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タイトル:特許公報(B2)_人工皮膚の製造方法
出願番号:2006531157
年次:2011
IPC分類:A61L 27/00,C12M 3/00


特許情報キャッシュ

平 嗣良 JP 4674211 特許公報(B2) 20110128 2006531157 20040824 人工皮膚の製造方法 グンゼ株式会社 000001339 特許業務法人 安富国際特許事務所 110000914 安富 康男 100086586 諸田 勝保 100119529 平 嗣良 20110420 A61L 27/00 20060101AFI20110331BHJP C12M 3/00 20060101ALI20110331BHJP JPA61L27/00 CC12M3/00 A A61L 27/00 特開2004−194944(JP,A) 特表2003−534858(JP,A) 特開2002−143290(JP,A) 特開平04−108444(JP,A) 5 JP2004012125 20040824 WO2006021992 20060302 12 20070802 松波 由美子本発明は、簡略化された工程で、高い歩留りが得られるコラーゲンスポンジの製造方法及び人工皮膚の製造方法、並びに、上記コラーゲンスポンジの製造方法により製造されたコラーゲンスポンジを有する人工皮膚及び細胞組織培養基材に関する。コラーゲンスポンジを人工皮膚として熱傷等の患部に埋植すると、その多孔質の構造により線維芽細胞の増殖に適した無数の孔(空間)を提供し、線維芽細胞の増殖を助けることで患部の治癒を促進する作用を有することが知られている。更に、このようなコラーゲンスポンジにシリコーンフィルム等からなる水分透過調節層を積層したものは、患部からの水分の蒸散や微生物等の浸入等を抑制できることから、優れた人工皮膚として用いられている。このような人工皮膚としては、例えば、特許文献1には、水分透過性高分子物質の薄膜からなる水分透過調節層に、生体吸収性高分子物質の繊維材料から形成される中間層を介して、多数の微細小孔を有するコラーゲンスポンジ層が積層されている人工皮膚が開示されている。また、このような人工皮膚の製造方法として、特許文献2には、親水性有機溶剤の水溶液にて湿潤した後凍結乾燥処理するコラーゲンスポンジの乾燥法が、特許文献3には、コラーゲン溶液に脂溶性有機溶媒を添加し、ホモジナイズして発泡させるコラーゲンスポンジの製造方法が開示されている。これまでに公開されている、コラーゲンスポンジを製造する方法、又は、水分透過性高分子物質の薄膜からなる水分透過調節層とコラーゲンスポンジ層とを有する人工皮膚を製造する方法としては、例えば、非特許文献1に開示されているものが挙げられる。その概略を図1及び図2に示す。図1のコラーゲンスポンジの製造方法は、コラーゲン溶液のpHや濃度の調整を行うコラーゲン希釈溶液調製工程と、コラーゲンを発泡させてから凍結乾燥する1次コラーゲンスポンジ製造工程と、未架橋コラーゲンスポンジをグルタルアルデヒド(GA)で架橋するGA架橋工程と、架橋コラーゲンスポンジを凍結乾燥する2次コラーゲンスポンジ製造工程とからなる。また、図2の人工皮膚の製造方法は、コラーゲン溶液のpHや濃度の調整を行うコラーゲン希釈溶液調製工程と、コラーゲンを発泡させてから凍結乾燥する1次コラーゲンスポンジ製造工程と、未架橋コラーゲンスポンジの表面にシリコーン等の水分透過調節層を積層する製膜工程と、未架橋コラーゲンスポンジをグルタルアルデヒド(GA)で架橋するGA架橋工程と、架橋コラーゲンスポンジを凍結乾燥する2次コラーゲンスポンジ製造工程とからなる。しかし、このような従来のコラーゲンスポンジの製造方法又は人工皮膚の製造方法は、工程が煩雑であるうえ、最終的に得られたコラーゲンスポンジや、人工皮膚のコラーゲンスポンジ層の表面にひびや割れが生じたり、人工皮膚の水分透過調節層に皺がよったりする不良品が生じ、歩留りが低下することがあるという問題があった。特許第2987464号公報特公平7−100号公報特許第2997823号公報Biomaterials 14,1030(1993)本発明は、上記現状に鑑み、簡略化された工程で、高い歩留りが得られるコラーゲンスポンジの製造方法及び人工皮膚の製造方法、並びに、上記コラーゲンスポンジの製造方法により製造されたコラーゲンスポンジを有する人工皮膚及び細胞組織培養基材を提供することを目的とする。本発明は、少なくとも、水分透過性高分子物質の薄膜からなる水分透過調節層とコラーゲンスポンジ層とを有する人工皮膚を製造する方法であって、コラーゲン希釈溶液を調製する工程、得られたコラーゲン希釈溶液を用いて架橋コラーゲンスポンジを調製する工程、及び、得られた架橋コラーゲンスポンジ上に前記水分透過調節層を積層する工程を有することを特徴とする人工皮膚の製造方法である。以下に本発明を詳述する。本発明のコラーゲンスポンジの製造方法では、酢酸を用いてpHを調整したコラーゲン希釈溶液を用いる(以下、コラーゲン希釈溶液調製方法の改良ともいう)。コラーゲンスポンジの原料となるコラーゲンとしては、コラーゲンの末端を酵素的に処理して抗原性をなくしたものを用いることが好ましい。このようなコラーゲンとしては、従来公知のコラーゲンスポンジの原料が広く使用でき、例えば、酸可溶性コラーゲン、中性塩可溶性コラーゲン、酵素可溶化コラーゲン等の可溶性コラーゲン;天然の又は化学修飾されたコラーゲン繊維;可溶性コラーゲンを不溶化した再生コラーゲン繊維等を用いることができる。上記コラーゲンスポンジの原料となるコラーゲンは、酸を用いて溶液のpHを3程度に調整することにより可溶化してコラーゲン希釈溶液として用いている。従来のコラーゲンスポンジの製造方法では、pHの調整には塩酸が用いられていた。コラーゲン希釈溶液調製方法の改良に関する本発明のコラーゲンスポンジの製造方法では、酢酸を用いてpHの調整を行うことにより、最終的に得られるコラーゲンスポンジのひびや割れの発生を抑制し、歩留りを向上することができる。なお、酢酸だけでは酢酸の使用量が多すぎ、酢酸の濃度が高くなりすぎる場合には、塩酸等を併用してもかまわない。この理由については明らかではないが、酢酸によりpHを調整した場合には、発泡操作を省略してそのまま凍結して凍結乾燥しても均一な孔径のコラーゲンスポンジが得られることから、酢酸を用いれば得られるコラーゲンスポンジの孔径が均一化されることにより機械的物性が向上して、ひびや割れの発生を抑制することができるためと考えられる。また、上述のようにコラーゲン希釈溶液調製方法の改良に関する本発明のコラーゲンスポンジの製造方法では、発泡操作を省略しても均一な孔径のコラーゲンスポンジが得られることから、工程を簡略化することができる。図3にコラーゲン希釈溶液調製方法の改良に関する本発明のコラーゲンスポンジの製造方法の一例の概略を示した。図3では、コラーゲン希釈溶液調製方法の改良に関する特徴部分以外は従来のコラーゲンスポンジの製造方法を記しているが、必要に応じて本明細書に記載する他の本発明のコラーゲンスポンジの製造方法を組み合わせてもよい。本発明のコラーゲンスポンジの製造方法は、未架橋のコラーゲンスポンジをグルタルアルデヒド揮発ガス中で架橋する工程を有する(以下、気相架橋法についての改良ともいう)。従来のコラーゲンスポンジの製造方法では、グルタルアルデヒド水溶液中に未架橋のコラーゲンスポンジを浸漬し、一定時間放置することによりGA架橋を施していた。この場合、グルタルアルデヒドは一般に毒性が高いことから、臨床用途に使用するためには充分に残留グルタルアルデヒドを除去する必要がある。しかし、親水性の高いコラーゲンスポンジからグルタルアルデヒドを完全に除去するのは困難であり、従来は蒸留水等を用いて何度も洗浄することを行っていたが、操作が煩雑であるうえ、水洗の際に軟弱なコラーゲンスポンジが損傷して、最終的に得られるコラーゲンスポンジのひびや割れの原因ともなっていた。本発明者らは、グルタルアルデヒドが揮発性を有することに着目し、アルデヒドが揮発したグルタルアルデヒド揮発ガス中でコラーゲンスポンジの架橋を行うことにより、又は、真空加熱処理を行うことにより、残留グルタルアルデヒドの除去を目的とする洗浄操作を省略でき、コラーゲンスポンジのひびや割れによる歩留りの低下を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。上記グルタルアルデヒド揮発ガス中でコラーゲンスポンジを架橋させる方法としては特に限定されないが、例えば、密封した容器内にグルタルアルデヒド水溶液と、該グルタルアルデヒド水溶液に直接接触しないように未架橋コラーゲンスポンジを置き、一定時間放置する方法等が挙げられる。この場合、上記グルタルアルデヒド水溶液の濃度の好ましい下限は1mM、好ましい上限は2.5Mである。1mM未満であると、気相中のグルタルアルデヒド濃度が低く、架橋できなかったり架橋に長時間を要したりすることがあり、2.5Mを超えると、溶液の取り扱いが困難になったりすることがある。また、気相架橋法についての改良に関する本発明のコラーゲンスポンジの製造方法によれば、乾燥状態のコラーゲンスポンジを直接グルタルアルデヒド架橋できることから、従来のコラーゲンスポンジの製造方法のように、液相でグルタルアルデヒド架橋した後、再度凍結乾燥して2次コラーゲンスポンジとする必要もなく、大幅に工程を簡略化できる。図4に気相架橋法についての改良に関する本発明のコラーゲンスポンジの製造方法の一例の概略を示した。図4では、気相架橋法についての改良に関する特徴部分以外は従来のコラーゲンスポンジの製造方法を記しているが、必要に応じて本明細書に記載する他の本発明のコラーゲンスポンジの製造方法を組み合わせてもよい。本発明のコラーゲンスポンジの製造方法は、コラーゲン希釈溶液にグルタルアルデヒドを添加し、凍結乾燥して架橋コラーゲンスポンジを調製する工程を有する(以下、溶液架橋法についての改良ともいう)。図1に示したように、従来のコラーゲンスポンジの製造方法では、1次コラーゲンスポンジ上に水分透過調節層を積層してからグルタルアルデヒド架橋を行っていた。しかしこの方法では、上述のように煩雑な残留グルタルアルデヒド除去操作を要し、またこの操作により歩留りが低下していた。本発明者らは、鋭意検討の結果、コラーゲン希釈溶液を凍結し真空乾燥してコラーゲンスポンジを作製する際に、予め上記コラーゲン希釈溶液にグルタルアルデヒドを添加しておくことにより、架橋されたコラーゲンスポンジが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。従来、水溶液中のコラーゲン濃度は低いために、コラーゲン希釈溶液中にグルタルアルデヒドを直接添加しても架橋は形成されないと考えられていた。しかし、グルタルアルデヒドを添加したコラーゲン希釈溶液を凍結乾燥する場合には、凍結乾燥の過程において溶液が濃縮されコラーゲン濃度が高まることから、架橋が形成されるものと考えられる。また、グルタルアルデヒドは揮発性を有し、凍結乾燥の過程において気散することから、得られた架橋コラーゲンスポンジ中にグルタルアルデヒドが残留することもない。また、従来のコラーゲンスポンジの製造方法のように、いったん製造した未架橋のコラーゲンスポンジを液相でグルタルアルデヒド架橋した後、再度凍結乾燥して2次コラーゲンスポンジとする必要もなく、大幅に工程を簡略化できる。更に、理由は定かではないが、溶液架橋法についての改良に関する本発明のコラーゲンスポンジの製造方法により得られたコラーゲンスポンジは、従来の方法により製造したコラーゲンスポンジに比べ吸水性に優れ、また、細胞接着性にも優れる。従って、溶液架橋法についての改良に関する本発明のコラーゲンスポンジの製造方法により製造したコラーゲンスポンジを用いれば、線維芽細胞の浸入性がよく治癒が促進される他、皮膚、骨、血管、神経等の再生医療等において、このコラーゲンスポンジを細胞播種の足場とした場合にも、細胞の接着に極めて優れ有用である。溶液架橋法についての改良に関する本発明のコラーゲンスポンジの製造方法において、コラーゲン希釈溶液に添加するグルタルアルデヒドの濃度の好ましい下限は0.01mM、好ましい上限は1Mである。0.01mM未満であると、充分な架橋を形成できないことがあり、1Mを超えると、高架橋になりすぎてコラーゲンスポンジ層の親水性が低下して線維芽細胞の浸入性が低下し治癒が遅くなることがある。図5に溶液架橋法についての改良に関する本発明のコラーゲンスポンジの製造方法の一例の概略を示した。図5では、溶液架橋法についての改良に関する特徴部分以外は従来のコラーゲンスポンジの製造方法を記しているが、必要に応じて本明細書に記載する他の本発明のコラーゲンスポンジの製造方法を組み合わせてもよい。本発明のコラーゲンスポンジの製造方法により製造されたコラーゲンスポンジは、微細な多数の小孔を有するものであって、その孔径の好ましい下限は5μm、好ましい上限は1000μmである。5μm未満であると、線維芽細胞が浸入しにくく治癒が遅れることがあり、1000μmを超えると、コラーゲンスポンジの強度が不足したり、かえって治癒に時間がかかったりすることがある。より好ましい下限は50μm、より好ましい上限は130μmである。本発明のコラーゲンスポンジの製造方法により製造されたコラーゲンスポンジは、細胞を播種して組織を構築する、いわゆる再生医療に供するための細胞組織培養基材として好適に用いることができる。本発明のコラーゲンスポンジの製造方法により製造されたコラーゲンスポンジを用いてなる細胞組織培養基材もまた、本発明の1つである。本発明の細胞組織培養基材は、更に、強度を補ったり、また、再生すべき組織の形状に整えたりする目的で補強材を有することが好ましい。上記補強材としては特に限定されないが、例えば、生体吸収性高分子物質の繊維材料等が挙げられる。上記生体吸収性高分子物質としては、例えば、グリコール酸、乳酸、ジオキサノン、カプロラクトン等の単独又は共重合体等を挙げることができる。また、上記繊維材料には、例えば、高分子物質の1種又は2種以上をたとえば紡糸した糸条等を編成、織成、交編織成、不織布化等したりスライバーや短繊維材料をシート化したりして得られる編物、織物、不織布その他のシート状繊維材料が包含される。上記補強材による補強の方法としては特に限定されず、例えば、コラーゲンスポンジの片面又は両面に積層してもよく、コラーゲンスポンジを製造する際に、コラーゲンスポンジ中に補強材が形成されるようにしてもよい。本発明のコラーゲンスポンジの製造方法により製造されたコラーゲンスポンジは、水分透過性高分子物質の薄膜からなる水分透過調節層を積層することにより、人工皮膚として好適に用いることができる。本発明のコラーゲンスポンジの製造方法により製造されたコラーゲンスポンジと、水分透過性高分子物質の薄膜からなる水分透過調節層とを有する人工皮膚もまた、本発明の1つである。上記水分透過調節層としては、例えば、シリコーン、ポリウレタン、ポリアクリレートエステル、ポリメタクリレートエステル等の水分透過性高分子物質の薄膜からなるものが挙げられる。なかでも、製膜性や生体適合性に優れることからシリコーンが好適である。上記水分透過調節層は、水分透過性の好ましい下限が0.1mg/hr・cm2、好ましい上限が2mg/hr・cm2である。0.1mg/hr・cm2未満であると、患部に水分が滞留して治癒が遅くなることがあり、2mg/hr・cm2を超えると、患部からの水分の蒸散が大きすぎて患者の負担が大きくなることがある。より好ましい下限は0.9mg/hr・cm2、より好ましい上限は1.7mg/hr・cm2である。上記水分透過調節層の厚さとしては、材質ごとに上述の水分透過性を実現できる厚さに適宜調整され特に限定されない。例えばシリコーンからなる場合の好ましい下限は12.5μm、好ましい上限は200μmであり、より好ましい下限は25μm、より好ましい上限は100μmであり、更に好ましい上限は50μmである。上記人工皮膚は、その片面又は上記水分透過調節層とコラーゲンスポンジ層との中間に、補強材として生体吸収性高分子物質の繊維材料から形成される中間層を有していてもよい。上記生体吸収性高分子物質としては、例えば、グリコール酸、乳酸、ジオキサノン、カプロラクトン等の単独又は共重合体等を挙げることができる。また、上記繊維材料には、例えば、高分子物質の1種又は2種以上をたとえば紡糸した糸条等を編成、織成、交編織成、不織布化等したりスライバーや短繊維材料をシート化したりして得られる編物、織物、不織布その他のシート状繊維材料が包含される。本発明は、少なくとも、水分透過性高分子物質の薄膜からなる水分透過調節層とコラーゲンスポンジ層とを有する人工皮膚の製造方法である。上記コラーゲンスポンジ層の原料となるコラーゲンとしては、コラーゲンの末端を酵素的に処理して抗原性をなくしたものを用いることが好ましい。このようなコラーゲンとしては、従来公知のコラーゲンスポンジの原料が広く使用でき、例えば、酸可溶性コラーゲン、中性塩可溶性コラーゲン、酵素可溶化コラーゲン等の可溶性コラーゲン;天然の又は化学修飾されたコラーゲン繊維;可溶性コラーゲンを不溶化した再生コラーゲン繊維等を用いることができる。上記コラーゲンスポンジ層は、微細な多数の小孔を有するものであって、その孔径の好ましい下限は5μm、好ましい上限は1000μmである。5μm未満であると、線維芽細胞が浸入しにくく治癒が遅れることがあり、1000μmを超えると、人工皮膚の強度が不足したり、かえって治癒に時間がかかったりすることがある。より好ましい下限は50μm、より好ましい上限は130μmである。上記コラーゲンスポンジ層の厚さとしては1mm以上であることが好ましい。1mm未満であると、重度の熱傷には適用できないことがある。より好ましい下限は2mm、好ましい上限は4mmである。上記水分透過調節層としては、上述した本発明の人工皮膚を構成する水分透過調節層と同様のものを用いることができ、その水分透過性、厚さについても本発明の人工皮膚を構成する水分透過調節層と同様である。また、上記人工皮膚は、その片面又は上記水分透過調節層とコラーゲンスポンジ層との中間に、補強材として生体吸収性高分子物質の繊維材料から形成される中間層を有していてもよい。上記生体吸収性高分子物質としては、上述した本発明の細胞組織培養基材に用いられる生体吸収性高分子物質と同様のものを使用することができる。このような人工皮膚は、図2に示した従来の人工皮膚の製造方法により製造できるが、本発明者らは、鋭意検討した結果、製造方法の改良によりコラーゲン層のひびや割れ、水分透過調節層の皺等による不良品の発生を抑制して高い歩留りを実現し、また、工程を簡略化できることを見出した。本発明の人工皮膚の製造方法では、未架橋コラーゲンスポンジにグルタルアルデヒド架橋処理を加え、凍結乾燥して架橋コラーゲンスポンジを調製した後、架橋コラーゲンスポンジ上に水分透過調節層を積層する(以下、工程の改良ともいう)。図2に示したように、従来の人工皮膚の製造方法では、製膜工程を行ってからGA架橋工程を行い、凍結乾燥して2次コラーゲンスポンジを製造していた。これは、未架橋コラーゲンスポンジ上に予め高強度の水分透過調節層を製膜しておくことにより、GA架橋やGA架橋後の洗浄において軟弱なコラーゲンスポンジが破損するのを防ぐためであった。しかしながら、本発明者らが検討したところ、GA架橋から洗浄、凍結乾燥の工程を通じてコラーゲンスポンジの収縮が起こることから、予め製膜してコラーゲンスポンジを固定してしまうと、この収縮に耐えきれずにスポンジにひびや割れが入ったり、水分透過調節層に皺が入ったりすることがわかった。工程の改良に関する本発明の人工皮膚の製造方法では、製膜を施していない未架橋のコラーゲンスポンジをグルタルアルデヒド架橋し、凍結乾燥してから後、水分透過調節層を積層することにより、コラーゲンスポンジは収縮する際には固定されていないので、スポンジの収縮によるスポンジのひびや割れ、水分透過調節層の皺の発生を抑制することができる。図6に工程の改良に関する本発明の人工皮膚の製造方法の一例の概略を示した。図6では、工程の改良に関する特徴部分以外は従来の人工皮膚の製造方法を記しているが、必要に応じて本明細書に記載する他の本発明の人工皮膚の製造方法を組み合わせてもよい。本発明によれば、簡略化された工程で、高い歩留りが得られるコラーゲンスポンジの製造方法、人工皮膚の製造方法、及び、上記コラーゲンスポンジの製造方法により製造されたコラーゲンスポンジを有する人工皮膚及び細胞組織培養基材を提供できる。以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。(実施例1)コラーゲン溶液(新田ゼラチン社製、「アテロコラーゲン」)を原料とし、精製水、5N−酢酸及び1N−塩酸を用いて濃度3mg/mL、pH 3.0のコラーゲン希釈溶液を調製した。得られたコラーゲン希釈溶液50gを凍結乾燥用のステンレス製枠(11cm×8.5cm)内に流し込んだ。ステンレス製枠を−40℃に冷却してコラーゲン発泡液を凍結し、真空減圧下(0.01mmHg)30℃で24時間凍結乾燥を行った。更に真空減圧下(0.01mmHg)105℃で24時間加熱乾燥を行い、1次コラーゲンスポンジを得た。次いで、0.2重量%のグルタルアルデヒド/酢酸溶液中、5℃で24時間架橋反応を行った。得られた架橋コラーゲンスポンジをイオン交換水で充分洗浄した後、15%エタノール水溶液で置換した。その後、−110℃で凍結し、真空減圧下(0.01mmHg)30℃で24時間凍結乾燥を行い、コラーゲンスポンジを得た。得られたコラーゲンスポンジに厚さ100μmのシリコーン膜を貼付、乾燥し、コラーゲンスポンジ層上にシリコーン膜が積層した人工皮膚を得た。(実施例2)コラーゲン溶液(新田ゼラチン社製、「アテロコラーゲン」)を原料とし、精製水、5N−酢酸及び1N−塩酸を用いて濃度3mg/mL、pH 3.0のコラーゲン希釈溶液を調製した。得られたコラーゲン希釈溶液50gにクロロホルム0.5gを添加した。得られたクリーム状の発泡液を凍結乾燥用のステンレス製枠(11cm×8.5cm)内に流し込んだ。ステンレス製枠を−40℃に冷却してコラーゲン発泡液を凍結し、真空減圧下(0.01mmHg)30℃で24時間凍結乾燥を行い、コラーゲンスポンジを得た。得られたコラーゲンスポンジを体積8,000mLの密閉容器中に入れ、別に調製した2重量%のグルタルアルデヒド/酢酸溶液50mLをコラーゲンスポンジに直接触れないように加えた。この密閉容器を40℃、3時間静置してコラーゲンスポンジを架橋し、架橋コラーゲンスポンジを得た。得られた架橋コラーゲンスポンジに、更に真空減圧下(0.01mmHg)105℃で24時間加熱乾燥を行い、厚さ100μmのシリコーン膜を貼付してコラーゲンスポンジ層上にシリコーン膜が積層した人工皮膚を得た。(実施例3)コラーゲン溶液(新田ゼラチン社製、「アテロコラーゲン」)を原料とし、精製水、5N−酢酸及び1N−塩酸を用いてコラーゲン濃度3mg/mL、pH 3.0に調整した後、更に、最終のグルタルアルデヒド濃度が0.05mMになるようにグルタルアルデヒドを添加した。得られたグルタルアルデヒド含有コラーゲン希釈溶液50gを凍結乾燥用のステンレス製枠(11cm×8.5cm)内に流し込んだ。ステンレス製枠を−40℃に冷却してコラーゲン発泡液を凍結し、真空減圧下(0.01mmHg)30℃で24時間凍結乾燥を行った。更に真空減圧下(0.01mmHg)105℃で24時間加熱乾燥を行い、架橋コラーゲンスポンジを得た。得られた架橋コラーゲンスポンジに厚さ100μmのシリコーン膜を貼付し、乾燥してコラーゲンスポンジ層上にシリコーン膜が積層した人工皮膚を得た。(実施例4)コラーゲン溶液(新田ゼラチン社製、「アテロコラーゲン」)を原料とし、精製水及び1N−塩酸を用いて濃度3mg/mL、pH 3.0のコラーゲン希釈溶液を調製した。得られたコラーゲン希釈溶液50gにクロロホルム0.5gを添加し、ホモジナイザー(日本精機社製、「エクセルオートホモジナイザー」)を用い、6000rpmで1分間ホモジナイズした。得られた発泡液を凍結乾燥用のステンレス製枠(11cm×8.5cm)内に流し込んだ。ステンレス製枠を−40℃に冷却してコラーゲン発泡液を凍結し、真空減圧下(0.01mmHg)30℃で24時間凍結乾燥を行った。更に真空減圧下(0.01mmHg)105℃で24時間加熱乾燥を行い、1次コラーゲンスポンジを得た。得られた1次コラーゲンスポンジを0.2重量%のグルタルアルデヒド/酢酸溶液中に浸漬し、5℃で24時間架橋反応を行った。得られた架橋コラーゲンスポンジをイオン交換水で充分洗浄した後、15%エタノール水溶液で置換した。−110℃で凍結し、真空減圧下(0.01mmHg)30℃で24時間凍結乾燥して2次コラーゲンスポンジを作製し、この2次コラーゲンスポンジに厚さ100μmのシリコーン膜を貼付してコラーゲンスポンジ層上にシリコーン膜が積層し、乾燥して人工皮膚を得た。(比較例1)コラーゲン溶液(新田ゼラチン社製、「アテロコラーゲン」)を原料とし、精製水及び1N−塩酸を用いて濃度3mg/mL、pH 3.0のコラーゲン希釈溶液を調製した。得られたコラーゲン希釈溶液50gにクロロホルム0.5gを添加し、ホモジナイザー(日本精機社製、「エクセルオートホモジナイザー」)を用い、6000rpmで1分間ホモジナイズした。得られたクリーム状の発泡液を凍結乾燥用のステンレス製枠(11cm×8.5cm)内に流し込んだ。ステンレス製枠を−40℃に冷却してコラーゲン発泡液を凍結し、真空減圧下(0.01mmHg)30℃で24時間凍結乾燥を行った。更に真空減圧下(0.01mmHg)105℃で24時間加熱乾燥を行い、1次コラーゲンスポンジを得た。得られた1次コラーゲンスポンジに厚さ100μmのシリコーン膜を貼付し、乾燥した。次いで、0.2重量%のグルタルアルデヒド/酢酸溶液中、5℃で24時間架橋反応を行った。得られた架橋コラーゲンスポンジをイオン交換水で充分洗浄した後、15%エタノール水溶液で置換した。−80℃で凍結し、真空減圧下(0.01mmHg)30℃で24時間凍結乾燥を行いコラーゲンスポンジ層上にシリコーン膜が積層した人工皮膚を得た。(評価)実施例1〜4及び比較例1で作製した人工皮膚各々100枚について、コラーゲンスポンジ層のひび、シリコーン膜の剥がれ、及び、シリコーン膜の皺があるものを目視にて調べ、不良品を除いた後の歩留りを求めた。なお、歩留りの算出に際しては、コラーゲンスポンジ層のひびと、シリコーン膜の剥がれ、シリコーン膜の皺とは重複して生じているものも1枚として計測した。本発明によれば、簡略化された工程で、高い歩留りが得られるコラーゲンスポンジの製造方法、人工皮膚の製造方法、及び、上記コラーゲンスポンジの製造方法により製造されたコラーゲンスポンジを有する人工皮膚及び細胞組織培養基材を提供できる。従来のコラーゲンスポンジの製造方法の一例を示す概略図である。従来の人工皮膚の製造方法の一例を示す概略図である。コラーゲン希釈溶液調製方法の改良に関する本発明のコラーゲンスポンジの製造方法の一例を示す概略図である。気相架橋法についての改良に関する本発明のコラーゲンスポンジの製造方法の一例を示す概略図である。溶液架橋法についての改良に関する本発明のコラーゲンスポンジの製造方法の一例を示す概略図である。工程の改良に関する本発明の人工皮膚の製造方法の一例を示す概略図である。 少なくとも、水分透過性高分子物質の薄膜からなる水分透過調節層とコラーゲンスポンジ層とを有する人工皮膚を製造する方法であって、コラーゲン希釈溶液を調製する工程、得られたコラーゲン希釈溶液を用いて架橋コラーゲンスポンジを調製する工程、及び、得られた架橋コラーゲンスポンジ上に前記水分透過調節層を積層する工程を有することを特徴とする人工皮膚の製造方法。 得られたコラーゲン希釈溶液を用いて架橋コラーゲンスポンジを調製する工程は、前記コラーゲン希釈溶液にグルタルアルデヒドを添加し、得られたコラーゲン希釈溶液を凍結乾燥して架橋コラーゲンスポンジを調製する工程を有する請求項1記載の人工皮膚の製造方法。 得られたコラーゲン希釈溶液を用いて架橋コラーゲンスポンジを調製する工程は、前記コラーゲン希釈溶液を凍結乾燥して未架橋コラーゲンスポンジを調製した後、前記未架橋コラーゲンスポンジをグルタルアルデヒド揮発ガス中で架橋する工程を有する請求項1記載の人工皮膚の製造方法。 得られたコラーゲン希釈溶液を用いて架橋コラーゲンスポンジを調製する工程は、前記コラーゲン希釈溶液を凍結乾燥して未架橋コラーゲンスポンジを調製した後、前記未架橋コラーゲンスポンジをグルタルアルデヒド/酢酸溶液中で架橋する工程を有する請求項1記載の人工皮膚の製造方法。 コラーゲン希釈溶液を調製する工程は、酢酸を用いて前記コラーゲン希釈溶液のpHを調整する工程を有する請求項1、2、3又は4記載の人工皮膚の製造方法。


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