タイトル: | 再公表特許(A1)_大豆ペプチド混合物の製造法 |
出願番号: | 2006324372 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C12P 21/06,A23J 1/14,A23L 1/30,A23L 1/305,A23J 3/16 |
片瀬 満 中森 俊宏 劉 新旗 JP WO2007066694 20070614 JP2006324372 20061206 大豆ペプチド混合物の製造法 不二製油株式会社 000236768 片瀬 満 中森 俊宏 劉 新旗 JP 2005352603 20051206 C12P 21/06 20060101AFI20090424BHJP A23J 1/14 20060101ALI20090424BHJP A23L 1/30 20060101ALN20090424BHJP A23L 1/305 20060101ALN20090424BHJP A23J 3/16 20060101ALN20090424BHJP JPC12P21/06A23J1/14A23L1/30 BA23L1/305A23J3/16 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,LY,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20090521 2007549156 16 4B018 4B064 4B018LB04 4B018MD58 4B018MF12 4B064AG01 4B064CA21 4B064CB06 4B064DA10 本発明は酸性水系下でも澱を生じない大豆ペプチド混合物を提供するものである。更に詳しくは、この酸性水系下で冷蔵保存しても澱を生じない大豆ペプチド混合物を提供するものである。 従来、分離大豆蛋白は一般に以下の方法で製造されており、工業的大豆蛋白生産の主流の方法である。 脱脂大豆に加水し、水性スラリー化し、遠心分離などしてオカラを分離除去し、得られた水溶性画分(脱脂豆乳)に酸を加えて等電点にpH調整して大豆蛋白を沈殿させ、上澄み(大豆ホエー)を分離除去して酸性スラリーを得る。この酸性スラリーにアルカリを加えて中和し、噴霧乾燥などして乾燥して所謂「分離大豆蛋白」を製造する方法である(以下、A法という。)。 一方、濃縮大豆蛋白を水抽出してオカラを除いて得た大豆蛋白溶液を噴霧乾燥などして分離大豆蛋白を製造する方法がある(以下、B法という。)。 濃縮大豆蛋白には脱脂大豆からアルコール溶液を用いてホエー成分などを分離除去したアルコールコンセントレートと、脱脂大豆を直接酸性水系下でスラリー化し、上澄みであるホエーを除去して酸性スラリーを乾燥などした酸コンセントレートがある。 アルコールコンセントレートの場合、これに加水してオカラを除去して噴霧乾燥などして分離大豆蛋白を得ることができる。 酸コンセントレートの場合、このスラリーを中和してオカラを除去して分離大豆蛋白溶液を得て、これを噴霧乾燥などして分離大豆蛋白を製造することができる。 後者(B法)の方法で得られた大豆蛋白は前者(A法)で得られた大豆蛋白に比べて風味がよく、この大豆蛋白を加水分解して得られる大豆蛋白加水分解物も風味の良いものである。 ところが、酸性飲料などの酸性飲食品に用いようとすると、A法に比べB法を用いて得られる大豆蛋白加水分解物は澱を生じ易い問題を有することが本発明者らの検討により明らかとなった。 すなわち、分離大豆蛋白溶液をプロテアーゼ処理して得られる大豆蛋白加水分解物に関して、A法で得られる大豆蛋白を用いて得られるものは、酸性下で冷蔵しても澱(白濁)は生じ難いものであるが、B法で得られた大豆蛋白を用いて得られるものは酸性下で冷蔵すると澱が生じ易い問題を有していた。 大豆蛋白はpH4.5付近に等電点を有するので、酸性飲料ではなく、やや弱酸性飲料に用いて澱を生じないようにするやり方もある。例えば特許文献1のように飲料のpHを6付近の高い範囲に設定する方法が知られている。しかし、これではpHが高すぎ、pH3〜4.5の酸性飲料を製造することが出来ない。 従来から、酸性飲料等の用途に酸性水系下でも澱(白濁)を生じない大豆蛋白加水分解物を製造する発明がなされてきた。特許文献2には、A法で得られる大豆蛋白をエンド/エキソプロテアーゼでプロテアーゼ処理し、遠心分離するなどして酸性域からアルカリ性域で溶解性を有する可溶性大豆タンパク質を製造する方法を開示している。しかし、不快な臭いや渋味等の悪風味があり、風味は好ましくないものである。 本出願人は、特許文献3に、pHが4.6未満の酸性食品で利用でき、pH3.0〜4.5で可溶である大豆蛋白質を開示している。この発明の特徴は、大豆蛋白質を含む溶液を、液中のポリアニオン物質の除去若しくは不活性化、及び/又はポリカチオン物質の添加の処理を施した後、酸性下で100℃を越える温度での加熱処理を行うことにある。 そして、ポリアニオン物質の除去若しくは不活性化処理に、フィチン酸の除去、フィターゼを作用させる処理を開示している。また、並びにプロテアーゼによる蛋白の加水分解処理を行うことも開示している。 しかし、得られる大豆蛋白は、酸性域で優れた溶解性、保存安定性を示すものの、乳化力、ゲル形成力などの機能特性を有する大豆蛋白質であり、本発明のような低分子の大豆ペプチド混合物ではない。そして、本発明のような二段酵素分解処理を教えるものでもない。 特許文献4には、pH約2.0〜約4.2で固形分含量10〜15重量%の範囲内の単離した大豆蛋白質のスラリーを生成し、連続方式でスラリーに温度約120〜160℃で加熱処理を施、等電点以下の酸性域で蛋白の溶解性を高める方法が開示されている。 しかし、これは大豆蛋白であり、本発明のような加水分解された低分子の大豆ペプチド混合物ではない。しかも、酸性飲料に使用すると保存中に澱を生じてしまう。 特許文献5にはフィターゼ処理とpH調整による分画を組み合わせてpH4.6以下で可溶な画分を単離する可溶性蛋白画分の単離法が開示されている。しかしながら、この方法は分離大豆蛋白を原料として収率が14%と低く、実用性に乏しいものである。また、本発明のような二段酵素分解処理を教えるものでもない。 本出願人は特許文献6に、A法で得られる大豆蛋白をプロテアーゼ処理して酸性域でも澱を生じない大豆蛋白酵素分解物を得る方法を開示した。 この方法は加熱処理に特徴があり、酸性域でも澱が生じないものであるが、不快な臭いや渋味等の悪風味があり、風味は好ましくないものである。 また、本出願人は、特許文献7に、大豆蛋白をプロテアーゼ処理し、次いでフィターゼ処理する方法を開示している。 しかし、この原料はA法で得られる大豆蛋白であり、その目的は大豆蛋白に含まれるフィチン酸を低減あるいは除去するためである。従って、二段の酵素分解を教えるものではない。 B法により得られる大豆蛋白を用いるものとして、特許文献8には酸洗浄した脱脂大豆をpH2〜6で微生物由来の酸性フィターゼで処理し可溶化画分を分離することによる、pH3〜5で溶解性の優れた蛋白の製造法が開示されている。そして、酸性スラリーをフィターゼ処理と同時または後でプロテアーゼ処理することを開示している。 この発明では、フィターゼ処理は酸性下での蛋白抽出効率を高める目的であり、プロテアーゼ処理はさらに風味を改善する目的で行われている。したがって本発明とはプロセスも目的も異なるものである。しかも、二段階のプロテアーゼ処理を開示するものでもない。また、酸性下でプロテアーゼによる高度な加水分解を行うと苦味、旨味が生じるため、好ましくない。(参考文献)特開2002−10764号公報特開2005−80668号公報WO2002/067690号公報特公昭53−19669号公報特公昭55−29654号公報特開2001−238693号公報国際公開WO2004/17751号公報特開昭51−125300号公報 以上のように、B法で得られる大豆蛋白を加水分解した大豆ペプチド混合物は、風味においてA法により得られる大豆ペプチド混合物より優れるものの、酸性水系下、特に冷蔵下では澱を生じやすい欠点を有している。 そこで、本発明はB法で製造した大豆蛋白を原料とする場合でも、酸性下で冷蔵して澱を生じない大豆蛋白加水分解物、とりわけ比較的低分子の大豆ペプチド混合物を目的とした。 本発明者等は、B法で得られる大豆蛋白の酵素分解方法を鋭意研究するなかで、まずアルカリ性乃至中性域でエンドプロテアーゼで大豆蛋白を加水分解し、次いで酸性下で加水分解物をエキソ活性を有するプロテアーゼで処理し、さらにフィターゼ処理を行うことにより得られた大豆蛋白加水分解物が酸性水系下でも澱を生じない知見を得た。 更に、酸性域で作用させる酵素について研究を進めるなかでリゾプス属由来の蛋白分解酵素が顕著な効果を奏し、アスペルギルス属由来の蛋白分解酵素もある程度の効果を奏する知見を得て本発明を完成するに到った。 即ち、本発明は、このB法で得られる大豆蛋白を二段酵素加水分解し、フィターゼ処理することにより、風味に優れかつ冷蔵状態での酸性水系下でも澱を生じ難い大豆ペプチド混合物を提供するものであり、(a)濃縮大豆蛋白の水抽出物を(b)アルカリ性乃至中性域でプロテアーゼ処理した後、(c)酸性下にプロテアーゼ処理する工程、(d)フィチン酸分解酵素処理する工程及び(e)不溶物を分離除去する工程を含むことを特徴とする大豆ペプチド混合物の製造法である。 (b)工程に用いる酵素はエンド型を含むことが好ましい。(b)工程における加水分解の程度が、蛋白成分の15%トリクロロ酢酸可溶率でいう大豆蛋白分解率で、20〜98%であることが好ましい。(c)工程に用いる酵素はエキソ型を含むことが好ましい。(c)工程に用いる酵素はアスペルスギルス属またはリゾプス属由来の酵素が好ましい。(d)工程を(c)工程の後若しくは同時に行うことが好ましい。大豆ペプチド混合物の平均分子量は200〜5000が好ましい。 本発明により、従来A法で製造された大豆蛋白をプロテアーゼ処理して得られる大豆ペプチド混合物より風味に優れるだけでなく、酸性水系下で冷蔵しても澱を生じない大豆ペプチド混合物を製造するが可能になったものである。 これにより酸性飲料や酸性ゼリーなどの酸性飲食品に用いる風味の優れた大豆ペプチド混合物の提供が可能になったものである。 本発明は、(a)濃縮大豆蛋白の水抽出物を(b)アルカリ性乃至中性域でプロテアーゼ処理した後、(c)酸性下にプロテアーゼ処理する工程及び(d)フィチン酸分解酵素処理する工程を含み、これらの工程の後で(e)不溶物を分離除去する工程を含むことを特徴とする大豆ペプチド混合物の製造法である。 即ち、本発明は(a)を用い(b)〜(e)の工程を必須構成要件とする発明である。 工程(a)の濃縮大豆蛋白は背景技術の項でも述べたアルコールコンセントレートや酸コンセントレートを利用することができる。 濃縮大豆蛋白には脱脂大豆からアルコール溶液を用いてホエー成分などを分離除去したアルコールコンセントレート、脱脂大豆を直接酸性水系下でスラリー化し、上澄みであるホエーを除去して酸性スラリーを乾燥などした酸コンセントレート(酸性濃縮大豆蛋白)がある。 従って、濃縮大豆蛋白の水抽出物はこのアルコールコンセントレートに加水して得たスラリーからオカラを除去したり、或いは酸コンセントレートを中和しオカラを除去して得ることができる。例えば、(a)の濃縮大豆蛋白の水抽出物は、本出願人による公開特許(WO2004/013170号公報)に記載の方法を用いて得ることができる。 次に、(b)アルカリ性乃至中性域でプロテアーゼ処理する工程について説明する。 本発明は(b)工程の後に(c)工程と(d)工程を組み合わせることが特徴である。 理由は不明であるが、(a)の原料を用いるとアルカリ性乃至中性域でプロテアーゼ処理する(b)工程だけでは酸性水系下で澱を生じない大豆蛋白加水分解物を得ることが極めて困難である。 本発明の(b)工程においてはアルカリ性乃至中性域でプロテアーゼ処理することが適当である。 理由は不明であるが、アルカリ性乃至微アルカリ性域で大豆蛋白の立体構造が緩んでルーズになった状態でこれらのエンドプロテアーゼで予め加水分解されて、次の酸性域での加水分解に供することが何らかの効果を奏するものと推察される。 従って、用いる酵素もアルカリ性域乃至中性域に作用pHを有するものが適当であり、好ましくはアルカリ性域乃至中性域に至適pHを有する酵素が適当である。 なお、酵素分解が進むにつれて溶液のpHが酸性側に移行してくるが、本発明においては酵素分解を開始時のpHがアルカリ性乃至中性域であれば良い。酵素分解を開始時のpHがpH7〜9であれば中和による塩の生成を軽減できて好ましい。 その他の加水分解条件(温度、E/S比など)は用いる蛋白加水分解酵素の種類により異なるので、目標とする分解率となるよう添加量、時間を決めることができる。 本発明の(b)工程に用いる酵素は、飲料用途として、旨味やアミノ酸的な風味が違和感をもたらすので、これらを減少させる目的でエンド型を含むことが好ましく、所謂エンドプロテアーゼが好ましい。通常プロテアーゼ処理後の酵素分解物乾燥固形分中の遊離アミノ酸の含有量を10%以内、好ましくは5%以内に抑えることが適当である。 これらの酵素は動物起源、植物起源あるいは微生物起源は問わない。具体的には、セリンプロテアーゼ(動物由来のトリプシン、キモトリプシン、微生物由来のズブチリシン等)、チオールプロテアーゼ(植物由来のパパイン、フィシン、ブロメライン等)などを用いることができる。さらに具体的には、バチルス・リケホルミス由来の「アルカラーゼ」(Novozymes Japan Ltd.製)やバチルス・ズブチルス由来の「プロテアーゼS」(アマノエンザイム株式会社製)、「ビオプラーゼSP-15FG」(ナガセケムテックス株式会社製)、「プロチンAY40」(大和化成株式会社製)、「プロチンAC−10」(大和化成株式会社製)、「プロチンNY50」(大和化成株式会社製)、等が例示できる。 これらの酵素は中性乃至アルカリ性域に作用pHを有し、プロチンNY50が中性に至適pHを有する以外は微アルカリ性乃至アルカリ性域に至適pHを有している。これらの酵素は単独、あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。 プロテアーゼ処理の際の大豆蛋白溶液の蛋白濃度は、1重量%〜30重量%、好ましくは5〜15重量%、より好ましくは8〜12重量%が適当である。蛋白濃度は、抽出pH,抽出温度,抽出時間,抽出液量,抽出回数等の抽出条件を適宜選択することで、この範囲に調整することができる。濃度が低すぎてもプロテアーゼ処理に支障はないが、生産性が悪く、大豆蛋白加水分解物の製造コストを上昇させる要因となる。また、大豆蛋白溶液の濃度が高すぎると十分反応を進めるのに多量の酵素量を必要とする。 (b)工程におけるプロテアーゼ処理による加水分解の程度は、蛋白成分の15%トリクロロ酢酸可溶率でいう大豆蛋白分解率で、通常20〜98%程度、より好適には50〜90%程度になるまで行われる。蛋白分解酵素を作用させる時間は、使用する蛋白分解酵素の活性や量によって異なるが、通常30分〜24時間程度、好ましくは1時間〜4時間程度とすることが出来る。酵素分解時間が長すぎると腐敗を招きやすい。 次に(c)酸性下でプロテアーゼ処理する工程について説明する。 この酸性下でのプロテアーゼ処理は次の(d)工程と組み合わせることにより、澱下げを目的とするものであり、酸性下で高度に加水分解する必要はないものである。 本発明の(c)工程は、酸性下でプロテアーゼ処理を行うことに特徴を有する。しかも、澱防止を目的とするため穏やかな加水分解であり、その程度は前述のように遊離アミノ酸の増加があったとしても前述の範囲に抑え、平均分子量の減少があったとしても前述の範囲になるように抑えることが好ましい。(c)工程の好適な条件を以下に示す。 この酸性のpH範囲は、pH3〜6.2、好ましくはpH4〜5.5とするのが適当である。アルカリ性域では目的の大豆ペプチド混合物を得ることは困難である。 その温度範囲は、30〜70℃、好ましくは45℃〜65℃で、使用する酵素の活性や量によって異なるが、通常2分〜4時間程度、好ましくは5分〜1時間程度とすることが出来る。反応時間が長すぎると旨味、苦味等が発生してくる。 従って、(c)工程の加水分解による遊離アミノ酸の増加量は、乾燥固形分中で4重量%以下、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下となるように留めるべきである。 また、(c)工程の加水分解による平均分子量の低下が50%以内、好ましくは30%以内に留めるべきである。例えば、(b)工程の後に不溶物の分離を経て得られる大豆ペプチド混合物の平均分子量が5000だったとすると、(c)工程によって若干加水分解されてもその減少が50%以内なら平均分子量は2500〜5000であり、30%以内であれば平均分子量は3500〜5000である。 この(c)工程に用いる酵素は、リゾプス属またはアスペルスギルス属由来の酵素が適当である。 リゾプス属由来の酵素として、具体的には、リゾプス・オリゼ起源の「ペプチダーゼR」(アマノエンザイム株式会社製)、リゾプス・ニベウス起源の「ニューラーゼ3FG」(アマノエンザイム株式会社製)等を例示することができる。 アスペルスギルス属由来の酵素として、具体的には、アスペルギルス・オリゼ起源の「プロテアーゼM」、「プロテアーゼA」(アマノエンザイム株式会社製)、「スミチームAP」、「スミチームFP」、「スミチームLP」、「スミチームLPL」(新日本化学工業株式会社)等を例示することができる。 これらの酵素は、エキソ型を含むことが好ましい。通常は粗酵素を用いるので、エキソおよびエンドプロテアーゼを含有し、酸性下で作用させることで酸性水系下で冷蔵したときの澱の発生を抑えることができる。 即ち、A法により得られる大豆蛋白を用いるのであれば(b)工程のみ、あるいは(b)工程と後述の(d)工程を組み合わせれば酸性水系下で澱を生じ難い大豆蛋白加水分解物を得ることが可能である。この場合、(d)工程は必ずしも必要ではないが、入れたほうがより好ましい。 しかし、B法により得られる大豆蛋白を加水分解するのであれば(b)工程、(c)工程、及び(d)工程を組み合わせて用いる必要がある。 次に、(d)フィチン酸分解酵素処理する工程について説明する。前記工程で得られた大豆蛋白酵素分解物のpHは通常pH3〜6.2、好ましくはpH4〜5.5の範囲に調整することが好ましい。 濃度は通常、(b)工程の加水分解条件と同様に、1重量%〜30重量%、好ましくは5〜15重量%、より好ましくは8〜12重量%で行うのがよいが、後述の不溶物の分離後に行えば、基質の量が少なくなるのでフィチン酸分解酵素の添加量を抑えることができる。 酸性下であれば(d)工程と(c)工程はどちらを先に行ってもよく、同時に行ってもよいが、(d)工程を(c)工程の後もしくは同時に行うことがより好ましい。 まず、本発明に用いるフィチン酸分解酵素に関して説明する。 本発明に用いるフィチン酸を分解する酵素としては、小麦や馬鈴薯等の植物に由来する酵素あるいは腸管等の動物臓器に由来する酵素、細菌、酵母、かび、放線菌等の微生物起源の酵素、あるいは遺伝子組み換えによる酵素など起源は問わないが、フィチン酸分解活性を有するフィターゼやホスファターゼ等の酵素を用いることができる。 フィチン酸を分解するこれらのフィターゼやホスファターゼのうちフィターゼがより好ましい。フィターゼは、アスペルギルス属、リゾプス属、サッカロミセス属、ムコール属、ゲオトリカム属等の各種のフィターゼ生産能を有する菌株由来のものを利用することができる。好ましくはアスペルギルス属由来のものが適当であり、より好ましくはアスペルギルス(Aspergillus)属:アスペルギルス フィキューム(Aspergillus ficuum)由来のフィターゼ、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)由来のフィターゼ及びアスペルギルス テレウス(Aspergillus terreus)由来のフィターゼよりなる群から選ぶことができる。大豆中のフィチン酸をイノシトールに分解するにはエステル基を切断する必要があり、それを行う酵素がフィターゼである。 また酸性ホスファターゼとして真菌類由来の酸性ホスファターゼを利用することも可能である。即ち、アスペルギルス フィキューム(Aspergillus ficuum)由来の酸性ホスファターゼ、アスペルギルスニガー(Aspergillus niger)由来の酸性ホスファターゼ及びアスペルギルステレウス(Aspergillus terreus)由来の酸性ホスファターゼよりなる群から選ぶことができる。 酵素処理によるフィチン酸の分解反応は非常に温和な条件下で実施できるため蛋白質への影響は極めて少ない。例えば、本発明の酵素反応は、30〜70℃で0.1〜30時間行えばよい。好ましくは、先の(c)工程と同様、30〜70℃で通常0.1時間〜4時間程度、好ましくは10分〜1時間程度処理することができる。 市販フィターゼは通常、プロテアーゼも含んでいることが多いので長時間反応を行うとプロテアーゼ活性によって旨味が出てくることがある。 なお、フィチン酸分解反応時のpHは前述のように、pH3〜6.2、好ましくはpH4〜5.5とすることができる。 酵素は粉末状や液体状の形態にかかわらず使用可能で、大豆蛋白中の粗蛋白質重量に対して0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜2重量%、より好ましくは、0.1〜1重量%程度の添加にて実施されるが、酵素力価として0.1〜100U/g粗蛋白質、好ましくは0.5〜20U/g粗蛋白質、より好ましくは1〜10U/g粗蛋白質程度のフィターゼが添加されるのが好ましい。尚、酵素活性は、4mMフィチン酸ナトリウムを含む0.2M Tris-HCl緩衝液(pH6.5)0.5ml、蒸留水0.4ml及び酵素液0.1mlからなる反応液を37℃で30分間反応させ、10%TCA1.0mlを加え反応を停止する。この反応液中の無機リン酸含量をFiske-Subbarow方法により定量する。上記条件にて1分間に1μmolの無機リン酸を遊離させる酵素量を1ユニット(U)とする。 本発明においては、蛋白分解酵素を用いて蛋白質を分解する((b)工程と(c)工程))と、フィチン酸を分解する酵素を用いてフィチン酸を分解する(d)工程を含んでいることが重要である。 これらの順序は(b)工程を最初に施すことが好ましい。(d)工程を施す前に酸性に調整することが好ましい。(d)工程を(c)工程の後若しくは同時に行うことにより、大豆ペプチド混合物の乾燥固形分中のフィチン酸(メソイノシットヘキサリン酸)含量を、バナドモリブデン酸吸光光度法で0.7重量%以下、好ましくは0.2重量%以下、さらに好ましくは検出限界以下(検出限界5mg/100g)とすることができ好ましい。 次に、(e)不溶物を分離除去する工程について説明する。不溶物は大豆蛋白をプロテアーゼ処理した際の未分解物を含むものであり、大豆蛋白質の等電点付近で凝集しやすい傾向を有する。目的の大豆ペプチド混合物溶液にこの不溶物が存在する場合は分離除去する必要がある。 不溶物の分離は(b)〜(d)工程の各工程の後すべてにおいて必ずしも必要ではないが、(b)工程の後の任意の工程において必要である。 即ち(b)工程の後に不溶物を分離除去すれば(c)工程の後や(d)工程の後に不溶物が析出しない限り不要である。(b)工程の後に不溶物を除去しないまま(c)工程や(d)工程の処理をする場合であればこれら(c)工程の後又は(d)工程の後でも不溶物を除去すればよい。 不溶物の分離除去手段は、フィルタープレス、膜分離など濾過手段によってもよく、遠心分離機や液体サイクロンなども利用することが出来る。 不溶物の分離時のpHは酸性(pH3〜6.2)が適当である。 酵素反応後のpHは(b)工程の後であれば、反応条件により異なるが、通常pH5〜8の範囲にあるので、不溶物の分離を行うために、好ましくはpH3〜6.2、より好ましくはpH4〜5.5に調整するのが適当である。未分解物を含む不溶物は大豆蛋白の等電点付近で凝集しやすくなる傾向にあるため、このpH域であれば上記不溶物の凝集性を高め、分離の際の分離性を高めることができる。この操作はいわゆる酸沈殿であるが、これにより酸沈殿した蛋白は分離工程で除かれるため、ここで酸沈工程が入ることは特に問題ではない。(c)工程、(d)工程の後に分離するのであれば、pHは既に酸性に調整されているので、そのまま分離すればよい。 また、分解液中にカルシウムやマグネシウムなどの塩化物、硫酸塩などの塩類や水酸化物といったアルカリ土類金属化合物又はポリアクリル酸Na、アルギン酸、キチンキトサン等の蛋白凝集剤を加えても、上記不溶物の凝集性を高め分離性を高めることが出来る。 また、加熱処理の工程を行っても良く、この工程によって上記不溶物の凝集性を高め分離性を高めることが可能となる。この加熱は一般に行われる酵素失活や殺菌目的の加熱に比べて軽度でよい。加熱条件は10の(5.25−0.05×T)乗以下の時間(ただしTは加熱温度(℃)、時間は分)である。これを超えると、分解された大豆蛋白加水分解物自身が着色するなどの問題があり、品質上好ましくない。 以上のようにして得られた大豆ペプチド混合物溶液は、用途によりそのまま或いは濃縮して用いることも出来るが、殺菌・乾燥工程に供することも出来る。かかる殺菌・乾燥工程に用いられる殺菌装置としては、通常の殺菌装置であれば特に制限されず、例えばスチームインジェクション方式の連続式直接加熱殺菌装置が好適に用いることができる。殺菌条件の具体例は、100〜160℃、好ましくは105〜145℃の温度で、1秒から3分間程度である。 また、乾燥方法としては、従来公知の乾燥方法であれば特に制限されないが、凍結乾燥、噴霧乾燥、減圧乾燥等を好適に例示することができる。また、殺菌や乾燥に先立ち、乳化成分、安定化成分、栄養成分、甘味成分等の各種配合成分を添加しておくこともできる。 酸性飲料や酸性ゼリーなどの酸性飲食品への用途を考えた場合、この大豆ペプチド混合物の平均分子量は200〜5000、好ましくは200〜3000が適当である。 また、フィチン酸(メソイノシットヘキサリン酸)含量は大豆ペプチド混合物の乾燥固形分中、バナドモリブデン酸吸光光度法(検出限界5mg/100g)で0.7重量%以下、好ましくは0.2重量%以下、さらに好ましくはフィチン酸が検出されないものが適当である。 以上の通り、(a)の大豆蛋白を用いた場合は、(b)工程と(c)工程と(d)工程を組み合わせて、(e)工程で不溶物を除去して初めて酸性水系下で澱を生じない大豆蛋白加水分解物を得ることができる。 なお、以下に本発明で用いた分析法を記す。・TCA可溶率 蛋白が1.0重量%になるように水に分散させ十分撹拌した溶液に対し、全蛋白に対する15%トリクロロ酢酸(TCA)可溶性蛋白の割合をケルダール法、ローリー法等の蛋白定量法により測定したものである。・平均分子量大豆ペプチド混合物の平均分子量は、高速液体クロマトグラフィーを用いたゲル濾過法によって、クロマトグラムを求め、分子量分布から計算する。具体的には以下のように行う。(1)大豆ペプチド混合物を0.1重量%になるように溶離液(45%アセトニトリル、0.05%トリフルオロ酢酸溶液)に溶解させ、孔径0.2μmのメンブレンフィルターでろ過し、検液とする。(2) 検液を下記ゲル濾過法によってクロマトグラムを求める。カラム:TSK gel G3000PWXL (東ソー株式会社)とTSK gel G2500PWXL(東ソー株式会社)を2本直列、溶離液の流速 : 0.3ml/min、カラムの温度 : 40℃、検出方法 : 測定波長220nmの吸光度(3) 保持時間を横軸にとり、対応した220nmの吸光度値を縦軸にして、試料の分子量分布曲線を作成し、平均分子量を求める。クロマトグラムのデータ処理は日本分光株式会社製のクロマトデータ処理プログラムJASCO−BORWINを使用する。・遊離アミノ酸量 大豆ペプチド混合物中の遊離アミノ酸量は、大豆ペプチド混合物を0.4重量%になるように3%スルホサリチル酸溶液に分散させ、ペプチド成分を沈殿除去し、可溶成分を日立製作所株式会社製のL−8500型高速アミノ酸分析計を用いて定量する。なお、実施例中の遊離アミノ酸量は乾燥固形分中の含有率を示す。以下実施例により本発明の実施態様を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によってその技術範囲が限定されるものではない。なお、実施例中の%は特に断りのない限りは重量%を表す。(実施例1) 45℃の温水6重量部中へ、NSI90の低変性脱脂大豆フレーク1重量部を徐々に加えた。塩酸でpH4.2に調整しながら10分間緩やかに攪拌・洗浄した後、溶出されたホエー成分を遠心分離機で分離・除去し(1500G、10分)、濃縮大豆蛋白2重量部を得た。この濃縮大豆蛋白2重量部に、45℃の温水6重量部を加えた。10分間緩やかに攪拌・洗浄した後、溶出されたホエー成分を遠心分離機で分離除去し(1500G、10分)、ホエー6重量部、水分含量が63%、固形分あたりの粗蛋白量が72%の濃縮大豆蛋白2重量部を得た。 この濃縮大豆蛋白2重量部に水4重量部を添加し、pH7.0に調整して30分間攪拌し、遠心分離して抽出残渣と抽出液(固形分8.0%)4重量部を得た。抽出は60℃で、固液分離は1500Gで10分の遠心分離により実施し、抽出液のpH調整は20%水酸化ナトリウム溶液を用いて行った。 上記のようにして得られた大豆蛋白抽出液をスチームインジェクション方式の連続式直接加熱殺菌装置を使用し140℃10秒で殺菌した後、噴霧乾燥して水分5%の粉末状分離大豆蛋白を調製した。この乾燥固形分当たりの粗蛋白重量は90%であった。 上記のようにして得られた粉末状分離大豆蛋白を溶解し58℃、pH8.5の8%溶液に調製した後、E/S比1.5%の割合で蛋白分解酵素として「プロチンAY40」(大和化成株式会社製)を添加して58℃3時間加水分解させた(15%TCA可溶率、70%)。「プロチンAY40」はエンド型アルカリプロテアーゼである。 酵素反応後の大豆蛋白加水分解溶液にクエン酸を添加しpHを4.5に調整した後、加熱処理(85℃達温10分)してから遠心分離(1500G、20分)して未分解物を含む不溶物を分離除去した。得られた遠心上清液の加水分解物の15%TCA可溶率は99%、平均分子量は1200、遊離アミノ酸量は0.6%程度であった。 得られた遠心上清液に、E/S比0.5%の割合でフィチン酸分解酵素「スミチームPHY」(新日本化学工業株式会社製)と、E/S比0.04%の割合でリゾプス属由来の「ペプチダーゼR」(アマノエンザイム株式会社製)を添加して50℃10分間反応を行った。なお、「ペプチダーゼR」は中性ペプチダーゼであるが、エンド型及びエキソ型の酸性プロテアーゼを含有している。 酵素反応後の大豆蛋白加水分解溶液をスチームインジェクション方式の連続式直接加熱殺菌装置を使用し120℃で7秒加熱殺菌後、噴霧乾燥し、水分4%の粉末状大豆ペプチド混合物を調製した。 得られた大豆ペプチド混合物の15%TCA可溶率は99%、平均分子量は1100、遊離アミノ酸量は1%であった。また、この大豆ペプチド混合物の乾燥固形分中のフィチン酸(メソイノシットヘキサリン酸)含量をバナドモリブデン吸光光度法で測定したところ検出されなかった(検出限界5mg/100g)。(実施例2) 実施例1と同様の工程において、酸性下で作用させる「ペプチダーゼR」(アマノエンザイム株式会社製)の添加量を変化させて同様の工程で粉末状大豆ペプチド混合物を調製した。また、この酵素に代えて、リゾプス属由来の「ニューラーゼ3FG」(アマノエンザイム株式会社製)、アスペルギルス属由来の「スミチームAP」(新日本化学工業株式会社製)、「スミチームFP」(新日本化学工業株式会社製)、「スミチームLP」(新日本化学工業株式会社製)、「スミチームLPL」(新日本化学工業株式会社製)、「プロテアーゼM」(アマノエンザイム株式会社製)、「プロテアーゼA」(アマノエンザイム株式会社製)をそれぞれ単独で、添加量を変化させて添加し、同様の工程で粉末状大豆ペプチド混合物を調製した。これらの酵素はすべてエンド及びエキソ型のプロテアーゼを含有する。(澱の測定) 前記実施例1及び参考例1(後述)、比較例1−3(後述)で得られた大豆ペプチド混合物の酸性溶液の冷蔵下での澱の発生の有無を濁度(OD:Optical Density)で調べた。 実施例1、2、参考例1(後述)、比較例1(後述)、2、3で得られた粉末状大豆ペプチド混合物を5%水溶液に調製し、クエン酸でpH3.8に調整した後、4℃まで冷却して濁度(OD610nm)を測定した。実施例1、参考例1、比較例1、2、3の結果を表1に示した。 実施例1では、OD610nmが0.013と澱の発生を抑えることができた。 次に、実施例2における各プロテアーゼの添加量と冷蔵濁度の結果を表2に示した。 表2より、弱酸性下(pH4.5)で作用させることで冷蔵しても澱の生じなかった酵素はリゾプス属由来の「ペプチダーゼR」、「ニューラーゼ3FG」、アスペルギルス属由来の「スミチームFP」、「スミチームLP」、「スミチームLPL」、「プロテアーゼM」、「プロテアーゼA」であった。「スミチームAP」は0.3%添加しても完全に澱の発生を防ぐことはできなかったが、澱の発生量を減少させることはできた。 なお、実施例1と次に記載する参考例1で得られた大豆ペプチド混合物を5%水溶液に調製して風味を比較したところ、実施例1で調製したものは参考例1よりも不快な臭いや渋味等の悪風味が低減されており、非常に良好な風味であった。(参考例1) −A法による大豆蛋白のプロテアーゼ処理− 低変性脱脂大豆フレーク(NSI90)1重量部に40℃の温水を12重量部加え、水酸化ナトリウム溶液でpH7.0に調整した。この大豆分散液をホモミキサー(特殊機化工業社製)を用い、5000rpmで1時間攪拌して蛋白を抽出し、遠心分離機(1500G、10分)でオカラ成分を除去して脱脂豆乳を得た。この脱脂豆乳に塩酸を加えてpH4.5に調整し、蛋白カードを沈殿させて遠心分離機にて回収した。この蛋白カードに加水、攪拌してカードスラリー(DM9.0%)を調製し、pHを7.0に調整後、スチームインジェクション方式の連続式直接加熱殺菌装置を使用し140℃10秒で殺菌し、大豆蛋白抽出液を得た。これを噴霧乾燥して水分5%の粉末状分離大豆蛋白を調製した後、58℃、pH8.5の8%溶液を調製した。 得られた大豆蛋白溶液にE/S比1.5%の割合で蛋白分解酵素として「プロチンAY40」(大和化成株式会社製)を添加して58℃3時間加水分解させた(15%TCA可溶率、70%)。酵素反応後の大豆蛋白加水分解溶液にクエン酸を添加しpHを4.5に調整した後、加熱処理(85℃達温10分)してから遠心分離(1500G、20分)して未分解物を含む不溶物を分離除去した。得られた大豆蛋白加水分解溶液をスチームインジェクション方式の連続式直接加熱殺菌装置を使用し120℃で7秒加熱殺菌後、噴霧乾燥し、水分4%の粉末状大豆ペプチド混合物を調製した。 表1に示すようにこのA法由来の大豆ペプチド混合物溶液の濁度(OD610nm)は0.043と低く、(b)工程(中性乃至アルカリ性域でのプロテアーゼ処理)と(e)工程(不溶物の分離除去)だけでも澱は発生しなかった。 換言すれば、この大豆ペプチド混合物は酸性下でのプロテアーゼ処理、フィチン酸分解酵素処理をしなくても表1に示すように酸性下でも澱を生じることはなかった。(比較例1) 実施例1と同様の工程において、酸性下に作用させる「ペプチダーゼR」(アマノエンザイム株式会社製)を添加せずに同様の工程で粉末状大豆ペプチド混合物を調製した。 表1に示すように、酸性下でのプロテアーゼ処理なしでは濁度(OD610nm)が1.184と高く、澱が発生した。(比較例2) 実施例1と同様の工程において、「ペプチダーゼR」(アマノエンザイム株式会社製)をフィターゼ反応時(酸性下)に添加せず、「プロチンAY40」(大和化成株式会社製)による加水分解中(pH6.3〜8.5)にE/S比0.05%の割合で添加し、後工程は同様にして粉末状大豆ペプチド混合物を調製した。 しかし、「ペプチダーゼR」(アマノエンザイム株式会社製)を弱アルカリ性から中性下の蛋白加水分解中(pH6.3〜8.5)に添加してもOD610nmが1.356と澱の発生を抑えることはできなかった。(比較例3) 実施例1と同様の工程において、フィターゼである「スミチームPHY」(新日本化学工業株式会社製)を添加せずに同様の工程で粉末状大豆ペプチド混合物を調製した。 表1に示すように、フィターゼ無添加ではOD610nmが1.349と澱が発生した。 本発明により従来の大豆ペプチド混合物より風味が良く、かつ、酸性水系下(特に、pH3〜4.5)でも澱を生じない大豆ペプチド混合物を製造することが可能になったものである。 これにより、酸性飲料や酸性ゼリーなどの酸性域にある飲食品に用いても風味が良く、澱を生じないので、幅広い酸性飲食品、特に酸性水性食品に応用できるものである。 なお、本発明に用いる大豆蛋白原料は背景技術の項でも述べたようにB法による大豆蛋白であるが、A法による大豆蛋白を用いても酸性冷蔵水系下で澱を生じない大豆ペプチド混合物を得ることができることは言うまでもない。 ただ、風味的にA法で得られる大豆蛋白原料を用いるよりB法で得られる大豆蛋白を用いたほうが風味にも優れる大豆ペプチド混合物が得られるからである。(a)濃縮大豆蛋白の水抽出物を(b)アルカリ性乃至中性域でプロテアーゼ処理した後、(c)酸性下にプロテアーゼ処理する工程、(d)フィチン酸分解酵素処理する工程及び(e)不溶物を分離除去する工程を含むことを特徴とする大豆ペプチド混合物の製造法。(b)工程に用いる酵素がエンド型を含む請求項1記載の製造法。(b)工程における加水分解の程度が、蛋白成分の15%トリクロロ酢酸可溶率でいう大豆蛋白分解率で、20〜98%である請求項1記載の製造法。(c)工程に用いる酵素がエキソ型を含む請求項1記載の製造法。(c)工程に用いる酵素がアスペルスギルス属またはリゾプス属由来の酵素である請求項1記載の製造法。(d)工程を(c)工程の後若しくは同時に行う請求項1記載の製造法。大豆ペプチド混合物の平均分子量が200〜5000である請求項1記載の製造法。 本発明はB法で製造した大豆蛋白を加水分解して得られる大豆蛋白加水分解物でも酸性下で冷蔵して澱を生じない大豆蛋白加水分解物、とりわけ比較的低分子の大豆ペプチド混合物を目的とした。 本発明は、(a)濃縮大豆蛋白の水抽出物を(b)アルカリ性乃至中性域でプロテアーゼ処理した後、(c)酸性下にプロテアーゼ処理する工程、(d)フィチン酸分解酵素処理する工程及び(e)不溶物を分離除去する工程を含むことを特徴とする大豆ペプチド混合物の製造法である。