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タイトル:特許公報(B2)_糖化蛋白質の測定方法
出願番号:2006511051
年次:2012
IPC分類:C12Q 1/37,C12Q 1/26,C12Q 1/28


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谷口 由利子 西尾 朋久 齋藤 和典 JP 4852414 特許公報(B2) 20111028 2006511051 20050316 糖化蛋白質の測定方法 積水メディカル株式会社 390037327 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 谷口 由利子 西尾 朋久 齋藤 和典 JP 2004076014 20040317 20120111 C12Q 1/37 20060101AFI20111215BHJP C12Q 1/26 20060101ALI20111215BHJP C12Q 1/28 20060101ALI20111215BHJP JPC12Q1/37C12Q1/26C12Q1/28 C12Q 1/00-1/70 PubMed JSTPlus(JDreamII) 特開2001−095598(JP,A) 国際公開第02/021142(WO,A1) 特開2001−204494(JP,A) 特開2001−057897(JP,A) 11 JP2005004639 20050316 WO2005087946 20050922 16 20071102 伊達 利奈 本発明は、試料中の糖化蛋白質、糖化ペプチド又は糖化アミノ酸の測定方法、及びその測定方法に用いられる糖化蛋白質の測定用試薬に関するものである。 糖化蛋白質は、蛋白質が非酵素的に糖化された蛋白質で、糖側のアルデヒド基と蛋白質側のアミノ基がシッフ塩基を形成した後、アマドリ転移を経て形成されるアマドリ化合物である。糖化蛋白質は生体内に広く存在しており、このうち血液中の糖化蛋白質の濃度は、血液中に溶解しているグルコースなどの単糖の濃度に依存している。糖化蛋白質としては、蛋白質のアミノ末端のα−アミノ基が糖化されたもの(例えば、糖化ヘモグロビン)、蛋白質の内部リジン残基のε−アミノ基が糖化されたもの(例えば、糖化アルブミン)を挙げることができ、血清中の糖化アルブミンの濃度や赤血球中の糖化ヘモグロビンと非糖化ヘモグロビンとの存在比は、過去の一定期間の平均血糖値を反映することから、糖尿病の診断、病状の管理、治療効果の判定など臨床診断の指標として使用されている。 糖化蛋白質の測定方法としては、酵素法がある(例えば、特許文献1及び2参照)。酵素法は、試料中の糖化蛋白質に蛋白質分解酵素を作用させ、次工程の基質となる糖化ペプチド又は糖化アミノ酸を遊離させる前処理工程、及び遊離した基質に糖化ペプチド特異酵素又は糖化アミノ酸特異酵素(例えば、オキシダーゼ)を作用させて検出可能な生成物(例えば、過酸化水素)を生成させ、該検出可能な生成物を測定する工程からなる。 酵素法による糖化蛋白質測定では、蛋白質分解酵素が発色反応に供する基質の生成を担っている。従って、所定の時間内に充分な当該基質を供給するためには、蛋白質分解酵素を多く使用する必要がある。ところが、蛋白質分解酵素は、試料中の糖化蛋白質だけでなく、測定系に存在する測定に必須な酵素(例えば、オキシダーゼ)も同時に分解するため、蛋白質分解酵素が高濃度で存在すると、本来測定されるべき糖化蛋白質の測定精度が低下するという問題点がある。 一方、過酸化水素の測定方法としては、パーオキシダーゼ(POD)の存在下で4−アミノアンチピリン(4−AA)、3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)等のカップラーとフェノール系、アニリン系又はトルイジン系の色原体との酸化縮合により色素を生成するトリンダー試薬類、PODの存在下で直接酸化呈色するロイコ色素を用いる方法等が汎用されている。ロイコ色素としては、水溶性を改善したトリフェニルメタン系のロイコ色素が知られており(特許文献3参照)、特に高感度な測定に有用である。特開平5−192193号公報特開2001−95598号公報特開平3−206896号公報 従って、本発明は、蛋白質分解酵素の分解作用を制御し、精度よく糖化蛋白質、糖化ペプチド又は糖化アミノ酸を測定する方法、及びその測定方法に用いられる測定試薬を提供することにある。 本発明者らは、かかる実情に鑑み鋭意研究を行った結果、糖化蛋白質の酵素的測定法において、糖化ペプチド特異酵素又は糖化アミノ酸特異酵素作用前の反応液をpH1〜5に調整することにより、蛋白質分解酵素の分解作用を制御し、糖化蛋白質等が精度よく測定できることを見出し、本発明を完成させた。 すなわち、本発明は、糖化蛋白質含有試料を蛋白質分解酵素で処理し、遊離した糖化ペプチド又は糖化アミノ酸に対応するオキシダーゼを作用させ、生成する過酸化水素をパーオキシダーゼ及び被酸化性呈色試薬を用いて測定する方法において、該オキシダーゼ作用前の反応液をpH1〜5に調整することを特徴とする、糖化蛋白質、糖化ペプチド又は糖化アミノ酸の測定方法を提供するものである。 本発明はまた、少なくとも(1)糖化ペプチド又は糖化アミノ酸に作用して過酸化水素を生成するオキシダーゼ、(2)反応液をpH1〜5に調整するための溶液、及び(3)パーオキシダーゼを含む、糖化蛋白質、糖化ペプチド又は糖化アミノ酸測定用試薬を提供するものである。 本発明によれば、蛋白質分解酵素の分解作用を制御して糖化蛋白質、糖化ペプチド又は糖化アミノ酸を精度よく測定することができる。本発明の測定方法は簡便であるため、臨床検査の分野において極めて有用である。酸性試薬にトリトンX−100を添加した場合のヘモグロビン濃度測定の結果(実施例3)を示す図である。酸性試薬にエマール20Cを添加した場合のヘモグロビン濃度測定の結果(実施例3)を示す図である。酸性試薬に界面活性剤を添加しなかった場合のヘモグロビン濃度測定の結果(比較例3)を示す図である。本発明によるHbA1c値と「ラピディアHbA1c」によるHbA1c値との相関性(実施例4)を示す図である。本発明によるHbA1c値と「ラピディアHbA1c」によるHbA1c値との相関性(実施例4)を示す図である。本発明によるHbA1c値と「ラピディアHbA1c」によるHbA1c値との相関性(実施例5)を示す図である。本発明によるHbA1c値と「ラピディアHbA1c」によるHbA1c値との相関性(実施例6)を示す図である。 本発明における糖化蛋白質は、前述したように、蛋白質がグルコース等のアルドースと非酵素的に結合し、生成したものであれば如何なるものでもよい。例えば、生体由来の糖化蛋白質として、糖化アルブミン、糖化ヘモグロビン等があり、本発明は、例えば、ヘモグロビンAlc(HbAlc)の測定に好適に用いられる。 糖化蛋白質を含有する試料としては、全血、血球、血清、血漿、髄液、汗、尿、涙液、唾液、皮膚、粘膜、毛髪等の生体試料が挙げられる。また、糖化蛋白質は、ジュース、調味料等の食品一般にも含有されている。これらの試料のうち、全血、血球、血清、血漿が好ましい。これらの試料は、そのまま又はろ過や透析処理の後に測定に供してもよく、また測定すべき糖化蛋白質を適宜、濃縮、抽出、更には水もしくは緩衝液で希釈してもよい。 本発明においては、先ず、糖化蛋白質を含有する試料に蛋白質分解酵素を作用させ、糖化ペプチド(例えば、フルクトシルペプチド等)、糖化アミノ酸(例えば、フルクトシルアミノ酸等)を遊離させる。生体試料や食品中には、蛋白質分解酵素を作用させる前に既に糖化蛋白質が分解されて遊離したペプチドやアミノ酸に、グルコースが結合した後、アマドリ転移を経て生成したフルクトシルペプチド又はフルクトシルアミノ酸も含まれているが、これらも遊離したフルクトシルペプチド又はフルクトシルアミノ酸に含まれる。 蛋白質分解酵素としては、蛋白質分解活性、ペプチド分解活性を有していれば特に制限されないが、糖化蛋白質からフルクトシルペプチド又はフルクトシルアミノ酸を短時間で効率よく遊離させるものがより好ましい。特に糖化蛋白質がHbA1cである場合には、フルクトシルバリルペプチド又はフルクトシルバリルヒスチジンを遊離させるものが好ましく、フルクトシルバリルヒスチジンを遊離させるものが特に好ましい。 フルクトシルペプチド又はフルクトシルアミノ酸を遊離させる蛋白質分解酵素としては、バチルス属、アスペルギルス属もしくはストレプトマイシス属の微生物由来、動物由来、植物由来等のものが挙げられる。また、メタロプロテイナーゼ、中性プロテアーゼ又は塩基性プロテアーゼに属するもの、前記微生物の遺伝子を組換え操作して得られるものも好適に使用できる。また、化学修飾の有無も問わない。 このような蛋白質分解酵素としては、例えば、プロテイナーゼK、トリプシン、パパイン、プロナーゼなど研究用途の市販品として容易に入手できるもの、ニュートラルプロテイナーゼ、トヨチームNEP(以上、東洋紡社製)、スミチームLP、スミチームFP、スミチームMP(以上、新日本化学工業社製)、サモアーゼP、プロチンA、プロチンP(以上、大和化成社製)、アクチナーゼAS、アクチナーゼPF、アクチナーゼE(科研製薬社製)、ウマミザイム、プロテアーゼS「アマノ」G、プロテアーゼA「アマノ」G、プロテアーゼP「アマノ」3G(以上、アマノエンザイム社製)など工業用として市販されているものが挙げられる。上記蛋白質分解酵素は、単独で用いても、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。 上記蛋白質分解酵素のうちで、ストレプトマイシス・グリセウス(Streptomyces griseus)由来のものは、フルクトシルバリルヒスチジンを単独で効率よく遊離させるため、特に好ましい。ストレプトマイシス・グリセウス由来の蛋白質分解酵素としては、具体的には、アクチナーゼAS、アクチナーゼAF、アクチナーゼE(いずれも科研製薬社製)、プロナーゼE(カルビオケム−ノバイオケム社製、シグマ社製)等が挙げられる。また、バチルス属由来の蛋白質分解酵素も好ましく、具体的には、プロチンPC10F(大和化成社製)、トヨチーム(東洋紡社製)等が挙げられる。 更に、前記蛋白質分解酵素は、至適pHが5.5〜10、すなわちpH1〜5での分解活性がpH5.5〜10での分解活性と比較して低いものが好ましい。蛋白質分解酵素の活性は、カゼインを基質とする方法や蛋白質分解酵素を糖化ペプチド等に作用させ、その前後の試料をキャピラリー電気泳動法で比較することにより確認できる。 試料の処理条件は、用いる蛋白質分解酵素が測定対象となる糖化蛋白質に作用して、糖化ペプチドや糖化アミノ酸を短時間に効率よく遊離できる条件であれば、如何なる条件でもよい。用いる蛋白質分解酵素の濃度は、試料中の糖化蛋白質の量や処理条件などにより適宜選択されるが、一例として、ストレプトマイシス・グリセウス由来の蛋白質分解酵素(例えば、アクチナーゼE、科研製薬社製)を0.0001〜500mg/mL、好ましくは0.001〜300mg/mLを添加する。 蛋白質分解酵素で処理するときのpHは特に制限されないが、用いる酵素に対して至適となるように、適当なpH調整剤、例えば緩衝液によってpH5.5〜10に調整することができる。緩衝液としては特に制限はなく、リン酸、フタル酸、クエン酸、トリス、マレイン酸、コハク酸、シュウ酸、酒石酸、酢酸、ホウ酸、グッドの緩衝液等が挙げられる。緩衝液の濃度も特に制限はないが、0.00001〜2mol/Lが好ましく、0.001〜1mol/Lが特に好ましい。処理温度は10〜40℃が好ましい。得られる処理液は、そのまま又は必要により適宜、加熱、遠心分離、濃縮、希釈等をしてもよい。 本発明の測定方法では、糖化ペプチド特異酵素又は糖化アミノ酸特異酵素(糖化ペプチド又は糖化アミノ酸に作用して過酸化水素を生成するオキシダーゼであり、以下、「過酸化水素生成オキシダーゼ」という。)を作用させる前の反応液をpH1〜5に調整する。特に好ましくはpH1〜4である。pH1〜5に調整することにより、過酸化水素生成オキシダーゼに対する蛋白質分解酵素の分解作用を制御することができる。本明細書において、「過酸化水素生成オキシダーゼ作用前の反応液」とは、試料を蛋白質分解酵素で処理して得られる反応液を意味するが、蛋白質分解酵素による処理前の試料溶液と処理後の反応液とを包含した反応液でもよい。従って、後者の場合には、蛋白質分解酵素処理前の試料溶液をpH1〜5に調整後、処理中、処理後においても該pHが維持されていることが必要である。処理前から試料溶液のpHを1〜5に調整する場合には、蛋白質分解酵素の使用量や処理時間を増やしてもよい。 pHの調整剤としては、酸性pH条件とできるものであれば特に制限されず、塩酸、酢酸、硫酸、リン酸等の無機酸、グリシン、フタル酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、シュウ酸、酒石酸、酢酸、乳酸等の有機酸が使用できる。無機酸又は有機酸の濃度は特に制限されない。過酸化水素生成オキシダーゼ作用前の反応液をpH1〜5にし、更に過酸化水素生成オキシダーゼの反応の際にpH4〜9に調整できる濃度であればよく、0.0001〜1000mMが好ましい。 過酸化水素生成オキシダーゼ作用前の反応液には、ポリオキシエチレン構造を有する非イオン系界面活性剤又は陰イオン系界面活性剤を添加してもよい。これらの界面活性剤を糖化蛋白質含有試料又は蛋白質分解酵素による処理後の反応液に添加することにより、赤血球からヘモグロビンを取出して反応に供するための前処理として使用できるばかりでなく、試薬又は試料由来の濁りの発生を抑えることができる。 非イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン縮合物類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン多環型界面活性剤等が挙げられ、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類が好ましい。陰イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸類、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸塩類等が挙げられ、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩類又はアルキルスルホコハク酸類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩類が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩類が特に好ましい。 界面活性剤の使用量は、過酸化水素生成オキシダーゼ作用前の反応液中、0.0001〜10%が好ましく、特に0.001〜10%が好ましい。 pH1〜5に調整された反応液には、更に、過酸化水素にパーオキシダーゼと共に作用させて色素を生成させる被酸化性呈色試薬を添加することができる。pH1〜5の溶液中では、該被酸化性呈色試薬の安定性が高く、経時的に呈する非特異的な発色が抑制される。被酸化性呈色試薬としては、過酸化水素と反応して呈色するものであれば如何なるものでもよい。例えば、4−アミノアンチピリンと、3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾン等のカップラーとアニリン系化合物との組み合わせ、ロイコ色素等が挙げられ、なかでもロイコ色素が好ましい。 ロイコ色素としては特に制限はないが、トリフェニルメタン誘導体、フェノチアジン誘導体、ジフェニルアミン誘導体などが使用できる。トリフェニルメタン誘導体としては、特開平3−206896号公報、特開平6−197795号公報等に記載の水溶性の高い化合物、フェノチアジン誘導体としては、特公昭60−33479号公報に記載の化合物、ジフェニルアミン誘導体としては、特公昭60−33479号公報、特開昭62−93261号公報等に記載の化合物が使用できる。これらの中で、ロイコマラカイトグリーン、ロイコクリスタルバイオレット、N−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)−ジフェニルアミンナトリウム塩(DA−64;和光純薬工業社製)、10−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−3,7−ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジンナトリウム塩(DA−67:和光純薬工業社製)、10−(N−メチルカルバモイル)−3,7−ビス(ジメチルアミノ)−10H−フェノチアジン(MCDP:同仁化学社製)、N,N,N’,N’,N”,N”−ヘキサ−(3−スルホプロピル)−4,4’,4”−トリアミノトリフェニルメタン(TPM−PS:同仁化学社製)等が好ましく、TPM−PS、DA−64、DA−67又はMCDPがより好ましく、TPM−PS又はMCDPが特に好ましい。ロイコ色素は、通常、溶液中では保存安定性が低いが、pH1〜5の溶液中では長期間安定である。 その他、ジアミノベンチジン、ヒドロキシフェニルプロピオン酸、テトラメチルベンチジン、オルトフェニレンジアミンなどが使用できる。 蛋白質分解酵素の処理によって遊離した糖化ペプチド又は糖化アミノ酸は、これらに過酸化水素生成オキシダーゼを反応させ、生成した過酸化水素を測定することにより、測定することができる。 このような過酸化水素生成オキシダーゼとしては、フルクトシルペプチド等の糖化ペプチド又はフルクトシルアミノ酸等の糖化アミノ酸を代謝できるものであれば特に制限されず、微生物由来、動物由来、植物由来等のいずれでもよく、また該微生物の遺伝子組み換えによって産生されるものでもよい。また、化学修飾の有無も問わない。具体的には、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(特開2003−79386号公報及び国際公開第97/20039号パンフレット)、ケトアミンオキシダーゼ(特開平5−192193号公報)、フルクトシルペプチドオキシダーゼ(特開2001−95598号公報及び特開2003−235585号公報)等が挙げられ、フルクトシルペプチドオキシダーゼが特に好ましい。フルクトシルペプチドオキシダーゼとしては、コリネバクテリウム属菌の産生するフルクトシルアミノ酸オキシダ−ゼを改変した酵素(特開2001−95598号公報)、糸状菌由来のフルクトシルペプチドオキシダーゼ(特開2003−235585号公報)等が挙げられる。FPOX−CE又はFPOX−EE(ともにキッコーマン社製)が特に好適である。これらの過酸化水素生成オキシダーゼは、溶液状態でも乾燥状態でもよく、不溶性担体に保持又は結合されていてもよく、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。 過酸化水素生成オキシダーゼの使用量は、酵素の種類にもよるが、0.001〜1000単位/mLが好ましく、特に0.1〜500単位/mLが好ましい。作用させるときのpHは、使用する酵素の至適pHを考慮し、pH4〜9となるように緩衝液を用いて調整する。作用温度は、通常の酵素反応に用いられる温度であり、10〜40℃が好ましい。緩衝液としては前記記載のものを使用することができる。緩衝液の濃度も特に制限されないが、0.00001〜2mol/Lが好ましく、0.001〜1mol/Lが特に好ましい。 上記オキシダーゼは、必要に応じて、他の酵素、補酵素等と組み合わせて使用することができる。他の酵素としては、ジアホラーゼ又はフルクトシルバリンを基質としないアミノ酸代謝酵素などが挙げられ、アスコルビン酸オキシダーゼ、ビリルビンオキシダーゼ等の血液中の夾雑成分を処理するための酵素も使用できる。補酵素としては、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド還元型(NADH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド還元型リン酸(NADPH)、チオNAD、チオNADP等が挙げられる。 パーオキシダーゼは、西洋ワサビ、微生物等由来のものを0.01〜100単位/mLの濃度で使用することが好ましい。 過酸化水素は、パーオキシダーゼと被酸化性呈色試薬を用いる酵素的方法によって、短時間にかつ簡便に測定できる。過酸化水素の測定は、通常、過酸化水素生成オキシダーゼを作用させて過酸化水素を発生させる工程に連続して行われるが、過酸化水素の測定溶液は、前記記載の緩衝液を用いてpH4〜9に調整することが好ましい。発色の程度(吸光度変化量)は、分光光度計により測定し、標準とする濃度既知の糖化ペプチド、糖化アミノ酸等の吸光度と比較して、試料中の糖化蛋白質、糖化ペプチド又は糖化アミノ酸を測定することができる。測定には、通常の自動分析装置を用いることができる。 本発明の糖化蛋白質測定用試薬は、少なくとも(1)糖化ペプチド又は糖化アミノ酸に作用して過酸化水素を生成するオキシダーゼ、(2)反応液をpH1〜5に調整するための溶液、及び(3)パーオキシダーゼを含む。それぞれの成分の具体的内容については前記のとおりである。ここで、上記(2)の「pH1〜5に調整するための溶液」とは、前記記載のpH調整剤によって調整された溶液を意味し、また、「反応液」とは、試料を蛋白質分解酵素で処理して得られる反応液を意味するが、蛋白質分解酵素による処理前の試料溶液と処理後の反応液とを包含した反応液でもよい。 本発明の糖化蛋白質測定用試薬には、更に蛋白質分解酵素を含んでもよい。また、その他、血液中の夾雑成分を処理する酵素;反応調整剤;安定化剤;アルブミン等の蛋白質類;塩化ナトリウム、塩化カリウム、フェロシアン化カリウム等の塩;リジン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸、ペプチド、ポリアミノ酸類;還元性物質の影響回避のためのテトラゾリウム塩;抗生物質、アジ化ナトリウム、ホウ酸等の防腐剤;陽イオン性界面活性剤等も添加できる。 本発明の糖化蛋白質測定用試薬は、溶液状態だけでなく、乾燥状態やゲル状態でも提供できる。また、ガラスビン、プラスチック容器等への充填の他、不溶性担体への塗布、含浸等の形態で提供できる。溶液状態で長期保存する場合には、一般的には保存容器を遮光することが望ましい。 以下実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。[実施例1] 蛋白質分解酵素の制御効果(1)試料の調製 蛋白質分解酵素(アクチナーゼE、科研製薬社製)を0、1、5、10mg/mLとなるよう精製水に溶かし試料とした。(2)測定<第一試薬> 3μM フルクトシルバリン 20μM TPM−PS(N,N,N’,N’,N”,N”−ヘキサ−(3−スルホプロピル)−4,4’,4”−トリアミノトリフェニルメタン、同仁化学社製) 10mM マレイン酸液(pH3)<第二試薬> 4単位/mL フルクトシルペプチド酸化酵素(FPOX−CE、キッコーマン社製) 20単位/mL POD(東洋紡社製) 200mM クエン酸緩衝液(pH6) 各試料20μLに第一試薬240μLを加え、37℃で5分加温後、第二試薬を80μL加え、37℃で5分加温後、日立7150形自動分析装置を用いて、波長600nmでの吸光度を測定した。試料中の蛋白質分解酵素濃度が0mg/mLの場合の測定値を100として、吸光度の変化量の相対値を求めた。結果を表1に示す。[比較例1] 第一試薬のマレイン酸液を0.1N水酸化ナトリウム液を用いてpH7に調整した以外は実施例1同様にして吸光度を測定した。 表1から明らかなように、第一反応をpH1〜5で行った場合には、蛋白質分解酵素によるFPOX−CEやPODの分解が抑制されることが確認された。[実施例2] 糖化ヘモグロビンの測定<溶血試薬> 2% エマール20C(花王社製) 1mg/mL アクチナーゼE(科研製薬社製) 20mM HEPES(2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸)緩衝液(pH8)。*エマール20C:ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム<酸性試薬> 0.1% トリトンX−100 20μM TPM−PS(同仁化学社製) 0.05% アジ化ナトリウム 5mM マレイン酸液(pH2.8)<酵素試薬> 20単位/mL POD(東洋紡社製) 4単位/mL FPOX−CE(キッコーマン社製) 200mM クエン酸緩衝液(pH6)(1)溶血試料の調製 市販キット「ラピディアHbA1c」(富士レビオ社製)によりHbA1c濃度既知のヒト血球を試料として用い、試料10μLに溶血試薬300μLを加え、溶血試料とした。(2)測定 溶血試料20μLに酸性試薬240μLを加え37℃で5分間加温後、波長600nmの吸光度を測定し、更にこの反応液に酵素試薬80μLを加え37℃で5分間反応させ、波長600nmの吸光度変化量を測定した。結果を表2に示す。[比較例2] 酸性試薬の代わりに下記の中性試薬を用いる以外は実施例2と同様にした。<中性試薬> 0.1% トリトンX−100 20μM TPM−PS(同仁化学社製) 0.05% アジ化ナトリウム 5mM マレイン酸液(pH7) 表2から明らかなように、実施例2の測定値は比較例2より高く、既知濃度との相関係数も比較例2より大きく、蛋白質分解酵素による試薬中の他の酵素への影響が軽減されていることが分かった。[実施例3] ヘモグロビン濃度の測定(1)試料の調製 10μLのヒト血球液に200μLの1% エマール20Cを加え混合して溶血させ、これを更に1% エマール20C液にて5段階希釈し、試料とした。(2)測定 試料20μLに50mM クエン酸緩衝液からなる試薬を240μL加え、37℃で5分加温後の波長600nmの吸光度を測定した。尚、クエン酸緩衝液としては、pHを3、4、5にそれぞれ調整し、これに界面活性剤として0.5% トリトンX−100又は1% エマール20Cを添加したものを調製した。結果を図1、2に示す。[比較例3] 界面活性剤を除く以外は実施例3と同様にした。結果を図3に示す。 図1〜3から明らかなように、クエン酸緩衝液に界面活性剤を添加した場合には、ヘモグロビン濃度依存的な吸光度変化が認められた。一方、界面活性剤を添加しなかった場合には、ヒト血球溶血試料と酸性試薬との混合による濁りのため、段階希釈に応じた吸光度が得られなかった。[実施例4] HbA1c濃度の測定<溶血試薬1> 2% エマール20C(花王社製) 1mg/mL アクチナーゼE(科研製薬社製) 20mM HEPES緩衝液(pH8)<溶血試薬2> 2% エマール20C(花王社製) 1mg/mL アクチナーゼE(科研製薬社製) 260μM TPM−PS(同仁化学社製) 20mM HEPES(pH8)<酸性試薬1> 0.1% トリトンX−100 20μM TPM−PS(同仁化学社製) 5mM マレイン酸液(pH3)<酸性試薬2> 0.1% トリトンX−100 5mM マレイン酸液(pH3)<酵素試薬> 20単位/mL POD(東洋紡社製) 3単位/mL FPOX−CE(キッコーマン社製) 200mM クエン酸緩衝液(pH6)(1)溶血試料の調製 ヒト血球試料10例を用いて、各血球試料10μLに溶血試薬1または溶血試薬2を300μL加え溶血試料をそれぞれ調製した。尚、次の測定は、溶血試料の調製において溶血試薬1を用いた場合は酸性試薬1を(A)、及び同様に溶血試薬2を用いた場合は酸性試薬2を(B)用いて実施した。(2)測定 溶血試料20μLに酸性試薬240μLを加え37℃で5分間加温後、波長600nmの吸光度を測定しヘモグロビン濃度に依存した測定値(samp Hb)を求めた。更に、この反応液に酵素試薬80μLを加え、37℃で5分反応させた。波長600nmの吸光度変化量を測定し、HbA1c濃度に依存した測定値(samp A1)を求め、これらとHbA1c濃度(%)既知試料を用いて同様に操作した場合のヘモグロビン濃度に依存した測定値(std Hb)とHbA1c濃度に依存した測定値(std A1)から、下記式によりHbA1c値(%)を算出した。 HbA1c(%)=std HbA1×(std Hb/std A1)×(samp A1/samp Hb)(std HbA1;HbA1c濃度既知試料のHbA1c(%)値) 免疫学的測定方法に基づく市販キット「ラピディアHbA1c」(富士レビオ社製)により測定したHbA1c値(%)(参照例)との相関性を図4、図5に示す。 図4、図5から明らかなように、本発明法はラピディアHbA1cと良好な相関性を示した。[実施例5] HbA1c濃度の測定<溶血試薬> 2% エマール20C(花王社製) 1mg/mL アクチナーゼE(科研製薬社製) 20mM HEPES(pH8)<酸性試薬> 0.1% トリトンX−100 20μM MCDP(10−(N−メチルカルバモイル)−3,7−ビス(ジメチルアミノ)−10H−フェノチアジン、同仁化学社製) 10mM マレイン酸液(pH3)<酵素試薬> 20単位/mL POD(東洋紡社製) 4単位/mL FPOX−CE(キッコーマン社製) 200mM クエン酸緩衝液(pH6)(1)溶血試料の調製 ヒト血球試料10μLに溶血試薬300μLを加え溶血試料を調製した。(2)測定 溶血試料10μLに酸性試薬240μLを加え、37℃で5間加温後、波長600nmの吸光度を測定し、ヘモグロビン濃度に依存した測定値を求めた。更に、本反応液に酵素試薬80μLを加え37℃で5分反応させ、波長600nmの吸光度変化量を測定し、HbA1c濃度に依存した測定値を求め、実施例4と同様にHbA1c値(%)を算出した。「ラピディアHbA1c」(富士レビオ社製)により測定したHbA1c値(%)との相関性を図6に示す。 図6から明らかなように、本発明法はラピディアHbA1cと良好な相関性を示した。[実施例6] HbA1c濃度の測定<溶血試薬> 2% エマール20C(花王社製) 10mg/mL プロチンPC10F(大和化成社製) 20mM HEPES(pH8)<酸性試薬> 0.1% トリトンX−100 20μM TPM−PS(同仁化学社製) 10mM マレイン酸液(pH3)<酵素試薬> 20単位/mL POD(東洋紡社製) 3単位/mL FPOX−CE(キッコーマン社製) 200mM クエン酸緩衝液(pH6)(1)溶血試料の調製 ヒト血球試料10μLに溶血試薬300μLを加え溶血試料を調製した。(2)測定 溶血試料10μLに酸性試薬240μLを加え、37℃で5間加温後、波長600nmの吸光度を測定し、ヘモグロビン濃度に依存した測定値を求めた。更に、本反応液に酵素試薬80μLを加え37℃で5分反応させ、波長600nmの吸光度変化量を測定し、HbA1c濃度に依存した測定値を求め、実施例4と同様にHbA1c値(%)を算出した。「ラピディアHbA1c」(富士レビオ社製)により測定したHbA1c値(%)(参照例)との相関性を図7に示す。 図7から明らかなように、本発明法はラピディアHbA1cと良好な相関性を示した。[実施例7] TPM−PSの安定化−1 下記の各水溶液にTPM−PSの濃度が60μMとなるように溶解した後、37℃で保存し、波長600nmにおける吸光度を測定した。表3に、0時間後、2週間後、3週間後の吸光度を示す。 表3から明らかなように、TPM−PSは、pH1〜5の水溶液中では非特異的な発色が抑制され、安定であることが分かった。実施例8 TPM−PSの安定性−2 下記の各水溶液にTPM−PSの濃度が100μMとなるように溶解した後、25℃で10日間保存し、波長600nmにおける吸光度を測定した。結果を表4に示す。 表4から明らかなように、TPM−PSは、pH1〜5の水溶液中では吸光度の変化量が小さく、安定であることが分かった。実施例9 MCDPの安定性 MCDPをメタノールに溶かして4mMとした後、0.1% トリトンX−100を含む下記の各水溶液に100μMになるように溶解した。37℃で24時間保存し、波長600nmにおける吸光度を測定した。結果を表5に示す。 表5から明らかなように、MCDPは、pH1〜5の水溶液中では吸光度の変化量が小さく、非特異的な発色が抑制され、安定であることが分かった。 糖化蛋白質含有試料を至適pHが5.5〜10である蛋白質分解酵素で処理し、遊離した糖化ペプチド又は糖化アミノ酸に対応するオキシダーゼを作用させ、生成する過酸化水素をパーオキシダーゼ及び被酸化性呈色試薬を用いて測定する方法において、該オキシダーゼ作用前の反応液をpH1〜5に調整することを特徴とする、糖化蛋白質、糖化ペプチド又は糖化アミノ酸の測定方法。 糖化蛋白質が糖化ヘモグロビンである請求項1記載の方法。 至適pHが5.5〜10である蛋白質分解酵素が、バチルス属、アスペルギルス属もしくはストレプトマイシス属由来又は該微生物の遺伝子組換えによって得られるものであって、かつ単独又は複数でフルクトシルバリルヒスチジンを遊離させるものである請求項1又は2記載の方法。 至適pHが5.5〜10である蛋白質分解酵素が、ストレプトマイシス・グリセウス(Streptomyces griseus)由来の微生物によって得られるものであって、かつ単独でフルクトシルバリルヒスチジンを遊離させるものである請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。 オキシダーゼ作用前の反応液が、ポリオキシエチレン構造を有する陰イオン性界面活性剤又は非イオン界面活性剤を含有する請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。 pH1〜5に調整された反応液が、被酸化性呈色試薬を含有する請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。 被酸化性呈色試薬が、トリフェニルメタン系、フェノチアジン系及びジフェニルアミン系から選ばれるロイコ色素である請求項6記載の方法。 トリフェニルメタン系ロイコ色素が、N,N,N’,N’,N”,N”−ヘキサ−(3−スルホプロピル)−4,4’,4”−トリアミノトリフェニルメタンである請求項7記載の方法。 フェノチアジン系ロイコ色素が、10−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−3,7−ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン又は10−(N−メチルカルバモイル)−3,7−ビス(ジメチルアミノ)−10H−フェノチアジンである請求項7記載の方法。 pHの調整を塩酸、硫酸、リン酸及び有機酸から選ばれる1種以上を用いて行う請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。 有機酸がグリシン、マレイン酸又はクエン酸である請求項10記載の方法。


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