タイトル: | 公表特許公報(A)_リソソーム蓄積症において欠損しているリソソームプロ酵素の持続的分泌のための遺伝子改変体細胞 |
出願番号: | 2006524079 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C12N 5/10,C12N 5/06,C12N 15/09,A61K 35/12,A61P 25/00,A61K 48/00 |
ラマスワミ マーニ JP 2007514403 公表特許公報(A) 20070607 2006524079 20040820 リソソーム蓄積症において欠損しているリソソームプロ酵素の持続的分泌のための遺伝子改変体細胞 キュー セラピューティクス インコーポレイティッド 506060177 清水 初志 100102978 新見 浩一 100128048 ラマスワミ マーニ US 60/496,830 20030821 C12N 5/10 20060101AFI20070511BHJP C12N 5/06 20060101ALI20070511BHJP C12N 15/09 20060101ALI20070511BHJP A61K 35/12 20060101ALI20070511BHJP A61P 25/00 20060101ALI20070511BHJP A61K 48/00 20060101ALI20070511BHJP JPC12N5/00 BC12N5/00 EC12N15/00 AA61K35/12A61P25/00 101A61K48/00 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IT,LU,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NA,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW US2004027124 20040820 WO2005021716 20050310 28 20060419 4B024 4B065 4C084 4C087 4B024AA01 4B024BA07 4B024CA02 4B024DA03 4B024EA04 4B065AA93X 4B065AA93Y 4B065AB01 4B065AC14 4B065BA02 4B065CA27 4B065CA44 4C084AA06 4C084AA13 4C084CA53 4C084CA56 4C084DC01 4C084MA66 4C084NA14 4C084ZA022 4C084ZB212 4C084ZC612 4C087BB63 4C087MA66 4C087NA14 4C087ZA02 4C087ZB21 4C087ZC61技術分野 本発明は、概してバイオテクノロジーに関し、特に、体細胞を用いてリソソーム蓄積症を治療する様々な手段および方法、ならびに治療用酵素を送達する方法に関する。関連出願の相互参照 本出願は、2004年8月21日に出願された、米国仮出願番号第60/496,830号の恩典を主張する。背景 リソソーム蓄積症は、生産児の約7000人中1人に影響を与える、遺伝性疾患の大きな種類であり、その大多数は中枢神経系(CNS)疾患を発症する (Sly およびVolger、2002)。 Dan, R.T.ら、1976において論じられているように、リソソームは、細胞内消化の主要な場所であって、40を越える酸性加水分解酵素を含む、何百もの酵素を含有する、膜で包まれた小胞から成り、ほとんどの生物学的に重要な高分子を分解することができる。各酵素は、分子の特定の種類を分解する、専門的役割を有する。これらの分解酵素の任意の一つに影響を及ぼす遺伝的変異により、それらが分解することのできない大量の物質が貯蔵および蓄積されるリソソーム、したがって「リソソーム蓄積症」が生じる。例えば、ゴーシェ病は、グルコセレブロシドと呼ばれる糖質を分解する、グルコセレブロシダーゼと呼ばれる酵素の産生における遺伝的欠損に起因し、従って、グルコセレブロシダーゼ活性の低下または消失により、グルコセレブロシドのリソソーム蓄積がもたらされる。 リソソーム中に、リソソーム酵素を特異的に確実に標的化し、かつ濃縮するために、精巧かつ入念に制御された細胞内経路が存在する。真核細胞(酵母からヒトまで)において最も重要な特徴が保存されている、この細胞内輸送経路を概説する。例えば、増殖因子、接着タンパク質および抗体などの分泌タンパク質は、リソソームなど他の細胞内局在を運命づけられているタンパク質と同様に、細胞質内でmRNAから翻訳されるが、翻訳の間に、生じたタンパク質は小胞体(ER)と呼ばれる細胞内区画の中に挿入される。ERから、担体小胞(膜二重層によって囲まれた球状構造体)を介して、タンパク質は、ゴルジ体の近位(シス)領域へ輸送される。シス-ゴルジから、タンパク質は、分泌経路における主要な選別場所である、ゴルジ体トランスゴルジ網を通って移動する。トランスゴルジ内で、分泌タンパク質は原形質膜へ移動して融合する輸送小胞中に包み込まれる。対して、不活性前駆体型(プロ酵素)で合成されるリソソーム酵素は、トランスゴルジの中に存在する選別タンパク質(ソルターゼ)によって認識されるシグナルの存在により、分泌タンパク質と区別される。ソルターゼは、後期エンドソームと呼ばれる細胞内小器官を発見し、かつ選択的に融合する輸送小胞の中に、リソソームプロ酵素を標的化する。 それぞれが、通常は遺伝的変異の結果として、特定のリソソームタンパク質欠損に起因する、30を越えるリソソーム病が存在する。例えば、Cotranら、Robbins Pathologic Basis of Disease (第4版、1989)を参照されたい。リソソームタンパク質における欠損により、通常、代謝産物の有害な蓄積がもたらされる。例えば、ハーラー症候群、ハンター症候群、モルキオ症候群およびサンフィリッポ症候群においては、ムコ多糖が蓄積し、テイ-サックス症候群、ゴーシェ症候群、クラッベ症候群、ニーマン・ピック症候群、およびファブリ症候群においては、スフィンゴ脂質が蓄積し、フコシドーシスおよびマンノシドーシスにおいては、それぞれ、フコース含有スフィンゴ脂質および糖タンパク質断片の蓄積し、かつマンノース含有オリゴ糖が蓄積する。 ゴルジ装置は、翻訳後修飾の付加、および細胞内の適切な細胞内小器官への細胞タンパク質の選別を担う。ゴルジ体に到達する分子の多くは、細胞の外へ輸送される。正確に、分子の経路を決めるために、ゴルジ体は翻訳後修飾を付加する。分子を輸送し、加工し、発送するために、ゴルジ体は、小胞体(ER)から受け取った分子を、細胞膜または特異的な細胞内小器官へ輸送する小胞システムを有する。多くの他の細胞内小器官と同様に、ゴルジ体は、細胞間で異なりうる。多くの細胞においては、核の片側に単一のゴルジ体が位置する。一部の他の細胞は、細胞の至るところに分布する、膜の層板のように見える、数個のゴルジ装置を有する。ゴルジ体は、消化管の酵素分泌細胞など、分泌に特化した細胞内で、最も高度に発達している。ゴルジ装置は、次の四つの重要な役割を有する:1)糖付加による、複合体分子(タンパク質など)の修飾; 2)細胞外への輸送または細胞膜内への取り込み(デフォルト経路)のいずれかへの分子の選別;3)制御された分泌経路内への分子の選別:例えば、インスリンに用いられる経路;および4)リソソームへ運命づけられているタンパク質の、後期エンドソームに向かう小胞内への選別。 ゴルジ体自体は、次のように、三つの機能的に分離した領域に分かれている:1)シス面は滑面小胞体から輸送小胞を受け取る;2)脂質およびペプチドの両方に、糖を付加する中間ゴルジ;および3)その最終目的地に従って、分子を選別するトランスゴルジ網。哺乳動物(ヒトを含む)細胞においては、リソソーム選別シグナルは、糖修飾すなわちマンノース-6-リン酸(M6P)である。M6Pシグナルを認識するソルターゼタンパク質はマンノース-6-リン酸受容体(MPR)であり、これはトランスゴルジ網(TGN)の内側表面上に存在し、活性化酵素が機能するリソソーム中への選択的輸送を促進する。とりわけ、リソソームプロ酵素は、末端マンノース群の6位を介するグリコシル化およびリン酸化を含む、多様な翻訳後修飾を受ける。具体的には、リソソームプロ酵素は、TGNの中でMPRによって認識される、マンノース-6-リン酸の存在により特徴付けられる。細胞内小器官特異的シグナルの存在により、適切な受容体結合タンパク質を含む小さな輸送小胞が、トランスゴルジ網からはさみ取られ、その細胞内目的地へ標的化されることが可能になる。一般的には、Kornfeld,1990を参照されたい。 リソソームプロ酵素を分泌するために、後期エンドソーム内腔の低pHが、ソルターゼによって頻繁に用いられる。ソルターゼは、その後、別の種類の輸送小胞を介してトランスゴルジに戻り、再利用される。分泌されたリソソームプロ酵素は、その後、バルク小胞輸送を介して、後期エンドドームからリソソームへ流れる。 細胞選別メカニズムが100%効果があるわけではないことに留意することが重要である。細胞外プロ酵素のリソソームへの輸送に関する重要な洞察は、細胞の原形質膜上にも存在するMPRの研究から得られ、そこで、MPRは、マンノース-6-リン酸により標識された細胞外タンパク質に結合し、その内部移行およびエンドサイトーシス経路を介したリソソームへの輸送を著しく促進する。このように、分泌されたリソソームプロ酵素は、MPRによって細胞外間隙から救出され、受容体および結合型プロ酵素を、トランスゴルジからリソソームプロ酵素を受け取る同じ細胞内小器官である後期エンドソームに輸送する、エンドサイトーシス小胞に補充されうる。このようにして、細胞外にもたらされたリソソームプロ酵素を救出し、リソソームへ輸送することができる。この現象は、酵素補充療法の成功の基礎となっており、例えばゴーシェ病の治療において、血液中を循環する全身投与されたリソソームプロ酵素は、羅患細胞によって取り込まれ、欠損リソソームに輸送されて、欠損プロ酵素を活性酵素と置換する。 リソソーム蓄積症(LSD)の主要因としてのリソソーム蓄積症の発見以来(例えば、Hers, 1963を参照されたい)、欠失酵素の静脈内投与により、リソソーム蓄積症を有する患者を治療する試み、すわなち、酵素療法がなされている。ゴーシェ病以外のリソソーム病に関しては、投与される酵素がマンノース側鎖基の6位でリン酸化されている場合に、酵素療法が最も効果的であることが、証拠により示唆された。II型グリコーゲン合成に関しては、リン酸化型および非リン酸化型の精製された酸性α-グルコシダーゼを、マウスに静脈内投与し、筋肉組織中への取り込みを解析することによって、試験した。マンノース-6-リン酸含有酵素を用いた場合に、最も高い取り込みが得られた(Van der Ploegら、1991;米国特許第6,118,045号)。 酵素補充療法は、いくつかのリソソーム蓄積症(LSD)の治療にとって、確立された方策である。LSD患者において遺伝的に欠損しているリソソームプロ酵素は、全身注射によって供給される。体細胞により外部媒体から内部移行した酵素は、機能不全のリソソームに到達し、そこで活性化され、その正常の機能を果たす。 酵素補充療法に関連する二つの問題点がある。第一に、治療のため量的に十分な機能的リソソームプロ酵素を精製する費用が膨大である。第二に、全身送達される酵素が血液脳関門を通過せず、そのために、CNS症状の治療に関して、極めて制限される(Kaye, E. M., 2001)。 血液脳関門(BBB)により、血液からの治療用酵素輸送が妨害され、従って、中枢神経系中の機能不全細胞に到達できない。BBBは、強固に結合している内皮細胞の連続層を含む、毛細血管の関門である。Neuwelt, E.A.ら、1980; Rappaport, S.I.,1976に記載のとおり、BBBは、分子量および脂質溶解性の両方に基づいて、血液中の分子を、脳へ進入させない。例えば、血液脳関門は、通常、180ダルトンより大きい分子量を有する分子を排除する。さらに、脂質溶解性に基づいて、類似の排除を行う。従って、細胞療法、脳内部のリソソームプロ酵素分泌細胞の使用は、LSDの神経症状の治療にとって、魅力的な選択肢である。発明の概要 本発明は、体細胞を用いてリソソーム蓄積症を治療する様々な方法、および治療用酵素を送達する方法に関する。特に、本発明は、体細胞中の一つまたは複数のリソソーム酵素の分泌を増大させるための方法として、細胞内ゴルジからリソソームへの選別経路の構成成分中の、機能獲得型または機能損失型変異の使用を含む。 本発明はまた、例えば体細胞のような、治療的に有用な細胞を操作するための相同組換えの使用にも関する。本発明はさらに、一つまたは複数のリソソーム酵素の分泌を増大させるための、体細胞における相同組換えの使用に関する。 本発明はまた、治療的に有用なグリア前駆細胞、間葉系幹細胞および/またはアストロサイト前駆細胞を操作するための、相同組換えの使用に関する。本発明はさらに、任意の特異的なリソソーム酵素の欠失に関連するリソソーム蓄積症を治療することのできる、普遍的な治療用グリア細胞型の開発に関する。ひとつの態様においては、マンノース-6-リン酸と内在性MPRの間の相互作用を妨害することにより、または細胞選別の効率を低下させることにより、リソソームプロ酵素などのM6P標的化タンパク質の分泌増加を引き起こすであろう分子を発現させるように、グリア前駆細胞を操作する。もうひとつの態様においては、ドナー細胞によるM6P標的化リソソームタンパク質の分泌増加を引き起こすように、ドナー細胞における相同組換えにより内在性MPR遺伝子の両コピーをさせる。ただ一つの特異的なプロ酵素ではなく、複数のプロ酵素を分泌することにより、これらの操作された細胞は、多くの異なるLSDのための治療的使用を有する。 本発明は、相同組換えにより生ずる、細胞内における導入遺伝子発現を含む、導入遺伝子の細胞内における発現にさらに関する。 本発明は、体細胞を用いてリソソーム蓄積症を治療する様々な方法、および治療用酵素を送達する方法に関する。特に、体細胞中の一つまたは複数のリソソームプロ酵素の分泌を促進するための手段として、細胞内ゴルジからリソソームへの選別経路の構成成分の中の、ドミナントネガティブおよび/または機能損失型変異の使用に関係する。本発明は特に、ドミナントネガティブなどの機能獲得型の表現型を有する遺伝子産物を発現する、治療的に有用なグリア前駆細胞、間葉系幹細胞および/またはアストロサイト前駆細胞を操作するための、相同組換えの使用に関するが、体細胞の他の種類および当業者にとって明らかな導入遺伝子発現技術を含むよう、容易に一般化が可能である。 本発明は、有害な免疫学的副作用を回避する、遺伝性および/または後天性の代謝性CNS疾患を治療するための有効な方法を提供する。 本発明はまた、精製された外因性酵素の直接注入に関連する腎クリアランス問題を回避する、遺伝性および/または後天性の代謝性脳疾患を治療するための方法を提供する。 本発明はさらに、分子レベルで疾患を効率的に治療するために、補正用遺伝子材料を脳に供給することにより、遺伝性および/または後天性の代謝性脳疾患を治療するための方法を提供する。 本発明はまた、代謝性脳疾患および/またはCNS疾患の治療のために、本発明の細胞および/または方法の使用を提供する。本発明のもう一つの局面は、代謝性脳疾患および/またはCNS疾患の治療のための薬物を製造するために、本発明の細胞および/または方法の使用を提供する。発明の詳細な説明 特異的なLSDの多くの症状の治癒に成功しているにもかかわらず、LSDの神経症状の治療のためには、酵素補充はこれまで有用ではなかった(Kaye, E. M., 2001)。CNS細胞療法の二つのメカニズムは、LSDのための動物モデルにおいて試験される。両メカニズムとも、細胞型の選択によって強く影響を受け、その治療効率に影響を及ぼす制限を受ける。最初のメカニズムは、少量のリソソームプロ酵素を分泌する野生型細胞を、被験体の頭蓋腔へ移植することを必要とする。このアプローチに伴う潜在的な問題には、ヒトの脳内で生き残り、上手く調和する細胞型の選択が含まれる。さらに、「ドナー」細胞によって提供される治療効果の範囲は限られている。例えば、リソソームプロ酵素がドナー細胞から4細胞半径離れたところにしか拡散しない場合、局所的な治療効果しか期待できない。二番目のメカニズムでは、治療の標的となる特異的なLSDにおいて欠失している特定のリソソームプロ酵素を過剰発現するように、ドナー細胞を操作することを必要とする。リソソームプロ酵素を過剰産生するように操作された細胞は、野生型細胞よりも実質的により多くの酵素を分泌するため、それらは羅患細胞のより広い近傍に影響を及ぼす能力を有する。分泌されたプロ酵素によって影響を受ける有効領域は、ヒトよりも小さい脳を有する齧歯動物において開発された治療技術の推移においては、相当関連のある問題である。しかしながら、リソソーム酵素の細胞に基づく送達が、齧歯動物の研究において成功することが示されている一方で、送達のための技術は、ヒトに適合できないか、または導入遺伝子のサイレンシングおよび/またはウイルス遺伝子導入に関連した注意を有する(米国特許第4,866,042号)。 Cueのグリア前駆細胞のように、理想的に適合され、広範に移動し、かつ分裂する細胞型でも、次のような二つの潜在的な制限を有しうる:非操作細胞は、控えめな量のリソソームプロ酵素しか分泌しない可能性がある;特異的な酵素を過剰発現するよう操作された細胞は、一つのLSDにとって高い治療性があるが、他のLSDにとって実質的な恩典を有するとは、示されていない。従って、全ての、または広範なリソソームプロ酵素の分泌増加を示す、治療用細胞の種類を作り出すことから、治療が利益を得ることができる(図1を参照されたい)。脳内では、この単一細胞が、広範なLSDにおける神経欠損を治療するために有用である。LSDに関連する非神経症状に関しては、そのような技術により、酵素補充療法に関連する、複数の酵素の注射の必要性が軽減されうる、または除外されうる。リソソーム酵素の適切な標的化のために用いられる細胞内選別経路の解析によって示唆される、そのような普遍的LSD治療用細胞の作製方法および使用方法が、本発明の核をなす。 本明細書に用いられる、「ドミナントネガティブ」とは、同じ細胞の中で野生型対立遺伝子の機能を破壊する変異を意味する。 本明細書に用いられる、「ドミナント」とは、二倍体生物において、ドミナント遺伝子の表現型がホモ接合型またはヘテロ接合型の状態で現れることを意味する。 本明細書に用いられる、「プロ酵素」および「酵素」とは、特定の生化学反応を触媒することのできる、タンパク質またはタンパク質の規則正しい集合体を意味し、ここでプロ酵素は、例えばシグナル配列の切断により、その後修飾されうる。 本明細書に用いられる、「フレームシフト」とは、遺伝子の読み枠を変えるヌクレオチドの欠失または挿入を含む変異を意味する。通常、そのようにして形成された終止コドンは正常なコドンではなく、高頻度で切断型または伸長型タンパク質をもたらす。 本明細書に用いられる、「機能獲得型」とは、 高頻度で野生型に対してドミナントである、ハイパーモルフ(hypermorph)、ネオモルフ(neomorph)、アンチモルフ(antimorph)(例えば、ドミナントネガティブ)および異所性発現を含む、新しい表現型を産生する変異を意味する。 本明細書に用いられる、「遺伝子治療」とは、症状または疾患の進行過程を変化させる目的で、細胞の中に核酸を導入することを意味する。 本明細書に用いられる、「孤立した核酸」とは、核酸が由来する生物の天然型ゲノム中では直接隣接している両方のコード配列(5'末端の配列および3'末端の配列)と、直接隣接していない核酸を意味する。従って、本用語は、例えばベクター中、自己複製するプラスミドもしくはウイルス中、または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNA中に組み入れられる組換え核酸、または他の配列から独立した別個の分子(例えば、PCRまたは制限エンドヌクレアーゼ処理により作製されたcDNAまたはゲノムDNA断片)として存在する組換え核酸を含む。それは、付加的なポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である、組換え核酸も含む。 本明細書に用いられる、「ノックアウト」とは、遺伝子の機能を不活性化するか、または低下させる(もしくは不能にする)ために、内在性遺伝子に変異を導入する工程を意味する。 本明細書に用いられる、「機能損失型」とは、無発現変異、ハイポモルフ、および条件的変異(例えば、温度感受性)を含む、遺伝子もしくは遺伝子産物の機能を低下させるか、または除去する変異を意味し、これは通常、野生型に対して劣性である。 本明細書に用いられる、「変異」とは、一つまたは複数のヌクレオチドの挿入、欠失、転移、および塩基転換を含む、野生型に対する核酸配列の任意の変化を意味する。欠失または挿入のサイズは、単一ヌクレオチドから多数の遺伝子まで変動することができる。さらに、変異は、変異表現型を生じることのできる産物を産生する変異を有する配列を意味する。当業者に公知であるとおり、変異は、表現型浸透度の変動の程度を示しうる。 本明細書に用いられる、「機能的に連結した」とは、核酸分子の転写および/または翻訳を指示する配列に、核酸分子が操作可能に連結していることを意味する。 本明細書に用いられる、「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」は、任意の長さの二つ以上のアミノ酸の重合体を含む。ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の間で、長さに基づいた区別は意図していない。 本明細書に用いられる、「治療すること」または「治療」とは、完全な治癒を意味しない。基礎疾患の症状を軽減すること、および/または根本的な細胞的、生理学的もしくは生化学的原因、または症状を引き起こすメカニズムの一つまたは複数を軽減することを意味する。この文脈において用いられる、軽減とは、単に疾患の生理的状態ではなく、疾患の分子状態を含む疾患の状態に関連して意味すると解釈される。 リソソームタンパク質は、通常はマンノース-6-リン酸(M6P)の標識を保持している。可溶性リソソーム酵素がシスゴルジ網の内腔の中にある間に、この標識はそのN-結合型オリゴ糖のみに付加される。MPRは、pHが約7であるトランスゴルジ網の中でM6Pオリゴ糖に結合し、pHが約6である後期エンドソームの中でそれを放出すると考えられる。さらに、MPRは陽イオン非依存性マンノース-6-リン酸受容体(CI-MPR)(GenBankアクセッション番号X83699、X83700、X83701およびAF069333-378;KillianおよびJirtle、1999)または陽イオン依存性マンノース-6-リン酸受容体(CD-MPR)に分類されている。両方のMPRは、TGN内部でリソソーム加水分解酵素の補充を媒介し、そこから担体小胞が、MPR-加水分解酵素複合体をエンドソームに送達する。このようにして、リソソーム加水分解酵素は、後期エンドソームのより低いpHの中で、M6P受容体から離れ、前期エンドソーム由来の物質を消化し始める。 リソソーム選別経路は100%効果があるわけではないため、いくつかのリソソームタンパク質および受容体は、正常のパッケージングを免れ、細胞表面へのデフォルト経路に入る。原形質膜へのデフォルト経路を介した受容体の輸送が、受容体媒介性エンドサイトーシスを通じて細胞外の加水分解酵素を捕獲し、リソソームに再標的化することによって、一つまたは複数のリソソーム加水分解酵素中の遺伝的変異などの誤りを修正するのを助けるためにこれらの受容体を用いることを可能にする。脳細胞においては、極めて少量のリソソーム酵素(正常レベルの0.01%と推定される)が、実質的な治療効果を提供することができると推定されている。 KDEL受容体に非依存的である、ゴルジ装置と小胞体の間の別の再利用経路を用いて、原形質膜と小胞体の間で、エンドソームおよびトランスゴルジ網を経由した逆行性輸送が起こる (Girodら、1999; Whiteら、1999)。 受容体は、その結合酵素を放出後、後期エンドソームにおける出芽 (buds)由来の小胞を介して再循環され、トランスゴルジ網の膜に戻る。TGNからエンドソームへのMPRの選別は、受容体の細胞質テール中に存在するシグナルによって媒介される。これらのシグナルは、二つのロイシン残基が後に続く、酸性アミノ酸残基のクラスターから成る。タンパク質の細胞質テールのカルボキシ末端方向のこのシグナルは、リソソームへの効率的選別のために必要である。この酸性クラスタージロイシンモチーフ中の変異により、リソソーム酵素の分泌が増加する。したがって、酸性クラスタージロイシンモチーフ中の変異は、本発明の態様を表す。 AP-1を含む、クラスリン関連タンパク質は、TGNにおいてリソソームタンパク質のシグナル介在性選別を担うと考えられている。しかしながら、クラスリンは後期エンドソームからTGNへのMPRの輸送のためには必要でない。対照的に、H2Mのチロシンに基づく選別シグナルまたはCD3γのジロイシンに基づく選別シグナルなどのシグナルを有する分子を正確に局在化するために、クラスリンは必要である。ゴルジ局在性γ-ear含有ARF結合タンパク質(GGA)が、この役割において機能すると考えられている。ヒトにおいては三つのGGA(GGA1、GGA2およびGGA3)、および酵母においては二つ(Gga1pおよびGga2p)が同定されている。これらのタンパク質は単量体であり、かつ機能未知のVHS(VPS27, HrsおよびSTAM)ドメイン、ADP-リボシル化因子(ARF)のグアノシン5'-三リン酸結合型と相互作用するGATドメイン、クラスリンと相互作用するヒンジ領域、ならびにγシナージンおよびコートアセンブリの他の潜在的な制御因子と相互作用するGAEドメインから成るモジュラー構造を示す。GGAをコードする二つの酵母遺伝子の破壊により、哺乳動物のリソソームと等価である、液胞へのプロカルボキシペプチダーゼYの選別が障害される。MPRは、三つのGAA全ての、約150アミノ酸のVHSドメインと相互作用する(Puertollano, R.ら、2001)。従って、例えば発現増加またはドミナント変異など、一つまたは複数のGGAタンパク質における変化は、本発明の態様を表す。 AP-1は、通常TGNからエンドソームへの輸送、およびエンドソームからトランスゴルジ網への輸送のために重要であり、例えばシグナルYxxFおよびジロイシンモチーフはAP-1に結合する。AP-1に加えて、AP-2は、通常エンドサイトーシスのために重要であり、AP-3は、通常トランスゴルジ網からリソソームへの輸送のために重要であり、 AP-4 は公知であるが、その機能は未知のままである。全てのAP複合体がクラスリンと結合するわけではなく、例えばAP-3はクラスリンを用いることができない。多くのリソソーム膜タンパク質は初期エンドソーム中には決して見出されず、これらのリソソーム膜タンパク質は、しばしば、AP-1ではなくAP-3サブユニットを必要とする。YXXFモチーフ中のわずかな違いが、AP-3要求性とAP-1要求性の間の違いを決定する。AP-3はまた、メラニン顆粒のようなリソソーム関連構造のためにも重要である。 VPS1からVPS6まで、VPS8からVPS11まで、VPS13、VPS15からVPS30まで、VPS32からVPS39まで、VPS41、VPS43からVPS45まで、VPS52からVPS55まで、およびVPS60からVPS75までなどの、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)において同定されている遺伝子を含む、多くのリソソーム選別遺伝子が公知である(図3を参照されたい)。これらの遺伝子の核酸配列、アミノ酸配列、および機能は、http;//www.yeastgenome.orgにおいて利用可能な、サッカロミセスゲノムデータベース(SGD)から得ることができ、これは参照により本明細書に組み入れられる。これらの遺伝子産物の機能は、後生動物(酵母からヒトに至る)細胞において、保存されていると考えられている。特に、より多岐にわたるメンバーのひとつは、液胞ソルターゼVps10pであり、これは、酵母においては、哺乳動物細胞においてMPRにより用いられるM6Pシグナルよりむしろ、ペプチドシグナルを認識するが、その他の点では、Vps10p機能はヒトオルソログの機能と類似である。さらに、リソソーム選別遺伝子(オルソログ、パラログ、およびホモログ)は、他の生物において公知であり、例えばSKD1は酵母Vps4pのマウスオルソログである(Yoshimoriら、2000)。加えて、ダイナミン、Rab1、Rab7、Rab9、GGA1〜3、AP-1、AP-2、クラスリン、Ephチロシンキナーゼ(TK)受容体の大ファミリーおよびその膜結合エフリンリガンドなどの遺伝子産物が、細胞内輸送において役割を果たすことは公知である(総説に関しては、CowanおよびHenkemeyer、2002、ならびにKullanderおよびKlein、2002を参照されたい)。さらに、クラスC変異体などのように、トランスゴルジ網とエンドソームの間で機能することが知られている遺伝子産物には、GGA、Rab9、VPS5、VPS17、VPS29、およびVPS35が含まれる。 本発明はさらに、細胞選別経路に関与する遺伝子における、ドミナントおよびドミナントネガティブ変異に関する。ドミナントおよびドミナントネガティブ変異は、vps1、vps4、およびvps6/pep12などの遺伝子および遺伝子産物について公知である。さらに、ドミナントネガティブ型は、当技術分野において公知である以下のような方法によって、作製することができる:、a)マルチドメインタンパク質の特定のドメインを発現すること(vps1に関して)、b)その活性を変化させるためにドメインを変異させること(例えば、機能を低下させるように酵素の活性部位を変異させること)、およびc)経路の一つまたは複数のメンバーを過剰発現させること(Vps4pなど)。コンストラクトは、染色体外配列として保持されうるか、または相同組換えによってゲノムに導入されうる。 一つのオルソログにおいて同定される変異(例えば、機能損失型、機能獲得型、ドミナント、またはドミナントネガティブ)は、他のオルソログ、パラログまたはホモログにおいて、対応する変異を産生するために用いられうる。対応するドミナントネガティブ変異は、オルソログの類似の位置に導入される可能性があり、例えばサッカロミセスVps4pにおいて同定されるドミナントネガティブ変異である、(E233Q)、(E211K)、および(G178D)は、オルソログ遺伝子におけるドミナントネガティブ変異を作製するために用いられうる。例えば、マウスSKD1(E235Q)は、酵母vps4(E233Q)変異体と等価であると示されており、両者とも、インビトロにおけるゴルジ間輸送に影響を与える(Yoshimoriら、2000)。同様に、ヒトVPS4A(E228Q)およびVPS4B(E235Q)は、酵母細胞中に発現させる場合、酵母VPS4(E233Q)におけるドミナントネガティブ変異と類似のドミナントネガティブ表現型を示す(Scheuringら、2000)。Vps4pE233QおよびSKD1E325Qの両方は、ATP加水分解において不活性である。別の野生型細胞において、変異体表現型を産生するために、ドミナントネガティブ変異体を発現(または、過剰発現)させることができる。同上。さらに、全長クローンの過剰発現もまた、恐らく、過剰発現された遺伝子産物と他の細胞性産物の間の平衡を乱すことによって、変異体表現型を誘導しうる。ドミナント変異体表現型を誘導するもう一つの手段は、遺伝子産物の切断型の発現によるものである。例えば、ハブ(hub)断片(クラスリン重鎖のカルボキシ末端側三分の一)と呼ばれる、クラスリンのドミナントネガティブ型の発現により、変異体表現型を産生しうる(Liuら、1998)。 当技術分野において公知のプロモーター(例えば、tetシステム、T7、Sp6など)の使用により、そこへ機能的に連結した遺伝子の制御が可能となる。このように、ドミナントネガティブ効果を産生するよう、ヒト細胞におけるコンストラクトの発現を調節しうる。本発明のDNAコンストラクトは、改変された遺伝子のプロモーター、またはその他の恒常的、誘導的、もしくは制御可能なプロモーターを用いても、発現しうる。プロモーターの例には以下のものが含まれるが、それらに限定されない:ウイルスプロモーター; ニューロン特異的エノラーゼプロモーター(Andersenら、1993、Alouaniら、1992); MAP-1Bプロモーター(LiuおよびFischer、1996) ;L1プロモーター(Chalepakisら、1994)、芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼプロモーター(Le Van Thaiら、1993);ドーパミンβ-ヒドロキシラーゼプロモーター(Mercerら、1991);NCAMプロモーター(Holstら、1994);HES-5 HLHタンパク質プロモーター(Takebayashiら、1995);α1-チューブリンプロモーター(Glosterら、1994);ペリフェリンプロモーター(Karpovら、1992);シナプシンプロモーター(Chinら、1994);GAP-43プロモーター(Starrら、1994);サイクリックヌクレオチドホスホリラーゼIプロモーター(Schererら、1994);ミエリン塩基性タンパク質プロモーター(Wrabetzら、1993);JCウイルス最小コアプロモーター(Krebsら、1995);プロテオリピドタンパク質プロモーター(CambiおよびKamholz、1994);およびサイクリックヌクレオチドホスホリラーゼIIプロモーター(Schererら、1994)(米国特許第6,245,564号を参照されたい)。 例えば、ドナー細胞によってリソソームプロ酵素の分泌増大をもたらす、ドミナントネガティブ遺伝子産物を発現する発現コンストラクトを、グリア(例えば、Rosa、Polr2a)において活発に転写される遺伝子座に組み込むことによる、リソソームプロ酵素のグリアに基づく送達は、CNSに作用するリソソーム蓄積症の治療に理想的に適する。 上皮細胞および/またはニューロンにおいては、様々な成分を、特定の原形質膜、例えば頂端膜または側底膜に輸送する必要が頻繁にある。基底側シグナルはチロシンに基づく、恐らく特異的なμサブユニットである。頂端シグナルは、頻繁に、GPI結合、ラフト(「脂質ラフト」を形成するために膜中の隔離した脂質と結合)の組み合わせである。特定のモーターとの結合が、所定の原形質膜表面への効率的な輸送にとって重要でありうる。特に、軸索および樹状突起は、頂端輸送および基底輸送と類似する多くの特性を有する。特異的な複合体(例えば、NMDA受容体、AMPA受容体、シナプス小胞前駆体、および活性領域前駆体)と結合する多数のモーターがあると考えられている。これらの多くは、任意の一つの小胞内の空間の全てまたは大部分を占める、大きな複合体(例えば、NMDA受容体複合体)であり、これにより、出芽特異性が低下し、特異的なモーターに付随できる輸送目的地決定因子として機能するようになりうる。 小胞輸送のもう一つの局面は、SNAREと呼ばれる分子の正確な取り込みである。SNAREは膜融合および小胞ドッキングにおいて重要な役割を果たす。小胞結合型snare(v-snare) と標的膜結合型snare(t-snare)の間の相互作用は、小胞輸送および小胞融合において重要である。v-snareおよびt-snareは、a-SNAP/NSFによって活性化される高親和性SNARE複合体を形成する(Von Mollardら、1997;Sollnerら、1993)。 細胞は、個々のリソソームプロ酵素を発現するように、操作されうる。そのような操作された細胞は、対応するLSDの治療に有用である。しかしながら、そのような操作された細胞は、他のLSDの治療にも有用であり、ここでは、個々のリソソームプロ酵素の過剰発現により、細胞内輸送システムの過負荷および結果として生じるデフォルト分泌経路の使用のため、他のリソソームプロ酵素の分泌増加がもたらされる。または、正常な細胞内輸送を妨害することにより、より多くのリソソームプロ酵素がデフォルト分泌経路内へ向けられることになる、機能獲得型変異または機能損失型変異を含みうる、異種配列の導入によって、例えばグリア細胞のような普遍的な治療用細胞型が作り出される。特に、グリア前駆細胞はマンノース-6-リン酸と内在性MPRの間の相互作用を妨害する分子を発現するように改変され、リソソームに標的化されたプロ酵素の分泌をかなり増加させる(参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第60/440,152号を参照されたい)。さらに、ただ一つの特異的なプロ酵素ではなく、複数のプロ酵素の分泌を増加させるように改変された細胞は、多くの異なるLSDのための治療的使用を有するドナー細胞となる。 幹細胞または自己再生前駆細胞(初代細胞)における、相同組換えを成功させる一つの鍵は、これらの細胞を、多世代にわたり培養下で、本質的に変化なく増殖させる能力を達成することである。この能力は、多世代にわたり培養下で細胞を継代することによって直接的に評価されうるか、または幹細胞、前駆細胞もしくは形質転換細胞を特徴づける、酵素テロメラーゼの高い発現レベルから推論されうる。グリア前駆細胞は、30世代を越えるて培養下で維持されることができ、高レベルのテロメラーゼを発現しうることが、最近示された。間葉系細胞もまた、培養下で40世代を越えて増殖することが可能で、かつ高いテロメラーゼレベルを示しうる。アストロサイト前駆細胞を含むがそれに限定されない、幹細胞および前駆細胞の他の種類は、類似の特徴を示すことが期待される。SommerおよびRao、2002;Raoら、1998;ならびにRaoおよびMayer-Proschel、1997を参照されたい。 さらに、グリア前駆細胞は、単離することが可能で、外来遺伝子を導入して、その外来遺伝子の発現のための細胞を選択することができる。Wuら、2002を参照されたい。さらに、グリア前駆細胞は高いテロメラーゼレベルを発現している。Sedivy、1998を参照されたい。その上、CNS細胞の90%を上回る細胞は、グリアであり、ニューロンの生存および正常機能を維持するため、神経伝達物質の代謝を調節するため、ならびにニューロン間の最適なシグナル伝播を維持するためのミエリンを合成するために、不可欠である。テイ・サックス病、ハーラー症候群、ゴーシェ病、ファブリ病および後期乳児型神経セロイドリポフスチン症(「LINCL」)を含むが、それらに限定されないリソソーム蓄積症などの神経変性疾患において、グリアの機能障害もまた主要な因子である。したがって、グリア細胞は、LSDの神経作用の治療において重要である。 グリア前駆細胞およびアストロサイト前駆細胞は、増殖し、移動し、かつオリゴデンドロサイトおよびアストロサイトのサブタイプへ分化する、その例外的な能力のため、理想的な治療用送達媒体でもある。従って、例えばリソソームプロ酵素の分泌増加をもたらす遺伝子産物を発現するようにグリア前駆細胞を遺伝的にコードすること、およびその細胞を細胞補充療法の一部として被験体に送達することによって、LSDは治療されうる。さらに、グリア前駆細胞、間葉系幹細胞およびアストロサイト前駆細胞において、少なくとも一つの特異的遺伝子座中に、効率的に相同組換えが起こることを、本発明は説明する。 様々なLSDを治療するドナー細胞の能力を、操作された細胞が、様々なLSDのためのモデルマウスにおける症状を緩和できるかどうかを検討することにより試験しうる。または、操作された細胞を、LSDの症状を緩和する能力に関して試験するために、細胞培養下での共インキュベーションを用いることができ、そこで、表現型の観察または生化学的分析によって、症状を評価しうる。従って、本発明の細胞、例えばグリア前駆細胞は、LSDを治療するために被験体に移植される。本発明の細胞は、脳血液関門の背後の細胞の移植によって関門を乗り越えることにより、LSDに起因する神経障害を治療するためにさらに用いられうる。 エレクトロポレーション、細胞融合、ウイルス感染、陽イオン性試薬導入、CaPO4およびトランスフェクションを含むがそれらに限定されない、多様な方法によって、DNAを細胞内に導入しうる。DNAは、DNAプラスミド、λファージ、BAC(細菌人工染色体)、YAC(酵母人工染色体)、ウイルスベクター(アデノウイルスベクター、AAVベクター、およびレトロウイルスベクター)などを含むが、それらに限定されない多様な形状で、導入されることが可能であり、直鎖状または環状であってもよい。もう一つの態様においては、組換え遺伝子が内在性プロモーターによって制御されるように、内部リボソーム進入部位(「IRES」)を、相同組換えが起こるであろう特定の遺伝子座において組み込まれるよう遺伝子の中に挿入しうる。 表1に示される代表的なものを含む多くの異なるLSD、および疾患と関連した欠損酵素が公知である。=ムコ多糖症 グリコーゲン蓄積症II型(GSD II; ポンペ病;酸性マルターゼ欠損)は、リソソーム酵素である酸性α-グルコシダーゼ(酸性マルターゼ)の欠損に起因する。三つの臨床型に区別されている:小児性、若年性、および成人性。小児性GSD IIは生後まもなく発症し、進行性の筋無力症および心不全を呈する。この臨床的変化は、人生の最初の二年以内に致命的である。成人性および若年性の患者における症状は、後年に現れ、骨格筋のみが関係する。患者は、最終的には、呼吸不全のため死に至る。患者は、例外的には60年を越えて生存しうる。疾患の重症度と残存酸性α-グルコシダーゼ活性の間には、十分な相関があり、疾患の後期発症型においては正常の10%から20%、および疾患の初期発症型においては2%未満の活性である(Hirschhorn、pp.2443-2464を参照されたい)。 ゴーシェ病は、糖脂質グルコセレブロシドを加水分解する、リソソーム酵素であるグルコセレブロシダーゼ(「GCR」) における欠損により特徴づけられる、常染色体劣性リソソーム蓄積症である。ゴーシェ病においては、白血球および老化赤血球の膜由来のグルコスフィンゴ脂質の分解から主として生じる、糖脂質グルコセレブロシドが、分解酵素の欠損により、主に肝臓、脾臓および骨髄中の食細胞のリソソーム中に大量に蓄積される。本疾患の臨床所見には、脾腫、肝腫、骨疾患、血小板減少症、および貧血が含まれる。例えば、米国特許第6,451,600号を参照されたい。本発明は、貯蔵基質を除去することによって細胞中の酵素欠損を修正することのできる、M6P標識GCRの分泌および/またはエンドサイトーシスの増加により、ゴーシェ病の治療法を提供する(図2を参照されたい)。 テイ・サックス病は、特にCNS組織において、β-ヘキソサミニダーゼAの(酸性)アイソザイムの欠損により特徴づけられる、脂質代謝の致命的な遺伝性疾患である。β-ヘキソサミニダーゼのαサブユニットをコードする、HEXA遺伝子中の変異により、Aアイソザイム欠損が引き起こされる。テイ・サックス病は、GM2ガングリオシド分解欠損により特徴づけられる疾患のグループの代表例、GM2ガングリオシドーシスである。GM2ガングリオシド(モノシアル化ガングリオシド2)は、胎生初期に、ニューロン中に蓄積する。GM1ガングリオシドーシスは、GM1ガングリオシド(モノシアル化ガングリオシド1)のリソソーム蓄積をもたらす、β-ガラクトシダーゼの欠損に起因する。サンドホフ病はβ-ヘキソサミニダーゼのAおよびB(塩基性)アイソザイムの両方の欠損に起因する。β-ヘキソサミニダーゼのβサブユニットをコードするHEXB遺伝子中の変異が、Bアイソザイム欠損を引き起こす。 本発明は、貯蔵基質であるガングリオシドを除去することにより、テイ・サックス細胞における酵素欠損を修正することのできる、M6P標識ガングリオシドの分泌および/またはエンドサイトーシスの増加による、テイ・サックス病の治療法を提供する。 もう一つのLSDは、ムコ多糖症I型(MPS I)を引き起こす、糖質開裂リソソーム酵素α-L-イズロニダーゼの遺伝的欠損に起因する(Neufeld, E.F.および Muenzer, J.,1989;米国特許第6,426,208号、 The mucopolysaccharidoses in 「The Metabolic Basis of Inherited Disease」(Scriver, C. R., Beaudet, A. L., Sly, W. S. および Valle, D., Eds.), pp.1565-1587, McGraw-Hill, New Yorkも参照されたい)。重症型においては、MPS Iはハーラー症候群として一般に公知であり、精神遅滞、角膜の混濁、粗大化顔貌、心疾患、呼吸器疾患、肝臓および脾臓の肥大、ヘルニア、ならびに関節硬直などの複数の問題と関連している。ハーラー症候群に羅患している患者は通常10歳前に死亡する。ハーラー・シェイエ症候群として公知の中等度型においては、精神機能は通常、重度に影響されないが、身体的な問題により、10代または20代までに死に至る可能性がある。シェイエ症候群はMPS Iの最も軽度な型であり、通常は正常寿命に適合するが、関節硬直、角膜混濁、および心臓弁疾患が重大な問題を引き起こす。MPS Iの頻度は、全新生児のブリティッシュコロンビア州調査によれば10万人に1人(Lowryら、1990)、およびアイルランドの研究によれば7万人に1人(Nelson,1990)と推定されている。 本発明は、貯蔵基質であるヘパラン硫酸およびデルマタン硫酸を除去することにより、培養物中でアッセイしながら酵素欠損を修正することのできる、M6P標識α-L-イズロニダーゼの分泌および/またはエンドサイトーシスの増加による、MPS Iの治療法を提供する。 ファブリ病は、重度の腎臓機能障害、角化血管腫、ならびに心室拡張および僧帽弁閉鎖不全を含む心臓血管異常などの症状により特徴づけられる、X連鎖遺伝性リソソーム蓄積症である(米国特許第6,395,884号)。本疾患は、末梢神経系にも影響を及ぼし、四肢における苦痛な灼熱痛の発症を引き起こす。ファブリ病は、酵素α-ガラクトシダーゼA(α-gal A)中の欠損に起因し、これにより、中性スフィンゴ糖脂質の代謝の妨害、ならびに細胞内および血流中において酵素基質であるセラミドトリヘキソシドの蓄積がもたらされる。本疾患のX連鎖遺伝パターンにより、本質的に全てのファブリ病患者は男性である。少数の、重度に影響をうけたヘテロ接合体の女性がこれまでに観察されているが、ヘテロ接合体の女性は、概して無症候性であるか、または主として特徴的な角膜混濁に限定される比較的軽度な症状を有する。低残存α-gal A活性を呈し、かつ極めて軽度な症状を示すか、または明らかにファブリ病に特徴的な他の症状を示さない、ファブリ病の異型変種は、左心室肥大および心臓病と相関する(Nakanoら、1995)。α-gal Aの低下が、そのような心臓異常の原因でありうると推測されている。 I細胞病はリソソーム酵素中のマンノース-6-リン酸残基の欠如に起因する、致死的なリソソーム蓄積症である。N-アセチルグルコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼは、リソソームプロ酵素上での、M6Pシグナルの発生のために必要である。従って、本発明は、本疾患のための見込みのある治癒法を提供する。 本発明は、α-gal Aを過剰発現している細胞を導入するか、または細胞内輸送の精度を低下させ、リソソームタンパク質の分泌をもたらすような変異を有する細胞を導入することによって、ファブリ病を治療するために用いられうる。 全てではないが、多くのLSDが神経症状と関連するため、神経症状と関連しないものに関して、それらを酵素補充療法によって治療することにより延命される場合に、神経障害が現れる可能性が高い。 少数のLSDは、非マンノース-6-リン酸依存性経路によってリソソームに到達する、膜結合型タンパク質における欠損に起因する。酵素補充に用いられるゴーシェタンパク質は、取り込まれてリソソームに輸送されうるように、一般的にはM6Pを有するようインビトロで化学的に修飾される。欠損酵素が膜貫通型タンパク質である場合、酵素の分泌および取り込みは、一般的には不可能である。しかしながら、欠損酵素の可溶型を発現するように、本発明の細胞を改変することが可能であり、これにより、この制限を克服しうる。 中枢神経系に影響を及ぼすLSDは、補充酵素がBBBを通過することを要求する。これを成し遂げるために、補充酵素の供給源を被験体の脳内に置いてもよく、これにより血液脳関門を回避する。従って、グリア前駆細胞は、増殖し、移動し、かつオリゴデンドロサイトおよびアストロサイトのサブタイプへ分化する、その例外的な能力のため、理想的な治療用送達媒体である。従って、グリア前駆細胞を、例えばリソソームプロ酵素などの、リソソームプロ酵素を分泌するように遺伝的にコードすること、および損傷した組織に細胞を送達すること、および/または欠損細胞を補充することを含む、様々な様式で、中枢神経系に影響を及ぼすLSDを治療しうる。 グリア前駆細胞の培養下で増殖する能力、テロメラーゼ活性レベル、培養下で長期間分裂する能力、ならびにエレクトロポレーション、Lipofection(商標)およびレトロウイルス感染を用いてDNAを細胞内に送達する能力を評価した。Raoら、1998;ならびに、RaoおよびMayer-Proschel、1997を参照されたい。 部位特異的組み込みは、部位特異的組換え事象が起こった細胞を選択する能力を必要とする。初代幹細胞は、遺伝子改変、それに続く選択、単離および細胞数拡大を可能にするため、培養下で十分な寿命を有する集団の例となる。同様に、例えばグリア前駆細胞、アストロサイト前駆細胞、間葉系幹細胞、胚幹細胞、および胚生殖細胞などの他の細胞型は、培養下において十分な寿命を有する。グリア前駆細胞、アストロサイト前駆細胞、および間葉系幹細胞に関して、多数の細胞を単離することができ、それらは自己再生し、トランスフェクトされた遺伝子を発現可能であり、かつネオマイシンおよびピューロマイシンを用いる選択に敏感に反応することを、本発明者らは示した。これらの細胞にDNAを挿入するために、例えばエレクトロポレーションを用いてこれらの細胞にDNAを挿入する。さらに、Lipofection(商標)、ウイルス移入、およびリン酸カルシウム媒介性移入を用いて、DNAの挿入を試験したところ、それは、粒子媒介性送達またはマイクロインジェクションなど、少なくとも20%の効率を有する、任意の他の標準的な市販の遺伝子送達剤を、本発明に従って用いることが可能であることを示唆する。形質転換およびトランスフェクションの方法は、例えば前述したAusubelらの上記中に記載されており、発現媒体を、例えばCloning Vectors: A Laboratory Manual(P.H. Pouwelsら、1985、Supp.1987)中に記述されているもの、または当技術分野において公知であるもの(図4および図5も参照されたい)から選択しうる。エクスビボ遺伝子治療の目的のためには、初代細胞が好ましい。米国特許出願刊行物第2002/0012660号において開示された方法など、当技術分野において公知の方法により、初代細胞を増殖させ、トランスフェクトし、選択し、単離し、かつ操作しうる。 液体窒素中に細胞を凍結することなど、当技術分野において公知の方法により、後の使用のために、細胞を操作前または操作後に保存しうる。 例えば、Rosa 26遺伝子座、RNA pol IIおよびGAPDH遺伝子座を標的化することに成功しているものなど、いくつかのコンストラクトは、関心対象のほとんどすべてのクローニングされた遺伝子座を標的化できることを、共に示している。そのようなプラスミドのいくつかの変種が、これまで用いられている。さらに、内部リボソーム進入部位(IRES)またはcre/lox媒介型組換えを有するコンストラクトは、十分に記載されかつ当業者により容易に入手できる方法を用いて、作製することができる(図4および図7も参照されたい)。相同組換えのために用いるベクターおよびコンストラクトの詳細な総説は(Courtら、2002、Copelandら、2001)中に記載されており、ベクターのいくつかの変種の例は本明細書に記載されている(図4から図11までを参照されたい)。特に、図11には、治療用導入遺伝子の発現を推進するために、Polr2a遺伝子座の下流に挿入された、活性の高い合成CAGプロモーター(Niwa, H.ら、1991)の使用を示す。 発現ベクターには、例えば複製起点または自己複製配列(ARS)、ならびにプロモーター、エンハンサー、および必要なプロセシング情報部位、例えばリボソーム結合部位、RNAスプライシング部位、ポリアデニル化部位、転写終結配列およびmRNA安定化配列などの、発現制御配列が含まれる(図4から図10までを参照されたい)。タンパク質が細胞膜を通過すること、および/または細胞膜中に留まることを可能にする、シグナル配列もまた、適切な場合には含まれてもよい。特異的な細胞区画(例えば、小胞体、核、ペルオキシソームなど)に移行するため、および/またはある区画に滞留するために必要な、一つまたは複数の選別分子に結合することを可能にする、その他のシグナルもまた、適切な場合には含まれてもよい。例えば、アミノ酸KDELは、タンパク質を小胞体中に滞留させるのに用いることができる。または、KDEL配列は、過剰発現したタンパク質に付着される場合、小胞体滞留システムを無力化させるため、そのようなタンパク質の分泌を増加させるために用いられうる。当技術分野において周知の標準的な組換え技術を用いて、そのようなベクターを調製しうる。例えば、Ausbel、1992;SambrookおよびRussell、2001;ならびに米国特許第5,837,492号を参照されたい。実施例1:ヒトVps4ホモログ マウスSKD1は、エンドソームから液胞への輸送に関与する、酵母Vps4pに相同なAAA型ATPアーゼである(Yoshimoriら、2000)。VPS4の二つのヒトホモログである、VPS4-AおよびVPS4-Bが同定されている(Scheuring, Sら、2000)。ヒトVPS4AおよびVPS4Bタンパク質は、互いに(80%)および酵母Vps4タンパク質に対して(それぞれ、59%および60%)、高い配列同一性を示す。 GenBank(アクセッション番号AF255952)および/またはGeneCard(商標)アクセッション番号GC16P060030(VPS4A)またはGC18M060895(VPS4B)(Weizmann Institute of Science、およびrzpd.de/cards/においてオンラインを通じて利用可能)を参照することにより設計されたプライマーを用いて、VPS4AまたはVPS4BをRT-PCRにより増幅し、そのcDNA産物を単離し、ベクター中にクローニングした。PCR産物が、全長cDNA配列よりも短い場合には、全長cDNA配列を得るために、5'および/または3'RACEを用いることができる。ベクター中に存在するcDNAの配列は、遺伝子をシークエンスすることにより確認される。実施例2:相同組換えにより作製される治療用細胞 変異を、ヒトVPS4AまたはVPS4B遺伝子中に導入して、例えばマウスSKD1(E235Q)と等価でもあり、ドミナントネガティブ単一点変異Vps4p(E233Q)に相当する、VPS4A(E228Q)およびVPS4B(E235Q)などのドミナントネガティブ点変異を作製する(Yoshimoriら、2001;Scheuringら、2000)。点変異は、部位特異的突然変異誘発により導入される。ドミナントネガティブVps4ApE228Q、Vps4BpE235Q、SKD1E235QおよびscVps4pE233Q変異の全ては、AAAタンパク質ファミリーのメンバーと共通の、ATPアーゼモジュール内に存在する。同上。 Vps4ApE228QまたはVps4BpE235Qが、それによりプロモーター(および任意でエンハンサーエレメント)およびポリAシグナル配列に機能的に連結された発現ベクター中に、ドミナントネガティブ変異体のVps4ApE228QまたはVps4BpE235Qをクローニングする。プロモーターは内在性VPS4AまたはVPS4B遺伝子のためのプロモーターであってもよいし、または任意の適切なプロモーターであってもよい(図4から図10までを参照されたい)。例えば、ネオマイシン耐性などの、選択可能なマーカー(正のおよび/または負の選択可能マーカー)を、Vps4ApE228QまたはVps4BpE235Q遺伝子の3'に挿入する(または、対象の遺伝子が、選択可能またはスクリーニング可能マーカーとして機能してもよい)(図6を参照されたい)。発現ベクターおよび選択可能マーカーは、組込みの所望ゲノム部位の5'側および3'側ゲノム配列と隣接する(図6を参照されたい)。ベクターを直鎖状にし、グリア前駆細胞、間葉系幹細胞またはアストロサイト前駆細胞などの宿主細胞中にトランスフェクトする。グリア前駆細胞、間葉系幹細胞およびアストロサイト前駆細胞は、任意で治療される被験体に由来してもよい。 形質転換体を選択によって同定し、安定な形質転換体をさらに同定する。任意に、ドミナントネガティブ変異の発現および正確な組込みに関して、安定な形質転換体を試験してもよい。例えば、変異体タンパク質の生化学的同定により発現をアッセイし、サザンブロット解析またはPCR分析により、組込みを確認しうる。 リソソームタンパク質の分泌を増加させる、ヒトの変異の能力は、当技術分野において公知の方法により、アッセイされうる。例えば、Vps4ApE228QまたはVps4BpE235Qを発現する細胞を、リソソーム加水分解酵素中に変異を有する他の細胞と共にインキュベートする。加水分解酵素を欠失している細胞は、共培養後、約1日から3日で、リソソーム加水分解酵素活性の回復を得る。または、hVps4ApE228QまたはhVps4BpE235Qを発現する細胞を、適当な期間、標準培地中で培養し、その培地を採取し、かつ加水分解酵素(プロ酵素)の分泌をアッセイし、分泌を対照細胞と比較する。培地中の加水分解酵素の存在および/または量は、ELISAまたはウェスタンブロット法によりアッセイされうる。同上。実施例3:治療用細胞を増殖させ、被験体中に導入する 操作された細胞を増殖させ、分化を誘導する適切な因子に曝露しうる。十分量の操作された細胞を増殖させ、移植用に準備する。LSDを有する被験体を鎮静させ、操作された細胞を被験体に導入する。例えば、細胞を、脊髄、頭蓋または、必要に応じて、他の組織中に注射しうる(Kondziolka ら、 2000)。LSDに羅患している被験体に操作細胞を導入することにより、被験体の細胞によって取り込まれ、リソソームに輸送される、機能的なプロ酵素を分泌することにより疾患を治療する。実施例4:ヒトMPR遺伝子置換コンストラクトの作製 二つのMPRが、プロ酵素を含むM6Pをリソソームへ輸送することが知られている。二つの受容体のより大きい方は、約300kDaの分子量を有する。この受容体は、インスリン様増殖因子II(IGFII)にも結合する。二つの受容体のより大きい方である、MPR/IGF2R(GeneCards(商標)アクセッション番号GC06P159829、Weizmann Institute of Science、およびrzpd.de/cards/においてオンラインを通じて利用可能であり、参照により本明細書に組み入れられる)を、本発明に従って用いうるが、ホモ接合型機能損失は、IGFIIの除去障害による致死と関連している。 約46kDaの分子量を有する、小さい方の受容体(ヒトMPR46は、GeneCard(商標)アクセッション番号GC12M008801において見出され、参照により本明細書に組み入れられる)は、マウスにおいては不可欠ではない(Kosterら、1993)。MPR46 -/-マウスは、生存能力があり、増殖力があり、観察される表現型を欠いていた。5221において同上。さらに、マウスにおけるMPR46の過剰発現は、リソソーム蓄積症の症状を発現することなく、リソソームタンパク質の分泌を約10%から約50%増加させた。同上。このように、MPR46は、その遺伝子産物が不可欠ではなく過剰発現が疾患表現型を誘導しないため、本発明において用いうる遺伝子産物を提供する。 MPR(例えば、アクセッション番号NP000867.1)は、適切な選別のために、陽イオン非依存性および陽イオン依存性MPRの細胞質ドメインに選択的に結合する、TIP47(PP17としても公知、アクセッション番号O60664; Q9UBD7; Q9UP92)を必要とする。 ヒトMPR46をRT-PCRによってクローニングし、MPR46を過剰発現する発現カセット中に挿入する。過剰発現カセットを、相同組換えのためのカセット中に導入する。その後、MPR46過剰発現カセットを、グリア前駆細胞、間葉系幹細胞またはアストロサイト前駆細胞などの、宿主細胞のゲノム中に組み込む。例えば、MPR46を、ROSA遺伝子座に組み込み、それによりリソソームプロ酵素の分泌を増加させる。実施例5:二重変異体の作成 実施例4のコンストラクトを、MPR46を過剰発現する細胞の表面上においてMPRの利用能を低下させる変異と結合する。分泌されたリソソームタンパク質の有効量における、さらなる改良は、ドナー細胞の分泌リソソームタンパク質を取り込む能力を低下させることによって、達成されうる。したがって、実施例4のMPR46過剰発現カセットを宿主細胞中のゲノム部位に組み込み、同時にまたは引き続き、第二の変異を、同じまたは二番目のゲノム部位に導入する。例えば、第二のゲノム部位に組み込んだ実施例2のコンストラクトを、MPR46過剰発現カセットと同じ部位に組み入れる。実施例6:普遍的な治療用細胞の作製 正常の細胞内選別メカニズムをドミナントに妨害するタンパク質をコードする導入遺伝子を発現することにより、普遍的な治療用細胞を作製する。例えば、マンノース-6-リン酸受容体のドミナント変異体型を発現する導入遺伝子。M6P結合ドメイン中ではなく、リソソーム指向性小胞へ選別するのに必要なドメイン中に変異を有することによって、MPRを変異させる。そのようにして、M6P含有プロ酵素の分泌を増加させる。 または、ドミナント導入遺伝子は、Rab9またはGGAなどの公知のリソソーム選別タンパク質の、同様に設計される変種中に作製される。特に、別のドミナント導入遺伝子は、酵母におけるドミナント液胞選別変異体と関連する配列変化に基づいて設計される。 もう一つのドミナント導入遺伝子の種類は、特異的なリソソームプロ酵素の過剰発現によって作製され、それにより、正常の細胞内選別メカニズムが飽和し、広範囲のリソソームプロ酵素の分泌が増加する。 導入遺伝子を、例えばグリア前駆細胞、間葉系幹細胞またはアストロサイト前駆細胞などの、普遍的細胞中に導入する。その後、普遍的細胞はさらに分化しうる。普遍的なドナー細胞を、被験体の実質中に、定位的に心室から注射することができる。実施例7:ドミナントネガティブの発現 普遍的な治療用細胞は、正常の細胞内選別メカニズムをドミナントに妨害するタンパク質をコードする導入遺伝子を発現させることにより、作製される。例えば、マンノース-6-リン酸受容体のドミナント変異体型を発現する導入遺伝子。M6P結合ドメインではなく、リソソーム指向性小胞へ選別するのに必要なドメインにおいて変異を有することによって、MPRを変異させる。そのようにして、M6P含有プロ酵素の分泌を増加させる。 サッカロミセス・セレビシエおよび哺乳動物細胞培養物において、液胞タンパク質選別(vps)に関わる酵素が同定されている。vps酵素の特異的な種類(クラスE vps 変異体)中の変異により、効率的にタンパク質を選別、および/または初期エンドソームからリソソームへ輸送することができなくなり、最終的には、分泌経路への間違った選別となることが確認されている。これらの酵素の一つであるVps4は、液胞タンパク質選別の複数循環を可能にする、エンドソーム関連タンパク質複合体を分解するために、ATP加水分解由来のエネルギーを利用する(Babstら、1997)。ATPアーゼ欠損GFP-Vps4融合タンパク質の過剰発現は、エンドサイトーシスされた基質の正常な再循環を阻害する、膨張したエンドソームの形成を誘導し、その結果、それらが分泌経路へ間違って選別されることが示されている(BishopおよびWoodman、2000;Garrusら、2001)。 正常にリソソームに標的化される酵素を異常に多量分泌する、普遍的細胞株を作製するために、GFPに融合したVps4の、二つのドミナントネガティブ対立遺伝子(BishopおよびWoodman、2000、2001)の一過性過剰発現の影響を測定した。一つのVps4ドミナントネガティブ対立遺伝子(Vps4K173Q)はATP結合を阻害するか、対立遺伝子Vps4E228QはATP加水分解を阻害する。GFPのみを発現するベクター(ベクター対照)およびGFP-Vps4ドミナントネガティブ対立遺伝子を、マウスグリア限定前駆細胞(mGRP)中にトランスフェクトした。mGRP細胞4×105 を6 cmペトリ皿中に播種し、N2サプリメント(Sigma)、B27(Sigma)、ウシ血清アルブミン、繊維芽細胞増殖因子および血小板由来増殖因子を補充したDMEM/F12培地中で、一晩、増殖させ、5% CO2において37℃でインキュベートした。翌日に、FuGeneトランスフェクション試薬を用いて製品プロトコール(Roshe)に従い、GFPのみを発現するベクター4μg、Vps4K173Q4μg、およびVps4E228Q4μgで細胞をトランスフェクトした。約30%から50%のトランスフェクション効率が達成された。翌日、培地を交換した。二日後、プレートのそれぞれから培地を回収し、トリクロロ酢酸を用いてタンパク質を沈殿させた。プレートから細胞を剥がすことにより回収し、かつRIPAバッファー(1×PBS、1% Triton X-100、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1% SDS)を用いて、細胞からタンパク質を単離した。培地から単離されたタンパク質、および細胞溶解液を、SDS-PAGEゲル上で分離し、PVDF紙にブロットした。 正常にリソソームへ標的化されるタンパク質レベルは、ウェスタンブロット解析により決定される。これらのタンパク質には以下のものが含まれるが、それらに限定されない:カテプシンB、カテプシンD、カテプシンF、カテプシンL、酸性セラミダーゼ、およびα-グルコシダーゼII。GFPのみのプラスミドでトランスフェクトされた細胞または非トランスフェクト細胞と比べて、GFP-Vsp4ドミナントネガティブ対立遺伝子プラスミドでトランスフェクトした細胞からの培地中には、これらのタンパク質のレベル増加が認められる。非トランスフェクト細胞またはDNA非含有もしくはコントロールベクターでトランスフェクトされた細胞が、対照として用いられる。 または、培地中に分泌されたタンパク質のレベルは、正常にリソソームへ標的化される酵素の活性を測定することによりアッセイされる。GFP-Vsp4ドミナントネガティブ対立遺伝子を発現するプラスミドで一過性にトランスフェクトされた細胞、GFPのみを発現するプラスミドで一過性にトランスフェクトされた細胞、および非トランスフェクト細胞由来の培地を、α-N-アセチルグルコサミニダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、アリルスルファターゼAおよびB、β-グルクロニダーゼ、ヘキソサミニダーゼ、β-グルコシダーゼ、および/またはα-ガラクトシダーゼの存在に関して、標準法を用いてアッセイする(Shapiraら、1989)。 本発明は特定の態様中に記載されているが、本開示の意図および範囲内で、本発明はさらに修正されうる。本出願は、それゆえ本発明の任意の変化、使用または適応も、その一般原理を用いて対象して含むことを意図する。さらに、本出願は、本発明が関連し、かつ添付の特許請求の制限範囲内である、当技術分野において公知または慣例の習慣の範囲内となるような、本開示からの逸脱を対象として含むことを意図する。 刊行物、配列アクセッション番号、特許、および特許出願を含む、本明細書に引用された全ての文献は、各文献が、参照により組み入れられることを、個別かつ具体的に示され、かつ本明細書に全体として示される場合と同程度に、参照により本明細書に組み入れられる。これらの文献を、少なくとも一部分、以下の参考文献一覧に記載する。リソソーム蓄積症のための細胞療法の説明を示す。ゴーシェ病のための細胞療法の説明を示す。ドミナント酵母vps変異体(Robinson, J.ら、1988)におけるCPYの分泌増加を示す。体細胞における相同組換えのための、二つの市販プラスミドの例を示す。複数のプロモーターを用いることができ、かつ標的コンストラクトを含む骨格を変更できることに留意されたい。内在性プロモーターを利用するか、異所性プロモーターを提供するか、または内在性プロモーターを識別するように設計されている、使用可能ないくつかのベクターを示す。置換された遺伝子が、細胞型特異的発現を推進するために内在性プロモーター配列を利用する、組換えの例を示す。内在性プロモーターから転写産物の発現を指示するために、IRES部位を含むベクターを用いる例を示す。内在性遺伝子を破壊し、かつ所望の転写産物を産生するかまたは融合転写産物を産生するための、SA部位を示す。隣接する選択配列を除去するため、cre媒介性組換えを用いた細胞型特異的発現の例を示す。いくつかの方法で反復標的化を行なうことができる、反復相同組換えの例を示す。ひとつの例は、cre/lox媒介性組換え部位を用いる。 少なくとも一つのリソソーム酵素またはプロ酵素の分泌が増加している体細胞を含む、リソソームタンパク質を分泌する細胞。 細胞内ゴルジからリソソームへの選別経路における、少なくとも一つの遺伝子中に機能獲得型または機能損失型変異を含み、該変異により少なくとも一つのリソソーム酵素またはプロ酵素の分泌が増加する、請求項1記載の細胞。 変異が、相同組換えによって細胞のゲノム中に導入される、請求項2記載の細胞。 グリア前駆細胞、間葉系幹細胞またはアストロサイト前駆細胞である、請求項1記載の細胞。 ドミナントネガティブ変異を有する、請求項4記載の細胞。 変異が、相同組換えによって細胞のゲノム中に導入される、請求項5記載の細胞。 リソソーム酵素またはプロ酵素がM6P標的化タンパク質である、請求項1記載の細胞。 変異が、リソソーム酵素またはプロ酵素の酸性クラスタージロイシンモチーフ内にある、請求項1記載の細胞。 変異が、Rab9、マンノース-6-リン酸受容体、MPR46、MPR/IGF2R、TIP47、CI-MPR、CD-MPR、vps、E vps、およびGGAタンパク質からなる群より選択されるタンパク質をコードするヌクレオチド配列中に存在する、請求項1記載の細胞。 ドミナントネガティブ変異が切断型遺伝子産物である、請求項5記載の細胞。 変異が、異種プロモーターに機能的に連結された遺伝子によってコードされる、機能獲得型変異である、請求項2記載の細胞。 変異がVPS4AまたはVPS4B変異である、請求項1記載の細胞。 CNS治療のために改変されるグリア前駆細胞である、請求項5記載の細胞。 非CNS治療ために改変される間葉系幹細胞である、請求項5記載の細胞。 ポンペ病、ハーラー病、ハンター病、サンフィリッポ、モルキオA型、モルキオB型、スライ病、I細胞病、シンドラー病、ウォルマン病、コレステロールエステル蓄積症、ファーバー病、ニーマン・ピック病、ゴーシェ病、クラッベ病、ファブリ病、GM1ガングリオシドーシス、ガラクトシアリドーシス、テイ・サックス病、サンドホフ病、および神経セロイドリポフスチン症からなる群より選択される、少なくとも一つの疾患を治療するために用いられる、請求項1〜14のいずれか一項記載の細胞。 被験体中の中枢神経系を治療する方法であって、以下の工程を含む方法:少なくとも一つのリソソーム酵素またはプロ酵素の分泌が増加している、グリア前駆細胞またはアストロサイト前駆細胞を含む、細胞を作製する工程;および被験体の脊髄中または中枢神経系内に該細胞を導入する工程。 相同組換えによって細胞のゲノム中に変異を導入する工程をさらに含む、請求項16記載の方法。 リソソーム酵素またはプロ酵素がM6P標的化タンパク質である、請求項16記載の方法。 以下の工程をさらに含む、請求項17記載の方法:細胞中でドミナントネガティブ変異を発現することのできるプロモーターに、機能的に連結された該ドミナントネガティブ変異を導入する工程;および細胞中でドミナントネガティブ変異を発現させ、少なくとも一つのリソソーム酵素またはプロ酵素の分泌を増加させる工程。 リソソーム蓄積症を羅患していると考えられる哺乳動物の被験体を治療する方法であって、以下の工程を含む方法:少なくとも一つのグリア前駆細胞、間葉系幹細胞、およびアストロサイト前駆細胞からなる群より選択される、一つまたは複数の細胞を培養する工程;一つまたは複数の細胞中に、関心対象の核酸配列を導入する工程;一つまたは複数の細胞中で、関心対象の核酸配列とゲノム配列とを相同組換えによって組換え、該関心対象の核酸配列の少なくとも一部が、リソソーム酵素またはプロ酵素の分泌を増加させる工程;および哺乳動物の被験体に、該一つまたは複数の細胞を投与する工程。 選択された組換え細胞のゲノム中に、安定に組み込まれた核酸の少なくとも一部を有する組換え細胞を選択する工程をさらに含む、請求項20記載の方法。 選択された組換え細胞を培養する工程、および選択された組換え細胞数を増加させる工程をさらに含む、請求項21記載の方法。 被験体がヒトである、請求項17〜22のいずれか一項記載の方法。 本発明は、体細胞を用いてリソソーム蓄積症を治療する様々な方法、および治療用酵素を送達する方法に関する。特に、体細胞中の一つまたは複数のリソソーム酵素の分泌を増大させるために、細胞内ゴルジからリソソームへの選別経路の構成成分における、機能獲得型または機能損失型変異が用いられ、それにより、特にニューロン細胞におけるリソソーム蓄積症の治療法を提供する。さらに、例えばグリア前駆細胞、間葉系幹細胞およびアストロサイト前駆細胞などの体細胞のように、治療的に有用な細胞を操作し、一つまたは複数のリソソーム酵素の分泌を増大させるのに、相同組換えを用いることができる。