タイトル: | 特許公報(B2)_BH4反応性高フェニルアラニン血症治療剤 |
出願番号: | 2006513041 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | A61K 31/519,A61K 9/16,A61K 9/14,A61K 9/08,A61P 3/00,A61K 47/46,A61K 47/22,A61K 47/20,A61K 47/02 |
杉田 修 松本 政子 高井 伴和 JP 4964587 特許公報(B2) 20120406 2006513041 20050511 BH4反応性高フェニルアラニン血症治療剤 第一三共株式会社 307010166 草間 攻 100083301 杉田 修 松本 政子 高井 伴和 JP 2004141615 20040511 20120704 A61K 31/519 20060101AFI20120614BHJP A61K 9/16 20060101ALI20120614BHJP A61K 9/14 20060101ALI20120614BHJP A61K 9/08 20060101ALI20120614BHJP A61P 3/00 20060101ALI20120614BHJP A61K 47/46 20060101ALI20120614BHJP A61K 47/22 20060101ALI20120614BHJP A61K 47/20 20060101ALI20120614BHJP A61K 47/02 20060101ALI20120614BHJP JPA61K31/519A61K9/16A61K9/14A61K9/08A61P3/00A61K47/46A61K47/22A61K47/20A61K47/02 A61K 31/33-33/44 A61K 9/00-9/72 A61K 47/00-47/48 特開2003−277265(JP,A) 国際公開第99/016470(WO,A1) 日本医薬情報センター編,医療薬日本医薬品集,1999年,2000年版,p735-736,「塩酸サプロプテリン」欄 第一サントリーファーマ株式会社,ビオプテン顆粒2.5%,2003年 日本医薬品添加物協会,医薬品添加物事典追補,1995年,p151-152 10 JP2005008613 20050511 WO2005107759 20051117 22 20080501 福井 悟 本発明は、テトラヒドロバイオプテリン反応性高フェニルアラニン血症の治療用剤に関する。詳細には、塩酸サプロプテリンを有効成分とする顆粒剤、細粒剤またはドライシロップ剤に関する。 血漿中のフェニルアラニン(Phe)の濃度が持続的に高値を示す高フェニルアラニン血症は、先天性代謝異常によるものであり、フェニルアラニン水酸化酵素(PAH)が欠損するフェニルケトン尿症(PKU)あるいはPAH欠損症と呼ばれるものと、PAHの補酵素であるテトラヒドロバイオプテリン(BH4)の合成系の障害に起因するBH4欠乏症とがある。 いずれも、常染色体性劣性遺伝であるが、体内でフェニルアラニンからチロシンの代謝が行なわれず、その結果、血漿中のPhe濃度が高くなるもので、中枢神経性の機能に重大な障害をもたらす。生後直後においては無症状であるが、生後5〜6ヶ月を過ぎると、次第に精神運動発達の遅れが目立ちはじめ、時には痙攣などの症状もみられて、放置しておくと重度の知的障害を呈するようになる。また、脳波異常や赤毛、色白などのメラニン色素欠乏などの症状も示す。そのため、無症状の新生児期に対して、欧米では1970年代から、日本では1977年から、生後3〜5日に新生児スクリーニングが公費で行われている。 この新生児スクリーニングは、血液中のPhe濃度を測定するものであり、スクリーニングによりフェニルケトン尿症と診断された新生児に対しては、Pheが含まれる母乳や通常のミルクによる授乳を中止する。そして、Pheが含まれない「特殊治療用ミルク」による食事療法が開始され、その後も、低Phe制限食による食事療法が行われる。この食事療法の目的は、Pheの摂取を抑えることで、血液中のPheの濃度を一定に保つことにある。 一般的に、蛋白質を含む食材として、蛋白質中にPheを含まないものは存在しない。したがって、低Phe制限食による食事療法とは、蛋白質の摂取を極力やめさせ、食事から摂取できない他の必須アミノ酸等を「治療ミルク」等で補うことで行われている。このような食事療法の実施は、患者本人および家族にとり、大変な手間と費用を要し、何よりも極端な食事制限は、患者本人にとって苦痛である。 また、以前にあっては、この低Phe制限食による治療は、脳の発育が完成する15歳頃まで行なえばよいとされていたが、患者の予後調査結果から、現在では、生涯低Phe制限食による治療が必要であるとされている。例えば、フェニルケトン尿症の女性が出産する場合、妊娠前および妊娠中に血中Phe濃度がコントロールされておらず、母体血中Phe濃度が高い場合には、出生児が精神遅滞や小頭症を有するリスクが非常に高いことも報告されている。 一方、食事療法以外の治療としては、BH4欠乏症であるジヒドロビオプテリン合成酵素欠損又はジヒドロプテリジン還元酵素欠損に基づく異型高フェニルアラニン血症に対しては、医薬品として天然型テトラヒドロビオプテリン(一般名:塩酸サプロプテリン)が開発されている。塩酸サプロプテリンは、単独或いはチロシンが不足するためチロシン誘導体である神経伝達物質の前駆体であるレボドパ製剤や5−ヒドロキシトリプトファンと併用して投与され、血液中のPhe濃度を一定に保つものであるが、この薬物治療で十分な効果が得られず食事療法も併用される場合も多い。 このBH4投与による治療は、フェニルアラニン水酸化酵素(PAH)が欠損するフェニルケトン尿症(PKU)、あるいはPAH欠損症に関しては、BH4の投与により血液中のPhe濃度を低下させることが出来ないため効果がなく、低Phe制限食による食事療法が、唯一の治療方法と考えられていた。 1999年ごろより、BH4欠乏症の鑑別診断において、血中あるいは尿中プテリジン分析や赤血球DHPR活性測定の結果から、PAH欠損症と考えられるにも関わらず、BH4負荷試験でBH4投与に反応して、血中Phe濃度が低下する症例が報告されるようになった。 この症例は新しい疾患単位として認識され、BH4反応性高Phe血症あるいはBH4反応性PAH欠損症と呼ばれている。従来、唯一の治療方法として、食事療法しかなかったPAH欠損症であるが、BH4である塩酸サプロプテリンの投与による単独治療が可能であることが判明し、現在その治療方法、特に効果的な塩酸サプロプテリン含有製剤の確立が急がれている。 まず、BH4反応性高Phe血症の治療は、新生児スクリーニングにおいて疾患が発見されてからすぐさま開始する必要があることから、塩酸サプロプテリンの投与に際しては、新生児に投与できる剤形であることが要求される。 そのうえ、患者は生涯塩酸サプロプテリンの投与を続ける必要があることから、いずれの年齢においても、好ましく投与できる剤形が要求される。 更に、対象患者は生後数日の新生児から成人、高齢者までとすべての年齢層にわたるため、患者の体重(年齢)に対応する、様々な投与量が適切に且つ簡便に与えられる剤形、あるいは含有量の薬剤が必要となる。特に、調剤の面からは、投与量が簡便に計量できる剤形が好ましい。 例えば、塩酸サプロプテリンを、ジヒドロビオプテリン合成酵素欠損、ジヒドロプテリジン還元酵素欠損に基づく異型高フェニルアラニン血症の治療に用いる場合の投与量は、一日2〜5mg/kgである。体重3kgの新生児であれば6〜15mg/日、体重60kgの成人であれば120mg〜300mg/日となり、その製剤で投与したい量の範囲は、他の薬剤では考えられないほど非常に広いものである。 通常、医薬品は体重に比例した投与量とするため、乳幼児から小児、さらに成人への投与が頻繁に行われるものについては、製剤を、小児用と成人用との2種類を用意する場合もある。しかしながら、高フェニルアラニン血症患者は、先天性代謝異常による疾患であり、その発生頻度は極めて低い。日本において1977年から1988年度の新生児マススクリーニングによって発見された症例は、計405例であり、うちフェニルケトン尿症は247例、BH4欠乏症17例であり、60万人に一人の発生頻度でしかない。 患者にとっては必須・不可欠な医薬品であるが、製造の規模、適切な保存管理など、医療従事者の立場からは、1種類の製剤ですべての患者に対応できるものが好ましい。 しかしながら、塩酸サプロプテリン自体は保存安定性が低く、また、その服用にあたっては刺激性が強いものであることから、製剤化にあたって、より有効な製剤の開発が求められていた。特許第2761104号公報特開昭61-277618号公報特開昭63−267781号公報特開平10−338637号公報「Tetrahydrobiopterin-responsive phenylalanine hydoxylase deficiency」、S.Kure et al, Journal of Pediatrics, 1999年、135巻、3号、p375-378「Long-term follow-up of a patient with mild tetrahydrobiopterin-responsive phenylketonuria」, R. Cerone et al, Molecular Genetics and Metabolism, 81(2004), p137-139「テトラヒドロビオプテリン(BH4)反応性高フェニルアラニン血症に関する治療基準選定専門委員会の設置の経緯とその活動状況について」 特殊ミルク事情、No.30, 2000年11月、p77-79「テトラヒドロビオプテリン(BH4)反応性高フェニルアラニン血症に関する治療基準選定専門委員会の研究報告1」 特殊ミルク事情、No.37, 2001年11月、p71-73「テトラヒドロビオプテリン(BH4)反応性高フェニルアラニン血症に関する治療基準選定専門委員会の研究報告2」 特殊ミルク事情、No.38, 2002年11月、p44-59 したがって本発明は、上記の現状を鑑み、テトラヒドロバイオプテリン反応性高フェニルアラニン血症の治療に有効な塩酸サプロプテリンを、乳幼児から成人にまで広範囲にわたって、一つの製剤で投与し得る、かつ保存安定性に優れた、効果的な製剤を提供することを課題とする。 かかる課題を解決するための本発明は、基本的形態として、(1)有効成分として塩酸サプロプテリンを2.5〜20重量%含有する製剤であって、乳幼児から成人にまでに服用し得ることを特徴とするBH4反応性高フェニルアラニン血症治療製剤としての顆粒剤、細粒剤またはドライシロップ剤;(2)矯味剤を含有することを特徴とする上記1に記載の顆粒剤、細粒剤またはドライシロップ剤;(3)着色剤として酸もしくは酸化に対して安定な着色剤を含有することを特徴とする上記1または2に記載の顆粒剤、細粒剤またはドライシロップ剤;(4)製剤の水分含有量を0.9%以下に抑えたことを特徴とする上記1ないし3に記載の顆粒剤、細粒剤またはドライシロップ剤;(5)安定化剤としてアスコルビン酸およびL-システイン塩酸塩を含有することを特徴とする上記1ないし4に記載の顆粒剤、細粒剤またはドライシロップ剤;(6)有効成分として塩酸サプロプテリンを5〜10重量%含有する製剤であることを特徴とする上記1ないし5に記載の顆粒剤、細粒剤またはドライシロップ剤;(7)矯味剤として含有される物質が、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム(2水和物)、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、リン酸水素ニナトリウム(12水和物)またはポリリン酸ナトリウムから選択されるものであることを特徴とする上記1ないし6に記載の顆粒剤、細粒剤またはドライシロップ剤;(8)矯味剤として含有される物質が、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムまたはリン酸水素カルシウム(2水和物)であることを特徴とする上記1ないし6に記載の顆粒剤、細粒剤またはドライシロップ剤;(9)矯味剤として含有させる物質が、製剤調製工程で塩酸サプロプテリンと水の存在下で練合されることを特徴とする上記1ないし8に記載の顆粒剤、細粒剤またはドライシロップ剤;(10)着色剤が、リボフラビン、コチニール色素、食用青色1号、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用黄色5号アルミニウムレーキ、食用赤色3号アルミニウムレーキまたは食用赤色106号から選択されるものであることを特徴とする上記1ないし9に記載の顆粒剤、細粒剤またはドライシロップ剤;(11)着色剤が、リボフラビンであることを特徴とする上記1ないし9に記載の顆粒剤、細粒剤またはドライシロップ剤;(12)製剤の水分含有量(乾燥減量)の調整を、造粒した顆粒を流動層乾燥機により乾燥する工程で行なうことを特徴とする上記1ないし11に記載の顆粒剤、細粒剤またはドライシロップ剤;(13)製剤の水分含有量(乾燥減量)の調整を、造粒した顆粒を流動層乾燥機により、15分以上乾燥することを特徴とする上記1ないし11に記載の顆粒剤、細粒剤またはドライシロップ剤;(14)包装形態として、外部湿度を遮断した包装形態で包装されることを特徴とする上記1ないし13に記載の顆粒剤、細粒剤またはドライシロップ剤;(15)外部湿度を遮断した包装形態として、防湿性の高い包装材を用いることを特徴とする上記1ないし13に記載の顆粒剤、細粒剤またはドライシロップ剤;(16)防湿性の高い包装材が、透湿度30g/m2/日より低いものであることを特徴とする上記1ないし13に記載の顆粒剤、細粒剤またはドライシロップ剤;である。 また、そのなかでも、好ましい態様としては、(17)有効成分として塩酸サプロプテリンを5〜10重量%含有する製剤であって、矯味剤としてメタケイ酸アルミン酸マグネシウムまたはリン酸水素カルシウム(2水和物)を含有し、着色剤としてリボフラビンを含有し、製剤の水分含有量を0.9%以下に抑えた乳幼児から成人にまでに服用感がよく、服用し得ることを特徴とするBH4反応性高フェニルアラニン血症治療製剤としての顆粒剤、細粒剤またはドライシロップ剤;である。 さらに本発明は、また別の形態として、(18)有効成分として塩酸サプロプテリンを含有する顆粒剤、細粒剤またはドライシロップ剤であって、矯味剤を含有し、着色剤として酸もしくは酸化に対して安定な着色剤を含有し、さらに製剤の水分含有量を0.9%以下に抑えたことを特徴とするBH4反応性高フェニルアラニン血症治療剤;(19)有効成分である塩酸サプロプテリンの含有量が、2.5〜20重量%であることを特徴とする上記18に記載のBH4反応性高フェニルアラニン血症治療剤;(20)有効成分である塩酸サプロプテリンの含有量が、5〜10重量%であることを特徴とする上記18に記載のBH4反応性高フェニルアラニン血症治療剤;(21)矯味剤として含有させる物質が、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム(2水和物)、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、リン酸水素ニナトリウム(12水和物)またはポリリン酸ナトリウムから選択されるものであることを特徴とする上記18ないし20に記載のBH4反応性高フェニルアラニン血症治療剤;(22)矯味剤として含有させる物質が、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムまたはリン酸水素カルシウム(2水和物)であることを特徴とする上記18ないし20に記載のBH4反応性高フェニルアラニン血症治療剤;(23)矯味剤として含有させる物質を、製剤調製工程で塩酸サプロプテリンと水の存在下で練合されることを特徴とする上記18ないし22に記載のBH4反応性高フェニルアラニン血症治療剤;(24)着色剤が、リボフラビン、コチニール色素、食用青色1号、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用黄色5号アルミニウムレーキ、食用赤色3号アルミニウムレーキまたは食用赤色106号から選択されるものであることを特徴とする上記18ないし23に記載のBH4反応性高フェニルアラニン血症治療剤;(25)着色剤が、リボフラビンであることを特徴とする上記18ないし23に記載のBH4反応性高フェニルアラニン血症治療剤;(26)製剤の水分含有量の調整を、造粒した顆粒を流動層乾燥機により乾燥する工程で行なうことを特徴とする上記18ないし25に記載のBH4反応性高フェニルアラニン血症治療剤;(27)製剤の水分含有量の調整を、造粒した顆粒を流動層乾燥機により、15分以上乾燥することにより行なうことを特徴とする上記18ないし25に記載のBH4反応性高フェニルアラニン血症治療剤;(28)安定化剤としてアスコルビン酸およびL-システイン塩酸塩を含有することを特徴とする上記18ないし27に記載のBH4反応性高フェニルアラニン血症治療剤;(29)包装形態として、外部湿度を遮断した包装形態で包装されることを特徴とする上記18ないし28に記載のBH4反応性高フェニルアラニン血症治療剤;(30)外部湿度を遮断した包装形態として、防湿性の高い包装材を用いることを特徴とする上記18ないし28に記載のBH4反応性高フェニルアラニン血症治療剤;(32)防湿性の高い包装材が、透湿度30g/m2/日より低いものであることを特徴とする上記18ないし28に記載のBH4反応性高フェニルアラニン血症治療剤;である。 また、そのなかでも、好ましい態様としては、(32)有効成分として塩酸サプロプテリンを5ないし10%含有する顆粒剤、細粒剤またはドライシロップ剤であって、矯味剤としてメタケイ酸アルミン酸マグネシウムまたはリン酸水素カルシウム(2水和物)を含有し、着色剤としてリボフラビンを含有し、さらに製剤の水分含有量を0.9%以下に抑えたことを特徴とするBH4反応性高フェニルアラニン血症治療剤;である。 すなわち、本発明により、テトラヒドロバイオプテリン反応性高フェニルアラニン血症の治療に有効な塩酸サプロプテリンを、新生児から成人にまで広範囲にわたって、一つの製剤で投与し得る、また、服用感がよく、保存安定性に優れた、効果的な製剤が提供される。 したがって、嚥下不能な乳幼児や嚥下困難な高齢者などの患者に対しても、幅広く適用し得るものであり、また、その幅広い投与量に対応することが可能となる。 以下に本発明の具体的内容を、その製剤化検討の詳細を実施例、各種試験例として説明することにより、より詳細に説明していく。 本発明者らは、本発明が提供する塩酸サプロプテリン含有製剤の製剤化にあたって、以下の点に着目した。すなわち塩酸サプロプテリンを、新生児から成人にまで広範囲にわたって、一つの製剤として投与し得る剤形としては顆粒剤、細粒剤などの散剤、あるいはドライシロップ剤などが好ましいことに着目した。 すなわち、錠剤、カプセル剤などの剤形の場合には、嚥下不能な乳幼児や嚥下困難な高齢者などの患者には投与できないが、顆粒剤、細粒剤などの散剤、あるいはドライシロップ剤であれば、そのままでも服用でき、あるいは用時溶解し溶液として投与することも可能となる。 また、顆粒剤、細粒剤などの散剤あるいはドライシロップ剤であれば、幅広い投与量に対応することも簡単である。例えば錠剤などで、幅広い投与量に対応しようとすると、乳幼児を想定した投与量を最小投与単位と考えられる含有量の錠剤を用意することになる。したがって、もっとも多くの投与量を与えられる成人では、一回に数10個の錠剤を服用しなければならず、現実的には困難である。 また、経口吸収率の個人差をできるだけ少なくするために、薬物の消化管内の通過速度を平均化できるという点からも、顆粒剤、細粒剤などの散剤あるいはドライシロップ剤の剤形が好ましい。 剤形を顆粒剤、細粒剤などの散剤、あるいはドライシロップ剤とし、医薬品の含有量を考えた場合、乳幼児から小児の場合は、薬剤の経口投与は困難が伴うので、できるだけ服用量が少ない方が好ましい。かかる点を考慮すると、有効成分である塩酸サプロプテリンとして、2.5%から20%の含有量の製剤が好ましく、特に5%から10%の含有量が好ましい。その上、患者に応じたさまざまな投与量に対応する調剤での簡便性と、調剤ミスが起こりにくい単位を考慮すると、10%含有製剤が最も好ましい。 次に、剤形を顆粒剤、細粒剤などの散剤、あるいはドライシロップ剤として、塩酸サプロプテリンを製剤化するにあたっては、以下の各点が解決すべき課題となるであろうと予測された。(1)原薬である塩酸サプロプテリンが塩酸塩であり、服用時に塩酸塩由来による酸味や刺激感が発生した場合、いかに服用感を改善するか。(2)製剤としての安定性をいかに確保するか。(3)有効成分である塩酸サプロプテリン自体が、水分の存在下では分解されやすいので、製剤化工程或いは製剤に用いる物質により不安定になった場合、いかに安定性を確保するか。 そこで、まず、原薬である塩酸サプロプテリンの含有量を2.5%、5%および10%とした顆粒剤及び10%とした細粒剤として製剤化を図った。実施例1:原薬の含量を変えた場合の製剤例と服用感の評価 下記表1に記載した配合処方(配合量:mg)により、塩酸サプロプテリンの含有量を2.5%、5%および10%とした各種顆粒剤または細粒剤を以下の方法により調製し、その服用感を評価した。 なお、顆粒剤の調製方法は、いずれも、塩酸サプロプテリン、D−マンニトール、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを混合し、これに別途調製したポビドン、アスコルビン酸、L−システイン塩酸塩を溶解した水溶液にリボフラビンを分散させた結合液を加えて、更に水を追加し、練合した。その練合物を押し出して造粒した後、乾燥し、これを整粒した。 また、細粒剤の調製方法は、塩酸サプロプテリン、D−マンニトールを混合し、これに別途調製したヒドロキシプロピルセルロースを溶解した水溶液にリボフラビンを分散させた結合液を噴霧しながら流動層造粒した後、乾燥し、これを整粒した。服用感による評価1: 上記で得た各製剤について服用感を評価した。 服用感の評価方法は、以下のとおりである。パネラー:20歳代〜40歳代の成人3名試験方法:各製剤を、それぞれ0.5gを服用し、咽頭部に約5秒間滞留させ、その刺激性について、「ある:1」から「ない:5」の5段階で採点し、その平均点を比較した。 それらの結果をあわせて下記表2に示した。 表2に示した結果から明らかなように、製剤例1の2.5%顆粒剤の場合には、課題として考えられた服用感については、服用に困難性があるほどではなかったが、やはり刺激感は若干あった。製剤例2の5%顆粒の場合は、刺激による服用感の悪化があり、製剤例3aまたは4の10%含量の顆粒、あるいは細粒剤では、酸味や刺激感が生じ、服用感が非常に悪くなった。 そこで、まず、服用時の酸味や刺激感について改善方法を模索した。 顆粒剤などの剤形において、原薬由来の苦味などの不味さがある場合には、コーティングによって味を隠蔽する方法が常法として用いられる。しかしながら、この方法は製造工程が複雑になり、また、コーティング剤により経口吸収率などの製剤特性に影響を及ぼす可能性や、含量の均一性に問題が生じることが懸念される。 したがって、製剤特性、特に崩壊性などに影響を及ぼさずに、服用感を改善できるような方法で、且つ製造工程が煩雑にならない方法について検討した。 最初に、酸味の軽減と刺激感の緩和を図るために、甘味を多くし酸味の感じ方を軽減することをまず目論み、D−マンニトールに代えてより甘味の強い白糖、果糖、サッカリンナトリウムなどの添加を試みた。そのうち、白糖、果糖あるいはサッカリンナトリウムの添加では酸味はやや緩和され服用感が改善されたので、その3例についてさらに経時的な安定性を評価したところ、外観が著しく劣化することが判った。その点を下記実施例2に示した。実施例2: 塩酸サプロプテリンと各甘味剤を1:5の比率で混合し、混合したもの2gをガラス瓶に入れ、開放したままで40℃、75%湿度条件下に保存し、製剤の安定性および塩酸サプロプテリンの安定性を評価した。その結果、甘味剤を添加しなかった場合は、保存後8週でも外観は変わらず、含量低下も認められなかったのに対し、甘味剤を加えた場合は保存後2週で極度な変色が認められ、白糖および果糖の場合は、混合物自体も潮解した。その結果を表3に示した。なお、塩酸サプロプテリンの含有残存率は、塩酸サプロプテリンが類縁物質と分離定量できる液体クロマトグラフ法により測定し、塩酸サプロプテリンのピーク面積を求め、算出した(以下の実施例においても同じ)。 そこで、甘味による酸味の緩和ではなく、服用時の口腔内での味や刺激感の感応性を低下させることを考え、塩酸由来の味を包含し、かつ直接的な感応性を低下させる物質を矯味剤として添加することを考え、医薬品に添加できる物質について種々検討を行なった。添加し得る物質の中で、候補として、塩酸による酸度の緩和という観点から、制酸力がある物質をまず候補として検討した。 矯味剤として、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム(2水和物)、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、リン酸水素ニナトリウム(12水和物)またはポリリン酸ナトリウム等種々のものが考えられる。そのうち、酢酸カルシウムについては、一日最大許容量が9.2mgと投与量に制限があるため検討から除外し、残りの矯味剤を添加して、製剤の服用感の改善を検討した。実施例3:矯味剤の添加と服用感評価 下記表4に記載した配合処方(配合量:mg)により、塩酸サプロプテリン含量10%の各種顆粒剤を調製し、その服用感を評価した。調製は実施例1と同様に行なった。 なお、矯味剤の添加量は、上記実施例1において2.5%顆粒の場合に「服用性に困難はない」という評価であったので、2.5%顆粒を水溶液に混濁した場合のpHの範囲が口腔内で好ましいpH範囲であるとして、各種矯味剤の添加量を設定した。服用感に関する評価2: 上記で得た各製剤について服用感を評価した。なお、あわせて実施例1の製剤例3aについても評価を行なった。 服用感に関する評価方法は以下のとおりである。パネラー:20歳代〜40歳代の成人3名試験方法:実施例1の方法と同様に、製剤例3a、5a、5b、6a、7、8、9、10および11の顆粒剤を服用し、評価した。 評価項目として、(1)味については自由意見とし評価を行ってもらい、また、(2)刺激性については、「ある:1」から「ない:5」の5段階で採点してもらい、平均点を比較した。 その結果を下記表5に示した。 上記の表中に示した結果からも判明するように、製剤例5a、5b、6a、7、8、9、10および11は、製剤例3aに比べて刺激性は改善した。また、製剤例9、10および11では、酸味は改善されたが、矯味剤由来と思われる苦味や塩味などの不快な味が多少あったのに対し、製剤例5a、5b、6a、7および8では不快な味はほとんどなかった。 以上の結果から、刺激性が少なく、矯味剤由来と思われる苦味や塩味がないと判断された製剤例5a、6a、7および8について、つづいて安定性評価を行なった。評価は、これらの顆粒製剤の各々2gをガラス瓶に入れ、シリカゲル0.5gを同封し、プラスチックキャップで密封し、60℃で、2週間、4週間および8週間保存し、その性状、含量の変化、分解物含量、乾燥減量、溶解時のpHを測定することで行なった。なお、対照として製剤例3aを用いた。 その結果、炭酸カルシウム(製剤例7)を用いた場合、対照の製剤例3aが8週間後でも、薄い黄色であり開始時と変化がないのに比べ、炭酸カルシウムを添加した場合2週間後で開始時より黄色みの色が濃くなり変色を示し、含量残存率も2週間後で98.6%、8週間後で94.9%となった。 また、炭酸水素ナトリウム(製剤例8)を用いた場合、やはり2週間後で開始時より黄色みの色が濃くなり変色を示し、含量残存率も2週間後で96.6%、8週間後で93.4%となった。 したがって、炭酸カルシウム(製剤例7)、炭酸水素ナトリウム(製剤例8)を用いた場合、顆粒の変色が認められること、また含量残存率が8週間後には95%以下となることから、好ましくないと判明した。 このうちの保存安定性試験(残存率)の結果を、下記表6に示す。服用感に関する評価3: そこで、さらにこのうち、製剤例5a、6aおよび4について、服用感の評価を行なった。 服用感に関する評価方法は以下のとおりである。パネラー:20歳代〜50歳代の成人11名試験方法:パネラーに製剤例5a、6aの顆粒剤および製剤例4の細粒剤を、試験の客観性を保つため、順序は任意かつ盲検法(パネラーには中身が知らされていない)で服用してもらい、その後アンケート用紙に回答させる方式を用いた。 アンケートの評価方法は、パネラーに(1)酸味、(2)苦味またはえぐみ、(3)刺激感、(4)刺激の残留感の各項目について、服用感の良い方から、以下の基準で採点をしてもらい、各項目の総合点を比較した。 感じない:0点 わずかに感じる:1点 感じる:2点 強く感じる:3点 その結果を、下記表7にまとめた。 上記の結果からも判明するように、製剤5aおよび6aは、製剤4に比べて酸味は少なくなり、苦味やえぐみなどの不快な味や刺激感も改善され、製剤例5aまたは6aが特に好ましい服用感を得ていることが判明した。したがって、矯味剤としてメタケイ酸アルミン酸マグネシウムまたはリン酸水素カルシウム(2水和物)を添加するのが最も好ましことが判った。 次に、この矯味剤の混合方法について検討した。実施例4: 刺激感の強かった製剤例4の10%細粒900mgに各矯味剤100mgを加えて混合し、矯味剤を加えていないコントロール(製剤例4)との味を比較した。また、この混合物200mgに精製水1mLを加えて溶解または懸濁してpHを測定した。この結果を表8に示した。 表8に示すように、矯味剤として炭酸カルシウムあるいはポリリン酸ナトリウムを製剤重量に対して10%加え、物理的に混合した場合には、水に溶解したときのpHは中性付近であったにも関わらず、服用感の改善(酸味及び刺激感の緩和)はほとんど認められなかった。これに対し、表5に示すように調製工程中で塩酸サプロプテリンと矯味剤とを水を加えて練合させた場合、炭酸カルシウムの場合は製剤重量に対して約1%の添加で、ポリリン酸ナトリウムの場合は製剤重量に対して約3%の添加で、服用に際して酸味は問題ない程度まで軽減された。また、リン酸水素二ナトリウム(12水和物)は約8%の添加で、酸味は問題ない程度まで軽減された。 そこで更に、他の矯味剤である、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム(2水和物)および炭酸水素ナトリウムについて、以下の実験を行ない、塩酸サプロプテリンと矯味剤の混合方法について検証した。実施例5: 刺激感の強かった製剤例3aの10%顆粒剤1000mgに以下の矯味剤を加えて混合し、矯味剤を加えていないコントロール(製剤例3a)との味を比較した。この結果を表9に示した。 表に示したように、矯味剤を塩酸サプロプテリンと物理的に混合しただけでは酸味や刺激感の軽減はあまり認められなかったが、製造工程中で水を加えて塩酸サプロプテリンと練合させた場合、服用に際しての酸味や刺激感が著しく軽減されることがわかった。すなわち、塩酸サプロプテリンと矯味剤を物理的に混合しただけでは、服用する際に塩酸の刺激が舌や咽頭部に直接影響するが、塩酸サプロプテリンと矯味剤とを水を加えて練合した工程を経て製剤を造粒して製造することにより、塩酸サプロプテリンと矯味剤とが均一化され、服用時の口腔内での味や刺激感の感応性を低下させると考えられた。 この結果、矯味剤は、単に物理的に製剤と混合しただけでは、服用感の改善は弱かったのに対し、製造工程中で塩酸サプロプテリンと水を加えて練合させると、酸味の軽減や刺激感が著しく緩和されることがわかった。この練合の工程は、顆粒剤、細粒剤またはドライシロップ剤の常法による製造方法の工程の一部としても良いし、別にこの工程を設けても良い。 また、使用する矯味剤の量は、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムの場合、塩酸サプロプテリン含量10%の製剤1000mg中に5ないし10mgが好ましい。5mgより少ないと刺激感低減の効果が少なくなり、10mgより多いとメタケイ酸アルミン酸マグネシウム由来の苦味が生じる場合がある。矯味剤としてリン酸水素カルシウム(2水和物)を使用する場合は、塩酸サプロプテリン含量10%の製剤1000mg中に20ないし40mgが好ましい。20mgより少ないと刺激感低減の効果が少ない。40mgより多くとも特に問題はないが、効果があればよく、多く使用する必要はない。矯味剤の添加量は、塩酸サプロプテリン含量10%の製剤に対して0.5%〜10%程度の量が好ましい。矯味剤由来の不快な味や臭い等を感じることがない範囲で使用することが好ましい。 以上から、服用感の改善のために、矯味剤としてメタケイ酸アルミン酸マグネシウムやリン酸水素カルシウム(2水和物)などを添加することが提唱できたが、塩酸サプロプテリンは酸性条件下で最も安定であるため、これらの矯味剤を添加した場合、製剤を水に溶解したときの安定性が低下することが懸念された。通常は、顆粒剤、細粒剤或いはドライシロップ剤はそのままで服用されるが、乳幼児等への投与などの場合、用時溶解し投与する場合があるので、更に水に溶解した場合の安定性についても確認した。実施例6: 矯味剤を加えた製剤と矯味剤を加えていない製剤について、安定化剤としてアスコルビン酸およびL−システイン塩酸塩を加えたときの水に懸濁後の安定性を評価した。 下記表10に基づく配合処方(配合量:mg)による製剤1gに水25mlを加え懸濁して、25℃で1000LUX条件下にて24時間保存した後のpH、含量残存率および類縁物質含量を測定した。この結果を表11に示した。 この結果、矯味剤を加えた製剤では、矯味剤を加えていない製剤に比べて水に懸濁したときはわずかに安定性が低下するものの、安定化剤としてアスコルビン酸およびL−システイン塩酸塩を加えたことにより安定性が確保されることがわかった。なお、安定化剤としては、他にピロ亜硫酸ナトリウム、チオグリセロール、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムやエデト酸ナトリウムなども同様に用いることができる。添加する量は、アスコルビン酸の場合、塩酸サプロプテリン10%含量製剤1000mg中に5ないし20mg、L−システイン塩酸塩が製剤1000mg中に2.5ないし10mgの範囲が好ましい。この量より少なくなると、製剤を水に懸濁したときの安定性が低下し、多すぎると製剤の(固体状態での)安定性が低下する場合がある。なお、これらの安定化剤を添加した場合でも、矯味剤に対して影響はなく、服用性の改善、および製剤ならびに塩酸サプロプテリンの安定性は保たれていた。 ところで、本発明の有効成分である塩酸サプロプテリンは、わずかな分解によって、白色の原薬の色が茶褐色あるいは黄色に変色する。特に、水分の存在下では、分解が早くなる。また原薬が高含量になるほど製剤の変色が目立つ。医薬品の有効性に変化はなくとも、製剤の色の変質は、患者に対して不安を与えるため、できるだけ色の変質が目立たない製剤を目指した。 そこで、まず変色が目立たない方法を模索した。一般的に、経時的な変色がある場合には、コーティングや着色剤の添加により、変色を目立たせない方法が常法として用いられている。 異型高フェニルアラニン血症の治療剤として使用されている既存の2.5%顆粒製剤においては、食用黄色5号アルミニウムレーキを添加することで、原薬由来の変色を隠蔽することが行なわれている。 しかしながら、以下の通り、塩酸サプロプテリン自体が強い還元力を有するため、加湿条件下に保存した場合には、配合した着色剤が分解して退色することが判明した。 製剤例1の塩酸サプロプテリン2.5%含有顆粒をアルミ分包にて包装した場合の経時的安定性は良好である(下記表12)が、開封後、加湿下に保存すると製剤が退色および変色することが明らかとなった(下記表13)。 この場合の退色の原因は、塩酸サプロプテリンの還元力が強いために着色剤として添加した食用黄色5号アルミニウムレーキが還元され発色がなくなるためと考えられた。 したがって、いかなる保存環境下でも保存安定性が良好で、かつ経時的な着色変化を生じさせない安定な塩酸サプロプテリン製剤を確保するためには、適切な着色剤、経時的な着色変化を生じさせないものを使用しなければならないことが判った。 そこで、最初に、患者に服用時に好感を与える黄色〜赤色の範囲で、配合して有効な着色剤の検討を行なった。これらの結果を、下記実施例に示した。実施例7:塩酸サプロプテリンと各種着色剤との配合による変化 塩酸サプロプテリンと各着色剤を200:1の比率で混合し、各混合物0.2gをガラス瓶に入れ、金属キャップで密封し、40℃/75%湿度条件下に4週間保存し、その安定性(外観変化、残存率)を評価した。 その結果を下記表14中にまとめて示した。 以上の結果からも判明するように、三二酸化鉄および黄色三二酸化鉄に関しては、保存1週間後から顕著な色の変化があり、極度な変色が認められたのに対し、黄色5号アルミニウムレーキおよびリボフラビンでは4週間保存後も大きな外観変化はなく、着色剤を添加しなかった場合の変色が隠蔽され、含量低下も認められなかった。特に、リボフラビンは、酸に対する影響を受けにくく、原薬に対する影響が全くないので、好ましく使用することができることが判った。なお、三ニ酸化鉄あるいは黄色三ニ酸化鉄などの酸化性物質は、原薬の分解を促進するため、好ましくないことが判った。 そこで、医薬品に使用できる着色剤として、上記で検討した着色剤以外の他の着色剤を選定し、製剤例3aの10%顆粒製剤を調製し、苛酷条件下で保存し、リボフラビンらと同様の安定性が得られるか否かを検討した。実施例8:各種着色剤の検討 製剤例3aの処方により、リボフラビンの代わりに、着色剤として、リボフラビン、コチニール色素(カルミン)、食用青色1号、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用赤色3号アルミニウムレーキおよび食用赤色106号を用い、10%顆粒を調製した。調製した各顆粒2gずつをガラス瓶に入れ密栓し、60℃条件下で8週間保存し、その安定性(外観変化、残存率)を評価した。なお保存に際しては、シリカゲル共存下(シリカゲル0.5g)と、シリカゲル非共存下での検討を行なった。 その結果を下記表15および16中に示した。 上記表中の結果から判明するように、60℃、8週間の苛酷な保存条件下においても、いずれの顆粒も退色せず、含量低下も問題なく安定性が良いことが判った。 以上から、本発明においては、着色剤として、リボフラビン、コチニール色素(カルミン)、食用青色1号、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用黄色5号アルミニウムレーキ、食用赤色3号アルミニウムレーキ、食用赤色106号などの着色剤を加えることにより、塩酸サプロプテリンの含有率の低下も無く、原薬の変色が隠蔽され、退色も認められないことが判った。これら着色剤は、任意に用いることができるが、原薬由来の酸に対して、着色が影響を受けないものを選択する必要がある。着色剤として添加する量は、使用する着色剤により望みの発色程度に適った量であれば良いが、0.1%以下(製剤1000mg中に1mg以下)の範囲内での添加が好ましい。例えば、リボフラビンの場合は、0.01ないし0.05%程度が適量と考えられる。 本発明の有効成分である塩酸サプロプテリンは、わずかな分解によって、白色の原薬の色が茶褐色あるいは黄色に変色する。そして、製剤中に残ったわずかな水分や、アルミ分包内の低湿度下でも、環境下の水分により吸湿し、塩酸サプロプテリンは分解し変色してしまうことが分かった。特に、水分の存在下では、分解が早くなるので、塩酸サプロプテリンの分解を最小限に抑えることを目的として、製剤の水分含量のコントロールによる安定性を検討した。 本発明は、顆粒剤、細粒剤またはドライシロップ剤であるので、その製剤の製造工程中に水を添加することが多く、製剤中の水分量は、原料由来以外に工程由来の水分があるので、重要な課題となった。実施例9:製剤中の水分含有量が、保存安定性に与える影響 上記の課題の解決のために、保存安定性(外観変化、残存率)が良好な結果を示している製剤例6aによる処方の塩酸サプロプテリンを10%含有する顆粒を調製した。この調製では、工程中に乾燥時間15分で乾燥を行なっており、調製後の顆粒の水分含量は、1.08%であった。調製した顆粒の水分含量を下記表の6つの水準に強制的に乾燥させて調整し、得られた顆粒を各5gずつアルミ分包して、40℃/6ヶ月保存による経時的安定性を検討した。なお、水分含量は、乾燥減量値であり、日本薬局方 一般試験法 乾燥減量試験法により測定した。 その結果を下記表17に示した。 以上により、水分含量が0.9%以下の試料で安定性が確保されることが判った。 したがって、製剤の外観の経時的安定性を確保するためには製剤中の水分量をコントロールする、すなわち製造工程において製剤中の水分量を低減させることが重要と考えられた。 そこで、製剤例6aによる処方の塩酸サプロプテリンを10%含有する顆粒製剤の製造工程中における乾燥工程について種々の条件検討を実施した。 造粒製剤の工程には、乾燥工程があり、例えば押し出し造粒した顆粒を流動層乾燥機により乾燥している。そこで、仕込み量500gにて、吸気温度を80℃に固定して、乾燥時間を15分または30分になるように設定し、製剤例6aの塩酸サプロプテリン10%含有顆粒を調製して水分量(乾燥減量)を測定した。顆粒は2ロット(1ロット2バッチ構成)調製し評価を行なった。その結果を、下記表18に示した。 上記表18に示す通り、乾燥時間を15分以上にすることで、製剤中の水分含量を、上記実施例7で検討した0.9%以下に低減することが可能となった。 したがって、製剤の水分含有量(乾燥減量)の調整を、造粒した顆粒を流動層乾燥機により、15分以上乾燥することにより、塩酸サプロプテリンおよび本発明の医薬品の安定性を保てることが判った。乾燥の温度は、塩酸サプロプテリン、各配合物および本発明の医薬品に対して、ダメージを与えない温度であればいずれでも良い。任意で、減圧下で乾燥させることも可能である。 しかしながら、製造量をスケールアップした場合には、同様に水分含量を低減させることは困難と予想される。また、乾燥後の包装工程、出荷後の製剤においても、水分含量の増加が予想される。そこで、製剤工程以降の水分含量の増加を抑制することも課題となった。 したがって、極力、包装内に外部からの水分が入り込まないような包装形態として、かつ包装形態中に乾燥剤を入れるなどし、入り込んだ水分に対しても製剤に影響を与えないよう防げる環境で保存することを考えた。そこで、湿度が入り込まない包装形態の設計と包装中に乾燥剤を同封するなどにより入り込んだ水分の存在を低減することにより経時的な外観の変色を防ぐことが可能であるかを検証した。 製剤例6aの塩酸サプロプテリン10%含有顆粒を、1gずつ普通セロポリにて分包したもの21包を乾燥剤としてシリカゲル3gと共にアルミ袋に入れて密封した包装形態、1gずつ高防湿セロポリにて分包したもの21包を乾燥剤としてシリカゲル3gと共にアルミ袋に入れて密封した包装形態、1gずつ乾燥剤の入ったアルミシートにて分包した包装形態の3つについて、25℃/60%湿度および40℃/75%湿度条件下に保存し、経時的な安定性として、外観、含有残存率、水分含量(乾燥減量)および崩壊時間の変化を評価した。ここで用いた普通セロポリは、普通セロファン#300/ポリエチレン40μからなるものであり、高防湿セロポリは、高防湿セロファン#300/ポリエチレン40μからなるものである。その結果を下記表19〜21に示した。 上記した結果からも判明するように、いずれの包装形態においても充分な安定性が確保されることが分かった。また、普通セロポリ分包及び高防湿セロポリ分包については、そのままで25℃/60%湿度及び25℃/75%湿度で保存し、2週間保存し評価した。普通セロポリ分包の場合は、60%湿度において1週間後から色が濃くなり、外観も湿気た感じが見られたが、高防湿セロポリ分包の場合は75%湿度で2週間後でも、全く色も外観も変化が見られなかった。なお、用いた顆粒の乾燥減量は0.83%であった。以上から、防湿性の高い包装材を用いることにより、塩酸サプロプテリンの安定性は維持できることがわかった。防湿性の高い包装材については、透湿度30g/m2/日より低いものを使用することが好ましい。 以上の通り、製造中の水分含量を0.9%以下とし、かつ外部湿度を遮断した包装形態で包装することによる水分の存在による塩酸サプロプテリンの分解を抑制することが可能となる。また。包装形態中に乾燥剤を入れるなどし、水分の混入があった場合にも安定性を保つことができる包装形態とすることも更に好ましく用いられる。 以下、本発明に基づく、他の製剤例(配合量:mg)を表22に記載する。塩酸サプロプテリンの含有量が少ない場合は、塩酸サプロプテリンが不均一となるおそれがあるので、水に溶解し練合する方が好ましいが、粉末のまま混合しても良い。また、他に結合剤、賦形剤、崩壊剤、着香剤などは医薬品として使用できるものであればよく、特に制限なく使用できる。また、その使用量も通常の造粒が可能な範囲であれば良い。製造方法についても常法に従って行なえば良いが、以下2例について製造方法を例示する。製剤例6aの処方による製造方法例1 塩酸サプロプテリン原薬、D−マンニトール、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)およびリン酸水素カルシウムを高速攪拌混合機にて混合した。これに別途調製した結合液とさらに適量の水を加えて、高速攪拌機を用いて練合した。結合液は、ポビドン、アスコルビン酸、L-システイン塩酸塩を精製水に溶解した水溶液にリボフラビンを分散させることにより調製した。練合物を押し出し造粒機にて造粒した後、流動層乾燥機にて乾燥し、これを振動篩装置にて整粒した。製剤例13の処方による製剤方法例2 D−マンニトールおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを高速攪拌混合機にて混合した。さらに別途調製した塩酸サプロプテリン溶液と適量の水を加えて練合した。塩酸サプロプテリン溶液は塩酸サプロプテリン原薬、ポビドン、アスコルビン酸、L−システイン塩酸塩を精製水に溶解した水溶液にリボフラビンを分散させることにより調製した。練合物を押し出し造粒機にて造粒した後、流動層乾燥機にて乾燥、着香して、これを振動篩装置にて整粒した。 以上詳細に記載したように、本発明は、テトラヒドロバイオプテリン反応性高フェニルアラニン血症の治療に有効な塩酸サプロプテリンを、乳幼児から成人にまで広範囲にわたって、一つの製剤で投与し得る、保存安定性に優れた、効果的な製剤を提供する。 特に、原薬である塩酸サプロプテリン自体の塩酸塩由来による酸味や刺激感を、従来から全く検討されていなかった矯味剤とを配合することにより、抑制することができ、また、製剤としての安定性、特に着色変化による安定性を、酸化に強い着色剤を配合することにより隠蔽し得るものである。 また、有効成分である塩酸サプロプテリン自体の安定性を、製剤の水分量をコントロールすることで達成すること、特に、この水分含量のコントロールを製剤の製造工程、あるいは包装形態で行ない得るものである。 なお、本発明を上記した各種実施例、試験例により詳細に説明したが、各実施例等で記載し、例示した製剤例、各種配合成分ならびにその配合量は、本発明の好ましい一形態として例示したものであって、これに限定されない。同様の機能を発揮する製剤例、各種配合成分、配合量の変更にあっても、本発明が目的とするテトラヒドロバイオプテリン反応性高フェニルアラニン血症の治療に使用される限り、本発明の範囲内であることはいうまでもない。 本発明により、テトラヒドロバイオプテリン反応性高フェニルアラニン血症の治療に有効な塩酸サプロプテリンを、乳幼児から成人にまで広範囲にわたって、一つの製剤で投与し得る、保存安定性に優れた、効果的な製剤を提供される。特に本発明が提供する塩酸サプロプテリン含有製剤は、BH4反応性高Phe血症あるいはBH4反応性PAH欠損症に対する唯一の治療製剤であり、その医療上の貢献度は多大なものである。 有効成分として塩酸サプロプテリンを5〜10重量%含有する製剤であって、矯味剤としてメタケイ酸アルミン酸マグネシウムまたはリン酸水素カルシウム(2水和物)を含有し、着色剤としてリボフラビンを含有し、製剤の水分含有量を0.9%以下に抑えた乳幼児から成人にまでに服用感がよく、服用し得ることを特徴とするBH4反応性高フェニルアラニン血症治療製剤としての顆粒剤、細粒剤またはドライシロップ剤。 安定化剤としてアスコルビン酸およびL−システイン塩酸塩を含有することを特徴とする請求項1に記載の顆粒剤、細粒剤またはドライシロップ剤。 矯味剤を、製剤調製工程で塩酸サプロプテリンと水の存在下で練合されることを特徴とする請求項1に記載の顆粒剤、細粒剤またはドライシロップ剤。 製剤の水分含有量(乾燥減量)の調整を、造粒した顆粒を流動層乾燥機により乾燥する工程で行なうことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の顆粒剤、細粒剤またはドライシロップ剤。 製剤の水分含有量(乾燥減量)の調整を、造粒した顆粒を流動層乾燥機により、15分以上乾燥することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の顆粒剤、細粒剤またはドライシロップ剤。 有効成分として塩酸サプロプテリンを5ないし10%含有する顆粒剤、細粒剤またはドライシロップ剤であって、矯味剤としてメタケイ酸アルミン酸マグネシウムまたはリン酸水素カルシウム(2水和物)を含有し、着色剤としてリボフラビンを含有し、さらに製剤の水分含有量を0.9%以下に抑えたことを特徴とするBH4反応性高フェニルアラニン血症治療剤。 安定化剤としてアスコルビン酸およびL−システイン塩酸塩を含有することを特徴とする請求項6に記載のBH4反応性高フェニルアラニン血症治療剤。 矯味剤を、製剤調製工程で塩酸サプロプテリンと水の存在下で練合されることを特徴とする請求項6又は7に記載のBH4反応性高フェニルアラニン血症治療剤。 製剤の水分含有量の調整を、造粒した顆粒を流動層乾燥機により乾燥する工程で行なうことを特徴とする請求項6、7又は8に記載のBH4反応性高フェニルアラニン血症治療剤。 製剤の水分含有量の調整を、造粒した顆粒を流動層乾燥機により、15分以上乾燥することにより行なうことを特徴とする請求項6、7又は8に記載のBH4反応性高フェニルアラニン血症治療剤。