タイトル: | 公開特許公報(A)_新規なスティッキング評価法 |
出願番号: | 2006290587 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | G01N 21/57 |
春名 誠司 北村 雅弘 樋崎 雅也 JP 2008107212 公開特許公報(A) 20080508 2006290587 20061026 新規なスティッキング評価法 沢井製薬株式会社 000209049 春名 誠司 北村 雅弘 樋崎 雅也 G01N 21/57 20060101AFI20080414BHJP JPG01N21/57 6 1 OL 7 2G059 2G059AA02 2G059AA03 2G059BB08 2G059BB20 2G059EE13 2G059FF05 2G059FF08 本発明は、打錠時に生じる粉末の杵先表面への付着度合いを色差として測定し、打錠障害であるスティッキングを客観的に評価する方法に関する。 粉末を打錠する工程において、粉末が杵先表面に付着するスティッキングと呼ばれる現象が見られることがある。スティッキングには、錠剤表面の光沢が無くなる程度の軽微なものから、錠剤表面の剔れる重度のものまであるが、軽微なものであってもスティッキングが発生すると錠剤の品質及び、商品価値が損なわれる。更に、杵先表面への粉末の付着が多くなることによって打錠圧が高くなり、杵破損に至ることもある。そのため、スティッキングの発生しない処方及び、製造方法の検討が研究段階で数多く行われている。生産時における杵当たりの打錠数が約20000錠であることから、研究段階の約1000錠スケールの実験から生産スケールでのスティッキング発生を予測し評価するためには、スティッキングの客観的な評価が必要となる。 スティッキングを評価する方法としては、打錠を行い、杵先表面の曇り度合いを目視確認して評価することが通常行われているが、目視による杵先表面の曇り度合いの判定は、判定者の個人差によりバラツキが出るため、再現性や正確性に欠ける。そこで、表面粗さ形状測定機を用いた錠剤表面の肌荒れ状態の判定結果からスティッキングの程度を評価し、処方の検証が行われている(特許文献1)。更に、スティッキングの発生を客観的に検出する方法として、打錠時に下杵から錠剤を払うスクレーパーの圧力をモニタリングする装置(特許文献2)及び、打錠時の杵先表面をカラーCCDカメラでモニタリングする装置(特許文献3)が知られている。特開平8−20537号公報特開平8−196602号公報特開平10−137990号公報 しかし、表面粗さ形状測定機での判定は、錠剤表面を触針によって走査するため、局部の測定となり、スティッキングを見逃す可能性が高い方法である。そのため、目視による確認も必要となり、判定に曖昧さが残る。又、スクレーパーの圧力をモニタリングする方法は、打錠時に下杵から錠剤を払うスクレーパーの圧力を測定し、錠剤と下杵の付着力の変化からスティッキングを検出する方法であるため、上杵のみに発生したスティッキングを検出することができない。CCDカメラによる画像処理の方法は、判定に個人差が出ない評価方法ではあるが、画像を高速で処理するための装置とソフトウエアーが必要となり、いずれも高価である。 そこで、スティッキングの評価方法として、杵先表面の曇り度合いを、客観的なデータとして、安価に評価する方法が求められている。 本発明者らは、杵先表面の曇り度合いの測定方法を鋭意検討した結果、杵先表面の色差を測定することによって杵先表面の曇り度合いを客観的に評価でき、経時的な杵先表面の色差の変化からスティッキングの評価ができることを見いだした。 本発明によれば、打錠前後の杵先表面の色差を経時的に測定することによってスティッキングの評価が出来るため、スティッキングの発生しにくい錠剤処方の選定、打錠用粉末の製造方法の選定、または杵の表面加工方法(例えば、硬質クロムメッキ加工、窒化クロム蒸着、杵表面を極微細な凸凹に加工する方法等)の選定に利用することができる。 使用する上下の杵及び臼に滑沢剤を均一に塗布し、上下の杵それぞれの杵先表面を色差計で測定し基準値とする。次に総圧力100〜4000Nの任意の圧力で、任意の回数打錠する。この後、杵先表面の色差を測定する。この操作を数回繰り返し、それぞれの杵先表面の色差を測定する。 打錠回数と、各打錠時に測定された色差をグラフ化し、このグラフから読み取れる色差の変化の傾きから、スティッキングの評価又は比較を行うことができる。2以上の対象物で比較する場合、色差の変化の傾きが最も小さな対象物が、スティッキングの発生率も小さいと評価できる。 以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 実施例1 6,8-Difluoro-1-(2-fluoroethyl)-1,4-dihydro-7-(4-methyl-1-piperazinyl)-4-oxo-3-quinolinecarboxylic acid 61重量部、トウモロコシデンプン16重量部、結晶セルロース3重量部、部分α化デンプン3重量部をヒドロキシプロピルセルロースの10%水溶液で混練し(固形分として2重量部)、乾燥、整粒後にステアリン酸マグネシウム1重量部を加えて混合し、打錠用の粉末を得た。 よく洗浄したφ8mm、2段R(R=9.5mm、3.2mm)の杵と臼に、ステアリン酸マグネシウムを均一の塗布し、分光式色差計(SE2000 日本電色工業株式会社)を用いて、上杵及び下杵先表面の色差を測定し、この色差を基準値とした。 卓上型の打錠機(株式会社菊水製作所)に前記の杵及び臼を取り付け、前記打錠用粉末の195mgを総圧1960N、速度0.3cm/minで1回打錠し、上杵及び下杵の先表面の色差を基準値との差(ΔE)で測定した。この操作を5回繰り返した結果を表1に示した。 比較例1 実施例1の上杵及び下杵の先表面を、色差の測定前に目視観察した。実施例1及び比較例1の結果を表1に示した。 +/-:曇り無し、 +:曇り(少)、 ++:曇り(中)、 +++:曇り(大)、 ○:斑に曇り 打錠回数と杵の曇りについて、目視による観察の場合、打錠2回目以降の杵先表面の曇り度合いは変化が無いように受け取れるが、色差の結果では、徐々に曇り度合いが増していることが評価できる。この打錠用粉末をロータリー打錠機(型式:HT-AP45 株式会社畑鉄工所)で打錠を行ったところ、杵当たり約2600錠打錠した時点で明らかなスティッキングが認められた。 実施例2 N-(1-Amino-3-{[2-(diaminomethyleneamino)-1,3-thiazol-4-yl]methylsulfanyl}propylidene)sulfamide 11重量部、乳糖56重量部、トウモロコシデンプン30重量部をヒドロキシプロピルセルロースの5%水溶液で流動層造粒し(固形分として3重量部)、乾燥、整粒後にステアリン酸マグネシウム0.3重量部を加えて混合し、打錠用の粉末を得た。 この粉末を用いて、実施例1と同様な操作を行った。結果を表2に示した。 比較例2 実施例2の上杵及び下杵の先表面を、色差の測定前に目視観察した。実施例2及び比較例2の結果を表2に示した。 +/-:曇り無し、 +:曇り(少)、 ++:曇り(中)、 +++:曇り(大)、 ○:斑に曇り 打錠回数と杵の曇りについて、目視による観察の場合は、斑に杵先表面に曇りがあり、曇り度合いの量的な評価ができにくい状態であるが、色差の結果からは、曇り度合いの変化がほとんど無いことが評価できる。この打錠用粉末をロータリー打錠機(型式:HT-AP45 株式会社畑鉄工所)で打錠を行ったところ、杵当たり約24000錠打錠した時点でもスティッキングは認められなかった。 実施例3 製造方法選択のために、表3に示した成分及び分量に従い、(−)-(S)-9-fluoro-2,3-dihydro-3-methyl-10-(4-methyl-1-piperazinyl)-7-oxo-7H-pyrido[1,2,3-de][1,4]benzoxazine-6-carboxylic acid hemihydrate(以下成分Xと表記)、乳糖、トウモロコシデンプンをヒドロキシプロピルセルロースの20%水溶液又は、ヒドロキシプロピルセルロースの20%エタノール溶液で流動層造粒し、乾燥、整粒後にカルメロース及びステアリン酸マグネシウムを加えて混合し、打錠用の粉末をそれぞれ得た。これらの粉末を、実施例1と同様な操作で色差の測定を行った。結果を表4及び図1に示した。 比較例3 実施例3の上杵及び下杵の先表面を、色差の測定前に目視観察した。その結果を表5に示した。 +/-:曇り無し、 +:曇り(少)、 ++:曇り(中)、 +++:曇り(大)、 ○:斑に曇り 表4及び表5より、目視観察では、処方Aの製造法及び処方Bの製造法の、杵先表面の曇り度合いの量的な評価はできないが、色差による結果からは、処方Bの製造法の方が杵先表面の曇り度合いの度合いが小さい製造法であると評価できる。これらの打錠用粉末を単発打錠機(型式:NO.2B 株式会社菊水製作所)で打錠を行った結果、処方Aでは10回の打錠で明らかなスティッキングを認めたが、処方Bでは50回打錠してもスティッキングは認められなかった。 実施例4 処方選択のため、表6に示した成分及び分量に従い、(±)-2-(2,2-Diphenylcyclopropyl)-2-imidazoline succinate(以下成分Yと表記)、結晶セルロース、カルメロースカルシウムを、ヒドロキシプロピルセルロースの5%水溶液、トウモロコシデンプン水糊8%、トウモロコシデンプン水糊5%、アミコールC5%水溶液で混練し、乾燥、整粒後にステアリン酸マグネシウムを加えて混合し、打錠用の粉末をそれぞれ得た。これらの粉末を実施例1と同様な操作で色差の測定を行った。結果を表7に示した。 この結果より、処方4が他の処方と比べて杵先表面の曇り度合いが小さい処方であると評価できる。これらの打錠用粉末を単発打錠機(型式:NO.2B 株式会社菊水製作所)で打錠を行った結果、処方1では10回の打錠で、処方2では約500回の打錠で、処方3では10回の打錠で明らかなスティッキングを認めたが、処方4ではロータリー打錠機(型式:VIRGO-512 株式会社菊水製作所)で、杵当たり約6600錠打錠してもスティッキングは認められなかった。 実施例5 杵の選択を行うため、実施例1の粉末及び条件で、使用する杵を表面が硬質クロムメッキ加工されたφ8mm、2段R(R=10mm、3.4mm)の杵及び、表面が窒化クロム蒸着されたφ8mm、2段R(R=10mm、3.4mm)の杵を比較した。結果を表8に示した。 この結果より、窒化クロム蒸着杵の方が、硬質クロムメッキ加工杵と比べて杵先表面の曇り度合いが小さい杵であり、スティッキングの発生率がより低い杵であると評価できる。実施例3の打錠回数と、上下杵の色差の測定結果の和を表したものである。 スティッキングを評価する方法であって、打錠用杵先表面の曇り度合いを色差計を用いて測定することからなる方法。 請求項1の方法であって、打錠前から打錠後の杵先表面の曇り度合いを色差計を用いて経時的に測定することからなる方法。 色差計として分光式色差計を用いる請求項1又は請求項2の方法。 処方の異なる2以上の打錠用粉末から、スティッキングの発生しにくい打錠用粉末を選定する方法であって、各処方を打錠し、打錠前後の杵先表面の色差を経時的に測定して杵先表面の曇り度合いの経時変化を評価することからなる、スティッキングの発生しにくい打錠用粉末の選定方法。 製造方法の異なる打錠用粉末の2以上の製造方法の中からスティッキングの発生しにくい製造方法を選定する方法であって、打錠前後の杵先表面の色差を経時的に測定して杵先表面の曇り度合いの経時変化を評価することからなる、スティッキングの発生しにくい製造方法の選定方法。 処理方法の異なる2以上の打錠用杵から、スティッキングの発生しにくい杵を選定する方法であって、打錠前後の杵先表面の色差を測定して杵先表面の曇り度合いの経時変化を評価することからなる、スティッキングの発生しにくい杵の選定方法。 【課題】打錠時の杵先表面に、粉末が付着するスティッキング現象の評価として、杵先表面の曇り度合いを、客観的に評価する方法の開発。【解決手段】杵先表面の、打錠前後の色差を経時的に測定することによって、杵先表面の曇り度合いを客観的に評価できる。更に、打錠回数毎の色差の変化量から、スティッキングの発生し易さを評価することができ、スティッキングの発生しにくい処方、製造方法及び、杵の加工方法の選定に適用できる。【選択図】図1