生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_食後血中インスリン上昇抑制剤
出願番号:2006301888
年次:2008
IPC分類:A61K 31/685,A61P 3/10,A61P 3/04,A61P 43/00,A23L 1/30,A23J 7/00


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杉野 菜奈美 橋爪 浩二郎 下豊留 玲 渋谷 祐輔 目黒 真一 JP 2008115132 公開特許公報(A) 20080522 2006301888 20061107 食後血中インスリン上昇抑制剤 花王株式会社 000000918 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 的場 ひろみ 100101317 守屋 嘉高 100121153 大野 詩木 100134935 松田 政広 100130683 野中 信宏 100140497 杉野 菜奈美 橋爪 浩二郎 下豊留 玲 渋谷 祐輔 目黒 真一 A61K 31/685 20060101AFI20080425BHJP A61P 3/10 20060101ALI20080425BHJP A61P 3/04 20060101ALI20080425BHJP A61P 43/00 20060101ALI20080425BHJP A23L 1/30 20060101ALN20080425BHJP A23J 7/00 20060101ALN20080425BHJP JPA61K31/685A61P3/10A61P3/04A61P43/00 111A23L1/30 ZA23J7/00 4 OL 8 4B018 4C086 4B018MD45 4B018ME01 4B018ME03 4C086AA01 4C086AA02 4C086DA41 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZA70 4C086ZC02 4C086ZC35 本発明は、医薬又は食品として有用な食後血中インスリン上昇抑制剤に関する。 通常、食後は、血糖値が上昇することから、インスリン分泌が促進され、脂肪・筋肉への糖取込みの促進、肝臓・筋肉での脂肪の合成促進、および脂肪の分解・燃焼抑制が起こる。しかし、高血糖状態が維持され、インスリンの分泌が続くと、インスリンの標的臓器である骨格筋、肝臓、脂肪組織でのインスリン感受性の低下(インスリン抵抗性)が生じ、さらに膵臓からインスリンがより多く分泌されるようになる。そして、インスリン分泌が繰り返されると、最終的に膵臓が疲弊し、膵β細胞からのインスリンの分泌が低下するが、各標的臓器のインスリン抵抗性は増大したままの状態となる。斯くしてインスリン作用機構が正常に機能しなくなると、肥満や糖尿病等になりやすい体質、更には肥満やII型糖尿病(高血糖症)等になることが知られている。 近年、食生活が変化し、消化されやすい食品や糖質を多量に含む飲料の摂取、或いは過食・早食等により、糖質の消化吸収が早まり食後血糖値が急激に上昇する結果、血中インスリン濃度が上昇することが多いと考えられる。 従来、食後の血糖上昇については、糖尿病の予防の観点からこれを抑制する試みが種々なされているが、食後の血中インスリン上昇を抑制することについては、積極的な取り組みがなされていないのが現状である。 一方、リン脂質は、生体膜を構成する主要な脂質であるが、乳化作用、酸化防止作用を有することから、食品添加物として、マーガリン、乳飲料、アイスクリーム、菓子類等に広く配合されている。また、近年、リン脂質には、動脈硬化などの血管性疾患の原因となる血中脂質の改善作用(特許文献1)、脂質代謝の改善作用(特許文献2)、コレステロール吸収抑制作用(特許文献3)、肝障害予防・改善作用(特許文献4、特許文献5)等の作用があることが報告されている。 しかしながら、リン脂質と食後血中インスリン濃度との関係については全く知られてはいない。特開2005-187476号公報特開2004-337177号公報特開2004-18591号公報特開平10-84879号公報特開2002-68998号公報 本発明は、医薬又は食品として有用な食後血中インスリン上昇抑制剤を提供することに関する。 本発明者等は、糖質及び脂質を含む食餌を与えたマウスにおいて、リン脂質を投与すると、投与しない場合に比べ食後血中インスリン濃度の過剰な上昇を抑制することを見出した。 すなわち、本発明は、リン脂質を有効成分とする食後血中インスリン上昇抑制剤に係るものである。 本発明によれば、食後の血中インスリン濃度の上昇を良好な範囲内に抑制できることから、インスリンの大量分泌に伴う、膵β細胞の疲弊やインスリン標的臓器のインスリン抵抗性を改善又は防止することができ、ひいては糖尿病(高血糖症)や肥満、これらの予備軍の予防や体質改善を行うことができる。 本発明のリン脂質としては、グリセロリン脂質、グリセロリゾリン脂質、スフィンゴリン脂質等のリン脂質成分の他、当該リン脂質を含む動植物等の適当な組織からの抽出分画、例えば、大豆、米、とうもろこし、菜種、綿実、小麦、落花生、ひまし、ヒマワリ、大麦、エンバク、紅花、ゴマ等の植物、卵黄、乳、魚介類等の動物の組織から抽出される抽出レシチン、精製レシチン、更には酵素処理等による加工レシチン等が挙げられ、これらを単独で用いる他、2種以上混合して使用することができる。 このうち、グリセロリン脂質、グリセロリン脂質を含む動植物性の抽出レシチンを使用するのが好ましい。 グリセロリン脂質としては、例えば、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸等が挙げられ、このうち、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリンが好ましい。 グリセロリゾリン脂質としては、例えば、リゾホスファチジン酸、リゾホスファチジルセリン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン等が挙げられ、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミンが好ましい。 スフィンゴリン脂質としては、スフィンゴミエリン、スフィンゴシン−1−リン酸等が挙げられる。 本発明のリン脂質は、動植物等の組織から抽出・単離、あるいは化学合成により、入手することが可能である。またSLP-ホワイト(辻製油)等の市販品を用いることもできる。 化学合成法としては、例えば、ジグリセリドのリン酸エステル化、モノグリセリドのリン酸エステル化、グリセロリン酸の脂肪酸エステル化等が挙げられる。また、リゾリン脂質は、リン脂質をホスホリパーゼA2等の酵素で処理することにより製造することができる。 後記実施例に示すように、リン脂質は、トリアシルグリセロール(以下TAGともいう)と共に摂取した場合に、グルコースとトリアシルグリセロールの同時摂取による血中インスリン濃度の上昇を有意に抑制する作用を有する。従って、リン脂質は、食後血中インスリン上昇抑制剤として使用することができ、また、当該食後血中インスリン上昇抑制剤を製造するために使用することができる。 斯かる食後血中インスリン上昇抑制剤は、糖尿病(高血糖症)、肥満等の予防・改善効果を発揮し得る、ヒト若しくは動物用の医薬品、医薬部外品又は食品として使用可能である。 また、当該食後血中インスリン上昇抑制剤は、食後の過剰な血中インスリン濃度の上昇抑制をコンセプトとし、必要に応じてその旨を表示した美容食品、病者用食品若しくは特定保健用食品等の機能性食品として使用することができる。 なお、「食後の血中インスリン上昇抑制」とは、脂質及び糖質を含む食事、特に脂質を多く含む食事、そのなかでもトリアシルグリセロールを多く含む食事を摂取することに伴う血中インスリン濃度の過剰な上昇を抑制することをいう。ここで、「過剰な」とは、糖質のみを摂取した場合を指標としたときにそれ以上に食後インスリン濃度が上昇する場合をいう。 本発明の食後血中インスリン上昇抑制剤を医薬品やサプリメントとして用いる場合の投与形態としては、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等による経口投与又は注射剤、坐剤、吸入薬、経皮吸収剤、外用剤等による非経口投与が挙げられる。また、このような種々の剤型の医薬製剤やサプリメントを調製するには、本発明のリン脂質を単独で、又は他の薬学的に許容される賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、嬌味剤、香料、被膜剤、担体、希釈剤等を適宜組み合わせて用いることができる。これらの投与形態のうち、好ましい形態は経口投与であり、経口投与用製剤として用いる場合の該製剤中の本発明のリン脂質の含有量は、全組成中の0.1質量%〜100質量%、好ましくは1質量%〜100質量%、さらに好ましくは5質量%〜100質量%である。 本発明の食後血中インスリン上昇抑制剤を食品として用いる場合の形態としては、パン類、ケーキ類、麺類、菓子類、ゼリー類、冷凍食品、アイスクリーム類、乳製品、飲料などの各種食品の他、上述した経口投与製剤と同様の形態(錠剤、カプセル剤、シロップ等)が挙げられる。 種々の形態の食品を調製するには、本発明のリン脂質を単独で、又は他の食品材料や、溶剤、軟化剤、油、乳化剤、防腐剤、香科、安定剤、着色剤、酸化防止剤、保湿剤、増粘剤等を適宜組み合わせて用いることができる。当該食品中の本発明のリン脂質の含有量は、全組成中の0.1質量%〜30質量%、好ましくは1質量%〜25質量%、さらに好ましくは5質量%〜20質量%である。 本発明の食後血中インスリン上昇抑制剤を医薬品又は食品として使用する場合、成人1人当たりの1日の投与又は摂取量は、本発明のリン脂質として、例えば0.05〜50gとすることが好ましく、特に1〜10gであることが好ましい。また、本発明の食後血中インスリン上昇抑制剤は、食前・食中・食後に用いると効果的である。実施例1 リン脂質の食後血中インスリン上昇抑制作用 トリアシルグリセロールとしてトリオレイン(TAG)、リン脂質として、大豆レシチン(SLP-ホワイト、辻製油)、イカ由来のリン脂質を含む画分(以下、イカレシチン)を用いた。イカレシチンはイカミールより精製して用いた。 マウス(C57BL/6J雄、8週令)を1群8匹とし、グルコース2mg/g体重のみ、及びさらにトリオレイン(TAG)2mg/g体重を0.02mg/g体重を卵黄レシチンにより乳化させたもの(それぞれグルコース群、TAG群)、またはこの乳化物に0.4mg/g体重の大豆レシチンイカレシチンを添加したもの(それぞれ大豆レシチン群、イカレシチン群)を、ゾンデにより経口投与した。乳化物の組成を表1に示す。投与後30分まで、経時的に眼窩静脈より採血し、血中インスリンを測定し、グラフの曲線下面積(AUC)を算出した。インスリンは、ELISA法(インスリン測定キット、森永生化学研究所)により測定を行った。 グルコースのみ摂取したマウスのインスリンAUCを100とした、食後30分のインスリン分泌量の相対値を表2に示す。 表2の結果から、TAGを摂取することにより、グルコースだけを摂取した場合に比べて食後インスリン分泌量(血中濃度)が増加するが、大豆レシチン、イカレシチンを摂取したマウスでは、食後インスリン分泌量(血中濃度)が低く、食後血中インスリン濃度上昇分抑制効果が認められることがわかる。実施例2 リン脂質(精製品)の食後血中インスリン上昇抑制作用 トリアシルグリセロールとしてトリオレイン(TAG)、リン脂質として、ホスファチジルコリン(以下PC)(L-α-レシチン、CALBIOCHEM社製)、ホスファチジルエタノールアミン(以下PE)、ホスファチジルイノシトール(以下PI)、リゾホスファチジルコリン(以下LPC)、リゾホスファチジルエタノールアミン(以下LPE)、リゾホスファチジン酸(以下LPA)を用いた。なお、PE、PIは大豆レシチン(SLP−ホワイト、辻製油)より精製し、LPC、LPEはそれぞれPC、PEより酵素合成にて調整した。またLPAはホスファチジン酸(PCより酵素合成)より酵素合成にて調整した。 マウス(C57BL/6J雄、8週令)を1群8匹とし、グルコース2mg/g体重のみ、及びさらにトリオレイン(TAG)2mg/g体重を0.02mg/g体重を卵黄レシチンにより乳化させたもの(それぞれグルコース群、TAG群)、またはこの乳化物に0.4mg/g体重のPC、PE、PI、LPC、LPE、LPAを添加したもの(それぞれPC群、PE群、PI群、LPC群、LPE群、LPA群)を、ゾンデにより経口投与した。乳化物の組成を表3に示す。投与後30分まで、経時的に眼窩静脈より採血し、血中インスリンを測定し、グラフの曲線下面積(AUC)を算出した。インスリンは、ELISA法(インスリン測定キット、森永生化学研究所)により測定を行った。 グルコースのみ摂取したマウスのインスリンAUCを100とした、食後30分のインスリン分泌量の相対値を表4に示す。 表4の結果から、TAGを摂取することにより、グルコースだけを摂取した場合に比べて食後インスリン分泌量(血中濃度)が増加するが、PC、PE、PI、LPC、LPE、LPAを摂取したマウスでは、食後インスリン分泌量(血中濃度)が低く、食後血中インスリン濃度上昇分抑制効果が認められることがわかる。実施例3 製剤例(1)コーヒー飲料(2)キャンデー リン脂質を有効成分とする食後血中インスリン上昇抑制剤。 食後の過剰な血中インスリン濃度の上昇を抑制するものである請求項1記載の食後血中インスリン上昇抑制剤。 リン脂質がグリセロリン脂質又はグリセロリゾリン脂質である請求項1又は2記載の食後血中インスリン上昇抑制剤。 グリセロリン脂質がホスファチジルコリン及びホスファチジルエタノールアミンから選ばれる1種以上であり、グリセロリゾリン脂質がリゾホスファチジルコリン及びリゾホスファチジルエタノールアミンから選ばれる1種以上である請求項3記載の食後血中インスリン上昇抑制剤。 【課題】食後血中インスリン上昇抑制剤の提供。【解決手段】リン脂質を有効成分とし、リン脂質としては、グリセロリン脂質又はグリセロリゾリン脂質が挙げられ、グリセロリン脂質としては、例えばホスファチジルコリン及びホスファチジルエタノールアミンから選ばれる1種以上を、又グリセロリゾリン脂質としては、例えばリゾホスファチジルコリン及びリゾホスファチジルエタノールアミンから選ばれる1種以上を投与することによって、食後の血中インスリン濃度の上昇を良好な範囲内に抑制することが可能になる。【選択図】なし


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特許公報(B2)_食後血中インスリン上昇抑制剤

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_食後血中インスリン上昇抑制剤
出願番号:2006301888
年次:2012
IPC分類:A61K 31/685,A61P 3/10,A61P 3/04


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杉野 菜奈美 橋爪 浩二郎 下豊留 玲 渋谷 祐輔 目黒 真一 JP 5094094 特許公報(B2) 20120928 2006301888 20061107 食後血中インスリン上昇抑制剤 花王株式会社 000000918 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 杉野 菜奈美 橋爪 浩二郎 下豊留 玲 渋谷 祐輔 目黒 真一 20121212 A61K 31/685 20060101AFI20121121BHJP A61P 3/10 20060101ALI20121121BHJP A61P 3/04 20060101ALI20121121BHJP JPA61K31/685A61P3/10A61P3/04 A61K 31/00−31/80 A61P 3/00− 3/14 CAPLUS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) PubMed 糖尿病,2002年,Vol.45 (Suppl.2),p.S-210,II-G502-1-16 Biochem Biophys Res Commun,2005年,Vol.326,pp.744-51 1 2008115132 20080522 8 20090106 宮坂 隆 本発明は、医薬又は食品として有用な食後血中インスリン上昇抑制剤に関する。 通常、食後は、血糖値が上昇することから、インスリン分泌が促進され、脂肪・筋肉への糖取込みの促進、肝臓・筋肉での脂肪の合成促進、および脂肪の分解・燃焼抑制が起こる。しかし、高血糖状態が維持され、インスリンの分泌が続くと、インスリンの標的臓器である骨格筋、肝臓、脂肪組織でのインスリン感受性の低下(インスリン抵抗性)が生じ、さらに膵臓からインスリンがより多く分泌されるようになる。そして、インスリン分泌が繰り返されると、最終的に膵臓が疲弊し、膵β細胞からのインスリンの分泌が低下するが、各標的臓器のインスリン抵抗性は増大したままの状態となる。斯くしてインスリン作用機構が正常に機能しなくなると、肥満や糖尿病等になりやすい体質、更には肥満やII型糖尿病(高血糖症)等になることが知られている。 近年、食生活が変化し、消化されやすい食品や糖質を多量に含む飲料の摂取、或いは過食・早食等により、糖質の消化吸収が早まり食後血糖値が急激に上昇する結果、血中インスリン濃度が上昇することが多いと考えられる。 従来、食後の血糖上昇については、糖尿病の予防の観点からこれを抑制する試みが種々なされているが、食後の血中インスリン上昇を抑制することについては、積極的な取り組みがなされていないのが現状である。 一方、リン脂質は、生体膜を構成する主要な脂質であるが、乳化作用、酸化防止作用を有することから、食品添加物として、マーガリン、乳飲料、アイスクリーム、菓子類等に広く配合されている。また、近年、リン脂質には、動脈硬化などの血管性疾患の原因となる血中脂質の改善作用(特許文献1)、脂質代謝の改善作用(特許文献2)、コレステロール吸収抑制作用(特許文献3)、肝障害予防・改善作用(特許文献4、特許文献5)等の作用があることが報告されている。 しかしながら、リン脂質と食後血中インスリン濃度との関係については全く知られてはいない。特開2005-187476号公報特開2004-337177号公報特開2004-18591号公報特開平10-84879号公報特開2002-68998号公報 本発明は、医薬又は食品として有用な食後血中インスリン上昇抑制剤を提供することに関する。 本発明者等は、糖質及び脂質を含む食餌を与えたマウスにおいて、リン脂質を投与すると、投与しない場合に比べ食後血中インスリン濃度の過剰な上昇を抑制することを見出した。 すなわち、本発明は、リン脂質を有効成分とする食後血中インスリン上昇抑制剤に係るものである。 本発明によれば、食後の血中インスリン濃度の上昇を良好な範囲内に抑制できることから、インスリンの大量分泌に伴う、膵β細胞の疲弊やインスリン標的臓器のインスリン抵抗性を改善又は防止することができ、ひいては糖尿病(高血糖症)や肥満、これらの予備軍の予防や体質改善を行うことができる。 本発明のリン脂質としては、グリセロリン脂質、グリセロリゾリン脂質、スフィンゴリン脂質等のリン脂質成分の他、当該リン脂質を含む動植物等の適当な組織からの抽出分画、例えば、大豆、米、とうもろこし、菜種、綿実、小麦、落花生、ひまし、ヒマワリ、大麦、エンバク、紅花、ゴマ等の植物、卵黄、乳、魚介類等の動物の組織から抽出される抽出レシチン、精製レシチン、更には酵素処理等による加工レシチン等が挙げられ、これらを単独で用いる他、2種以上混合して使用することができる。 このうち、グリセロリン脂質、グリセロリン脂質を含む動植物性の抽出レシチンを使用するのが好ましい。 グリセロリン脂質としては、例えば、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸等が挙げられ、このうち、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリンが好ましい。 グリセロリゾリン脂質としては、例えば、リゾホスファチジン酸、リゾホスファチジルセリン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン等が挙げられ、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミンが好ましい。 スフィンゴリン脂質としては、スフィンゴミエリン、スフィンゴシン−1−リン酸等が挙げられる。 本発明のリン脂質は、動植物等の組織から抽出・単離、あるいは化学合成により、入手することが可能である。またSLP-ホワイト(辻製油)等の市販品を用いることもできる。 化学合成法としては、例えば、ジグリセリドのリン酸エステル化、モノグリセリドのリン酸エステル化、グリセロリン酸の脂肪酸エステル化等が挙げられる。また、リゾリン脂質は、リン脂質をホスホリパーゼA2等の酵素で処理することにより製造することができる。 後記実施例に示すように、リン脂質は、トリアシルグリセロール(以下TAGともいう)と共に摂取した場合に、グルコースとトリアシルグリセロールの同時摂取による血中インスリン濃度の上昇を有意に抑制する作用を有する。従って、リン脂質は、食後血中インスリン上昇抑制剤として使用することができ、また、当該食後血中インスリン上昇抑制剤を製造するために使用することができる。 斯かる食後血中インスリン上昇抑制剤は、糖尿病(高血糖症)、肥満等の予防・改善効果を発揮し得る、ヒト若しくは動物用の医薬品、医薬部外品又は食品として使用可能である。 また、当該食後血中インスリン上昇抑制剤は、食後の過剰な血中インスリン濃度の上昇抑制をコンセプトとし、必要に応じてその旨を表示した美容食品、病者用食品若しくは特定保健用食品等の機能性食品として使用することができる。 なお、「食後の血中インスリン上昇抑制」とは、脂質及び糖質を含む食事、特に脂質を多く含む食事、そのなかでもトリアシルグリセロールを多く含む食事を摂取することに伴う血中インスリン濃度の過剰な上昇を抑制することをいう。ここで、「過剰な」とは、糖質のみを摂取した場合を指標としたときにそれ以上に食後インスリン濃度が上昇する場合をいう。 本発明の食後血中インスリン上昇抑制剤を医薬品やサプリメントとして用いる場合の投与形態としては、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等による経口投与又は注射剤、坐剤、吸入薬、経皮吸収剤、外用剤等による非経口投与が挙げられる。また、このような種々の剤型の医薬製剤やサプリメントを調製するには、本発明のリン脂質を単独で、又は他の薬学的に許容される賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、嬌味剤、香料、被膜剤、担体、希釈剤等を適宜組み合わせて用いることができる。これらの投与形態のうち、好ましい形態は経口投与であり、経口投与用製剤として用いる場合の該製剤中の本発明のリン脂質の含有量は、全組成中の0.1質量%〜100質量%、好ましくは1質量%〜100質量%、さらに好ましくは5質量%〜100質量%である。 本発明の食後血中インスリン上昇抑制剤を食品として用いる場合の形態としては、パン類、ケーキ類、麺類、菓子類、ゼリー類、冷凍食品、アイスクリーム類、乳製品、飲料などの各種食品の他、上述した経口投与製剤と同様の形態(錠剤、カプセル剤、シロップ等)が挙げられる。 種々の形態の食品を調製するには、本発明のリン脂質を単独で、又は他の食品材料や、溶剤、軟化剤、油、乳化剤、防腐剤、香科、安定剤、着色剤、酸化防止剤、保湿剤、増粘剤等を適宜組み合わせて用いることができる。当該食品中の本発明のリン脂質の含有量は、全組成中の0.1質量%〜30質量%、好ましくは1質量%〜25質量%、さらに好ましくは5質量%〜20質量%である。 本発明の食後血中インスリン上昇抑制剤を医薬品又は食品として使用する場合、成人1人当たりの1日の投与又は摂取量は、本発明のリン脂質として、例えば0.05〜50gとすることが好ましく、特に1〜10gであることが好ましい。また、本発明の食後血中インスリン上昇抑制剤は、食前・食中・食後に用いると効果的である。実施例1 リン脂質の食後血中インスリン上昇抑制作用 トリアシルグリセロールとしてトリオレイン(TAG)、リン脂質として、大豆レシチン(SLP-ホワイト、辻製油)、イカ由来のリン脂質を含む画分(以下、イカレシチン)を用いた。イカレシチンはイカミールより精製して用いた。 マウス(C57BL/6J雄、8週令)を1群8匹とし、グルコース2mg/g体重のみ、及びさらにトリオレイン(TAG)2mg/g体重を0.02mg/g体重を卵黄レシチンにより乳化させたもの(それぞれグルコース群、TAG群)、またはこの乳化物に0.4mg/g体重の大豆レシチンイカレシチンを添加したもの(それぞれ大豆レシチン群、イカレシチン群)を、ゾンデにより経口投与した。乳化物の組成を表1に示す。投与後30分まで、経時的に眼窩静脈より採血し、血中インスリンを測定し、グラフの曲線下面積(AUC)を算出した。インスリンは、ELISA法(インスリン測定キット、森永生化学研究所)により測定を行った。 グルコースのみ摂取したマウスのインスリンAUCを100とした、食後30分のインスリン分泌量の相対値を表2に示す。 表2の結果から、TAGを摂取することにより、グルコースだけを摂取した場合に比べて食後インスリン分泌量(血中濃度)が増加するが、大豆レシチン、イカレシチンを摂取したマウスでは、食後インスリン分泌量(血中濃度)が低く、食後血中インスリン濃度上昇分抑制効果が認められることがわかる。実施例2 リン脂質(精製品)の食後血中インスリン上昇抑制作用 トリアシルグリセロールとしてトリオレイン(TAG)、リン脂質として、ホスファチジルコリン(以下PC)(L-α-レシチン、CALBIOCHEM社製)、ホスファチジルエタノールアミン(以下PE)、ホスファチジルイノシトール(以下PI)、リゾホスファチジルコリン(以下LPC)、リゾホスファチジルエタノールアミン(以下LPE)、リゾホスファチジン酸(以下LPA)を用いた。なお、PE、PIは大豆レシチン(SLP−ホワイト、辻製油)より精製し、LPC、LPEはそれぞれPC、PEより酵素合成にて調整した。またLPAはホスファチジン酸(PCより酵素合成)より酵素合成にて調整した。 マウス(C57BL/6J雄、8週令)を1群8匹とし、グルコース2mg/g体重のみ、及びさらにトリオレイン(TAG)2mg/g体重を0.02mg/g体重を卵黄レシチンにより乳化させたもの(それぞれグルコース群、TAG群)、またはこの乳化物に0.4mg/g体重のPC、PE、PI、LPC、LPE、LPAを添加したもの(それぞれPC群、PE群、PI群、LPC群、LPE群、LPA群)を、ゾンデにより経口投与した。乳化物の組成を表3に示す。投与後30分まで、経時的に眼窩静脈より採血し、血中インスリンを測定し、グラフの曲線下面積(AUC)を算出した。インスリンは、ELISA法(インスリン測定キット、森永生化学研究所)により測定を行った。 グルコースのみ摂取したマウスのインスリンAUCを100とした、食後30分のインスリン分泌量の相対値を表4に示す。 表4の結果から、TAGを摂取することにより、グルコースだけを摂取した場合に比べて食後インスリン分泌量(血中濃度)が増加するが、PC、PE、PI、LPC、LPE、LPAを摂取したマウスでは、食後インスリン分泌量(血中濃度)が低く、食後血中インスリン濃度上昇分抑制効果が認められることがわかる。実施例3 製剤例(1)コーヒー飲料(2)キャンデー 大豆レシチン、イカレシチン及びホスファチジルエタノールアミンから選ばれる1種以上のリン脂質を有効成分とする、脂質及び糖質を含む食事を摂取した後の過剰な血中インスリン濃度の上昇を抑制する食後血中インスリン上昇抑制剤。


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