生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_糖衣錠およびその作製方法
出願番号:2006289356
年次:2008
IPC分類:A61K 47/36,A23G 3/34,A23L 1/00,A61K 47/26,A61K 9/28


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松堂 忠義 上田 郁子 JP 2008105987 公開特許公報(A) 20080508 2006289356 20061025 糖衣錠およびその作製方法 浜田食品工業株式会社 506184369 小倉 啓七 100123504 松堂 忠義 上田 郁子 A61K 47/36 20060101AFI20080414BHJP A23G 3/34 20060101ALI20080414BHJP A23L 1/00 20060101ALI20080414BHJP A61K 47/26 20060101ALI20080414BHJP A61K 9/28 20060101ALI20080414BHJP JPA61K47/36A23G3/00 101A23L1/00 DA61K47/26A61K9/28 11 OL 8 4B014 4B035 4C076 4B014GB08 4B014GL10 4B014GL11 4B014GP18 4B035LC03 4B035LE05 4B035LG25 4C076AA43 4C076BB01 4C076CC40 4C076DD67H 4C076EE30A 4C076EE31 4C076EE36A 4C076EE38H 4C076FF04 4C076FF26 4C076GG14 4C076GG16 本発明は、ソフトな食感を保つ糖衣錠およびその作製方法に関するものである。 錠剤、錠菓は、一般的に原料を粉体のまま若しくは顆粒として打錠機にかけて圧縮成型してタブレットを製造する。そして糖衣シロップをタブレットの表面に塗布して乾燥させ糖衣錠を得る。この糖衣工程においては、タブレットの割れ、欠けを防ぐ必要がある。タブレットの割れ、欠けは、品質管理上問題となり、ひどくなると糖衣を継続して実施できなくなる。 タブレットの割れ、欠けを防ぐため、タブレットは比較的硬いもの(例えば、硬度10kg/cm2程度のもの)を使用している。 糖衣層も硬いため、糖衣錠は全体的に硬いものとなり、食感はハードでカリカリといったものであった。 また、これまでのタブレットをセンターに用いた糖衣錠は、作製後、タブレット若しくは糖衣層の水分移行により、時間経過とともに硬くなるという傾向があった。 特に、糖衣工程の際に、糖液濃度65〜75%のハード用糖衣シロップを塗布すると、タブレットセンターに水分が染み込み、糖衣錠作製時は一時的に柔らかくなるものの、時間が経過すると共に、糖衣錠に抱き込まれた水分が徐々に空気中に移行し、糖衣錠の硬度が高くなっていた。なお、硬度は約2週間前後で安定する。 ソフトな食感が求められている近年、糖衣錠の硬さをよりソフトなものにすることが望まれている。 また、寒天が成型したときに十分な錠剤強度が得られると同時に、優れた崩壊性も得られるという性質を併せ持つ錠剤用基剤として利用可能であることが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。しかし、寒天を利用することにより、糖衣錠の食感がソフトですぐ噛め、口溶けが良いといった報告はない。 高齢化社会に向かう我が国にとって、ソフトな食感の糖衣錠が実現すれば、高齢者向けの薬剤若しくはサプリメント(健康補助食品)といった新たな商品市場が開かれる可能性がある。それと同時に、近年の健康志向、環境志向の流れから、食品添加物を使わない天然素材のみからなる錠剤や錠菓の糖衣錠の作製方法が求められている。特開平10−45628号公報 本発明は上述の問題点を考慮してなされたもので、糖衣工程中の割れや欠けを防げる程度の錠剤硬度を保ち、糖衣後も硬化への推移が小さく、柔らかい(ソフトな)食感を保持できる糖衣錠およびその製造方法を提供することを目的とする。 本発明者らは上記課題を解決するため、種々の材料をタブレットに添加し比較評価を行い、水及び熱水に対し不溶性で、且つ、吸水膨潤性を有する食品素材を添加したタブレットを用いた糖衣錠がソフトな食感を保持できることを見出し、本発明に至った。水及び熱水に対し不溶性で、且つ、吸水膨潤性を有する食品素材として、寒天またはアルギン酸を用いることが好適であることも同時に見出したものである。 本発明は、水及び熱水に対し不溶性で、且つ、吸水膨潤性を有する食品素材を添加したタブレットを用いた糖衣錠である。具体的には、寒天またはアルギン酸のいずれかの食品素材を添加したタブレットを用いた糖衣錠である。より具体的には、タブレットを構成する原料粉末若しくは顆粒に、寒天またはアルギン酸を添加し、打錠してタブレットを成型したものに、糖衣シロップを塗布した後にグラニュー糖をかけて砂糖を結晶化乃至は微粉化させたことを特徴とする糖衣錠である。なお、打錠してタブレットを成型したものに、糖衣シロップを塗布した後にグラニュー糖をかけて砂糖を結晶化乃至は微粉化させる作業は複数回行うことが好ましい。 寒天またはアルギン酸などの、水及び熱水に対し不溶性で、且つ、吸水膨潤性を有し、水分を抱え込み膨潤する特徴を有する食品素材を原料として、タブレットに添加することにより、時間の経過による糖衣錠の硬度アップを回避でき、ソフトな食感を保てるのである。 また、成型したタブレットに糖衣シロップを塗布する糖衣工程において、タブレットセンターに糖衣シロップをかけた後、グラニュー糖をかけて砂糖を結晶化乃至は微粉化させるのは、糖衣層の結晶がポーラス状の層構造となり、仕上がった糖衣錠の食感をよりソフトなものにできるからである。 ここで、寒天やアルギン酸などの食品素材の添加量が、0.5〜10重量%であることが好ましい。寒天やアルギン酸などの食品素材の添加量を10重量%より多くすると、タブレットの硬度にバラツキが出るのと、重量を一定に制御することが困難であるためである。添加量が過剰であると、タブレットの摩損度試験の結果より、タブレットが割れやすくなり品質管理上好ましくない。また、寒天やアルギン酸などの食品素材の添加量が0.5重量%未満であると効果が現れない。 また、本発明の糖衣錠のタブレットセンターに用いる寒天は、粉末化された寒天を加水して吸水膨潤させ、脱水乾燥させたものであることが好適である。このような寒天の粒子には微細な空隙が存在し、水分を抱え込んだ状態を保持でき、タブレットセンターの糖を溶かさず、結果として糖衣錠にソフトな食感をもたらすからである。 また、本発明の糖衣錠に用いる糖衣シロップは、砂糖若しくは糖アルコールに水飴を配合したものが好ましい。一定の水分を保っている水飴を用いることで、仕上がった糖衣錠の食感をよりソフトなものにできるのである。 本発明によれば、糖衣工程中の割れや欠けを防げる程度の錠剤硬度を保ち、糖衣後も硬化への推移が小さく、柔らかい(ソフトな)食感を保持できる糖衣錠およびその製造方法が提供される。 また、本発明は、天然(加工)物を添加したタブレットの糖衣錠であり、自然食品からなる糖衣錠を提供することが可能となる。 以下、本発明の糖衣錠の実施例について、表を参照しながら詳細に説明していく。 また、糖衣錠の食感については、作製した代表サンプルについて、7名のパネラによる食感テストを実施し、何れの糖衣錠がソフトな食感を有するものかを判定した。この食感テストについては後述する。 以下の実施例では、ぶどう糖ベースの顆粒から成るタブレットの糖衣錠を例にして、より具体的に説明していく。 タブレットを構成するぶどう糖ベースの顆粒に、寒天,アルギン酸,結晶セルロース(アビセル),トレハロース,ニンジンパウダー,アルギン酸ナトリウムをそれぞれ1重量%添加し打錠してタブレットを成型したもの、および何も添加していないタブレットを成型したものをセンターとして、糖衣シロップを塗布して糖衣錠を作製した。 成型したタブレットに糖衣シロップを塗布する糖衣工程では、糖衣パンにタブレットを入れ、回転させたタブレットセンターに砂糖と水飴を配合した糖衣シロップをかけ、その後グラニュー糖をかけて回転させることで砂糖を結晶化させる。一定の水分を保っている水飴と、糖衣層の結晶がポーラスになりやすいグラニュー糖を用いることで、仕上がった糖衣錠の食感をよりソフトなものにできる。 ここで、タブレットの配合は下表1に示す。また、打錠規格については下表2に示す。さらに、糖衣シロップの配合については下表3に示す。 なお、タブレットのセンターの重量100%に対して、60%を糖衣割合としている。 ここで、各種添加材料の特徴について説明する。1)寒天 寒天の原料は海藻で、紅藻類(特に、テングサやオゴノリ)が使用されている。寒天は紅藻類から得られる天然多糖類で、紅藻類から熱水により抽出する。寒天は加熱すると溶解し、冷却すると凝固してゲルになる。ゲルは再加熱すると寒天ゾルに戻る熱可逆性を有している。寒天の凝固点は35〜40℃前後であり、室温で固めることが可能である。ゲル化した寒天の融点は80℃以上である。従って、ゼラチンと異なり溶けにくいゲルである。寒天は、水及び熱水に不溶で、吸水により膨潤するという性質を有する。2)アルギン酸 アルギン酸の原料は海藻で、褐藻類(コンプやわかめ)に含まれる天然多糖類である。含有量は乾燥の藻体の30〜60%で、コンブやわかめの主成分であり、天然の食物繊維である。アルギン酸は、水及び熱水に不溶で、吸水により膨潤するという性質を有する。3)結晶セルロース(微結晶セルロース製剤) 原料は植物のパルプ繊維であり、その結晶セルロース領域を抽出して精製したものである。セルロース分子鎖が緻密で規則的な構造を有している。親水性表面からなる多くの空隙を有するため保水性に優れる。4)トレハロース 砂糖などと同じ天然多糖類で、キノコやエビなどに比較的多く含まれている。保湿性が非常に高く、食品や化粧品へ利用されている。トウモロコシなどに含まれるデンプンを原料にして微生物がつくる酵素を利用して、直接デンプンからトレハロースを取り出すことが可能である。トレハロースの性質は、強い保水力を有し、食品中のバインダーとして食品の水の移動を防ぐ。なお、トレハロースは水溶性の糖類である。5)ニンジンパウダー 野菜の代表として、ニンジンの粉末を用いる。6)アルギン酸ナトリウム アルギン酸のナトリウム塩であり、性質はアルギン酸と異なり水溶性である。 上記1)〜6)の添加材料をぶどう糖ベースの顆粒に加えて、混合し打錠してタブレットセンターを作製し、タブレットのセンターの重量100%に対して60%を糖衣割合とし糖衣錠を作製した。糖衣しなかったタブレットの硬度推移(打錠当日と打錠から1ヶ月後の硬度推移)を下表4に、糖衣錠の硬度推移(糖衣当日と糖衣から1ヶ月後の硬度推移)を下表5に示す。なお、硬度の数値単位はkg/cm2である。 ここで、各表におけるコントロールは、何も添加しなかったものを示している。 また、1)〜6)の添加材料において、水・熱水に対しての不溶性、吸水膨潤性の有無を○(有り),△(一部有り),×(無し)で示している。 なお、打錠規格の硬度は統一し、硬度の推移を調べた。 また、糖衣錠の硬度推移において、下表5における従来の糖衣錠(参考)は、従来の糖衣錠の硬度を参考までに示すものである。従来の糖衣錠の場合、ぶどう糖を原料とするタブレットに特に何も添加せず、糖衣シロップに糖液濃度65〜75%のハード用糖衣シロップを用いていた。ハード用糖衣シロップは、例えば、砂糖70%,ゼラチン0.2〜1%,水29〜29.8%の配合のものや、砂糖69%,アラビアガム1〜10%,水21〜30%のものや、糖アルコール69%,アラビアガム1〜10%,水21〜30%のものが使用されていた。 上記の表5から確認できることは、糖衣錠の硬度推移において、コントロールは1ヶ月後に約2倍(1.95)まで硬度が高くなっている。一方、1)〜6)の添加材料を加えた糖衣錠の場合は、いずれも硬度推移が鈍化する傾向があり、特に、寒天若しくはアルギン酸を添加したものは、1ヶ月後の硬度も9以下であり、かつ、1ヶ月後の硬化率も1.8以下と優れた特性を示していることが確認できる。 特に、水及び熱水に対し不溶性で、且つ、吸水膨潤性を有する寒天若しくはアルギン酸を添加したタブレットの糖衣錠は、1日後の硬度も他の添加材料と比較しても硬度5以下と低く、1ヶ月後もなお硬度9以下とソフトな食感を保持できていることが確認できる。 表5における従来の糖衣錠(参考)との比較からわかるように、本発明の糖衣錠では、硬度が格段に柔らかくなっているのである。 なお、重さ、硬度、水分量の物性測定に用いた測定機器を以下に列挙して示す。・重量秤台 :(株)エー・アンド・ディ EK−1200G・硬度測定器 :藤原製作所 HARDNESS TESTER KHT−20N :木屋製作所 木屋式硬度計・水分計 :(株)ケット科学研究所 赤外線水分計 FD−230 次に、上述の添加材料で作製した糖衣錠の食感について、7名のパネラによる食感テストを実施し、何れの糖衣錠がソフトな食感を有するものかを検定したので、これに関して以下に説明する。 食感テストは、順位法の検定表を用いる方法により検定を行った。 試料としては、寒天、アルギン酸、トレハロース、コントロール(何も添加しない)の4種の糖衣錠を用いて、選抜された4種の試料を柔らかいものから順位をつけてもらった。 検定は、各々の試料の順位合計を算出し、有意差の有無を比較する2つの試料の順位合計差を算出して、解析を実施した。 検定の結果を下表6に示す。 各々の試料の順位合計を算出し、有意差の有無を比較する2つの試料の順位合計差の絶対値を算出したものをi)〜vi)に示す。i)(アルギン酸)−(トレハロース)=|10−24|=14ii)(アルギン酸)−(コントロール)=|10−25|=15iii)(アルギン酸)−(寒天)=|10−11|=1iv)(トレハロース)−(コントロール)=|24−25|=1v)(トレハロース)−(寒天)=|24−11|=13vi)(コントロール)−(寒天)=|25−10|=15 上記のi)〜vi)の結果を、順位法の検定表により解析する。パネル数7,試料4,有意水準(5%)で下表7の結果となり、アルギン酸および寒天と、他の素材との間にはその柔らかさにおいて有意差が認められた。 表7より、ソフトな食感を保つ糖衣錠を作製するため、タブレットの粉末若しくは顆粒に添加する原料として、寒天またはアルギン酸が適していることが確認できる。 本発明は、ソフトな食感を保持できる糖衣錠として利用でき、医薬品、健康食品、菓子等に好適に用いられる。 水及び熱水に対し不溶性で、且つ、吸水膨潤性を有する食品素材を添加し打錠したタブレットを用いた糖衣錠。 寒天またはアルギン酸のいずれかの食品素材を添加し打錠したタブレットを用いた糖衣錠。 タブレットを構成する原料粉末若しくは顆粒に、前記食品素材を添加し、打錠してタブレットを成型したものに、糖衣シロップを塗布した後にグラニュー糖をかけて砂糖を結晶化乃至は微粉化させたことを特徴とする請求項1又は2に記載の糖衣錠。 前記食品素材の添加量が、0.5〜10重量%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の糖衣錠。 前記寒天が、粉末化された寒天を加水して吸水膨潤させ、脱水乾燥させたものであることを特徴とする請求項2に記載の糖衣錠。 前記糖衣シロップは、砂糖若しくは糖アルコールに水飴を配合したものであることを特徴とする請求項3に記載の糖衣錠。 タブレットを構成する原料粉末若しくは顆粒に、水及び熱水に対し不溶性で、且つ、吸水膨潤性を有する食品素材を添加する工程と、打錠してタブレットを成型する工程と、前記タブレットに糖衣シロップを塗布後にグラニュー糖をかけて砂糖を結晶化乃至は微粉化させる工程とを備えたことを特徴とする糖衣錠の作製方法。 タブレットを構成する原料粉末若しくは顆粒に、寒天またはアルギン酸のいずれかの食品素材を添加する工程と、打錠してタブレットを成型する工程と、前記タブレットに糖衣シロップを塗布後にグラニュー糖をかけて砂糖を結晶化乃至は微粉化させる工程とを備えたことを特徴とする糖衣錠の作製方法。 前記食品素材の添加量が、0.5〜10重量%であることを特徴とする請求項6に記載の糖衣錠の作製方法。 前記寒天が、粉末化された寒天を加水して吸水膨潤させ、脱水乾燥させたものであることを特徴とする請求項8に記載の糖衣錠の作製方法。 前記糖衣シロップは、砂糖若しくは糖アルコールに水飴を配合したものであることを特徴とする請求項7又は8に記載の糖衣錠の作製方法。 【課題】糖衣工程中の割れや欠けを防げる程度の錠剤硬度を保ち、糖衣後も硬化への推移が小さく、ソフトな食感を保持できる糖衣錠およびその製造方法が提供する。【解決手段】タブレットを構成する原料粉末若しくは顆粒に、寒天またはアルギン酸を添加し、打錠してタブレットを成型したものに、糖衣シロップを塗布することにより糖衣錠を得る。【選択図】なし


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特許公報(B2)_糖衣錠およびその作製方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_糖衣錠およびその作製方法
出願番号:2006289356
年次:2012
IPC分類:A61K 47/36,A61K 9/28,A23G 3/34,A23L 1/00


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松堂 忠義 上田 郁子 JP 5046202 特許公報(B2) 20120727 2006289356 20061025 糖衣錠およびその作製方法 浜田食品工業株式会社 506184369 小倉 啓七 100123504 松堂 忠義 上田 郁子 20121010 A61K 47/36 20060101AFI20120920BHJP A61K 9/28 20060101ALI20120920BHJP A23G 3/34 20060101ALI20120920BHJP A23L 1/00 20060101ALI20120920BHJP JPA61K47/36A61K9/28A23G3/00 101A23L1/00 D A61K 47/00 A23L 1/00 A23G 3/00 A61K 9/00 CAPLUS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開平11−127785(JP,A) 特開2000−169365(JP,A) 特開2005−112817(JP,A) 特開平08−322504(JP,A) 特開平10−045628(JP,A) 9 2008105987 20080508 8 20091025 田村 直寛 本発明は、ソフトな食感を保つ糖衣錠およびその作製方法に関するものである。 錠剤、錠菓は、一般的に原料を粉体のまま若しくは顆粒として打錠機にかけて圧縮成型してタブレットを製造する。そして糖衣シロップをタブレットの表面に塗布して乾燥させ糖衣錠を得る。この糖衣工程においては、タブレットの割れ、欠けを防ぐ必要がある。タブレットの割れ、欠けは、品質管理上問題となり、ひどくなると糖衣を継続して実施できなくなる。 タブレットの割れ、欠けを防ぐため、タブレットは比較的硬いもの(例えば、硬度10kg/cm2程度のもの)を使用している。 糖衣層も硬いため、糖衣錠は全体的に硬いものとなり、食感はハードでカリカリといったものであった。 また、これまでのタブレットをセンターに用いた糖衣錠は、作製後、タブレット若しくは糖衣層の水分移行により、時間経過とともに硬くなるという傾向があった。 特に、糖衣工程の際に、糖液濃度65〜75%のハード用糖衣シロップを塗布すると、タブレットセンターに水分が染み込み、糖衣錠作製時は一時的に柔らかくなるものの、時間が経過すると共に、糖衣錠に抱き込まれた水分が徐々に空気中に移行し、糖衣錠の硬度が高くなっていた。なお、硬度は約2週間前後で安定する。 ソフトな食感が求められている近年、糖衣錠の硬さをよりソフトなものにすることが望まれている。 また、寒天が成型したときに十分な錠剤強度が得られると同時に、優れた崩壊性も得られるという性質を併せ持つ錠剤用基剤として利用可能であることが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。しかし、寒天を利用することにより、糖衣錠の食感がソフトですぐ噛め、口溶けが良いといった報告はない。 高齢化社会に向かう我が国にとって、ソフトな食感の糖衣錠が実現すれば、高齢者向けの薬剤若しくはサプリメント(健康補助食品)といった新たな商品市場が開かれる可能性がある。それと同時に、近年の健康志向、環境志向の流れから、食品添加物を使わない天然素材のみからなる錠剤や錠菓の糖衣錠の作製方法が求められている。特開平10−45628号公報 本発明は上述の問題点を考慮してなされたもので、糖衣工程中の割れや欠けを防げる程度の錠剤硬度を保ち、糖衣後も硬化への推移が小さく、柔らかい(ソフトな)食感を保持できる糖衣錠およびその製造方法を提供することを目的とする。 本発明者らは上記課題を解決するため、種々の材料をタブレットに添加し比較評価を行い、寒天またはアルギン酸を用いることが好適であることを見出したものである。 本発明は、寒天またはアルギン酸のいずれかの食品素材を添加したタブレットを用いた糖衣錠である。より具体的には、タブレットを構成する原料粉末若しくは顆粒に、寒天またはアルギン酸を添加し、打錠してタブレットを成型したものに、糖衣シロップを塗布したことを特徴とする糖衣錠である。なお、打錠してタブレットを成型したものに、糖衣シロップを塗布した後にグラニュー糖をかけて砂糖を結晶化乃至は微粉化させる作業は複数回行うことが好ましい。 寒天またはアルギン酸などの、水に対し不溶性で、且つ、吸水膨潤性を有し、水分を抱え込み膨潤する特徴を有する食品素材を原料として、タブレットに添加することにより、時間の経過による糖衣錠の硬度アップを回避でき、ソフトな食感を保てるのである。 また、成型したタブレットに糖衣シロップを塗布する糖衣工程において、タブレットセンターに糖衣シロップをかけた後、グラニュー糖をかけて砂糖を結晶化乃至は微粉化させるのは、糖衣層の結晶がポーラス状の層構造となり、仕上がった糖衣錠の食感をよりソフトなものにできるからである。 ここで、寒天やアルギン酸などの食品素材の添加量が、0.5〜10重量%であることが好ましい。寒天やアルギン酸などの食品素材の添加量を10重量%より多くすると、タブレットの硬度にバラツキが出るのと、重量を一定に制御することが困難であるためである。添加量が過剰であると、タブレットの摩損度試験の結果より、タブレットが割れやすくなり品質管理上好ましくない。また、寒天やアルギン酸などの食品素材の添加量が0.5重量%未満であると効果が現れない。 また、本発明の糖衣錠のタブレットセンターに用いる寒天は、粉末化された寒天を加水して吸水膨潤させ、脱水乾燥させたものであることが好適である。このような寒天の粒子には微細な空隙が存在し、水分を抱え込んだ状態を保持でき、タブレットセンターの糖を溶かさず、結果として糖衣錠にソフトな食感をもたらすからである。 また、本発明の糖衣錠に用いる糖衣シロップは、砂糖若しくは水飴を配合したものが好ましい。一定の水分を保っている水飴を用いることで、仕上がった糖衣錠の食感をよりソフトなものにできるのである。 本発明によれば、糖衣工程中の割れや欠けを防げる程度の錠剤硬度を保ち、糖衣後も硬化への推移が小さく、柔らかい(ソフトな)食感を保持できる糖衣錠およびその製造方法が提供される。 また、本発明は、天然(加工)物を添加したタブレットの糖衣錠であり、自然食品からなる糖衣錠を提供することが可能となる。 以下、本発明の糖衣錠の実施例について、表を参照しながら詳細に説明していく。 また、糖衣錠の食感については、作製した代表サンプルについて、7名のパネラによる食感テストを実施し、何れの糖衣錠がソフトな食感を有するものかを判定した。この食感テストについては後述する。 以下の実施例では、ぶどう糖ベースの顆粒から成るタブレットの糖衣錠を例にして、より具体的に説明していく。 タブレットを構成するぶどう糖ベースの顆粒に、寒天,アルギン酸,結晶セルロース(アビセル),トレハロース,ニンジンパウダー,アルギン酸ナトリウムをそれぞれ1重量%添加し打錠してタブレットを成型したもの、および何も添加していないタブレットを成型したものをセンターとして、糖衣シロップを塗布して糖衣錠を作製した。 成型したタブレットに糖衣シロップを塗布する糖衣工程では、糖衣パンにタブレットを入れ、回転させたタブレットセンターに砂糖と水飴を配合した糖衣シロップをかけ、その後グラニュー糖をかけて回転させることで砂糖を結晶化させる。一定の水分を保っている水飴と、糖衣層の結晶がポーラスになりやすいグラニュー糖を用いることで、仕上がった糖衣錠の食感をよりソフトなものにできる。 ここで、タブレットの配合は下表1に示す。また、打錠規格については下表2に示す。さらに、糖衣シロップの配合については下表3に示す。 なお、タブレットのセンターの重量100%に対して、60%を糖衣割合としている。 ここで、各種添加材料の特徴について説明する。1)寒天 寒天の原料は海藻で、紅藻類(特に、テングサやオゴノリ)が使用されている。寒天は紅藻類から得られる天然多糖類で、紅藻類から熱水により抽出する。寒天は加熱すると溶解し、冷却すると凝固してゲルになる。ゲルは再加熱すると寒天ゾルに戻る熱可逆性を有している。寒天の凝固点は35〜40℃前後であり、室温で固めることが可能である。ゲル化した寒天の融点は80℃以上である。従って、ゼラチンと異なり溶けにくいゲルである。寒天は、水及び熱水に不溶で、吸水により膨潤するという性質を有する。2)アルギン酸 アルギン酸の原料は海藻で、褐藻類(コンプやわかめ)に含まれる天然多糖類である。含有量は乾燥の藻体の30〜60%で、コンブやわかめの主成分であり、天然の食物繊維である。アルギン酸は、水及び熱水に不溶で、吸水により膨潤するという性質を有する。3)結晶セルロース(微結晶セルロース製剤) 原料は植物のパルプ繊維であり、その結晶セルロース領域を抽出して精製したものである。セルロース分子鎖が緻密で規則的な構造を有している。親水性表面からなる多くの空隙を有するため保水性に優れる。4)トレハロース 砂糖などと同じ天然多糖類で、キノコやエビなどに比較的多く含まれている。保湿性が非常に高く、食品や化粧品へ利用されている。トウモロコシなどに含まれるデンプンを原料にして微生物がつくる酵素を利用して、直接デンプンからトレハロースを取り出すことが可能である。トレハロースの性質は、強い保水力を有し、食品中のバインダーとして食品の水の移動を防ぐ。なお、トレハロースは水溶性の糖類である。5)ニンジンパウダー 野菜の代表として、ニンジンの粉末を用いる。6)アルギン酸ナトリウム アルギン酸のナトリウム塩であり、性質はアルギン酸と異なり水溶性である。 上記1)〜6)の添加材料をぶどう糖ベースの顆粒に加えて、混合し打錠してタブレットセンターを作製し、タブレットのセンターの重量100%に対して60%を糖衣割合とし糖衣錠を作製した。糖衣しなかったタブレットの硬度推移(打錠当日と打錠から1ヶ月後の硬度推移)を下表4に、糖衣錠の硬度推移(糖衣当日と糖衣から1ヶ月後の硬度推移)を下表5に示す。なお、硬度の数値単位はkg/cm2である。 ここで、各表におけるコントロールは、何も添加しなかったものを示している。 また、1)〜6)の添加材料において、水・熱水に対しての不溶性、吸水膨潤性の有無を○(有り),△(一部有り),×(無し)で示している。 なお、打錠規格の硬度は統一し、硬度の推移を調べた。 また、糖衣錠の硬度推移において、下表5における従来の糖衣錠(参考)は、従来の糖衣錠の硬度を参考までに示すものである。従来の糖衣錠の場合、ぶどう糖を原料とするタブレットに特に何も添加せず、糖衣シロップに糖液濃度65〜75%のハード用糖衣シロップを用いていた。ハード用糖衣シロップは、例えば、砂糖70%,ゼラチン0.2〜1%,水29〜29.8%の配合のものや、砂糖69%,アラビアガム1〜10%,水21〜30%のものや、糖アルコール69%,アラビアガム1〜10%,水21〜30%のものが使用されていた。 上記の表5から確認できることは、糖衣錠の硬度推移において、コントロールは1ヶ月後に約2倍(1.95)まで硬度が高くなっている。一方、1)〜6)の添加材料を加えた糖衣錠の場合は、いずれも硬度推移が鈍化する傾向があり、特に、寒天若しくはアルギン酸を添加したものは、1ヶ月後の硬度も9以下であり、かつ、1ヶ月後の硬化率も1.8以下と優れた特性を示していることが確認できる。 特に、水及び熱水に対し不溶性で、且つ、吸水膨潤性を有する寒天若しくはアルギン酸を添加したタブレットの糖衣錠は、1日後の硬度も他の添加材料と比較しても硬度5以下と低く、1ヶ月後もなお硬度9以下とソフトな食感を保持できていることが確認できる。 表5における従来の糖衣錠(参考)との比較からわかるように、本発明の糖衣錠では、硬度が格段に柔らかくなっているのである。 なお、重さ、硬度、水分量の物性測定に用いた測定機器を以下に列挙して示す。・重量秤台 :(株)エー・アンド・ディ EK−1200G・硬度測定器 :藤原製作所 HARDNESS TESTER KHT−20N :木屋製作所 木屋式硬度計・水分計 :(株)ケット科学研究所 赤外線水分計 FD−230 次に、上述の添加材料で作製した糖衣錠の食感について、7名のパネラによる食感テストを実施し、何れの糖衣錠がソフトな食感を有するものかを検定したので、これに関して以下に説明する。 食感テストは、順位法の検定表を用いる方法により検定を行った。 試料としては、寒天、アルギン酸、トレハロース、コントロール(何も添加しない)の4種の糖衣錠を用いて、選抜された4種の試料を柔らかいものから順位をつけてもらった。 検定は、各々の試料の順位合計を算出し、有意差の有無を比較する2つの試料の順位合計差を算出して、解析を実施した。 検定の結果を下表6に示す。 各々の試料の順位合計を算出し、有意差の有無を比較する2つの試料の順位合計差の絶対値を算出したものをi)〜vi)に示す。i)(アルギン酸)−(トレハロース)=|10−24|=14ii)(アルギン酸)−(コントロール)=|10−25|=15iii)(アルギン酸)−(寒天)=|10−11|=1iv)(トレハロース)−(コントロール)=|24−25|=1v)(トレハロース)−(寒天)=|24−11|=13vi)(コントロール)−(寒天)=|25−10|=15 上記のi)〜vi)の結果を、順位法の検定表により解析する。パネル数7,試料4,有意水準(5%)で下表7の結果となり、アルギン酸および寒天と、他の素材との間にはその柔らかさにおいて有意差が認められた。 表7より、ソフトな食感を保つ糖衣錠を作製するため、タブレットの粉末若しくは顆粒に添加する原料として、寒天またはアルギン酸が適していることが確認できる。 本発明は、ソフトな食感を保持できる糖衣錠として利用でき、医薬品、健康食品、菓子等に好適に用いられる。寒天またはアルギン酸のいずれかの食品素材を添加し打錠したタブレットを用いた糖衣錠。タブレットを構成する原料粉末若しくは顆粒に、前記食品素材を添加し、打錠してタブレットを成型したものに、糖衣シロップを塗布したことを特徴とする請求項1に記載の糖衣錠。前記食品素材の添加量が、0.5〜10重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の糖衣錠。前記寒天が、粉末化された寒天を加水して吸水膨潤させ、脱水乾燥させたものであることを特徴とする請求項1に記載の糖衣錠。前記糖衣シロップは、砂糖に糖アルコール若しくは水飴を配合したものであることを特徴とする請求項2に記載の糖衣錠。タブレットを構成する原料粉末若しくは顆粒に、寒天またはアルギン酸のいずれかの食品素材を添加する工程と、打錠してタブレットを成型する工程と、前記タブレットに糖衣シロップを塗布する工程とを備えたことを特徴とする糖衣錠の作製方法。前記食品素材の添加量が、0.5〜10重量%であることを特徴とする請求項6に記載の糖衣錠の作製方法。前記寒天が、粉末化された寒天を加水して吸水膨潤させ、脱水乾燥させたものであることを特徴とする請求項6に記載の糖衣錠の作製方法。前記糖衣シロップは、砂糖若しくは水飴を配合したものであることを特徴とする請求項6に記載の糖衣錠の作製方法。


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