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タイトル:特許公報(B2)_調節性細胞リガンドをリポソームに含有させてなる医薬
出願番号:2006514482
年次:2012
IPC分類:A61K 31/7032,A61K 9/127,A61P 37/06,A61P 37/08,A61P 11/06,A61P 11/02,A61P 17/02,A61P 27/14


特許情報キャッシュ

石井 保之 野澤 りさ 谷口 克 JP 4889485 特許公報(B2) 20111222 2006514482 20050603 調節性細胞リガンドをリポソームに含有させてなる医薬 独立行政法人理化学研究所 503359821 三枝 英二 100065215 斎藤 健治 100099988 石井 保之 野澤 りさ 谷口 克 JP 2004173844 20040611 JP 2004313830 20041028 20120307 A61K 31/7032 20060101AFI20120216BHJP A61K 9/127 20060101ALI20120216BHJP A61P 37/06 20060101ALI20120216BHJP A61P 37/08 20060101ALI20120216BHJP A61P 11/06 20060101ALI20120216BHJP A61P 11/02 20060101ALI20120216BHJP A61P 17/02 20060101ALI20120216BHJP A61P 27/14 20060101ALI20120216BHJP JPA61K31/7032A61K9/127A61P37/06A61P37/08A61P11/06A61P11/02A61P17/02A61P27/14 A61K 31/7032 A61K 9/127 A61P 11/02 A61P 11/06 A61P 17/02 A61P 27/14 A61P 37/06 A61P 37/08 BIOSIS(STN) CAplus(STN) EMBASE(STN) MEDLINE(STN) REGISTRY(STN) 国際公開第2002/070711(WO,A1) 特開平11−302155(JP,A) 特開平08−116971(JP,A) 特開平06−157335(JP,A) 国際公開第2003/009812(WO,A1) 特表2004−507238(JP,A) 国際公開第2004/032969(WO,A1) 国際公開第2002/080952(WO,A1) Journal of Neuroimmunology,1990年,vol.28,p.119-130 Journal of Experimental Medicine,2001年,vol.194, no.12,p.1801-1811 7 JP2005010254 20050603 WO2005120574 20051222 21 20080509 馬場 亮人 本発明は、調節性細胞リガンドをリポソームに含有させてなる医薬、より詳しくは、アレルギー性疾患、自己免疫疾患などの免疫疾患のための医薬に関する。 免疫疾患は、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、移植片対宿主病(GVHD:graft‐versus‐host disease)など免疫系の異常や免疫系の不適合により起こる疾患である。 このうちのアレルギー性疾患の患者は年々増加傾向にあり、何らかのアレルギー性疾患を持つ日本国民は既に70%に達していると報告されている。アレルギー性疾患の範疇は広く、喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症、食物アレルギー、皮膚アレルギー等様々な疾患を含んでいるが、アレルギー患者の多くはアレルギー・マーチと呼ばれる各種のアレルギー性疾患を連鎖的に発症していくことが知られている。また近年、我国においてアレルギー性鼻炎やアレルギー結膜炎を併発する花粉症や小児アトピー性喘息の患者が激増している理由として、免疫系が形成される乳幼児期の生活環境、特に免疫学的環境の変化(細菌感染の減少、気密性の高い住居におけるハウスダスト濃度の増大)がIgE抗体産生を高めているとも考えられる。狭義のアレルギー性疾患と呼ばれるアレルギー性鼻炎、アレルギー結膜炎、アトピー性喘息はIgE抗体並びにその産生を誘導するTh2細胞が関与するI型アレルギー反応により発症することが明らかである。また、それ以外の各種アレルギー性疾患においてもIgE抗体やTh2優位が発症段階に深く関与してことが数多く報告されている。以上の事柄から、I型アレルギー反応を司るIgE抗体の産生抑制並びにTh2分化抑制がアレルギー性疾患治療法の有効な手段となり得えることが予想される。今後さらに増加することが予想されるアレルギー患者に対しては、アレルギー発症機序に基づき作製された薬物による原因療法もしくはアレルギー発症を未然に防ぐ予防(ワクチン)法が有効であると考えられるが、それらには高い安全性(低い副作用)の保証が必要である。 ヒト型抗IgE抗体(rhuMAb-E25、Genentech Inc.)はアトピー性喘息患者を対象とした臨床治験において高い有効性が示されている(非特許文献1参照)。人工的な化合物を用いた抗原特異的IgE抗体産生抑制の試みとして、スギ花粉抗原Cryj1遺伝子を組み込んだプラスミドDNAを免疫したBALB/cマウスではTh1タイプの免疫応答が惹起され、その結果IgG2a抗体を産生するようになり、Cryj1抗原とアラムをブーストしてもIgG1とIgE抗体産生は抑制された(非特許文献2参照)。またOVA-IL-12融合蛋白質をマウスに免疫した場合にもOVA特異的Th1タイプの免疫応答が起き、その効率はOVAとIL-12の混合液で免疫する場合よりもはるかに効率よく、OVA特異的IgG2a抗体を産生させることが報告されている(非特許文献3参照)。この報告は、抗原とサイトカイン誘導因子複合体の免疫によりTh1 偏向、それに伴うIgE抗体の抗原特異的産生抑制が可能であることを示している。 また、アレルギー疾患を予防したり寛解へ導くためには、ThやIgE抗体産生B細胞の分化増殖および機能を抑制する調節性細胞の制御が有効な手段となりえる。NKT細胞は、癌細胞、寄生虫や原虫、およびリステリアや結核菌などの細胞内感染細菌の排除に重要な役割を果たす調節性細胞であると考えられている(非特許文献4参照)。NKT細胞は、中等度にT細胞レセプター(TCR)を発現するintermediate TCR細胞(TCRint細胞)で、Large Granulra Lymphocyte(LGL)様の形態を示すこと、IL-2R β鎖を常時表出すること、パーフォリン顆粒を有する点などでは、Natural Killer(NK)細胞と類縁の細胞であるが、TCRを有するという点でNK細胞とは決定的に異なる細胞群であることが明らかとなっている(非特許文献5参照)。Vα14+NKT細胞は上記のNKT細胞の一つのサブセットであり、Vα14+NKT細胞の多くはVα14Jα281mRNAを発現しており、これをTCRα鎖として持っている。マウスVα14Jα281鎖と相同のヒトホモログであるVα24JaQ鎖は、健常人では末梢血のCD4-/CD8-T細胞中に20-50%存在している (非特許文献6参照)。 これらNKT細胞のリガンド化合物であるα-ガラクトシルセラミドは、IFN-γとIL-4の両方のサイトカイン産生を誘導することから、NKT細胞がTh1/Th2分化の調節細胞であることが示されている(非特許文献7参照)。α-ガラクトシルセラミドをC57BL/6マウスに投与すると、DNP-OVAとアラムで惹起されるIgE抗体産生が抑制され、Vα14-NKT細胞欠損マウスを用いた同様の実験ではIgE抗体産生抑制が見られないことが知られている(非特許文献8参照)。またI型糖尿病モデルであるNODマウスにα-ガラクトシルセラミドを投与した実験では、症状の改善が見られることから、Vα14-NKT細胞がTh2を介する免疫応答を増強する可能性も示唆されている(非特許文献9参照)。しかしながら、α-ガラクトシルセラミド単独で得られる効果は十分なものではなく、さらなる薬効の改善が求められていた。 一方、β-ガラクトシルセラミドやβ−グルコシルセラミドは生体内に種々存在しているが、α-ガラクトシルセラミドの免疫賦活作用や抗腫瘍作用に比べてはるかに低い活性しか有しないことが示されている(非特許文献10−12、特許文献1参照)。 さらにNKT細胞は自己免疫疾患モデルにも有効な働きを示すことが知られている(特許文献13−16参照)。したがって、NKT細胞の免疫抑制機能、例えばIL-10産生を選択的に増強することができれば、アレルギー疾患のみならず、自己免疫疾患やGVHDなどの他の免疫疾患の治療にも有効であると考えられる。しかしながら、単独でNKT細胞の免疫抑制機能を選択的に増強できるリガンドは知られていなかった。また、このような目的にリポソームが用いられることはなかった。特開平1-93562号公報Immunopharmacology, 48:307 (2000)Immunology, 99:179(2000)J. Immunol., 158:4137 (1997)Clin.Immunol.,28,1069(1996)J.Immunol.,155,2972(1995)J.Exp.Med.,182,1163(1995)Nakayama. T., et al., Int Arch Allergy Immunol 124,:38-42 (2001)J. Exp. Med., 190,783-792:1999Nat. Med., 7:1052-1056 (2001)Biochem. Biophys. Acta, 280, 626(1972)Biochem. Biophys. Acta, 316, 317 (1973)Biol. Pharm. Bull., 18, 1487(1995)J.Exp.Med.,186:677 (1997)J.Immunol., 166:62 (2001)J.Exp.Med.,194:1801 (2001)Nature, 413:531(2001) 本発明は、生体内の調節性細胞を標的とした医薬、主に、アレルギー性疾患、自己免疫疾患などの免疫疾患のための医薬を提供することを課題とする。 本発明者らは、β-ガラクトシルセラミド、α−ガラクトシルセラミドなどの調節性細胞リガンドをリポソームに含有した組成物が、これらの化合物の単独の溶液では発揮されないIL-10産生T細胞の誘導作用とIgE抗体産生抑制作用を有し、アレルギー性疾患などの免疫疾患の予防ないし治療剤として有効であることを見出した。さらに、α−ガラクトシルセラミドをリポソームに含有した組成物はNKT細胞の免疫抑制機能を選択的に増強することにより、病原性(pathogenic)T細胞の分化増殖を抑制することができ、そのため自己免疫疾患や移植片対宿主病の予防ないし治療剤としても有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、以下のとおりである: (1)調節性細胞リガンドを含有するリポソームを有効成分とする医薬。 (2)調節性細胞がNKT細胞である、(1)の医薬。 (3)調節性細胞リガンドがβ−ガラクトシルセラミドである、(1)または(2)の医薬。 (4)調節性細胞リガンドがα−ガラクトシルセラミドである、(1)または(2)の医薬。 (5)前記リポソームが、さらにCpGオリゴヌクレオチド又はイミクモドを含有する、(1)〜(4)のいずれかの医薬。 (6)前記リポソームが、さらにアレルゲンを含有する、(1)〜(5)のいずれかの医薬。 (7)免疫疾患の予防剤または治療剤である、(1)〜(6)のいずれかの医薬。 (8)免疫疾患がアレルギー性疾患である、(7)の医薬。 (9)アレルギー性疾患がアトピー型気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症またはアトピー性皮膚炎である、(8)の医薬。 (10)自己免疫疾患、または移植片対宿主病の予防剤または治療剤である、(4)の医薬。 (11)調節性細胞リガンドを含有するリポソームを有効成分とする調節性細胞誘導剤。Lipo-βまたはその他リポソーム組成物または生理食塩水を、BALB/cマウスの脾臓中CD11c+DCの培養系に添加したin vitro サイトカイン産生実験の結果を示す。縦軸は、添加後の培養上清中の各種サイトカインの濃度を示す。Lipo-βまたはその他リポソーム組成物または生理食塩水を、C57BL/6マウスの脾臓中CD11c+DCの培養系に添加したin vitro サイトカイン産生実験の結果を示す。縦軸は、添加後の培養上清中の各種サイトカインの濃度を示す。Lipo-βまたはその他リポソーム組成物または生理食塩水を、BALB/cマウスの脾臓中CD11c+DCの培養系に添加したin vitro サイトカイン産生実験の結果を示す。縦軸は、添加後の培養上清中のIL-10の濃度を示す。Lipo-βまたは生理食塩水(saline)を投与したBDF1マウスにDNP-OVAとアラムで初回免疫した後とDNP-OVA単独で追加免疫した後の血漿中DNP-OVA特異的抗体産生をELISA法で測定した結果を示す。Lipo-βまたは生理食塩水(陰性コントロール)を投与したBALB/cマウスの7日目の脾臓中CD11c+DCとDO11.10(OVA特異的TCRαβトランスジェニック)マウス由来CD4+T細胞をOVAペプチド存在下に4日間の培養した後の培養上清中サイトカイン濃度を測定した結果を示す。図5の実験で増殖した細胞をBALB/cマウスに養子移入した後、DNP-OVAとアラムで免疫し14日目の血中抗体価を測定した結果を示す。培養液(medium)、α-ガラクトシルセラミド水溶液(α-GalCer)、コントロールのリポソーム組成物(Lipo-(-))またはα-ガラクトシルセラミド含有リポソーム(Lipo-αGC)を、C57BL/6マウスの脾臓全細胞(上段)、抗CD1d中和抗体を添加した同細胞(下段)またはNKT欠損マウスの脾臓全細胞(下段)の培養液中に添加したin vitro サイトカイン産生実験の結果を示す。横軸は添加後2日目の培養上清中の各種サイトカインの濃度を示す。生理食塩水(saline)、Lipo-(-)またはLipo-αGCをC57BL/6マウスに投与後3日目または7日目の脾臓中Vα14-NKT細胞数をフローサイトメトリで解析した結果を示す。横軸がFITC標識抗TCRβ抗体、縦軸がPE標識CD1d tetramer+α-GalCerの蛍光強度を示す。C57BL/6マウス(上段)またはIL-10遺伝子欠損マウス(下段)にsaline 、α-GalCer 、Lipo-(-)またはLipo-αGCを投与後3日目にDNP-OVAとアラムで免疫し、その14日後に測定した血中抗DNP-IgE、-IgG1、-IgG2a抗体価を示す。BDF1マウスにsaline 、α-GalCer 、Lipo-(-)またはLipo-αGCをLipo-αGCを投与後3日目(day 0)にDNP-OVAとアラムで免疫し、次にday 55にDNP-OVA単独による追加免疫をした実験において、day 0, 14, 55, 64に測定した血中抗DNP-IgE、-IgG1、-IgG2a抗体価および全IgE, IgG1, IgG2a値を示す。BDF1マウスにsaline 、α-GalCer 、Lipo-(-)またはLipo-αGCをLipo-αGCを投与後3日目にDNP-OVAとアラムで免疫し、7日目の脾臓CD4+T細胞を放射線照射した正常BDF1マウス脾臓全細胞とDNP-OVA、またはPMAとIonomycinで刺激し48時間後の細胞増殖能をMTT法で測定した結果を示す。左図の横軸はDNP-OVAの濃度を、縦軸は波長570 nMの吸光度(Absorbance)をそれぞれ示している。BALB/cマウスにsaline 、α-GalCer 、Lipo-(-)またはLipo-αGCを投与後3日目の脾臓中細胞を抗CD11c 抗体と抗CD45RB抗体で染色した後、フローサイトメトリで解析した結果を示す。図11のフローサイトメモリ解析で得られた細胞数比と全脾臓細胞数を乗じたCD11clowCD45RBhigh細胞数とCD11chighCD45RBlow細胞数を示す。BALB/cマウスにLipo-αGCを投与後、3日目の脾臓細胞から分離回収したCD11clowCD45RBhigh細胞とCD11chighCD45RBlow細胞をLPSで刺激した後2日目の培養上清中サイトカインを測定した結果を示す。横軸は培養上清中のサイトカイン濃度を示すOVA323-339ペプチドでパルスしたCD11clowCD45RBhigh細胞またはCD11chighCD45RBlow細胞をDO11.10マウス脾臓由来CD4+T細胞と共培養し、48時間後の細胞増殖能をMTT法で測定した結果を示す。横軸は、波長570 nMの吸光度(Absorbance)を示す。OVA323-339ペプチドでパルスしたCD11clowCD45RBhigh細胞またはCD11chighCD45RBlow細胞をDO11.10マウス脾臓由来CD4+T細胞と共培養して増殖した細胞を抗CD4抗体と抗CD25、CD28、CD152、ICOS抗体のフローサイトメトリ解析の結果を示す。OVA323-339ペプチドでパルスしたCD11clowCD45RBhigh細胞またはCD11chighCD45RBlow細胞をDO11.10マウス脾臓由来CD4+T細胞と共培養して増殖した細胞を、PMAとionomycinによる刺激した後の細胞内サイトカイン発現をフローサイトメトリで解析した結果を示す。上段はアイソタイプコントロール抗体による細胞内染色、下段はサイトカイン特異的抗体による細胞内染色パターンをそれぞれ示す。Lipo-αGCまたLipo-αGC+OVAを投与したBDF1マウスの脾臓由来CD4+T細胞をin vitroで同種の放射線照射脾細胞とOVAタンパク質存在下に培養し、6日目にPMAとionomycinで刺激後、細胞内サイトカイン発現をフローサイトメトリで解析した結果を示す。上段はLipo-αGC投与マウスの脾臓由来CD4+T細胞の細胞内染色、下段はLipo-αGC+OVA投与マウスの脾臓由来CD4+T細胞の細胞内染色をそれぞれ示す。BDF1マウスをDNP-OVAとアラムで免疫後21、28、35日目にリポソームのみ(Vehicle)、Lipo-αGCまたLipo-αGC + OVAを投与し、次に42日目にDNP-OVA抗原単独による追加免疫を行ない、48日目に測定した血中抗DNP-IgE、-IgG1、-IgG2a抗体価(上段)および全IgE、IgG1、IgG2a値(下段)を示す。 *, p <0.05; **, p <0.005; ***, p <0.001 本明細書において、「調節性細胞」としては、NKT細胞(Natural killer T細胞)、IL-10産生Tr1細胞、DC細胞(Dendritic Cell)などが挙げられ、その中ではNKT細胞が特に好ましい。 「調節性細胞リガンド」とは、上記調節性細胞の細胞表面受容体に結合して該調節性細胞の分化・増殖または活性化を促進するものであれば特に制限されないが、例えば、以下のようなものが挙げられる。ただし、調節性細胞リガンドはこれらには限定されない。(i)NKT細胞のリガンドであるα−ガラクトシルセラミド、β-ガラクトシルセラミドなどのガラクトシルセラミド類;(ii)調節性樹状細胞(DC)の分化増殖に働くVitaminD3, デキサメサゾン、TGF−β、IL-10等;(iii)調節性T細胞の分化増殖に働く、IL-10やFoxP3などの発現を誘導する物質。 本発明の「調節性細胞誘導剤」とは、調節性細胞の分化・増殖または活性化を誘導する薬剤をいう。調節性細胞の分化・増殖または活性化の促進は、例えば、実施例に示すように、脾臓CD11c+DCなどを用いて、その中に含まれるNKT細胞やIL-10産生Tr1細胞の増殖を測定したり、NKT細胞やIL-10産生Tr1細胞によって産生されるサイトカイン(IFN-γ, IL-10, IL-4など)を定量したりすることによって確認することができる。 本発明の「調節性細胞リガンドを含有するリポソーム」は、調節性細胞であるNKT細胞やIL-10産生Tr1細胞を誘導し、さらに、ヘルパーT細胞の活性化を抑制する活性を有し、且つB細胞から放出されるIgE抗体の産生抑制作用を有するものが好ましい。具体的には、上記のような「調節性細胞リガンド」をリポソーム中に含有するものであるが、これらの中でもα−ガラクトシルセラミド、またはβ-ガラクトシルセラミドをリポソームの脂質二重膜内に包含した組成物が好ましい。なお、本発明の「調節性細胞リガンドを含有するリポソーム」は、「調節性細胞リガンド」を2種類以上含有するものであってもよい。 本発明の「調節性細胞リガンドを含有するリポソーム」は、調節性細胞リガンドに加えて、さらに、TLRs(Toll-like receptor)ファミリーリガンド類を含有するものであってもよい。TLRsファミリーリガンド類を加えることで、「調節性細胞」の働きを調節するサイトカインの産生が増加し、より効果を高めることができる。TLRsファミリーリガンド類としては、CpGオリゴヌクレオチド(CpGODN)イミクモド(imiquimod :1-(2-methylproryl)-1H-imidazo[4,5-c] quinolin-4-amine)などが挙げられる。 また、「調節性細胞リガンドを含有するリポソーム」は、さらにアレルゲンを含むものであってもよい。アレルゲンはアレルギーを引き起こす物質をいうが、好ましくは花粉抗原やダニ抗原が挙げられる。アレルゲンとして具体的には、OVA(卵白アルブミン)が挙げられる。 本発明は上記のような調節性細胞リガンド、好ましくはガラクトシルセラミドなどの脂溶性化合物を水溶性高分子物質として組み込んだリポソームを提供するものである。 本明細書においては、ミセル(親水性領域と疎水性領域を含む両親媒性分子の凝集によって得られる水溶性粒子)が閉鎖した小胞構造をとるものをリポソームと呼ぶ。リポソーム成分としては、既知の方法でミセルを形成できる両親媒性分子であれば如何なるものであってもよく、好ましくは脂質が挙げられる。本発明における脂質としては、例えばジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)等のリン脂質、スフィンゴ等脂質、グリセロ糖脂質等があり、これらを単独または二種以上、あるいはコレステロール等の非極性物質やポリエチレングリコール等の水溶性高分子が脂質に結合した脂質誘導体等と組み合わせてリポソームの作製に使用される。 リポソームは、公知の方法に従って調製することができる。例えば、Liposome Technology, vol. 1, 2nd edition (by Gregory Gregoriadis (CRC Press, Boca Raton, Ann Arbor, London, Tokyo), Chapter 4, pp67-80, Chapter 10, pp167-184 and Chapter 17, pp261-276 (1993))に記載された方法を用いることができる。より具体的には、超音波処理法、エタノール注入法、フレンチプレス法、エーテル注入法、コール酸法、カルシウム融合法、凍結融解法、逆相蒸発法等が挙げられるが、これに限られるものではない。本発明のリポソームのサイズは、特に制限されないが、通常は平均100〜200nmが好ましく、100〜150nmがより好ましい。リポソームの構造も特に限定されず、ユニラメラ、マルチラメラなどいかなるリポソームであってもよい。リポソームの内部に内包される溶液としては、水のほか、緩衝液、生理食塩水などを用いることができる。これらに水溶性有機溶媒(例えばグリセリンなど)を適宜の量加えて用いることも可能である。 なお、本発明の医薬に用いられるリポソームは、「調節性細胞リガンドを含有するリポソーム」を標的部位にターゲッティングするために、リポソーム表面が修飾されたものであってもよい。標的部位としては、例えば、肝臓、脾臓、リンパ節、骨髄、肺、眼、皮膚、眼、鼻などが挙げられる。 リポソーム表面を修飾する物質としては、低分子化合物、高分子化合物、核酸、ペプチド、タンパク質、糖鎖などが挙げられる。高分子化合物としては、ポリエチレングリコールなどが挙げられる(例えば、特許第2948246号参照)。核酸としては、例えば、標的細胞のToll様受容体のTLR-7やTLR-9を認識するsingle strand RNAやsingle strand DNAおよびそれら核酸の誘導体などが挙げられる。タンパク質としては、例えば、抗原提示細胞である樹状細胞(DC)またはその前駆細胞などの標的細胞表面に特異的に発現する分子を認識する抗体やレセプターなどが挙げられる。糖鎖による修飾としては、DC細胞表面に発現するマンノース受容体に結合しうる、マンノース結合脂質による修飾等が挙げられる(例えば、Copland, M. J., et al., (2003)Liposome delivery of antigen to human dendritic cells, Vaccine, 21:883-890、参照)。 リポソームへのリガンドの封入は通常の方法により行うことができる。例えば、実施例に示すように、リポソームの成分及びリガンドをそれぞれ有機溶媒に溶解し、これらを混合して、水を加えることによって調節性細胞リガンドを含むリポソームを得ることができる。ただし、調節性細胞リガンドを含むリポソームの製造法は上記のものに限定されない。 「調節性細胞リガンドを含有するリポソーム」は、医薬の有効成分として用いることができる。 すなわち、「調節性細胞リガンドを含有するリポソーム」は、調節性細胞であるNKTやIL-10産生Tr1細胞を誘導し、ヘルパーT細胞の活性化を抑制する活性を有し、且つB細胞から放出されるIgE抗体の産生抑制作用を有するため、本発明の医薬はIgE抗体に起因するアレルギー性疾患の予防剤ないし治療剤として有効である。IgE抗体は特にアレルギー性疾患との関連が深く、これらの産生(分泌)を抑制することにより、I型アレルギー性疾患の予防ないし治療効果を得ることができる。IgE抗体と関連するアレルギー性疾患としては、アトピー型気管支喘息、アトピー性皮膚炎、及びアレルギー性鼻炎や花粉症等のアレルギー性鼻炎が挙げられる。なお、本発明において、アレルギー性疾患の予防とは、アレルギー性疾患を患っていないヒトを含む哺乳動物が該疾患にかからないようにすることのみならず、症状が一時的に出ていないアレルギー性疾患患者(ヒトを含む哺乳動物)において症状が出ないようにすることも含む。 また、「調節性細胞リガンドを含有するリポソーム」はT細胞の活性化を抑制する作用を有しているため、本発明の医薬は劇症肝炎などの疾患の予防剤または治療剤としても有効である。 また、α-ガラクトシルセラミドを含有するリポソームはNKT細胞の免疫抑制機能を選択的に増強する効果を有しているため、α-ガラクトシルセラミドを含有するリポソームを有効成分として含有する医薬は、免疫抑制能を有する医薬としても有効である。具体的には、リウマチ、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、膠原病などの自己免疫疾患のための医薬や、移植の際の拒絶反応などのGVHDのための医薬としても有効である。 なお、α−ガラクトシルセラミドとしては、NKT細胞の表面受容体に結合してNKT細胞の免疫抑制機能を選択的に増強するものである限り特に制限されないが、ヒトではVα24JαQ、マウスではVα14Jα281で構成される受容体に結合するものが好ましく、分子量としては400〜2000のものが好ましい。 一方、本発明に用いるβ-ガラクトシルセラミドは、分子量400〜2000のものが好ましい。 本発明の別の態様としては、イミクモドを含有するリポソームを有効成分とする医薬が提供される。イミクモドをリポソームに含有させることで、イミクモド単独の場合に比べてIL-10やIFN-αなどの産生量が向上し、それにより、NKT細胞が活性化される。したがって、イミクモドを含有するリポソームを有効成分する医薬は、上述したようなアレルギー疾患の予防または治療のための医薬として有用である。 本発明の医薬の投与経路としては、経口および非経口のいずれでも投与することができ、臨床医によって適宜選択される。また有効成分である「調節性細胞リガンドを含有するリポソーム」を、単独または通常使用される担体と共に投与することができる。 本発明の医薬を経口投与する場合、薬剤の形態として、本発明の医薬を経口投与する場合は、薬剤の形態として、錠剤、被覆錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤等の固形製剤、液剤(例えば、点眼剤、点鼻薬等)、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等の液状製剤、エアゾール剤、アトマイザー、ネブライザー等の吸入剤、およびリポソーム封入剤等があげられる。 本発明の医薬を非経口投与する場合は、薬剤の形態として静脈注射、皮下注射、皮内注射、筋肉注射および腹腔内注射などに使用される注射剤(液剤、懸濁剤等)、液剤、懸濁剤、乳剤、点滴剤等があげられる。 本発明の医薬が液状製剤である場合は、凍結保存または凍結乾燥等により水分を除去して保存してもよい。凍結乾燥製剤は、使用時に注射用蒸留水等を加え、再度溶解して使用される。 本発明の医薬に利用される薬学的に許容される担体としては、製剤の使用形態に応じて通常使用される、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、吸収促進剤、保湿剤、吸着剤、滑沢剤、充填剤、増量剤、付湿剤、防腐剤、安定剤、乳化剤、可溶化剤、浸透圧を調節する塩、緩衝剤等の希釈剤又は賦形剤を例示でき、これらは得られる製剤の投与単位形態に応じて適宜選択使用される。 さらに、本発明の医薬中には、必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等や他の医薬品を含有させて、剤として調製することもできる。 「調節性細胞リガンドを含有するリポソーム」の有効量は、当業者が従来の技術を参考に容易に決定することができるが、例えば、体重1kgあたり0.1−100mg程度、好ましくは1−10mg程度であり、これを1日あたり1−3回に分けて投与することができるが、各種製剤の形態、患者の性別、年齢、疾患の程度に合わせて適宜調節することが好ましい。[実施例] 以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではなく、本発明の技術分野における通常の変更ができることは言うまでもない。<リガンド含有リポソームの作製と活性測定>1.β-ガラクトシルセラミド含有リポソーム(Lipo-β)の作製 L-α-Phosphatidylethanolamine,dioleoyl (DOPE;和光純薬 #166-16183) 0.77 mg、Cholesteryl 3β-N-(dimethylaminoethyl)carbonate hydrochloride(DC-Chol;SIGMA-Aldrich)0.83 mg、1,2-Distearoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine-N-[Methoxy(polyethylene glycol)-2000](AVANTI POLAR-LIPIDS, INC. #i88653) 0.029mgを、クロロホルム/メタノール(1:1)溶媒250μlに溶解した。また、β-ガラクトシルセラミド(Ceramide β-D-galactoside;Sigma-Aldrich #C4905)0.16 mgは別にクロロホルム/メタノール(1:1)溶媒250μlに溶解した。次に、両者を混合しエバポレーターで乾固させた後、真空下のデシケーター内で一晩乾燥させた。次に水を800μl添加し、超音波破砕装置にて1分間処理した後、Extruder(AVESTIN; LiposoFast-Basic)で加圧ろ過により整粒し、ポアサイズ0.22μmのメンブランで滅菌した。このリポソーム組成物(Lipo-β)の最終濃度を200μl/mlとした。同様の方法で、β-ガラクトシルセラミドを含有しないリポソーム組成物(Lipo-0)を調製した。またLipo-βにオリゴヌクレオチドCpGODN (1668)(SIGMA GENOSIS製)を重量比1:5で混合した後、脱塩カラムNAP-10を通して回収した溶出物をLipo-β-CpGとした。2.イミクモド含有リポソームの作製 L-α-Phosphatidylethanolamine,dioleoyl (DOPE;和光純薬 #166-16183) 0.77 mg、Cholesteryl 3β-N-(dimethylaminoethyl)carbonate hydrochloride(DC-Chol;SIGMA-Aldrich)0.83 mg、1,2-Distearoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine-N-[Methoxy(polyethylene glycol)-2000](AVANTI POLAR-LIPIDS, INC. #i88653) 0.029mgをクロロホルム/メタノール(1:1)溶媒250μlに溶解した。また、イミクモド(Imiquimod;Sequoia Research Products Ltd; SRP0058i)0.16 mgは別にクロロホルム/メタノール(1:1)溶媒250μlに溶解した。次に、両者を混合しエバポレーターで乾固させた後、真空下のデシケーター内で一晩乾燥させた。次に水を800μl添加し、超音波破砕装置にて1分間処理した後、Extruder(AVESTIN; LiposoFast-Basic)で加圧ろ過により整粒し、ポアサイズ0.22μmのメンブランで滅菌した。このリポソーム組成物(Lipo-Imq)の最終濃度を200μl/mlとした。上記組成物に同様な方法で、さらに、Ceramide β-D-galactoside(Sigma-Aldrich #C4905)を含有させたリポソーム組成物(Lipo-Imq-βGC)を調製した。またLipo-ImqにオリゴヌクレオチドCpGODN (1668)を重量比1:5で混合した後、脱塩カラムNAP-10を通して回収した溶出物をLipo-Imq-CpGとした。3.リガンド含有リポソームの樹状細胞(DC)に対するin vitro活性測定 BALB/cまたはC57BL/6マウスの脾臓に1 mg/mlのコラゲナーゼD(ロッシュ)を注入し、CO2インキュベータ内で45分間インキュベートした。次に、脾臓から細胞を抽出し3 mlのHistoDenz (14.1%, SIGMA)に懸濁した後、50 μMの2−メルカプトエタノール(2ME)含有X-VIVO 15(タカラバイオ社)を重層した。1500 rpmで5分間遠心後、中間層の細胞を回収し、50μM 2ME, 0.5% 牛胎児血清, 20ng/ml rmGM-CSF(ファーミンジェン) を含有する X-VIVO 15培地中にCO2インキュベータ内で1時間30分間インキュベートした。軽くピペッティング後、浮遊細胞を除去し、50μM 2ME, 0.5% 牛胎児血清, 20ng/ml rmGM-CSF(ファーミンジェン) を含有する X-VIVO 15培地を添加し、CO2インキュベータ内で18時間培養した。浮遊細胞を回収後、抗CD11c抗体磁性マイクロビーズ(Miltenyi)に結合する細胞を回収し、脾臓CD11c+DCとした。1x104個のCD11c+DCを10%牛胎児血清含有RPMI培地 200μlに懸濁後、最終濃度1 μg/mlのリポソーム組成物を添加し、96穴U底マイクロタイタープレートにて、37℃の5% CO2含有インキュベータ内で培養した。48時間後の培養上清を回収し、ELISA法にてIFN-α, IL-10, IL-12を測定した(図1、2)。Lipo-βやLipo-Imq添加群ではIL-10とIFN-α産生が高くIL-12産生が低かったが、逆にLipo-β-CpGやLipo-Imq-CpG添加群ではIL-10とIFN-α産生が低く、IL-12産生が高かった。一方、非添加群(Control)及びLipo-0またはβ-ガラクトシルセラミド(β-GalCer)溶液添加群では全てのサイトカイン産生が検出されないか低値であった。また、同様な評価法にてLipo-Imq-βGCによるCD11c+DCからのIL-10産生能を測定した結果、Lipo-β単独もしくはLipo-Imq単独に比べて著しく高いIL-10産生能を有することが確認された(図3)。<Lipo-βのin vivo IgE抗体産生抑制効果> BDF1マウス(5匹/群)にLipo-βを2 μg/匹の用量で腹腔内投与し、7日目(0日)にDNP-OVA 0.1μg(コスモバイオ)とアラム 10mgで初回免疫した。初回免疫後14日目に眼窩採血し、マウス血漿中の抗DNP-IgG1、-IgE、-IgG2a抗体価をELISA法で測定した(図4の14日)。さらに、初回免疫後35日目にDNP-OVA抗原単独で追加免疫を行い、その7日後に眼窩採血した血漿中の抗DNP-IgG1、-IgE抗体価をELISA法で測定した(図4の42日)。Lipo-β投与群では、14日で既にIgG1抗体およびIgE抗体の産生抑制傾向が見られ、さらに追加免疫後の42日にはIgG1抗体とIgE抗体の上昇が完全に抑制されていた。<Lipo-β投与マウス由来樹状細胞(DC)による調節性T細胞誘導作用>1. in vitroでのT細胞活性化能の評価 BALB/cマウスにLipo-βまたは生理食塩水を腹腔内に2 μg/匹投与し、7日後に脾臓を摘出した。脾臓中に1 mg/mlのコラゲナーゼD(ロッシュ)を注入し、CO2インキュベータ内で45分間インキュベートした。次に、脾臓から細胞を抽出し3 mlのHistoDenz (14.1%, SIGMA)に懸濁した後、50 μMの2−メルカプトエタノール(2ME)含有X-VIVO 15を重層した。1500 rpmで5分間遠心後、中間層の細胞を回収し、50μM 2ME, 0.5% 牛胎児血清, 20ng/ml rmGM-CSF(ファーミンジェン) を含有する X-VIVO 15培地中にCO2インキュベータ内で1時間30分間インキュベートした。軽くピペッティング後、浮遊細胞を除去し、50μM 2ME, 0.5% 牛胎児血清, 20ng/ml rmGM-CSF(ファーミンジェン) を含有する X-VIVO 15培地を添加し、CO2インキュベータ内で18時間培養した。浮遊細胞を回収し、抗CD11c抗体磁性マイクロビーズ(Miltenyi)に結合する細胞を回収し、脾臓CD11c+DCとした。OVA特異的TCRαβトランスジェニックDO11.10マウス(Science, 1990, vol. 250, p1720;千葉大学大学院医学研究院、中山俊憲氏より入手)の脾臓からCD4+T細胞を抗体磁性マイクロビーズ(Miltenyi)で回収した。次に、2 X 104個のCD11c+DCと1 X 105個のCD4+T細胞をOVAペプチド存在下に、CO2インキュベータ内で4日間培養後、培養上清を回収し、ELISA法にてIFN-γ, IL-4, IL-10産生量を測定した(図5)。その結果、Lipo-β投与マウス脾臓由来DCと生理食塩水投与マウス(normal)脾臓由来DCを用いた場合では、IL-4とIFN-γの産生量に差は見られなかったが、IL-10産生はLipo-β投与マウス脾臓DCでOVAペプチド濃度が3 nMと30 nMの時にのみ検出された。また同時に調節性細胞の増殖も確認された。2.養子移入法によるin vivo IgE抗体産生抑制作用の評価 上記1.のin vitro実験で、Lipo-β投与マウス由来脾臓DCとOVAペプチド濃度 3 nMまたは30 nMで増殖したDO11.10-CD4+T細胞を回収し、1 x 106個をBALB/cマウス(3匹/群)の腹腔に移入した。その1時間後に、DNP-OVA (10μg)とアラム(10 mg)による初回免疫を行ない、14日目に眼窩採血を行った。血漿中の抗DNP-IgG1、抗DNP-IgE、抗DNP-IgG2aそれぞれの抗体価をELISA法で測定した(図6)。その結果、3 nM のOVAペプチド濃度で刺激して増殖させたDO11.10-CD4+T細胞を養子移入したマウスでは、IgE抗体産生が完全に抑制された。一方、30 nM のOVAペプチド濃度で刺激して増殖させたDO11.10-CD4+T細胞を養子移入したマウスではIgE抗体産生の抑制効果は低かった。また、IgG1抗体やIgG2a抗体の抑制は両群とも顕著ではなかった。<リガンド含有リポソームの作製と活性測定>1.α-ガラクトシルセラミド含有リポソームの作製L-α-Phosphatidylethanolamine,dioleoyl (DOPE;和光純薬 #166-16183) 0.77 mgとCholesteryl 3β-N-(dimethylaminoethyl)carbonate hydrochloride(DC-Chol;Sigama-aldrich #C2832)0.83 mgをクロロホルム/メタノール(1:1)溶媒250μlに溶解した。また、α-ガラクトシルセラミド(独立行政法人理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センター製;KRN7000、国際公開パンフレット第98/44928号参照)0.16 mgは別にクロロホルム/メタノール(1:1)溶媒250μlに溶解した。次に、両者を混合しエバポレーターで乾固させた後、真空下のデシケーター内で一晩乾燥させた。次に水を800μl添加し、超音波破砕装置にて1分間処理した後、ポアサイズ0.22μmの滅菌用メンブランを通過させた。このリポソーム組成物(Lipo-αGC)の最終濃度を200μg/mlとした。また同様に、α-ガラクトシルセラミドを含有しないコントロール用リポソーム組成物(Lipo-(-))を作製した。2.Lipo-αGCのサイトカイン産生能の測定 C57BL/6マウスの脾臓全細胞2x105個を、100 ng/mlのLipo-(-)、Lipo-αGCまたはα-ガラクトシルセラミド水溶液(α-GalCer)を添加した10%牛胎児血清(FCS)含有RPMI培地 200μlに懸濁後、96穴U底培養プレートに添加し、37℃の5% CO2含有インキュベータ内で2日間培養した。培養上清中のIFN-γ, IL-4, IL-10をELISA法にて測定した(図7上段)。Lipo-αGC添加群のIFN-γ,IL-4産生量はα-GalCer添加群と同等であったが、IL-10産生はLipo-α添加群でα-GalCer水溶液添加群の約5倍であった。また同様の実験を最終濃度10μg/mlの抗CD1d中和抗体(1B1, BD Bioscience Pharmingen)存在下に行った場合と、Vα14-NKT細胞欠損マウス(C57BL/6バックグランド)脾臓全細胞を用いて行った場合では、培養上清中にIFN-γ, IL-4, IL-10は検出されなかった(図7下段)。3.Lipo-αGCのVα14-NKT細胞増殖能の評価 C57BL/6マウスにLipo-αGCを2 μg/マウス、コントロールとしてLipo-(-)または生理食塩水(saline)を腹腔内に投与し、3日目(DAY 3)と7日目(DAY 7)の脾臓中α-GalCer/CD1d tetramerと抗TCRβ抗体による染色で共陽性の細胞(Vα14-NKT細胞)数をフローサイトメトリで解析した。その結果、Lipo-α投与後DAY 3のマウス脾臓ではVα14-NKT細胞数がsalineに対して2倍以上に増殖したが、DAY 7では逆にコントロール投与マウスよりも減少することが確認された(図8)。<Lipo-αGCのin vivo抗体産生抑制効果>1.C57BL/6マウスとIL-10欠損マウスを用いたin vivo抗体産生系での活性評価 C57BL/6マウス(5匹/群)にsaline 、α-GalCer 、Lipo-(-)またはLipo-αGCを2 μg/マウスで腹腔内に投与し、3日目にDNP-OVAとアラムで免疫した。免疫後14日目に眼窩採血し、マウス血漿中の抗DNP-IgG1、-IgE、-IgG2a抗体価をELISA法で測定した。その結果、Lipo-αGC投与群における抗体産生抑制効果は全てのアイソタイプについてα-GalCer 投与群よりも高い傾向を示した(図9上段)。さらに、C57BL/6バックグランドのIL-10欠損マウスを用いて同様の実験を行った結果、上記抗体産生抑制効果は見られなかった(図9下段)。2.BDF1マウスを用いたin vivo抗体産生系での活性評価 BDF1マウス(C57BL/6 X DBA/2 F1)(5匹/群)にsaline 、α-GalCer 、Lipo-(-)またはLipo-αGCを2 μg/マウスで腹腔内に投与し、3日目(day 0)にDNP-OVAとアラムで初回免疫し、さらに初回免疫後55日目(day 55)にDNP-OVA抗原単独による追加免疫を行った。Day 0, 14, 55, 64にそれぞれ眼窩採血し、マウス血漿中の抗DNP-IgE、-IgG1、-IgG2a抗体価および全IgE、IgG1、IgG2a値をELISA法で測定した。その結果、Lipo-αGC投与群の全てのアイソタイプの抗DNP抗体価の上昇および全IgE産生もほぼ完全に抑制されることが確認された(図10)。一方、全IgG1とIgG2a値の変化はLipo-αGC投与群とα-GalCerもしくはLipo-(-)投与群とほぼ同等であった(図10)。3.BDF1マウスを用いたT細胞活性化能の評価 BDF1マウスにsaline 、α-GalCer 、Lipo-(-)またはLipo-αGCを2 μg/マウスで腹腔内に投与し、3日目にDNP-OVAとアラムで初回免疫した後7日目に脾臓を摘出し、磁性マイクロビーズ(Miltenyi)でCD4+T細胞を調製した。次に正常BDF1マウス脾臓全細胞に20 Gyの放射線を照射して抗原提示細胞を調製した。96ウエルU底培養プレートの1ウエル内に、200μlの培養液に懸濁した2 x 105個のCD4+T細胞とDNP-OVAをパルスした2 x 105個の抗原提示細胞を入れ、37℃の5% CO2含有インキュベータ内で培養した。48時間後の細胞増殖能をMTT法(Promega #G4000)にて測定した結果、Lipo-αGC投与BDF1マウス脾臓由来CD4+T細胞は、あらゆる濃度のDNP-OVAに対して増殖能を示さなかったが、その他のCD4+T細胞はα-GalCer、saline、Lipo-(-)の順に高い増殖能を示した(図11左図)。一方、2 x 105個のCD4+T細胞をそれぞれ50 ng/mlのPhorbol 12-miristate 13-acetate (PMA; Sigma-aldrich #P-1585)と500 nMのionomycin(Sigma-aldrich, #I-0634)で抗原非特異的に48時間、37℃の5% CO2含有インキュベータ内で刺激を加えた場合、Lipo-αGC投与マウス由来CD4+T細胞は、他の細胞に比べて低いながらも有意な増殖能を示した(図11右図)。4.Lipo-αGC投与マウス脾臓中樹状細胞(DC)の分析4−1.フローサイトメトリ解析 BALB/cマウスにsaline 、α-GalCer 、Lipo-(-)またはLipo-αGCを2 μg/マウスで腹腔内に投与し、3日目に脾臓を摘出した。脾臓中に1 mg/mlのコラゲナーゼD(Roche)を注入し、CO2インキュベータ内で45分間インキュベートした。次に、脾臓から細胞を抽出し3 mlのHistoDenz (14.1%, Sigma-aldrich)に懸濁した後、50 μMの2−メルカプトエタノール(2ME)含有X-VIVO 15培地(CAMBREX Bio Science Walkerville, Inc.)を重層した。1500 rpmで5分間遠心後、中間層の細胞を回収した。50 μM 2ME, 10 % FCSを含有する X-VIVO 15培地で細胞を洗浄後、0.5% FCS含有リン酸緩衝液(PBS)に懸濁し、ビオチン化抗CD3、CD11b、CD19、CD49b、Gr-1、TER-119、B220抗体(以上、BD Bioscience Pharmingen)を添加した。10℃で20分間インキュベートした後、0.5% FCS含有PBSで1回洗浄し、次に磁性マイクロビーズ結合ストレプトアビジン(SA)(Miltenyi)を添加した。10℃で15分間インキュベートし、続いて0.5% FCS含有PBSで2回洗浄した後、マイクロビーズ分離カラムと磁石(以上、Miltenyi)にて磁性マイクロビーズ陰性細胞を回収した。同細胞をPE標識抗CD11c 抗体(BD Bioscience Pharmingen)とAPC標識抗CD45RB抗体(BD Bioscience Pharmingen)で染色した後、フローサイトメトリで解析した。その結果、Lipo-αGC投与マウス脾臓由来細胞ではCD45RBhighCD11clow細胞の割合がCD45RBlowCD11chigh細胞の割合に比べて高いのに対して、saline 、Lipo-(-)またはα-GalCerを投与したマウス由来の細胞ではその割合が逆に低かった(図12)。さらに脾臓中の細胞数を換算した結果、Lipo-αGC投与マウスの脾臓中CD45RBhighCD11clow細胞数は、α-GalCer投与マウス脾臓中同細胞数の約3倍に増加しているのに対して、CD45RBlowCD11chigh細胞数は逆にα-GalCer投与マウスの方がLipo-αGC投与マウスよりも増加していることが明らかになった(図13)。 CD45RBhighCD11clow細胞は制御性樹状細胞として報告された細胞群で免疫抑制に働き、逆にCD45RBlowCD11chigh細胞はT細胞を活性化する樹状細胞で免疫賦活に働くことから、NKT細胞の免疫抑制機能はCD45RBhighCD11clow細胞数の増加によってもたらされると考えられた。4−2.サイトカイン産生能の評価 上記1.に記述した方法で分離されるCD45RBhighCD11clow細胞集団とCD45RBlowCD11chigh細胞集団をフローサイトメトリ(FACS Vantage SE、BD Bioscience)を用いてそれぞれ回収し、96ウエルU底培養プレートの1ウエル内に細胞1 x 105個/培養液200μlを加えた。最終濃度1μg/mlのリポ多糖(LPS; T3382, Sigma-aldrich)存在下または非存在下にて2日間細胞培養を行った。培養上清中のサイトカインIL-10とIL-12をELISA法にて測定した結果、LPS刺激したCD45RBhighCD11clow細胞の培養上清中にはIL-10が検出されIL-12は検出されなかったが、一方CD45RBlowCD11chigh細胞の培養上清中にはLPS刺激の有無に関わらずIL-12が検出され、IL-10は検出されなかった(図14)。4−3.T細胞活性化能の評価 上記2.に記述した方法で分離回収されるCD45RBhighCD11clow細胞またはCD45RBlowCD11chigh細胞を、96ウエルU底培養プレートの1ウエル内に細胞1 x 104個/培養液200μlを入れ、さらにDO11.10マウス脾臓から磁性マイクロビーズ(Miltenyi)で精製したCD4+T細胞を4 x 105個/培養液200μlを入れた。最終濃度600 nMの OVA323-339ペプチドを添加または非添加条件下に、37℃の5% CO2含有インキュベータ内で培養した。48時間後の細胞増殖能をMTT法(Promega #G4000)にて測定した結果、CD45RBhighCD11clow細胞とOVAペプチド刺激によるCD4+T細胞は、CD45RBlowCD11chigh細胞による増殖能に比べやや劣るものの十分な増殖能を示した(図15)。さらに培養7日目にCD45RBhighCD11clow細胞とOVAペプチド刺激で増殖したCD4+T細胞を回収し、新たに分離回収したCD45RBhighCD11clow細胞またはCD45RBlowCD11chigh細胞とOVAペプチド添加条件下による7日間の培養を2回行った後5日目、培養液中の細胞をフローサイトメトリで解析した。その結果、増殖した細胞群がCD4+CD25+CD28+CD152-ICOS+のほぼ均一な細胞集団であることが確認された(図16)。次に、それらの細胞5 x 105個を最終濃度50 ng/mlのPMAと500 nMのIonomycin及び2 μMのMonensin (Sigma-aldrich #M-5273)、存在下に4時間、37℃の5% CO2含有インキュベータ内で培養した。細胞を回収後、100 μl のBD Cytofix/Cytoperm液(BD Bioscience)に懸濁し、4℃で15分間インキュベートした。BD Perm/Wash液(BD Bioscience)で洗浄後、FITC標識抗IFN-γ抗体、PE標識抗IL-4抗体(BD Bioscience pharmingen)およびAPC標識抗IL-10抗体(BD Bioscience pharmingen)による細胞内3重染色および、それと同様に蛍光標識アイソタイプコントロール抗体を用いた細胞内3重染色を行い(図17上段)、フローサイトメトリで解析した。その結果、サイトカイン発現細胞群の中で、IL-4のみ発現する細胞はほとんど存在せず、次にIFN-γのみ発現する細胞、IL-10とIFN-γ両方を発現する細胞、IL-10のみ発現する細胞の順に、細胞数が多いことが確認できた(図17下段)。<アレルゲンと調節性細胞リガンドを含むリポソームによるIgE抗体産生抑制効果>1.卵白アルブミンとα-ガラクトシルセラミドを含有するリポソームの作製 L-α-Phosphatidylcholine,dioleoyl (DOPC;和光純薬) 0.77 mgとCholesteryl 3β-N-(dimethylaminoethyl)carbonate hydrochloride(DC-Chol;Sigama-aldrich)0.83 mgと1,2-Distearoyl-sn-Glycero-3-Phosethanolamine-N- [Methoxy(Polyethylene glycol)-2000](Ammonium Salt) (PEG-PE; Avanti Polar Lipids) 0.029 mgをクロロホルム/メタノール(1:1)溶媒250μlに溶解した。また、α-ガラクトシルセラミド(独立行政法人理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センターにて作製)0.16 mgは別にクロロホルム/メタノール(1:1)溶媒250μlに溶解した。次に、両者を混合しエバポレーターで乾固させた後、真空下のデシケーター内で一晩乾燥させた。次に卵白アルブミン(OVA; 生化学工業)濃度が0.4 mg/mlである水溶液を200μl添加し、超音波破砕装置にて10分間処理した後、ポアサイズ0.22μmの滅菌用メンブランを通過させた。次に、ポアサイズ100 nmのポリカーボネート膜を装着したLiposoFast-Basic extruder(Avestin Inc,)を、25回通過させることにより整粒した。Amicon Ultra-4 遠心フィルター(PL-100)(Millipore)を用いてOVAを封入したリポソームの濃縮と精製水での洗浄によりリポソーム未封入OVAタンパク質の除去を行ない、最終的に精製水で800μl水溶液に調整した。このリポソーム組成物(Lipo-αGC+OVA)を含む水溶液をSDS電気泳動で解析した結果、OVAタンパク質濃度は50 μg/mlであることが確認された。またα-GalCerが全てリポソーム膜に取り込まれたと想定し、Lipo-αGC+OVA溶液中のα-GalCer最終濃度を200μg/mlとした。2.Lipo-αGC+OVAによる調節性IL-10産生CD4+ T細胞の誘導 BDF1マウス(C57BL/6 X DBA/2 F1)腹腔内に、Lipo-αGCまたLipo-αGC + OVA(α-GalCer量で2 μg相当)を投与後、7日目に脾臓を摘出し、CD4+T細胞を磁性マイクロビーズ(Miltenyi)で調製した。次に正常BDF1マウス脾細胞に20 Gyの放射線を照射して抗原提示細胞を調製した。6ウエルU底培養プレートの1ウエルに、3 mlの培養液と1.5 x 106個のCD4+T細胞および7.5 x 106個の抗原提示細胞さらにOVAタンパク質を最終濃度100 μg/mlで添加し、37℃の5% CO2含有インキュベータ内で6日間培養した。次に5 x 105個の細胞を最終濃度50 ng/mlのPMAと500 nMのIonomycin及び2 μMのMonensin (Sigma-aldrich)存在下に4時間、37℃の5% CO2含有インキュベータ内で培養した。細胞を回収後、ビオチン化anti-CD4抗体とストレプトアビジン-Per CP-Cy5.5(BD Bioscience )で染色した。次に100 μl のBD Cytofix/Cytoperm液(BD Bioscience)に懸濁し、4℃で15分間インキュベートした。BD Perm/Wash液(BD Bioscience)で洗浄後、FITC標識抗IFN-γ抗体、PE標識抗IL-4抗体(BD Bioscience pharmingen)およびAPC標識抗IL-10抗体(BD Bioscience pharmingen)による細胞内染色を行い、フローサイトメトリで解析した(図18)。その結果、OVAを封入していないLipo-αGCを投与したマウス脾細胞由来CD4+ T細胞では、1.4 %がIL-4のみ、1.1 %がIFN-γのみ発現する細胞は検出できたが、IL-10のみ、またはIL-10とIFN-γ の両方を産生するCD4+調節性T細胞集団はほとんど検出されなかった。一方、Lipo-αGC + OVA を投与したマウス脾細胞由来のCD4+ T細胞の解析では、IL-4(1.0 %)のみ、IFN-γ(9.9 %)のみ発現するヘルパーT細胞集団と、IL-10産生CD4+調節性T細胞(14.1 %)、IL-10とIFN-γ両方発現するCD4+調節性T細胞(9.1%)が検出された。以上の結果から、アレルゲンを含有するLipo-αGCは、IgE産生抑制作用を持つアレルゲン特異的CD4+調節性T細胞を生体内で分化増殖させることができることが示唆された。3.Lipo-αGC+OVAのマウス2次抗体応答に対する抑制効果 BDF1マウスをDNP-OVA(0.1μg)と水酸化アルミニュウムゲル(2 mg)で初回免疫後14日目の血中anti-DNP-IgE抗体価を測定し、平均抗体価が同等になるように群分けした3群(5匹/群)を準備した。初回免疫後21、28、35日目にリポソームのみ(Vehicle)、Lipo-αGCまたLipo-αGC+OVAをそれぞれα-GalCer量で2 μg相当を腹腔内に投与した。初回免疫後42日目にDNP-OVA抗原単独による追加免疫を行ない、48日目の血中抗DNP-IgE、-IgG1、-IgG2a抗体価および全IgE、IgG1、IgG2a値をELISA法で測定した(図19)。その結果、Lipo-αGC+OVA投与群では、抗DNP-IgE、-IgG1、-IgG2a抗体価が有意に抑制されていた。一方、OVAを含まないLipo-αGC投与群では、抗DNP-IgG1以外の抗体価の有意な抑制が見られなかった。以上の結果より、アレルゲンを含有するLipo-αGCは、アレルゲンで惹起される2次抗体産生を抑制できることが示唆された。産業上の利用の可能性 本発明の「調節性細胞リガンドを含有するリポソーム」は、調節性細胞の分化・増殖および活性化を誘導することにより、ヘルパーT細胞の活性化作用、およびIgE抗体産生を抑制する作用を有する。そのため、IgE抗体が深く関与するI型アレルギー反応によるアレルギー性疾患、特にアトピー型気管支喘息、アトピー性皮膚炎および花粉症等アレルギー性鼻炎や結膜炎の予防剤および治療剤として有用である。 また、「α−ガラクトシルセラミドを含有するリポソーム」はNKT細胞の免疫抑制機能を選択的に増強することにより、病原性(pathogenic)T細胞の分化増殖を抑制することができるため、自己免疫疾患や移植片対宿主病などに対する医薬として有用である。 さらに、本発明の医薬は、標的細胞選択的に結合する分子を保持しかつ、調節性細胞リガンドを脂質膜内に包含するリポソームを有効成分とするため、副作用の心配がない。 下記構造のKRN7000:を含有するリポソームを有効成分とする免疫抑制剤。 前記リポソームが、さらにアレルゲンを含有する、請求項1記載の免疫抑制剤。 下記構造のKRN7000:を含有するリポソームを有効成分とするアレルギー性疾患の予防剤又は治療剤。 前記リポソームが、さらにアレルゲンを含有する、請求項3記載のアレルギー性疾患の予防剤又は治療剤。 アレルギー性疾患がアトピー型気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症またはアトピー性皮膚炎である、請求項3又は4に記載のアレルギー性疾患の予防剤又は治療剤。 下記構造のKRN7000:を含有するリポソームを有効成分とする自己免疫疾患または移植片対宿主病の予防剤または治療剤。 前記リポソームが、さらにアレルゲンを含有する、請求項6記載の自己免疫疾患または移植片対宿主病の予防剤または治療剤。


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