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タイトル:特許公報(B2)_核酸濃度の判定方法及び核酸分析方法
出願番号:2006298366
年次:2012
IPC分類:C12N 15/09


特許情報キャッシュ

前田 耕史 福薗 真一 菅野 康吉 JP 4878263 特許公報(B2) 20111209 2006298366 20061102 核酸濃度の判定方法及び核酸分析方法 株式会社日立ハイテクノロジーズ 501387839 栃木県 591100563 ポレール特許業務法人 110000350 前田 耕史 福薗 真一 菅野 康吉 20120215 C12N 15/09 20060101AFI20120126BHJP JPC12N15/00 A C12N15/00−15/90 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) CAplus/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) WPI The Nucleic Acid Protocols Handbook,2000年,57-60 11 2008113583 20080522 16 20090415 神谷 昌男 本発明は、吸光度測定法を用いて検査試料中の核酸濃度を判定する方法、検査方法およびその装置に関する。 生体試料より抽出した核酸を用いて遺伝子検査を行う場合、核酸量が検査精度、検査成功率に大きく関わる。例えば、PCR−SSCP法により検査領域を増幅し、増幅した対立遺伝子の量比を検査するLOH検査の場合、ゲノムDNA量が低下すると正確な検査結果が得られない。そこで検査結果の信頼性を維持するために、定量性の高い濃度測定が必要である。また、DNAシーケンサを用いるフラグメント解析において、ある一定値以上の核酸濃度の検査試料を用いた場合、測定値が検出レンジを超過するため、検査試料を希釈して再度解析しなければならない。また、個人鑑定におけるSTR検査では、STR反応の確実性を高めるため、ヒトゲノムDNAで0.25ng〜2ng程度の狭い範囲での核酸試料溶液濃度が要求される(非特許文献1)。 上記例に示すように検査試料の核酸濃度が検査結果に影響する場合、検査試料中の核酸濃度の測定が必要である。従来の核酸濃度の測定方法としては2本鎖核酸または1本鎖核酸に特異的に結合する蛍光物質を用いた蛍光発光測定法や蛍光分子の結合したプローブを核酸にハイブリダイゼーションする方法を用いた核酸濃度測定法や、プローブをハイブリダイゼーションし、増幅反応後、増幅反応の副産物であるピロリン酸を化学発光法や電気化学的に検出する方法等が用いられている。これらの測定法は、検査試料中に蛋白等の混入があっても極めて高い精度で核酸濃度を測定できる。しかし、測定に試薬の添加が必要なため測定コストが高く、また、検査試料が測定範囲に入らない場合、検査試料の濃度を変えて再測定を行う必要があり、測定に手間や時間のかかる方法である。また、濃度を測定した後に濃度測定に用いた検査試料は検査に使用できず、希少な検査試料の損失に繋がる問題があった。 一方、吸光度測定法は、検査試料の吸光度を測定し、波長260nmにおける吸光度(以下、A260)から核酸濃度を換算できる。また、波長260nmと波長280nmの吸光度比(以下、A260/A280)から核酸純度を評価できる(非特許文献2)。当該試料に、蛋白成分が混入した場合は、波長280nmの吸光度が上昇し、糖質、ペプチド、低分子成分が混入した場合は、波長230nmでの吸光度が上昇する(非特許文献3)。当該測定法は簡便で試薬添加の必要もない低コストな方法であるが、検査試料中の蛋白成分や糖質、ペプチド、フェノール等の芳香族化合物等の混入も吸光度に影響するため、正確な核酸濃度の測定が困難な場合がある。J. Forensic Sci.2001 May;46(3):647−60.BioTechniques 22:474−481Spectrophotometry of DNA or RNA.MolecuLar Cloning.Third Edition 3:A8.20−A8.21 従来の遺伝子検査における課題として、生体試料から抽出した検査試料において蛋白成分や糖質、ペプチド、低分子等が混入した場合、検査試料中の核酸濃度を正確に測定できない問題があった。特に、検査試料中の核酸濃度が低い場合に従来法の波長260nmの吸光度を用いた核酸濃度の測定法では、実際の核酸濃度よりも測定値が高くなる問題が発生することが判明した。したがって、従来法のみでは測定した濃度に従って検査に求められる濃度範囲になるように検査試料濃度を調整しても、測定範囲内で検査できずに検査不良となる問題があった。 本発明は、検査試料中の核酸濃度が所定の値よりも高いか低いかを判定するに当たり、少なくとも波長220nm以上260nm以下で検査試料の吸光度を測定し、検査試料の波長260nmにおける吸光度と所定の核酸濃度から波長260nmにおける吸光度に換算した換算値よりも低い場合に、検査試料の核酸濃度が所定の核酸濃度よりも低いと判定する従来の判定方法に加え、従来の判定方法で検査試料の核酸濃度が高いと判定された場合、検査試料の波長220nm以上260nm未満の範囲における全ての吸光度が、検査試料の波長260nmにおける吸光度よりも高い場合に、検査試料の核酸濃度が所定の核酸濃度よりも低いと判定するステップと、測定した波長260nmの吸光度が所定の核酸濃度から換算した波長260nmの吸光度よりも高く、かつ検査試料の波長220nm以上260nm未満におけるいずれかの吸光度が0より低い場合、検査試料中の核酸濃度が所定の核酸濃度よりも低いと判定するステップを実施する。 本発明によれば、検査試料を所定の濃度を閾値として所定の濃度より高いか低いかを、従来の方法よりも高い精度で判定することが可能になる。特に、検査試料中の核酸濃度が低い場合、従来法では実際の核酸濃度よりも測定値が高く判定される問題を回避することが可能となる。したがって、前もって測定範囲外の検査試料群の濃度を調節できるようになるので、検査回数を減らして検査コストを低減することができる。 本発明の好ましい実施形態の1つは、吸光度測定法により検査試料の吸光度を少なくとも波長220nm以上260nm以下の範囲で測定し、(A)検査試料の波長260nmにおける吸光度と所定の核酸濃度を波長260nmにおける吸光度に換算して比較し、検査試料の波長260nmにおける吸光度が所定の濃度からの換算値よりも低い場合に、検査試料の核酸濃度が上記所定の濃度よりも低いと判定する判定条件に加え、(B)検査試料の波長220nm以上260nm未満の範囲における全ての吸光度が、検査試料の波長260nmにおける吸光度よりも高い場合に、検査試料の核酸濃度が所定の核酸濃度よりも低いと判定する判定条件を含み、さらに、(C)波長260nm未満のいずれかの吸光度が0より小さい場合に検査試料中の核酸濃度が所定の核酸濃度よりも低いと判定する。そして、いずれの判定条件においても、検査試料の核酸濃度が所定の核酸濃度より低いと判定されない場合は、検査試料の核酸濃度は所定の核酸濃度より高いと判定する。 また、判定条件Aにおいて、検査試料の波長260nmにおける吸光度を核酸濃度に換算し、所定の核酸濃度と比較して、検査試料の核酸濃度が所定の核酸濃度よりも低い場合でも、検査試料の核酸濃度が所定の濃度より低いと判定できる。また、判定条件Bにおいて、より好ましくは、波長250nmから230nmの全ての吸光度と所定の核酸濃度から換算した波長260nmにおける吸光度を比較し、波長250nmから230nmの全ての吸光度が、検査試料の波長260nmの吸光度よりも高い場合に検査試料中の核酸濃度が所定の核酸濃度よりも低いと判定する。 また、上記所定の濃度を1〜100ng/μLの値に設定することができ、特に3〜50ng/μLの値に設定することが好ましい。前記検査試料が尿由来の抽出核酸であっても良く、測定する核酸がゲノムDNAであってもよい。 本発明の更に他の実施形態は、上記検査試料中の核酸濃度が所定の濃度より高いか低いかを判定した後、検査試料投入量を調節するステップを含む検査試料中の核酸分析方法である。更に又、上記検査試料中の核酸濃度の判定後、所定の核酸濃度より低い検査試料の検査結果の採否を判定することができる。また、上記検査試料中の核酸濃度の判定方法後、判定された検査試料を、希釈または濃縮するステップを含むことができる。 本発明の更に他の好ましい実施形態は、検査試料の吸光度を測定する機構と、得られた検査試料の吸光度を全て記憶する機能と、検査試料の濃度を判定するための閾値として予め決める所定の核酸濃度を設定する機能と、吸光度に対応した核酸濃度のデータベース機能、または、吸光度を核酸濃度に換算する、または核酸濃度を吸光度に換算する演算機能と、前記データベースまたは、演算機能を用いて、検査試料の核酸濃度と所定の核酸濃度を比較し、検査試料の核酸濃度が所定の核酸濃度よりも低い場合に、検査試料の核酸濃度が所定の核酸濃度よりも低いと判定する機能と、検査試料の濃度が所定の濃度よりも高いと判定された場合に、検査試料の波長220nm以上260nm以下の全ての吸光度が、検査試料の波長260nmの吸光度よりも高い場合に検査試料中の核酸濃度が所定の核酸濃度よりも低いと判定する機能と、検査試料の濃度が所定の濃度よりも高いと判定された場合に、検査試料の波長220nm以上260nm未満のいずれか吸光度が0よりも低い場合に検査試料中の核酸濃度が所定の核酸濃度よりも低いと判定する機能を有する検査試料の核酸濃度判定装置である。 本発明は、生体試料より抽出された185種類のゲノムDNA溶液に対して波長220nmから波長350nmの範囲で吸光度曲線を精査した結果、低濃度の検査試料に特有のパターンを発見し、本発明に至ったものである。 すなわち、本発明は、生体試料より抽出された核酸を含む検査試料であり、かつ、当該試料の核酸濃度範囲が、次工程に求められる核酸濃度範囲と異なる検査試料に対して、図1に示す方法を用いて、より正確に所定の濃度を閾値として所定の濃度より高いか、低いかを判定し、次工程における検査不良を低減または検査信頼性を向上できる方法を提供する。以下、図を用いて、本発明の手順について説明する。 図1において、1は吸光度測定するステップ、2は吸光度を核酸濃度に換算するステップ、3は換算値を所定濃度と比較するステップ、4は吸光度比較ステップ、5は吸光度評価ステップ、6は所定濃度より高い試料と判定するステップ、7は所定濃度より低い試料と判定するステップである。 ステップ1:吸光度測定法を用いて、検査試料の波長を少なくとも220nm以上260nm以下の範囲で測定する。 ステップ2:図1に示す判定条件A、B、Cを用いて、検査試料を所定の濃度を閾値として、所定の濃度より高いか低いかを判定する。 (A)検査試料のA260における核酸濃度換算値が所定の濃度より低い場合に検査試料中の核酸濃度が所定の核酸濃度よりも低いと判定する。 (B)波長220nm以上、260nm以下の吸光度の全ての値が、所定の核酸濃度から換算した波長260nmの吸光度より高いか、より好ましくは、波長230nm以上250nm以下の吸光度測定値の全ての値が、所定の核酸濃度から換算した波長260nmの吸光度より高い場合に検査試料中の核酸濃度が所定の核酸濃度よりも低いと判定する。 (C)測定した波長260nmの吸光度が所定の核酸濃度から換算した波長260nmの吸光度よりも高く、かつ波長260nm未満の吸光度が0より低い場合に検査試料中の核酸濃度が所定の核酸濃度よりも低いと判定する。 さらに、いずれの判定条件においても検査試料中の核酸濃度が所定の濃度より低いと判定されない場合は、検査試料中の核酸濃度が所定の濃度より高いと判定する。 ステップ3:上記の判定法により核酸濃度の決定された検査試料を、次工程に応じて、希釈または濃縮、または次工程への検査試料投入量の調節、次工程において所定の濃度が検査可否の閾値の場合、検査可否の判定を行う。 さらに、本発明による検査試料中の核酸濃度を判定するための装置の概略について図2を用いて説明する。図2に示す線図において、10は吸光光度計、11は吸光度と核酸濃度の換算機能、12は第1比較判定機能、13は第2比較判定機能、14は吸光度評価判定機能、15は出力装置、16はデータベース、17は記憶装置である。各機能は図1に示す各ステップの作業を行う。 吸光光度計10は、検査試料の吸光度測定を行い、測定結果を記憶装置17に記憶し、換算機能11により260nmにおける吸光度を核酸濃度に換算する。換算により得られた核酸濃度と、データベース16から与えられる所定の濃度とを比較し、第1比較判定機能12において図1の判定条件Aの判定を行う。判定の結果、換算して得られた検査試料の核酸濃度が所定の濃度よりも高ければ、第2比較判定機能13において、図1の判定条件Bの判定を行う。より好ましくは、当該機能は230nm以上250nm以下にわたる全域の吸光度を検査試料の波長260nmの吸光度と比較する。判定の結果、検査試料の核酸濃度が所定の濃度よりも高ければ、吸光度評価判定機能14において、図1の判定条件C判定を行う。いずれの判定条件においても所定の濃度より高いと判定された場合は、検査試料の濃度は所定の濃度よりも高いと判定する。以上の比較、判定の結果を全て記憶装置17に記憶し、必要なデータを出力装置15に出力する。 本発明における生体試料とは、集団検診、健康診断、ドック検診、郵送検診などの検診試料や、病院における外来・入院患者の血液、組織、尿、また、動物、植物、微生物等、特に限定されず全ての核酸を含む生物試料、及び当該生物試料の付着した物質が対象となる。また、本発明における核酸とは、該試料から抽出されたDNA、RNAを含む全ての核酸が対象となる。 生体試料より該核酸を抽出する方法は公知の方法によって行うことができる。より好ましくは、シリカカラムに核酸を吸着させて洗浄後、核酸溶解液を用いて核酸を溶出させる方法を用いる。 また、本発明における検査試料とは、例えば検査に供する核酸を含む試料であればいかなる試料でもよい。また、本発明における検査とは、本発明の判定方法に引き続いて適用される、核酸を分析する検査であり、分析に供する核酸量が測定結果に影響する分析方法であればいかなる分析方法でもよい。具体的には、核酸濃度を正確に測定する定量検査、一塩基多型を検出するSNP検査、ゲノムのメチル化部位を検出するメチル化検査、染色体の欠失を検出するLOH検査、マイクロサテライト多型を利用して個人を同定するSTR検査(個人識別検査)等が挙げられるが、適用できる検査はこれらに限定されるものではない。 また、本発明における検査試料群とは、複数の個体から得られた複数の検査試料、または、ある同一の個体から経時的に採取された複数の検査試料を意味するが、これらの複数の検査試料は本発明に同時に供される必要はなく、ある1時点においては1つの検査試料のみが本発明の判定方法に供されてもよい。 本発明における所定の濃度とは、検査試料を判定する閾値の濃度を意味し、少なくとも1ng/μLから100ng/μLが好ましく、従来法より高い判定効果で判定することができる。しかし、所定の濃度が低い場合では、所定の濃度より高い検査試料の適中度が減少し、所定の濃度が高い場合では、所定の濃度より低い検査試料の適中度が減少する。実施例の結果から、所定の濃度が1ng/μL未満では所定の濃度より高い検査試料の適中度や特異度が約40%低下し、所定の濃度が100ng/μLを超えると所定の濃度より低い検査試料の適中度が半分以下となる。より好ましくは、所定の濃度を3ng/μLから50ng/μLと定めるのが望ましい。 本発明に用いる装置としては、波長350nm〜180nm、少なくとも波長260nm〜220nmの吸光度を測定できればいかなる装置でもよい。具体的には吸光度測定装置、分光光度計が挙げられる。より具体的には、日立ダイオードアレイ型バイオ光度計(日立ハイテクノロジーズ社製)、1μL分光光度計(NanoDrop Technologies社製)等が挙げられるが、本発明では、検査試料中の核酸の吸光度を測定できればよく、上述の分析装置に限定されない。 上記試料および従来装置を用いて検査試料は一般的に次のように検査される。すなわち、核酸検査に限らず、検査機器には測定範囲が設けられており、検査試料群の濃度範囲が検査機器の測定範囲と異なる場合、最初から検査試料の濃度を複数の濃度で準備する。そして、準備した濃度の試料の全てを検査するか、初期濃度で測定範囲内の検査をできなかった検査試料に対して、濃度を変えて再測定を行う。あるいは、低濃度の検査試料が検査機器で測定不可能な場合、検査機器の測定下限以下の検査は無駄となる。また、ゲノム核酸中の対立遺伝子の量比を測定したい場合、検査試料中の核酸量が検査精度に関わる。これらの例のように、検査試料を濃度測定なしに、検査したとき、検査精度低下、コスト増大、スループット低下に繋がる。 このため、検査の前に簡便で低コストな方法での検査試料濃度の測定が求められている。このような濃度測定法として、吸光度を測定し、検査試料中の核酸濃度を測定する方法が挙げられる。しかし、この方法は検査試料中に核酸だけでなく生体試料成分、より具体的には、蛋白成分、ペプチド、芳香族アミノ酸等の有機化合物を含む場合、これらが核酸を検出する波長(260nm)の近傍に検出されるため、正確な核酸の濃度を測定できない問題があった。 本発明による核酸濃度の判定方法によれば、検査試料をより正確に所定の濃度より高いか低いかを決定することができる。これによって、測定範囲より高いか、または低い検査試料を前もって決定し、測定範囲内に希釈または濃縮することが可能である。もしくは、測定範囲より低く検査対象外となる検査試料を決定し、無駄な検査を防ぐことが可能となる。 本発明によれば、(1)吸光度測定法を用いて、検査試料群の波長を220nmから260nmまで測定するステップと、(2)図1に示す判定法に従って、検査試料群を所定の濃度を閾値として、所定の濃度より高い検査試料群と所定の濃度より低い検査試料群に決定するステップと、(3)検査試料の検査の測定条件に合わせて、ステップ2で決定された検査試料群を希釈または濃縮、検査可否の判定、または次ステップへの検査試料投入量の調節を行うステップの3つのステップにより、核酸検査の検査精度向上、またはコストの低下、スループットの向上を図ることができる。 以下、各ステップに従って、本発明を適用する条件を詳細に記述するが、記述する試料、装置等は、後述の方法に限定されない。 ステップ1では、検査試料に光を照射し、少なくとも波長220nmから260nmの吸光度を測定する。当該方法には従来用いられている吸光度測定法を用い、分析装置として分光光度計を用いることができるが、本工程では、少なくとも波長220nm以上260nm以下における検査試料の吸光度を測定できればよく、上述の測定手順、測定方法、測定装置に限定されない。 ステップ2では、検査試料のA260を核酸濃度に換算して、所定の濃度と比較し、換算濃度が所定の濃度より低い検査試料を所定の濃度より低いと判定する判定条件A、波長220nm以上260nm未満の波長帯において得られた吸光度と検査試料のA260を比較して、当該波長帯の全ての吸光度が検査試料のA260よりも高い検査試料を所定の濃度より低い検査試料と判定する判定条件Bにより、少なくとも1ng/μLから100ng/μLを所定の濃度として検査試料の濃度判定の精度を高めることができる。また、検査試料の波長220nm以上260nm未満のいずれかの吸光度が0より低い検査試料を所定の濃度より低い検査試料とする判定条件Cを用いることで、後述する実施例の結果より明らかなように、所定の濃度5ng以下において、判定の精度をより高めることができる。 すなわち、本発明における判定方法は、少なくとも判定条件A、Bどちらかを満たす検査試料を所定の濃度より低い検査試料であると判定し、より好ましくは判定条件A、B、Cのどれかを満たす検査試料を所定の濃度より低い検査試料と判定することを特徴とする。なお、判定条件A、B、Cは上述した判定条件の順番で用いられる必要はなく任意の順番で用いることができる。以下、各判定条件A、Bについてより詳細に記述する。 判定条件Aにおいて、測定された検査試料の波長260nmにおける吸光度を核酸濃度に換算する方法としては、公知の方法を用いることができる。より具体的には、検査試料溶液の溶媒が中性から弱アルカリ性で、測定光路長が1cmの条件でA260=1.0のとき、2本鎖DNA核酸は50μg/mL、1本鎖RNAは40μg/mL、1本鎖DNAは33μg/mLであることが知られており、核酸濃度をここから換算することが可能であるが、本方法は波長260nmにおける吸光度から核酸濃度に換算できればよく、上記条件に限定されない。また、上述の吸光度から核酸濃度へ換算する方法とは反対に、所定の濃度を吸光度に換算して、検査試料のA260と比較できるのは言うまでもない。 判定条件Bにおいて、A260と比較する吸光度は、少なくとも波長220nm以上波長260nm未満の波長帯から得られた吸光度を用いる。より好ましくは、波長230nm以上、波長250nm未満の波長帯における吸光度を用いることで、判定の精度を高めることが可能である。本条件の判定方法としては上記波長帯における吸光度と検査試料のA260と比較して、上記波長帯の全ての吸光度が検査試料のA260より高い検査試料を所定の濃度より低い検査試料であると判定する。 ステップ3では、本発明における次工程の検査の必要に応じて、検査試料の濃度や分取する量を調整する。より具体的な例を挙げると、次工程の検査が核酸濃度20ng/μLから0.2ng/μLの測定範囲の検査である場合、所定の濃度20ng/μLで検査試料群を判定し、20ng/μLより高い濃度の検査試料群に対して、一律に希釈操作を行う。本例において、50倍希釈を行った場合、最大1000ng/μLの検査試料濃度まで、次工程の検査の測定範囲内で測定可能となる。しかし、本工程では、次工程の検査に応じて検査試料を希釈、濃縮、分取量の調節、検査可否の判定が行われればよく上述の例に限定されない。 以下、本発明の選定条件を決定した実施例および、本発明を用いる代表的な用途を示すが本発明はこれらの例に限定されない。 (実施例)尿より抽出されたヒトゲノム核酸の核酸濃度による決定 1.検査試料の準備 本実験では、185人の自然尿より抽出したゲノム核酸を検査試料として用いた。採取された自然尿は、採取後直ちに4℃に保存され、その後2日以内に3000rpmで10分間遠心後、上清を除去し、PBSで洗浄後、PBSにて1mlに懸濁した。本懸濁液の核酸抽出には、QIAamp DNA Blood Mini Kit(QIAGEN社製)を用い、抽出方法は、公知の方法を用いた。より詳細には、臨床検体を溶解試薬で溶解し、これをシリカカラムに吸着させた。次に、洗浄試薬を用いて洗浄し、核酸溶出試薬を用いて、シリカカラムから溶出させ、これを濃度測定に用いる検査試料とした。 2.PicoGreenによる核酸濃度の定量測定 本発明者らは尿より抽出された185種類の検査試料群の正確な2本鎖核酸濃度を定量するために、2本鎖核酸にのみ結合する蛍光試薬であるPicoGreen dsDNA Quantitation Reagent(Molecular Probes社製)を用いて核酸濃度を定量した。本定量方法は公知の方法を用いた。より詳細には、標準核酸を用いて希釈系列を作製し、作製した希釈系列の濃度範囲に入るように検査試料を希釈した。次に、2本鎖核酸とのみ結合する蛍光試薬を添加し、蛍光発光量を測定した。この結果、本検査試料群の核酸濃度は1500ng/μLから0.01ng/μLの濃度範囲であった。 3.吸光度測定法による濃度測定 本発明者らは吸光度測定法を用いて、検査試料中の核酸濃度を測定した。測定装置は1μL分光光度計(NanoDrop Technologies社製)を用い、検査試料から試料溶液を1μ?分取し、吸光度測定を行った。この結果、185種類の検査試料について波長350nmから220nmの範囲で吸光度曲線を得て、波長260nmの吸光度から2本鎖核酸の濃度に換算し、約1900ng/μLから0.09ng/μLの濃度範囲の測定結果が得られた。 4.検査試料の決定 検査試料群に対して7つの所定の濃度(1.0ng/μL、3.0ng/μL、5.0ng/μL、10ng/μL、20ng/μL、50ng/μL、100ng/μL)を用いて表1に示す判定条件を複数用いて判定し、PicoGreenにより定量した結果を基準値として各判定手段の適中数を調べ、表2に示した。なお、本発明法における判定手段は表1に示す判定条件を複数用い、各判定条件を表す表記を並列に記載して示した。 表2より、従来法では、所定の濃度を10ng/μLとして判定したとき、148種類の所定濃度未満の検査試料中60種類に及ぶ当該試料が10ng/μL以上であると判定された。一方、本発明法では、148種類の所定濃度未満の検査試料中14種類の当該試料が10ng/μL以上であると判定された。 次工程の検査に10ng/μL以上の検査試料が必要な場合、上記結果を用いると、従来法では97種類の検査試料の検査が必要であるのに対し、本発明法では50種類の検査試料を検査すればよい。従って、本例において、検査のスループットは2倍に向上し、コストは1/2に低減できる。 5.判定結果の評価 判定結果の評価法として、スクリーニングの効果指標を用いた。スクリーニングとは、ある状態とそうでない状態を可能なかぎり判定することを意味する。本スクリーニングの能力を表すために、感度、特異度、適中度、有効度の指標を用いた。以下、各指標について説明する。各指標にあるアルファベットは表4に示すスクリーニングによる判定結果の数を表す。そして、各指標の説明に本アルファべットを用いて、算定式を示した。 まず、感度とは実際に所定の濃度未満の検査試料が本発明で正しく所定の濃度未満となる割合で、本発明による所定濃度未満を選び出す能力を表す。値が高いほど良い方法と言える。本指標は(式1)の方法で算出できる。 (式1) 感度=本発明で正しく決定された所定濃度未満の検査試料の数/所定濃度未満の全検査試料の数 =a/(a+c)×100(%) 次に、特異度とは所定濃度以上の検査試料が本発明で正しく所定の濃度以上となる割合で、所定濃度以上の検査試料を所定濃度未満と間違えない能力を表す。値が高いほど良い判定方法と言える。本指標は(式2)の方法で算出できる。 (式2) 特異度=本発明で正しく決定された所定濃度以上の検査試料の数/所定濃度以上の全検査試料の数 =d/(b+d)×100(%) 次に、有効度とは所定濃度未満の有無を正しく反映している割合を意味する。本指標は(式3)の方法で算出できる。 (式3) 有効度=(a+d)/(a+b+c+d)×100(%) そして、適中度には所定濃度未満適中度と所定濃度以上適中度があり、敏感度や特異度は本発明法自体の有効性を示す指標であるが、所定濃度未満適中度は本発明により所定濃度未満と判定された検査試料が実際に所定濃度未満である確率を意味し、所定濃度以上適中度はその逆を意味する。本指標は(式4)、(式5)の方法で算出できる。 (式4) 所定濃度未満適中度=実際に所定濃度未満の検査試料の数/所定濃度未満の全検査試料の数 =a/(a+b)×100(%) (式5) 所定濃度以上適中度=実際に所定濃度以上の検査試料の数/所定濃度以上の全検査試料の数 =d/(c+d)×100(%) 本発明の決定の効果を上述の5つの評価指標を用いて評価した結果を表5〜表10に示す。 本発明による判定方法の効果を評価した結果、いずれの本発明の判定方法も従来方法より高い有効性を示した。具体的には、判定条件Bでは4種類の波長帯のうち、(B−2)つまり波長230nm以上250nm以下の吸光度を用いたとき、最も高い有効度を示した。また、最も波長帯の範囲の広い(B−4)、つまり波長220nm以上260nm未満の波長帯でも従来法と比較して高い有効度が得られることが分かった。各所定濃度の判定の効果としては、所定濃度を低くすると、所定濃度以上の適中度が下がり、所定濃度を高くすると、所定濃度未満の適中度が低下する傾向があることがわかったが、いずれも従来法よりも高い有効度を示した。 本発明の実施形態による主な効果を簡単に説明すると、以下に示すとおりである。 (1)検査試料群の濃度範囲が、次工程の濃度範囲と異なる検査試料群を測定範囲内で検査するために、従来、複数濃度で測定、または1濃度で測定し、測定範囲外の検査試料の濃度を変えて再測定していた検査に対して、前もって測定範囲外の検査試料群の濃度を調節することができるようになり、1濃度で測定可能、または再測定の検査試料が減少し、検査コストを低減できる。 (2)検査に用いる核酸量が検査信頼性に影響する場合、従来の吸光度測定法と比較してより正確に低濃度の検査試料群を決定できるようになり、検査の信頼性が向上する。 なお、本発明による検査試料決定の効果指標として、スクリーニング効果の指標を用いて評価した。核酸濃度10ng/μLを所定の濃度として185検体の濃度を決定した結果では、従来法であるA260から換算した核酸濃度による決定結果と比較して、感度32%向上(60%⇒92%)、核酸濃度10ng/μL未満を適中させる確率は37%向上(38%⇒75%)し、有効度は26%向上(67%⇒93%)した。本発明の実施例による核酸分析法のフロー図。本発明による検査試料中の核酸濃度判定装置の構成を示す線図。符号の説明 1…吸光度測定するステップ、2…吸光度を核酸濃度に換算するステップ、3…換算値を所定濃度と比較するステップ、4…吸光度比較ステップ、5…吸光度評価ステップ、6…所定濃度より高い試料と判定するステップ、7…所定濃度より低い試料と判定するステップ、10…吸光光度計、11…吸光度の換算機能、12…第1比較判定機能、13…第2比較判定機能、14…吸光度評価判定機能、15…出力装置、16…データベース、17…記憶装置。検査試料の核酸濃度が所定の核酸濃度よりも高いか低いかを判定する方法において、波長220nm以上260nm以下の範囲における検査試料の吸光度を測定し、検査試料の波長260nmの吸光度が、所定の核酸濃度から換算した波長260nmの吸光度よりも高く、かつ検査試料の波長260nm未満のいずれかの吸光度が0より小さい場合、検査試料中の核酸濃度が所定の核酸濃度よりも低いと判定するステップを含むことを特徴とする検査試料中の核酸濃度の判定方法。前記所定の核酸濃度を1〜100ng/μLの値に設定することを特徴とする請求項1に記載の検査試料中の核酸濃度の判定方法。前記所定の核酸濃度を3〜50ng/μLの値に設定することを特徴とする請求項1に記載の検査試料中の核酸濃度の判定方法。前記検査試料が尿由来の抽出核酸であることを特徴とする請求項1に記載の検査試料中の核酸濃度の判定方法。前記核酸がゲノムDNAであることを特徴とする請求項1または2に記載の検査試料中の核酸濃度の判定方法。検査試料の核酸濃度が所定の核酸濃度よりも高いか低いかを判定する方法において、波長220nm以上260nm以下の範囲における検査試料の吸光度を測定し、検査試料の波長260nmの吸光度が、所定の核酸濃度から換算した波長260nmの吸光度よりも高く、かつ検査試料の波長260nm未満のいずれかの吸光度が0より小さい場合、検査試料中の核酸濃度が所定の核酸濃度よりも低いと判定するステップの後、検査試料の分取量または投入量を調節するステップを含むことを特徴とする検査試料中の核酸分析方法。検査試料の核酸濃度が所定の核酸濃度よりも高いか低いかを判定する方法において、波長220nm以上260nm以下の範囲における検査試料の吸光度を測定し、検査試料の波長260nmの吸光度が、所定の核酸濃度から換算した波長260nmの吸光度よりも高く、かつ検査試料の波長260nm未満のいずれかの吸光度が0より小さい場合、検査試料中の核酸濃度が所定の核酸濃度よりも低いと判定するステップの後、検査試料中の核酸濃度が所定の核酸濃度より低い場合、検査結果の採否の判定を行うステップを含むことを特徴とする検査試料中の核酸分析方法。判定した検査試料の核酸濃度に応じて検査試料の分取量または投入量を調節することを特徴とする請求項7に記載の核酸分析方法。判定した検査試料の核酸濃度に応じて検査試料を希釈または濃縮することを特徴とする請求項7に記載の核酸分析方法。前記所定の核酸濃度を1〜100ng/μLの値に設定することを特徴とする請求項7に記載の核酸分析方法。前記所定の核酸濃度を3〜50ng/μLの値に設定することを特徴とする請求項7に記載の核酸分析方法。


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