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タイトル:再公表特許(A1)_パラジウム錯体およびこれを利用する触媒付与処理液
出願番号:2006321941
年次:2009
IPC分類:C07C 229/76,C23C 18/30,C25D 5/56,C25D 7/00,C07C 229/26,C07C 229/12,C07C 279/14,H05K 3/18,C07F 15/00


特許情報キャッシュ

高徳 誠 濱田 実香 JP WO2007066460 20070614 JP2006321941 20061102 パラジウム錯体およびこれを利用する触媒付与処理液 荏原ユージライト株式会社 000120386 特許業務法人 小野国際特許事務所 110000590 高徳 誠 濱田 実香 JP 2005351998 20051206 C07C 229/76 20060101AFI20090417BHJP C23C 18/30 20060101ALI20090417BHJP C25D 5/56 20060101ALI20090417BHJP C25D 7/00 20060101ALI20090417BHJP C07C 229/26 20060101ALI20090417BHJP C07C 229/12 20060101ALI20090417BHJP C07C 279/14 20060101ALI20090417BHJP H05K 3/18 20060101ALI20090417BHJP C07F 15/00 20060101ALN20090417BHJP JPC07C229/76C23C18/30C25D5/56 AC25D7/00 JC07C229/26C07C229/12C07C279/14H05K3/18 BH05K3/18 EC07F15/00 C AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,LY,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20090514 2007549039 19 4H006 4H050 4K022 4K024 5E343 4H006AA01 4H006AA03 4H006AB40 4H006AB99 4H006BS10 4H006BU32 4H050AA01 4H050AA03 4H050AB40 4H050AB99 4K022AA13 4K022AA14 4K022AA15 4K022AA41 4K022AA42 4K022BA08 4K022BA14 4K022BA16 4K022CA05 4K022CA06 4K022CA15 4K022CA16 4K022CA21 4K022CA22 4K022CA29 4K022DA01 4K024AA09 4K024AB17 4K024BA12 4K024BB11 4K024CA06 4K024CB21 4K024DA09 4K024GA01 5E343AA18 5E343BB44 5E343BB71 5E343CC73 5E343DD33 5E343ER02 5E343GG02 5E343GG08 本発明は、パラジウム錯体およびこれに使用する触媒付与処理液に関し、更に詳細には、塩基性アミノ酸とパラジウムとで形成するパラジウム錯体およびこのパラジウム錯体を使用し、カルボキシル基を有する非導電性樹脂表面に選択的にパラジウムを吸着させることのできる触媒付与処理液に関する。 近年、電子機器の小型化、高性能化に伴い、プリント配線板の高配線密度化、高性能化が求められている。ポリイミド樹脂は、耐熱性、電気絶縁性、機械的強度、屈曲性などの優れた特性から、フレキシブルプリント基板やTAPテープ用のベースフィルムとして実用化されており、通常、フィルム状のポリイミド樹脂は表面上に銅を被覆した銅張ポリイミド基板の形で多用されている。 銅張ポリイミド基板の製法としては、ラミネート法、キャスティング法、スパッタ・めっき法などがある。ラミネート法はポリイミドフィルムと銅箔を接着剤で貼り合わせる方法で、また、キャスティング法は、粗化銅箔表面にポリイミド前駆体のポリアミック酸を塗布、加熱する方法であるが、これらの方法は生産性が高く、銅箔とポリイミドとの密着性が良いなどの利点があるが、銅箔とポリイミドの界面の凹凸が大きく、銅膜厚を薄くすることが難しいため、ファインパターニングには不利であるという問題点があった。 それに対し、スパッタ・めっき法は、スパッタリングによりポリイミドフィルム表面に導電層を形成して、電気銅めっきで厚膜する方法であるが、銅とポリイミドの界面が平滑で、電気めっきにより銅膜厚を制御することができるので、ファインパターニングに適するという大変優れた特徴を持っている。 しかし、このスパッタ・めっき法を行うには、高価なスパッタリング装置が必要であることから、銅張ポリイミド基板のコストは高くなり、また、生産性も低い。そのため、更なる低コスト化、生産性向上を目指して、スパッタリングによる導電層形成を無電解めっきで行う試みがなされていた。 ところで、ポリイミド樹脂上に密着性良く無電解めっきを行う方法としては、アルカリ金属水酸化物の水溶液にポリイミド樹脂を浸漬する方法が知られている。このアルカリ金属水酸化物溶液にポリイミド樹脂を浸漬することにより、無電解めっきの密着性が良くなる理由は、アルカリ金属水酸化物の水溶液に接触することにより、ポリイミドのイミド環がアルカリ加水分解により開環して極性基が付与され、この結果、金属皮膜との化学的密着性が向上するというものである。また、アルカリ金属水酸化物の水溶液によりポリイミド表面がエッチングされて凹凸が生じ、金属皮膜との接触表面積を増加させたり、アンカー効果により密着性が向上する効果もあるとされている。 最近では、ポリイミド樹脂を水酸化カリウム水溶液で処理してイミド環を開環してカルボキシル基を生成させた後、パラジウムイオンや銅イオンをカルボキシル基に配位させ、還元剤を塗布して、フォトマスク越しに紫外線を照射した部分にのみパラジウムイオンや銅イオンを還元して触媒金属核を形成させて、無電解めっきを析出させて回路パターン形成する方法(特許文献1)や、アルカリ性アルコール水溶液をインクジェット法より塗布してパターン形成し、アルカリ性アルコール水溶液が塗布された部分のみ触媒金属を吸着させて無電解めっきを析出させる方法(特許文献2)などが報告されている。これらの方法は、従来の銅張ポリイミド基板の回路とならない不要な部分をエッチングして絶縁部分を形成するサブトラクティブ工法に代わる、必要な部分にだけ金属を析出させて回路を形成させるフルアディティブ工法への応用が、プリント配線板の更なる高配線密度化、高性能化に伴い増加していくと考えられている。 しかし、前記方法においても、無電解めっきの触媒金属として一般に用いられている塩化パラジウムなどは、カルボキシル基以外の部分にも吸着してしまい、選択吸着性に乏しいという問題があり、今後更に進むことが予想される高配線密度化に対応するには、選択的に触媒金属をカルボキシル基などのアニオン性基に吸着させ、無電解めっきを施す技術が必須である。特開2001−73159特開2005−29735 従って、本発明は、触媒金属をカルボキシル基などのアニオン性基に選択的に吸着させ、非電導性樹脂上に、選択的な金属皮膜を形成することのできる技術の提供をその課題とするものである。 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、塩基性アミノ酸とパラジウムで構成される錯化合物は、これを無電解めっきの触媒金属として用いることにより、表面にカルボキシル基等のアニオン性基を有する素材に対して、アニオン性基とアミノ酸塩基性部位との間の化学的な相互作用に基づき、選択的に多くの触媒金属を吸着させることができることおよびその結果無電解めっきを選択的に析出させることができることを見いだし、本発明を完成した。 すなわち本発明は、次の式(I)(式中、Lはアルキレン基を示し、Rはアミノ基またはグアニジル基を示す)で表されるパラジウム錯体またはその構造異性体である。 また本発明は、上記パラジウム錯体またはその構造異性体を有効成分として含有する無電解めっきの触媒付与処理液である。 更に本発明は、表面上にアニオン性基が形成された非電導性樹脂に触媒付与処理を行った後、還元処理、無電解金属めっきおよび電解金属めっきを行う非導電性樹脂表面上の金属めっき皮膜形成方法であって、前記触媒付与処理において、上記パラジウム錯体またはその構造異性体を有効成分とする無電解めっきの触媒付与処理液を用いることを特徴とする非導電性樹脂上の金属めっき皮膜形成方法である。 本発明のパラジウム錯体は、選択的に被めっき対象物のアニオン性基に吸着するため、選択的な無電解めっき、ひいては選択的な金属皮膜形成が可能となる。 従って、電子めっき分野では、選択的に金属皮膜を析出させることが必要な、フルアディティブ工法での回路形成に効果的に用いることができる。また、装飾めっき分野では、めっき用治具に無電解めっきが析出しない、新たなめっき処理プロセスを構築することができる。 本発明に使用されるパラジウム錯体の代表例は、上記(I)式で表されるものであり、パラジウムに隣接する塩基性アミノ酸のアミノ基とカルボキシル基が配位したものである。このパラジウム錯体には、上記(I)で示されるトランス体の他、構造異性体として下式(I')で表されるシス体も存在するが、本発明はこのいずれを利用しても、またそれらの混合物を使用しても良い。 上記パラジウム錯体(I)またはその構造異性体(以下、これらを「パラジウム錯体(I)」という)を構成する成分のうち、パラジウム(Pd)は、触媒金属として作用するものである。このパラジウム錯体(I)の製造に当たっては、パラジウムの塩、例えば塩化パラジウム、硫酸パラジウム、硝酸パラジウムなどを利用することができる。 また、塩基性アミノ酸としては、リシン、アルギニン、オルニチンなどのカチオン性基(例えば、アミノ基やグアニジル基)を持つアミノ酸を挙げることができる。この塩基性アミノ酸としては、L−リシン、D−リシン、DL−リシン、L−リシン塩酸塩、D−リシン塩酸塩、DL−リシン塩酸塩、L−リシン臭酸塩、D−リシン臭酸塩、DL−リシン臭酸塩、L−アルギニン、D−アルギニン、DL−アルギニン、L−アルギニン塩酸塩、D−アルギニン塩酸塩、DL−アルギニン塩酸塩、L−アルギニン臭酸塩、D−アルギニン臭酸塩、DL−アルギニン臭酸塩、L−オルニチン、D−オルニチン、DL−オルニチン、L−オルニチン塩酸塩、D−オルニチン塩酸塩、DL−オルニチン塩酸塩、L−オルニチン臭酸塩、D−オルニチン臭酸塩、DL−オルニチン臭酸塩などを挙げることができる。 このパラジウム錯体(I)は、パラジウム塩と、パラジウム塩に対して2当量以上の塩基性アミノ酸を、20℃ないしは100℃程度の水に添加し、pHを4.0ないしは8程度に調整した後、攪拌、混合することにより調製することができる。 以上のようにして得られたパラジウム錯体(I)溶液は、更に必要により、公知手段により精製して精製物としたり、あるいは濃縮、凍結乾燥して粉末とすることもできる。 本発明の触媒付与処理液は、前記のように調製されたパラジウム錯体(I)溶液を、所定濃度に調整したり、あるいは前記精製物または粉末を所定濃度となるまで水に希釈ないし溶解することにより調製される。 この触媒付与処理液におけるパラジウム錯体(I)溶液の濃度は、金属パラジウム換算で0.5mg/Lないしはパラジウム錯体の飽和濃度、好ましくは1mg/Lないし1000mg/Lである。また好ましいpHは、使用する塩基性アミノ酸の種類によっても相違するが、3ないし9の範囲であり、特に好ましくは、4ないし8である。 本発明の触媒付与処理液は、非導電性樹脂上に金属めっき皮膜を形成させる方法において、有利に使用することができる。すなわち、常法に従って非導電性樹脂を脱脂した後、その表面にカルボキシル基等のアニオン性基を形成せしめ、次いで本発明の触媒付与処理液に浸漬することにより、カルボキシル基等のアニオン性基が存在している部分にのみ選択的にパラジウム錯体を付与することができる。その後、還元剤によりパラジウム錯体を無電解めっき触媒である金属パラジウムに還元し、無電解めっき、さらには電気めっきすることにより、選択的に金属めっき皮膜を形成することができる。 具体的に、非導電性樹脂であるポリイミド樹脂に、本発明触媒付与液を使用して選択的に金属皮膜を形成する方法を説明すれば次の通りである。 まず、ポリイミド樹脂表面上にアニオン性基であるカルボキシル基を形成させる。カルボキシル基を形成するためには、このポリイミド樹脂をアルカリ処理することが必要である。このアルカリ処理は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ物質の水溶液を使用することにより行われる。この場合のアルカリ処理は、20℃ないし100℃程度の温度の、0.01ないし10mol/L程度の濃度のアルカリ物質溶液に、ポリイミド樹脂を10秒ないし30分程度浸漬することにより行われる。この結果、ポリイミド樹脂のイミド環がアルカリ加水分解により開環して、ポリアミック酸イオンとなり、カルボキシル基が生成する。 次に、表面にカルボキシル基(ポリアミック酸)が形成されたポリイミド樹脂を、本発明の触媒付与処理液に浸漬する。この触媒付与処理液への浸漬処理は20℃ないし100℃程度の温度で1秒ないし60分程度行われる。この処理により、パラジウム錯体(I)のフリーのカチオン性基(アミノ基、グアニジル基)がポリイミド樹脂表面のアニオン性基であるカルボキシル基と相互作用することにより、選択的に且つ多くのパラジウム錯体を付与することができる。 このようにして、パラジウム錯体(I)が付与されたポリイミド樹脂は、更に還元されることによりパラジウム錯体中のパラジウムイオンが還元され、金属パラジウムとなる。この還元工程はパラジウムイオンを還元できればどのような方法でもよく、例として水素ガスによる還元、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウムなどの水溶液に浸漬することによる還元などの公知の方法が挙げられる。 最後に、上記のポリイミド樹脂を無電解めっき浴に浸漬することにより、その表面に付着した金属パラジウムを核として金属皮膜が析出し、さらにこの金属皮膜を導電層として電気めっきすることにより、選択的に金属皮膜を得ることができる。 また、本発明触媒付与液は、一般的に広く使用されているABS等において、新しいめっきプロセスを提供することが可能なものである。 すなわち、プラスチックのような非導電性樹脂表面に無電解めっきを施すにあたっては、該表面上にパラジウム、白金、銀、ニッケル、銅等の触媒金属を付与する触媒化工程を行うことが必要であり、更に、この触媒化処理に先立って、触媒金属が非導電性物質表面に担持されるよう、エッチング処理が行なわれていた。このエッチング処理は、非導電性物質表面を粗化して、マクロな凹凸、空孔を形成させるものであり、この凹凸や空孔の内部に触媒金属を担持させ、この触媒金属を核として空孔の内部より無電解めっき皮膜、及び後に続く電気めっき皮膜を析出させ、非導電性物質表面とめっき皮膜との間に強い密着性(アンカー効果)を与えるためのものである。 そして、従来、水洗金具などの衛生設備器具類、自動車製造分野などにおいて、ABS(アクリロニトリルーブタジエンースチレン)樹脂やPC/ABS(ポリカーボネート/アクリロニトリルーブタジエンースチレン)樹脂などの樹脂成型品表面を金属めっきした製品が幅広く採用されており、これらABS樹脂やPC/ABS樹脂(以下、「ABS樹脂」と総称する)の表面をエッチング処理する場合には、一般に、クロム酸/硫酸混合溶液が用いられていた。 しかるに近年、このクロム酸は人体、環境に有害な6価クロムであるため、クロム酸を用いない新たなめっきプロセスが望まれるようになってきており、親水化工程とポリアミノ化合物を用いた、クロム酸を使用しない新たなめっき前処理プロセスが提案されている。 ところが、このめっき前処理プロセスを行った場合、電気めっきにおいて、樹脂成型品と同時にこの樹脂成型品を保持するめっき用治具の絶縁コーティング(例えば、軟質塩化ビニルゾルのコーティング)部分にもめっきが析出してしまう問題があった。これは、めっき治具上に触媒金属が吸着し、無電解めっきが析出したために起るのであるが、この問題を解決する手段としては、電気めっきを行う前に、絶縁コーティングにめっきが析出していない別の治具に、無電解めっきにより導電化された樹脂成型品を掛け替えるという手法がとられており、極めて煩雑で、作業効率が悪いという欠点を抱えていた。 しかしながら、ABS樹脂の表面にカルボキシル基を形成し、本発明の触媒付与処理剤を用いれば、クロム酸を使用せず、かつ治具の掛け替えを行うことなくABS樹脂上に金属皮膜を形成することが可能となるのである。 具体的に、本発明の触媒付与処理液を用いて非導電性樹脂であるABS樹脂上に金属皮膜を形成するための方法の例を示せば次の通りである。 まず、ABS樹脂表面上にカルボキシル基を形成するために、この樹脂を酸化処理する。この酸化処理は、0.01ないし0.5mol/L程度の過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウムなどの過マンガン酸塩と300ないし900mL/L程度の硫酸、リン酸、硝酸などの酸の混合溶液により行われる。この場合の酸化処理は、0℃ないし50℃の比較的低温の条件下で1分ないし60分程度行われる。この処理によるカルボキシル基の生成は、フーリエ変換赤外分光光度法によりカルボキシル基に特徴的な1625cm−1付近の吸収が出現することから確認できる。なお、この酸化処理液ではめっき用治具の絶縁コーティング(例えば、軟質塩化ビニルゾルやフッ素樹脂)表面をカルボキシル基化しない。 次に、表面にカルボキシル基が形成されたABS樹脂を、本発明の触媒付与処理液に浸漬する。この触媒付与処理液への浸漬処理は20℃ないし100℃程度の温度で1秒ないし60分程度行われる。この処理により、パラジウム錯体(I)のフリーのカチオン性基(アミノ基、グアニジル基)がABS樹脂表面のアニオン性基であるカルボキシル基と相互作用することにより、選択的に且つ多くのPd錯体を付与することができる。また、めっき用治具の絶縁コーティング表面にはカルボキシル基が殆ど存在していないのでパラジウム錯体(I)は吸着しない。 このようにして、パラジウム錯体(I)が付与されたABS樹脂は、更に還元されることによりパラジウム錯体中のパラジウムイオンが還元され、金属パラジウムとなる。この還元工程はパラジウムイオンを還元できればどのような方法でもよく、例として水素ガスによる還元、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウムなどの水溶液に浸漬することによる還元などの公知の方法が挙げられる。 最後に、上記のABS樹脂を無電解めっき浴に浸漬することにより、その表面に付着した金属パラジウムを核として金属皮膜が析出し、さらにこの金属皮膜を導電層として電気めっきすることにより、ABS樹脂にのみめっき皮膜を析出させることができる。 以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制約されるものではない。実 施 例 1 パラジウム錯体(I)の合成:(1)パラジウム−ビスリシン錯体([Pd(Lys)2]2+): 塩化パラジウム(東洋化学工業株式会社製、特級)0.21gとL−リシン塩酸塩(和光純薬株式会社製、特級)0.52gを純水500mLに添加し、水酸化カリウム(和光純薬株式会社製、特級)にてpH=6.0に調整し、70℃で1時間撹拌して、金属パラジウム換算で250mg/Lの触媒付与処理液を得た。(2)パラジウム−ビスアルギニン錯体([Pd(Arg)2]2+): 塩化パラジウム(東洋化学工業株式会社製、特級)0.21gとL−アルギニン塩酸塩(和光純薬株式会社製、特級)0.59gを純水500mLに添加し、水酸化カリウム(和光純薬株式会社製、特級)にてpH=6.0に調整し、70℃で1時間撹拌して、金属パラジウム換算で250mg/Lの触媒付与処理液を得た。比 較 例 1 比較パラジウム錯体の合成: 比較のため、塩基性でない他のパラジウム錯体を実施例1と同様な方法で合成した。合成したパラジウム−アミノ酸錯体は、フリーの官能基を持たないパラジウム−ビスアラニン錯体:[Pd(Ala)2]、ヒドロキシル基を持つパラジウム−ビスセリン錯体:[Pd(Ser)2]、アニオン性のカルボキシル基を持つパラジウム−ビスグルタミン酸錯体:[Pd(Glu)2]2−、一般に良く知られている塩酸酸性塩化パラジウム溶液(パラジウム−テトラクロライド錯体):[PdCl4]2−である。(1)パラジウム−ビスアラニン錯体([Pd(Ala)2]): 塩化パラジウム(東洋化学工業株式会社製、特級) 0.21gとL−アラニン(和光純薬株式会社製、特級)0.25gを純水500mLに添加し、水酸化カリウム(和光純薬株式会社製、特級)にてpH=6.0に調整し、70℃で1時間撹拌して、金属パラジウム換算で250mg/Lの触媒付与処理液を得た。(2)パラジウム−ビスセリン錯体([Pd(Ser)2]): 塩化パラジウム(東洋化学工業株式会社製、特級)0.21gとL−セリン(和光純薬株式会社製、特級)0.30gを純水500mLに添加し、水酸化カリウム(和光純薬株式会社製、特級)にてpH=6.0に調整し、70℃で1時間撹拌して、金属パラジウム換算で250mg/Lの触媒付与処理液を得た。(3)パラジウム−ビスグルタミン酸錯体([Pd(Glu)2]2−): 塩化パラジウム(東洋化学工業株式会社製、特級)0.21gとL−グルタミン酸ナトリウム・1水和物(和光純薬株式会社製、特級)0.53gを純水500mLに添加し、水酸化カリウム(和光純薬株式会社製、特級)にてpH=6.0に調整し、70℃で1時間撹拌して、金属パラジウム換算で250mg/Lの触媒付与処理液を得た。(4)塩酸酸性塩化パラジウム溶液(パラジウム−テトラクロライド錯体: [PdCl4]2−): 塩化パラジウム(東洋化学工業株式会社製、特級)0.21gと37%塩酸8.33g(和光純薬株式会社製、特級)を純水500mLに添加し、70℃で30分間、塩化パラジウムが完全に溶解するまで撹拌した。その後、水酸化カリウム(和光純薬株式会社製、特級)にてpH=6.0に調整して金属パラジウム換算で250mg/Lの触媒付与処理液を得た。実 施 例 2 パラジウム−アミノ酸錯体の構造: [Pd(Ala)2]は、以下の様なアミノ基とカルボキシル基が5員環キレート配位した平面四座配位構造を取ることが一般に知られている。 [Pd(Lys)2]2+、[Pd(Ser)2]および[Pd(Glu)2]2−の3種類のパラジウム−アミノ酸錯体の場合、配位子であるアミノ酸の側鎖にアミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基を持っているが、これら側鎖の官能基がパラジウムに配位する可能性も考えられたので、これら官能基がパラジウムに配位しているか、フリーの状態であるかを確かめるために各パラジウム錯体の紫外可視吸収スペクトル測定を行った。紫外可視吸収スペクトル測定にはUV−2500PC(株式会社島津製作所製)を使用した。測定条件は、セル長:1cm、温度:25℃で行った。測定結果を図1に示す。 その結果、全てのパラジウム−アミノ酸錯体のスペクトルパターンが一致したことから、これら錯体の配位構造は、一般に知られている[Pd(Ala)2]の配位構造と同様な、アミノ基とカルボキシル基が5員環キレート配位した平面四座配位構造と確認できた。それ故、[Pd(Lys)2]2+、[Pd(Ser)2]および[Pd(Glu)2]2−の3種類のパラジウムーアミノ酸錯体のアミノ酸側鎖官能基であるアミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基はパラジウムには配位せず、フリーの状態であると判断できる。実 施 例 3 パラジウム錯体(I)のカルボキシル基に対する吸着性: パラジウム錯体(I)のフリ−のカチオン性基であるアミノ基、グアニジル基が樹脂表面のカルボキシル基と相互作用しているかどうかを、比較例1で合成した塩基性でない他のパラジウム−アミノ酸錯体を用いた場合の、パラジウム錯体の樹脂表面への吸着量および無電解めっきの析出性から判断した。 下記工程により、ポリイミド樹脂(カプトン100−EN:東レ・デュポン株式会社製)をカルボキシル基化し、各パラジウム−アミノ酸錯体で処理したときの無電解ニッケルめっきの析出性と、還元処理後のパラジウム吸着量を島津シーケンシャル形プラズマ発光分析装置(株式会社島津製作所製)にて測定した。作業工程を以下に、測定結果を表1に示す。[ 作業工程 ] 脱脂処理: PB−120*1:50℃、10分 アルカリ処理: 5mol/Lの水酸化カリウム水溶液*2:50℃、2分 触媒付与処理: 各パラジウムーアミノ酸錯体:50℃、5分、pH=6.0 還元処理: PC−66H*1:35℃、5分 無電解ニッケルめっき: ENILEX NI−5*1:35℃、5分、pH=8.8 *1:何れも、荏原ユージライト株式会社製 *2:和光純薬株式会社製 特級水酸化カリウムを用いて調製。 なお、各工程間に水洗を行った。 この結果から明らかなように、樹脂表面のアニオン性官能基であるカルボキシル基に対して、フリーのカチオン性官能基であるアミノ基、グアニジル基を持つ[Pd(Lys)2]2+、[Pd(Arg)2]2+が極めて高い吸着性を持つことが示された。実 施 例 4 パラジウム錯体(I)の極性基に対する選択性:(1)樹脂表面を酸化処理した場合、ヒドロキシル基、カルボニル基およびカルボキシル基が生成する事が知られている。パラジウム錯体(I)がカルボキシル基のみに選択的に吸着するかどうかを確かめるため、表面にヒドロキシル基とカルボニル基が存在する試料(試料A)、ヒドロキシル基、カルボニル基およびカルボキシル基が存在する試料(試料B)及びヒドロキシル基およびカルボキシル基が存在する試料(試料C)を作成して、それらのパラジウムの吸着量を比較した。(2)表面にヒドロキシル基とカルボニル基を持つ試料Aの作成: 5cm×9cmのABS板(UMG ABS株式会社製)に、光表面処理装置(センエンジニアリング株式会社製)を用い、大気中、紫外線ランプ−ABS板間距離5cmで20分間紫外線(184.9nm、253.7nm)を照射した。 このABS板の表面をフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)FT/IR6100FV型(日本分光株式会社製)を用い、真空排気下1回反射ATR法にて、表面の官能基分析を行った。その結果、3340cm−1付近にヒドロキシル基由来、1715cm−1にカルボニル基由来の吸収が観測された。測定したFT−IRスペクトルを図2に、未処理のABS板との差スペクトルを図3に示す。(3)表面にヒドロキシル基とカルボニル基、カルボキシル基を持つ試料Bの作成: 5cm×9cmのABS板(UMG ABS株式会社製)を、過マンガン酸カリウム(和光純薬株式会社製、特級)40g/Lと85%りん酸(和光純薬株式会社製、特級)100mL/Lを添加した水溶液に70℃で60分間、上記試料Aと同程度のカルボニル基が生成するように浸漬した。 このABS板の表面をフーリエ変換赤外分光光度計FT/IR6100FV型(日本分光株式会社製)を用いて、真空排気下1回反射ATR法にて、表面の官能基分析を行った。その結果、3340cm−1付近にヒドロキシル基由来、1715cm−1にカルボニル基由来、1625cm−1にカルボキシル基由来の吸収が観測された。測定したFT−IRスペクトルを図2に、未処理のABS板との差スペクトルを図3に示す。(4)表面にヒドロキシル基、カルボキシル基を持つ試料Cの作成: 5cm×9cmのABS板(UMG ABS株式会社製)を過マンガン酸カリウム(和光純薬株式会社製、特級)2g/Lとりん酸(和光純薬株式会社製、特級)700mL/Lを添加した水溶液に30℃で10分間、上記試料Aと同程度のヒドロキシル基が生成するように浸漬した。 このABS板の表面をフーリエ変換赤外分光光度計FT/IR6100FV型(日本分光株式会社製)を用いて、真空排気下1回反射ATR法にて、表面の官能基分析を行った。その結果、3340cm−1付近にヒドロキシル基由来、1625cm−1にカルボキシル基由来の吸収が観測された。測定したFT−IRスペクトルを図2に、未処理のABS板との差スペクトルを図3に示す。(5)上記で作成した3種類のABS板について、還元処理後のパラジウム吸着量を島津シーケンシャル形プラズマ発光分析装置(株式会社島津製作所製)にて測定した。作業工程を以下に、測定結果を表2に示す。[ 作業工程 ] 触媒付与処理: [Pd(Lys)2]2+:50℃、5分、pH=6.0 還元処理 : PC−66H*3:35℃、5分 *3:荏原ユージライト株式会社製 なお、各工程間に水洗を行った。 試料Aと試料Bを、その差スペクトル(図3)で比較すると、試料Aと試料Bの違いは、試料Bはヒドロキシル基の生成量が多く、カルボキシル基がメインで存在しているが、試料Aは試料Bよりヒドロキシル基が少なく、カルボニル基がメインである。そしてパラジウム吸着量は試料Bの方が10倍以上多い。 また、試料Aと試料Cを比較すると、試料Cはヒドロキシル基の生成量は試料Aと同程度であるが、カルボニル基は全く存在せず、少量のカルボキシル基が存在している。そしてパラジウムの吸着量は試料Aの2倍以上である。 これらの結果から明らかなように、図2のFT−IRスペクトル、図3の差スペクトルの1625cm−1のカルボキシル基の生成量、試料A<試料C<試料Bの順にパラジウムの吸着量が増加していることから、[Pd(Lys)2]2+がカルボキシル基に選択的に吸着していることがわかる。また、試料Aは1715cm−1のカルボニル基が大量に存在するが、[Pd(Lys)2]2+の吸着量が最も低いことから、[Pd(Lys)2]2+の吸着にはカルボニル基は関与していないと判断される。実 施 例 5 無電解めっきの選択性の確認: ポリイミド樹脂(カプトン100−EN:東レ・デュポン株式会社製)をPB−120(荏原ユージライト株式会社製)で脱脂処理した後、その下半分のみを50℃の5mol/Lの水酸化カリウム水溶液(和光純薬株式会社製 特級を用いて調製)に2分間浸漬し、アルカリ処理した。次いで、[Pd(Lys)2]2+の触媒付与処理液に50℃で5分間浸漬し、更に35℃の還元処理溶液PC−66H(荏原ユージライト株式会社製)に5分間浸漬した後、35℃の無電解ニッケルめっき液ENILEX NI−5(荏原ユージライト株式会社製)にpH=8.8、35℃、5分間の条件でめっきを施した。なお、各工程間は水洗を行った。 無電解ニッケルめっき後の外観を観察したところ、ポリイミド樹脂のアルカリ処理を行った下半分のみにニッケルが析出しており、アルカリ処理の有無により、選択的に金属皮膜を析出させることが出来ることが明らかとなった。比 較 例 2 実施例5の触媒付与処理液に[Pd(Lys)2]2+を用いず、比較例1で合成した一般的な塩酸酸性塩化パラジウム溶液[PdCl4]2−を触媒付与処理液に用いたこと以外は全て実施例5と同じ条件でめっきを施した。 無電解ニッケルめっき後の外観を観察したところ、ポリイミド樹脂のアルカリ処理を行った下半分、及びアルカリ処理を行っていない上半分にもニッケルが析出しており、選択的に金属皮膜を析出させることが出来なかった。比 較 例 3 実施例5の触媒付与処理液に[Pd(Lys)2]2+を用いず、触媒付与処理液PC−65H(荏原ユージライト株式会社製)を用いた以外は全て実施例5と同じ条件でめっきを施した。 無電解ニッケルめっき後の外観を観察したところ、ポリイミド樹脂のアルカリ処理を行った下半分、及びアルカリ処理を行っていない上半分にもニッケルが析出しており、選択的に金属皮膜を析出させることが出来なかった。実 施 例 6 各種樹脂素材へのめっき: 5cm×9cmのABS板(UMG ABS株式会社製)を過マンガン酸カリウム(和光純薬株式会社製、特級)2g/Lとりん酸(和光純薬株式会社製、特級)700mL/Lを添加した水溶液に30℃で10分間浸漬してABS板の表面にカルボキシル基を生成させた。次に、前記ABS板を水洗した後、実施例1で調製した[Pd(Lys)2]2+溶液に50℃で5分間浸漬してパラジウム錯体をABS板の表面に吸着させた。そして、還元溶液PC−66H(荏原ユージライト株式会社製)に35℃で5分間浸漬してパラジウム錯体を金属パラジウムに還元した。 その後、pH=8.8、35℃とした無電解ニッケルめっき液ENILEX NI−5(荏原ユージライト株式会社製)に10分間浸漬してニッケルーリン皮膜を0.5μm析出させた。この際、めっき用治具にはニッケルーリン皮膜が析出しなかった。その後、ワット浴にて45℃、2A/dm2の条件で3分間ニッケルストライクめっきを行い、PDC(荏原ユージライト株式会社製)にてニッケル表面を銅に置換した。次いで、硫酸銅めっきEP−30(荏原ユージライト株式会社製)を用いて、25℃、3A/dm2の条件で40分間めっきを行い、銅皮膜を20μm析出させた。その後、80℃で1時間アニール処理を行った。なお、各工程間は水洗を行った。 得られためっき皮膜と樹脂間の密着強度を、JIS H8630付属書6に従って測定した。まず、カッターで2本の溝を形成した。次いで、引っ張り強度試験器AGS−H500N(株式会社島津製作所製)を用いて、10mm幅の銅皮膜を引き剥がして強度を密着強度として測定した。その結果、密着強度は1.4kgf/cmと極めて高く、実用上全く問題ないものであった。実 施 例 7 樹脂素材に5cm×9cmのPC/ABS板(UMG ABS株式会社製、PC65%含有)を用いる以外は全て実施例6と同様に処理した。密着強度は1.0kgf/cmと極めて高く、実用上全く問題ないものであった。実 施 例 8 5cm×9cmのポリイミド樹脂カプトン100−EN(東レ・デュポン株式会社製)をPB−120(荏原ユージライト株式会社製)で脱脂処理した後、50℃の0.5mol/Lの水酸化カリウム水溶液(和光純薬株式会社製 特級を用いて調製)に5分間浸漬し、アルカリ処理した。次いで、[Pd(Lys)2]2+の触媒付与処理液に50℃で5分間浸漬し、更に35℃の還元処理溶液PC−66H(荏原ユージライト株式会社製)に5分間浸漬した。 次いで、35℃の無電解ニッケルめっき液ENILEX NI−5(荏原ユージライト株式会社製)を用い、pH=8.8、35℃の条件で、5分間めっきを施し、ニッケルーリン皮膜を0.2μm析出させた。その後、80℃で1時間アニール処理した。続いて、PDC(荏原ユージライト株式会社製)にてニッケル表面を銅に置換した。最後に、硫酸銅めっき浴CU−BRITE 21(荏原ユージライト株式会社製)を用い、25℃、2A/dm2の条件で1時間めっきを行い、銅皮膜を約20μm析出させた。その後、80℃で1時間、120℃で1時間アニール処理した。なお、各工程間は水洗を行った。 得られためっき皮膜と樹脂間の密着強度を、JIS C-6481に従って測定した。まず、カッターで2本の溝を形成した。次いで、引っ張り強度試験器AGS−H500N(株式会社島津製作所製)を用いて、10mm幅の銅皮膜を引き剥がした際の強度を密着強度として測定した。その結果、密着強度は1.1kgf/cmと極めて高く、実用上全く問題ないものであった。実 施 例 9 無電解ニッケルめっきの代わりに無電解銅めっきPB−506(荏原ユージライト株式会社製)を用い、片面のみを35℃で、15分処理した以外は全て実施例7と同じ条件でめっきを施した。 その結果、密着強度は1.1kgf/cmと極めて高く、実用上全く問題ないものであった。実 施 例 10 実施例8の触媒付与処理液[Pd(Lys)2]2+の代わりに[Pd(Arg)2]2+を使用した以外は全て実施例7と同じ条件でめっきを施した。 その結果、密着強度は1.0kgf/cmと極めて高く、実用上全く問題ないものであった。 本発明のパラジウム錯体は、パラジウムイオンが塩基性アミノ酸と錯体を形成しているものであり、この塩基性アミノ酸のパラジウムイオンに配位していないフリーのアミノ酸側鎖の塩基性基が非導電性樹脂表面のカルボキシル基等のアニオン性基と相互作用するため、アニオン性基が存在する部分にのみ選択的にパラジウム錯体を吸着させることが可能となる。 その結果、電子分野では、ポリイミド樹脂などに対してアルカリ処理を行った部分にのみ選択的に金属皮膜を析出させることが可能となるため、フルアディティブ工法での回路形成に好ましく用いることができる。 また、装飾分野では、有害な6価クロムを利用することなく、まためっき用治具の掛け替えを必要としない、非常に経済的で作業性の良い新たなめっき処理プロセスを構築することができる。各パラジウムーアミノ酸錯体の紫外可視吸収スペクトルを示す。ABS樹脂表面を各種酸化処理したときのFT−IRスペクトル変化を示す。図2に示した各FT−IRスペクトルの未処理に対する差スペクトルを示す。 次の式(I)(式中、Lはアルキレン基を示し、Rはアミノ基またはグアニジル基を示す)で表されるパラジウム錯体またはその構造異性体。 Lが炭素数4のアルキレン基であり、Rがアミノ基である請求項第1項記載のパラジウム錯体。 Lが炭素数3のアルキレン基であり、Rがアミノ基である請求項第1項記載のパラジウム錯体。 Lが炭素数3のアルキレン基であり、Rがグアニジル基である請求項第1項記載のパラジウム錯体。 次の式(I)(式中、Lはアルキレン基を示し、Rはアミノ基またはグアニジル基を示す)で表されるパラジウム錯体またはその構造異性体を有効成分とする無電解めっきの触媒付与処理液。 パラジウム錯体(I)の濃度が、金属パラジウム換算で0.5mg/Lないしその飽和濃度である請求項第5項記載の無電解めっきの触媒付与処理液。 表面上にアニオン性基が形成された非電導性樹脂に触媒付与処理を行った後、還元処理、無電解金属めっきおよび電解金属めっきを行う非導電性樹脂表面上の金属めっき皮膜形成方法であって、前記触媒付与処理において、次の式(I)(式中、Lはアルキレン基を示し、Rはアミノ基またはグアニジル基を示す)で表されるパラジウム錯体またはその構造異性体を有効成分とする無電解めっきの触媒付与処理液を用いることを特徴とする非導電性樹脂上の金属めっき皮膜形成方法。 表面に形成されたアニオン性基がカルボキシル基である請求項第7項記載の非導電性樹脂上の金属めっき皮膜形成方法。 触媒付与処理溶液の温度が、20℃ないし100℃である請求項第7項または第8項記載の非導電性樹脂上の金属めっき皮膜形成方法。 触媒付与処理溶液中での処理時間が、1秒ないし60分行う請求項第7項ないし第9項の何れかの項記載の非導電性樹脂上の金属めっき皮膜形成方法。 表面上にカルボキシル基が形成された非電導性樹脂が、アルカリ処理によりカルボキシル基が形成されたポリイミド樹脂である請求項第8項ないし第10項の何れかの項記載の金属めっき皮膜形成方法。 表面上にカルボキシル基が形成された非電導性樹脂が、過マンガン酸塩と酸の混合溶液による酸化処理でカルボキシル基が形成されたアクリロニトリルーブタジエンースチレン樹脂またはポリカーボネート/アクリロニトリルーブタジエンースチレン樹脂である請求項第8項ないし第10項の何れかの項記載の金属めっき皮膜形成方法。 触媒金属をカルボキシル基などのアニオン性基に選択的に吸着させ、非電導性樹脂上に、選択的な金属皮膜を形成することのできる技術を提供することを目的する、次の式(I) 【化1】(式中、Lはアルキレン基を示し、Rはアミノ基またはグアニジル基を示す)で表されるパラジウム錯体またはその構造異性体、これを有効成分として含有する無電解めっきの触媒付与処理液および表面上にアニオン性基が形成された非電導性樹脂に上記触媒処理液による触媒付与処理を行った後、還元処理、無電解金属めっきおよび電解金属めっきを行う非導電性樹脂上の金属めっき皮膜形成方法。


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