生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_ガストリン放出ペプチド前駆体の免疫学的測定方法
出願番号:2006333072
年次:2008
IPC分類:G01N 33/68,G01N 33/53


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吉村 徹 藤田 顕樹 JP 2008145278 公開特許公報(A) 20080626 2006333072 20061211 ガストリン放出ペプチド前駆体の免疫学的測定方法 アボット・ラボラトリーズ 391008788 ABBOTT LABORATORIES 川口 義雄 100062007 小野 誠 100114188 渡邉 千尋 100140523 金山 賢教 100119253 大崎 勝真 100103920 坪倉 道明 100124855 吉村 徹 藤田 顕樹 G01N 33/68 20060101AFI20080530BHJP G01N 33/53 20060101ALI20080530BHJP JPG01N33/68G01N33/53 D 8 OL 11 2G045 2G045AA11 2G045CA26 2G045DA36 2G045FB03 本発明は、免疫学的測定によるProGRP (ガストリン放出ペプチド前駆体)検出系において、サンプルとして血漿を用い、検体安定性を飛躍的に向上させるアッセイ方法に関する発明である。 肺癌と血中ガストリン放出ペプチド(GRP)濃度との関連は、山口らによっても報告されているとおり(特許文献1参照)、その有用性が知られていた。しかしGRPは生理的活性物質であり血清・血漿中において極めて短時間のうちに活性を失うことから、免疫学的測定として実用的に使用することは難しかった。山口らは、GRPの前駆体であるガストリン放出ペプチド前駆体(ProGRP)3種類のうち、生理的活性部位(アミノ酸配列1番目〜27番目)を含まず、3種類の共通部位である、アミノ酸配列31番目から98番目まで(ProGRP 31−98)を特異的に測定することにより、免疫学的測定として実用に足るだけの抗原安定性を得ることを見出し、肺癌の診断に有用であることを見出した(特許文献1参照)。この方法によると、ProGRPは血清・血漿中において6時間まで同程度に安定に存在することができることから、免疫学的測定法として実用化することが可能となった。また血漿の使用についての利点が特に得られることがないことから、癌マーカー測定のために通常使用される血清がサンプルとして使用されることになった。特開平6−98794号公報 しかし依然として、ProGRP 31−98は、免疫学的測定に用いられる通常の抗原に比べ安定性が劣っている。検体中のProGRP31−98活性減少の許容度はメーカーによって異なるようではあるが、シスメックス社イムチェック・F−ProGRPの場合は冷蔵保存で3時間、富士レビオ社セラムラボ(登録商標)ProGRP測定キットの場合は冷蔵で24時間程度までしか検体を保存することが認められておらず(いずれも厚生労働省の既承認診断薬)、室温での保存は認められていない。また血漿中と血清中での安定性は同等と解釈されていることから、血清を用いた測定のみが実用化されている。血清検体を3時間から24時間を超えて保存する場合は、検体を凍結することが必要になり、使用前の融解の手間、凍結融解によって生じた析出物を測定前に遠心分離により取り除く必要があるなど、不十分な検体安定性は、作業効率を著しく低下させていた。また免疫学的に測定される例えば、CEA、AFP、CA19−9と言った代表的な癌マーカーを始めとした抗原の多くは冷蔵保存で7日まで安定に存在することができることから、本測定を行う場合にのみ特別な操作・保存場所が必要となるなど、検査全体としての効率を低下させる一因ともなっていた。 ProGRP31−98の検体保存性が悪い理由については、分子量が小さいことが理由であると解釈されていた。また、血清でもわずかな活性低下しか認められない6時間までの範囲内で血清・血漿中でProGRP31−98の測定値に顕著な差が認められなかったことから、血清・血漿間で安定性に差が有るとは考えられていなかった。 ProGRPは分子量8000−10000の蛋白質であり、ProGRP 31−98免疫測定において測定を行っているアミノ酸配列31番目〜98番目の領域では分子量は7800程度である。分子量が小さいペプチド分子の検体安定性が悪いことは一般的事実として知られており、ProGRPの検体安定性が悪いことについての原因究明研究が報告されていないことも納得できる。しかしながら、免疫診断薬として用いられるインシュリン(分子量5800)等のように、例え分子量が小さい場合でも、血清血漿中で冷蔵保存において5日以上安定に存在できるペプチド分子が存在することから、発明者は、分子量の小ささに加え、何らかのProGRP特有の検体不安定化メカニズムが存在するに違いないと考えた。 ProGRP分子はそれ自体では冷蔵保存で1週間程度以上安定に存在できることから、検体中で不安定化させる要因は、ProGRP自体のみに有るわけではなく、血液中に存在する不安定化を導く物質の存在によるものであると発明者らは考えた。また、ProGRP31−98中には、生理活性部位であるGRP部分(アミノ酸配列1番目から27番目)がすでに含まれていないことから、生体内で生じる反応とは別の何らかの反応がProGRP特有の検体不安定性を生じさせている可能性があると発明者は考えた。 正書に記されるとおり、血液が体外に出た際には、血液凝固因子・線溶因子といわれる10を超える物質が活性化され、それぞれが、血液凝固因子前駆体分子の分解・活性化を導き、最終的にはプロトロンビンの分解により生じたトロンビンの活性化、そしてトロンビンによるフィブリノーゲンの分解反応によるフィブリンの形成を導き、血液を凝固させることは周知の事実である。そしてこの際の凝固した部分を取り除いた液体成分が血清となる。これら血液凝固因子の活性化体は、トロンビンを始めほとんどが蛋白質分解酵素であり、血清中において存在している。血漿中においては、トロンビンの活性化が生じておらず、また抗凝固剤の種類にもよるが、いくつかの血液凝固因子が活性化していない。すなわち血清中には生体内や血漿に比べ多量の血液凝固因子・線溶因子の活性化物質・分解物質が存在しているのである。そこで、発明者らは血清中において存在し、生体内では存在しないか微量のみしか存在していないこれら物質と、ProGRP 31−98の不安定性に関連性があるかもしれないと考えたのである。 発明者は、この考えに従って、血液凝固因子の活性体の一つであるトロンビンをProGRP溶液に添加して活性の低下を観察したところ、トロンビン添加溶液においてProGRPの顕著な活性低下が観察されたことから、血液凝固因子の活性体の一つであるトロンビンがProGRPの活性低下の一因であることが明らかとなった。 発明者は、血液凝固因子の活性体が血清中に多量に存在し、生体内や血漿においては、全く存在しないか微量のみしか存在しないという性質を利用し、血漿をサンプルとしてProGRPの安定性を検討したところ、飛躍的にProGRPの検体安定性を向上させることに成功し、本発明を完成させた。血漿は血清と同様に血液より採取することが可能で、血清とほぼ同様に血液より採取することができ、全く問題なく免疫測定に供されることが可能である。また、血清サンプルに血液凝固因子または線溶因子の活性化体の阻害剤、不活性化剤を添加することによっても、同様の効果を得ることができる。 [発明の構成] 本発明は上記知見に基づき、血液凝固因子が活性化せず、そのためにフィブリン形成が生じず血液凝固が起こらない状態の血液検体を用いることにより、従来の方法より利便性が高くかつより正確な測定が可能となるProGRP測定方法を提供するものである。 「1または2以上の血液凝固因子が活性化していない状態の血液サンプル」とは、いずれかの血液凝固因子の活性化を抑制または低下させる薬剤を添加し、または血液凝固因子を除去した状態の血液サンプルを意味する。血液凝固因子の活性化を抑制または低下させる薬剤としてはEDTA、ヘパリン、クエン酸等の薬剤が使用し得るがこれらに限定されるわけではない。 したがって、血液凝固が生じない状態の血液サンプルとしては、血漿を用いることが代表的である。ここで述べる血漿には、検査において用いられるすべての血漿サンプルを使用することができる。すなわち、EDTA血漿、ヘパリン血漿、クエン酸血漿を代表例とし、その他の血漿をも含む。また各物質に使用される塩についても任意に選ぶことができる。EDTAについては2K、3K、ヘパリンについてはナトリウム塩、リチウム塩などが代表的であるが、その他の塩を選ぶこともできる。 また、血清採取の後に血液凝固因子を不活性化する物質を血清中に添加したり、血液凝固因子を除去したり、活性を低下させたりすることによっても、効果を得ることが可能である。 本発明は免疫学的測定方法において使用することが適当であるが、ProGRPを測定するいかなる測定系にも使用することができる。 [発明の効果] 本発明により、サンプルを長期間安定に保存することが可能になる。従来、冷蔵保存においては、3−24時間であった保存期間を、1週間程度まで延長することが可能になる。また、室温における保存も可能になる。 本発明により、サンプルの保存時間が3−24時間を超える場合でも凍結保存が不要になり、凍結時の使用前の融解の手間、凍結融解により生じた析出物を遠心分離により除去する作業が不要になるなど、作業効率を著しく向上させることができる。また免疫学的に測定される他の抗原の多くにおいては冷蔵保存で安定に保存させることができる1週間保存が可能となることから、ProGRP測定サンプルのための特別な保存手順・保存場所が不要となる。 また本発明は、凍結保存における、長期検体安定性をも向上させ、さらには、室温における安定性も向上させることから、冷蔵状態で血清分離や保存を行う手間を省くことができる。さらに、血液採取から、測定終了までの作業の過程でどうしても生じてしまう室温作業における活性低下を本発明では抑えることができることから、より正確にProGRP値を測定することが可能になる。 血清中でのProGRP不安定化程度は患者間で当然相違しているものと考えられる。したがって、血清を検体として用いた従来の方法の場合には、血清分離の工程時または保存時にProGRPの抗原活性が低下することにより、本来、陽性値相当のProGRPを有していたにもかかわらず、測定時には陰性化してしまっていることが十分に考えられる。このような抗原活性の陰性化は、本発明を用いることにより防ぐことが可能であり、それにより、小細胞肺癌の検出感度を向上させることができると考えられる。 尚、ProGRPを測定する方法としては、文献が多数存在するが、サンプルとして血漿を用いている例は、山口らの一報だけである。またこの一報に関しても、血清と血漿が検体安定性において同様であるという結論を導いており、本発明における血漿の優れた有用性を示唆するものでは全くない。また血清・血漿間での他の物質に関する安定性検討の文献を下記に示すが、これらが、本発明の測定方法を示唆するものでは全くないことも明らかである。 山口らは(特許3210994)、ProGRP31−98の肺癌診断との関連を見出し、保存時間6時間まで血漿サンプルが血清サンプルと同様に使用できることを示しているが、血漿サンプルの保存安定性の優位性についての言及は全く無い。免疫測定に供するサンプルとして、血漿を血清ととも使用しその同等性を示すことは、免疫測定において通常行われることであり、血漿がすぐれた有用性を持っているという本願発明の構成を、この文献から推測することは、当業者であっても容易に成しえることではない。 エヴァンスら(Clinical Biochemistry 34巻、ページ107−112、2001年)は、血清・血漿中における、生理活性を持つホルモンの安定性を検討し、血清中、血漿中のいずれにおいて安定性が優れているかは各ホルモンによって異なることを報告している。このことは、被検物質の安定性の観点から、血清サンプルが血漿サンプルよりもむしろ有利であり得ることを示すものであり、当業者が本願発明に想到することをむしろ回避させるものである。 ボヤントンら(Clinical Chemistry48巻、ページ2242−2247、2002年)は、血清・血漿中の24種類の物質についての安定性を検討した。血清・血漿とも、採血後すみやかに血球から血清分離、血漿分離を行った場合には、58時間以上、血清・血漿中のどちらの場合にも安定に存在できることを示した。また分離を行わない場合においては、血清中での安定性が優れると結論した。この論文中にProGRPに関する記載は全く無く、また血清の方が安定性に優れると結論していることから、我々の発明の新規性に疑いは生じない。 さらに、現在3種類のProGRP診断薬が厚生労働省の認可を受け、販売されており、また臨床の現場で使用されている(平成8年(1996年)より保険適用)。にもかかわらず、ProGRP31−98の血漿中における安定性が血清より優れていることを報告した例が、一切無いことが、本発明が新規性を持つということを示す明らかな証拠であるということができる。 血液凝固が生じない状態のサンプルを用い検体の安定性を向上させるという本願発明は、いずれの従来技術ともまったく異なった機作に基づく新たな発明であり、従来技術では期待できなかった効果を奏するものである。 実施例1.ProGRP抗原の不安定性とトロンビンの関係 1%牛血清アルブミン、2mM塩化カルシウムを含むリン酸緩衝液中にFmoc法によりアミノ酸合成したProGRP 31−98抗原(米国アボットラボラトリーズ社より入手)を添加した。さらにトロンビン(シグマアルドリッチ社製)を添加し、室温保存後、アーキテクトProGRPを用いて、ProGRP濃度を測定した。測定結果を図1に示した。図1より、トロンビン存在下において、ProGRPの分解が観察されることから、血清中でのProGRP分解の主要な一因としてトロンビンが関係していることが示唆される。トロンビンは血液凝固因子IIの活性化体であり、血清において多量に存在する物質である。なおアーキテクト測定方法については実施例3に記す。 実施例2.PMSF(フェニルメタンスルフォニルフロライド)添加によるProGRP安定化 血清中にPMSF(シグマアルドリッチ社製)を添加した後に、Fmoc法によりアミノ酸合成したProGRP 31−98抗原を添加し、室温保存後、アーキテクトProGRPを用いて、ProGRP濃度を測定した。測定結果を図2に示した。図2より、PMSF存在下において、ProGRPの活性低下が著しく抑制されることが分かる。PMSFはトロンビンを始めとするセリンプロテアーゼ類の酵素活性を不活性化するために用いられる物質であり、トロンビンを始めとするプロテアーゼの存在が、ProGRPを不活性化させている原因であると考えることができる。 実施例3.血漿を用いたProGRP抗原の安定化 Fmoc法により合成したProGRP 31−98(米国アボットラボラトリーズ社より入手)、を同一供血者より入手した血清およびEDTA血漿中に添加し、測定サンプルとした。測定サンプルを、冷蔵で1日、3日、7日保存後、また1日室温で保存後、ProGRP濃度を測定した。ProGRP濃度の測定にはセラムラボ(登録商標)ProGRP測定キット(富士レビオ社)、および下記するアーキテクトProGRPを用いた。測定結果は図3〜図7に示した。 セラムラボProGRPとアーキテクトProGRPはともに免疫測定を利用したProGRP 31−98濃度の測定方法であるが、両者の測定結果は同等であった。両者ともに、血漿中にProGRP抗原を存在させた場合、血清と比べ顕著に検体安定性の向上が認められた。この安定性の顕著な向上は、冷蔵保存だけではなく、室温保存においても、認めることができた。 血清を用いた方法では冷蔵保存条件で1日(翌日)までしかProGRPを安定に保存することができないが、血漿を用いた場合、1週間以上安定に保存させることができる。エヴァンスらが示す一般的な物質における不活性化率の近似式(Clinical Biochemistry 34巻、ページ107−112、2001年)に従って、ProGRP残存率=ekt(e:自然対数、k:定数、t:時間)と近似した場合の、残存率が90%を示すのに必要な時間は、セラムラボ(登録商標)ProGRP測定キットを用いた冷蔵7日保存の測定値を用いると、冷蔵で10.25日と算出される。同様に血清の場合1.26日と算出されることから(セラムラボ(登録商標)ProGRP測定キットを用いた冷蔵1日保存血清検体の測定値を計算に使用)、血漿を用いた場合、血清の約8倍の安定性を得られることができることが分かる。 血清を用いた現行の方法では、室温でProGRP検体を安定に保存することはできない。血漿を用いた場合には、24時間以上安定に保存させることができる。ProGRP残存率=ekt(e:自然対数、k:定数、t:時間)と近似した場合の、残存率が90%を示すのに必要な時間は、セラムラボの室温24時間保存の測定値を用いると、58時間と算出され、室温保存であっても約2日間まで安定に保存することが可能となる。 アーキテクトProGRP測定方法: 抗ProGRP 31−98抗体(特許3210994に記載された方法に従って得られた抗体)を、カルボキシル基修飾磁性微粒子(米国アボットラボラトリーズ社より入手)上に、EDC(N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(シグマアルドリッチ社製)を用いる方法により結合させ、抗体固相化微粒子とした。抗体固相化微粒子をツイーン20(関東化学社製)、EDTA(エチレンジアミン4酢酸ナトリウム塩)および塩化ナトリウムを含有するトリス塩酸緩衝液中に添加することにより抗体固相化微粒子溶液を作製した。 抗ProGRP 31−98抗体(特許3210994に記載された方法に従って得られた抗体)にアクリジニウム誘導体(米国アボットラボラトリーズ社より入手)により標識し、界面活性剤、牛血清アルブミン(シグマアルドリッチ社)を含有するMES緩衝液中に添加することにより、標識溶液を作製した。 ProGRP濃度の測定には、アーキテクト全自動免疫測定分析機(アボットジャパン社製)を用いた。サンプル50ulに抗体固相化微粒子溶液50ulを混合し、第一反応を開始した。第一反応中にProGRP抗原が抗体固相化磁性粒子に結合し、その結合量は検体中のProGRP濃度に対応する。18分後に抗体固相化磁性粒子を磁石により保持した状態で本機専用のリン酸緩衝液を用いて洗浄を行い、さらに標識溶液を50ul混合し、4分間引き続き反応を続けた。この反応により、標識抗体が磁性粒子上のProGRPと結合する。標識抗体の結合量は、磁性粒子上のProGRP量に応じるため、サンプル中のProGRP濃度が低いと、少量の標識抗体が磁性粒子に結合し、サンプル中のProGRP濃度が高いと、多量の標識抗体が磁性粒子上に結合することになる。 次に、本機械専用のリン酸緩衝液を用いて洗浄した後に、本機械専用の発光プレトリガー試薬・トリガー試薬を用いて発光シグナルを観察した。別に作製した濃度既知の溶液を標準溶液としてロジスティック4パラ法により標準曲線を作成し、サンプルより得られたシグナルをProGRP濃度に計算することにより、サンプル中のProGRP濃度を決定した。 実施例4.各種血漿の比較 同一供血者より得られたEDTA血漿、リチウムヘパリン血漿、クエン酸血漿、ナトリウムヘパリン血漿、血清のマッチ検体に特許3210994に記載された方法に従って得られたリコンビナントProGRP 31−98を添加し、24時間室温に、または7日間冷蔵中に保存を行い、実施例3と同様にProGRP濃度を測定した。24時間室温放置したサンプルの測定値を、時間0の測定値で除した値を、24時間室温保存後のProGRP残存率とし、7日間冷蔵保存したサンプルの測定値を、時間0の測定値で除した値を、7日間冷蔵保存後のProGRP残存率とした。 図7に、各種血漿における7日間冷蔵保存後のProGRP残存率を示した。図8に、各種血漿における24時間室温保存後のProGRP残存率を示した。図7、8より、いずれの血漿においても、血清に比べ、顕著に高く、すなわち、いずれの血漿においても顕著に検体安定性が向上していることがわかる。また血漿中で冷蔵7日間保存において、ほぼ100%の残存率を示していることから、血漿中で冷蔵7日間まではProGRPのほぼ全量が安定に保存されていることが分かる。 実施例5.タイムコース 同一供血者より得られたEDTA血漿・血清マッチ検体中に、Fmoc法によりアミノ酸合成したProGRP 31−98抗原を添加し、室温、冷蔵中に保存後、実施例3に示された方法で、ProGRP濃度を測定した。24時間までの値は、3ドナーの平均値、72時間までの値は2ドナーよりの平均値で示した。図9に冷蔵保存におけるProGRP残存率、図10に室温保存におけるProGRP残存率を示した。図中に示される保存時間は、0、1、3、6、7、9、24時間(ここまで冷蔵保存および室温保存)、72時間(冷蔵保存のみ)である。 図9より、冷蔵保存においては、山口らが示したとおり6時間までの保存において血清血漿は同等のProGRP安定性を有している。ただし6時間を超えたところから、徐々に差が顕著になり、ProGRP検体を24時間以上保存した場合、血漿は明らかに血清に比べ優れた安定性を示すことができる。 図10より、室温保存においては、3時間を超えた時点で、血清と血漿間におけるProGRPの安定性にすでに顕著な差が生じている。また6時間以上保存した場合、血漿はあきらかに血清に比べ優れた保存安定性を示すことができることがわかる。血清中でProGRPを保存した場合には、6時間の時点では約80%にまでProGRP活性が低下している。診断薬用途で、検体を保存する場合、通常90%までの活性の残存(10%活性の低下)が許容される限界である。血清で室温保存した場合には6時間の時点では約80%にまでProGRP活性が低下していることから、図10の結果は、室温保存が許されていない既承認品セラムラボ(登録商標)ProGRP測定キットやイムチェック・F・ProGRPのキット中の記載事項と一致する結果と言える。一方ProGRPを血漿中で保存した場合は、室温保存においても、24時間保存した場合でも活性の残存率は約90%であり、24時間程度まで安定に保存することが可能となると考えられる。山口らは、血清中に安定に存在できる範囲内において、血漿の使用可能であることを示しているが、本発明は、血清中で安定に存在できない保存条件・保存時間であっても、血液サンプル中のProGRPを診断薬用途として用いるに足るだけの十分な保存安定性を確保することができる点で、山口らの発明と異なっており又本発明の有用性を示すことができると考えることができる。トロンビン存在下、非存在下および血清中における室温保存でのProGRPの残存率を示す。PMSF添加および未添加血清中における室温保存でのProGRPの残存率を示す。血清および血漿中における冷蔵保存でのProGRPの残存率を示す。血清および血漿中における室温保存でのProGRPの残存率を示す。血清および血漿中における冷蔵保存でのProGRPの残存率を示す。血清および血漿中における室温保存でのProGRPの残存率を示す。血清および血漿中における7日間冷蔵保存した後のProGRPの残存率を示す。血清および血漿中における24時間室温保存した後のProGRPの残存率を示す。血清および血漿中における冷蔵保存でのProGRPの残存率を示す。血清および血漿中における室温保存でのProGRPの残存率を示す。 サンプルとして、1または2以上の血液凝固因子が活性化していない状態の血液サンプルを用いる、血液サンプル中のProGRPを測定する方法。 トロンビンが活性化していない状態の血液サンプルを用いる、請求項1に記載のProGRPを測定する方法。 血漿をサンプルとして用いる請求項1または2に記載のProGRP測定方法。 免疫学的測定方法を使用する請求項1〜3に記載のProGRP測定方法。 ProGRP31−98部分を測定する、請求項1〜4に記載のProGRP測定方法。 採取後冷蔵保存において6時間を越えて保存したサンプルを使用する請求項1〜5に記載のProGRP測定方法。 採取後冷蔵保存において24時間を越えて保存したサンプルを使用する請求項1〜5に記載のProGRP測定方法。 採取後室温において放置または保存したサンプルを使用する請求項1〜5に記載のProGRP測定方法。 【課題】生体サンプル内において不安定であることが知られているProGRPの安定性を改善し、より簡便でかつ正確なProGRPの測定方法を提供する。【解決手段】サンプルとして、血液凝固因子が活性化していない状態の血液サンプルを用いることにより、ProGRPの分解を抑制し、長期間のサンプル保存および測定精度の改善が可能となる。【選択図】なし


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特許公報(B2)_ガストリン放出ペプチド前駆体の免疫学的測定方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_ガストリン放出ペプチド前駆体の免疫学的測定方法
出願番号:2006333072
年次:2013
IPC分類:G01N 33/68,G01N 33/53


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吉村 徹 藤田 顕樹 JP 5201822 特許公報(B2) 20130222 2006333072 20061211 ガストリン放出ペプチド前駆体の免疫学的測定方法 アボット・ラボラトリーズ 391008788 ABBOTT LABORATORIES 特許業務法人川口國際特許事務所 110001173 小野 誠 100114188 渡邉 千尋 100140523 金山 賢教 100119253 大崎 勝真 100103920 坪倉 道明 100124855 吉村 徹 藤田 顕樹 20130605 G01N 33/68 20060101AFI20130520BHJP G01N 33/53 20060101ALI20130520BHJP JPG01N33/68G01N33/53 D G01N 33/48−33/98 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開2003−270238(JP,A) 特開平06−098794(JP,A) 島田正孝 他,アプロチニン(トラジロール)によるPRO−GRP測定について,臨床病理 日本臨床病理学会総会,日本,1998年,Vol.46 ,P114,Page.255 7 2008145278 20080626 11 20090812 草川 貴史 本発明は、免疫学的測定によるProGRP (ガストリン放出ペプチド前駆体)検出系において、サンプルとして血漿を用い、検体安定性を飛躍的に向上させるアッセイ方法に関する発明である。 肺癌と血中ガストリン放出ペプチド(GRP)濃度との関連は、山口らによっても報告されているとおり(特許文献1参照)、その有用性が知られていた。しかしGRPは生理的活性物質であり血清・血漿中において極めて短時間のうちに活性を失うことから、免疫学的測定として実用的に使用することは難しかった。山口らは、GRPの前駆体であるガストリン放出ペプチド前駆体(ProGRP)3種類のうち、生理的活性部位(アミノ酸配列1番目〜27番目)を含まず、3種類の共通部位である、アミノ酸配列31番目から98番目まで(ProGRP 31−98)を特異的に測定することにより、免疫学的測定として実用に足るだけの抗原安定性を得ることを見出し、肺癌の診断に有用であることを見出した(特許文献1参照)。この方法によると、ProGRPは血清・血漿中において6時間まで同程度に安定に存在することができることから、免疫学的測定法として実用化することが可能となった。また血漿の使用についての利点が特に得られることがないことから、癌マーカー測定のために通常使用される血清がサンプルとして使用されることになった。特開平6−98794号公報 しかし依然として、ProGRP 31−98は、免疫学的測定に用いられる通常の抗原に比べ安定性が劣っている。検体中のProGRP31−98活性減少の許容度はメーカーによって異なるようではあるが、シスメックス社イムチェック・F−ProGRPの場合は冷蔵保存で3時間、富士レビオ社セラムラボ(登録商標)ProGRP測定キットの場合は冷蔵で24時間程度までしか検体を保存することが認められておらず(いずれも厚生労働省の既承認診断薬)、室温での保存は認められていない。また血漿中と血清中での安定性は同等と解釈されていることから、血清を用いた測定のみが実用化されている。血清検体を3時間から24時間を超えて保存する場合は、検体を凍結することが必要になり、使用前の融解の手間、凍結融解によって生じた析出物を測定前に遠心分離により取り除く必要があるなど、不十分な検体安定性は、作業効率を著しく低下させていた。また免疫学的に測定される例えば、CEA、AFP、CA19−9と言った代表的な癌マーカーを始めとした抗原の多くは冷蔵保存で7日まで安定に存在することができることから、本測定を行う場合にのみ特別な操作・保存場所が必要となるなど、検査全体としての効率を低下させる一因ともなっていた。 ProGRP31−98の検体保存性が悪い理由については、分子量が小さいことが理由であると解釈されていた。また、血清でもわずかな活性低下しか認められない6時間までの範囲内で血清・血漿中でProGRP31−98の測定値に顕著な差が認められなかったことから、血清・血漿間で安定性に差が有るとは考えられていなかった。 ProGRPは分子量8000−10000の蛋白質であり、ProGRP 31−98免疫測定において測定を行っているアミノ酸配列31番目〜98番目の領域では分子量は7800程度である。分子量が小さいペプチド分子の検体安定性が悪いことは一般的事実として知られており、ProGRPの検体安定性が悪いことについての原因究明研究が報告されていないことも納得できる。しかしながら、免疫診断薬として用いられるインシュリン(分子量5800)等のように、例え分子量が小さい場合でも、血清血漿中で冷蔵保存において5日以上安定に存在できるペプチド分子が存在することから、発明者は、分子量の小ささに加え、何らかのProGRP特有の検体不安定化メカニズムが存在するに違いないと考えた。 ProGRP分子はそれ自体では冷蔵保存で1週間程度以上安定に存在できることから、検体中で不安定化させる要因は、ProGRP自体のみに有るわけではなく、血液中に存在する不安定化を導く物質の存在によるものであると発明者らは考えた。また、ProGRP31−98中には、生理活性部位であるGRP部分(アミノ酸配列1番目から27番目)がすでに含まれていないことから、生体内で生じる反応とは別の何らかの反応がProGRP特有の検体不安定性を生じさせている可能性があると発明者は考えた。 正書に記されるとおり、血液が体外に出た際には、血液凝固因子・線溶因子といわれる10を超える物質が活性化され、それぞれが、血液凝固因子前駆体分子の分解・活性化を導き、最終的にはプロトロンビンの分解により生じたトロンビンの活性化、そしてトロンビンによるフィブリノーゲンの分解反応によるフィブリンの形成を導き、血液を凝固させることは周知の事実である。そしてこの際の凝固した部分を取り除いた液体成分が血清となる。これら血液凝固因子の活性化体は、トロンビンを始めほとんどが蛋白質分解酵素であり、血清中において存在している。血漿中においては、トロンビンの活性化が生じておらず、また抗凝固剤の種類にもよるが、いくつかの血液凝固因子が活性化していない。すなわち血清中には生体内や血漿に比べ多量の血液凝固因子・線溶因子の活性化物質・分解物質が存在しているのである。そこで、発明者らは血清中において存在し、生体内では存在しないか微量のみしか存在していないこれら物質と、ProGRP 31−98の不安定性に関連性があるかもしれないと考えたのである。 発明者は、この考えに従って、血液凝固因子の活性体の一つであるトロンビンをProGRP溶液に添加して活性の低下を観察したところ、トロンビン添加溶液においてProGRPの顕著な活性低下が観察されたことから、血液凝固因子の活性体の一つであるトロンビンがProGRPの活性低下の一因であることが明らかとなった。 発明者は、血液凝固因子の活性体が血清中に多量に存在し、生体内や血漿においては、全く存在しないか微量のみしか存在しないという性質を利用し、血漿をサンプルとしてProGRPの安定性を検討したところ、飛躍的にProGRPの検体安定性を向上させることに成功し、本発明を完成させた。血漿は血清と同様に血液より採取することが可能で、血清とほぼ同様に血液より採取することができ、全く問題なく免疫測定に供されることが可能である。また、血清サンプルに血液凝固因子または線溶因子の活性化体の阻害剤、不活性化剤を添加することによっても、同様の効果を得ることができる。 [発明の構成] 本発明は上記知見に基づき、血液凝固因子が活性化せず、そのためにフィブリン形成が生じず血液凝固が起こらない状態の血液検体を用いることにより、従来の方法より利便性が高くかつより正確な測定が可能となるProGRP測定方法を提供するものである。 「1または2以上の血液凝固因子が活性化していない状態の血液サンプル」とは、いずれかの血液凝固因子の活性化を抑制または低下させる薬剤を添加し、または血液凝固因子を除去した状態の血液サンプルを意味する。血液凝固因子の活性化を抑制または低下させる薬剤としてはEDTA、ヘパリン、クエン酸等の薬剤が使用し得るがこれらに限定されるわけではない。 したがって、血液凝固が生じない状態の血液サンプルとしては、血漿を用いることが代表的である。ここで述べる血漿には、検査において用いられるすべての血漿サンプルを使用することができる。すなわち、EDTA血漿、ヘパリン血漿、クエン酸血漿を代表例とし、その他の血漿をも含む。また各物質に使用される塩についても任意に選ぶことができる。EDTAについては2K、3K、ヘパリンについてはナトリウム塩、リチウム塩などが代表的であるが、その他の塩を選ぶこともできる。 また、血清採取の後に血液凝固因子を不活性化する物質を血清中に添加したり、血液凝固因子を除去したり、活性を低下させたりすることによっても、効果を得ることが可能である。 本発明は免疫学的測定方法において使用することが適当であるが、ProGRPを測定するいかなる測定系にも使用することができる。 [発明の効果] 本発明により、サンプルを長期間安定に保存することが可能になる。従来、冷蔵保存においては、3−24時間であった保存期間を、1週間程度まで延長することが可能になる。また、室温における保存も可能になる。 本発明により、サンプルの保存時間が3−24時間を超える場合でも凍結保存が不要になり、凍結時の使用前の融解の手間、凍結融解により生じた析出物を遠心分離により除去する作業が不要になるなど、作業効率を著しく向上させることができる。また免疫学的に測定される他の抗原の多くにおいては冷蔵保存で安定に保存させることができる1週間保存が可能となることから、ProGRP測定サンプルのための特別な保存手順・保存場所が不要となる。 また本発明は、凍結保存における、長期検体安定性をも向上させ、さらには、室温における安定性も向上させることから、冷蔵状態で血清分離や保存を行う手間を省くことができる。さらに、血液採取から、測定終了までの作業の過程でどうしても生じてしまう室温作業における活性低下を本発明では抑えることができることから、より正確にProGRP値を測定することが可能になる。 血清中でのProGRP不安定化程度は患者間で当然相違しているものと考えられる。したがって、血清を検体として用いた従来の方法の場合には、血清分離の工程時または保存時にProGRPの抗原活性が低下することにより、本来、陽性値相当のProGRPを有していたにもかかわらず、測定時には陰性化してしまっていることが十分に考えられる。このような抗原活性の陰性化は、本発明を用いることにより防ぐことが可能であり、それにより、小細胞肺癌の検出感度を向上させることができると考えられる。 尚、ProGRPを測定する方法としては、文献が多数存在するが、サンプルとして血漿を用いている例は、山口らの一報だけである。またこの一報に関しても、血清と血漿が検体安定性において同様であるという結論を導いており、本発明における血漿の優れた有用性を示唆するものでは全くない。また血清・血漿間での他の物質に関する安定性検討の文献を下記に示すが、これらが、本発明の測定方法を示唆するものでは全くないことも明らかである。 山口らは(特許3210994)、ProGRP31−98の肺癌診断との関連を見出し、保存時間6時間まで血漿サンプルが血清サンプルと同様に使用できることを示しているが、血漿サンプルの保存安定性の優位性についての言及は全く無い。免疫測定に供するサンプルとして、血漿を血清ととも使用しその同等性を示すことは、免疫測定において通常行われることであり、血漿がすぐれた有用性を持っているという本願発明の構成を、この文献から推測することは、当業者であっても容易に成しえることではない。 エヴァンスら(Clinical Biochemistry 34巻、ページ107−112、2001年)は、血清・血漿中における、生理活性を持つホルモンの安定性を検討し、血清中、血漿中のいずれにおいて安定性が優れているかは各ホルモンによって異なることを報告している。このことは、被検物質の安定性の観点から、血清サンプルが血漿サンプルよりもむしろ有利であり得ることを示すものであり、当業者が本願発明に想到することをむしろ回避させるものである。 ボヤントンら(Clinical Chemistry48巻、ページ2242−2247、2002年)は、血清・血漿中の24種類の物質についての安定性を検討した。血清・血漿とも、採血後すみやかに血球から血清分離、血漿分離を行った場合には、58時間以上、血清・血漿中のどちらの場合にも安定に存在できることを示した。また分離を行わない場合においては、血清中での安定性が優れると結論した。この論文中にProGRPに関する記載は全く無く、また血清の方が安定性に優れると結論していることから、我々の発明の新規性に疑いは生じない。 さらに、現在3種類のProGRP診断薬が厚生労働省の認可を受け、販売されており、また臨床の現場で使用されている(平成8年(1996年)より保険適用)。にもかかわらず、ProGRP31−98の血漿中における安定性が血清より優れていることを報告した例が、一切無いことが、本発明が新規性を持つということを示す明らかな証拠であるということができる。 血液凝固が生じない状態のサンプルを用い検体の安定性を向上させるという本願発明は、いずれの従来技術ともまったく異なった機作に基づく新たな発明であり、従来技術では期待できなかった効果を奏するものである。 実施例1.ProGRP抗原の不安定性とトロンビンの関係 1%牛血清アルブミン、2mM塩化カルシウムを含むリン酸緩衝液中にFmoc法によりアミノ酸合成したProGRP 31−98抗原(米国アボットラボラトリーズ社より入手)を添加した。さらにトロンビン(シグマアルドリッチ社製)を添加し、室温保存後、アーキテクトProGRPを用いて、ProGRP濃度を測定した。測定結果を図1に示した。図1より、トロンビン存在下において、ProGRPの分解が観察されることから、血清中でのProGRP分解の主要な一因としてトロンビンが関係していることが示唆される。トロンビンは血液凝固因子IIの活性化体であり、血清において多量に存在する物質である。なおアーキテクト測定方法については実施例3に記す。 実施例2.PMSF(フェニルメタンスルフォニルフロライド)添加によるProGRP安定化 血清中にPMSF(シグマアルドリッチ社製)を添加した後に、Fmoc法によりアミノ酸合成したProGRP 31−98抗原を添加し、室温保存後、アーキテクトProGRPを用いて、ProGRP濃度を測定した。測定結果を図2に示した。図2より、PMSF存在下において、ProGRPの活性低下が著しく抑制されることが分かる。PMSFはトロンビンを始めとするセリンプロテアーゼ類の酵素活性を不活性化するために用いられる物質であり、トロンビンを始めとするプロテアーゼの存在が、ProGRPを不活性化させている原因であると考えることができる。 実施例3.血漿を用いたProGRP抗原の安定化 Fmoc法により合成したProGRP 31−98(米国アボットラボラトリーズ社より入手)、を同一供血者より入手した血清およびEDTA血漿中に添加し、測定サンプルとした。測定サンプルを、冷蔵で1日、3日、7日保存後、また1日室温で保存後、ProGRP濃度を測定した。ProGRP濃度の測定にはセラムラボ(登録商標)ProGRP測定キット(富士レビオ社)、および下記するアーキテクトProGRPを用いた。測定結果は図3〜図7に示した。 セラムラボProGRPとアーキテクトProGRPはともに免疫測定を利用したProGRP 31−98濃度の測定方法であるが、両者の測定結果は同等であった。両者ともに、血漿中にProGRP抗原を存在させた場合、血清と比べ顕著に検体安定性の向上が認められた。この安定性の顕著な向上は、冷蔵保存だけではなく、室温保存においても、認めることができた。 血清を用いた方法では冷蔵保存条件で1日(翌日)までしかProGRPを安定に保存することができないが、血漿を用いた場合、1週間以上安定に保存させることができる。エヴァンスらが示す一般的な物質における不活性化率の近似式(Clinical Biochemistry 34巻、ページ107−112、2001年)に従って、ProGRP残存率=ekt(e:自然対数、k:定数、t:時間)と近似した場合の、残存率が90%を示すのに必要な時間は、セラムラボ(登録商標)ProGRP測定キットを用いた冷蔵7日保存の測定値を用いると、冷蔵で10.25日と算出される。同様に血清の場合1.26日と算出されることから(セラムラボ(登録商標)ProGRP測定キットを用いた冷蔵1日保存血清検体の測定値を計算に使用)、血漿を用いた場合、血清の約8倍の安定性を得られることができることが分かる。 血清を用いた現行の方法では、室温でProGRP検体を安定に保存することはできない。血漿を用いた場合には、24時間以上安定に保存させることができる。ProGRP残存率=ekt(e:自然対数、k:定数、t:時間)と近似した場合の、残存率が90%を示すのに必要な時間は、セラムラボの室温24時間保存の測定値を用いると、58時間と算出され、室温保存であっても約2日間まで安定に保存することが可能となる。 アーキテクトProGRP測定方法: 抗ProGRP 31−98抗体(特許3210994に記載された方法に従って得られた抗体)を、カルボキシル基修飾磁性微粒子(米国アボットラボラトリーズ社より入手)上に、EDC(N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(シグマアルドリッチ社製)を用いる方法により結合させ、抗体固相化微粒子とした。抗体固相化微粒子をツイーン20(関東化学社製)、EDTA(エチレンジアミン4酢酸ナトリウム塩)および塩化ナトリウムを含有するトリス塩酸緩衝液中に添加することにより抗体固相化微粒子溶液を作製した。 抗ProGRP 31−98抗体(特許3210994に記載された方法に従って得られた抗体)にアクリジニウム誘導体(米国アボットラボラトリーズ社より入手)により標識し、界面活性剤、牛血清アルブミン(シグマアルドリッチ社)を含有するMES緩衝液中に添加することにより、標識溶液を作製した。 ProGRP濃度の測定には、アーキテクト全自動免疫測定分析機(アボットジャパン社製)を用いた。サンプル50ulに抗体固相化微粒子溶液50ulを混合し、第一反応を開始した。第一反応中にProGRP抗原が抗体固相化磁性粒子に結合し、その結合量は検体中のProGRP濃度に対応する。18分後に抗体固相化磁性粒子を磁石により保持した状態で本機専用のリン酸緩衝液を用いて洗浄を行い、さらに標識溶液を50ul混合し、4分間引き続き反応を続けた。この反応により、標識抗体が磁性粒子上のProGRPと結合する。標識抗体の結合量は、磁性粒子上のProGRP量に応じるため、サンプル中のProGRP濃度が低いと、少量の標識抗体が磁性粒子に結合し、サンプル中のProGRP濃度が高いと、多量の標識抗体が磁性粒子上に結合することになる。 次に、本機械専用のリン酸緩衝液を用いて洗浄した後に、本機械専用の発光プレトリガー試薬・トリガー試薬を用いて発光シグナルを観察した。別に作製した濃度既知の溶液を標準溶液としてロジスティック4パラ法により標準曲線を作成し、サンプルより得られたシグナルをProGRP濃度に計算することにより、サンプル中のProGRP濃度を決定した。 実施例4.各種血漿の比較 同一供血者より得られたEDTA血漿、リチウムヘパリン血漿、クエン酸血漿、ナトリウムヘパリン血漿、血清のマッチ検体に特許3210994に記載された方法に従って得られたリコンビナントProGRP 31−98を添加し、24時間室温に、または7日間冷蔵中に保存を行い、実施例3と同様にProGRP濃度を測定した。24時間室温放置したサンプルの測定値を、時間0の測定値で除した値を、24時間室温保存後のProGRP残存率とし、7日間冷蔵保存したサンプルの測定値を、時間0の測定値で除した値を、7日間冷蔵保存後のProGRP残存率とした。 図7に、各種血漿における7日間冷蔵保存後のProGRP残存率を示した。図8に、各種血漿における24時間室温保存後のProGRP残存率を示した。図7、8より、いずれの血漿においても、血清に比べ、顕著に高く、すなわち、いずれの血漿においても顕著に検体安定性が向上していることがわかる。また血漿中で冷蔵7日間保存において、ほぼ100%の残存率を示していることから、血漿中で冷蔵7日間まではProGRPのほぼ全量が安定に保存されていることが分かる。 実施例5.タイムコース 同一供血者より得られたEDTA血漿・血清マッチ検体中に、Fmoc法によりアミノ酸合成したProGRP 31−98抗原を添加し、室温、冷蔵中に保存後、実施例3に示された方法で、ProGRP濃度を測定した。24時間までの値は、3ドナーの平均値、72時間までの値は2ドナーよりの平均値で示した。図9に冷蔵保存におけるProGRP残存率、図10に室温保存におけるProGRP残存率を示した。図中に示される保存時間は、0、1、3、6、7、9、24時間(ここまで冷蔵保存および室温保存)、72時間(冷蔵保存のみ)である。 図9より、冷蔵保存においては、山口らが示したとおり6時間までの保存において血清血漿は同等のProGRP安定性を有している。ただし6時間を超えたところから、徐々に差が顕著になり、ProGRP検体を24時間以上保存した場合、血漿は明らかに血清に比べ優れた安定性を示すことができる。 図10より、室温保存においては、3時間を超えた時点で、血清と血漿間におけるProGRPの安定性にすでに顕著な差が生じている。また6時間以上保存した場合、血漿はあきらかに血清に比べ優れた保存安定性を示すことができることがわかる。血清中でProGRPを保存した場合には、6時間の時点では約80%にまでProGRP活性が低下している。診断薬用途で、検体を保存する場合、通常90%までの活性の残存(10%活性の低下)が許容される限界である。血清で室温保存した場合には6時間の時点では約80%にまでProGRP活性が低下していることから、図10の結果は、室温保存が許されていない既承認品セラムラボ(登録商標)ProGRP測定キットやイムチェック・F・ProGRPのキット中の記載事項と一致する結果と言える。一方ProGRPを血漿中で保存した場合は、室温保存においても、24時間保存した場合でも活性の残存率は約90%であり、24時間程度まで安定に保存することが可能となると考えられる。山口らは、血清中に安定に存在できる範囲内において、血漿の使用可能であることを示しているが、本発明は、血清中で安定に存在できない保存条件・保存時間であっても、血液サンプル中のProGRPを診断薬用途として用いるに足るだけの十分な保存安定性を確保することができる点で、山口らの発明と異なっており又本発明の有用性を示すことができると考えることができる。トロンビン存在下、非存在下および血清中における室温保存でのProGRPの残存率を示す。PMSF添加および未添加血清中における室温保存でのProGRPの残存率を示す。血清および血漿中における冷蔵保存でのProGRPの残存率を示す。血清および血漿中における室温保存でのProGRPの残存率を示す。血清および血漿中における冷蔵保存でのProGRPの残存率を示す。血清および血漿中における室温保存でのProGRPの残存率を示す。血清および血漿中における7日間冷蔵保存した後のProGRPの残存率を示す。血清および血漿中における24時間室温保存した後のProGRPの残存率を示す。血清および血漿中における冷蔵保存でのProGRPの残存率を示す。血清および血漿中における室温保存でのProGRPの残存率を示す。 a)血液サンプルをガストリン放出ペプチド前駆体(ProGRP)に対する抗体に、抗体/ProGRP複合体の形成に十分な時間および条件において接触させ、ここで前記血液サンプルは1または2以上の活性化していない血液凝固因子を含み、前記血液サンプルは乾燥または事前凍結されておらず、および血液凝固因子の活性化は血清プロテアーゼ阻害剤の添加により妨げられており、ならびに b)前記抗体/ProGRP複合体の存在を検出し、該複合体の存在は前記血液サンプル中にProGRPが存在することを示す、血液サンプル中のProGRPを検出する方法。 前記血液サンプルが活性化していないトロンビンを含む、請求項1に記載のProGRPを検出する方法。 前記血液サンプルが血漿からなる、請求項1または2に記載のProGRPを検出する方法。 ProGRPのアミノ酸31−98を検出する、請求項1〜3の何れか一項に記載のProGRPを検出する方法。 前記サンプルが採取後冷蔵保存において6時間を越えて保存される、請求項1、2、3または4に記載のProGRPを検出する方法。 前記サンプルが採取後冷蔵保存において24時間を越えて保存される、請求項1、2、3または4に記載のProGRPを検出する方法。 前記サンプルが採取後室温において放置または保存される、請求項1、2、3または4に記載のProGRPを検出する方法。


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