生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_魚類滑走細菌症ワクチン
出願番号:2006258078
年次:2008
IPC分類:A61K 39/07,A61P 43/00


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石丸 克也 加藤 文仁 村田 修 JP 2008074797 公開特許公報(A) 20080403 2006258078 20060922 魚類滑走細菌症ワクチン 学校法人近畿大学 000125347 清原 義博 100082072 石丸 克也 加藤 文仁 村田 修 A61K 39/07 20060101AFI20080307BHJP A61P 43/00 20060101ALI20080307BHJP JPA61K39/07A61P43/00 171 10 1 OL 11 特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年3月30日 社団法人 日本水産学会主催の「平成18年度日本水産学会大会」において文書をもって発表 4C085 4C085BA15 4C085CC05 4C085CC07 4C085DD03 4C085DD23 本発明は魚類滑走細菌症ワクチンに関し、より詳細には、テナキバクラム マリティマム(Tenacibaculum maritimum)不活化菌体又はその成分を有効成分とする、主に浸漬用の魚類滑走細菌症ワクチンに関する。 滑走細菌症は、マダイ、カンパチ、ヒラメ、フグ等の海産魚類に発病する病気で、その原因菌はテナキバクラム マリティマム〔Tenacibaculum maritimum(以前はFlexibacter maritimus)〕であることが判明している(非特許文献1)。テナキバクラム マリティマムによる滑走細菌症は、最初にアメリカでサケ科魚類に発生が報告された魚病で、日本でも1970年頃から種々の海産養殖魚に発生して、ときには大きな被害をもたらすようになった(非特許文献2)。 特に稚魚期に於いて、滑走細菌症による被害が多く、その症状は、稚魚では口唇部や尾鰭に糜爛や壊死あるいは崩壊が起こり、幼魚や成魚では頭部、躯幹、鰭、鰓等に発赤や出血ときには潰瘍が見られる(非特許文献3)。閉鎖系である養殖領域に於ける滑走細菌症は、個体が高密度に存在していることから、それらの感染の影響は大きく、海産養殖産業において深刻な問題となっている。 滑走細菌は、ニフルスチレン酸(特許文献1)や、テトラサイクリン系の抗生物質に感受性があるので、滑走細菌症の防除対策としては、その大部分をこれら薬剤に頼っているのが現状である。例えば、ニフルスチレン酸ナトリウムに関しては、水産用医薬品としても承認されているし、オキシテトラサイクリン等の抗生物質を経口投与することが有効である(特許文献2)ことも報告されている。 しかしながら、これら抗菌性薬剤等の使用は、多剤耐性菌の増加や、薬剤の魚体への残留による食品衛生上の問題および環境中への拡散による公衆衛生上の問題を孕んでいる。さらに経口投与は餌を喰わない重症魚には効果が無いことや、ニフルスチレン酸ナトリウムは、現在ヒラメの稚魚にしか使用できないこと等の問題もある。 以上より、マダイ、カンパチ等の海産魚類の滑走細菌症予防に有効であって、且つ環境汚染等の問題が生じない新規製剤の開発が望まれている。Wakabayashi H, Hikida M, Masumura K. Flexibacter maritimus sp.nov., a pathogens of marine fishes. Int.J.Sys.Bac.1986; 36: 396-398Hikida M, Wakabayashi H, Egusa S, Masumura K. Flexibacter sp., a gliding bacterium pathogenic to some marine fishes in Japan. Bull.Jpn Soc. Fish. 1979; 45: 421-428Bernardet J-F, Kerouault B, Michel C. Comparative study on Flexibacter maritimus strains isolated from farmed sea bass (Dicentrarchus labrax) in France. Fish Pathol. 1994; 29: 105-111.特開平8−009821号公報特開平6−165646号公報 本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、マダイ、カンパチ等の海産魚類が、テナキバクラム マリティマムに感染して、滑走細菌症を発病するのを効果的に防止することができるとともに、食品衛生上の問題や、環境中への拡散による公衆衛生上の問題を生じさせない新規製剤を提供することにある。 本発明者らは、鋭意研究の結果、テナキバクラム マリティマム(Tenacibaculum maritimum)不活化菌体又はその成分を有効成分とするワクチンが、マダイ等の海産魚類に発病する滑走細菌症を効果的に防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。 即ち、請求項1に係る発明は、テナキバクラム マリティマムの不活化菌体又はその成分を有効成分とする魚類滑走細菌症ワクチンに関する。 請求項2に係る発明は、浸漬ワクチンである請求項1記載の魚類滑走細菌症ワクチンに関する。 請求項3に係る発明は、テナキバクラム マリティマムの菌株が、R2、SM3322c、OM3510、MC9210からなる群より選択される何れか1つである請求項1又は2に記載の魚類滑走細菌症ワクチンに関する。 請求項4に係る発明は、マダイの滑走細菌症に適応される請求項1乃至3何れか記載の魚類滑走細菌症ワクチンに関する。 請求項5に係る発明は、テナキバクラム マリティマムの不活化菌体又はその成分を含有する魚類滑走細菌症ワクチン組成物に関する。 請求項6に係る発明は、浸漬用のワクチン組成物である請求項5記載の魚類滑走細菌症ワクチン組成物に関する。 請求項7に係る発明は、テナキバクラム マリティマムの菌株が、R2、SM3322c、OM3510、MC9210からなる群より選択される何れか1つである請求項5又は6に記載の魚類滑走細菌症ワクチン組成物に関する。 請求項8に係る発明は、マダイの滑走細菌症に適応される請求項5乃至7何れか記載の魚類滑走細菌症ワクチン組成物に関する。 請求項9に係る発明は、テナキバクラム マリティマムの不活化菌体又はその成分の有効量を浸漬法によって投与することを特徴とする魚類滑走細菌症の予防法に関する。 請求項10に係る発明は、沖出しの1〜2週間前に、テナキバクラム マリティマムの不活化菌体又はその成分を懸濁した溶液に20分以上浸漬する請求項9に記載の魚類滑走細菌症の予防法に関する。 本発明のワクチン又はワクチン組成物を用いれば、ブリ、カンパチ、マダイ等の魚類滑走細菌症を効率的に予防することができるとともに、元来自然物であるので、食品衛生上の問題や環境中への拡散による公衆衛生上の問題を生じさせることもない。 本発明者らは、鋭意研究の結果、テナキバクラム マリティマム(Tenacibaculum maritimum)(以下「本菌」と称す場合がある)の不活化菌体、又はその成分を有効成分とするワクチンが、滑走細菌症の予防に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。以下、本発明の実施形態について説明する。 本発明のワクチンは、テナキバクラム マリティマム(Tenacibaculum maritimum)の不活化菌体またはその成分を用いる。詳細には、テナキバクラム マリティマム(Tenacibaculum maritimum)のR2株、SM3322c株、OM3510株、MC9210株の不活化菌体またはその成分を用いるのが、より強力な滑走細菌症の予防効果を得る観点から望ましい。 テナキバクラム マリティマムは、グラム陰性、好気性で、屈曲運動をする黄色色素(カロテノイド)をもつ長桿菌(0.5×2〜3μm)である。その発育は30℃、pH7が最適で、海水(30%)を必要とする他、性状がカラムナリス病菌や、その他の細菌と違っているので、日本で新種として命名された。この細菌はタンパク質を分解するが、デンプンその他の多糖を分解せず、細菌を溶解(溶菌)する作用をもっている。 通常、細菌を培養した場合、誘導期、対数増殖期、定常期、死滅期及び生残期に分けられるが、本発明のワクチンでは、対数増殖期のものを用いるのが望ましい。 本発明のワクチンに用いる菌体(テナキバクラム マリティマム)は、本菌を常法により培養し、対数増殖期に採取することにより得られる。本菌の培養は、本菌を適当な培地に接種し常法に従って培養すればよい。例えば、テナキバクラム マリティマム(T.maritimum)を、70%海水サイトファーガ寒天培地で、25℃、48時間培養するのが望ましい。 本菌の成分には、菌体の膜成分及び分泌物が含まれる。これらの成分を採取するには、不活化菌体の超音波破砕等により行うのが好ましい。 得られた不活化菌体又はその成分は、濾過、蒸発脱水法、濃縮、凍結乾燥等により濃縮して用いるのが好ましい。 本菌の不活化菌体又はその成分は、そのままワクチンとして使用してもよいが、薬学的に許容される液状、又は固体状の担体とともにワクチン組成物として使用してもよい。 当該ワクチン組成物の形態としては、注射用組成物、経口投与組成物、魚類浸漬用組成物、飼料組成物等が挙げられるが、魚類浸漬用組成物とするのが望ましい。 液状の担体としては、リン酸緩衝液が挙げられる。固体状の担体としては、タルク、シュークロースなどの賦形剤が挙げられる。飼料組成物とするには、通常の魚類の飼料に本菌の不活化菌体又はその成分を混合すればよい。又、これらのワクチン組成物にはアジュバントを添加して抗原性を高めてもよい。 本発明のワクチン又はワクチン組成物の対象魚種としては、本菌による滑走細菌症になる魚類であれば制限されず、例えばブリ、カンパチ等のブリ属魚類の他、マダイ、ヒラメ等の海産魚類が挙げられるが、マダイの滑走細菌症に対するのが最も効果的である。〔ワクチン接種方法〕 魚類ワクチンの接種法として代表的なものに、経口法、注射法及び浸漬法が知られているが、経口法は、胃の消化酵素等によりワクチンの免疫原性が低下してしまうことから高い有効性・持続性を得ることは困難である等の欠点が、また注射法は、稚魚への適用が困難であること、多大な労力が必要であること、魚に与えるストレスが大きいこと、作業者への誤注射の危険性があること等の欠点がある。特に注射法は、稚魚への適用が困難なので、滑走細菌症のような稚魚期に甚大な被害をもたらす疾病に用いることができない。 一方、浸漬法は(経口法に比べ)有効性が高く大量の魚を同時に処理することができ、注射法のように多大な労力が必要である等といった欠点もない。また稚魚への適用も可能である。但し、魚体に取り込まれるワクチンが少量である為、高い有効性が認められるのは、ビブリオ病など一部の疾病に対するワクチンに限られている。 本発明のワクチン又はワクチン組成物を接種する方法としては「浸漬法」によるのが好ましい。即ち、本発明のワクチン又はワクチン組成物は「浸漬法」によっても十分に高い有効性が認められ、浸漬法の長所である多大な労力が必要ないこと、稚魚への適用も可能であること等から、主に浸漬用として、本発明のワクチン又はワクチン組成物が、特に稚魚期に甚大な被害をもたらす滑走細菌症に対するワクチンとして極めて有用である。 本発明のワクチン又はワクチン組成物の投与は成魚でもよいが、滑走細菌症に罹患する前、例えば稚魚の段階が好ましい。 投与方法は、上記したとおり「浸漬法」によるのが好ましいが、浸漬に用いるワクチン溶液としては、本発明のワクチン又はワクチン組成物を1μg/mL〜100mg/mLの濃度で、海水に懸濁したもの等が望ましい。〔ワクチンの浸漬時間〕 ワクチンの浸漬(投与)時間としては、10分以上行うのが好ましいが、20分以上行うのがより好ましい。この理由は、10分を下回る時間、浸漬したとしても十分なワクチン効果を発揮することができないからである。 尚、後述する実施例に於いて、15分間浸漬した試験区よりも30分間浸漬した試験区の方が、高いワクチン効果が得られることが実証されている(図3参照)。〔ワクチンの浸漬濃度〕 投与方法は、上記したとおり「浸漬法」によるのが好ましく、海水に本発明のワクチン又はワクチン組成物を1μg/mL〜100mg/mLの濃度で懸濁したものが好ましく使用される。〔ワクチンの浸漬回数〕 浸漬(投与)回数は1回でもよいが、2回以上行うのがワクチン効果をより強固に発揮するためには好ましい。後述する実施例に於いても、1回投与の試験区よりも2回投与の試験区で、より高いワクチン効果(有効率が高い傾向)が認められている(図6参照)。〔ワクチン浸漬後、沖出しする迄の経過日数〕 より高いワクチン効果(有効率が高い効果)を得る為には、ワクチンの浸漬時間は20分以上行うのがより好ましいが、この場合、ワクチンの浸漬(投与)は沖出しする少なくとも1週間前(好ましくは1〜2週間)に行うのが、好ましい(図1及び2参照)。 以下に実施例を示すが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。実験I 「供試菌株の相違によるワクチン有効性の比較」 マダイ由来14株、ヒラメ由来1株およびトラフグ由来1株で不活化ワクチンを作製し、その有効性をマダイにおいて検討した。〔供試魚〕 近畿大学水産研究所白浜実験場で2003年に生産されたマダイ(平均全長5.4cm,平均体重3.1g)を450尾使用した。〔供試ワクチン〕 マダイ由来12株(強毒株6株,弱毒株6株),ヒラメ由来1株(弱毒株),トラフグ由来1株(強毒株)を70%海水改変サイトファーガ寒天培地で25℃、48時間培養した後、1.5%ホルマリンPBSで4℃,24時間不活化した菌体を供試ワクチンとした。〔試験区設定およびワクチンの投与〕 200L容ポリカーボネイト水槽15基に30尾ずつ収容した。14基をワクチン投与区、1基を対照区に設定した。ワクチン投与は浸漬法によって行い、浸漬濃度は湿菌重量で20μg/mL、浸漬時間は30分とした。〔人為感染〕 70%海水改変サイトファーガ寒天培地で25℃、約24時間培養したテナキバクラム マリティマム(Tenacibaculum maritimum)R2株を、濾過海水で100μg/mLに懸濁し、供試魚を30分間浸漬した。人為感染の翌日から10日後まで約12時間ごとに死亡魚を取り上げ、有効率を〔数1〕における式において算出した。 R2株を100mg/mLの濃度に懸濁した菌液をBCG接種用管針で供試魚体表に接種し、人為感染の翌日から14日後まで約12時間ごとに死亡魚を取り上げた。 結果を下記の〔表1〕に示す。〔結果〕・ 強毒株群では生残率20〜90%、有効率17.2〜89.7%であった。・ また、弱毒株群では生残率0〜72.4%,有効率0〜71.5%であった。・ 対照区の生残率は3.3%であった。・ 強毒株群では、SM2202sを除き、40%以上の有効率が認められた。・ 特に、SM3322c区およびOM3510区では有効率75%以上であった。・ 弱毒株群ではMC9210区で71.5%の有効率が得られたものの、それ以外の試験区では0〜34.5%であった。 以上より、テナキバクラム マリティマムの中でも、R2株、SM3322c株、OM3510株、MC9210株の不活化菌体またはその成分を用いるのが望ましいことが示された。〔ホルマリン不活化ワクチンの浸漬投与によるマダイの滑走細菌症の防除〕実験 II : ワクチン浸漬時間および浸漬後経過日数の長短による比較実験 III: ワクチン2回投与の検討実験 II : ワクチン浸漬時間および浸漬後経過日数の長短による比較 「材料と方法」(1)供試魚 : マダイ稚魚400尾(平均全長8.8cm,平均体重14.6g)(2)供試ワクチン : Tenacibaculum maritimum R2株を、70%海水サイトファーガ寒天培地で、25℃、48時間培養し、1.5%ホルマリンPBSで4℃,48時間の条件で不活化した。このようにして得られたワクチンを、以下「FKC」(Formalin killed cells)と称す。尚、FKCは本発明にかかるワクチンである。(3)飼育水槽 : 200L容パンライト水槽(4)収容尾数 : 50尾ずつ(5)ワクチン(FKC)投与 : 20mg/mLのFKC懸濁海水に浸漬させることにより行った。FKC投与は、15分間浸漬、30分間浸漬の2通りで実施した。(6)平均水温 : 20.7℃(7)人為感染 : 人為感染は、Tenacibaculum maritimum R2を1.1×108CFU/mLに懸濁した海水に20分間浸漬することにより行った。 供試魚にFKCを投与(5)した後、人為感染(7)を行い、FKCの感染防御効果を検討した。FKC投与から3日後、1週間後および2週間後に、人為感染させた試験区を夫々設け、FKC非投与の対照区と比較することにより、FKCの有効率を算出した。 尚、有効率は〔数1〕における式において算出した。表2に各試験区を示す。〔結果〕 1)図1は、本発明にかかる滑走細菌症ワクチンを「15分間浸漬させた場合」におけるマダイの生存率(%)の推移を示したグラフであるが、FKC投与から人為感染までの日数が1週間のもの(前記表2における第2段目)が、3日のもの(同第1段目)及び2週間(同第3段目)のものと比して、格段に高い生存率(%)が示された。 2)図2は、本発明にかかる滑走細菌症ワクチンを「30分間浸漬させた場合」におけるマダイの生存率(%)の推移を示したグラフであるが、FKC投与から人為感染迄の日数が1週間、2週間のものが、3日のものと比して、格段に高い生存率(%)が示された。 3)以上より、本発明のワクチンを30分浸漬させた場合の方が、15分間浸漬させた場合と比して、高いワクチン効果(生存率%)を発揮することが示された。 さらに、15分浸漬の場合および30分間浸漬の場合の双方において、ワクチン浸漬後の沖出し迄の日数は、1週間程度(厳密には4日以上であることが本発明者らによって確認されている)、若しくはそれ以上(〜2週間)空けることが、より高いワクチン効果(有効率が高い効果)を得る為には好ましいことが示された。実験 III: ワクチン2回投与の検討 「材料と方法」(1)供試魚 : マダイ稚魚240尾(平均全長4.9cm,平均体重1.6g)(2)供試ワクチン(FKC) : Tenacibaculum maritimum R2株を、70%海水サイトファーガ寒天培地で、25℃、48時間培養し、1.5%ホルマリンPBSで4℃,48時間の条件で不活化した。尚、FKCは本発明にかかるワクチンである。(3)飼育水槽 : 500L容パンライト水槽(4)収容尾数 : 60尾ずつ(5)ワクチン(FKC)投与 : 20mg/mLのFKC懸濁海水に30分間浸漬させることにより行った。 FKC投与(浸漬)は、2回投与(人為感染2週間前および1週間前の2回)、人為感染2週間前の1回投与、人為感染1週間前の1回投与の3通りで実施した(表3参照)。(6)平均水温 : 20.0℃(7)人為感染 : Tenacibaculum maritimum R2株を、懸濁海水に30尾ずつ20分間浸漬することにより行った。(8)浸漬濃度 : 前記人為感染(7)において、Tenacibaculum maritimum R2株の浸漬濃度として、(1)1.6×107CFU/mLの場合と、(2)2.4×107CFU/mLの場合の2通りで実施した(表4参照)。〔結果〕 1)図4は、Tenacibaculum maritimum R2株を、1.6×107CFU/mLの濃度で浸漬させた場合におけるマダイの生存率(%)の推移を示したグラフであるが、人為感染2週間前から1週間置きにFKCを2回投与したもの(前記表3における第1段目)について最も高い生存率(%)が認められ(80,0%)、次いで、人為感染1週間前にFKCを1回投与したもの(同第2段目)についても高い生存率(%)が認められた(65,0%)。 2)図5は、Tenacibaculum maritimum R2株を、2.4×107CFU/mLの濃度で浸漬させた場合におけるマダイの生存率(%)の推移を示したグラフであるが、人為感染2週間前から1週間置きにFKCを2回投与したものについて最も高い生存率(%)が認められ(74.1%)、次いで、人為感染1週間前および2週間前にFKCを1回投与したもの(前記表3における第2及び3段目)についても高い生存率(%)が認められた(ともに59.3%)。 3)以上より、本発明のワクチンを2回浸漬した方が、1回のみの浸漬と比して、高いワクチン効果(生存率%)を発揮することが示された(図6参照)。〔まとめ〕・ 実験II、実験IIIともにFKCの効果が認められた。・ 実験IIでは15分浸漬区よりも30分浸漬区で有効率が高い傾向が認められた。・ FKCを投与してから3日後に攻撃した区では生残率が低かった。 ・ 実験IIIでは1回投与区よりも2回投与区で有効率が高い傾向が認められた。〔結論〕 マダイの滑走細菌症の防除に浸漬ワクチンが有効である。 浸漬時間は30分以上行うのが好ましい。 ワクチンを投与してから少なくとも4日以上経てから沖出しすることが有効である。 ワクチンの充分な防御効果を得るためには沖出し前に水槽内で2回以上免疫することが望ましい。本発明にかかる滑走細菌症ワクチンを15分間浸漬させた場合におけるマダイの生存率(%)の推移を示したグラフである。本発明にかかる滑走細菌症ワクチンを30分間浸漬させた場合におけるマダイの生存率(%)の推移を示したグラフである。本発明にかかる滑走細菌症ワクチンを浸漬(投与)させた後、人為感染までの日数が、3日の場合、1週間の場合および2週間の場合におけるマダイに対するワクチンの有効率(%)を夫々比較したグラフである(左側:FKC浸漬15分間によるマダイに対するワクチンの有効率、右側:FKC浸漬30分間によるマダイに対するワクチンの有効率)。Tenacibaculum maritimum R2株を、1.6×107CFU/mLの濃度で浸漬させた場合におけるマダイの生存率(%)の推移を示したグラフである。Tenacibaculum maritimum R2株を、2.4×107CFU/mLの濃度で浸漬させた場合におけるマダイの生存率(%)の推移を示したグラフである。本発明にかかる滑走細菌症ワクチンを、人為感染2週間前および1週間前の2回投与(浸漬)した場合、人為感染1週間前に1回投与した場合および人為感染2週間前に1回投与した場合におけるマダイに対するワクチンの有効率(%)を、夫々比較したグラフである。テナキバクラム マリティマムの不活化菌体又はその成分を有効成分とする魚類滑走細菌症ワクチン。浸漬ワクチンである請求項1記載の魚類滑走細菌症ワクチン。テナキバクラム マリティマムの菌株が、R2、SM3322c、OM3510、MC9210からなる群より選択される何れか1つである請求項1又は2に記載の魚類滑走細菌症ワクチン。マダイの滑走細菌症に適応される請求項1乃至3何れか記載の魚類滑走細菌症ワクチン。テナキバクラム マリティマムの不活化菌体又はその成分を含有する魚類滑走細菌症ワクチン組成物。浸漬用のワクチン組成物である請求項5記載の魚類滑走細菌症ワクチン組成物。テナキバクラム マリティマムの菌株が、R2、SM3322c、OM3510、MC9210からなる群より選択される何れか1つである請求項5又は6に記載の魚類滑走細菌症ワクチン組成物。マダイの滑走細菌症に適応される請求項5乃至7何れか記載の魚類滑走細菌症ワクチン組成物。テナキバクラム マリティマムの不活化菌体又はその成分の有効量を浸漬法によって投与することを特徴とする魚類滑走細菌症の予防法。沖出しの1〜2週間前に、テナキバクラム マリティマムの不活化菌体又はその成分を懸濁した溶液に20分以上浸漬する請求項9に記載の魚類滑走細菌症の予防法。 【課題】 マダイ、カンパチ等の海産魚類が、テナキバクラム マリティマムに感染して、滑走細菌症を発病するのを効果的に防止することができるとともに、食品衛生上の問題や、環境中への拡散による公衆衛生上の問題を生じさせない新規製剤を提供する。【解決手段】 テナキバクラム マリティマムの不活化菌体又はその成分を有効成分とする魚類滑走細菌症ワクチンとする。【選択図】 図1


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特許公報(B2)_マダイ滑走細菌症ワクチン及びマダイ滑走細菌症ワクチン組成物並びにマダイ滑走細菌症の予防法

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タイトル:特許公報(B2)_マダイ滑走細菌症ワクチン及びマダイ滑走細菌症ワクチン組成物並びにマダイ滑走細菌症の予防法
出願番号:2006258078
年次:2013
IPC分類:A61K 39/07,A61K 9/08,A61P 31/04


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石丸 克也 加藤 文仁 村田 修 JP 5240811 特許公報(B2) 20130412 2006258078 20060922 マダイ滑走細菌症ワクチン及びマダイ滑走細菌症ワクチン組成物並びにマダイ滑走細菌症の予防法 学校法人近畿大学 000125347 清原 義博 100082072 石丸 克也 加藤 文仁 村田 修 20130717 A61K 39/07 20060101AFI20130627BHJP A61K 9/08 20060101ALI20130627BHJP A61P 31/04 20060101ALI20130627BHJP JPA61K39/07A61K9/08A61P31/04 171 A61K 39/07 A61K 9/08 A61P 31/04 CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 国際公開第00/005341(WO,A1) 特開昭54−023118(JP,A) 特開平05−139994(JP,A) 特開平09−176043(JP,A) WAKABAYASHI,H. et al,FLEXIBACTER-MARITIMUS NEW-SPECIES A PATHOGEN OF MARINE FISHES,International Journal of Systematic Bacteriology,1986年,Vol.36, No.3,p.396-398 DESOLME,B. et al,Freeze-drying of Flavobacterium columnare, Flavobacterium psychrophilum and Flexibacter maritimus,Diseases of Aquatic Organisms,1996年,Vol.27, No.1,p.77-80 Fisheries Science,2005年,Vol.71,p.563-567 浸漬ワクチンによるマダイの滑走細菌症防除,平成18年度日本水産学会大会 講演要旨集,2006年 3月,p.86 4 2008074797 20080403 11 20090915 特許法第30条第1項適用 平成18年3月30日 社団法人 日本水産学会主催の「平成18年度日本水産学会大会」において文書をもって発表 瀬下 浩一 本発明はマダイ滑走細菌症ワクチンに関し、より詳細には、テナキバクラム マリティマム(Tenacibaculum maritimum)不活化菌体を有効成分とする、主に浸漬用のマダイ滑走細菌症ワクチンに関する。 滑走細菌症は、マダイ、カンパチ、ヒラメ、フグ等の海産魚類に発病する病気で、その原因菌はテナキバクラム マリティマム〔Tenacibaculum maritimum(以前はFlexibacter maritimus)〕であることが判明している(非特許文献1)。テナキバクラム マリティマムによる滑走細菌症は、最初にアメリカでサケ科魚類に発生が報告された魚病で、日本でも1970年頃から種々の海産養殖魚に発生して、ときには大きな被害をもたらすようになった(非特許文献2)。 特に稚魚期に於いて、滑走細菌症による被害が多く、その症状は、稚魚では口唇部や尾鰭に糜爛や壊死あるいは崩壊が起こり、幼魚や成魚では頭部、躯幹、鰭、鰓等に発赤や出血ときには潰瘍が見られる(非特許文献3)。閉鎖系である養殖領域に於ける滑走細菌症は、個体が高密度に存在していることから、それらの感染の影響は大きく、海産養殖産業において深刻な問題となっている。 滑走細菌は、ニフルスチレン酸(特許文献1)や、テトラサイクリン系の抗生物質に感受性があるので、滑走細菌症の防除対策としては、その大部分をこれら薬剤に頼っているのが現状である。例えば、ニフルスチレン酸ナトリウムに関しては、水産用医薬品としても承認されているし、オキシテトラサイクリン等の抗生物質を経口投与することが有効である(特許文献2)ことも報告されている。 しかしながら、これら抗菌性薬剤等の使用は、多剤耐性菌の増加や、薬剤の魚体への残留による食品衛生上の問題および環境中への拡散による公衆衛生上の問題を孕んでいる。さらに経口投与は餌を喰わない重症魚には効果が無いことや、ニフルスチレン酸ナトリウムは、現在ヒラメの稚魚にしか使用できないこと等の問題もある。 以上より、マダイ、カンパチ等の海産魚類の滑走細菌症予防に有効であって、且つ環境汚染等の問題が生じない新規製剤の開発が望まれている。Wakabayashi H, Hikida M, Masumura K. Flexibacter maritimus sp.nov., a pathogens of marine fishes. Int.J.Sys.Bac.1986; 36: 396-398Hikida M, Wakabayashi H, Egusa S, Masumura K. Flexibacter sp., a gliding bacterium pathogenic to some marine fishes in Japan. Bull.Jpn Soc. Fish. 1979; 45: 421-428Bernardet J-F, Kerouault B, Michel C. Comparative study on Flexibacter maritimus strains isolated from farmed sea bass (Dicentrarchus labrax) in France. Fish Pathol. 1994; 29: 105-111.特開平8−009821号公報特開平6−165646号公報 本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、マダイが、テナキバクラム マリティマムに感染して、滑走細菌症を発病するのを効果的に防止することができるとともに、食品衛生上の問題や、環境中への拡散による公衆衛生上の問題を生じさせない新規製剤を提供することにある。 本発明者らは、鋭意研究の結果、テナキバクラム マリティマム(Tenacibaculum maritimum)不活化菌体を有効成分とするワクチンが、マダイ等の海産魚類に発病する滑走細菌症を効果的に防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。 即ち、請求項1に係る発明は、テナキバクラム マリティマムの不活化菌体を有効成分とするマダイ滑走細菌症ワクチンであって、浸漬ワクチンであるマダイ滑走細菌症ワクチンに関する。 請求項2に係る発明は、テナキバクラム マリティマムの不活化菌体を含有するマダイ滑走細菌症ワクチン組成物であって、浸漬用のワクチン組成物であるマダイ滑走細菌症ワクチン組成物に関する。 請求項3に係る発明は、テナキバクラム マリティマムの不活化菌体の有効量を浸漬法によって投与することを特徴とするマダイ滑走細菌症の予防法に関する。 請求項4に係る発明は、沖出しの1〜2週間前に、テナキバクラム マリティマムの不活化菌体を懸濁した溶液に20分以上浸漬する請求項3記載のマダイ滑走細菌症の予防法に関する。 本発明のワクチン又はワクチン組成物を用いれば、マダイ等の魚類滑走細菌症を効率的に予防することができるとともに、元来自然物であるので、食品衛生上の問題や環境中への拡散による公衆衛生上の問題を生じさせることもない。 本発明者らは、鋭意研究の結果、テナキバクラム マリティマム(Tenacibaculum maritimum)(以下「本菌」と称す場合がある)の不活化菌体、又はその成分を有効成分とするワクチンが、滑走細菌症の予防に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。以下、本発明の実施形態について説明する。 本発明のワクチンは、テナキバクラム マリティマム(Tenacibaculum maritimum)の不活化菌体またはその成分を用いる。詳細には、テナキバクラム マリティマム(Tenacibaculum maritimum)のR2株、SM3322c株、OM3510株、MC9210株の不活化菌体またはその成分を用いるのが、より強力な滑走細菌症の予防効果を得る観点から望ましい。 テナキバクラム マリティマムは、グラム陰性、好気性で、屈曲運動をする黄色色素(カロテノイド)をもつ長桿菌(0.5×2〜3μm)である。その発育は30℃、pH7が最適で、海水(30%)を必要とする他、性状がカラムナリス病菌や、その他の細菌と違っているので、日本で新種として命名された。この細菌はタンパク質を分解するが、デンプンその他の多糖を分解せず、細菌を溶解(溶菌)する作用をもっている。 通常、細菌を培養した場合、誘導期、対数増殖期、定常期、死滅期及び生残期に分けられるが、本発明のワクチンでは、対数増殖期のものを用いるのが望ましい。 本発明のワクチンに用いる菌体(テナキバクラム マリティマム)は、本菌を常法により培養し、対数増殖期に採取することにより得られる。本菌の培養は、本菌を適当な培地に接種し常法に従って培養すればよい。例えば、テナキバクラム マリティマム(T.maritimum)を、70%海水サイトファーガ寒天培地で、25℃、48時間培養するのが望ましい。 本菌の成分には、菌体の膜成分及び分泌物が含まれる。これらの成分を採取するには、不活化菌体の超音波破砕等により行うのが好ましい。 得られた不活化菌体又はその成分は、濾過、蒸発脱水法、濃縮、凍結乾燥等により濃縮して用いるのが好ましい。 本菌の不活化菌体又はその成分は、そのままワクチンとして使用してもよいが、薬学的に許容される液状、又は固体状の担体とともにワクチン組成物として使用してもよい。 当該ワクチン組成物の形態としては、注射用組成物、経口投与組成物、魚類浸漬用組成物、飼料組成物等が挙げられるが、魚類浸漬用組成物とするのが望ましい。 液状の担体としては、リン酸緩衝液が挙げられる。固体状の担体としては、タルク、シュークロースなどの賦形剤が挙げられる。飼料組成物とするには、通常の魚類の飼料に本菌の不活化菌体又はその成分を混合すればよい。又、これらのワクチン組成物にはアジュバントを添加して抗原性を高めてもよい。 本発明のワクチン又はワクチン組成物の対象魚種としては、マダイの滑走細菌症に対するのが最も効果的である。〔ワクチン接種方法〕 魚類ワクチンの接種法として代表的なものに、経口法、注射法及び浸漬法が知られているが、経口法は、胃の消化酵素等によりワクチンの免疫原性が低下してしまうことから高い有効性・持続性を得ることは困難である等の欠点が、また注射法は、稚魚への適用が困難であること、多大な労力が必要であること、魚に与えるストレスが大きいこと、作業者への誤注射の危険性があること等の欠点がある。特に注射法は、稚魚への適用が困難なので、滑走細菌症のような稚魚期に甚大な被害をもたらす疾病に用いることができない。 一方、浸漬法は(経口法に比べ)有効性が高く大量の魚を同時に処理することができ、注射法のように多大な労力が必要である等といった欠点もない。また稚魚への適用も可能である。但し、魚体に取り込まれるワクチンが少量である為、高い有効性が認められるのは、ビブリオ病など一部の疾病に対するワクチンに限られている。 本発明のワクチン又はワクチン組成物を接種する方法としては「浸漬法」によるのが好ましい。即ち、本発明のワクチン又はワクチン組成物は「浸漬法」によっても十分に高い有効性が認められ、浸漬法の長所である多大な労力が必要ないこと、稚魚への適用も可能であること等から、主に浸漬用として、本発明のワクチン又はワクチン組成物が、特に稚魚期に甚大な被害をもたらす滑走細菌症に対するワクチンとして極めて有用である。 本発明のワクチン又はワクチン組成物の投与は成魚でもよいが、滑走細菌症に罹患する前、例えば稚魚の段階が好ましい。 投与方法は、上記したとおり「浸漬法」によるのが好ましいが、浸漬に用いるワクチン溶液としては、本発明のワクチン又はワクチン組成物を1μg/mL〜100mg/mLの濃度で、海水に懸濁したもの等が望ましい。〔ワクチンの浸漬時間〕 ワクチンの浸漬(投与)時間としては、10分以上行うのが好ましいが、20分以上行うのがより好ましい。この理由は、10分を下回る時間、浸漬したとしても十分なワクチン効果を発揮することができないからである。 尚、後述する実施例に於いて、15分間浸漬した試験区よりも30分間浸漬した試験区の方が、高いワクチン効果が得られることが実証されている(図3参照)。〔ワクチンの浸漬濃度〕 投与方法は、上記したとおり「浸漬法」によるのが好ましく、海水に本発明のワクチン又はワクチン組成物を1μg/mL〜100mg/mLの濃度で懸濁したものが好ましく使用される。〔ワクチンの浸漬回数〕 浸漬(投与)回数は1回でもよいが、2回以上行うのがワクチン効果をより強固に発揮するためには好ましい。後述する実施例に於いても、1回投与の試験区よりも2回投与の試験区で、より高いワクチン効果(有効率が高い傾向)が認められている(図6参照)。〔ワクチン浸漬後、沖出しする迄の経過日数〕 より高いワクチン効果(有効率が高い効果)を得る為には、ワクチンの浸漬時間は20分以上行うのがより好ましいが、この場合、ワクチンの浸漬(投与)は沖出しする少なくとも1週間前(好ましくは1〜2週間)に行うのが、好ましい(図1及び2参照)。 以下に実施例を示すが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。実験I 「供試菌株の相違によるワクチン有効性の比較」 マダイ由来14株、ヒラメ由来1株およびトラフグ由来1株で不活化ワクチンを作製し、その有効性をマダイにおいて検討した。〔供試魚〕 近畿大学水産研究所白浜実験場で2003年に生産されたマダイ(平均全長5.4cm,平均体重3.1g)を450尾使用した。〔供試ワクチン〕 マダイ由来12株(強毒株6株,弱毒株6株),ヒラメ由来1株(弱毒株),トラフグ由来1株(強毒株)を70%海水改変サイトファーガ寒天培地で25℃、48時間培養した後、1.5%ホルマリンPBSで4℃,24時間不活化した菌体を供試ワクチンとした。〔試験区設定およびワクチンの投与〕 200L容ポリカーボネイト水槽15基に30尾ずつ収容した。14基をワクチン投与区、1基を対照区に設定した。ワクチン投与は浸漬法によって行い、浸漬濃度は湿菌重量で20μg/mL、浸漬時間は30分とした。〔人為感染〕 70%海水改変サイトファーガ寒天培地で25℃、約24時間培養したテナキバクラム マリティマム(Tenacibaculum maritimum)R2株を、濾過海水で100μg/mLに懸濁し、供試魚を30分間浸漬した。人為感染の翌日から10日後まで約12時間ごとに死亡魚を取り上げ、有効率を〔数1〕における式において算出した。 R2株を100mg/mLの濃度に懸濁した菌液をBCG接種用管針で供試魚体表に接種し、人為感染の翌日から14日後まで約12時間ごとに死亡魚を取り上げた。 結果を下記の〔表1〕に示す。〔結果〕・ 強毒株群では生残率20〜90%、有効率17.2〜89.7%であった。・ また、弱毒株群では生残率0〜72.4%,有効率0〜71.5%であった。・ 対照区の生残率は3.3%であった。・ 強毒株群では、SM2202sを除き、40%以上の有効率が認められた。・ 特に、SM3322c区およびOM3510区では有効率75%以上であった。・ 弱毒株群ではMC9210区で71.5%の有効率が得られたものの、それ以外の試験区では0〜34.5%であった。 以上より、テナキバクラム マリティマムの中でも、R2株、SM3322c株、OM3510株、MC9210株の不活化菌体またはその成分を用いるのが望ましいことが示された。〔ホルマリン不活化ワクチンの浸漬投与によるマダイの滑走細菌症の防除〕実験 II : ワクチン浸漬時間および浸漬後経過日数の長短による比較実験 III: ワクチン2回投与の検討実験 II : ワクチン浸漬時間および浸漬後経過日数の長短による比較 「材料と方法」(1)供試魚 : マダイ稚魚400尾(平均全長8.8cm,平均体重14.6g)(2)供試ワクチン : Tenacibaculum maritimum R2株を、70%海水サイトファーガ寒天培地で、25℃、48時間培養し、1.5%ホルマリンPBSで4℃,48時間の条件で不活化した。このようにして得られたワクチンを、以下「FKC」(Formalin killed cells)と称す。尚、FKCは本発明にかかるワクチンである。(3)飼育水槽 : 200L容パンライト水槽(4)収容尾数 : 50尾ずつ(5)ワクチン(FKC)投与 : 20mg/mLのFKC懸濁海水に浸漬させることにより行った。FKC投与は、15分間浸漬、30分間浸漬の2通りで実施した。(6)平均水温 : 20.7℃(7)人為感染 : 人為感染は、Tenacibaculum maritimum R2を1.1×108CFU/mLに懸濁した海水に20分間浸漬することにより行った。 供試魚にFKCを投与(5)した後、人為感染(7)を行い、FKCの感染防御効果を検討した。FKC投与から3日後、1週間後および2週間後に、人為感染させた試験区を夫々設け、FKC非投与の対照区と比較することにより、FKCの有効率を算出した。 尚、有効率は〔数1〕における式において算出した。表2に各試験区を示す。〔結果〕 1)図1は、本発明にかかる滑走細菌症ワクチンを「15分間浸漬させた場合」におけるマダイの生存率(%)の推移を示したグラフであるが、FKC投与から人為感染までの日数が1週間のもの(前記表2における第2段目)が、3日のもの(同第1段目)及び2週間(同第3段目)のものと比して、格段に高い生存率(%)が示された。 2)図2は、本発明にかかる滑走細菌症ワクチンを「30分間浸漬させた場合」におけるマダイの生存率(%)の推移を示したグラフであるが、FKC投与から人為感染迄の日数が1週間、2週間のものが、3日のものと比して、格段に高い生存率(%)が示された。 3)以上より、本発明のワクチンを30分浸漬させた場合の方が、15分間浸漬させた場合と比して、高いワクチン効果(生存率%)を発揮することが示された。 さらに、15分浸漬の場合および30分間浸漬の場合の双方において、ワクチン浸漬後の沖出し迄の日数は、1週間程度(厳密には4日以上であることが本発明者らによって確認されている)、若しくはそれ以上(〜2週間)空けることが、より高いワクチン効果(有効率が高い効果)を得る為には好ましいことが示された。実験 III: ワクチン2回投与の検討 「材料と方法」(1)供試魚 : マダイ稚魚240尾(平均全長4.9cm,平均体重1.6g)(2)供試ワクチン(FKC) : Tenacibaculum maritimum R2株を、70%海水サイトファーガ寒天培地で、25℃、48時間培養し、1.5%ホルマリンPBSで4℃,48時間の条件で不活化した。尚、FKCは本発明にかかるワクチンである。(3)飼育水槽 : 500L容パンライト水槽(4)収容尾数 : 60尾ずつ(5)ワクチン(FKC)投与 : 20mg/mLのFKC懸濁海水に30分間浸漬させることにより行った。 FKC投与(浸漬)は、2回投与(人為感染2週間前および1週間前の2回)、人為感染2週間前の1回投与、人為感染1週間前の1回投与の3通りで実施した(表3参照)。(6)平均水温 : 20.0℃(7)人為感染 : Tenacibaculum maritimum R2株を、懸濁海水に30尾ずつ20分間浸漬することにより行った。(8)浸漬濃度 : 前記人為感染(7)において、Tenacibaculum maritimum R2株の浸漬濃度として、(1)1.6×107CFU/mLの場合と、(2)2.4×107CFU/mLの場合の2通りで実施した(表4参照)。〔結果〕 1)図4は、Tenacibaculum maritimum R2株を、1.6×107CFU/mLの濃度で浸漬させた場合におけるマダイの生存率(%)の推移を示したグラフであるが、人為感染2週間前から1週間置きにFKCを2回投与したもの(前記表3における第1段目)について最も高い生存率(%)が認められ(80,0%)、次いで、人為感染1週間前にFKCを1回投与したもの(同第2段目)についても高い生存率(%)が認められた(65,0%)。 2)図5は、Tenacibaculum maritimum R2株を、2.4×107CFU/mLの濃度で浸漬させた場合におけるマダイの生存率(%)の推移を示したグラフであるが、人為感染2週間前から1週間置きにFKCを2回投与したものについて最も高い生存率(%)が認められ(74.1%)、次いで、人為感染1週間前および2週間前にFKCを1回投与したもの(前記表3における第2及び3段目)についても高い生存率(%)が認められた(ともに59.3%)。 3)以上より、本発明のワクチンを2回浸漬した方が、1回のみの浸漬と比して、高いワクチン効果(生存率%)を発揮することが示された(図6参照)。〔まとめ〕・ 実験II、実験IIIともにFKCの効果が認められた。・ 実験IIでは15分浸漬区よりも30分浸漬区で有効率が高い傾向が認められた。・ FKCを投与してから3日後に攻撃した区では生残率が低かった。 ・ 実験IIIでは1回投与区よりも2回投与区で有効率が高い傾向が認められた。〔結論〕 マダイの滑走細菌症の防除に浸漬ワクチンが有効である。 浸漬時間は30分以上行うのが好ましい。 ワクチンを投与してから少なくとも4日以上経てから沖出しすることが有効である。 ワクチンの充分な防御効果を得るためには沖出し前に水槽内で2回以上免疫することが望ましい。本発明にかかる滑走細菌症ワクチンを15分間浸漬させた場合におけるマダイの生存率(%)の推移を示したグラフである。本発明にかかる滑走細菌症ワクチンを30分間浸漬させた場合におけるマダイの生存率(%)の推移を示したグラフである。本発明にかかる滑走細菌症ワクチンを浸漬(投与)させた後、人為感染までの日数が、3日の場合、1週間の場合および2週間の場合におけるマダイに対するワクチンの有効率(%)を夫々比較したグラフである(左側:FKC浸漬15分間によるマダイに対するワクチンの有効率、右側:FKC浸漬30分間によるマダイに対するワクチンの有効率)。Tenacibaculum maritimum R2株を、1.6×107CFU/mLの濃度で浸漬させた場合におけるマダイの生存率(%)の推移を示したグラフである。Tenacibaculum maritimum R2株を、2.4×107CFU/mLの濃度で浸漬させた場合におけるマダイの生存率(%)の推移を示したグラフである。本発明にかかる滑走細菌症ワクチンを、人為感染2週間前および1週間前の2回投与(浸漬)した場合、人為感染1週間前に1回投与した場合および人為感染2週間前に1回投与した場合におけるマダイに対するワクチンの有効率(%)を、夫々比較したグラフである。 テナキバクラム マリティマムの不活化菌体を有効成分とするマダイ滑走細菌症ワクチンであって、浸漬ワクチンであるマダイ滑走細菌症ワクチン。 テナキバクラム マリティマムの不活化菌体を含有するマダイ滑走細菌症ワクチン組成物であって、浸漬用のワクチン組成物であるマダイ滑走細菌症ワクチン組成物。 テナキバクラム マリティマムの不活化菌体の有効量を浸漬法によって投与することを特徴とするマダイ滑走細菌症の予防法。 沖出しの1〜2週間前に、テナキバクラム マリティマムの不活化菌体を懸濁した溶液に20分以上浸漬する請求項3に記載のマダイ滑走細菌症の予防法。


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