タイトル: | 特許公報(B2)_新規なPaenibacillus属菌およびそれらの菌もしくはそれらの菌の培養物質を利用した植物病害防除 |
出願番号: | 2006531627 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C12N 1/20,C07K 7/54,A01N 47/44,A01P 3/00 |
河内 真一郎 藤牧 司 金井 芳則 二又 克之 紀岡 雄三 野口 勝憲 JP 4359619 特許公報(B2) 20090814 2006531627 20050808 新規なPaenibacillus属菌およびそれらの菌もしくはそれらの菌の培養物質を利用した植物病害防除 科研製薬株式会社 000124269 片倉チッカリン株式会社 000240950 浅村 皓 100066692 浅村 肇 100072040 長沼 暉夫 100088926 池田 幸弘 100102897 河内 真一郎 藤牧 司 金井 芳則 二又 克之 紀岡 雄三 野口 勝憲 JP 2004231858 20040809 20091104 C12N 1/20 20060101AFI20091015BHJP C07K 7/54 20060101ALI20091015BHJP A01N 47/44 20060101ALI20091015BHJP A01P 3/00 20060101ALI20091015BHJP JPC12N1/20 AC12N1/20 EC07K7/54A01N47/44A01P3/00 C12N 1/20 A01N 47/44 A01P 3/00 C07K 7/54 CA/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) Science Direct 特開平05−051397(JP,A) Can J Microbiol (2002) Vol.48, No.2, p.159-69. 薬学雑誌(2002)第122巻第9号第651−671頁 J Antibiot (Tokyo) (1997) Vol.50, No.3, p.220-8. J Antibiot (Tokyo) (1996) Vol.49, No.2, p.129-35. 2 FERM BP-10380 FERM BP-10379 FERM BP-10378 FERM BP-10377 JP2005014524 20050808 WO2006016558 20060216 32 20080312 左海 匡子 本発明は、新規な Paenibacillus 属菌およびそれらの菌もしくはそれらの菌の培養物質を利用した植物病害防除に関する。更に詳細には、植物病害抵抗性誘導物質を産生して植物病害抵抗性誘導活性を発揮することにより植物病害防除作用を示すことができる Paenibacillus 属菌、より具体的には、例えば、Paenibacillus sp. BS-0048、Paenibacillus sp. BS-0074、Paenibacillus polymyxa BS-0105、Paenibacillus sp. BS-0277 などの新規な Paenibacillus 属菌、これらの Paenibacillus 属菌による植物病害防除、並びにこれらのPaenibacillus 属菌の培養物から得られる化合物の新規な植物病害抵抗性誘導活性を利用した植物病害防除に関する。 農業分野において、あらゆる植物病害の発生は作物収量の大幅な減少を引き起こし、その防除は農業技術上必須の手段である。これら病害を防ぐ手段としては栽培環境の制御、病害抵抗性品種の育成、農園芸用殺菌剤の散布による防除、農業用資材等による生物的防除等あるが、その中で農園芸用殺菌剤による防除が直接的で最も効果が高い。しかし環境汚染や環境生物に与える影響の問題から、これら殺菌剤を大量に散布して直接的に防除する手段に大きく依存するのは明らかに問題であると言える。 そのような状況の中、病原菌に対して特異的に効果を示し、選択毒性という点で非常に優れた殺菌作用を有する農園芸用殺菌剤も開発されているが、そのような薬剤は病原菌の薬剤耐性を引き起こしやすいという欠点も有し、その対策に作用性の異なった複数の薬剤を混合して、あるいはローテーションで散布しているのが現状である。 これらの化学農薬の過度な依存の問題を解決するために、近年、自然界に普遍的に存在している微生物や天敵を利用して各種作物病害や害虫を防除する方法が実用化されてきており、防除体系も改善されつつある。例えば、特許文献1には、Bacillus subtilis FR-2、Bacillus polymyxa KT-8 などの微生物の菌体を植物真菌感染防除剤として用いることが提案されている。しかしながら、その性能や種類はまだ十分と言えるものではなく、さらに優れた生物防除剤が必要とされている。 薬剤耐性菌発生の問題を解決するためには、本来植物が持っている病害抵抗性を付与する物質や微生物の利用が最も有効であると考えられる。 現在まで、植物病害に対する抵抗性を誘導する物質はサリチル酸などいくつか知られているものの、実際に植物病害防除薬剤として用いられているものは、1,2,3-ベンゾチアゾール-7-カルボン酸 S-メチル エステル(一般名アシベンゾラルSメチル)(非特許文献1、非特許文献2)、3-(2-プロピレンオキシ)-1,2 -ベンズイソチアゾール-1,1-ジオキサイド(一般名プロベナゾール)(非特許文献3)等の数種に限られ、十分であるとは言えない。 特許文献2には、植物病害に対する抵抗性を誘導する細菌と有機土壌改良剤とを用いて、植物の病気に対する耐性を付与することが記載されてはいるが、この方法も十分であるとは言えない。 一方、特許文献3には、Bacillus sp. KB-291 によって産生される抗菌活性物質 KT-6291A (Fusaricidin A) が各植物病害を防除することが報告されている。しかしながら、特許文献3に記載の抗菌活性物質 KT-6291A は、グラム陰性細菌であるキュウリ斑点細菌病菌に対して活性を示さないこと、その他のグラム陰性細菌に対しても活性を示さないことが明らかにされており、グラム陰性細菌によって引き起こされる植物病害を防除する方法の記載がなく、さらに Fusarium 属菌であるキュウリつる割病菌に対しても抗菌活性を示さないことが示されている。またいくつかの微生物に対して抗菌活性を示す他の物質についての記述はあるが、植物病害抵抗性誘導活性に関する知見は全くない。 非特許文献4にも、同様に、Bacillus polymyxa KT-8 から抗菌活性物質 Fusaricidin A が産生されるが、この物質はグラム陰性細菌に対して活性を示さないことが明らかにされている。 さらに、非特許文献5には、Bacillus polymyxa KT-8 から抗菌活性物質 Fusaricidin A とともに Fusaricidin B などもが産生されるが、これらの物質もグラム陰性細菌に対して活性を示さないことが明らかにされている。特開平6−253827号公報特表2003−529539号公報特開平2−275898号公報Plant Physiol. 117, p.1333-1339 (1998)Brighton crop protection conference - pests & di seases - 1996, 8A-4, CGA2455704Annu. Rev. Phytopathol. 32, p.439-59, (1994)The Journal of Antibiotics VOL.49, No.2, p.129-135 (1996)The Journal of Antibiotics VOL.50, No.3, p.220-228 (1997) 従って、本発明の課題は、植物病害抵抗性誘導活性を示すことができる Paenibacillus 属菌を提供すること、更には、植物病害抵抗性誘導物質を提供することにある。 また、本発明の課題は、これらを利用した、植物病害防除剤、植物病害防除方法を提供することにある。 本発明者らは、上記の状況を鑑み、より優れた植物病害防除方法を見出すべく鋭意検討を重ねた結果、菌株の形態学的・生理性状学的試験により同定した場合には Bacillus 属に属し、16S rDNA 塩基配列解析により同定した場合には Paenibacillus 属に属するある種の細菌が、優れた植物病害防除効果を有することを見出した。また、これらの Bacillus もしくは Paenibacillus 属に属するある種の細菌の培養物中に植物病害抵抗性誘導活性を有する化合物が存在することが明らかになった。本発明はこれらの知見に基いて完成されたものである。 しかして、本発明は、植物病害防除作用を有する新規な Paenibacillus 属菌に関する。 更に本発明は、植物病害抵抗性誘導物質を産生して植物病害抵抗性誘導活性を発揮することにより植物病害防除作用を示すことができる Paenibacillus 属菌に関する。 更に本発明は、上記の Paenibacillus 属菌を含有する組成物に関する。 更に本発明は、上記の Paenibacillus 属菌の培養物から得られる単一の植物病害抵抗性誘導物質あるいはそのいくつかの組み合わせを含有する組成物に関する。 更に本発明は、上記の組成物から成る植物病害防除剤に関する。 更に本発明は、植物病害抵抗性誘導物質として、下記構造を有する化合物1(Fusaricidin A)、化合物2(Fusaricidin B)、化合物3および化合物4から選ばれる少なくとも1つに化合物を含有する植物病害防除剤に関する。 更に本発明は、上記の Paenibacillus属菌、組成物または植物病害防除剤を、植物に適用して植物病原体の感染から植物体を防御することを特徴とする植物病害防除方法に関する。 更に本発明は、上記の構造式を有する新規な化合物3および4に関する。 本発明において、Paenibacillus 属菌とは、菌株の形態学的・生理性状学的試験により同定した場合には Bacillus 属に属し、16S rDNA 塩基配列解析により同定した場合には Paenibacillus 属に属する菌を意味する。 本発明の Paenibacillus 属菌は、植物病害抵抗性誘導活性を発揮することにより、Pseudomonas 属菌などのグラム陰性細菌や Fusarium 属菌によって引き起こされる植物病害を防除することができる。 また、本発明によって見出された新規な微生物 Paenibacillus sp. BS-0048、Paenibacillus sp. BS-0074、Paenibacillus polymyxa BS-0105、Paenibacillus sp. BS-0277 は、これらのグラム陰性細菌や Fusarium 属菌によって引き起こされる植物病害を防除することができるとともに、通常の植物病原菌、例えば、Colletotrichum 属菌や Glomerella 属菌などの広範囲の植物病原菌によって引き起こされる植物病害を防除することができる。ここで、例えば、Paenibacillus sp. BS-0048 とは、菌株の形態学的・生理性状学的試験により同定した場合には、Bacillus sp. BS-0048 と命名することができ、16S rDNA 塩基配列解析により同定した場合には Paenibacillus sp. BS-0048 と命名することができる同一の菌株を意味する。また、Paenibacillus polymyxa BS-0105 とは、菌株の形態学的・生理性状学的試験により同定した場合には、Bacillus 属に属する Bacillus sp. BS-0105 と命名することができ、16S rDNA 塩基配列解析により同定した場合には Paenibacillus 属の polymyxa 種に属する Paenibacillus polymyxa BS-0105 と命名することができる同一の菌株を意味する また、Paenibacillus 属菌によって産生される化合物1(Fusaricidin A)、化合物2(Fusaricidin B)、化合物3および化合物4は、植物病害抵抗性誘導活性を有し、従って、植物病原体の感染から植物体を防御する作用を有するため、植物病害防除に有効である。本発明の新規な化合物3のプロトン核磁気共鳴スペクトル(DMSO-d6)を示す。本発明の新規な化合物4のプロトン核磁気共鳴スペクトル(DMSO-d6)を示す。 本発明により、植物病害防除作用を有する新規な Paenibacillus 属菌が提供され、また、植物病害抵抗性誘導物質を産生して植物病害抵抗性誘導活性を発揮することにより植物病害防除作用を示すことができる Paenibacillus 属菌が提供される。本発明の植物病害抵抗性誘導物質としては、例えば、上記の化合物1(Fusaricidin A)、化合物2(Fusaricidin B)、化合物3、化合物4が挙げられる。 ここで言う植物病害抵抗性誘導活性とは、植物病害に対して、所謂、"誘導抵抗性(induced resistance)" を付与する活性を意味する。このような活性を有する物質を産生することができる Paenibacillus 属菌や、化合物1(Fusaricidin A)、化合物2(Fusaricidin B)、化合物3、化合物4などの植物病害抵抗性誘導物質は、植物病原体の感染から植物体を防御することができる。従って、直接抗菌活性を示すことなく、植物病害抵抗性誘導活性を発揮して植物病原体の感染から植物体を防御し、その結果、植物病害を防除することができる。 このような Paenibacillus 属菌としては、具体的には、例えば、本発明により見出された新規な Paenibacillus sp. BS-0048、Paenibacillus sp. BS-0074、Paenibacillus polymyxa BS-0105、Paenibacillus sp. BS-0277 またはそれらの変異体が挙げられる。変異体としては、例えば、自然に起こる自然突然変異や、紫外線などの物理的原因、塩基化合物などの化学的変異原等によって生じる変異体であって、本発明が意図する機能、すなわち、植物病害抵抗性誘導物質、例えば、化合物1(Fusaricidin A)、化合物2(Fusaricidin B)、化合物3および化合物4から選ばれる少なくとも1つの化合物を産生して植物病害抵抗性誘導活性を発揮することにより植物病害防除作用を示すことができる変異体であれば、いずれの変異体であってもよい。 また、本発明に用いられる Paenibacillus 属菌は、菌株の形態学的・生理性状学的試験により同定した場合には Bacillus 属に属するといえる菌株であっても、16s DNA 塩基配列解析により同定した場合には Paenibacillus 属に属する菌株であればよい。 本発明の Paenibacillus 属菌は、植物病害抵抗性誘導物質を産生して植物病害抵抗性誘導活性を発揮することにより、グラム陰性細菌や Fusarium 属菌によって引き起こされる植物病害を防除することができる。また、植物病害抵抗性誘導物質である、例えば、上記の化合物1(Fusaricidin A)、化合物2(Fusaricidin B)、化合物3、化合物4自体も、植物病害抵抗性誘導活性を発揮することにより、グラム陰性細菌や Fusarium 属菌によって引き起こされる植物病害を防除することができる。 グラム陰性細菌によって引き起こされる植物病害としては、例えば、Pseudomonas 属菌によって引き起こされる植物病害が挙げられ、具体的には、例えば、キュウリやメロンの斑点細菌病(Pseudomonas syringae pv. lachrymans)などのウリ類の斑点細菌病、イネの葉鞘褐変病(Pseudomonas fuscovaginae)などが挙げられる。Fusarium 属菌によって引き起こされる植物病害としては、例えば、ムギ類の赤かび病(Fusarium graminearum、Fusarium avenaceum、Fusarium culmorum)、キュウリのつる割病(Fusarium oxysporum f. sp. cucumerium)、メロンのつる割れ病(Fusarium oxysporum f. sp. melonis)、トマトの萎凋病(Fusarium oxysporum f. sp. lycopersici)などが挙げられる。 本発明の Paenibacillus 属菌、例えば、新規な Paenibacillus sp. BS-0048、Paenibacillus sp. BS-0074、Paenibacillus polymyxa BS-0105、Paenibacillus sp. BS-0277 は、上記したグラム陰性細菌やFusarium 属菌によって引き起こされる植物病害を防除することができるとともに、通常の植物病原菌、例えば、Colletotrichum 属菌や Glomerella 属菌などの広範囲の植物病原菌によって引き起こされる植物病害を防除することができる。Colletotrichum 属菌によって引き起こされる植物病害としては、例えば、キュウリの炭そ病(Colletotrichum orbiculare)などのウリ類炭そ病、イチゴの炭そ病(Colletotrichum acutatum)などが挙げられ、Glomerella 属菌によって引き起こされる植物病害としては、例えば、ブドウの晩腐病(Glomerella cingulata)、イチゴの炭そ病(Glomerella cingulata)などが挙げられる。 これら以外にも、例えば、各作物の灰色かび病(Botrytis cinerea)、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、イネのいもち病(Pyricularia oryzae)、紋枯れ病(Thanatephorus cucumeris)およびごま葉枯れ病(Cochliobolus miyabeanus)、リンゴの黒星病(Venturia inaequalis)、斑点落葉病(Alternaria mali)および腐らん病(Valsa ceratosperma)、ナシの黒斑病(Alternaria kikuchiana)および黒星病(Venturia nashicola)、カンキツの黒点病(Diaporthe citri)、青かび病(Penicillium italicum)およびかいよう病(Xanthomonas campestris pv. citri)、モモのホモプシス腐敗病(Phomopsis sp.)および灰星病(Monilinia fructicola)、カキの炭そ病(Gloeosporium kaki)および角斑落葉病(Cercospora kaki)、ムギ類のうどんこ病(Erysiphe graminis)、さび病(Puccinia graminis, P. striiformis, P. recondita)、裸黒穂病(Ustilago nuda)および赤かび病(Gibberella zeae、Monographella nivalis)、キュウリのうどんこ病(Sphaerotheca cucurbitae)、つる枯病(Didymella bryoniae)およびべと病(Pseudoperonospora cubensis)、トマトの葉かび病(Fulvia fulva)、ナスの半身萎凋病(Verticillium dahliae)、褐色腐敗病(Phytophthora capsici)および青枯病(Ralstonia solanacearum)、タバコの赤星病(Alternaria alternata)、テンサイの褐斑病(Cercospora beticola)、ジャガイモ疫病(Phytophthora infestans)、ダイズの紫斑病(Cercospora kikuchii)、ダイコンのべと病(Pernospora brassicae)、ホウレンソウのべと病(Peronospora spinaciae)、レタスの斑点細菌病(Xanthomonas campestris pv. vitians)および軟腐病(Erwinia carotovora subsp. carotovora)、キャベツの黒腐病(Xanthomonas campestris pv. campestris)、アブラナ科野菜の根こぶ病(Plasmodiophora brassicae)、各作物の苗立枯病(Pythium sp.)、果樹の紫紋羽病(Helicobasidium mompa)、シバのラージパッチ(Rhizoctonia solani)およびカーブラリア葉枯病(Curvularia sp.)などにも、本発明の Paenibacillus 属菌は有効である。 更には、本発明の Paenibacillus 属菌、あるいは植物病害抵抗性誘導物質である、例えば、上記の化合物1(Fusaricidin A)、化合物2(Fusaricidin B)、化合物3、化合物4自体は、植物病害抵抗性誘導活性を発揮するため、植物病原体の感染から植物体を防御して、その結果、植物病害を防除することができる。植物病原体としては、上記した各種の細菌や、菌類、その他、ウイルス類を挙げることができる。 菌類としては、例えば、各作物の灰色かび病(Botrytis cinerea)、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、イネのいもち病(Pyricularia oryzae)、紋枯れ病(Thanatephorus cucumeris)およびごま葉枯れ病(Cochliobolus miyabeanus)、リンゴの黒星病(Venturia inaequalis)、斑点落葉病(Alternaria mali)および腐らん病(Valsa ceratosperma)、ナシの黒斑病(Alternaria kikuchiana)および黒星病(Venturia nashicola)、カンキツの黒点病(Diaporthe citri)および青かび病(Penicillium italicum)、モモのホモプシス腐敗病(Phomopsis sp.)および灰星病(Monilinia fructicola)、カキの炭そ病(Gloeosporium kaki)および角斑落葉病(Cercospora kaki)、ブドウの晩腐病(Glomerella cingulata)、ムギ類のうどんこ病(Erysiphe graminis)、さび病(Puccinia graminis, P. striiformis, P. recondita)、裸黒穂病(Ustilago nuda)および赤かび病(Monographella nivalis)、キュウリのうどんこ病(Sphaerotheca cucurbitae)、つる枯病(Didymella bryoniae)、炭そ病(Colletotrichum orbiculare)およびべと病(Pseudoperonospora cubensis)、トマトの葉かび病(Fulvia fulva)、ナスの半身萎凋病(Verticillium dahliae)および褐色腐敗病(Phytophthora capsici)、イチゴの炭そ病(Collectorichum acutatum, Glomerella cingulata)、タバコの赤星病(Alternaria alternata)、テンサイの褐斑病(Cercospora beticola)、ジャガイモ疫病(Phytophthora infestans)、ダイズの紫斑病(Cercospora kikuchii)、ダイコンのべと病(Pernospora brassicae)、ホウレンソウのべと病(Peronospora spinaciae)、アブラナ科野菜の根こぶ病(Plasmodiophora brassicae)、各作物の苗立枯病(Pythium sp.)、果樹の紫紋羽病(Helicobasidium mompa)、シバのラージパッチ(Rhizoctonia solani)およびカーブラリア葉枯病(Curvularia sp.)などが挙げられる。 上記以外の細菌類としては、カンキツのかいよう病(Xanthomonas campestris pv. citri)、ナスの青枯病(Ralstonia solanacearum)レタスの斑点細菌病(Xanthomonas campestris pv. vitians)および軟腐病(Erwinia carotovora subsp. carotovora)、キャベツの黒腐病(Xanthomonas campestris pv. campestris)などが挙げられる。 ウイルス類としては、例えば、キュウリモザイク病(cucumber mosaic cucumovirus、watermelon mosaic2 potyvirus、zucchini yellow mosaic potyvirus)、トマトウイルス病(tobacco necrosis necrovirus)、イチゴウイルス病(strawberry crincle cytorhabdovirus、strawberry latent C virus、soybean dwarf luteovirus、strawberry mottle virus、strawberry pseudo mild yellow edge carlavirus、strawberry vein banding caulimovirus、tabocco mosaic tobamovirus、tobacco necrosis necrovirus)、キャベツモザイク病(cauliflower mosaic caulimovirus、cucumber mosaic cucumovirus、turnip mosaic potyvirus)、ダイズウイルス病(southern bean mosaic sobemovirus、peanut stunt cucumovirus、bean common mosaic potyvirus、broad bean wilt fabavirus)、ジャガイモ葉巻病(potato leafroll luteovirus)などが挙げられる。 本発明の Paenibacillus 属菌を植物病害防除に用いるには、通常、Paenibacillus 属菌の芽胞、栄養菌体、全培養物などを用いることができる。これらは、通常の方法により、Paenibacillus 属菌を培養して、その培養物から調製することができる。例えば、得られる全培養物をそのまま凍結乾燥することにより、全培養物粉末として全培養物を調製することができる。例えば、培養後、全培養物を遠心分離して夾雑物を除去し、得られる上清を更に遠心分離し、沈殿した菌体を洗浄して、菌体沈殿物として栄養菌体を調製することがきる。また、例えば、ここで得られる菌体沈殿物を蒸留水に懸濁して凍結乾燥することにより、凍結乾燥菌体粉末として、芽胞を調製することができる。 本発明で用いられる Paenibacillus 属菌は、通常生菌であるが、熱処理等によって死滅させた菌でもよい。なお、ここで生菌とは、上記したように、培養物から得られたものおよびその乾燥菌、培養物から濾過や遠心分離等の通常の方法により分離された菌および分離・採取後に乾燥された菌の両者を包含するものである。 Paenibacillus sp. BS-0048、Paenibacillus sp. BS-0074、Paenibacillus polymyxa BS-0105、Paenibacillus sp. BS-0277 などの Paenibacillus 属菌の培養は、一般細菌における通常の培養方法に準じて行なわれ、固体培養または液体培養(試験管振とう培養、往復式振とう培養、回転振とう培養、ジャーファーメンター培養、タンク培養等)など、考えられるいずれの方法でも可能である。培養培地としては各種の炭素源、窒素源、有機塩、無機塩を適宜に組み合わせて用いることが出来る。一般に炭素源としては、例えば、グルコース、デンプン、グリセリン、デキストリン、シュークロース、動植物油等が挙げらる。有機窒素源としては、例えば、酵母エキス、大豆粉、コーン・スティープ・リカー(corn steep liquor)、小麦胚芽、肉エキス、ペプトン等が挙げられる。無機窒素源としては、例えば、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等が挙げられる。有機塩、無機塩としては、例えば、酢酸ナトリウム等の酢酸塩;炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム等の炭酸塩;塩化ナトリウム、塩化カリウム等の塩化物;リン酸2水素1カリウム、リン酸水素2ナトリウム等のリン酸塩;硫酸第一鉄、硫酸亜鉛、硫酸銅等の硫酸塩などが挙げられる。培養温度は微生物が生育可能な範囲で適宜変更できるが、好ましくは 20℃〜40℃ の範囲である。通常、培養は好気的条件下で行なわれ、特にジャーファーメンターや培養タンクで培養する場合には、無菌空気を送入して行うが、生育可能な条件であれば方法、条件は特に限定されない。 本発明で植物病害抵抗性誘導物質として用いる化合物1(Fusaricidin A)や化合物2(Fusaricidin B)は、例えば、本発明で見出された新規なPaenibacillus sp. BS-0048、Paenibacillus sp. BS-0074、Paenibacillus polymyxa BS-0105、Paenibacillus sp. BS-0277 などの Paenibacillus 属菌、あるいは、これらの化合物を産生することが知られている、Bacillus sp. KB-291 (特開平2−275898号公報)、Bacillus polymyxa KT-8 (The Journal of Antibiotics VOL.49, No.2, p.129-135 (1996); The Journal of Antibiotics VOL.50, No.3, p.220-228 (1997))などの Bacillus 属菌の培養物から得ることが出来る。また、化合物3や化合物4は、本発明で見出された上記の新規な Paenibacillus 属菌の培養物から得ることが出来る。具体的には、これらの菌を、通常の方法で培養し、得られる培養液から、これらの文献に記載された方法や、通常の精製方法を組み合わせることにより得ることができる。例えば、培養液を、ブタノール、酢酸エチルなどで抽出し、抽出液を高速液体クロマトグラフィーなどに付することにより得ることができる。 本発明の植物病害防除において用いられる Paenibacillus 属菌、あるいは化合物1(Fusaricidin A)、化合物2(Fusaricidin B)、化合物3、化合物4などの植物病害抵抗性誘導物質は、他の成分を何ら加えず、そのまま使用することもできる。必要に応じて固体担体、液体担体等の各種担体と混合して調製したもの、または添加剤等の製剤用補助剤を加えて、水和剤、溶液剤、懸濁剤、粒剤、粉剤、マイクロカプセル剤、ペースト剤等に製剤化したものを用いることもできる。 これらの製剤には、本発明の Paenibacillus 属菌を、通常重量比(細菌は湿潤量)で約 0.1 %〜99% 含有する。また、製剤1g 当たり約103 〜約1011のコロニー形成単位(以下、CFUと記す。)の本発明の Paenibacillus 属菌を含有することが望ましい。また、Paenibacillus 属菌の芽胞、栄養菌体あるいは全培養物を用いる場合には、製剤 1g あたり 約 103〜1011 CFU あるいは通常重量比(湿潤量)で約 0.1%〜99% の量を含有するのが望ましい。植物病害抵抗性誘導物質の場合には、化合物1(Fusaricidin A)、化合物2(Fusaricidin B)、化合物3および化合物4から選ばれる少なくとも1つの化合物を 0.01%〜99% の量を含有するのが望ましい。 製剤化で用いられる固体担体としては、例えば、鉱物質粉末(カオリンクレー、ベントナイト、珪藻土、合成含水酸化珪素、タルク類、石英、バーミキュライト、パーライト等)、無機塩(硫安、燐安、硝安、尿素、塩安等)、有機物粉末(小麦粉、大豆粉、フスマ、キチン、米糠、脱脂粉乳、全脂粉乳等)、活性炭、炭酸カルシウム等があげられ、液体担体としては、例えば、水、グリセロール、植物油(大豆油、なたね油等)、液体動物油(魚油等)、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。 製剤用補助剤としては、例えば、カゼイン、ゼラチン、多糖類(でんぷん粉、アラビアゴム、セルロース誘導体、アルギン酸等)、リグニン誘導体、ベントナイト、糖類、植物油、鉱物油、合成水溶性高分子(ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸類等)、プロピレングリコール、エチレングリコール等の凍結防止剤、シリコン系化合物等の消泡剤、天然多糖類(ザンサンガム等)、無機物(アルミニウム、ベントナイト等)、合成水溶性高分子(ポリアクリル酸等)等の増粘剤などを挙げることができる。 殺虫剤、殺線虫剤、殺ダニ剤、殺菌剤、除草剤、植物生長調節剤、展着剤、肥料、微生物資材、土壌改良資材等と混合して用いることもでき、また混合せずに同時に用いることもできる。 本発明の植物病害防除においては、用いられる Paenibacillus 属菌の有効成分の施用量(湿潤量)は、通常、10アールあたり約 0.1g〜約 10000g であり、好ましくは約 10g〜約 1000g である。水和剤、懸濁剤、マイクロカプセル剤等を水で希釈して用いる場合、施用時の細菌濃度は通常、約 103CFU/mL〜約 1011CFU/mL であり、好ましくは約 105 CFU/mL〜約109 CFU/mL である。粒剤、粉剤、ペースト剤等は何ら希釈することなく製剤のままで施用することができる。 また、Paenibacillus 属菌の芽胞、栄養菌体あるいは全培養物を用いる場合の施用量は、10 アールあたり約 0.1g〜約10000g(湿潤量)が望ましく、水で希釈して用いる場合、施用時の芽胞あるいは栄養菌体の濃度は 103〜1010 CFU/mL が望ましい。また植物病害抵抗性誘導物質の施用量は、10 アールあたり約 0.001g〜10000g が望ましく、水で希釈して用いる場合、施用時の化合物1(Fusaricidin A)、化合物2(Fusaricidin B)、化合物3および化合物4から選ばれる少なくとも1つの化合物の濃度は 0.1〜1000μg/mL が望ましい。 本発明の植物病害防除においては、本発明の Paenibacillus 属菌あるいは植物病害抵抗性誘導物質を、植物の茎葉、根圏および/または種子に施用するのが好ましい。実際に植物に適用するには、例えば、通常行われる粒剤を株元あるいは土壌に施用する方法、希釈液もしくは希釈しない液を株元あるいは土壌に施用する方法などがある。その他に、例えば、地上部病害を防除する方法と同様の散布法、本発明の Paenibacillus 属菌あるいは植物病害抵抗性誘導物質を固体担体およびバインダーと呼ばれる固着剤等と混合、もしくは別々に植物の種子にコーティングあるいは浸漬処理する方法、または肥料、土壌改良資材、培土等と混合、もしくは混合せずに同時に施用する方法、本発明の Paenibacillus 属菌あるいは植物病害抵抗性誘導物質を固体担体に吸着させ、さらに有機系栄養素(米糠、麦芽エキス、アミノ酸等)、肥料成分等を添加、または添加せずに得られる微生物資材を使用する方法などを用いることができる。 これらの施用量、施用濃度は、いずれも製剤の種類、施用時期、施用場所、施用方法、栽培方法、作物の種類、植物病害の種類、被害程度等の状況によって異なり、上記の範囲にかかわることなく増加させたり、減少させたりすることができる。 以下、本発明の植物病害防除について、細菌の分離例、製造例、製剤例、試験例、培養例、抽出例、精製例、調製例および評価例により、さらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。細菌の分離例1 新規な Paenibacillus sp. BS-0048、Paenibacillus sp. BS-0074、Paenibacillus polymyxa BS-0105、Paenibacillus sp. BS-0277 の分離および同定 (1)菌株の分離 全国各地の栽培圃場より、トマト、ナス、ピーマン、キュウリ、メロン、ホウレンソウ、イチゴ、ダイコン、ナガイモなどの根圏土壌および根を採取した。この根圏土壌あるいは根 10g を滅菌水 90 mL を入れたふた付きガラス瓶に入れ超音波あるいは振盪処理を行った。この懸濁液を適宜希釈した液 1mL をアルブミン寒天培地(エッグアルブミン 0.25g、D−グルコース 1g、リン酸2カリ 0.5g、硫酸マグネシウム0.2g 、硫酸鉄III trace、蒸留水 1L、pH 6.8〜7.0)と混釈して 30℃ で 5〜10 日間培養して生育したコロニーを分離した。(2)形態学的・生理性状学的試験による菌株の同定 本発明で例示する菌株は、トマト栽培土壌、ナガイモ栽培土壌、有機連用土壌より分離された微生物であり、菌株コード BS-0048 株、BS-0074 株、BS-0105 株、BS-0277 株とそれぞれ命名した。下記の表1に BS-0048 株、BS-0074 株、BS-0105 株、BS-0277 株の形態学的・生理性状学的試験結果を示す。 BS-0048 株および BS-0277 株は、B. polymyxa との類似性が最も高くなっているが V-P 反応性が異なっていることからそれぞれの菌株を新種相当と判定した。BS-0105 株は、B. polymyxa あるいは B. macerans に近いが、V-P 反応性とカゼイン資化性においてこれらの種と異なっていた。また、BiOLOG 同定装置での同定結果では B. macerans および B. polymyxa がヒットしたが類似性は低く異なる種であったことから本菌株を新種相当と判定した。BS-0074 株は、B. haloduransとの類似性がやや高いが、資化性でいくつかの相違があったことから本菌株を新種相当と判定した。 上記の形態学的・生理性状学的試験により、トマト、ナガイモあるいは有機連用栽培土壌より分離したBS-0048 株、BS-0074 株、BS-0105 株、BS-0277 株は、いずれも Bacillus sp.と同定され、それぞれ BS-0048 株は Bacillus sp. BS-0048(受託日:平成 16 年 6 月 18 日;受託番号:FERM P-20085)、BS-0074 株は Bacillus sp. BS-0074(受託日:平成 16 年 6 月 18 日;受託番号:FERM P-20086)、BS-0105 株は Bacillus sp. BS-0105(受託日:平成 16 年 6 月 18 日;受託番号:FERM P-20087)、BS-0277 株は Bacillus sp. BS-0277(受託日:平成 16 年 6 月 18 日;受託番号:FERM P-20088)として独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(IPOD)に寄託されている。(3)16S rDNA 塩基配列解析による同定 Bacillus sp. BS-0105 株の16S rDNA(16S rRNA 遺伝子)の塩基配列約1500bp を決定し、その配列を用いて細菌基準株データベースおよび GenBank/DDBJ/EMBL に対する相同性を検索した。その結果、Bacillus sp. BS-0105 株の 16S rDNA 塩基配列は、相同率 98.7% で Paenibacillus polymyxa の 16S rDNA に対して最も高い相同性を示し、分子系統樹を作成して分子系統解析を行なった結果、P. polymyxa と近縁である可能性が高いと考えられた。さらに P. polymyxa の基準株との間で、ハイブリダイゼーションを用いた DNA-DNA 相同値を比較した結果、基準株に対して 70% 以上の相同率を示した。 以上から、BioLOG 同定装置での同定結果では類似性が低かったものの、Bacillus sp.BS-0105 株を Paenibacillus polymyxa であると同定した。従って、Bacillus sp.BS-0105 株を Paenibacillus polymyxa BS-0105 と命名した。 Bacillus sp. BS-0048 株、BS-0074 株、BS-0277 株の 16S rDNA(16S rRNA 遺伝子)の部分塩基配列約 500bp を決定し、その配列を用いて細菌基準株データベースおよび GenBank/DDBJ/EMBL に対する相同性を検索した。その結果、Bacillus sp. BS-0048 株および BS-0277 株の 16S rDNA 塩基配列は、それぞれ相同率 98.5% および97.5% で Paenibacillus polymyxa の 16S rDNA に対して最も高い相同性を示した。また、Bacillus sp. BS-0074 株の 16S rDNA 塩基配列は、相同率98.4% で Paenibacillus eligii の16S rDNA に対して最も高い相同性を示した。いずれのデータベースに対する相同性検索においても、Bacillus sp. BS-0048 株、BS-0074 株、BS-0277 株と相同性の高い上位 30 菌株は、Paenibacillus 由来の 16S rDNA が占め、分子系統樹を作成して分子系統解析を行なったところ、Bacillus sp. BS-0048 株、BS-0277 株は P.polymyxa を中心とするクラスター内に含まれ、Bacillus sp. BS-0048 株は、P.elgii と同一の系統枝を示した。 以上から、Bacillus sp. BS-0048 株、Bacillus sp. BS-0074 株、Bacillus sp. BS-0277 株は、Paenibacillus 属菌であると同定した。従って、それぞれ、Paenibacillus sp. BS-0048、Paenibacillus sp. BS-0074、Paenibacillus sp. BS-0277 と命名した。 上記の新たな命名に従って、日本国〒305-8566 茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6 IPOD(独)産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(IPOD)に寄託されている、菌株を新たな命名に変更するとともに、国内寄託をブダペスト条約に基づく国際寄託に移管した。その結果、BS-0048 株は、Paenibacillus sp. BS-0048(移管日:2005 年 07 月 22 日(22.07.2005);受託番号:IPOD FERM BP-10377)、BS-0074 株は Paenibacillus sp. BS-0074(移管日:2005 年 07 月 22 日(22.07.2005);受託番号:IPOD FERM BP-10378)、BS-0105 株は Paenibacillus polymyxa BS-0105 (移管日:2005 年 07 月 22 日(22.07.2005);受託番号:IPOD FERM BP-10379)、BS-0277 株は Peanibacillus sp. BS-0277(移管日:2005 年 7 月 22 日(22.07.2005);受託番号:IPOD FERM BP-10380)として、日本国〒305-8566 茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6 IPOD(独)産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(IPOD)に寄託されている。製造例1 Paenibacillus sp. BS-0048、Paenibacillus sp. BS-0074、Paenibacillus polymyxa BS-0105、Paenibacillus sp. BS-0277 の培養 本発明の菌株 BS-0048、BS-0074、BS-0105、BS-0277 の保存菌の一白金耳を 10mL の YPMG 培地(D−グルコース 10g、肉エキス 1g 、酵母エキス3g、ペプトン 5g 、蒸留水 1L、pH 7.0とする) を含む 50mL 試験管内に植菌後、振幅数 100 振幅/分、 25℃、暗黒条件下で 3 日間培養した。上記前培養により得られた菌株 BS-0048、BS-0105、BS-0277 培養物0.1mL は 10mL の培地(D−グルコース 20g、可溶性デンプン 10g 、ペプトン 10g、酵母エキス 10g、麦芽エキス10g、大豆粉 15g、蒸留水 1L)を含む 100mL 容三角フラスコ内に植菌後、また菌株 BS-0074 培養物 0.1mL は 10ml の YPMG 培地を含む 100mL 容三角フラスコ内に植菌後、いずれも回転数 200rpm、25℃ の条件で 4 日間培養した。製造例2 Paenibacillus polymyxa BS-0105 の培養 本発明の菌株 BS-0105 保存菌の一白金耳を100mL の YPMG 培地を含む 250mL 容三角フラスコ内に植菌後、振幅数 100 振幅/分、 30℃、暗黒条件下で 7 日間培養した。製造例3 Paenibacillus polymyxa BS-0105 の全培養物の調製 製造例1によって得られた菌株 BS-0105 の全培養物の約 1L を 1500rpm、5 分間遠心分離して培地由来の夾雑物を除去した後、上清を 8000rpm、20 分間遠心分離し菌体を沈殿させた。0.8%生理食塩水で沈殿物を洗浄し再度 8000rpm、20 分間遠心分離した。この操作を2回繰返して菌体沈殿物を得た。製造例4 Paenibacillus polymyxa BS-0105 の凍結乾燥菌体(芽胞)粉末の調製 上記製造例3の培養物 300mL から得られた洗浄菌体沈澱物を蒸留水 50mL に懸濁して凍結乾燥機にかけ、8.8×109CFU/g の凍結乾燥菌体(芽胞)粉末 2.13g を得た。製造例5 Paenibacillus polymyxa BS-0105 の凍結乾燥菌体(芽胞)粉末の調製 上記製造例3の培養物 300mL から得られた洗浄菌体沈澱物を 20% スキムミルク 50mL に懸濁して凍結乾燥機にかけ、3.5×109CFU/g の凍結乾燥菌体(芽胞)粉末 11.08g を得た。製造例6 Paenibacillus polymyxa BS-0105 の凍結乾燥菌体(芽胞)粉末の調製 上記製造例3の培養物 300mL から得られた洗浄菌体沈澱物を 5% 硫酸アンモニウム溶液 50mL に懸濁し凍結乾燥機にかけ、4.3×109 CFU/g の凍結乾燥菌体(芽胞)粉末 4.67g を得た。製造例7 Paenibacillus polymyxa BS-0105 の全培養物粉末調製 製造例2によって得られた全培養物 100mL を凍結乾燥して、4.1×109CFU/g の全培養物粉末 3.56g を得た。 次に製剤例を示す。なお、部は重量部を表す。製剤例1 水和剤の調製 製造例4、5、6、7によって得られる乾燥重量約 60 部の本発明細菌を 20部の大豆粉、10 部のペプトン、10 部の D-グルコースに混和して、菌体含有の水和剤を得た。製剤例2 水和剤の調製 製造例4、5によって得られる乾燥重量約 80 部の本発明細菌を 20 部の大豆粉に混和して、菌体含有の水和剤を得た。製剤例3 培養資材の調製 本発明の菌株 BS-0105 保存菌の一白金耳を50mL の YPMG 培地を含む 250mL 容三角フラスコに植菌後、振幅数 100 振幅/分、 30℃ で 6 日間培養した。次に、ゼオライト9と大豆粉末1の割合で混合し、その 200g をマヨネーズビンに入れ、水 50mL を加えて 121℃ で 30 分滅菌した。この資材へ上記前培養により得られた培養物 1mL を添加して 30℃ で 10 日間培養して BS-0105 菌109CFU/g の培養資材を得た。 次に本発明の植物病害防除方法が、植物病害に対して防除効果があることを試験例により示す。試験例1 各菌株培養物のキュウリ炭そ病防除効果試験 プラスチックポットに園芸用培土を詰め、キュウリ(品種:四葉)を播種し、温室内で20日間育成した。本葉第1葉が展開したキュウリ幼苗の子葉に製造例1の方法で調製した菌株 BS-0048、 BS-0074、BS-0105、BS-0277 の全培養物の 0.1mL をそれぞれ塗布した。3 日間、25℃ のガラスハウス内に置いた後、蒸留水に懸濁したキュウリ炭そ病菌分生胞子液(Colletotrichum orbiculare, 1×106spores/mL)を植物体に噴霧接種した。25℃、暗黒の湿室に 24 時間保持後、7 日間、25℃ のガラスハウス内に置いて発病させた。本葉第 1 葉の病斑数をそれぞれ計測し、その値から防除価を、下記式により算出して防除効果を比較した。結果を表2に示した。 防除価={1−(処理区病斑数/無処理区病斑数)}×100 表2の結果から明らかなように、本発明の細菌培養物を子葉に処理した場合、公知の防除剤であるアシベンゾラルSメチルと同様に、本葉第1葉の発病を顕著に抑制した。試験例2 精製芽胞のキュウリ炭そ病防除効果試験 プラスチックポットに園芸用培土を詰め、キュウリ(品種:四葉)を播種し、温室内で 20 日間育成した。本葉第 2 葉が展開したキュウリの幼苗に、製造例4、5、6、7のそれぞれの方法で製造し、製剤例1の方法で製剤した菌株 BS-0105 の芽胞調製サンプルを2×107CFU/mL の割合で茎葉散布処理した。25℃、暗黒の湿室に 24 時間保持後、4 日間、25℃ のガラスハウス内に置いた後、蒸留水に懸濁したキュウリ炭そ病菌分生胞子液(Colletotrichum orbiculare, 1×106spores/mL)を植物体に噴霧接種した。25℃、暗黒の湿室に 24 時間保持後、7日間、25℃ のガラスハウス内に置いて発病させた。葉の病斑数をそれぞれ計測し、その値から下記式により防除価を算出して防除効果を比較した。結果を表3に示した。 防除価={1−(処理区病斑数/無処理区病斑数)}×100 表3の結果から明らかなように、本発明の細菌を主成分とする製剤は、公知の防除剤であるインプレッション水和剤やアシベンゾラルSメチルに比べて、いずれも同等から高い防除効果を示した。試験例3 精製芽胞のキュウリ斑点細菌病防除効果試験 プラスチックポットに園芸用培土を詰め、キュウリ(品種:四葉)を播種し、温室内で 20 日間育成した。本葉第2葉が展開したキュウリの幼苗に、製造例5の方法で製造し、製剤例1の方法で製剤した菌株BS-0105 の芽胞調製サンプルを 2×107CFU/mL の割合で茎葉散布処理した。25℃、暗黒の湿室に 24時間保持後、4 日間、25℃ のガラスハウス内に置いた後、蒸留水に懸濁したキュウリ斑点細菌病細菌(Pseudomonas syringae pv. lachrymans)の懸濁液(1×108CFU/mL)を植物体に噴霧接種した。25℃、暗黒の湿室に24時間保持後、7日間、25℃ のガラスハウス内に置いて発病させた。本葉第 2 葉の病斑数をそれぞれ計測し、その値から下記式により防除価を算出して防除効果を比較した。結果を表4に示した。 防除価={1−(処理区病斑数/無処理区病斑数)}×100 表4の結果から明らかなように、本発明の細菌を主成分とする製剤は、公知の防除剤であるインプレッション水和剤やアシベンゾラルSメチルに比べて、同等から高い防除効果を示した。試験例4 精製芽胞のイチゴ炭そ病防除効果試験 プラスチックポットで栽培し、小葉が 10 枚程度展開したイチゴ苗(品種:あきひめ)に、製造例5の方法で製造し、製剤例2の方法で製剤した菌株 BS-0105 の芽胞調製サンプルを 2×107CFU/mL の割合で茎葉散布処理した。25℃、暗黒の湿室に 24 時間保持後、3 日間(アミスター 20 フロアブルは 1 日間)、25℃ のガラスハウス内に置いた後、蒸留水に懸濁したイチゴ炭そ病分生胞子液(Colletotrichum orbiculare, 2×106 spores/mL)を植物体に噴霧接種した。25℃、暗黒の湿室に 24 時間保持後、14 日間、25℃ のガラスハウス内に置いて発病させた。下記式から発病度を求め、その値から下記式により防除価を算出して防除効果を比較した。結果は表5に示した。 発病度=(Σ発病指数×該当数/4×調査数)×100 発病指数0:発病なし、発病指数1:小葉に少し小斑点が見られる、 発病指数2:茎葉部に小斑点が多数見られる、発病指数3:茎葉部に目立った大 型病斑あり、発病指数4:萎凋と枯死 防除価={1−(処理区発病度/無処理区発病度)}×100 表5の結果から明らかなように、本発明の細菌を主成分とする製剤は、公知の防除剤であるアミスター20フロアブルやアシベンゾラルSメチルに比べて、低い発病度を示し、また高い防除効果を示した。試験例5 培養液によるメロン斑点細菌病防除効果試験 愛菜1号(片倉チッカリン(株)製)を育苗トレーに充填し、メロン(品種:アールス)を育苗した。この時、製造例2で調製した菌株 BS-0105 培養液10mL(108spores/mL)を入れたシャーレにメロン種子を浸漬して 30℃ で 2 時間バクテリゼーションした種子処理区を設けた。子葉が展開後、愛菜1号を充填した 12cm ポリポットに鉢上げを行い、本葉 3 枚が完全に展開した時に、製造例2で調製した菌株 BS-0105 培養液を 1mL(108spores/mL)潅注および葉面散布処理した区、およびアシベンゾラルSメチルの 2ppm 溶液 2mL を葉面散布した区を設けた。病原菌(Pseudomonas syringae pv. lachrymans)の接種は、処理5日後にあらかじめジャガイモ半合成培地(ジャガイモ 300g と蒸留水 1L の煎汁液、硝酸カルシウム4水和物 0.5g、リン酸水素2ナトリウム 12 水和物 2g、ペプトン 5g、スクロース20g、粉末寒天 15g)で培養した斑点細菌病菌液を葉の裏面を中心に全葉に噴霧接種した。発病調査は病原菌接種 8 日後に第2葉から第4葉の病斑数を計数した。その値から下記式により防除価を算出して防除効果を比較した。結果は表6に示した。 防除価={1−(処理区病斑数/無処理区病斑数)}×100 表6の結果から明らかなように、本発明の細菌培養物を種子、葉および潅注処理した場合、公知の防除剤であるアシベンゾラルSメチルに比べていずれも同等から高い防除効果を示した。試験例6 培養液によるメロンつる割病防除効果試験 愛菜1号を育苗トレーに充填し、メロン(品種:プリンス)を育苗した。この時、製造例2で調製した菌株BS-0105 培養液 10mL(108spores/mL)を入れたシャーレにメロン種子を浸漬して 30℃ で 2 時間バクテリゼーションした。子葉が展開後、つる割病(Fusarium oxysporum f. sp. melonis)の病土を充填した10.5cm ポリポットに鉢上げを行い、製造例2で調製した Bacillus sp. BS-0105 培養液を 1mL/ポット(108spores/mL)の割合で潅注した。ベンレート水和剤は 1000 倍希釈液(濃度 500ppm)2mL を潅注処理した。下記式から発病度を求め、その値から下記式により防除価を算出して防除効果を比較した。結果は表7に示した。 発病度=(Σ発病指数×株数/4×株数)×100 発病指数:0(健全)、1(軽症)、2(中症)、3(重症)、4(枯死)の5段階評価 防除価={1−(各処理区の発病度/無処理区の発病度)}×100 表7の結果から明らかなように、本発明の細菌培養物を種子および潅注処理した場合、公知の防除剤であるベンレート水和剤に比べて、同等の防除効果を示した。 また、Paenibacillus sp. BS-0048、Paenibacillus sp. BS-0074、Paenibacillus polymyxa BS-0105、Paenibacillus sp. BS-0277の培養物から、化合物1(Fusaricidin A)と化合物2(Fusaricidin B)を得る方法として、以下の例があげられる。培養例1 Paenibacillus polymyxa BS-0105 の培養 本発明の菌株 BS-0105 保存菌の一白金耳を10mL の YPMG 培地(D−グルコース 10g、肉エキス 1g 、酵母エキス3g、ペプトン 5g 、蒸留水 1L、pH 7.0とする) を含む 100mL 容三角フラスコに植菌後、回転数 200rpm、25℃、暗黒条件下で 3 日間培養した。前述の前培養により得られた培養物 0.5mL を10mL の生産培地(D−グルコース 20g、大豆粉 10g、コーンスティープリカー 5g、グリセロール 2.5g、コーンスターチ 2.5g、酵母エキス 1g、NaCl 1g、CaCO31g、蒸留水 1L、pH 7.0)を含む 100mL 容三角フラスコ内に植菌後、回転数 200rpm、25℃、4 日間振とう培養した。抽出例1 Paenibacillus polymyxa BS-0105 の培養液からの抽出 300mL の培養液を同容量のブタノールで一晩振とう抽出した後、得られたブタノール抽出液をロータリーエバポレーターにて濃縮した。抽出物を酢酸エチル/蒸留水で抽出した後、今度は水層をブタノール/蒸留水で抽出し、ブタノール層を回収し、濃縮乾固した。精製例1 化合物1(Fusaricidin A)と化合物2(Fusaricidin B)の混合物の精製 粗抽出物を 4 mL のジメチルスルホキシドに溶解し、HPLC を用いてこれを精製した。HPLC 条件は次ぎの通りである。すなわち、移動相はアセトニトリル-0.1 % (v/v) TFA(35:65)、カラムは Senshu Pak PEGASIL ODS2 20×250 mmを用い、1 回の注入量 0.1 mL、カラム温度 40℃、流速:9 mL/min.の各条件下で HPLC 分取を行なった。保持時間 23 分の成分を回収し、濃縮乾固した結果、化合物1と化合物2を3:2の比率で含有する混合物を 60.7mg 得た。 化合物1(Fusaricidin A)と化合物2(Fusaricidin B)の同定 化合物1と化合物2を3:2 の比率で含有する混合物をDMSO-d6に溶解し13C-NMR測定を行なった結果、非特許文献4、5に記載のFusaricidin AとFusaricidin Bの13C-NMR測定値と一致した。表8に、化合物1(Fusaricidin A)と化合物2(Fusaricidin B)のケミカルシフトデータを示した。 精製例2 Paenibacillus sp. BS-0048、Paenibacillus sp. BS-0074、Paenibacillus sp. BS-0277 からの化合物1(Fusaricidin A)と化合物2(Fusaricidin B)の産生 菌株 BS-0048、BS-0074、BS-0105、BS-0277 を前記培養例1に準じて培養した。10mL の培養液を同容量のブタノールで一晩振とう抽出した後、得られたブタノール抽出液をロータリーエバポレーターにて濃縮した。抽出物を 1mL のジメチルスルホキシドに溶解後、LC/MS 分析を行なった(LC 及び MS 分析装置はNANOSPACE SI-2(資生堂)及び FINNIGAN LCQDUO(Thermo Quest))。HPLC 分析条件は、移動相を0.1% TFA (トリフルオロ酢酸)含有 27% アセトニトリル水溶液、カラムに CAPCELL PAK C18UG120 3μm 2.0×100 mm(資生堂)を用い、1回の注入量 3μL、カラム温度 40℃、流速:0.2 mL/min. で分離後、以下の条件で分子量測定を行なった。すなわちキャピラリー温度 245℃、キャピラリー電圧 10V、Sheath Gas Flow Rate(シースガス流量) 95arb、Aux Gas Flow Rate(オギジラリーガス流量)10arb、Spray Voltage(スプレー電圧)5kV、Electron Multiple Voltage(エレクトロン・マルチプライアー電圧)-700V の条件で測定を行なった。その結果、菌株 BS-0048、BS-0074、BS-0105、BS-0277 のいずれの培養抽出物からも、保持時間 18.5 分に分子量 883(M+H)+ の分子イオンピーク、保持時間 17.8 分に分子量 897(M+H)+ の分子イオンピークが検出された。また、精製例1の化合物1と化合物2の混合物からも、前記保持時間にそれぞれ同様の分子イオンピークが検出された。これらの結果と前記 13C-NMR測定の結果から、保持時間 18.5 分で検出された物質は Fusaricidin A、保持時間 17.8 分で検出された物質は Fusaricidin Bであることが確認された。調製例1 溶液剤の調製 化合物1と化合物2を3:2の比率で含有する混合物をジメチルスルホキシドで溶解後、蒸留水で所定濃度に希釈した。評価例1 植物病害抵抗性誘導活性の評価 Siegrist, J.ら(Physiological and Molecular Plant Pathology 53, 223-238:1998)は、植物病害抵抗性誘導活性を見るモデル実験系として、パセリ培養細胞のエリシター応答性をファイトアレキシン蛍光検出によって測定する方法を用い、植物病害抵抗性誘導物質であるアシベンゾラルSメチルのエリシター応答性向上を明らかにしている。本発明の化合物1と化合物2に関しても、Siegrist, J.らの方法に準じて、植物病害抵抗性誘導活性の評価を行なった。結果を表9に示した。 表9の結果から、化合物1と化合物2は、既存の植物病害抵抗性誘導活性物質と同様にパセリ培養細胞のエリシター応答性を向上させ、従って、植物病害抵抗性誘導活性を有することが明らかになった。評価例2 キュウリ斑点細菌病細菌に対する抗菌活性試験 化合物1と化合物2のキュウリ斑点細菌病細菌(Pseudomonas syringae pv. lachrymans)に対して直接抗菌活性を示すかを検討した。すなわち、45℃ に保温したジャガイモ半合成培地(ジャガイモ 300g と蒸留水 1L の煎汁液、硝酸カルシウム4水和物 0.5g、リン酸水素2ナトリウム12水和物 2g、ペプトン 5g、スクロース20g、粉末寒天 15g)にキュウリ斑点細菌病細菌を 1×108CFU/mLの割合で混合し、20mL ずつ滅菌シャーレに分注した。培地固化後、ジメチルスルホキシドに溶解して 100μg/mL に調整した化合物1と化合物2混合物(3:2)の 50μL を径 8mm ペーパーディスクに染み込ませた後、培地上に静置した。25℃、暗黒条件下で 48 時間培養した後にペーパーディスク周縁の阻止円の有無で活性を評価した。結果を表10に示した。 表10の結果から、化合物1と化合物2は、キュウリ斑点細菌病細菌に直接抗菌活性を示さないことが明らかとなった。評価例3 キュウリ斑点細菌病防除効果試験 プラスチックポットに園芸用培土を詰め、キュウリ(品種:四葉)を播種し、温室内で 20 日間育成した。本葉第 2 葉が展開したキュウリの幼苗に、上記調製例によって得られた製剤を 1 株あたり5 mL の割合で株元潅注処理した。25℃のガラスハウス内に 3 日間置いた後、蒸留水に懸濁したキュウリ斑点細菌病細菌(Pseudomonas syringae pv. lachrymans)の懸濁液(1×108CFU/mL)を植物体に噴霧接種した。25℃、暗黒の湿室に 24 時間保持後、7 日間、25℃ のガラスハウス内に置いて発病させた。葉の病斑数をそれぞれ計測し、その値から下記式により防除価を算出して防除効果を比較した。結果を表11に示した。 防除価={1−(処理区病斑数/無処理区病斑数)}×100 表11の結果から明らかなように、本発明の化合物1と化合物2を主成分とする製剤は、直接抗菌活性を示さないキュウリ斑点細菌病に対して、優れた防除効果を示した。評価例4 キュウリつる割病菌に対する抗菌活性試験 化合物1と化合物2のキュウリつる割病菌(Fusarium oxysporum f.sp.cucumerium)に対して直接抗菌活性を示すかを検討した。すなわち、45℃ に保温したポテト・デキストロース寒天培地(日水製薬)にキュウリつる割病菌の分生胞子を 1×107 spores/mL の割合で混合し、20mL ずつ滅菌シャーレに分注した。培地固化後、ジメチルスルホキシドに溶解して所定濃度に調整した化合物1と化合物2混合物(3:2)を 50μL ずつ径 8mm ペーパーディスクに染み込ませた後、培地上に静置した。25℃、暗黒条件下で 48 時間培養した後にペーパーディスク周縁の阻止円の有無で活性を評価した。結果を表12に示した。 表12の結果から明らかなように、化合物1と化合物2の混合物(3:2)は、濃度 30ppm と 20ppm の混合でもキュウリつる割れ病菌(Fusarium oxysporum f.sp. cucumerium)に対して抗菌活性を示さなかった。評価例5 キュウリつる割病防除効果試験 プラスチックバットに園芸用培土を詰め、キュウリ(品種:相模半白)を播種し、温室内で 12 日間育成した。子葉が展開したキュウリの幼苗に、上記調製例によって得られた製剤を 1 株あたり 1mL の割合で葉面散布処理を行なった。25℃ のガラスハウス内に 3 日間置いた後、蒸留水に懸濁したキュウリつる割病菌(Fusarium oxysporum f.sp. cucumerium)の分生胞子懸濁液(3×107spores/mL)を植物体の株元に 2mL ずつ潅注接種した。14 日間、25℃ のガラスハウス内に置いて発病させ、発病の程度から下記式により発病度を算出後、その値から下記式により防除価を算出して防除効果を比較した。結果を表13に示した。 発病度=(Σ発病指数×該当数/4×調査数)×100 発病指数0:発病なし、発病指数1:地際部に僅かな黄化、発病指数2: 地際部に目立つ褐変、発病指数3:茎にかなり目立った褐変と地上部生育 不良、発病指数4:植物体の回復不可能な萎凋と枯死 防除価={1−(処理区発病度/無処理区発病度)}×100 表13の結果から明らかなように、本発明の化合物1と化合物2を主成分とする製剤は、地上部散布処理によって土壌病害であるキュウリつる割病を防除した。直接抗菌活性を示さない濃度である、化合物1の 12ppm と化合物2の 8ppm の混合処理において優れた防除効果を示した。精製例3 化合物1(Fusaricidin A)ならびに化合物2(Fusaricidin B)の分離精製化合物1と化合物2の混合物 133.7 mg を3 mL のジメチルスルホキシドに溶解し、HPLCを用いてこれを精製した。HPLC 条件は次のとおりである。すなわち、移動相はアセトニトリル-0.1 % (v/v) TFA(29:71)、カラムは Shiseido CAPCELL PAK C18 SG120 5μm 4.6×250 mmを用い、1 回の注入量 0.25 mL、カラム温度 40℃、流速:1 mL/min.の各条件下で HPLC 分取を行なった。保持時間 20 分から 35 分までの溶出液を30 秒ごとに回収し、各画分を LC/MS にて分析した。HPLC 分析条件は以下である。すなわち、移動相は 0.1% TFA 含有アセトニトリル-0.1 % (v/v) TFA(27:73)、カラムは Shiseido CAPCELL PAK C18 UG120 3μm 2.0×100 mm を用い、1 回の注入量 0.01 mL、カラム温度 40℃、流速:0.2 mL/min.で分離後、以下の条件で分子量測定を行なった。すなわちキャピラリー温度 245℃、キャピラリー電流 10V、Sheath Gas Flow Rate(シースガス流量)95arb、Aux Gas Flow Rate(オギジラリーガス流量)10rab、Spray Voltage(スプレー電圧)5kV、Electron Multiple Voltage(エレクトロン・マルチプライア-電圧)-700の条件で測定を行なった。 化合物1が含まれる画分をまとめ濃縮乾固した結果、化合物1を 44.7 mg 得た。また化合物2が含まれる画分をまとめ濃縮乾固した結果、化合物2を24.8 mg得た。評価例6 化合物1ならびに化合物2のそれぞれの植物病害抵抗性誘導活性の評価 上記の精製例3で分離精製された化合物1ならびに化合物2のそれぞれについて、評価例1にて実施したパセリ培養細胞のエリシター応答性をファイトアレキシン蛍光検出によって測定する方法により、同様にして化合物1と化合物2のそれぞれについて植物病害抵抗性誘導活性の評価を行なった。結果を表14に示した。 表14の結果から、化合物1ならびに化合物2のそれぞれは、既存の植物病害抵抗性誘導活性物質と同様にパセリ培養細胞のエリシター応答性を向上させ、従って、植物病害抵抗性誘導活性を有することが明らかになった。培養例2 Paenibacillus polymyxa BS-0105 の培養 本発明の菌株 BS-0105 の凍結保存菌液の 100uL を 100mL の YPMG 培地(D−グルコース 10g、肉エキス 1g 、酵母エキス 3g、ペプトン 5g 、蒸留水 1L、pH 7.0 とする) を含む 400mL 容フラスコに植菌後、回転数 210rpm、25℃ で 1 日間培養した。前述の前培養により得られた培養物 200mL を 20L の生産培地(D−グルコース 200g、スターチ 600g、硫安 50g、大豆粉 50g、リン酸ニ水素カリウム 10g、塩化ナトリウム 5g、硫酸マグネシウム 5g、炭酸カルシウム 120g)を含むジャーファーメンターに移植後、回転数 400rpm、25℃、通気量 10L/min で 3 日間培養した。抽出例2 化合物3および化合物4の抽出 上記培養例2で得られた培養液 5L に、イソプロピルアルコール 5L、1mol/L 塩化カルシウム 1L を加え、これをろ過して約 10L の抽出液を得た。本抽出液の 5L をロータリーエバポレーターで 500mL まで濃縮し、これをブタノール 500mL で抽出後、ブタノール層を 200mL の蒸留水で 3 回抽出して 600mL の水層を得た。この水層をロータリーエバポレーターで濃縮し、得られた水層をオクタデシルシリカゲルカラムに供した。カラムを水洗し、10〜25% アセトニトリル水で溶出した。これを濃縮して粗抽出物を得た。精製例4 化合物3および化合物4の分離精製 上記抽出例2で得られた粗抽出物を 4 mL の 50% メタノールに溶解し、HPLC を用いてこれを精製した。HPLC 条件は次ぎの通りである。すなわち、移動相はアセトニトリル:0.1 % (v/v) TFA(32:68)、カラムは Inertsil ODS 20×250 mm を用い、1 回の注入量 1.5 mL、カラム温度 30℃、流速:10 mL/min. の各条件下で HPLC 分取を行なった。各画分を LC/MS(移動相:0.1%TFA 含有アセトニトリル‐0.1%(v/v)TFA(27:73)、カラム:Shiseido CAPCELL PAK C18 UG120 3μm 2.0×100mm)にて分析し、954m/z[M+H]+および968m/z[M+H]+のピークを含む画分をまとめ、これを濃縮乾固して化合物3を14mg、および化合物4を3.1mg得た。化合物3の理化学的性質分子量:954.16分子式:C44H79N11O12溶解性:メタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシドに易溶、酢酸エチル、クロロホルム、ヘキサンに不溶酸加水分解:6 規定塩酸で、110℃、24 時間加水分解させたとき、アスパラギン酸、バリン、スレオニン、アロスレオニン、アラニンを1:2:1:1:2のモル比であたえる。プロトン核磁気共鳴スペクトル:図1に示す。C-13核磁気共鳴スペクトル:表15に示す。 上記の理化学的性状及びスペクトル解析の結果から、新規化合物3の化学構造を下記のように同定した。化合物4の理化学的性質分子量:968.19分子式:C45H81N11O12溶解性:メタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシドに易溶、酢酸エチル、クロロホルム、ヘキサンに不溶酸加水分解:6 規定塩酸で、110℃、24 時間加水分解させたとき、グルタミン酸、バリン、スレオニン、アロスレオニン、アラニンを 1:2:1:1:2 のモル比であたえる。プロトン核磁気共鳴スペクトル(DMSO-d6):図2に示す。C-13核磁気共鳴スペクトル(DMSO-d6):表15に示す。 上記の理化学的性状及びスペクトル解析の結果から、新規化合物4の化学構造を下記のように同定した。評価例7 化合物3ならびに化合物4のそれぞれの植物病害抵抗性誘導活性の評価 上記の精製例4で分離精製された化合物3ならびに化合物4のそれぞれについて、評価例1にて実施したパセリ培養細胞のエリシター応答性をファイトアレキシン蛍光検出によって測定する方法により、同様にして化合物3と化合物4のそれぞれについて植物病害抵抗性誘導活性の評価を行なった。結果を表16に示した。 表16の結果から、化合物3と化合物4は、既存の植物病害抵抗性誘導活性物質と同様にパセリ培養細胞のエリシター活性を向上させ、従って、植物病害抵抗性誘導活性を有することが明らかとなった。 以上に詳細に記載した通り、本発明の Paenibacillus 属菌、例えば、新規な Paenibacillus sp. BS-0048、Paenibacillus sp. BS-0074、Paenibacillus polymyxa BS-0105、Paenibacillus sp. BS-0277 は、各植物病害防除に優れた効果を有し、防除剤として有用である。また、こられの Paenibacillus 属菌および公知の物質である化合物1(Fusaricidin A)と化合物2(Fusaricidin B)、あるいは新規な化合物3および化合物4は、植物害病抵抗性誘導活性を有することが明らかとなり、従来防除できないとされていた植物病害に対しても防除効果を示すことが明らかとなった。更には、これらの Paneibacillus 属菌および化合物は、植物害病抵抗性誘導活性を有することから、植物病原体の感染から植物体を防御できることが明らかとなった。 新規なPaenibacillus polymyxa BS-0105(受託番号:FERM P-20087)である、Paenibacillus属菌。 請求項1に記載のPaenibacillus属菌を含有する植物病害防除剤。