タイトル: | 公開特許公報(A)_カルシウム吸収促進作用を有する食酢飲料およびその製造方法 |
出願番号: | 2006278254 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | A23L 2/52,A23L 2/38,A23L 1/304,A61K 31/19,A61K 33/10,A61P 19/10 |
岸 幹也 深谷 正裕 塚本 義則 長澤 孝志 西澤 直行 JP 2007020584 公開特許公報(A) 20070201 2006278254 20061012 カルシウム吸収促進作用を有する食酢飲料およびその製造方法 株式会社ミツカングループ本社 398065531 矢野 裕也 100086221 岸 幹也 深谷 正裕 塚本 義則 長澤 孝志 西澤 直行 A23L 2/52 20060101AFI20070105BHJP A23L 2/38 20060101ALI20070105BHJP A23L 1/304 20060101ALI20070105BHJP A61K 31/19 20060101ALI20070105BHJP A61K 33/10 20060101ALI20070105BHJP A61P 19/10 20060101ALI20070105BHJP JPA23L2/00 FA23L2/38 RA23L2/38 BA23L1/304A61K31/19A61K33/10A61P19/10 2 1998066071 19980303 OL 10 4B017 4B018 4C086 4C206 4B017LC03 4B017LK01 4B017LK26 4B018MD04 4B018MD92 4B018ME05 4C086AA01 4C086AA02 4C086HA04 4C086HA16 4C086MA02 4C086MA04 4C086NA05 4C086ZA97 4C206AA01 4C206AA02 4C206DA02 4C206MA02 4C206MA04 4C206NA05 4C206ZA97 本発明はカルシウム吸収促進作用を有する食酢飲料およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、カルシウムと共に0.01〜0.25重量%の濃度の食酢由来の酢酸を含有することを特徴とするカルシウムの吸収促進作用を有する食酢飲料、およびその製造方法に関する。 カルシウムの成人1日当たりの栄養所要量は約600mgとされているのに対して、平均摂取量は約540mgでほぼ横ばい状態であり、所要量に満たない唯一の栄養素となっている。その上、腸管におけるカルシウム吸収率の低下などの種々の要因により、生体のカルシウム不足が引き起こされることが指摘されている。 例えば、高齢者に高頻度で発生しやすい骨粗鬆症は、カルシウムの吸収と排泄のバランスが崩れることが主な要因であり、特に閉経後の女性に多く発症する。これは、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が著しく低下し、小腸からのカルシウムの吸収率が低下することが原因の一つであると考えられている。 このようなカルシウム吸収率の低下の解決策として、より吸収されやすい形態のカルシウムを摂取するとかカルシウムの腸管吸収を促進する成分をカルシウムと同時に摂取することなどが研究され、クエン酸リンゴ酸カルシウム(CCM)やカゼインフォスフォペプチド(CPP)が実用化されている。CCMやCPPはいずれも腸管内のイオン性あるいは可溶性のカルシウム量を増大させることにより、腸管吸収を高めることによってカルシウム吸収を促進することが明らかにされている。 しかし、これらの物質は容易に入手できなかったり、高価であったり、また食品の香味に影響を与えることなどから、食品として使用するには制限があった。 また、従来から各種の不溶性カルシウムを食酢に浸漬することによって可溶性のカルシウム量を増大させ、カルシウムの摂取量自体を増加させようとすることが種々検討されている。しかし、これらは、いずれも吸収促進を目的としたものではなく、カルシウムの溶解量を増大させることを目的としていたことから、官能的に酸味を強く感じるような、より高濃度での使用例しかなかった。 同様に、民間療法として生卵を食酢漬けした酢卵のカルシウムの生体利用性が高いことが報告されている。しかし、食酢中の主成分である酢酸と卵殻のカルシウムとが結合して生成する酢酸カルシウムでは、カルシウムの吸収が促進されないことから、酢酸以外の食酢成分あるいは卵の成分に効果があるものと推定されている。 ところで、不溶性カルシウムを酢酸で溶解させた場合に生成する酢酸カルシウムは、各種カルシウム塩の中では溶解度が非常に高いことが知られている。そこで、酢酸カルシウムを用いた出納試験でのカルシウム吸収率の比較や放射性同位体カルシウム(45Ca)でラベルした酢酸カルシウムを使用した腸管組織での吸収実験が行われている。その結果、期待に反して、酢酸カルシウムは他のカルシウム塩と同程度の吸収率であると報告されている。 本発明の目的は、容易に入手可能であり、より安価で、食品の香味に影響を与えず、かつ安全で幅広く食品に利用でき得るカルシウム吸収促進成分を開発し、これを用いてカルシウムの吸収を促進する作用を有する飲料を提供することである。 そこで本発明者らは、従来全く検討されていなかった、食品の香味を損なうことがない低濃度の酢酸について、カルシウムの腸管吸収に対する影響を鋭意検討したところ、カルシウムの吸収が顕著に向上することを見出した。さらに、このような低濃度の酢酸とカルシウムを長期間にわたって摂取することにより、骨代謝を改善できることを見出した。また、食酢でも同等の効果を有することを見出し、本発明を完成するに至ったのである。 すなわち、一般にカルシウム塩の溶解度が高いほど吸収率が高いと考えられていることから、本発明者らは、酢酸が不溶性のカルシウムを可溶化した場合に生成する酢酸カルシウムの溶解度が非常に高いことに着目して検討し、従来実施されていた酢酸濃度よりも低濃度の領域において、酢酸に顕著なカルシウム吸収促進効果があることを見出すと共に、酢酸が主成分であり、かつ安価で容易に入手可能な食酢においても同等の効果を有することを見出して本発明を完成するに至ったのである。 請求項1記載の本発明は、カルシウムと共に0.01〜0.25重量%の濃度の食酢由来の酢酸を含有することを特徴とするカルシウムの吸収促進作用を有する食酢飲料である。 請求項2記載の本発明は、食酢飲料を製造するにあたり、カルシウムと共に0.01〜0.25重量%の濃度となるように食酢由来の酢酸を含有させることを特徴とする、カルシウムの吸収促進作用を有する食酢飲料の製造方法である。 本発明により、カルシウムと共に0.01〜0.25重量%の濃度の食酢由来の酢酸を含有する食酢飲料が提供される。この食酢飲料を摂取することにより、カルシウムの体内への吸収率を向上させ、骨形成能が増加することによってカルシウムの吸収が促進され、成長期の児童のカルシウム補強、老年期の骨粗鬆症などの骨疾患の防止などの効果が期待できる。 以下、本発明について詳細に説明する。 本発明で用いる酢酸は、食品への利用適性を考慮し、特に酢酸を主成分として含有する食酢とする。なかでも香味に大きな影響を及ぼさない穀物酢や好ましい香味を有するリンゴ酢などは特に好ましい。 本発明において、食酢飲料中の酢酸濃度は、0.01〜0.25重量%とすべきである。酢酸濃度が0.01重量%より低い濃度では、カルシウム吸収促進効果がほとんど期待できない。一方、酢酸濃度が0.25重量%を超えると、カルシウム吸収率が減退すると共に酸味を強く感じる。 上記の酢酸濃度は、従来からカルシウムの溶解を促進するために食酢(酢酸濃度4.2重量/容量%以上)を用いた場合などと比較して非常に低い濃度であり、従来のカルシウム酢や酢卵液とは全く異なっている。また、調味や防腐殺菌効果を目的にするような場合の濃度は、通常0.3重量%以上であり、これらの場合とも明確に異なる。 本発明で用いるカルシウムの形態に制限はなく、例えば炭酸カルシウム,水酸化カルシウム,クエン酸カルシウム,塩化カルシウム,グリセロリン酸カルシウム,グルコン酸カルシウム,乳酸カルシウム,酢酸カルシウムなどの食品添加物や牛乳,牛骨粉,卵殻粉,サンゴ粉,貝殻粉などの天然物由来のものでもよいが、特にクエン酸カルシウム,乳酸カルシウム,グルコン酸カルシウムは、溶解性が高く、官能的にも良好で好適である。 カルシウムの濃度は、1日のカルシウム摂取不足量とされる50〜100mgが容易に摂取できるように0.02重量%以上とするのが好ましい。 次に、本発明の食酢飲料の形態としては特に制限がなく、例えば炭酸飲料,乳酸飲料,スポーツドリンクなどが挙げられる。このように飲料の形態とすることは、カルシウム及び酢酸の摂取しやすさの観点などからして好ましい。 酢酸の添加方法についても特に制限はなく、通常の方法によれば良いが、蛋白質のように酸性下で変性を起こす可能性のある食品素材を使用する食品では、あらかじめ他の食品素材と混合した後、酢酸を加えて混合することが望ましい。 以下に本発明の実施例を示すが、本発明の範囲はこれにより何ら制限されるものではない。実施例1(酢酸によるカルシウムの吸収促進) 7週齢のSD系雌ラットの卵巣を摘除手術を施した後、8週齢から標準飼料AIN−76(American Institute of Nutrition, J. Nutrition, Vol.107, P.1340-1348, 1977)に準じた組成の対照飼料(蛋白源として卵白アルブミンを、またカルシウム源として炭酸カルシウム0.75重量%添加)で10日間ミールフィーディングを行い、摂食時間を制限したのち、11日目に4群(1群16匹)に分けた。飼育条件は明暗12時間、湿度50%、室温23℃とした。 11日目の朝に、4群はそれぞれ対照飼料、対照飼料に各種酢酸を添加した酢酸0.0672%添加飼料、酢酸0.21%添加飼料または酢酸0.27%添加飼料をそれぞれ5gづつ1.5時間摂取させた。各飼料には45CaCl2 を1μCi/g添加した。各飼料群は飼料摂取終了直後、さらに2群(各群8匹)に分け、1群は直ちに屠殺し、他の1群は1時間後に屠殺した。 屠殺した後、血中の45Ca及び総Ca濃度、第四腰椎及び左大腿骨の45Ca量を分析した。結果を表1及び表2に示す。 a/b: 1時間後/直後 a/b: 1時間後/直後 表1の血中45Ca及びCa濃度の測定結果では、酢酸を飼料に添加した場合には腸管でのカルシウム吸収が促進され、吸収された45Caが血中に移行することにより、1時間後の血中45Ca濃度は直後よりも高かった。なお、これらの血中45Ca濃度の増加効果は、酢酸0.067%添加飼料群、酢酸0.21%添加飼料群が高く、酢酸0.27%添加飼料群ではかなり低下する傾向が認められた。一方、対照飼料群では直後と1時間後ではほとんど血中45Ca濃度は変化しなかった。なお、血中総カルシウム量は生体では厳密に制御されているため、各飼料群間で差はほとんどなかった。 また、表2の第四腰椎や大腿骨中の45Ca量の測定結果から判断して、吸収されたカルシウムは血中から骨に移行したと考えられた。さらに、骨への移行程度は酢酸を飼料に添加した場合には対照飼料群に比べて高くなっており、かつ酢酸0.067%添加飼料群、酢酸0.21%添加飼料群でより高く、これらに比べて酢酸0.27%添加飼料群ではやや低下する傾向が認められた。実施例2(動物試験による骨代謝改善効果) SD系雌ラット(7週齢)を3群(1群8匹)に分け、1群は偽手術(Sham群)、他の2群は卵巣の摘除手術を施した後、標準飼料AIN−76に準じた組成の対照飼料(蛋白源として卵白アルブミンを、またカルシウム源として炭酸カルシウム0.75重量%添加)で8週齢から給餌した。Sham群は対照飼料で6週間飼育した。卵巣を摘除した2群については、1群は対照飼料で(OVX−C)、他の1群は酢酸を0.0672%添加した対照飼料(OVX−A)で6週間飼育した。 飼育終了の前日は代謝ケージで飼育し、尿を採取した。飼育終了後に血中成分、尿中成分、第四腰椎の骨塩量及び骨密度を分析した。結果を表3及び表4に示した。 表3に示した如く、卵巣摘除に伴ってOVX−C群ではSham群と比較して、第四腰椎の骨塩量や骨密度の低下が見られたが、酢酸を添加した飼料で飼育したOVX−A群では骨塩量や骨密度の低下が抑制された。 表4のうち、骨形成の代謝マーカーであるアルカリフォスファターゼとオステオカルシンの量は、卵巣摘除に伴う骨代謝亢進により、Sham群と比較してOVX−C群で上昇したが、OVX−A群ではOVX−C群よりさらに高値であった。 一方、骨吸収の代謝マーカーである酒石酸耐性酸性フォスファターゼの量は、Sham群とOVX−C群では差がなかったが、OVX−A群で低い傾向にあった。また、尿中デオキシピリジノリン/ピリジノリン比は、卵巣摘除による骨吸収亢進のため、Sham群に比較しOVX−C群で顕著に増加したが、OVX−C群とOVX−A群の間ではほとんど差は見られなかった。 これらの結果から、酢酸を飼料に添加することによって生体中へのカルシウムの吸収が促進され、その結果、主として骨形成が促進されて骨代謝が改善され、卵巣摘除に伴う骨塩量や骨密度の低下が抑制されたと考えられる。実施例3(穀物酢でのカルシウム出納動物試験) SD系雌ラット(7週齢)を卵巣の摘除手術を施した後、標準飼料AIN−76に準じた組成の対照飼料(蛋白源として精製大豆蛋白を、またカルシウム源として炭酸カルシウム0.75重量%添加)で8週齢から給餌した。その後、3群(1群8匹)に分け、1群は対照飼料で(OVX−C群)、他の1群は市販穀物酢を0.4%(酢酸0.0168%に相当)添加した対照飼料(OVX−LV群)、残りの1群は市販穀物酢を1.6%(酢酸0.0672%に相当)添加した対照飼料(OVX−HV群)で4週間飼育した。 飼育終了直前の4日間は、代謝ケージで飼育し、採糞及び採尿し、糞中及び尿中のカルシウム量を分析し、当該期間中の餌からのカルシウム摂取量から糞中総カルシウム量を差し引いた差を求め、カルシウム摂取量で割った値に100を乗じて見かけのカルシウム吸収率とした。また、飼料からのカルシウム摂取量から糞中及び尿中のカルシウムの総量を差し引いた差をカルシウム摂取量で割った値に100を乗じて見かけのカルシウム保有率を求めた。さらに、飼育終了後に屠殺し、左大腿骨を分析した。これらの結果を表5及び表6に示した。 表5に示したように、市販穀物酢を添加した飼料で飼育した場合には、食酢の添加量が多くなるほど、見かけの吸収率及び保有率とも向上した。また、表6のように、大腿骨のカルシウム含量も飼料への食酢添加量に応じて顕著に増加したが、リン含量はほとんど増加しなかった。 これらの結果から、カルシウムと共に非常に低濃度で食酢を含有する食品を摂取することにより、カルシウムの吸収が促進され、骨のカルシウム含量を高められることがわかる。 以上の実施例1、実施例2及び実施例3の結果から判断して、カルシウムの吸収を促進しうる酢酸の有効濃度は0.01〜0.25重量%であると判断され、かつ同濃度の酢酸濃度になるように食酢を添加した場合でも、同等の効果が得られることが確認された。実施例4(飲料への適用例) 以下の組成比で各種成分を配合した。すなわち、果糖ぶどう糖液糖46g、5倍濃縮リンゴ果汁10g、蜂蜜9g、クエン酸(無水)5g、リンゴ酸1g、市販リンゴ酢(酢酸酸度5重量/容量%)14ml、グルコン酸カルシウム4g、リンゴフレーバー香料1gに水を加えて1000gとし、混合溶解して飲料を調製した。 この飲料の酢酸濃度は0.07重量%で、カルシウム濃度は0.0356重量%であった。該飲料は適度の酸味を呈する清涼感のある可飲適性に優れた飲料であり、カルシウムとともに所定量の酢酸を含有しており、摂取したカルシウムは効率よく吸収されるものと考えられる。 カルシウムと共に0.01〜0.25重量%の濃度の食酢由来の酢酸を含有することを特徴とするカルシウムの吸収促進作用を有する食酢飲料。 食酢飲料を製造するにあたり、カルシウムと共に0.01〜0.25重量%の濃度となるように食酢由来の酢酸を含有させることを特徴とする、カルシウムの吸収促進作用を有する食酢飲料の製造方法。 【課題】 容易に入手可能であり、より安価で、食品の香味に影響を与えず、かつ安全で幅広く食品に利用でき得るカルシウム吸収促進成分を開発し、これを用いてカルシウムの吸収を促進する作用を有する飲料を提供すること。【解決手段】 カルシウムと共に0.01〜0.25重量%の濃度の食酢由来の酢酸を含有することを特徴とするカルシウムの吸収促進作用を有する食酢飲料、および、食酢飲料を製造するにあたり、カルシウムと共に0.01〜0.25重量%の濃度となるように食酢由来の酢酸を含有させることを特徴とする、前記食酢飲料の製造方法を提供する。【選択図】 なし