防止することが必要となる。 以下、logD測定システム10の構成を説明する。図1に示すように、logD測定システム10は、ウェルプレート12と、オートサンプラー13と、HPLC14と、質量分析計15と、制御分析用PC(Personal Computer)16とを含んで構成されている。 ウェルプレート12は、液体を保持できるように複数のウェル12aが設けられており、当該ウェル12aにおいてオクタノール層とバッファー液層の2層からなる、logDを測定するためのサンプルを調整及び保持するためのものである。ウェル12aは、多検体のサンプルを同時に調整及び保持できるように、例えば96個設けられていることが好ましい。 オートサンプラー13は、所定位置に置かれたウェルプレート12のウェル12aに保持された液体を抽出する抽出手段である。抽出された液体(サンプル)は、HPLC14及び質量分析計15で分析されるために、自動的にHPLC14に送られる。オートサンプラー13にはシリンジ11が備えられており、図3に示すように、シリンジ11には液体を抽出する管状の先端部であるニードル11aを備えて構成されている。シリンジ11は、ニードル11aを上方から液体に挿入してニードル11aから液体を抽出する。ここでニードル11aは、その内径がコンマ数mm単位、長さが数十mm単位のものを用いることが好ましい。シリンジ11は、制御分析用PC16からの制御を受け、μl単位での正確な液体の抽出が可能である。なお、オートサンプラー13として、具体的には例えばCTC Analytics社のHTS PALを用いることができる。 HPLC14は、オートサンプラー13から送られたサンプルを分離して質量分析計15に送る。HPLC14として、具体的には例えばWaters社のallliance 2690を用いることができる。 質量分析計15は、サンプルに含まれる化合物の量の定量値を測定する。具体的には、当該化合物の質量に対応するピークの値に基づいて定量値を測定する。測定されたデータは制御分析用PCに送信される。なお、質量分析計15におけるイオン化電圧は、測定対象の化合物のアセトニトリル溶液等の調整用サンプルを用いて、logDの測定の前に予め適切な値に設定されていることが好ましい。質量分析計15として、具体的には例えばWaters社のZQ2000を用いることができる。 制御分析用PC16は、オートサンプラー13、HPLC14及び質量分析計15を制御する。各装置がどのように動作するように制御するのかは後述する。これらの制御は、制御用のプログラム及びソフトウェアを用いて行うのが好ましい。また、制御分析用PC16は、質量分析計15により取得された化合物の量の定量値から濃度を算出し、その濃度からlogDを算出する。具体的算出方法については、後述する。HPLC14、質量分析計15及び制御分析用PC16は、バッファー液及びオクタノールにおける化合物の濃度を測定する各濃度測定手段に相当する。また、制御分析用PC16は測定された濃度からlogDを算出するlogD算出手段に相当する。 次に、logD測定システム10を用いた本発明に係るサンプリング方法及びlogD測定方法の実施形態について、図2に示すフローチャートを参照しつつ説明する。 まず、logDを測定するためのサンプルを以下のように調整する(S01)。このサンプルは、logDの測定対象となる化合物をバッファー液及びオクタノールに溶解させて2層に分離したものである。測定対象の化合物は、サンプル調整の前に予めDMSO(Dimethyl Sulfoxide)に1mMあるいは10mM等の所定の濃度で溶解させておくことが好ましい。オクタノール及びバッファー液に化合物を溶解させやすくするためである。 サンプル調整のために、まず、化合物を溶解させたDMSOを、10μl等の所定の分量ずつウェルプレート12の各ウェル12aにピペットを用いて分注する。なお、ピペットは、ピペットに備えられるマイクロプロセッサの制御を受け、μl単位での正確な液体の抽出及び添加が可能であるものを用いることが好ましい。また、多検体のサンプルを同時に抽出できるようにピペットには複数のチャンネルが設けられていることが好ましい。 続いて、300μl等の所定の分量のオクタノールをウェルプレート12の各ウェル12aにピペットを用いて添加する。その後、各ウェル12aにウェルキャップ等で蓋をし、ウェルプレート12に対して攪拌処理及び遠心処理を行うことが好ましい。DMSOはオクタノールよりバッファー液に溶解しやすいので、予めオクタノールに溶解させておく。正確なlogDを測定できるようにするためである。攪拌処理は、例えば振とう機により室温で5分間激しく行う。また遠心処理は、例えば攪拌処理後に遠心分離機にて2000rpmで5分間行う。 続いて、ウェルプレート12にした蓋を外して、600μl等の所定の分量のバッファー液を各ウェル12aにピペットを用いて添加する。その後、各ウェル12aに再度蓋をし、ウェルプレート12に対して攪拌処理及び遠心処理を行う。攪拌処理は、例えば振とう機により室温で1時間激しく行う。また遠心処理は、例えば攪拌処理後に遠心分離機にて2000rpmで5分間行う。以上の処理がなされると、各ウェル12aには、図3(b)に示すように、上層のオクタノール層50aと下層のバッファー液層50bとが分離したlogDを測定するためのサンプルが生成される。 引き続いて、濃度を測定するためにオクタノール50a及びバッファー液50bのサンプリングを行う(S02〜S04)。まず、バッファー液50bのサンプリングについて、図3を用いて説明する。上記調整されたサンプルがウェル12aに含まれるウェルプレート12をオートサンプラー13の所定位置に蓋を外した状態で置く。制御分析用PC16から制御を受けたオートサンプラー13は図3(a)に示すように、ウェルプレート12とは別の位置に設けられた、容器でもあるウォッシュポート20からシリンジ11に所定量のプラグ用液体51を注入する(S02、プラグ注入ステップ)。この注入により、図3(a)に示すように、シリンジ11のニードル11aは、プラグ用液体51が含まれている状態となる。上記所定量は、例えば2.5μl等の適当な量である。なお、図3に示すように、上記のウォッシュポート20の底部には、管21が接続されている。また、管21には電磁弁22が設けられており、この電磁弁22を開閉することにより下記の洗浄前後でウォッシュポート20内の液を管21から交換することができる。 プラグ用液体51は、下層のバッファー液50bを抽出する際に上層のオクタノール50aがシリンジ11に混入することを防止するものである。プラグ用液体51としては、上層のオクタノール50aと互いに混合しないものを用いる。具体的には例えば、水やリン酸水溶液を用いることが好ましい。即ちバッファー液50bと同じもの(化合物が溶解していないもの)を用いることが好ましい。なお、このステップにおける制御分析用PC16は、抽出手段の先端部であるニードル11aにプラグ用液体を注入するように制御するプラグ注入(制御)手段の役割を果たす。 続いて、プラグ用液体がニードル11aに注入されたシリンジ11により、下層のバッファー液を抽出する(S03、抽出ステップ)。この抽出は、制御分析用PC16から制御を受けたオートサンプラー13が図3(b)〜(e)に示すように、サンプルが入ったウェル12aにシリンジ11のニードル11aを挿入することにより行われる。図3(b)に示すように、ニードル11aがオクタノール層50aを通過する際、ニードル11aにはプラグ用液体51が含まれた状態になっているので、当該プラグ用液体51が、オクタノール50aを撥ねオクタノール50aのシリンジ11内への混入を防止する。図3(c)に示すように、ニードル11aがバッファー液層50bに挿入されると、ニードル11aから所定量のバッファー液50bを抽出する。この抽出がされると、ニードル11aには、バッファー液50bが含まれている状態となる。上記所定量は、例えば2.5μl等の適当な量である。 続いて、図3(d)に示すように、ニードル11aを引き抜くときにオクタノール層50aを通過する際、ニードル11aにはバッファー液50bが含まれた状態になっているので、当該バッファー液50bが、オクタノール50aを撥ねオクタノール50aのシリンジ11内への混入を防止する。なお、オクタノール50aとバッファー液50bとは、2層に分かれる性質を有しているので、上記のようにバッファー液50bはオクタノール50aを撥ねることができる。続いて、図3(e)に示すようにニードル11aは、サンプルから引き抜かれる。サンプルから引き抜かれた後、ウォッシュポート20で水やエタノール等を用いてニードル11aの周囲を洗浄し、ニードル11aの周囲に付着したオクタノール50aによりコンタミネーションが発生することを防止する。サンプリングされたバッファー液50bは、HPLC14に自動的に送られる。なお、このステップにおける制御分析用PC16は、抽出手段に対しバッファー液50bを抽出するように制御する抽出制御手段の役割を果たす。 また、プラグ用液体51とバッファー液50bとは通常、図3に示すように2層に別れず混合するが(図3では説明を分かりやすくするため2層に分けている)、抽出したバッファー液層50bに含まれる化合物の量は変わらないので、バッファー層中の濃度の測定を行うことができる。 次に、オクタノール50aのサンプリングについて、説明する。オクタノール層50aは上層であるので、抽出の際のコンタミネーションのおそれはないので、ピペット等により抽出を行う(S04)。ところで、オクタノール50aにおける化合物の濃度は、バッファー液50bにおける化合物の濃度に比べて高い。上述したように例えばlogDが4のとき、オクタノールにおける化合物の濃度はバッファー液50bにおける化合物の濃度の1000倍である。従って、質量分析計15におけるイオン飽和を避けるため、抽出したオクタノール50aをエタノール等の希釈用の溶媒で希釈することが好ましい。logDが4〜6の高い値をとる場合でも正確に測定できるように、希釈は例えば数千倍のオーダで行われることが望ましい。希釈されたオクタノール50aは、別のウェルプレートに入れ、バッファー液の抽出と同様にオートサンプラー13により抽出されHPLC14に自動的に送られる。なお、バッファー液50bのサンプリングが先に行われる必要はなく、オクタノール50aのサンプリングが先に行われてもよい。 引き続いて、ウェル12aから抽出されHPLC14に送られたオクタノール50a及びバッファー液50bにおけるlogD測定対象の化合物の濃度が、HPLC14及び質量分析計15を用いてそれぞれ測定される(S05、バッファー液中濃度測定ステップ、オクタノール中濃度測定ステップ)。濃度の測定は具体的には、質量分析計15により取得されたスペクトルデータにおける当該化合物に対応するピーク値から、各溶液に含まれる化合物の量の定量値を算出することにより行われる。なお、定量値の算出等の情報処理は制御分析用PC16において行われる。なお、オクタノール50a及びバッファー液50bにおける濃度の測定は、それぞれ別々のタイミングで行われる。 なお、S05での各溶液中における濃度の測定は、例えば上記のような質量分析計15を用いた方法でなく、UV(Ultra Violet:紫外線)の吸光率に基づいた測定法を用いて行うこととしてもよい。 引き続いて、制御分析用PC16が、測定された濃度から次の式を用いてlogDを算出する(S06、logD算出ステップ)。logD=log([オクタノール層濃度]/[バッファー液層濃度]) =log([希釈オクタノール濃度×希釈倍率]/[バッファー液層濃度]) 上記のように、本実施形態によれば、プラグ用液体51を用いることにより、下層のバッファー液50b抽出の際の、上層のオクタノール50aによるコンタミネーションの発生を防ぐ。また、本実施形態におけるサンプリング方法は、プラグ用液体の注入も簡易に行えることから簡易なサンプリングが可能である。また、コンタミネーションを防止できていることから、正確な濃度の測定が可能となる。従って、容易かつ正確にlogDを算出することができる。また、上記のように本実施形態は容易に実施でき、またサンプリングからlogDの測定までを自動化することができるので、従来の方法に比べて、多検体を短期間に分析することに適している。 なお、サンプリングに用いる2層の液体は、必ずしも上述したものでなくてもよい。上層の液体は、logD測定対象の化学物質等の所定の化学物質が非水系溶媒に溶解した非水系溶液であればよい。非水系溶媒は、具体的には例えば、炭素数が4以上のアルカノールが相当する。また、下層の液体は、上記の所定の化学物質が、水系溶媒に溶解した水系溶液であればよい。水系溶媒は、上記の非水系溶媒に不溶な液体であり、具体的には例えば、水又は所定の塩が溶解した水溶液が相当する。また、プラグ用液体も、上記の水系溶媒であればよい。 本サンプリング方法が従来の方法と比べてコンタミネーションを防止できていることを、図4及び図5を用いて説明する。図4及び図5は試料をHPLC14で分離したときのクロマトグラムであり、各クロマトグラムにおいて横軸は時間、縦軸は測定されたピーク強度を示している。図4及び図5において(a)は、何も試料をHPLC14に送らなかった場合(ブランク)のクロマトグラムである。(b)は、logD測定用に調整しておいたオクタノール層50aとバッファー液層50bと2層になっているものから予めオクタノール層50aのみを除いたバッファー液50bを抽出したものを測定した場合(オクタノールによるコンタミネーションが発生しえない場合)のクロマトグラムである。(c)は上述したようにオクタノール層50aとバッファー液層50bと2層になっているものからバッファー液50bを抽出したものを測定した場合のクロマトグラムである。(d)は(a)と同様にブランクの場合のグラフである。なお、(a)から(d)まで、同一の装置を用いて連続的に測定を行っている。 図4は、オクタノール層50aとバッファー液層50bと2層になっているものからのバッファー液50bを抽出の際((c)に対応)に、プラグ用液体を用いなかった場合のクロマトグラム、図5は用いた場合(本実施形態のようにサンプリングした場合)のクロマトグラムである。図4(a)及び図5(a)と図4(b)及び図5(b)との比較等から分かるように、2.32〜2.35の範囲の時間のピークが測定対象の化合物に対応するものである。図4(c)では、その2.32〜2.35の範囲の時間のピークが幅をもってしまっているのに対して、図5(c)では、2.32〜2.35の範囲の時間のピークが図4(b)及び図5(b)と同様の形状になっている。これは、プラグ用液体を用いなかった場合(図4)、オクタノール50aによるコンタミネーションが発生し、オクタノール50aに含まれる化合物まで検出されてしまっていることを示している。一方、プラグ用液体を用いた場合(図5、本実施形態の場合)、オクタノール50aによるコンタミネーションが発生せず、バッファー液50bに含まれる化合物のみが検出されたことを示している。 また、本実施形態のように抽出手段としてニードル11aを備えて構成されるシリンジ11を用いることとすれば、プラグ用液体51の注入等の扱いが容易である。また、ニードル11aは、コンマ数mm単位の内径及び数十mm単位の長さを有しているのでプラグ用液体を保持しやすく、より確実なコンタミネーションの防止が可能となる。 また、本実施形態のように質量分析計15を用いることとすれば、バッファー液における化合物の濃度が低い場合等、即ちバッファー液から抽出したものに含まれる化合物の量が微小な場合等でも、化合物の量の定量化を行うことができ正確にlogDを算出することができる。 特にlogDが4〜6程度の高い値をとる場合には、より正確に測定することが可能である。質量分析計15を用いて測定したlogDとUVを用いて測定したlogDとを化合物毎にプロットしたものが図6である。図6に示すように、UVを用いた方法で十分精度よく測定できなかったもの(グラフ中で“UV>4”と表示してある点、便宜的にlogD=5としてプロットしてある)や、UVを用いた方法で測定できなかったもの(グラフ中で“UV N.D.”(Not Detected)と表示してある点、便宜的にlogD=6としてプロットしてある)も測定することが可能となっている。 また、本実施形態のようにオクタノール50aにおける濃度も求めることとすれば、より正確なlogDの算出が可能となる。また、本実施形態のようにlogDの値を考慮してオクタノール50aを希釈して濃度を測定することとすれば、オクタノール50aにおける濃度がバッファー液50bにおける濃度に比べて高い場合でも正確にlogDを算出することができる。 また、本実施形態ではバッファー液50bが特定のpHをとる場合についてのlogDの測定を行うこととしたが、本発明の方法を用いて、例えば、バッファー液50bのpHを複数回変更してlogDを測定してlogPを算出することもできる。 上記の実施形態における実施例を以下に示す。本実施例においては次の器具及び試薬等を用いた。ウェルプレート12:96 deep well plate(Agilent)(また、ウェルプレート12の蓋として、96 well Cap(Agilent)を用いた)オクタノール50a:Wako特級1-OctanolDMSO:DSMO紫外線吸収スペクトル用純溶媒(Dojindo)エタノール:Wako HPLC用EtOH また、logDの測定対象の化合物としては、以下の表1に示すものを用いた。これらの化合物は、市販薬の成分であり、logDが既知なものである。 上記した本実施形態に係る方法により各化合物についてlogDを測定した値を以下の表2及び図7のグラフに示す。表2及び図7のグラフに示す実測値は、アミノダロンを除き1つの化合物につき本実施形態による方法での3回の測定を行い(アミノダロンは1回測定)、それらの測定値の平均をとった値である。表2及び図7のグラフに示す文献値はJ.Med.Chem.2001,44,2490-2497(ElogDoct:A Tool for Lipophilicity Determination in Drug Discovery.2. Basic and Neutral Compounds、Franco Lombardo,Marina Y.Shalaeva,Karl A.Tupper,and Feng Gao)に記載されたものである。 表2及び図7のグラフに示すように、文献値に近い実測値が得られており、本実施形態に係る方法で正確なlogDが得られることを示している。 管状の先端部を備え当該先端部を上方から液体に挿入して当該先端部から当該液体を抽出する抽出手段を用いて、上層の液体と下層の液体との2層に分かれた液体を含んで構成される液体から当該下層の液体をサンプリングするサンプリング方法であって、 前記上層の液体と互いに混合しないプラグ用液体を前記抽出手段の先端部に注入するプラグ注入ステップと、 前記プラグ注入ステップにおいて前記プラグ用液体が注入された抽出手段により、前記下層の液体を抽出する抽出ステップと、を含むサンプリング方法。 前記上層の液体は、所定の化学物質が溶解したオクタノールであり、 前記下層の液体は、当該所定の化学物質が溶解したバッファー液であり、 前記プラグ用液体は、バッファー液である、ことを特徴とする請求項1に記載のサンプリング方法。 管状の先端部を備え当該先端部を上方から液体に挿入して当該先端部から当該液体を抽出する抽出手段を用いて、上層である所定の化学物質が溶解したオクタノールと下層である当該所定の化学物質が溶解したバッファー液との2層に分かれた液体を含んで構成される液体から当該バッファー液をサンプリングして当該化学物質のlogDを測定するlogD測定方法であって、 前記オクタノールと互いに混合しないプラグ用液体を前記抽出手段の先端部に注入するプラグ注入ステップと、 前記プラグ注入ステップにおいて前記プラグ用液体が注入された抽出手段により、前記バッファー液を抽出する抽出ステップと、 前記抽出ステップにおいて抽出されたバッファー液における前記化学物質の濃度を測定するバッファー液中濃度測定ステップと、 前記バッファー液中濃度測定ステップにおいて測定された濃度に基づいて前記logDを算出するlogD算出ステップと、を含むlogD測定方法。 前記バッファー液中濃度測定ステップにおける濃度の測定は質量分析計を用いて行われることを特徴とする請求項3に記載のlogD測定方法。 前記オクタノールにおける前記化学物質の濃度を測定するオクタノール中濃度測定ステップを更に含み、 前記logD算出ステップにおいて、前記バッファー液中濃度測定ステップ及び前記オクタノール中濃度測定ステップにおいて測定された濃度に基づいて前記logDを算出する、ことを特徴とする請求項3又は4に記載のlogD測定方法。 前記オクタノール中濃度測定ステップは、前記オクタノールを抽出して希釈し、当該希釈したオクタノールにおける前記化学物質の濃度を、質量分析計を用いて測定することにより前記化学物質の濃度を測定する、ことを特徴とする請求項5に記載のlogD測定方法。 上層の液体と下層の液体との2層に分かれた液体を含んで構成される液体から当該下層の液体をサンプリングするサンプリング装置であって、 管状の先端部を備え当該先端部を上方から液体に挿入して当該先端部から当該液体を抽出する抽出手段と、 前記上層の液体と互いに混合しないプラグ用液体を前記抽出手段の先端部に注入するプラグ注入手段と、 前記プラグ注入手段により前記プラグ用液体が注入された抽出手段を前記下層の液体を抽出するように制御する抽出制御手段と、を備えるサンプリング装置。 上層である所定の化学物質が溶解したオクタノールと下層である当該所定の化学物質が溶解したバッファー液との2層に分かれた液体を含んで構成される液体から当該バッファー液をサンプリングして当該化学物質のlogDを測定するlogD測定システムであって、 管状の先端部を備え当該先端部を上方から液体に挿入して当該先端部から当該液体を抽出する抽出手段と、 前記オクタノールと互いに混合しないプラグ用液体を前記抽出手段の先端部に注入するプラグ注入手段と、 前記プラグ注入手段により前記プラグ用液体が注入された抽出手段を、前記バッファー液を抽出するように制御する抽出制御手段と、 前記抽出制御手段による制御において抽出されたバッファー液における前記化学物質の濃度を測定するバッファー液中濃度測定手段と、 前記バッファー液中濃度測定手段により測定された濃度に基づいて前記logDを算出するlogD算出手段と、を備えるlogD測定システム。


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