タイトル: | 特許公報(B2)_核酸酵素複合体 |
出願番号: | 2006512938 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C12N 15/09,C12N 9/00,C12N 1/15,C12N 1/19,C12N 1/21,C12N 5/10,C07H 21/02,C07H 21/04 |
片平 正人 JP 4701405 特許公報(B2) 20110318 2006512938 20050418 核酸酵素複合体 国立大学法人横浜国立大学 504182255 下田 昭 100110249 赤尾 謙一郎 100113022 片平 正人 JP 2004141327 20040511 20110615 C12N 15/09 20060101AFI20110526BHJP C12N 9/00 20060101ALI20110526BHJP C12N 1/15 20060101ALI20110526BHJP C12N 1/19 20060101ALI20110526BHJP C12N 1/21 20060101ALI20110526BHJP C12N 5/10 20060101ALI20110526BHJP C07H 21/02 20060101ALI20110526BHJP C07H 21/04 20060101ALI20110526BHJP JPC12N15/00 AC12N9/00C12N1/15C12N1/19C12N1/21C12N5/00 101C07H21/02C07H21/04 B C12N15/00-15/90 GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq SwissProt/PIR/GeneSeq PubMed JSTPlus(JDreamII) 特開平10−509039(JP,A) 9 JP2005007378 20050418 WO2005108570 20051117 11 20080408 山中 隆幸 この発明は、標的RNAを切断し、かつその切断を制御することのできる核酸酵素の複合体及びこの複合体を用いて標的RNAを制御下で切断する方法に関する。 RNAは遺伝情報をタンパク質に変換する際の仲介物質であるが、触媒活性を持ったRNAであるリボザイムが発見されて以来(Nature vol.334, 585-591, 1988)、特定遺伝子の発現を阻害することができるため注目を集めている。 また近年見出された触媒活性を有するデオキシリボザイム(DNA酵素)はリボザイムよりも化学的に安定で、調製しやすく扱いやすいという点で優れている。特定の配列からなるRNAを切断する活性を持つDNA酵素は、有害遺伝子のmRNAを切断する遺伝子治療のツールなどとして利用できるものと考えられている。 このようなリボザイム及びデオキシリボザイムは、ウイルスや病原遺伝子などのRNA切断剤やセンサーチップなどへの利用が試みられている(特許文献1、2等)。 一方、発明者らは、遺伝子の発現量を転写レベル及び翻訳レベルで調節しているトリプレットリピートの一つであるd(GGAGGAGGAGGA)(配列番号1のNがAである場合、以下「GGA 12-mer」といい、便宜上配列番号1の配列を「GGA 12-mer」という場合もある。)についてNMRによる構造解析を行い、これらのGGAリピートDNAが、カリウムイオン濃度が140mM程度である細胞内のような生理的条件下で特異な分子内平行型四重鎖構造を形成することを見出している(非特許文献1、2)。特開平7-231784特開2003-265168J. Mol. Biol. (2001) 313, 255-269J. Biol. Chem. vol.278, No.30, 28147-28153, 2003 従来核酸酵素を用いてRNAを切断する際にはその活性をスイッチングすること又はその活性の強弱を制御することができなかったため、標的RNAを所望のタイミングで切断することができず、その利用が制限されていた。 本発明は、核酸酵素による標的RNAの切断を制御する手段を提供することを目的とする。 このような課題を解決するために、発明者らは既知の核酸酵素(即ち、リボザイム及びデオキシボザイム)と発明者らの研究室で見出された一価金属イオンの有無により構造が一重鎖から四重鎖に大きく変化するGGA 12-mer(非特許文献1)を利用して、これらの複合体を設計した。即ち、核酸酵素を2つのサブユニットに分断し、その間をGGA 12-merで繋ぐことにより、核酸酵素複合体を構築した。 この複合体では、一価金属イオンのない状態又はその濃度が低い状態では、GGA 12-merが四重鎖を形成しないため核酸酵素の2つのサブユニットは離れて存在し、核酸酵素の触媒部位は活性型の構造をとることができず、切断活性が生じない又は切断活性が弱い。しかし、その系に一価金属イオンを添加しその濃度を上げることにより、一重鎖の伸びた状態で存在していたGGA 12-merがコンパクトな四重鎖構造へと変化し、それに伴って核酸酵素の分断されていた2つのサブユニットが互いに引き寄せられ接近し、活性型の構造が形成されて切断活性が強く生じるようになる。 本発明は、核酸酵素にGGA 12-merを組み合わせた核酸酵素複合体を用いて、一価金属イオン濃度を制御することにより核酸酵素のRNA切断活性をスイッチング又はその活性の強弱を制御することを可能にした。 即ち、本発明は、核酸酵素(即ち、リボザイム及びデオキシボザイム)のRNA切断反応触媒部位及び基質結合部位並びに配列(5’GGAGGAGGAGGN3’(配列番号1))から成る核酸酵素複合体であって、該基質結合部位が標的RNAの結合部位と相補的関係にあり、該配列(5’GGAGGAGGAGGN3’)又は該配列の両端の少なくとも一方にリンカーを有する配列が該RNA切断反応触媒部位に挿入されて成る核酸酵素複合体である。この核酸酵素複合体は、基質結合部位を2つ有しこの2つの基質結合部位が前記RNA切断反応触媒部位を挟む構造であることが好ましい。 また本発明は、この核酸酵素複合体、該核酸酵素複合体が由来する核酸酵素が活性を持つために必要な成分、標的RNA、及び一価金属イオンを含む系において、該一価金属イオンの濃度を10mmol/L以上とする段階と該一価金属イオンの濃度を10mmol/L未満とする段階とから成る標的RNAの切断を制御する方法である。 また本発明は、核酸酵素複合体を細胞へ導入することから成る細胞内の標的RNAを切断する方法である。 更に本発明は、この核酸酵素複合体が導入された細胞である。 本発明の核酸酵素複合体は、一価金属イオンが所定濃度を上回る時、所定濃度を下回る場合に比べ触媒活性が上昇する。そのため、この一価金属イオン濃度を調節することによりRNA切断活性のON/OFF又は強弱を制御することができる。この核酸酵素複合体によるRNAの切断箇所は、分断前のDNA酵素による切断箇所と同一であるため、四重鎖の形成によってサブユニットが引き寄せられることで、核酸酵素の活性構造が再構成されたものと考えられる。 本発明の核酸酵素複合体は、核酸酵素のRNA切断反応触媒部位にGGA 12-merを挿入することにより構成される。 本発明において、核酸酵素とはリボザイム及びデオキシボザイムをいう。 本発明に用いることのできる核酸酵素として、例えば、図1(デオキシボザイム)及び図2(リボザイム)に示すような酵素が挙げられる。図中の矢印は標的RNAの切断個所を示す。 a)は10-23 デオキシリボザイム(配列番号7)であり(Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 94, 1997, 4262-4266)、詳細は後述する。基質結合部位はこの配列の1〜8及び24〜31番目、RNA切断反応触媒部位は9〜23番目である。 b)は10-23デオキシリボザイムの触媒部位に変異を加えたものを示す(J. Biol. Chem. 277, 2002, 40617-40622)(配列番号8)。基質結合部位はこの配列の1〜8及び24〜31番目、RNA切断反応触媒部位は9〜23番目である。 c)は10-23デオキシリボザイムの触媒部位の特定の連続した4残基を削除したデオキシリボザイムである(J. Chem. Soc.,Perkin Trans. 2, 1999, 1381-1386)(配列番号9)。基質結合部位はこの配列の1〜8及び20〜27番目、RNA切断反応触媒部位は9〜19番目である。カルシウムイオンに依存して切断活性を生じる。 d)は8-17デオキシリボザイムを示す(Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 94, 1997, 4262-4266; J. Biol. Chem. 275, 2000, 11693-11697)(配列番号10)。基質結合部位はこの配列の1〜7及び21〜27番目、RNA切断反応触媒部位は8〜20番目である。 e)はBipartite デオキシリボザイムを示す(J. Mol. Biol. 313, 2001, 283-294)(配列番号11)。基質結合部位はこの配列の1〜7及び28〜33番目、RNA切断反応触媒部位は8〜27番目である。 f)はE6 デオキシリボザイム。8-17デオキシリボザイムに類似した二次構造であるがGAAは可変である(配列番号12)。基質結合部位はこの配列の1〜6及び31〜36番目、RNA切断反応触媒部位は7〜30番目である。 g)はHD3デオキシリボザイムを示す(Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 95, 1998, 6027-6031)(配列番号13)。基質結合部位はこの配列の1〜8及び32〜39番目、RNA切断反応触媒部位は9〜31番目である。HD3デオキシリボザイムはHD1,HD2というデオキシリボザイムを改変したものである。HD1,HD2との関係は、○AをG、○CをGとし、(1)の部分にTを加えたものがHD2デオキシリボザイムであり、HD2デオキシリボザイムにさらに(2)の部分にTを加えたものがHD1デオキシリボザイムである。切断に際してヒスチジンを必要とする。HD3、HD2、HD1の順に低濃度のヒスチジンで基質を切断可能である。 h)はcisに働くclassIIデオキシリボザイムをtransに働くように改変したデオキシリボザイムを示す(Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 95, 1998, 2233-2237)(配列番号14)。基質結合部位はこの配列の1〜6、13〜16及び20〜23番目、RNA切断反応触媒部位は7〜18番目である。TTCTはポリピリミジン領域を表し、ピリミジン塩基に富んでいれば変更可能である(ex.CTTT)。但し、点線で囲った部分はtriple-helix相互作用をする。 i)は16.2-11 enzyme(J. Am. Chem. Soc. 122, 2000, 2433-2439)を示す(配列番号15)。基質結合部位はこの配列の1〜9及び20〜26番目、RNA切断反応触媒部位は10〜19番目である。 j)はハンマーヘッド型リボザイムを示す(配列番号16)。基質結合部位はこの配列の1〜8及び31〜39番目、RNA切断反応触媒部位は9〜30番目である。 k)はハンマーヘッド型リボザイムを小型化したリボザイムを示す(配列番号17)。基質結合部位はこの配列の1〜8及び23〜31番目、RNA切断反応触媒部位は9〜30番目である。 l)はヘアピン型リボザイムを示す(配列番号18)。基質結合部位はこの配列の1〜6及び12〜14番目、RNA切断反応触媒部位は15〜50番目である。 m)は鉛リボザイムを示す(配列番号19)。基質結合部位はこの配列の1〜4及び7〜10番目、RNA切断反応触媒部位は4〜7番目である。 n)はHDVリボザイム(ゲノム鎖由来)を示す(配列番号20)。基質結合部位はこの配列の21〜27番目、RNA切断反応触媒部位は1〜20及び28〜74番目である。 o)はHDVリボザイム(アンチセンス鎖由来)を示す(配列番号21)。基質結合部位はこの配列の18〜24番目、RNA切断反応触媒部位は1〜17及び25〜69番目である。 p)は n)とo)を用いてデザインされたHDVリボザイム変異体を示す(配列番号22)。基質結合部位はこの配列の20〜26番目、RNA切断反応触媒部位は1〜19及び27〜52番目である。 なお、GGA 12-merの代わりに、このGGA 12-merの両端の少なくとも一方、好ましくは両端にリンカーを有する配列を用いてもよい。リンカーとしては、約1〜4個のヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド、炭素数約2〜10の2価炭化水素基、約1〜4個のアミノ酸からなるペプチドを用いることができる。このオリゴヌクレオチドはランダムな配列のものでよい。この炭化水素基は好ましくは−(CH2CH2)n−(n=約1〜5)で表される。このペプチドはグリシン等の構造の簡単なアミノ酸からなるものが好ましい。 このような核酸酵素の好ましい例として10-23 型デオキシリボザイムを図3に示す(配列番号4)。この配列の1〜8及び24〜31番目は基質結合部位、9〜23番目はRNA切断反応触媒部位である。この酵素は、in vitro選択法において10回のセレクション後に得られた23番目のクローンに由来する(Proc. Natl. Acid. Sci. USA (1997) 94, 4262-4266)。この酵素の反応速度は他の核酸やタンパクのエンドリボヌクレアーゼのものよりも高く、速度論的な面から考えると、10-23型デオキシリボザイムの触媒のメカニズムはハンマーヘッドリボザイムのものと類似するということが示唆されている(Biochemistry 37, 13330-13342, 1998)。15個の残基からなるRNA切断反応触媒部位の配列は高く保存されており、図3に示すように○で囲まれた残基は特に保存性が高く、点線で囲んだ領域がRNA切断反応触媒部位を形成するのに直接関与しているものと考えられている(J. Biol. Chem.,277, 40617-40622, 2002)。 本発明で用いる核酸酵素は、RNA切断反応触媒部位及び基質結合部位から成り、好ましくはRNA切断反応触媒部位とこれを挟む標的RNAに相補的な2つの基質結合部位から成る。 核酸酵素複合体においてこの基質結合部位は標的RNAと相補的関係となるように自由に改変すればよい。そうすることにより所望のRNAを標的とすることができる。基質結合部位の塩基数は好ましくはそれぞれ独立に8±4、より好ましくは8±2である。 また、標的RNAがARB(式中、A及びBは前記結合部位を表し、BのRに隣接するヌクレオチド残基がウリジン又はシチジンを表し、Rがアデノシン又はグアノシンを表す。)で表されることが好ましい。 一方、RNA切断反応触媒部位は由来する核酸酵素によって定まる部分であり、ここにGGA 12-merを挿入する。 「核酸酵素複合体が由来する核酸酵素が活性を持つために必須の成分」とは、Mg2+、Ca2+、Mn2+、Pb2+、Cd2+、Sr2+、Ba2+等であり、これらは媒体中で1〜500mM程度の濃度で存在することを要する。 RNA切断反応触媒部位に配列d(GGAGGAGGAGGA)(GGA 12-mer)を挿入する。図4(A)にGGA 12-merの構造を模式的に示す。全体としては、GGA 12-merが2分子会合したホモダイマー構造をとっている。個々のモノマーは、G2、G5、G8及びG11の4つのグアニン塩基が一平面上に位置して、互いに水素結合で結ばれた構造体(G:G:G:Gテトラッド、図4(B))と、G1、G4、G7及びG10の4つのグアニン塩基と、A3、A6及びA9の3つのアデニン塩基の合計7つの塩基が1平面上に位置して、互いに水素結合で結ばれた構造体(G(:A):G(:A):G(:A):Gヘプタッド、図4(C))を形成している。G塩基に富んだ配列からなるDNAは、in vitroで生理的条件下にすると、四重鎖構造を形成するが、テトラッドはその際にも形成される。一方ヘプタッドは、テトラッドをコアにしつつ、そのまわりにアデニンが3つsheared型といわれるG:A塩基対によって配置されたものである。モノマー内において、テトラッドとヘプタッドはスタッキング相互作用をしており構造の安定化に寄与している。又、末端のA12はテトラッド中のG11とスタッキングしている。(図4(A)) この四重鎖構造を形成する核酸は、K+等の一価金属イオンのない又は低い状態では一本鎖で伸びた状態であるが、所定濃度の一価金属イオンを加えることで四重鎖構造(図4(A))へと変化する。 核酸酵素のRNA切断反応触媒部位を分断した2つのサブユニットを、それぞれGGA 12-merのG1とA12に5’→3’の方向性を維持しながら結合する。結合した様子を図5に示す。 上記のように構成された核酸酵素複合体は、通常、リン酸緩衝液(50mM, pH7.9)、Mg2+(25mM)等の媒体中で用いられる。 この媒体中で、一価金属イオンの濃度を変化させることにより、上記のGGA 12-merの構造変化を促し、その結果核酸酵素のRNA切断活性をON/OFF又は強弱の制御をすることができる(図5)。 このような一価金属イオンとして、K+、Na+等が挙げられる。四重鎖構造はNa+存在下に比べK+存在下でより安定化する。 この一価金属イオン濃度が、10mmol/l未満、好ましくは5mmol/l以下、最も好ましくは0mmol/l場合にはGGA 12-merの構造が一重鎖が伸びた状態となり核酸酵素のRNA切断活性がoffに又は弱くなる。 一方、この一価金属イオン濃度が、10mmol/l以上、好ましくは30mmol/l以上、最も好ましくは30〜200mmol/lの場合にはGGA 12-merの構造が四重鎖構造となり核酸酵素の2つのサブユニットが機能するような配置となり、RNA切断活性がonに又は強くなる。 特に、細胞内外における一価金属イオンであるカリウムイオン濃度には大きな差があり、細胞内では140 mM程度であるのに対し、細胞外では5 mM程度である。このようなカリウムイオンの濃度差に反応して切断活性がスイッチング又は強弱が制御されるため、本発明の核酸酵素複合体は様々な用途への応用が可能である。 本発明の核酸酵素複合体を細胞に導入することにより、活性を細胞外(一価金属イオンであるカリウムイオンの濃度が低い)で低く抑え、細胞内(一価金属イオンであるカリウムイオンの濃度が高い)で酵素活性を発揮して病因タンパク質の発現を抑えることができる。本発明の核酸酵素複合体は通常の条件下では、細胞外で酵素活性を発揮して人体を傷つけることがない。 例えば、本発明の核酸酵素複合体はHIVやインフルエンザウイルス等の疾患を引き起こすウイルス由来の病因遺伝子のmRNAや癌遺伝子のmRNAを細胞内において切断し、不活性化することができる。 本発明の核酸酵素複合体を細胞へ導入する方法として以下のような方法が挙げられる。1)核酸酵素複合体を特定の細胞に導入する方法: A)特定の細胞を生体外に取り出し、核酸酵素複合体を遺伝子銃で導入し、その後生体に戻す。 B)特定の細胞を生体外に取り出し、核酸酵素複合体をエレクトロポレーションで導入し、その後生体に戻す。これらの方法は、骨髄細胞等で有効である。2)核酸酵素複合体を不特定の細胞に導入する方法: 核酸酵素複合体を、カチオン(陽イオン)性の脂質と結合させリポソーム・核酸複合体を形成させ、細胞と接触させると、細胞膜と融合してデオキシリボザイム複合体を効率よく細胞に導入することができる。 以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。 本実施例では核酸酵素として10‐23型デオキシリボザイムを用いた。製造例1 ターゲット(基質RNA)として、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼのサブユニットであるPB2のmRNAの開始コドンAUGを含む部位(配列番号2)(FEBS Lett. 481 113-116 (2000))をホスホロアミダイト法によりDNA/RNA合成機で化学合成した。その際5’端の残基には、ケイ光色素(Cy-5)を導入した。 GGA 12-merに、E10の位置(図6参照)で切断した10‐23型デオキシリボザイムの2つのサブユニットを連結したもの(配列番号3)を合成した(以下「GGA12E10」という。)。 反応容積を10μLとして、10μM GGA12E10、KCl 0又は100mM、50mM緩衝液を混合し、95℃で5分間加熱した後ゆっくりと冷却することでアニーリングを行った。製造例1で得た基質RNAを1μMとなるように加え、37℃で30分間インキュベートした。その後、25mMとなるようにMgCl2を加えることで反応を開始させた。反応温度は37℃とした。0、24、48、96、168時間で溶液の一部を分取し、反応停止溶液を十分量加えることで反応を停止させ冷凍庫に保存した。全ての時間において反応を停止させた後、20%変性ポリアクリルアミドゲルにて15mAの一定の電流で電気泳動を行い、バイオイメージングアナライザー(FLA-2000、(株)富士フィルム製)で5'末端をCy5ラベルしたRNAを検出し、切断活性を観測した。pHは7.9(リン酸緩衝液)とした。 結果を図7に示す。切断割合は168時間でカリウムイオン有り12.2%、カリウムイオン無し3.5%であった。カリウムイオンを加えたものはその作用により、四重鎖構造を形成し、二つのサブユニットが引き寄せられることで、デオキシリボザイムの触媒部位の活性型構造が再構築できたため切断活性が上昇したと考えられる。 KClの代わりにNaClを用いて実施例1と同様の操作を行った。 結果を図8に示す。Na+を用いた場合にも切断活性が認められた。しかし、カリウムイオンを用いた時の切断割合がナトリウムイオンを用いた場合よりも高い。 図7と図8を定量した結果、切断割合は168時間でカリウムイオン有り12.2%、ナトリウムイオン有り5.5%であった。これは先に述べたようにナトリウムイオンに比べ、カリウムイオンを用いた場合には、GGA-12merが形成する四重鎖構造が安定であるため、デオキシリボザイムの切断活性がより強くなったものと考えられる。比較例1 GGA12E10の代わりに野生型10-23型デオキシリボザイム(配列番号4)を用いて実施例1と同様の操作を行った。pHは8.0 (Tris-HCl)とした。 その結果を図9に示す。野生型はカリウムイオンの有無に係わらず切断活性を有している。カリウムイオンの有無による各々の時間での切断活性の差は1%未満であった。本発明で用いることのできるデオキシリボザイムの例を示す図である。図中、上の配列は基質RNAを表し、下の配列はデオキシリボザイムを表す。a)10-23 デオキシリボザイム。NはA, C, G又はT、Rはプリン塩基(G又はA)、Yはピリミジン塩基(C又はU)を表し、矢印は切断部位、b)10-23デオキシリボザイムの触媒部位に変異を加えたもの。MはA又はC、HはA, C又はT、DはG, A又はTを表す。c)10-23デオキシリボザイムの触媒部位の特定の連続した4残基を削除したデオキシリボザイム。d)8-17デオキシリボザイム。e)Bipartite デオキシリボザイム。XはG以外の塩基を表す。()内は削除可能である。f)E6 デオキシリボザイム。g)HD3デオキシリボザイム。h)cisに働くclassIIデオキシリボザイムをtransに働くように改変したデオキシリボザイム。i) 16.2-11 enzyme。本発明で用いることのできるリボザイムの例を示す図である。j)はハンマーヘッド型リボザイムを示すN=A,G,C,or U; X=A,C,or U k)はハンマーヘッド型リボザイムを小型化したリボザイムを示す。N=A,G,C,or U; X=A,C,or U l)はヘアピン型リボザイムを示す。N=A,G,C,or U (基質部分 B=G,C,or U) m)は鉛リボザイムを示す。N=A,G,C,or U n)はHDVリボザイム(ゲノム鎖由来)を示す。o)はHDVリボザイム(アンチセンス鎖由来)を示す。p)は n)とo)を用いてデザインされたHDVリボザイム変異体を示す。実施例で用いた10-23 型デオキシリボザイムを示す図である。NはA、C、G又はT若しくはU、YはU又はC、RはA又はGを表す。一価金属存在下でのGGA 12-merの構造を模式的に示す図である。(A)はGGA 12-merの全体構造を示し、(B)はG:G:G:Gテトラッド、(C)はG(:A):G(:A):G(:A):Gヘプタッドを示す。デオキシリボザイムとGGA 12-merとの結合の様子と、このGGA 12-merが四重鎖構造へと変化することにより離れていたサブユニット同士が近くに引き寄せられる様子を示す図である。10-23型デオキシリボザイムへのGGA 12-merの挿入位置を示す図である。「GGA12E10」におけるカリウムイオンの有無による切断活性の違いを示す電気泳動図である(実施例1)。「GGA12E10」によるナトリウムイオン存在下での切断活性を示す電気泳動図である(実施例2)。野生型10-23型デオキシリボザイムによる切断反応を示す電気泳動図である(比較例1)。 核酸酵素のRNA切断反応触媒部位及び基質結合部位並びに配列(5’GGAGGAGGAGGN3’)から成る核酸酵素複合体であって、該基質結合部位が標的RNAの結合部位と相補的関係にあり、該配列(5’GGAGGAGGAGGN3’)又は該配列の両端の少なくとも一方にリンカーを有する配列が該RNA切断反応触媒部位に挿入されて成る核酸酵素複合体。 前記核酸酵素がリボザイム又はデオキシボザイムである請求項1に記載の核酸酵素複合体。 前記基質結合部位を2つ有し、該2つの基質結合部位が前記RNA切断反応触媒部位を挟む請求項1又は2に記載の核酸酵素複合体。 基質結合部位の塩基数がそれぞれ8±4である請求項1〜3のいずれか一項に記載の核酸酵素複合体。 前記核酸酵素が10-23デオキシリボザイムであり、前記標的RNAがARB(式中、A及びBは前記結合部位を表し、BのRに隣接するヌクレオチド残基がウリジン又はシチジンを表し、Rがアデノシン又はグアノシンを表す。)で表される請求項4に記載の核酸酵素複合体。 請求項1〜5のいずれか一項に記載の核酸酵素複合体、該核酸酵素複合体が由来する核酸酵素が活性を持つために必要な成分、標的RNA、及び一価金属イオンを含む系において、該一価金属イオンの濃度を10mmol/L以上とする段階と該一価金属イオンの濃度を10mmol/L未満とする段階とから成る標的RNAの切断を制御する方法。 前記一価金属イオンがカリウムイオンである請求項6に記載の方法。 下記いずれかの方法で核酸酵素複合体を細胞へ導入することから成る細胞内の標的RNAを切断する方法。 A)生体外に取り出した特定の細胞に、遺伝子銃を用いて又はエレクトロポレーションにより、請求項1〜5のいずれか一項に記載の核酸酵素複合体を導入する。 B)請求項1〜5のいずれか一項に記載の核酸酵素複合体を、カチオン(陽イオン)性の脂質と結合させリポソーム・核酸複合体を形成させ、細胞と接触させる。 請求項1〜5のいずれか一項に記載の核酸酵素複合体が導入された細胞。配列表