生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_酵素を用いたバイオセンサーおよびその製造方法
出願番号:2006301619
年次:2008
IPC分類:G01N 27/327,C12M 1/34,G01N 33/50,G01N 33/543


特許情報キャッシュ

小駒 喜郎 大口 正勝 JP 2008116396 公開特許公報(A) 20080522 2006301619 20061107 酵素を用いたバイオセンサーおよびその製造方法 国立大学法人信州大学 504180239 小駒 喜郎 大口 正勝 G01N 27/327 20060101AFI20080425BHJP C12M 1/34 20060101ALI20080425BHJP G01N 33/50 20060101ALN20080425BHJP G01N 33/543 20060101ALN20080425BHJP JPG01N27/30 353BG01N27/30 353PC12M1/34 EG01N33/50 ZG01N33/543 593 9 OL 14 特許法第30条第1項適用申請有り (発行者名) 社団法人 高分子学会 (刊行物名) 高分子学会年次大会予稿集 (巻数・号数)55巻1号 (発行年月日)平成18年5月10日 2G045 4B029 2G045AA40 4B029AA07 4B029BB16 4B029CC03 4B029FA13 本発明は、酵素の選択的かつ特異的な反応性による優れた分子認識機能を利用して、生体的な反応や、その活性度などを評価するバイオセンサー、およびその製造方法に関するものである。 酵素をバイオセンサーに利用する際に用いられる酵素の固定化方法としては、共有結合法、イオン結合法、物理的吸着法、生化学的特異結合法、架橋法などがあるが、敏感で不安定な酵素の特性に適合する方法としては、イオン結合法が好ましい。 このイオン結合法は物質間の静電気引力によるため、穏和な条件下に処理ができ、酵素への負荷が少ない。なお、酵素のようなタンパク質の電極への直接固定化には吸着変性や電気化学的変性が起こりうるため、タンパク質と電極との間にイオン性高分子層を形成し、高分子層が様々な刺激からタンパク質を保護する役割を果たす方法が提唱されている。非特許文献1に示すDecherらの交互積層法といわれる方法がその例である。 この方法はKunitakeらにより各種のタンパク質膜作製に応用され、さらにZhengらの酵素固定化法へと発展してきた。非特許文献2および3にその例を示す。 しかしながら交互積層法では、酵素自体がイオン性高分子と強い電気的相互作用を示すか、物理的化学的にイオン性高分子と強い親和性を有する構造をもたないと、バイオセンサーとして充分な機能を示す吸着量を得がたい。 これらに関連する技術として本発明と直接関連するものはないが、酵素を電極に保持した酵素電極に関する特許は少なくない。 特許文献1には、タンパク質と他のタンパク質との相互作用の解析を電気化学的手法を利用して行う、という課題に対し、基板表面にタンパク質が固定されていることを特徴とする、該表面のタンパク質と特異的な結合を形成するタンパク質を検出するためのタンパクチップが提案されている。しかしながら本方法においては、タンパク質が基板表面上にチオールなどを介して実質的に直接固定されており、タンパク質の変性を充分に抑止しきれない。 特許文献2は電極に近い部分の酵素濃度を高め、測定精度を高めようとしたものであり、特許文献3は電極をスクリーン印刷したものである。これらにおいても電極上における酵素の変性抑制や耐久性については充分ではなく、バイオセンサーあるいは酵素電極としての使用上の制約を充分に解消するものとはなり得ていない。特開2001−242116号公報特開昭57−107853号公報特開平06−78791号公報Lvov Y., Essler F., Decher G.,J. Phys. Chem. 97,13773(1993)Yri Lov, Katsuhiko Ariga, Izumi Ichinose, ToyokiKunitake, J. Am. Chem. Soc., 117(1995)Hitao Zheng, Hideo Okada, Syu Nojima,Shin-ichiro Suye, Teruo Hori, Sci. Tech. Adv. Materials, 5, 371(2004) 従来の技術により、酵素は安定的に電極に固定化されるようになっては来たものの、そのバイオセンサーとしての感度と、繰り返し測定における安定性は依然充分ではない。本発明者らは上述の欠点を改良する方法として本発明に至った。 本発明は、酵素の保護層となる最外層のイオン性高分子に、その電荷を中和しない範囲内の酵素を含包せしめ、バイオセンサーとして機能するに充分な酵素量を担持させたバイオセンサーを提唱するものである。繰り返し使用における耐久性をより高めるため、酵素を含包するイオン性高分子層を、その反対のイオン性を有するイオン性高分子でさらに被覆製膜処理したバイオセンサー、そのバイオセンサーの製造方法、さらにはそのバイオセンサーを利用したサイクリック・ボルタンメトリー測定装置を提供することを目的とする。 本発明では、酵素をバイオセンサーに利用する際の酵素の固定化方法として、穏和な条件下で処理することができ、酵素の負担が少ないイオン結合法を採択する。 前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載されたバイオセンサーは、表面をイオン化処理した固体担体に、酵素を含包し該固体担体とは異なるイオン性を有する高分子の被膜と、該酵素を含包した高分子とは異なるイオン性を有する高分子の被膜とが、順次形成されていることを特徴とする。 請求項2に記載のバイオセンサーは、請求項1に記載されたもので、前記固体担体と前記酵素を含包した高分子の被膜との間に、さらに前記固体担体とは異なるイオン性を有する高分子の被膜が少なくとも1層形成されていることを特徴とする。 請求項3に記載のバイオセンサーは、請求項1に記載されたもので、前記固体担体が金であることを特徴とする。 請求項4に記載のバイオセンサーは、請求項1に記載されたもので、前記酵素がヘムタンパク質であることを特徴とする。 請求項5に記載のバイオセンサーは、請求項4に記載されたもので、前記ヘムタンパク質がシトクロームP450酵素群の中のシトクロームP450−3A4であることを特徴とする。 同じく特許請求の範囲の請求項6に記載のバイオセンサーの製造方法は、表面修飾剤により固体担体の表面をイオン化し、次いで該固体担体の表面に、酵素を含包し該固体担体とは異なるイオン性を有する高分子の被膜と、該酵素を含包した高分子とは異なるイオン性を有する高分子の被膜とを、順次形成することを特徴とする。 請求項7に記載のバイオセンサーの製造方法は、請求項6に記載されたもので、前記表面修飾剤が、メルカプト基またはスルフィド基を有する有機化合物であることを特徴とする。 請求項8に記載のバイオセンサーの製造方法は、請求項6に記載されたもので、さらに、不活性ガス雰囲気下において、−30℃から50℃で0.5時間から1日の間エージング処理を行うことを特徴とする。 同じく特許請求の範囲の請求項9に記載のサイクリック・ボルタンメトリー測定装置は、請求項1〜5のいずれかに記載のバイオセンサーからなる作用極と対極と参照極とが測定試料溶液に投入されてなる電解系セルと、加電圧のポテンショスタット回路と、電流測定・処理回路と、記録計とから構成されたことを特徴とする。 本発明の実施により、バイオセンサーとしての酵素は実質的にいかなる変性も受けることなく、本来有する活性を保持したまま、充分な量が固体担体に保持される。酵素の中でもとりわけ鉄イオンを含むポルフォリン構造を有するヘムタンパク質の場合は、酵素の選択的かつ特異的な反応性を利用して血液中薬剤などの基質を認識して電気信号に変換し、基質の分析を容易かつ高精度なものにする。 また、本発明のバイオセンサーをサイクリック・ボルタンメトリー測定に供することにより、薬物を始めとする外来性異物が生体に与える影響を精度良く安定して分析することが可能になる。 本発明に用いる固体担体としては各種の高分子、ガラスはじめ各種のセラミックス、各種金属成形体などがあり特に限定されるものではないが、とりわけ酵素の分子認識による電気信号を測定する金が有益である。 前記固体担体の表面をイオン化処理する方法としては、メルカプト基またはスルフィド基を有する有機化合物のような表面修飾剤を用いた変性が一般的に用いられる。例えば、清潔な金表面を、メルカプト安息香酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプト琥珀酸、ジメチルメルカプト琥珀酸、2−メルカプトエタンスルフォン酸、4−ピリジルチオエタノイックアシッド、チオジエタノイックアシッド、3,3’−チオビスプロパノイックアシッドなどで処理することによるアニオン化、p−メルカプトアニリンで処理して変性するカチオン化などである。 イオン化された担体に反対のイオン性を有するイオン性高分子を被覆製膜処理する方法において、カチオン性高分子としては第1、第2あるいは第3アミノ基およびこれらのアンモニウム基、ピリジニウム基、スルホニウム基、フォスホニウム基などを分子中にもつ高分子が例示されるが、具体的には、ポリエチレンイミン、アミノアセタール化ポリビニルアルコール、イオネンポリマー、ポリ[(ジメチルイミノ)エチレン(ジメチルイミノ)メチレン−1,4−フェニレン−メチレンジクロリド]、ポリ−L−リシンおよびその塩、ポリジアルキルジアリルアンモニウム塩、ジアルキルジアリルアンモニウム塩−SO2共重合体、N−トリアルキルアミノメチルポリスチレン、ポリ−4−ビニルピリジンおよびその塩、ポリ−4−ビニルイミダゾール、キトサンおよびその塩、ポリビニルベンジルス ルフォニウム塩、ポリビニルベンジルホスホニウム塩などが挙げられる。 アニオン性高分子としては、カルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基などのアニオン性基を有する高分子で、具体的にはポリアクリル酸およびその塩、ポリメタクリル酸およびその塩、ペクチン酸、アルギン酸、ポリ−L−グルタミン酸およびその塩、ヒアルロン酸、ポリスチレンスルホン酸およびその塩、部分スルホン化ポリスチレン、ポリエチレンスルホン酸、ポリビニル硫酸塩、グリオキシル酸による部分アセタール化ポリビニルアルコールなどが挙げられる。 なお、分子鎖中にカチオン基とアニオン基とをともに有する両性高分子電解質、例えば4−ビニルピリジン−メタクリル酸共重合体、ポリ−4−ビニルピリジンベタイン、ポリスルホベタインなどが、イオン性高分子として単独あるいは他のイオン性高分子とともに用いられても差し支えない。 前記固体担体への前記イオン性高分子の被覆製膜処理として、高分子溶液による例えば浸漬法、滴下法、流延法によって前記固体担体の表面に前記イオン性高分子の薄膜を形成する。前記高分子の被膜は、イオン性高分子の種類によって変わるが、膜厚5ナノメートル〜50ナノメートルであると好ましい。 本発明で使用できる酵素は特に限定されるものではないが、等電点が5.5以下の酸性酵素、同5.6から8.4の範囲の中性酵素、同8.5以上の塩基性酵素が挙げられる。酸性酵素としては例えば亜硝酸レダクターゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、シトクロームP−450類の酵素群たとえばシトクロームP450scc、シトクロームP450−2B4、シトクロームP450−3A4などの酸化還元酵素、チミジル酸シンテターゼのような転移酵素、アミノペプチターゼ、アミラーゼ、アルカリフォスファターゼ、ウレアーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、アスパラギナーゼなどの加水分解酵素など、中性酵素としてはカタラーゼ、ルシフェラーゼのような酸化還元酵素、DNAポリメラーゼ、ピルビン酸キナーゼ、クレアチンキナーゼのような転移酵素、ホスホリパーゼC、ホスホリラーゼのような加水分解酵素など、塩基性酵素としてはガラクトースオキシダーゼのような酸化還元酵素、リボヌクレアーゼA、アシルフォスファターゼ、パパインのような加水分解酵素、エノラーゼ、フマル酸ヒドラターゼのような脱離触媒酵素などが挙げられる。 本発明において、前記固体担体が表面をアニオン化処理したサイクリック・ボルタンメトリー測定用の金電極であり、前記酵素を含包するイオン性の高分子がカチオン性高分子であり、かつ前記酵素が酸性のヘムタンパク質であることが最も好ましい組み合わせである。この条件下で最も好ましい酵素はシトクロームP−450類の酵素であり、とりわけシトクロームP450−3A4であるとなお好ましい。このシトクロームP450−3A4は、酵素としては基質特異性が著しく低いもので、臨床医療で使用される薬物の半数以上の代謝を行っている。従ってこのシトクロームP−450−3A4をバイオセンサーに用いることは、薬物を始めとする外来性異物が生体に与える影響を分析するのに極めて有用性が高い。 前記酵素は、リン酸カリウム系緩衝水溶液の酵素溶液とイオン性高分子の水溶液とを混合によってイオン性高分子に含包され、固定化される。 本発明においては、酵素を包含する最外層のイオン性高分子をさらに異なるイオン性高分子で被覆製膜処理して酵素の脱落を防ぎ、得られるバイオセンサーによる繰り返し測定の耐久性を高める。この場合、酵素含包の被覆製膜金電極を酵素の変性を誘起しない温度範囲で数時間エージングすると、耐久性はさらに高まる。 次いで、本発明のバイオセンサー、およびそのバイオセンサーを電極として使用したサイクリック・ボルタンメトリー測定装置について、図面を参照しながら説明する。 実施例で示す金担体への表面アニオン化剤(3−メルカプトプロピオン酸、3−MPと略す)、カチオン性高分子、および酵素であるシトクロームP450(CYP)の吸着量計測は、図1で示すビアコア11で行った。ビアコア11は、マイクロ流露系12、センサーチップ13、ガラス14、リガント15、光源16および受光部17で構成されている。ビアコア11では該3−MP、カチオン性高分子およびCYPはそれぞれ濃度と量が(3−MP)500μg/mL、50μL;(カチオン性高分子)50μg/mL、50μL;(CYP)30μg/mL、30μLの各水溶液として測定に供され、これらはマイクロ流路系12と呼ばれる細い流路を通って金担体である表面積1.2mm2のセンサーチップ13表面を流された。この操作によりセンサーチップ13表面は3−MPによってアニオン化され、次いでアニオン化されたセンサーチップ13表面にカチオン性高分子と酵素とを流すことで、酵素含包高分子の被膜を形成した。 センサーチップ13表面に分析される試料18すなわちカチオン性高分子および酵素と化学結合する分子すなわち3−MPが固定されている場合は、センサーチップ13表面で結合反応が起こりセンサーチップ13表面の吸着量が増加する。試料18が流れ終わった後にランニング溶液が流されると吸着物質の解離反応で表面吸着量が減少するが、解離反応が平衡に達した所の吸着量が、分析される試料18の吸着量である。 以上の吸着・解離過程での表面吸着量の増減は、表面プラズモン共鳴を利用した検出システムによって測定し、吸着量をレスポンスRU(1000RU=1ng/mm2)として示す。レスポンスを時間に対してプロットしたものがセンサーグラムである。このセンサーグラムを、図2に示す。 また得られたセンサーグラムでの吸着・解離過程を解析し、フィッティングによる近似を行うと結合定数KA(単位はM−1)が得られる。KAの大きさは吸着での親和性の高さを表す。 金電極に吸着した試料による電気化学的挙動の測定は、図3に示すサイクリック・ボルタンメトリー法(CV法)によって行った。具体的には図3に示すように、セル22、作用極23、対極24、参照極25、電解系31、電流測定・処理回路32、ポテンショスタット回路35および記録計34で構成して測定した。作用極23は、直径1.6mmの円形表面を有する金電極27が形成されている。対極24は、白金で形成されている。参照極25は、銀―塩化銀の水系参照極で形成されている。 その金電極27の金表面を粒径50μmのアルミナで研磨して清浄な金表面を得た後、これを10mMの3−MP2mL液に3分間浸漬し、軽く表面をふき取った。次いで該3−MP溶液へさらに10分間金表面を浸浸してから超純水で洗い流し、窒素ガスで乾燥する処理を2回繰り返して金表面へ3−MPの自己集積単分子膜を形成し、金表面に3−MPによる負電荷を導入した。 その後、積層させるカチオン性高分子あるいは酵素を含有したカチオン性高分子を被覆製膜処理し、更に互いに相異なるイオン性を有するイオン性高分子およびまたは酵素あるいは酵素を含有したイオン性高分子で、順次多層に被覆製膜処理した。イオン性高分子あるいは酵素での3−MP変性金表面への被覆性膜処理は、カチオン性高分子の場合は10mg/mL、アニオン性高分子の場合は5mg/mL、酵素の場合は0.02mMの各水溶液10μLを金表面に滴下し15分間放置後に超純水で洗い流し、窒素ガスで乾燥させ、さらに同様の滴下、洗浄、乾燥を繰り返して被覆製膜処理を行った。こうして被覆製膜処理した金電極27上へ超純水20μLを滴下し、4℃下に30分間放置して被覆膜を安定化し、CV測定に供した。 こうして調整した電極を測定液である超純水に浸し、電位を直線的に繰り返し掃引した。電位の変化は図4−aの様に0→−0.5→0とし、各電位において流れる電流を計測し図4−bのサイクリック・ボルタモグラムを得た。これを解析し、物質の酸化還元電位、電極反応の可逆・不可逆性などの情報を得た。 酸化還元電流の大きさは、反応に関与している酸化還元種の量、すなわち電極へ吸着し電子伝達反応が可能な状態にある酵素の量に対応している。また酸化還元ピーク電位においては、酸化ピーク電位と還元ピーク電位が近いほど、酸化還元反応の可逆性が良く、センサーとして用いた際に迅速な測定が可能なことを示す。酸化ピーク電位と還元ピーク電位の中間電位は、その酸化還元種の酸化還元電位を示す。 これらの関係を、図5に示す。(実施例1) 3−MPの50μg/mL水溶液の50μLを23℃にて10μL/minの流速で2回流し、ビアコアの金センサー表面をアニオン化した。次いでカチオン性高分子としてポリ(L−リシンアンモニウム塩)(PLLと略す)の50μg/mL水溶液を10μL/minで2回流して被覆製膜処理した。ついでCYPの30μg/mL水溶液を10μL/minで2回流してCYPを被覆処理した。これらの積層過程をビアコアによってモニターしてセンサーグラムを得た。その結果を図6に示す。図6の中のAおよびBは、3−MPの流れ始めを示し、Cは、PLLの流れ始めを示し、Dは、CYPの流れ始めを示す。 一方で本発明の請求項に該当するものとして、PLLの50μg/mL溶液とCYPの15μg/mL溶液とを同量混合し、酵素CYPがカチオン性高分子PLLに含包されたもの50μLを、3−MPでアニオン化した金センサー表面に流した場合のセンサーグラムも得た。結果を図7に示す。図7の中のAおよびBは、3−MPの流れ始めを示し、Cは、PLL+CYP3A4の流れ始めを示す。 上記の2つのセンサーグラムからPLLとCYPを順次積層して製膜した場合の積層量はPLLが406RU、CYPは37URであった。一方、本発明のCYPをPLLに包含させた方法ではPLLとCYPの合計量で1288RUとなり、この値からPLLだけを積層した場合の406RUを差し引くと、CYPだけでは882RUと計算される。本発明の方法による酵素CYPの金センサー上の吸着量は、順次積層の場合の実に24倍となった。 ビアコアでの吸着・解離過程の解析で求めた結合定数KAは順次積層のPLLで6.41×106/Mであったのに対し、CYP含包PLLは6.10×109/Mであり、CYP含包PLLの3−MP変性表面への親和性が高いことを示した。 次にCVの測定を、順次積層とCYP包含PLLについて行った。但しCYP含包PLLの調整においては10mg/LのPLLに対してCYPは0.01mM水溶液で調合した。順次積層法とCYP含法PLLの電気化学反応をサイクリック・ボルタモグラムとして図8に一括して示す。図8の中のAは還元ピークを示し、Bは酸化ピークを示す。順次積層法においては酸化還元の電極応答がほとんど検出できなかったのに対して、本発明によるCYP含法PLLでは良好な電極応答が示された。該方法での酸化還元電位は0.31Vであった。(実施例2) 3−MPでアニオン変性した金電極に、CYP包含PLLを被覆製膜処理したCYP固定化電極について、薬物などの基質が及ぼす影響をCV法で測定した。 該CV法による測定では、測定溶液を純水ではなく0.01mg/mLの基質を含む10%ジメチルスルフォアミド水溶液を用いた。基質としては不整脈薬である化1に示すリドカイン、または、ホルモン剤の化2に示すテストステロンを用いた。 該薬物2種を作用させた場合のサイクリック・ボルタモグラムを図9に示す。 リドカインの存在によって酸化と還元の各ピーク電位はいずれも約70mV高電位側にシフトし、酸化還元電位はリドカインがない場合の−0.29から−0.22へ変化した。テストステロンの存在は酸化還元ピークの変化はきわめて少なかった。これはCYPとテストステロンの相互作用が小さことを示す。なお、データは割愛したが、基質としてカルシウム拮抗薬のニフェジピンを作用させた場合は、酸化還元ピークが消失する傾向が示された。 以上の結果から、薬物などの基質の種別と量がサイクリック・ボルタモグラムの解析によって分析できることが示された。(実施例3) 3−MPでアニオン変性した金電極にCYP含包PLLを被覆製膜処理した場合は、CYPの活性が維持されているが、繰り返しのCV測定で電極応答は次第に低減した。この結果を、図10に示す。 繰り返し測定での耐久性向上を図り、CYP含包PLL膜の外層を反対のイオン性を有するアニオン性高分子であるポリ−L−グルタミン酸ナトリウム塩(PLG)によって被覆製膜処理した。PLGによる被覆性膜処理の方法は、5mg/mLのPLG水溶液によりPLLの場合と同様に電極面に処理した。得られた電極によるCV測定の結果を図11に示す。実施例の電極は、明らかに測定耐久性の改善が認められた。さらに繰り返し測定での耐久性を高めるため、PLGによる該変性電極を−20℃で12時間エージングした。得られた電極によるCV測定の結果を図12に示す。エージングした電極は、より測定耐久性が向上した。ビアコアの測定法を示す模式図である。本発明の実施例における試料の吸着量と時間との関係を示すセンサーグラムである。サイクリック・ボルタンメトリーの測定方法を示す概略図である。本発明の実施例で得られたサイクリック・ボルタモグラムである。本発明の実施例で得られたサイクリック・ボルタモグラムである。本発明を適用する実施例1における、3−MP/PLL/CYP順次積層膜のビアコアセンサーグラムである。本発明を適用する実施例1における、3−MP/CYP含包PLLのビアコアセンサーグラムである。本発明を適用する実施例1における、3−MP/PLL/CYP順次積層膜と3−MP/CYP含包PLL膜とのサイクリック・ボルタモグラムである。本発明を適用する実施例2において、薬物2種を作用させたCYP固定化電極のサイクリック・ボルタモグラムである。本発明を適用する実施例3における、CYP含包PLL固定化電極のサイクリック・ボルタモグラムである。本発明を適用する実施例3における、CYP含包PLG固定化電極のサイクリック・ボルタモグラムである。本発明を適用する実施例3における、CYP含包PLG固定化電極の別なサイクリック・ボルタモグラムである。符号の説明 11はビアコア、12はマイクロ流露系、13はセンサーチップ、14はガラス、15はリガント、16は光源、17は受光部、18は試料、22はセル、23は作用極、24は対極、25は参照極、26は測定溶液、27は金電極、31は電解系、32は電流測定・処理回路、34は記録計、35はポテンショスタット回路である。 表面をイオン化処理した固体担体に、酵素を含包し該固体担体とは異なるイオン性を有する高分子の被膜と、該酵素を含包した高分子とは異なるイオン性を有する高分子の被膜とが、順次形成されていることを特徴とするバイオセンサー。 前記固体担体と前記酵素を含包した高分子の被膜との間に、さらに前記固体担体とは異なるイオン性を有する高分子の被膜が少なくとも1層形成されていることを特徴とする請求項1に記載のバイオセンサー。 前記固体担体が金であることを特徴とする請求項1に記載のバイオセンサー。 前記酵素がヘムタンパク質であることを特徴とする請求項1に記載のバイオセンサー。 前記ヘムタンパク質がシトクロームP450酵素群の中のシトクロームP450−3A4であることを特徴とする請求項4に記載のバイオセンサー。 表面修飾剤により固体担体の表面をイオン化し、次いで該固体担体の表面に、酵素を含包し該固体担体とは異なるイオン性を有する高分子の被膜と、該酵素を含包した高分子とは異なるイオン性を有する高分子の被膜とを、順次形成することを特徴とするバイオセンサーの製造方法。 前記表面修飾剤が、メルカプト基またはスルフィド基を有する有機化合物であることを特徴とする請求項6に記載のバイオセンサーの製造方法。 さらに、不活性ガス雰囲気下において、−30℃から50℃で0.5時間から1日の間エージング処理を行うことを特徴とする請求項6に記載のバイオセンサーの製造方法。 請求項1〜5のいずれかに記載のバイオセンサーからなる作用極と対極と参照極とが測定試料溶液に投入されてなる電解系セルと、加電圧のポテンショスタット回路と、電流測定・処理回路と、記録計とから構成されたことを特徴とするサイクリック・ボルタンメトリー測定装置。 【課題】 酵素の保護層となる最外層のイオン性高分子に、その電荷を中和しない範囲内の酵素を含包せしめ、バイオセンサーとして機能するに充分な酵素量を担持させたバイオセンサーを提唱する。繰り返し使用における耐久性をより高めるため、酵素を含包するイオン性高分子層を、その反対のイオン性を有するイオン性高分子でさらに被覆製膜処理したバイオセンサー、そのバイオセンサーの製造方法、さらにはそのバイオセンサーを利用したサイクリック・ボルタンメトリー測定装置を提供する。 【解決手段】 バイオセンサーは、表面をイオン化処理した固体担体に、酵素を含包し該固体担体とは異なるイオン性を有する高分子の被膜と、該酵素を含包した高分子とは異なるイオン性を有する高分子の被膜とが、順次形成されているものである。【選択図】 なし


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