タイトル: | 公開特許公報(A)_抗不安剤 |
出願番号: | 2006288926 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | A61K 31/198,A61P 25/22,A23L 1/305,A23K 1/16 |
韓 力 速水 耕介 古瀬 充宏 JP 2008105977 公開特許公報(A) 20080508 2006288926 20061024 抗不安剤 株式会社ファンケル 593106918 国立大学法人九州大学 504145342 韓 力 速水 耕介 古瀬 充宏 A61K 31/198 20060101AFI20080414BHJP A61P 25/22 20060101ALI20080414BHJP A23L 1/305 20060101ALI20080414BHJP A23K 1/16 20060101ALI20080414BHJP JPA61K31/198A61P25/22A23L1/305A23K1/16 301G 6 1 OL 8 2B150 4B018 4C206 2B150DA44 4B018MD19 4B018ME14 4C206AA01 4C206AA02 4C206FA53 4C206MA01 4C206MA04 4C206NA14 4C206ZA05 4C206ZA12 4C206ZA18 本発明は、抗不安剤に関するものである。 不安症は精神疾患の1種であり、発病原因がかなり複雑である。不安症は症状により更にパニック障害、全般性不安障害、恐怖、強迫性障害、外傷後ストレス障害などに分類される。不安症の主な症状は精神障害、気分障害、人格障害、行動障害、睡眠障害などに代表され、これらの‘不安’を適応症に含む医薬品はベンゾジアゼピン系、チエノジアゼピン系、カルバメート系などの50余りの品目にのぼる。 これらの医薬品は不安、焦燥、イライラ、抑うつ、不眠、緊張、恐怖感などの症状に適用されるが、症状を完全に改善、安定させるために何れも長期間に渡って服用する必要がある。この様な、大量、且つ連続的な摂取により薬依存症、興奮、錯乱など重大な副作用が引起される。或いは少量、短期間の使用でも眠気、めまい、脱力、便秘、食欲不振、肝機能障害など‘軽度な’副作用が発生する。何れにしても従来の抗不安剤は副作用を起こし易い欠点を有する。これら抗不安剤による副作用の欠点を改善するために新たな医薬品及び機能性食品などの開発が必要とされる。 近年、ハーブの研究が進み、ウコギ科に属するエゾウコギ、セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)、食品原料用ハーブのひとつであるシミシフーガ(学名:Cimicifuga racemosa 、慣用名:ブラックコホシュ)が抗うつ、リラクゼーションに効果があることが明らかになってきた。これらはハーブ抽出物を利用した飲料として、エゾウコギを含む栄養飲料(許文献1)等の開示がある。 メンタルヘルスの改善、ストレスの緩和は、心身において健康維持に重要な課題ではある。この効果を示す成分として、ハーブ抽出物(エゾウコギ、セントジョーンズワート等)があるが、味臭いの点から、広範囲な食品への応用が難しかった。また、植物の抽出物であるため、メンタルヘルスの改善、ストレスの緩和に効果のある成分以外の成分も摂取することになり、過剰摂取による安全性に疑問があると言われている。アラニンは非必須アミノ酸であるが、肝臓での糖質の合成原料となるアミノ酸で生体のエネルギー生成に重要な役割を果たし、TCA回路の流れを強めることにより脂肪燃焼効果を有する。肝機能の改善効果や下痢によって失われた水分補給、運動後に糖が不足したときに起こるケトーシスを、ケトン体を減らすことにより防ぐ。また、血糖値の低い時に分泌され、グリコーゲンの分解を促進するグルカゴンというホルモンを分泌する。したがって、経口経腸栄養組成物(特許文献2)、末梢静脈投与用輸液(特許文献3)や中心静脈投与用輸液(特許文献4)など体の機能への応用が計られてきた。一方、中枢神経系(脳)に対するアミノ酸や低分子窒素化合物としては、セリン(特許文献5、非特許文献1、 非特許文献2)や クレアチン(グリシン、L−アラニン、S−アデノシルメチオニンからなる化合物)(特許文献6、非特許文献3)が知られている。 本発明者らは以前の試験において、セリンやホスファチジルセリンなどセリンユニットを有する化合物、あるいはグリシン、ホスファチジン酸などに抗不安効果を見出し、特許出願を行った(特願2005-029114号)。さらに、L−セリンなどの投与によりストレス負荷条件下で顕著に睡眠誘導効果が現れることを発見し、その効果を見出して特許出願(特願2005-229309号)した。特開2003−38140号公報特開平08−175987号公報特開平10−087497号公報特開平10−087498号公報特開2005−247841号公報特開2005−348720号公報Koutoku,T. et al., 2005, Neurochemistry International 47:183-189.Asechi,M. et al., 2006, Behavioural Brain Research 170:71-77.Koga,Y. et al., 2005, Neuroscience 132:65-71. 本発明は従来の抗不安剤が有する副作用を発現しない抗不安剤を提供するものである。 本発明者は、抗不安剤など精神疾患を対応する医薬品、食品、特定保健用食品、栄養機能食品、又は健康食品を開発するために鋭意検討を重ねた結果、アラニンに抗不安効果があることを見出した。 すなわち、本発明は、(1)アラニンを含有することを特徴とする抗不安剤。(2)アラニンが、蛋白質加水分解法、化学合成法、酵素法、発酵法、又は天然原料から抽出・精製のいずれかの方法によって製造されたものであることを特徴とする(1)記載の抗不安剤。(3)アラニンの含有量が5質量%以上であることを特徴とする(1)又は(2)記載の抗不安剤。(4)(1)〜(3)いずれかに記載の抗不安剤を含有する抗不安を目的とした医薬品。(5)(1)〜(3)いずれかに記載の抗不安剤を含有する抗不安を目的とした特定保健用食品、栄養機能食品、又は健康食品。(6)(1)〜(3)いずれかに記載の抗不安剤を含有する抗不安を目的とした飼料に関する。 本発明により副作用を起こさず安全な抗不安剤を提供することができた。本発明に関する抗不安効果に有効な化合物としてアラニンを確認することができた。 アラニンは次の化学構造式1に示される化合物である。(構造式1) 本本発明に関わるアラニンは蛋白質加水分解法、化学合成法、酵素法、発酵法の何れかの方法によって製造することができる。また、アラニンは組織の構成成分であることから、収率は低いものも動物、植物などから抽出・精製して製造することもできる。本発明に関わるアラニンは特に製造方法を限定するものではない。 本発明に関わる抗不安剤を製造するには、上記の方法で製造したアラニンを有効成分とするもの又は市販のアラニンを有効成分とするものを原料として用いることができ、常法に従って公知の医薬用無毒性担体と組み合わせて製剤化すればよい。本発明に関わる抗不安剤は、種々の剤型での投与が可能であり、例えば、経口投与剤としては錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、ソフトカプセル剤等の固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤、凍結乾燥製剤等が挙げられ、非経口投与剤としては、注射剤のほか、坐剤、噴霧剤、経皮吸収剤等が挙げられ、これらの製剤は製剤上の常套手段により調製することができる。上記の医薬用無毒性担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、澱粉、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アミノ酸、アルブミン、水、生理食塩水等が挙げられる。また、必要に応じて、安定化剤、滑剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤等の慣用の添加剤を適宜添加することができる。本発明に関わる抗不安剤において、アラニンの投与量は、患者の年齢、体重、症状、疾患の程度、投与スケジュール、製剤形態等により、適宜選択・決定されるが、例えば、1日あたり0.01〜10g/kg体重程度とされ、1日1〜数回に分けて投与してもよい。また、本発明に関わるアラニンは、生体構成成分であり、食品中にも普遍的に含まれている成分であることから安全性が高いと考えられ、不安の予防・改善を目的として、抗不安機能性食品として摂取することもできる。本発明に関わるアラニンを含有することを特徴とする抗不安機能性食品は、特定保健用食品、栄養機能食品、又は健康食品として位置付けることができる。機能性食品としては、例えば、アラニンに適当な助剤を添加した後、慣用の手段を用いて、食用に適した形態、例えば、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル剤、ソフトカプセル剤、ペースト状等に形成したものを用いることができる。この抗不安機能性食品は、そのまま食用に供してもよく、また種々の食品(例えばハム、ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、パン、バター、粉乳、菓子など)に添加して使用したり、水、酒類、果汁、牛乳、清涼飲料水等の飲物に添加して使用してもよい。かかる食品の形態における本発明のアラニンの摂取量は年齢、体重、症状、疾患の程度、食品の形態等により適宜選択・決定されるが、例えば、1日あたり0.01〜10g/kg体重程度とされる。上述のアラニンを含有する抗不安を目的とした医薬品、食品、特定保健用食品、栄養機能食品、又は健康食品中のアラニンの含有量は組成物全量中5質量%以上にすることが望ましい。さらに望ましいのはアラニンの含有量が組成物全量中20質量%以上にすることである。さらに、アラニンを含有する抗不安剤を飼料として家畜、ペットに与えることにより、家畜の情緒が安定し、成長を促進することができる。 アラニンを有効成分とする組成物の抗不安機能を検証することに当たって、本発明者はまず新生ニワトリヒナの脳室内にアラニンを投与し、その後ニワトリヒナの行動を観察した。 ニワトリヒナを集団から1羽だけ隔離すると、鳴き声および運動量が増加する。これは隔離されたヒナにストレスが負荷されていることを意味し、この状態を単離ストレスと呼ぶ。 本実験でアラニンの単離ストレス反応に及ぼす影響について検討を行った。実験では、アラニンの脳室投与の影響を調査した。アラニンを有効成分とする組成物の抗不安機能を検証することに当たって、本発明者はまず新生ニワトリヒナの脳室内に直接アラニンを投与し、その後ニワトリヒナの行動を観察した。〔試験条件〕[実験動物]1日齢卵用種(Julia系統)雄ヒナを村田孵化場(福岡県)より購入し、2群に分けてそれぞれ集団ケージにて飼育した。24時間点灯、室温30℃の環境条件下で、市販飼料(AX、愛知県豊橋飼料株式会社)と水を不断給与して飼育した。[脳室投与]L-アラニン(大阪府和光純薬工業株式会社より購入)を0.1%エバンスブルー入り生理食塩水に溶解し、脳室投与に用いた。投与量は1羽あたり800 nmol/10μlとし、対照群には同量のエバンスブルー入り生理食塩水を脳室投与した。このエバンスブルーは脳室投与の確認のために用いた。[単離ストレス負荷実験]3日齢時に単離ストレス負荷実験を行った。集団の中からヒナを無作為に取り出し脳室投与を施し、その直後にヒナを集団から隔離し透明行動観察アクリルケージ(40×30×20cm)に移した。移動後10分間におけるヒナの鳴き声を録音するとともに自発運動量を測定した。自発運動量の測定には赤外線ビームセンサー(NSAS01およびDAS008、東京都株式会社ニューロサイエンス)を用いた。鳴き声についてはその回数を計数した。[統計処理] 脳室投与が正確に施されていたヒナから得られたデータのみを用いた。繰り返しのある2元配置分散分析で統計処理した。値は平均値±標準誤差(各群6羽)で示した。〔結果〕[鳴き声数] アラニンの脳室投与により鳴き声数が有意に減少した(図1)。すなわち、ストレスが負荷されていると、ヒナは甲高い鳴き声連続して発するが、アラニンの脳室投与により減少する。このことはアラニンがヒナのストレス緩和に有効であることを表している。[自発運動量]アラニンの脳室投与により自発運動量が有意に減少した(図2)。すなわち、ストレスが負荷されていると、ヒナは落ち着きなくあちこち動き回るが、アラニンの脳室投与により自発運動量は同様に減少する。このことはアラニンがヒナのストレス緩和に有効であることを表している。また、上述の試験は検体がニワトリヒナの脳室に投与後直ちに行われたものであるので、これら抗不安効果は、アラニンその物に由来すると推測できる。つまり、少なくとも単体であるアラニンを有効成分とするものには抗不安効果があると言える。 以下に処方例を挙げるが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。〔処方例1〕 抗不安効果を持つアラニンを含有することを特徴とする健康食品用ソフトカプセル剤の製造 アラニン、ホスファチジルセリン25%含有液体大豆レシチン、ビタミンEオイル、ビタミンB1(チアミン硝酸塩)、ビタミンB6(ピリドキシン塩酸塩)、ビタミンB12(シアノコバラミン)、ミツロウとパーム油は表1に示した配合量となるように混合し、30分間撹拌した。80メッシュで篩過した後、真空撹拌機で脱泡処理を行った。ソフトカプセル充填機により内容量が250mgとなるように充填した。皮膜は通常用いられるゼラチン、グリセリン混合物を用いた。乾燥後、液漏れ検査、形状選別検査、目視検査を合格した粒について規格試験を行った結果、カプセル長径、カプセル短径、カプセル総重量、カプセル皮膜重量、カプセル内容物重量、皮膜水分含有量、崩壊時間、酸価、過酸化物価、一般生菌数、大腸菌群等の諸規格を満たす製剤であることが確認された。〔処方例2〕抗不安効果を持つアラニンおよびセリンを含有することを特徴とする健康食品用ソフトカプセル剤の製造 アラニン、セリン、ホスファチジルセリン25%含有液体大豆レシチン、ビタミンEオイル、ビタミンB1(チアミン硝酸塩)、ビタミンB6(ピリドキシン塩酸塩)、ビタミンB12(シアノコバラミン)、ミツロウとパーム油は表1に示した配合量となるように混合し、30分間撹拌した。80メッシュで篩過した後、真空撹拌機で脱泡処理を行った。ソフトカプセル充填機により内容量が250mgとなるように充填した。皮膜は通常用いられるゼラチン、グリセリン混合物を用いた。乾燥後、液漏れ検査、形状選別検査、目視検査を合格した粒について規格試験を行った結果、カプセル長径、カプセル短径、カプセル総重量、カプセル皮膜重量、カプセル内容物重量、皮膜水分含有量、崩壊時間、酸価、過酸化物価、一般生菌数、大腸菌群等の諸規格を満たす製剤であることが確認された。〔処方例3〕 抗不安効果を持つアラニンを含有することを特徴とする健康食品用飲料の製造。アラニン、セリン、クエン酸、マルチトール、エリスリトール、トレハロース、オレンジ果汁、ラカンカエキス、香料は表1に示した様な配合量で配合し、最後に水を50mlになるように加え、原料を水に混合・溶解させ、容器に充填を行い、85℃10分の殺菌を行った。殺菌後冷却し、本飲料を完成させた。 処方例1、2及び3を表1に示す。L−アラニンの脳室投与が単離ストレス反応であるヒナの甲高い鳴き声回数に及ぼす影響L−アラニンの脳室投与が単離ストレス反応であるヒナの自発運動量の増加に及ぼす影響アラニンを含有することを特徴とする抗不安剤。アラニンが、蛋白質加水分解法、化学合成法、酵素法、発酵法、又は天然原料から抽出・精製のいずれかの方法によって製造されたものであることを特徴とする請求項1記載の抗不安剤。アラニンの含有量が、5質量%以上であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の抗不安剤。請求項1〜3のいずれかに記載された抗不安剤を含有することを特徴とする医薬品。請求項1〜3のいずれかに記載された抗不安剤を含有することを特徴とする、特定保健用食品、栄養機能食品、又は健康食品。請求項1〜3のいずれかに記載された抗不安剤を含有することを特徴とする飼料。 【課題】 従来の抗不安剤が有する大量、且つ連続的な摂取による薬依存症、興奮、錯乱など重大な副作用の発現、或いは少量、短期間の使用による眠気、めまい、脱力、便秘、食欲不振、肝機能障害など‘軽度な’副作用を発現することのない、抗不安機能を有する医薬品、食品、特定保健用食品、栄養機能食品、又は健康食品を提供するものである。【解決手段】 本発明はアラニンを含有することを特徴とする抗不安剤を提供するものである。【選択図】 図1