生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_鏡像的に純粋な(R)2,3−ベンゾジアゼピンを使用する胃腸の機能不全及び関連するストレスの治療
出願番号:2006533071
年次:2011
IPC分類:A61K 31/551,A61P 1/00,A61K 45/00,A61P 1/04,C07D 243/10


特許情報キャッシュ

ロバート エフ.クチャリック JP 4611308 特許公報(B2) 20101022 2006533071 20040513 鏡像的に純粋な(R)2,3−ベンゾジアゼピンを使用する胃腸の機能不全及び関連するストレスの治療 ヴェラ アクイジション コーポレイション 507065740 アクシス国際特許業務法人 110000523 倉内 基弘 100067817 遠藤 朱砂 100126527 吉田 匠 100130465 中島 拓 100129333 ロバート エフ.クチャリック US 60/471,160 20030516 20110112 A61K 31/551 20060101AFI20101216BHJP A61P 1/00 20060101ALI20101216BHJP A61K 45/00 20060101ALI20101216BHJP A61P 1/04 20060101ALI20101216BHJP C07D 243/10 20060101ALN20101216BHJP JPA61K31/551A61P1/00A61K45/00A61P1/04C07D243/10 C07D 243/10 A61K 31/551 A61K 45/00 A61P 1/00 A61P 1/04 CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus(JDreamII) 国際公開第00/024400(WO,A1) 特表2006−510632(JP,A) 特表2006−510634(JP,A) 特表2006−510635(JP,A) OSIPENKO,TERAPEVTICHESKII ARKHIV.,2000年,V72 N10,P23-27 佐藤 正巳 等,Tofisopamの胃機能に及ぼす影響,日薬理誌,1982年,Vol.79, No.4,p.307-315 YUAMAGUCHI, K. et al,TOFISOPAM A NEW 2 3 BENZODIAZEPINE INHIBITION OF CHANGES INDUCED BY STRESS LOADING AND HYPOTHALAMIC STIMULATION,TOFISOPAM A NEW 2 3 BENZODIAZEPINE INHIBITION OF CHANGES INDUCED BY STRESS LOADING AND HYPOTHALAMIC STIMULATION,1983年,vol. 61, no. 6,p.619-625 4 US2004015157 20040513 WO2004103154 20041202 2006528246 20061214 15 20061108 瀬下 浩一 本出願は、米国特許予備出願第60/471160号(2003年5月16日出願、題名「鏡像的に純粋な2,3−ベンゾジアゼピンを使用する胃腸の機能不全及び関連するストレスの治療」)を優先権の基礎とし、その全ての開示をここで資料として使用する。 本発明の分野 本発明は、胃腸機能不全症状及びその関連ストレス、特にしばしば例えば、過敏性腸症候群に関係するストレスの治療方法に関する。 トフィソパムは、R−及びS−エナンチオマーのラセミ混合物である。これは、ベンゾジアゼピン環の5位の不斉炭素、即ち4種の異なる基が結合している炭素に起因する。トフィソパムは、はっきりとした鎮痛性、筋肉弛緩性又は抗けいれん性を示さない非鎮痛性抗不安薬である(Horvathら、Progress in Neurobiology、60(2000)、309-342)。更に、トフィソパムは過敏性腸症候群を含む胃腸疾患の治療に使用されてきた。 トフィソパムの分子構造及び立体配置特性は、核磁気共鳴(NMR)、円偏向二色性(CD)及びX線結晶分析により決定された(Visyら、Chirality 1:271-275(1989))。2,3−ジアゼピン環は、2個の異なるコンフォーマーとして存在する。主要なトフィソパムコンフォーマー、(+)R及び(−)Sは、準エクアトリアル位中の5−エチル基を含有する。5−エチル基は、より少数のコンフォーマー(−)R及び(+)S中では準軸方向に位置する。従って、ラセミトフィソパムは、4個の分子種、即ちそれぞれに2個の配置が存在する2個のエナンチオマーとして存在できる。旋光度の符号は、ジアゼピン環の反転により一方のコンフォーマーから別のコンフォーマーへ逆転する。結晶の状態では、トフィソパムは、主要な配置としてR−絶対配置を有する右旋回性トフィソパムのみで存在する(Tothら、J. Heterocyclic Chem.、20:709-713(1983);Fogassyら、Bioorganic Heterocycles、Vander Plas、H.C.、Otvos、L、Simongi、M編、ブダペスト、アムステルダム:Akademia;Kiado-Elsevier、229:233(1984))。 トフィソパムの(+)及び(−)配置の結合性の差異は、ヒトアルブミンとの結合研究で調査されている(Simongiら、Biochem. Pharm.、32(12)、1917-1920、1983)。2個の(+/−)コンフォーマーは又、平衡状態で存在することが報告されている(Zsilaら、Journal of Liquid Chromatography & Related Technologies、22(5)、713-719、1999;及びその中に記載された資料を参照)。 トフィソパムR−1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン)のR−エナンチオマーが単離され、そのラセミ混合物の有する非鎮痛性、抗不安薬活性を有することが示された。米国特許第6080736号明細書を参照し、その全てをここで資料として使用する。 過敏性大腸症候群(IBS)は、生活の質へ著しい影響を与える一般的な腸の機能疾患であり、健康管理費用の大きな割合を占める。IBSは下記最近の改変「Rome診断基準」を基礎にして診断される:(A)12月前からの少なくとも12週間(継続的である必要はない)の構造的又は生化学的異常性としては説明できない腹部不快感又は痛みの存在;並びに(B)下記三症状の内少なくとも2つの症状:(1)排便で軽減される痛み;(2)それが発現するとき便通頻度の変化(下痢又は便秘)を伴う痛み;及び、それが発現するとき大便形状の変化(軟便、水様性、又は糞粒)を伴う痛み。IBSは、主症状が腹部痛、下痢、便秘、便秘と下痢の繰り返しであるかにより、4種のサブカテゴリーに分類される。 米国の大人の約15%はIBSと診断される症状を訴えている;この病気は、女性は男性の三倍の罹患率であることが示された。この差異が女性における実際の圧倒的多数の疾患を反映しているのか、単に女性はより医学的処置を求める傾向があるためかは不明である。IBSは、米国の胃腸病専門医により最も一般的に診断され、初診患者の12%に達する。この症状を有する患者の25パーセントのみが医学的処置を求めると見積もられ、研究により、治療を求める人々は又、治療を求めない人々に比べ、行動疾患及び精神的問題を伴いやすいことが明らかになった。更に、IBSと診断された患者では、線維筋肉痛(fibromyalgia)及び間質性膀胱炎等の、他の非胃腸性機能疾患の危険が増加する。過敏性腸症候群は、米国内で年間約80億ドルの直接的医療費用及び250億ドルの間接的費用の原因となっている。 研究資料のまとめは、IBSが胃腸の運動及び(腸の粘膜)上皮機能の調節の変容並びに、内臓(腹腔)事象知覚の変容に起因することを示した。Mayerら、Digestive Diseases、19:212-218、2001を参照し、これらの全ての開示を資料として使用する。 腸運動の変容、内臓知覚過敏、心理的要因、神経伝達物質のアンバランス、及び感染も又、過敏性腸症候群の発現の一部に寄与することが示された。Horwitz Bら、The New England Journal of Medicine、344:24、2001を参照し、これらの全ての開示を資料として使用する。更に、胃腸の炎症はストレスを伴う過敏性腸症候群に関係する。米国特許第6080736号明細書Horvathら、Progress in Neurobiology、60(2000)、309-342Tothら、J.Heterocyclic Chem.、20:709-713(1983)Fogassyら、Bioorganic Heterocycles、Vander Plas、H.C.、Otvos、L、Simongi、M編、ブダペスト、アムステルダム:Akademia;Kiado-Elsevier、229:233(1984)Simongiら、Biochem.Pharm.、32(12)、1917-1920、1983Zsilaら、Journal of Liquid Chromatography & Related Technologies、22(5)、713-719、1999Mayerら、Digestive Diseases、19:212-218、2001Horwitz B.ら、The New England Journal of Medicine、344:24、2001 例えば過敏性腸症候群を伴う、変容した腸運動、内臓過敏性又は胃腸の炎症及び関連するストレス等の症状の治療に使用できる新薬が求められている。特に、これらの症状の治療及び予防に適切な医薬品が求められている。 定義 化合物に関して使用される場合の用語「鏡像的に純粋な」とは、組成物が80重量%以上の単一のエナンチオマーであるように分割されたR−又はS−エナンチオマーの化合物を意味する。従って「鏡像的に純粋なR−トフィソパム」は、80重量%以上のR−エナンチオマーを含有し、同時に不純物として20重量%未満のS−エナンチオマーを含有するトフィソパムを意味する。 胃腸の機能不全及び関連するストレスを治療するための患者への治療法を表すために使用される「有効量」とは、胃腸の機能不全を発現する疾患に悩む患者へ投与されたときに胃腸の機能不全の減少に治療的に有用であるS-トフィソパム又はR−トフィソパムの量をいう。用語「患者」又は「被検体」は、ヒト及び非ヒト動物を含む。 本発明のまとめ 本発明は、鏡像的に純粋なR−トフィソパム及びその医薬的に適用可能な塩は、胃腸の機能不全及び関連するストレスの治療方法に有用である。 本発明の別の態様では、治療を必要とする患者の変容した腸運動の治療又は予防方法であり、患者への鏡像的に純粋なR−トフィソパム又はその医薬的に適用可能な塩の有効量投与を含む方法を提供する。これら変容した腸運動は過敏性腸症候群に関連する場合があるが、それに限定されるものではない。 本発明の第三の態様では、治療を必要とする患者の内臓の過敏性、痛み及び鼓張の治療又は予防方法であり、患者への鏡像的に純粋なR−トフィソパム又はその医薬的に適用可能な塩の有効量投与を含む方法を提供する。これら症状は過敏性腸症候群に関連する場合があるが、それに限定されるものではない。 更に別の本発明の態様では、治療を必要とする患者の潰瘍形成の治療又は予防方法であり、患者への鏡像的に純粋なR−トフィソパム又はその医薬的に適用可能な塩の有効量投与を含む方法を提供する。これら潰瘍形成は過敏性腸症候群に関連する場合があるが、それに限定されるものではない。 本発明の詳細な説明 本発明では、鏡像的に純粋なR−トフィソパム及びその医薬的に適用可能な塩は、胃腸の機能不全及び関連するストレスの治療方法に有用である。驚くべきことに、純粋なエナンチオマーは、ラセミ混合物(RS-トフィソパム)と比較して、胃腸の機能不全及び関連するストレス用の動物モデルでの種々の試験中でより大きな効果を示すことが示された。 例えば、マウスのガラスビーズ試験、伸張刺激された腸内容物排出(運動)に作用する化合物の能力を測定するために設計された動物モデルで、R−トフィソパムは治療的効果を示した。通常マウスで行われる試験中、3mmガラスビーズを(ガラス棒を使用して)肛門から遠位結腸中へ深さ2cmまで挿入する。次にガラスビーズ排出時間を測定する;正常なら、ガラスビーズは約10分で排出される。このモデルは、特に伸張刺激された腸内容物排出活性への阻害的効果を有する化合物には感受性があり、しばしばIBS用の動物モデルとして使用される。伸張刺激された腸内容物排出運動性を阻害する試験化合物は、IBSを含む胃腸の機能不全の治療に使用できる。R−トフィソパムは、ラセミ体よりも大きな範囲まで排出運動性を阻害した。 従って、本発明の一の態様では、治療を必要とする患者の変容した腸運動の治療又は予防方法であり、患者への鏡像的に純粋なR−トフィソパム又はその医薬的に適用可能な塩から選ばれる少なくとも1の化合物の有効量投与を含む方法を提供する。これら変容した腸運動は過敏性腸症候群に関連する場合があるが、それに限定されるものではない。 試験された別の胃腸の疾患モデルはデキストラン硫酸ナトリウムで誘起された大腸炎であった。この大腸炎モデルでは、結腸の急性炎症をデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を5%水道水溶液として投与して生成させる。この大腸炎は、ヒト炎症性腸疾患で観察されるものと類似する、組織学的事象並びに、好中球、マクロファージ及び炎症のメディエイタの流入に特徴を有する。過敏性腸疾患(IBD)の治療に効果があることが知られているスルファサラジン等の薬が、このモデルで活性を有することを示した。下記実施例中に示されるように、R−トフィソパムは、ラセミトフィソパム(RS-トフィソパム)と比較して、実質的により大きな効果を示すことが示された。 本発明の第二の態様では、治療を必要とする患者の胃腸の炎症の治療又は予防方法であり、患者への鏡像的に純粋なR−トフィソパム又はその医薬的に適用可能な塩の有効量投与を含む方法を提供する。これら胃腸の炎症は過敏性腸症候群に関連する場合があるが、それに限定されるものではない。 上記とは別の胃腸の疾患モデルで、内臓の痛み及び鼓張試験、即ちR−トフィソパムのラットでの腹部収縮の抑制能力を調査した。R−トフィソパムはラセミトフィソパムよりも大きな範囲まで腹部収縮を抑制することができた。 本発明の第三の態様では、治療を必要とする患者の内臓の過敏性、痛み及び鼓張の治療又は予防方法であり、患者への鏡像的に純粋なR−トフィソパム又はその医薬的に適用可能な塩の有効量投与を含む方法を提供する。これら内臓の過敏性、痛み及び鼓張は過敏性腸症候群に関連する場合があるが、それに限定されるものではない。 上記とは更なるモデルで、潰瘍形成減少のためのR−トフィソパムの使用を水浸ストレス試験で調査した。ラットでのストレスは急速に潰瘍形成を誘起することを示した。水浸ストレス試験は、ラットの水浸ストレスにより誘起された潰瘍形成に影響する化合物の能力を評価する(West J. Pharmacol. Methods、8:33-37(1982))。Yamaguchiらは潰瘍形成を減少させるRS-トフィソパムの非常な活性を示し、RS-トフィソパムでの予備処理(30又は100mg/kg経口)はストレス誘起性潰瘍の数及び潰瘍化の全面積を90%程度減少させたことを示した(Yamaguchiら Can. J. Physiol. Pharmacol、61:619-625(1983))。他の研究者らはラットの胃の機能へのRS-トフィソパムの効果を種々の観点から試験した。SatoらはRS-トフィソパムの脳室内注射(50又は100μg)は基礎量の胃酸生産及び粘膜血流の両方を増加させ、一方、RS-トフィソパムの静脈注射(10mg/kg)は基礎量の胃酸生産を変化させなかったことを示した(Satoら「日本薬理学雑誌」79:307−315(1982))。Matsuo及びSekiはRS-トフィソパムは塩酸誘起性潰瘍及びアルカリ誘起性潰瘍の進行を抑制し、焼灼誘起性潰瘍の治癒を促進したことを示した(Matsuo及びSeki「薬理と治療」16(8):157-164(1988))。R−トフィソパムは実施例で示されるように、ラセミトフィソパムよりも大きく潰瘍形成を抑制した。 更に本発明では、治療を必要とする患者の胃潰瘍形成の治療又は予防方法であり、患者への鏡像的に純粋なR−トフィソパム又はその医薬的に適用可能な塩の有効量投与を含む方法を提供する。これら胃潰瘍形成は過敏性腸症候群に関連する場合があるが、それに限定されるものではない。 更に、多数の胃腸の機能不全症状は、R−トフィソパムでそれぞれ同時に治療されてもよい。例えば、R−トフィソパムは変容した腸運動及び胃腸の炎症の症状を治療するために使用できる。別の例として、R−トフィソパムは、胃腸のストレス及び内臓の痛みを治療するために使用できる。別の例として、R−トフィソパムは過敏性腸症候群の治療に使用できる。これらの例のいずれも本発明により提供される他の治療可能性を限定するものではない。 本発明で使用できるR−トフィソパムは、いくつかの方法の一つで調製できる。これらの方法は一般的に、ラセミトフィソパムの合成で使用される合成手法及び手順に始まり、更にラセミトフィソパムを分割してR−エナンチオマーを単離するステップを含む。米国特許第3736315及び4423044号(トフィソパム合成)並びにHorvathら、Progress in Neurobiology 60(4): 309-342 (2000)、並びにその中に記載された資料(トフィソパム及びそのアナログの調製)を参照し、それらの全ての開示をここで資料として使用する。下記合成方法中で、化学的合成の生成物は、ラセミトフィソパムである。次にこのラセミ混合物を公知の分割方法を使用して分離し、鏡像的に純粋なR−トフィソパムを調製する。好ましくは、本発明の方法で使用される化合物は、85重量%以上の目的とするエナンチオマー、及び15重量%以下の目的としないエナンチオマーである組成物である。更に好ましくは、本発明の方法で使用される化合物は、90重量%以上の目的とするエナンチオマー及び10重量%以下の目的としないエナンチオマーである組成物である。特に好ましくは、本発明の方法で使用される化合物は、95重量%以上の目的とするエナンチオマー及び5重量%以下の目的としないエナンチオマーである組成物である。最も好ましくは、本発明の方法で使用される化合物は、99重量%以上の目的とするエナンチオマー及び1重量%以下の目的としないエナンチオマーである組成物である。 上記に示された(又は引用された)合成手順は、ラセミトフィソパムを生成する。本発明の方法に有用であるR−トフィソパムを生成するために、ラセミ混合物は光学分割される必要がある。 ラセミトフィソパムは、例えばS−ジベンゾイル酒石酸塩へ転換され、その生成物はSS及びRS配置のジアステレオマー性混合物である。1対のジアステレオマー(R,S)及び(S、S)は、異なる溶解性等の異なる物性を有し、従来の分割方法の使用が可能となる。適切な溶媒からのジアステレオマー性塩の分割再結晶は、このような分割方法の一つである。この分割は、ラセミトフィソパムの分割に有功に適用できる。ハンガリー国特許第178516号及び、Tothら、J. Heterocyclic. Chem. 20:709-713(1983)を参照し、それらの全ての開示をここで資料として使用する。 ラセミトフィソパムは、クロマトグラフィーカラム、好ましくは分取用(preparative)HPLCカラムのキラル固定化相での分離吸着によりジアステレオマー形成なしに分割できる。キラルHPLCカラムは、広い範囲の分割用途に適合する種々の充填材料と共に市販されている。ラセミ2,3−ベンゾジアゼピンを光学分割するために適切な固定化相の例として下記が挙げられる: (i)3個のポケット又は空孔を囲む18個のキラル中心を含有するシリカ結合したバンコマイシン等の大環状糖蛋白質; (ii)キラルα1酸糖蛋白質; (iii)ヒト血清アルブミン;及び (iv)セロビオヒドロラーゼ(CBH)。 キラルα1酸糖蛋白質は、球状シリカ粒子上に固定化された非常に安定した蛋白質であり、高濃度の有機溶媒、高pH又は低pH、及び高温に耐える。ヒト血清アルブミンは、弱酸及び強酸、両性イオン性及び非プロトン性化合物の分割に特に適しているが、塩基性 (basic)化合物を光学分割するためにも使用されてきた。CBHは非常に安定した酵素であり、球状シリカ粒子上に固定化されて、多くの化合物種からの塩基性(basic)薬のエナンチオマーの分割に好ましく使用されている。 大環状糖ペプチドをChirobiotic V(登録商標)カラム(ASTEC社製、Whippany、NJ)上の固定化相として使用したキラルクロマトグラフィーによるトフィソパムの分割は、米国特許第6080736号に記載されている。Fitosら(J. Chromatogr.709:265 (1995))は、キラルα1酸糖蛋白質をキラル−AGP(登録商標)カラム(ChromTech社製、Congleton、Cheshire、UK)上の固定化相として使用したキラルクロマトグラフィーにより、ラセミトフィソパムを光学分割する別の方法を開示している。この方法はR−及びS−エナンチオマーを分割し、同様にそれぞれのエナンチオマーの2個のコンフォーマー(下記に記載する)を光学分割する。Chirobiotic V(登録商標)カラムは、上記分割用に使用できる準分取用サイズ(500mm×10mm)で入手できる。更に、Chirobiotic V(登録商標)カラムの固定化相は、より大きいサンプル容量の分取用クロマトグラフィーカラムの充填用にバルクで市販されている。上記特許及び刊行物の全ての開示をここで資料として使用する。 R−及びS−エナンチオマーとして存在しているものに加え、トフィソパムは又一般的に下記で表されるベンゾジアゼピン環により推定できる2個の安定した配置で存在する: 本発明として、ここに記載されるように、R−トフィソパムの任意の又は全ての観察可能な配置を使用する方法が挙げられる。 更に本発明はR−トフィソパムのプロドラッグの使用方法に関する。本発明のプロドラッグは、R−トフィソパムの不活性誘導体であり、in vivoで代謝され、体内で活性剤となる。本発明で使用できるプロドラッグは、発作又は急病の治療又は予防においてR−トフィソパムと実質的に同等又はそれ以上の治療的価値を有するものである。例えば本発明で使用できるプロドラッグは、生体膜を通過する薬の透過性を改良した、薬吸収の増強;例えばプロドラッグからの親薬の除放及び/又は薬の初回通過代謝の減少等の薬活性持続時間の延長;薬作用の標的化;薬の水性溶解度及び安定性の改良(例えば静脈内注射用製剤目薬等);局所的ドラッグデリバリーの改良(例えば皮膚性及び眼性ドラッグデリバリー);薬の化学的及び/又は酵素的安定性の改良(例えばペプチド);又は薬の副作用の減少を可能とする。プロドラッグ製造方法は当分野で公知である(例えばBalant L. P. Eur. J. Drug Metab. Pharmacokinet. 15:143-153(1990);及びBundgaard H., Drugs of the Future 16:443-458(1991)をここで資料として使用する。) R−トフィソパムは又、本発明の方法中で第二の薬と組み合わせて使用できる。この第二の薬は、IBS治療に効果のある別の薬でもよく、例えば、5HT3アンタゴニスト、5HT4アゴニスト、抗けいれん薬、止瀉薬、緩下剤、SSRI、TCA、CCK−A−アンタゴニスト、M3アンタゴニスト、オピオイド−ミュー−アンタゴニスト、5HT3アンタゴニスト/5HT4アゴニスト、ニューロキニン2アンタゴニスト、オピオイド−カッパ−アゴニスト、ニューロキニン3アンタゴニスト、ニューロキニン1アンタゴニスト、オピオイド−デルタ−アゴニスト、CRFアンタゴニスト、NSRI、塩素チャネルアゴニスト、塩素チャネルアンタゴニスト、5HTlaアゴニスト、GLP−1アゴニスト、CCK−B−アンタゴニスト/ガストリンアンタゴニスト、β−3アゴニスト、カルシウムチャネルアンタゴニスト、M1アンタゴニスト、D2アゴニスト/5HT4アゴニスト、インテグリンアンタゴニスト、及びプリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤等が挙げられる。 本発明の方法の実施に使用されるR−トフィソパムは、医薬的に適用可能な塩の形を有してもよい。「塩」とは、通常アルカリ金属塩を形成するか遊離酸又は遊離塩基の付加塩を形成するために使用される塩を含む。用語「医薬的に適用可能な塩」とは、医薬用途に使用する範囲内の毒性プロファイルを有する塩を言う。医薬的に適用不能な塩もやはり、例えば合成プロセス中に使用するか、ラセミ混合物からエナンチオマーを光学分割するプロセス中に使用するような本発明の実施で使用出来る、高い結晶性等の物性を有することがある。適切な医薬的に適用可能な酸付加塩は、無機酸又は有機酸から調製できる。これら無機酸の例として塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸及びリン酸が挙げられる。適切な有機酸は、脂肪族、シクロ脂肪族、芳香族、芳香脂肪族(araliphatic)、複素環状、カルボン酸及び有機酸のスルホン種から選ばれ、それらの例としてギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、メシル酸、サリチル酸(salicyclic)、4−ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸、embonic(パモ)酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パントテン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、スルファニル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、ステアリン酸、アルギン酸(algenic)、β−ヒドロキシ酪酸、ガラクタル酸及びガラクツロン酸が挙げられる。 本発明の方法に使用される化合物は、体温上昇を伴う疾患又は体温を正常な体温より下げることが治療的効果を有する疾患に罹患している患者(動物及びヒトを含む哺乳類)へ投与されることができる。 過敏性腸症候群の治療又は予防のための、治療的効果を得るための本発明の化合物の所定の投与は、当然に、患者のサイズ、体重、年齢及び性別等の患者の特定の環境により決定される。同様に決定因子となるのは、病気の性質及び段階並びに投与経路である。例えば、一日投薬量約100〜1500mg/日が使用できる。好ましくは、一日投薬量約100〜1000mg/日も使用できる。更に好ましくは、一日投薬量約100〜500mg/日も使用できる。より大量又は少量の投薬量も、同様に可能である。 予防的投与としては、R−トフィソパムは、化合物が低体温効果を発揮するために充分な濃度で活性部位に到達できるように、体温が増加することが知られている事象の充分前に投与されるべきである。特定の配合の薬物動力学(薬物投与方法)は、公知の手段により決定され、特定の患者中のR−トフィソパムの組織濃度は従来の分析方法により決定できる。 本発明の方法は、医薬組成物の形のR−トフィソパムを医薬的に適用可能なキャリアと組み合わせて投与してもよい。これら配合物中に活性成分は、0.1〜99.99重量%含まれる。「医薬的に適用可能なキャリア」とは、配合物の他の成分と親和性があり、レシピエントに有毒でないキャリア、希釈剤又は賦形剤を意味する。 R−トフィソパムは、例えば経腸(例えば、経口、直腸内、鼻腔内等)及び非経口投与のいずれかの経路により治療的用に投与される。非経口投与として、例えば静脈内、筋肉内、動脈内、腹腔内、膣内、膀胱腔内(例えば膀胱中)、皮内、局所的又は皮下投与が挙げられる。同様に本発明の範囲内と考えられるのは、患者の体内へ、その後に薬の全身的放出又は例えば胃腸管中への局部的放出を起こすように制御した配合組成で薬を点滴注入することである。 活性薬は、好ましくは選択された投与経路及び標準的医薬手法を基礎に選択された、医薬的に適用可能なキャリアと共に投与される。活性薬は、医薬製造分野の標準的手法に従って剤形に配合できる。Alphonso Gennaro編、Remington's Pharmaceutical Sciences、18th Ed.、(1990)Mack Publishing Co.、Easton、PA参照。適切な剤形として、例えば錠剤、カプセル、溶液、非経口液、トローチ、座薬又は懸濁液が挙げられる。 非経口投与として、活性薬は、水、油(好ましくは植物油)、エタノール、生理食塩水、水溶液デキストロース(グルコース)及び関連する糖質輸液剤、グリセロール、又はプロピレングリコール又はポリエチレングリコール等のグリコール等の適切なキャリア又は希釈剤と混合することができる。非経口投与用溶液は、好ましくは活性薬の水溶性塩を含有する。安定化剤、抗酸化剤及び保存剤も又添加できる。適切な抗酸化剤として、亜硫酸塩、アスコルビン酸、クエン酸及びその塩、並びにEDTAナトリウム塩が挙げられる。適切な保存剤として、塩化ベンズアルコニウム、メチル−又はプロピル−パラベン、及びクロロブタノールが挙げられる。非経口投与用組成物は、水溶性又は非水溶性溶液、分散液、懸濁液又はエマルジョンの形状をとることができる。 経口投与用には、活性薬は、錠剤、カプセル、丸剤、粉剤、顆粒剤又は他の適切な経口剤形調製のために1以上の固体不活性成分と組み合わせてもよい。例えば、活性薬は、充填剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、溶解遅延剤、吸収強化剤、加湿剤、吸着剤又は潤滑剤等の少なくとも1の賦形剤と組み合わせることができる。1の錠剤例として、活性薬はカルボキシメチルセルロースカルシウム、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール及びスターチと組み合わされ、次に従来の錠剤製造法により錠剤へ形成されてもよい。 本発明の組成物は又、その中の活性成分の徐放又は制御放出を達成する目的で配合できる。一般的に、制御放出医薬品は、活性成分を目的の速度で放出して目的の期間一定の薬理学的活性を保持することのできる組成物である。このような剤形は予定された期間中体内へ薬を供給できるため、他の非(放出)制御の配合組成よりも長期間治療的範囲内の薬濃度を維持できる。 例えば、米国特許第5674533号は、有効性のある末梢性鎮咳薬であるモグイステイン(商標)投与用の液体剤形の制御放出組成物を開示している。米国特許第5059595号には、器質性(organic)精神疾患治療用の胃(液)耐性錠剤の使用による活性薬の制御放出が記載されている。米国特許第5591767号には、有効性のある鎮痛性性質を有する非ステロイド性抗炎症剤であるケトロラクの制御投与用の液体貯蔵経皮性パッチが記載されている。米国特許第5120548号には、膨潤可能なポリマーからなる制御放出薬デリバリー装置が記載されている。米国特許第5073543号には、ガングリオシド−リポソームビヒクル(vehicle)により捕捉されている栄養因子を含有する制御放出配合物が記載されている。米国特許第5639476号には、疎水性アクリル系ポリマーの水性分散液から得られる被膜を有する安定した固体制御放出配合物が記載されている。上記特許明細書をここで資料として使用する。 生物分解性マイクロ粒子も本発明の制御放出配合組成中に使用できる。例えば、米国特許第5354566号には、活性成分を含有する制御放出粉剤が記載されている。米国特許第5733566号には、抗寄生虫性組成物を放出するポリマー性マイクロ粒子の使用が記載されている。これら特許明細書をここで資料として使用する。 活性成分の制御放出は、種々の誘導因子、例えばpH、温度、酵素、水、又は他の生理学的条件又は化合物により刺激できる。薬放出には種々の機構が存在する。例えば、制御放出成分は、患者へ投与後に膨潤して活性成分を放出するのに充分な大きさの多孔質開口部を形成できる。本発明では用語「制御放出成分」は、ここでポリマー、ポリマーマトリックス、ゲル、透過性膜、リポソーム及び/又はミクロスフェア等の1又は複数の化合物であり、医薬組成物中の活性成分(例えば、R−トフィソパム又はそれらの医薬的に適用可能な塩)の制御放出を促進するものと定義される。別の例では、制御放出成分は生物分解性であり、その生物分解性は、体内の水性環境、pH、温度、又は酵素へ曝されることにより誘起される。又別の例では、ゾル−ゲルが使用でき、活性成分が室温で固体のゾル−ゲルマトリックス中に組み込まれる。このマトリックスは、ゾル−ゲルマトリックスのゲル形成を誘起するために充分高い体温を有する患者、好ましくは哺乳類の中に埋め込まれ、その結果患者内へ活性成分を放出する。 本発明ではR−トフィソパムは変容した腸運動、胃腸の炎症、内臓過敏性又は胃潰瘍の症状を発現する症状の患者へ投与される。これら症状として、例えば、過敏性腸症候群又は過敏性腸疾患が挙げられる。 本発明の実施を下記に具体的に示すが本発明を限定するものではない。 実施例1(R−トフィソパムの調製) A.ラセミトフィソパムの合成: 4.41g(10mmol)の1−(3,4−ジメトキシフェニル)−3−メチル−4−エチル−6,7−ジメトキシイソベンゾピリリウム(pyrilium)クロライド・塩酸をメタノール(35mL)に温度40℃で溶解する。20〜25℃まで冷却後、ヒドラジン水和物(0.75g、15mmol、5mLメタノール中に溶解)を添加する。反応をHPLCでモニターして終了した時点で、エバポレートして乾燥する。残渣を冷水(3mL)で粉砕し、ろ過して乾燥し、粗(R,S)−1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5H−2,3−ベンゾ−ジアゼピンを得て、次に熱い酢酸エチルで粉砕し、精製生成物を得る。 B.ラセミトフィソパムの分割 トフィソパムのエナンチオマーをキラルクロマトグラフィーで分割した。例えば、トフィソパム(42.8mg、アセトニトリル(ACN)中に溶解)をChirobiotic V(商標)カラム(ASTEC社製、Whippany、NJ)中に注入した。メチル−tert−ブチルエーテル(MTBE)/ACN90/10(v/v)による、40mL/分で化合物の溶出を310nm、2mmパス条件でモニターした。R(+)エナンチオマーは、カラムから溶出する最初の化合物であった。R(−)トフィソパム(ピークA’)、S(−/+)トフィソパム(「ピークB」及び「ピークB’」)、並びに残渣R(+)トフィソパム(A)が共溶出し、次のフラクション中に採取された。 R−トフィソパムの最終製品の鏡像的純度を分析した。分析用クロマトグラフィーにより測定すると、R−トフィソパムは純度97.5%を超え(即ち、95%を超える鏡像的過剰)、S−トフィソパムは純度87%(即ち、74%鏡像的過剰)であった。R−トフィソパムの出発材料及び最終製品の分析評価は、キラルテックODGH060カラム(商品名、米国ダイセル社製、Fort Lee、NJ)(ヘキサン/IPA=90/10、25℃、310nmで検出)を使用して行った。 実施例2(R−トフィソパムを使用した結腸部排出運動評価) ガラスビーズ試験は、刺激された結腸部排出運動に作用する化合物の能力を評価するために一般的に使用される。試験は通常マウスで行われ、3mmガラスビーズを肛門から遠位結腸中へ(ガラス棒を使用して)深さ2cmに挿入する。ビーズ排出時間を測定する。正常な場合、ガラスビーズ約10分で排出される。このモデルは、伸張刺激された排出運動活性への阻害的作用を有する化合物には特に感受性があり、IBSの動物モデルとしてしばしば使用される。 それぞれの試験で、RS−及びR−トフィソパムのガラスビーズの排出時間を増加又は減少させる能力を評価した。試験化合物はビーズ挿入の30分前に投与され、排出までのカットオフ最大時間を30分とした。最初の実験の結果を表1に示す。 上記表より、R−トフィソパムは非常に結腸部排出運動を持続させ(即ち、遅くし)、R−トフィソパムは試験された大部分の投与量でほとんど最大の抑制を生じた。 実施例3(R−トフィソパムを使用したチャコールミール試験) チャコールミール試験は、基礎量での、胃及び小腸の刺激されない(内容物)ぜん動性(propulsive motility)への化合物の作用評価の標準法である。それは一般的にヒトの基礎量の胃のぜん動を抑制又は加速する化合物の能力を予測すると考えられる。試験は通常ラットで行われ、非活性化チャコール粉は経口投与される。 チャコール懸濁液の投与60分にラットをCO2吸入で犠牲にし、胃及び小腸を切除し、幽門及び最も遠く前進したチャコールミール間の距離を測定し、幽門及び回盲連結部間の距離と比較した。このモデルは特に胃及び小腸の基礎量のぜん動活性の増加又は減少可能な能力を有する化合物に感受性がある(評価に使用できる)。従ってしばしば化合物が止瀉薬又は抗便秘(anticonstipatory)効果を示す可能性を予測し、同様に化合物が下痢又は便秘を副作用として生じる可能性を予測するために使用される。2回のチャコールミール試験をラットで行った。それぞれの実験では、RS−及びR−トフィソパムは、チャコールミールが通過した腸の割合を増加又は減少させる能力を評価された。試験化合物をチャコールミール投与の30分前に投与した。最初の試験結果を表2に示す。 表2に示されるように、化合物はいずれも、チャコールミールにより腸内移動の割合について大きな又は一定の効果を示さなかった。次に第2の試験をより広い投与量範囲を使用し、正のコントロールとしてロペラミドを使用して実施した。この試験の結果を表3に示す。 この試験では、試験された最大投与量で、R−トフィソパムはチャコールミール移動のわずかな抑制のみを生じた。反対にロペラミドは、チャコールミールの移動の非常な減少を生じた。これらの結果はR−トフィソパムは基礎量の、ヒト中の非刺激性結腸部排出運動の減速傾向をわずかに有し、従って現在IBSの治療用に使用されている幾つかの医薬品よりも便秘を生じる傾向が弱い可能性を示す。 実施例4(ラットでの内臓の過敏性、痛み及び鼓張に対するR−トフィソパムの評価) R−トフィソパム及びRS−トフィソパムの内臓の過敏性、痛み及び鼓張の緩和効果を評価した。内臓の過敏性、痛み及び鼓張試験では、結腸拡張を2時間の結腸内バルーン膨張及び1%酢酸適用の30分後に誘起した(Langloisら Eur. J. Pharmacol. 324:211-217(1997);Langloisら、Eur. J. Pharmacol. 318:141-144(1996))。酢酸は結腸過敏性を生じ、IBSで観察される内臓過敏性モデルとなる。結腸性拡張は、IBSで観察される痛み及び鼓張モデルとなり、ラットで腹部収縮を生じる。コントロールグループの10分間観察では、13.8±2.0腹部収縮が測定された。ラットを、結腸性拡張60分前に経口投与でU−50、488H(10mg/kg)処理した場合、腹部収縮の数を著しく減少させた(コントロールグループの腹部収縮13.8±2.0に対する2.5±0.8、即ち82%減少、p<0.01)。 RS-トフィソパム(32mg/kg)はビヒクルコントロールグループと比較した腹部収縮の数をあまり変化させなかった。R−トフィソパム(32mg/kg経口)はコントロールと比較して腹部けいれん(cramps)の数を、試験された投与量で非常に減少させた(ビヒクルコントロールグループで18.8±1.8けいれんに対して、それぞれ9.5±1.7けいれん、即ち49%減少、p<0.001)。結論として、R−トフィソパム(32mg/kg経口)は、内臓の過敏性、ラットの結腸性拡張により誘起された痛み及び鼓張に対する予防的効果を加えた。 実施例5(R−トフィソパムの胃潰瘍形成減少に対する評価) R−エナンチオマーのストレス−誘起性潰瘍形成を減少する能力を評価した。全体で、4回の試験を行った。それぞれの試験中、指標的にベンゾジアゼピン(クロバザム)を比較標準として使用し、コントロールグループには生理食塩水を投与した。4回の試験は設計が同じで、試験された化合物及び/又は投与量のみが異なる。基本的試験設計の記載は下記の通り。 約24時間食物及び水を絶った後、ラットを22±1℃の水中に垂直に配置した円筒プレキシガラス(商標)内部に配置した抑制チャンバーに入れ、ラットを首まで水中に沈めた。水中に1時間保持後、ラットを頸部脱臼により犠牲にし、それらの胃を切除して炎症又は潰瘍の存在を5段階評価で点数化した(潰瘍評価点、0=潰瘍又は炎症なし、1=炎症、2=1又は2個潰瘍、3=3又は4個潰瘍、4=4個を超える潰瘍)。潰瘍を示す胃のパーセント、及び潰瘍化指標(潰瘍評価点×潰瘍を示す胃のパーセント)を同様に計算した。試験化合物は水浸30分前にIP(腹腔内)投与した。 1セットの試験で、R−トフィソパムをRS-トフィソパムと同様に試験した。投与量は、8〜128mg/kg(IP)範囲であった。クロバザム(16及び32mg/kg)を比較化合物として使用し、生理食塩水をコントロールとして使用した。これらの試験の最初の結果を表4に示す。 上記試験から予測されるとおり、高い潰瘍評価点(3.6)が60分浸漬時間後の生理食塩水処理コントロールグループで観察された。一方、R−トフィソパムでの予備処理は非常に潰瘍評価点を減少させ、この試験ではR−トフィソパムはRS-トフィソパムよりも有効であることを示した。クロバザムは潰瘍評価点を僅かに減少させたが、この効果は統計的に有意ではなかった。第二の試験は同様な結果を示しこれらの知見を支持した。 この試験シリーズは明らかに、胃腸の終点を利用するストレス/不安の動物モデルでのR−トフィソパムの非常な活性を示す。これらのin vivo結果は、ストレスが関わっているIBS等の胃腸の症状の治療へのR−トフィソパムの使用の有効性を更に支持する。 ここで挙げられた全ての文献を資料として使用する。本発明は明細書の記載に限定されるものではなく本発明の思想又は範囲の内で他の態様でも行うことが出来る。 過敏性腸症候群の治療又は予防用の医薬品であり、鏡像的に純粋なR−トフィソパム又はその医薬的に適用可能な塩である化合物を含有する医薬品。 上記過敏性腸症候群に関連した、変容した腸運動治療用の請求項1の医薬品。 上記過敏性腸症候群に関連した、内臓過敏性、内臓の痛み及び内臓鼓張治療用の請求項1の医薬品。 上記R−トフィソパムは、5HT3アンタゴニスト、5HT4アゴニスト、抗けいれん薬、止瀉薬、緩下剤、SSRI、TCA、CCK−A−アンタゴニスト、M3アンタゴニスト、オピオイド−ミュー−アンタゴニスト、5HT3アンタゴニスト/5HT4アゴニスト、ニューロキニン2アンタゴニスト、オピオイド−カッパ−アゴニスト、ニューロキニン3アンタゴニスト、ニューロキニン1アンタゴニスト、オピオイド−デルタ−アゴニスト、CRFアンタゴニスト、NSRI、塩素チャネルアゴニスト、塩素チャネルアンタゴニスト、5HTlaアゴニスト、GLP−1アゴニスト、CCK−B−アンタゴニスト/ガストリンアンタゴニスト、β−3アゴニスト、カルシウムチャネルアンタゴニスト、M1アンタゴニスト、D2アゴニスト/5HT4アゴニスト、インテグリンアンタゴニスト、及びプリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤からなる群から選択される第二の薬とともに投与される請求項1〜3いずれか1項に記載の医薬品。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る