タイトル: | 公開特許公報(A)_熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性評価方法および熱可塑性エラストマー成形体の製造方法 |
出願番号: | 2006257698 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | G01N 24/08,G01N 33/44,C08L 75/04 |
大音 徳 丸山 大地 JP 2008076302 公開特許公報(A) 20080403 2006257698 20060922 熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性評価方法および熱可塑性エラストマー成形体の製造方法 トヨタ自動車株式会社 000003207 大川 宏 100081776 大音 徳 丸山 大地 G01N 24/08 20060101AFI20080307BHJP G01N 33/44 20060101ALI20080307BHJP C08L 75/04 20060101ALI20080307BHJP JPG01N24/08 510PG01N33/44C08L75/04 18 1 OL 23 4J002 4J002CK021 4J002FD026 4J002FD056 4J002FD066 4J002FD136 4J002FD176 本発明は、熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性を評価する評価方法、および、耐ブリード性に優れた成形体を効率よく製造する熱可塑性エラストマー成形体の製造方法に関する。 熱可塑性エラストマーは、加硫を必要とせずに熱可塑性樹脂と同様な成形加工性を有するという特徴をもつため、自動車の内装材や、家電、医療用・食品用機器の部品、雑貨などに使用されている。そのため、機械的性質や耐摩耗性などの他、耐ブリード性や耐ブルーム性(以下「耐ブリード性」と総称する)に優れ製品の外観や触感の悪化が少ない熱可塑性エラストマーが求められている。近年では、耐ブリード性を高めた様々な熱可塑性エラストマーが開発され、使用されている。 熱可塑性エラストマー成形体(以下、単に「成形体」と略記することもある)のブリード物質としては、滑剤(離型剤)、分散剤、安定剤(加水分解防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤など)、可塑剤、難燃剤、ブロッキング防止剤、オリゴマーおよびモノマーが挙げられる。熱可塑性エラストマー成形体は熱可塑性エラストマーを含む原料から得られるが、原料の製造工程における製造条件のばらつきや成形体の成形条件のばらつきに起因して、ブリード物質が増加したり、熱可塑性エラストマー中でのブリード物質の包括許容量が低下したりする。そのため、組成などを変更してオリゴマー等の形成やブリードを抑制した熱可塑性エラストマーを原料として成形を行っても、成形条件によってはブリード物質(ブルーム物質)が成形体の表面にブリードアウト(ブルームアウト)することがある。このようなブリードアウトを抑制するためには、熱可塑性エラストマー成形体の製造工程において熱可塑性エラストマーを含む原料をロットごと変更したり成形体の成形条件を制御したりする必要がある。 ところが、成形体表面のブリード現象(ブルーム現象)は、時間の経過にともなって出現する現象であり、たとえば、成形後1ヶ月経って初めて観察されることもある。そのため、成形体の表面のブリード物質の有無を目視で判別できるようになるのは、成形体の成形から長時間が経過した後である。したがって、成形して間もない成形体の耐ブリード性を判定したり、熱可塑性エラストマー成形体の製造工程にブリードを判定する工程を組み込むとともに判定結果を製造条件にフィードバックしたりするのは、これまで困難であるとされてきた。 また、熱可塑性エラストマー成形体の原料は、成形体の離型性を向上させるために、シリコーン等の離型剤が所定の量で成形体の表面に浸出するように調製されている。したがって、離型剤も成形体の表面にブリードする。しかしながら、離型剤は、熱可塑性エラストマー組成物に起因するオリゴマーやモノマー等のブリード物質とは異なる。さらに、成形型の表面性状により、成形体の表面にムラが生じることもあるため、成形体の表面が不均一に見える場合もある。つまり、表面の不具合が、オリゴマーやモノマー等のブリード物質に起因するものであるのか、他の要因からの不均一であるのか、を目視で判別するのは不可能である。 特許文献1および特許文献2には、質量分析計を用いてブリード物質の分子量および構造を得る表面分析方法が開示されている。また、特許文献3には、赤外線分光分析を用いてブリード物質の分析を行う表面分析方法が開示されている。しかしながら、これらの方法は単なる表面分析方法であって、熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性や成形体の製造工程における製造条件の制御を目的としたものではない。 また、非特許文献1には、パルスNMR(核磁気共鳴)によるスピン−スピン緩和時間測定を用いたエラストマー材料の分子運動性の評価が記載されている。しかしながら、非特許文献1は、パルスNMRによりエラストマー材料の耐ブリード性を評価することまでは述べられていない。特開2002−148157号公報特開2001−153842号公報特開平11−326158号公報福森、「パルス法NMRのエラストマー材料への応用」、豊田中央研究所R&Dレビュー、1993年6月、第28巻、第2号、p.11−22 本発明は、上記問題点に鑑み、核磁気共鳴分析やブリード物質の質量分析を行うことで熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性を迅速に評価することができる評価方法、および、この評価方法を用いて成形体の製造条件の制御を効率よく行うことができる熱可塑性エラストマー成形体の製造方法を提供することを目的とする。 <核磁気共鳴分析を用いる熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性評価方法および熱可塑性エラストマー成形体の製造方法> 本発明の熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性評価方法は、主として熱可塑性エラストマーを含むエラストマー原料を加熱・成形して得られる熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性を評価する評価方法であって、 前記成形体の少なくとも一部を用いたパルスNMRによる核磁気共鳴分析により自由誘導減衰信号を得る分析工程と、 該自由誘導減衰信号を複数の成分に波形分離するとともに各成分の成分量およびスピン−スピン緩和時間を算出する分離算出工程と、 算出された成分量およびスピン−スピン緩和時間から選択される少なくとも1つの値に応じて前記成形体の耐ブリード性を判定する判定工程と、 よりなることを特徴とする。 本発明において評価される成形体の耐ブリード性は、熱可塑性エラストマーがもつオリゴマーやモノマーの他、エラストマー原料に添加される添加剤(分散剤、安定剤、可塑剤、難燃剤、ブロッキング防止剤など)などである。これらの物質は、熱可塑性エラストマーの性質に応じた包括許容量があり、包括許容量を超えるとブリードする。すなわち、これらの物質は、熱可塑性エラストマーに起因するブリード物質である。添加剤であっても、成形直後に表面に浸出するように設計・配合された滑剤などの添加剤(離型剤など)は、評価の対象ではない。 また、本発明の熱可塑性エラストマー成形体の製造方法は、主として熱可塑性エラストマーを含むエラストマー原料を加熱・成形して成形体を連続的に成形する熱可塑性エラストマー成形体の製造方法において、 少なくとも1つの成形体を前述の耐ブリード性評価方法により評価するとともに評価結果に応じて成形体の製造条件を制御することで、該成形体の耐ブリード性を管理することを特徴とする。 ここで、「成形体の製造条件を制御する」とは、熱可塑性エラストマー成形体の成形条件を制御するのみならず、エラストマー原料のロットを変更することも含む。なお、「エラストマー原料のロット」とは、同一条件で製造されたエラストマー原料の集まりである。 <質量分析を用いる熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性評価方法および熱可塑性エラストマー成形体の製造方法> 本発明の熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性評価方法は、主として熱可塑性エラストマーを含むエラストマー原料を加熱・成形して得られる熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性を評価する評価方法であって、 前記成形体の表面から採取されたブリード物質を複数の成分に分離するとともに各成分を質量分析する分析工程と、 該分析工程での分析結果に応じて前記成形体の耐ブリード性を判定する判定工程と、 よりなることを特徴とする。 本発明において評価される成形体の耐ブリード性は、熱可塑性エラストマーがもつオリゴマーやモノマーの他、エラストマー原料に添加される添加剤(分散剤、安定剤、可塑剤、難燃剤、ブロッキング防止剤など)などである。これらの物質は、熱可塑性エラストマーの性質に応じた包括許容量があり、包括許容量を超えるとブリードする。すなわち、これらの物質は、熱可塑性エラストマーに起因するブリード物質である。添加剤であっても、成形直後に表面に浸出するように設計・配合された滑剤などの添加剤(離型剤など)は、評価の対象ではない。 また、本発明の熱可塑性エラストマー成形体の製造方法は、主として熱可塑性エラストマーを含むエラストマー原料を加熱・成形して成形体を連続的に成形する熱可塑性エラストマー成形体の製造方法において、 少なくとも1つの成形体を前述の耐ブリード性評価方法により評価するとともに評価結果に応じて前記エラストマー原料のロットを変更することで、該成形体の耐ブリード性を管理することを特徴とする。なお、「エラストマー原料のロット」とは、同一条件で製造されたエラストマー原料の集まりである。 <核磁気共鳴分析を用いる熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性評価方法および熱可塑性エラストマー成形体の製造方法> 本発明の熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性評価方法では、核磁気共鳴分析、特に、パルスNMRによる核磁気共鳴分析を用いる。核磁気共鳴分析では成形体そのものを分析するため、同一の成形体であれば、成形直後であっても成形後1ヶ月経っても同じ分析結果が得られる。したがって、成形直後であって成形体の表面にブリード物質が存在しない場合であっても、成形体の耐ブリード性を評価することができる。さらに、パルスNMRは、分析用の試料の作製が容易であるとともに分析時間を多く要しない。すなわち、熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性を迅速に評価することができる。 また、核磁気共鳴分析によれば、エラストマー原料に含まれる熱可塑性エラストマーに起因するブリード物質(オリゴマーやモノマー、可塑剤など)を対象として耐ブリード性を評価できる。 本発明の熱可塑性エラストマー成形体の製造方法によれば、核磁気共鳴分析を用いた上記の評価方法の評価結果に応じて成形体の製造条件を制御するため、耐ブリード性に優れた熱可塑性エラストマー成形体を効率よく製造することができる。さらに、熱可塑性エラストマー成形体を構成する分子の高次構造(たとえば結晶化度)は、成形条件に応じて変化する。核磁気共鳴分析では、成形体を構成する分子全体が分析されるため、エラストマー原料の管理のみならず成形条件の制御も可能である。 <質量分析を用いる熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性評価方法および熱可塑性エラストマー成形体の製造方法> 本発明の熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性評価方法によれば、成形体の表面から採取されたブリード物質を複数の成分に分離するとともに各成分を質量分析する。ブリード物質を複数の成分に分離して各成分を質量分析することで、特定の分子量をもつブリード物質に着目して成形体耐ブリード性を評価できる。したがって、本発明の評価方法によれば、目視でブリードアウトを確認できてもブリード物質が熱可塑性エラストマーに起因するブリード物質(オリゴマーやモノマー、可塑剤など)であるのかどうかがわからない場合であっても、成形体の耐ブリード性の判定が可能である。すなわち、エラストマー原料に含まれる熱可塑性エラストマーに起因するブリード物質を対象として耐ブリード性を評価することができる。 本発明の熱可塑性エラストマー成形体の製造方法によれば、上記の評価方法の評価結果に応じて成形体の製造条件を制御することができるため、耐ブリード性に優れた熱可塑性エラストマー成形体を効率よく製造することができる。 以下に、本発明の熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性評価方法および熱可塑性エラストマー成形体の製造方法を実施するための最良の形態を説明する。本発明の熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性評価方法には、成形体自体をNMR分析する「核磁気共鳴分析を用いる方法」あるいは成形体の表面から採取されたブリード物質を複数の成分に分離して各成分を質量分析する「質量分析を用いる方法」がある。以下、それぞれの方法について別々に説明する。 なお、本発明の熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性評価方法および本発明の熱可塑性エラストマー成形体の製造方法は、下記の実施形態に限定されるものではない。本発明の評価方法および製造方法は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。 <核磁気共鳴分析を用いる熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性評価方法および熱可塑性エラストマー成形体の製造方法> 本発明の熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性評価方法および熱可塑性エラストマー成形体の製造方法は、主として熱可塑性エラストマーを含むエラストマー原料を加熱・成形して得られる熱可塑性エラストマー成形体(以下「成形体」と略記)の耐ブリード性を評価する。 エラストマー原料は、従来から成形に用いられている一般的なエラストマー原料であればよく、粉末状やペレット状の原料を用いることができる。エラストマー原料に含まれる熱可塑性エラストマーに特に限定はなく、ブロック共重合体からなるエラストマーであればよい。具体的には、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性オレフィンエラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。特に好ましくは、熱可塑性ポリウレタンエラストマーである。 熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、主としてハードセグメントとソフトセグメントとから構成されているのが望ましい。このとき、熱可塑性ポリウレタンエラストマー中のハードセグメントの含有量が5〜50重量%であるのが好ましい。ハードセグメントは、ポリイソシアネート類および/またはウレア誘導体からなるのが好ましく、具体的には、ジイソシアネートおよび/または低分子ジアミンから構成されるのが好ましい。ジイソシアネートとしては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、メチル−1,3−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等が好適である。低分子ジアミンとしては、1,6−ヘキサメチレンジアミンや4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン等が好適である。その他、1,4−ブタンジオールや1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール等の低分子ジオールを含んでもよい。ソフトセグメントは、ポリオール類からなるのが好ましく、具体的には、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等の高分子ポリオールが好適である。 上記の熱可塑性ポリウレタンエラストマーにおいて、ハードセグメントとソフトセグメントの比、ジイソシアネートや低分子ジアミン、低分子ジオールおよび高分子ポリオールの種類や配合量などを制御することで、優れた耐ブリード性など、所望の特性が発現する。さらに、柔軟性や加工性を高めるために、熱可塑性エラストマーに各種可塑剤を添加してもよい。 また、エラストマー原料は、主として熱可塑性エラストマーを含むが、添加剤を含んでもよい。添加剤は、特に限定されず、公知の滑剤、分散剤、安定剤、可塑剤、難燃剤、ブロッキング防止剤などであればよい。 成形体の成形方法にも特に限定はなく、押出成形、射出成形、スラッシュ成形などが望ましい。特に、自動車の内装材は、スラッシュ成形により成形される表皮体であるのが好ましく、エラストマー原料として熱可塑性ポリウレタンエラストマーの原料粉末を用いたパウダー−スラッシュ成形により成形されるのが好ましい。 本発明の熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性評価方法(以下「本発明の評価方法」と略記)は、分析工程と分離算出工程と判定工程とよりなり、これらの工程を経て、主として熱可塑性エラストマーを含むエラストマー原料を加熱・成形して得られる熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性を評価する。 分析工程では、成形体の少なくとも一部を用いたパルスNMRによる核磁気共鳴分析により自由誘導減衰信号を得る。核磁気共鳴分析によれば、成形体を構成する熱可塑性エラストマーの分子の状態(流動性)を、流動性別の成分量や緩和時間として定量化できる。 本発明の評価方法では、核磁気共鳴分析が高分解能である必要はないため、核磁気共鳴分析には、安価で取り扱いの容易な市販のパルスNMR装置を用いることが出来る。また、パルスNMRは、固体のままの試料を分析できる固体NMRを用いて十分な分析が可能である。固体NMRであれば、固体のままの試料を数秒で分析することが可能である。したがって、本発明の評価方法によれば、短時間で成形体の耐ブリード性を評価することができるため、成形体の連続成形工程に組み込んで製造条件を制御する(後述)ための評価方法として好適である。本発明の評価方法において、パルスNMRは、特に、1H−パルスNMRを用いるのが望ましい。 核磁気共鳴分析に用いられる成形体は、成形体の少なくとも一部であればよい。たとえば、小型のものであれば成形体全体を分析に用いるほか、成形体と一体的に成形した製品として不要な部位を分析に用いたり、成形体のうち欠損があっても製品として影響のない部位を切り取って用いたりすればよい。 核磁気共鳴分析の分析条件に特に限定はなく、ソリッドエコー法などにより、自由誘導減衰信号を測定することができる。ソリッドエコー法などのNMR測定は、通常の方法に従って行えばよく、測定方法に特に限定はない。なお、測定温度は、成形体を構成する熱可塑性エラストマーの分子運動が顕著な温度範囲で行うのが望ましい。たとえば、熱可塑性エラストマーが熱可塑性ポリウレタンエラストマーであれば、30〜180℃さらには30〜80℃で測定を行うとよい。 分離算出工程では、分析工程で得られた自由誘導減衰信号を複数の成分に波形分離するとともに各成分の成分量およびスピン−スピン緩和時間を算出する。熱可塑性エラストマーは、主として、結晶状分子運動性を示すハードセグメント、温度上昇により液状の性質を示すソフトセグメント、からなり、分子の構造によっては、ソフトセグメントからの拘束状態が異なる複数種のソフトセグメントをもつ。そのため、分析工程で得られた自由誘導減衰信号は、緩和時間の違いから、熱可塑性エラストマーの成分毎(セグメント毎)に複数の波形に分離できる。たとえば、自由誘導減衰信号は、緩和時間が最も長いLセグメント(ソフトセグメント)と、緩和時間が最も短いSセグメント(ハードセグメント)と、緩和時間がLセグメントとSセグメントの中間の長さであるMセグメント(ソフトセグメント)と、の3成分に波形分離されたり、さらにMセグメントがMSセグメントとMLセグメントとに分離されたりする。このような信号の波形分離は、パルスNMR測定で一般的に行われている計算により分離が可能である。 なお、自由誘導減衰信号の測定や波形分離の具体的な方法は、たとえば、非特許文献1の他、日本ゴム協会誌第75巻第9号第13〜18頁(2002)および第76巻第12号第15〜20頁(2003)、Macromolecules, vol.29, p.8824-8829(1996)等の文献に記載されている。 各成分に分離された波形からは、各成分の成分量とスピン−スピン緩和時間を求めることができる。1H−パルスNMRでは、自由誘導減衰信号の初期値は、分析される試料がもつ1Hの数に比例する。したがって、分離されたそれぞれの波形の初期値からは、それぞれの成分の成分量が得られる。また、分離された波形の減衰時間からはスピン−スピン緩和時間、すなわち、その成分の流動性が定量的に得られる。 判定工程では、分離算出工程で算出された成分量およびスピン−スピン緩和時間から選択される少なくとも1つの値に応じて、成形体の耐ブリード性を判定する。熱可塑性エラストマーでは、流動しにくいセグメント(ハードセグメント)と流動しやすいセグメント(ソフトセグメント)との存在比やそれらの性質が適切であれば、ブリード物質を成形体にとどめることができる包括許容量が十分に得られる。これは、特定の性質をもつセグメントとの相溶性が低い物質が、ブリード物質となってブリードアウトするからである。また、各セグメントがもつ流動性の度合いも、耐ブリード性に影響する。そのため、判定に用いる値は、成分量であってもスピン−スピン緩和時間であってもよく、また、いずれの成分に関する値を採用してもよいが、成形体の耐ブリード性と相関の高い値を選択するとよい。たとえば、ブリード物質が、ソフトセグメントとの相溶性に優れ、ハードセグメントとの相溶性が低いソフトセグメント由来のオリゴマーやモノマーであれば、ある程度の流動性をもったソフトセグメントがある程度の量で含まれる成形体において、耐ブリード性が向上する。このとき、ソフトセグメントの流動性の度合いや存在割合は、成形体に求められる耐ブリード性の程度に応じて異なる。 たとえば、パルスNMR測定された試料が熱可塑性ポリウレタンエラストマー成形体であれば、得られる自由誘導減衰信号は、Lセグメント、MセグメントおよびSセグメントの3つ、または、Lセグメント、MSセグメント、MLセグメントおよびSセグメントの4つの波形に分離される。図16に、熱可塑性ポリウレタンエラストマーの構造モデルを示す。熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、結晶状の分子運動性を示すSセグメント(S)、Sセグメントに動きを拘束されたMSセグメント(MS)、Sセグメントからの拘束が弱いMLセグメント(ML)および一方の末端が自由で温度上昇により液状の性質を示すLセグメント(L)からなる。たとえば、ブリード物質となりうるソフトセグメント由来のオリゴマー(B)は、マトリックスとの相溶性が高いと成形体の内部にとどまるが、相溶性が低いと相分離して成形体の表面にブリードアウトする。流動性の高いセグメントとの相溶性が高いハードセグメント由来のオリゴマーであれば、スピン−スピン緩和時間が長いLセグメントの割合が高いと、成形体の耐ブリード性が高くなる。 なお、成分量で判定を行う場合には、複数の成分のうちの少なくとも1つの成分を選択し、その成分の存在割合(たとえば自由誘導減衰信号の初期値を100とするときの分離後の波形の初期値)を求めるとよい。また、複数の成分から2つの成分を選択し、2つの成分の成分量の比を求めたり2つの成分のスピン−スピン緩和時間の比を求めたりして得られる値を用いて判定を行うことも可能である。なお、判定には、これらの値のうちの少なくとも1つを用いればよい。たとえば、Mセグメントの成分量(Mセグメント量:M)とLセグメントの成分量(Lセグメント量:L)との比、M/Lは、ハードセグメントに拘束されているソフトセグメントの割合を示す。また、Lセグメントのスピン−スピン緩和時間(T2L)とMセグメントのスピン−スピン緩和時間(T2M)との比、T2L/T2Mは、Lセグメントの流動の度合いを示す。 なお、成形体の耐ブリード性を評価する際には、評価に用いる値に対して予め閾値を設定するとよい。すなわち、判定工程は、分離算出工程で得られた値と閾値とを比較する工程であってもよい。閾値は、成形体に求められる耐ブリード性の程度に応じて適宜決定すればよい。 以上説明した本発明の評価方法は、個々の成形体の耐ブリード性の評価の他、成形体の製造条件の決定に用いることができる。たとえば、成形体の連続成形に先立ち、連続成形と同様な成形条件の下、予めテスト成形を行い、得られた成形体のブリード性を評価する。評価結果により、エラストマー原料を評価することができる。また、評価結果に応じて、エラストマー原料を変更したり成形条件を変更したりするなどして、所望の耐ブリード性をもつ成形体が得られる条件を設定するとよい。 なお、成形体を成形する前の熱可塑性エラストマーを、パルスNMRによる核磁気共鳴分析により分析してもよい。熱可塑性エラストマーに含まれるハードセグメントとソフトセグメントの量や性質を成形条件に関わらず判断できるので、熱可塑性エラストマーが有するブリード物質の包括許容量を評価することができる。 また、本発明の熱可塑性エラストマー成形体の製造方法(以下「本発明の製造方法」と略記)は、上記エラストマー原料を加熱・成形して成形体を連続的に成形する熱可塑性エラストマー成形体の製造方法において、少なくとも1つの成形体を上記の評価方法により評価するとともに評価結果に応じて成形体の製造条件を制御することで、成形体の耐ブリード性を管理する。 本発明の製造方法において、成形体は、連続的に成形されるが、上記の評価方法により評価される成形体は、1つ以上であればよい。すなわち、成形体の評価は、連続的に成形される複数の成形体に対して間欠的に行われてもよいし、連続的に成形される全ての成形体に対して行われてもよい。たとえば、エラストマー原料の1つのロットを用いて連続的に形成される成形体のうち、少なくとも最初に成形される成形体に対して耐ブリード性の評価を行ってもよいし、所定の個数毎に行ってもよい。たとえば、最初に成形される成形体に対して耐ブリード性の評価を行い、結果に応じて製造条件を制御すれば、それ以降に成形される成形体の耐ブリード性を確保することができる。また、次々に成形される成形体に対して所定の個数毎に耐ブリード性の評価を行えば、連続成形中に成形条件が変化しても、評価結果に応じて成形条件を制御することで、制御後に成形される成形体の耐ブリード性が確保される。 ここで、制御される製造条件とは、成形体の成形条件および/またはエラストマー原料のロットである。熱可塑性エラストマー成形体では、成形条件に応じて、得られる成形体を構成する分子の状態に差異が生じる。核磁気共鳴分析では成形体そのものを分析するため、核磁気共鳴分析の分析結果は、成形条件に応じて異なる結果となる。したがって、核磁気共鳴分析の分析結果に応じて、成形条件を制御すれば、ブリードの抑制が可能となる。制御される成形条件は、成形方法によって異なるが、たとえば成形方法がスラッシュ成形であれば、成形時の温度(金型温度、原料温度、成形後の冷却速度、成形後のキュア時間と温度、脱型温度、金型の熱容量など)、湿度、金型の回転速度や回転パターンなどが挙げられる。また、エラストマー原料は、主として、熱可塑性エラストマーからなるベースポリマーと添加剤とが所定の配合量で混合されてなる。したがって、熱可塑性エラストマーのハードセグメントとソフトセグメントとの割合にばらつきがあったり、添加剤の含有量にばらつきがあったりすると、エラストマー原料のロットにばらつきが生じる。その結果、エラストマー原料には、同じ成形条件の下でブリードが発生し易いロットと発生し難いロットとが存在する場合がある。エラストマー原料のロットをロット単位で変更することで、エラストマー原料の製造工程における製造条件のばらつきに起因して発生するブリードを回避することができる。 成形体は、成形されてから長時間経たないとブリードアウトしない場合が多いため、従来、成形体の耐ブリード性の評価は、製品の出荷の直前であっても正確な判定が困難であった。ところが、パルスNMRによる核磁気共鳴分析では、成形体表面のブリード物質のみを分析するのではなく成形体全体から分子状態を分析することができるため、分析時に成形体にブリードが発生しているか否かは問題にはならない。したがって、核磁気共鳴分析は、分析される成形体が成形された後(少なくとも加熱溶融後で固化した後)であれば、いつでも行うことができる。 さらに、連続的に成形される成形体のうち少なくとも1つの成形体の少なくとも一部の物理特性を測定するとともに測定結果に応じて成形体の製造条件を制御してもよい。測定する物理特性としては、引張強度、伸び、引き裂き強度、メルトマスフローインデックス(MFR)、熱軟化点などが挙げられる。物理特性の測定は、耐ブリード性の評価の前に行っても後に行っても、いずれでもよい。 ここで、図1は、本発明の熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性評価方法を用いた本発明の熱可塑性エラストマー成形体の製造方法の一例を示すフローチャートである。ここでは、本発明を自動車のインストルメントパネル(インパネ)の製造に適用している。インストルメントパネルは、インストルメントパネル基材(以下「インパネ基材」と略記)M2と熱可塑性ポリウレタンエラストマーからなる表皮体M1との間に発泡体を発泡成形してなる。 まず、熱可塑性ポリウレタンパウダーを主成分とするエラストマー原料M0のロットを原料粉末として用い、パウダースラッシュ成形を行う(ステップS1)。パウダースラッシュ成形により得られた成形体についてパルスNMR分析を行い(ステップS2)、ステップS2の分析結果が設定条件を満たすかを判断する(ステップS3)。分析結果が設定条件を満たさない場合(NO)には、成形体の製造条件を変更するとともに、その成形体は破棄される。分析結果が設定条件を満たす場合(YES)には、物理特性を測定するステップS4を経て、測定された物理特性が設定条件を満たすかを判断する(ステップS5)。測定された物理特性が設定条件を満たさない場合(NO)には、その成形体は破棄されるとともに成形体の製造条件を変更して、再びスラッシュ成形を行う。測定された物理特性が設定条件を満たす(YES)まで、連続的に得られる全ての成形体に対してステップS1〜S5を行い、ステップS5でYESとなったら、製造条件を保持した状態で、連続してスラッシュ成形を行う。スラッシュ成形により連続的に成形されたそれぞれの表皮体M1は発泡成形型の一方型に配置され、他方型にはインパネ基材M2を配置し、両者を型合わせして、表皮体M1とインパネ基材M2との間にフォーム原料M3を発泡成形する(ステップS61)。その後、インパネ取付け部品M4を取り付ける工程(ステップS62)、インパネを車体に組み付ける工程(ステップS63)を経て、自動車が出荷される。 ここで、ステップS1〜ステップS5は、ステップS5での判断がYESとなるまで繰り返し行う。図1に示すように、一旦ステップS5でYESとなったら、M0の原料粉末ロットを使い切るまで連続成形してもよいが、連続成形により得られる成形体に対して、たとえば、数個に1個または数分毎というように、間欠的にステップS1〜ステップS5を行ってもよい。 従来のように、ブリードを目視で判別する場合には、成形から長時間が経過しないことにはブリードアウトしないため、たとえば、インパネを組み立てた後や、さらには、自動車を出荷する直前に、ブリードが見られることがある。本発明の熱可塑性エラストマーの成型方法によれば、スラッシュ成形の直後に行うNMR分析により成形体の耐ブリード性を管理することができる。 なお、ステップS3およびステップS5では、設定条件を満たさない場合(NO)には、エラストマー原料を他のロットに変更してもよいし、スラッシュ成形の成形条件(たとえば成形温度や冷却速度など)を変更してもよい。また、ステップS4およびステップS5の物理特性の測定と判定は必ずしも行う必要はない。 <質量分析を用いる熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性評価方法および熱可塑性エラストマー成形体の製造方法> 本発明の熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性評価方法および熱可塑性エラストマー成形体の製造方法は、主として熱可塑性エラストマーを含むエラストマー原料を加熱・成形して得られる熱可塑性エラストマー成形体(以下「成形体」と略記)の耐ブリード性を評価する。 エラストマー原料は、従来から成形に用いられている一般的なエラストマー原料であればよく、粉末状やペレット状の原料を用いることができる。エラストマー原料に含まれる熱可塑性エラストマーに特に限定はなく、ブロック共重合体からなるエラストマーであればよい。具体的には、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性オレフィンエラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。特に好ましくは、熱可塑性ポリウレタンエラストマーである。 熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、主としてハードセグメントとソフトセグメントとから構成されているのが望ましい。このとき、熱可塑性ポリウレタンエラストマー中のハードセグメントの含有量が5〜50重量%であるのが好ましい。ハードセグメントは、ポリイソシアネート類および/またはウレア誘導体からなるのが好ましく、具体的には、ジイソシアネートおよび/または低分子ジアミンから構成されるのが好ましい。ジイソシアネートとしては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、メチル−1,3−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等が好適である。低分子ジアミンとしては、1,6−ヘキサメチレンジアミンや4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン等が好適である。その他、1,4−ブタンジオールや1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール等の低分子ジオールを含んでもよい。ソフトセグメントは、ポリオール類からなるのが好ましく、具体的には、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等の高分子ポリオールが好適である。 上記の熱可塑性ポリウレタンエラストマーにおいて、ハードセグメントとソフトセグメントの比、ジイソシアネートや低分子ジアミン、低分子ジオールおよび高分子ポリオールの種類や配合量などを制御することで、優れた耐ブリード性など、所望の特性が発現する。さらに、柔軟性や加工性を高めるために、熱可塑性エラストマーに各種可塑剤を添加してもよい。 また、エラストマー原料は、主として熱可塑性エラストマーを含むが、添加剤を含んでもよい。添加剤は、特に限定されず、公知の滑剤、分散剤、安定剤、可塑剤、難燃剤、ブロッキング防止剤などであればよい。 成形体の成形方法にも特に限定はなく、押出成形、射出成形、スラッシュ成形などが望ましい。特に、自動車の内装材は、スラッシュ成形により成形される表皮体であるのが好ましく、エラストマー原料として熱可塑性ポリウレタンエラストマーの原料粉末を用いたパウダー−スラッシュ成形により成形されるのが好ましい。 本発明の熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性評価方法(以下「本発明の評価方法」と略記)は、分析工程と判定工程とよりなり、これらの工程を経て、主として熱可塑性エラストマーを含むエラストマー原料を加熱・成形して得られる熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性を評価する。 分析工程では、成形体の表面から採取されたブリード物質を複数の成分に分離するとともに各成分を質量分析する。ブリード物質は、通常から行われている方法で成形体の表面から採取されればよい。たとえば、適当な溶剤により成形体の表面のブリード物質を洗い流したり抽出したりして得られた洗液や抽出液を濃縮する方法、または、成形体の表面を拭き取ったり掻き取ったりしてから溶媒に溶解する方法、などが挙げられる。なお、ブリード物質は、成形体の表面の少なくとも一部から採取されればよい。 次に、採取されたブリード物質を複数の成分に分離する。分離方法としては、クロマトグラフィーによる分離が望ましい。クロマトグラフィーは、移動相が液体であっても固体であってもいずれでもよく、分離の機構や固定相の形状にも特に限定はない。分離された各成分は、成分毎に質量分析される。そのため、分析工程では、液体クロマトグラフ質量分析やガスクロマトグラフ質量分析により、クロマトグラフィーによって分画された各成分を質量分析装置に直接導入して質量を分析するとよい。したがって、分析工程では、液体クロマトグラフィー/質量分析計(LC/MS)やガスクロマトグラフィー/質量分析計(GC/MS)を用いることができる。さらに、分析工程は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析により行われてもよい。マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計(MALDI−TOF/MS)は、マトリックスと分析試料(採取されたブリード物質)との混合物にレーザーを照射してイオンを発生させ(MALDI)、その後、生成されたイオンの飛行時間の違いからイオンの質量を検出する(TOF/MS)。 判定工程では、分析工程での分析結果に応じて成形体の耐ブリード性を判定する。分析工程において採取されたブリード物質には、熱可塑性エラストマーに起因するブリード物質であるオリゴマーやモノマー、可塑剤のほか、成形体の表面に残存する滑剤(離型剤)や成形や分析時に混入する皮脂や角質などが含まれることがある。したがって、耐ブリード性の異なる成形体の表面にわずかにブリードしたブリード物質をそれぞれ採取して上記分析を行うと、耐ブリード性の低い成形体ほど質量分析で多く検出される特定の分子量の成分が存在する。この特定の分子量の成分がオリゴマーやモノマー、可塑剤などのブリード物質に相当する。質量分析で多く検出される特定の分子量の成分は、たとえば、耐ブリード性の低い成形体から得られる分析結果と、耐ブリード性の高い成形体(ブランクサンプル)から得られる分析結果と、を比較することで決定される。 そのため、成形体の耐ブリード性を評価する際には、特定の分子量をもつ成分に対して予め閾値を設定するとよい。すなわち、判定工程は、分析工程で得られた値と閾値とを比較する工程であるのがよい。閾値には、分析工程で得られる絶対値に対して設定されるより、ブランクサンプルを基準とした相対的な値に対して設定されるのが望ましい。閾値は、成形体に求められる耐ブリード性の程度に応じて適宜決定すればよい。 以上説明した本発明の評価方法は、個々の成形体の耐ブリード性の評価の他、エラストマー原料の評価に用いることができる。前述のように、同様に調製されたエラストマー原料であっても熱可塑性エラストマーの製造工程における製造条件のばらつきに起因してブリード物質が形成される。そこで、成形体の連続成形に先立ち、連続成形と同様な成形条件の下、予めテスト成形を行い、得られた成形体の耐ブリード性を評価する。この評価結果に応じて、成形条件に合ったエラストマー原料を取捨選択することができる。 また、本発明の熱可塑性エラストマー成形体の製造方法(以下「本発明の製造方法」と略記)は、上記エラストマー原料を加熱・成形して成形体を連続的に成形する熱可塑性エラストマー成形体の製造方法において、少なくとも1つの成形体を上記の評価方法により評価するとともに評価結果に応じてエラストマー原料のロットを変更することで、成形体の耐ブリード性を管理する。 本発明の製造方法において、成形体は、連続的に成形されるが、上記の評価方法により評価される成形体は、1つ以上であればよい。すなわち、成形体の評価は、連続的に成形される複数の成形体に対して間欠的に行われてもよいし、連続的に成形される全ての成形体に対して行われてもよい。たとえば、エラストマー原料の1つのロットを用いて連続的に形成される成形体のうち、少なくとも最初に成形される成形体に対して評価を行ってもよいし、所定の個数毎に評価を行ってもよい。たとえば、最初に成形される成形体に対して評価を行い、結果に応じて使用するエラストマー原料のロットを変更すれば、次以降に成形される成形体の耐ブリード性を確保することができる。また、次々に成形される成形体に対して所定の個数毎に上記の評価を行えば、連続成形中に気温や湿度が変化しても、エラストマー原料のロットを変更することで条件に応じたエラストマー原料のロットを使用することができ、得られる成形体の耐ブリード性が確保される。 本発明の製造方法では、エラストマー原料のロットをロットごと別のロットに変更することで、エラストマー原料の製造工程における製造条件のばらつきに起因して発生するブリード物質を低減できる。エラストマー原料は、熱可塑性エラストマーからなるベースポリマーと添加剤とが所定の配合量で混合されてなる。したがって、熱可塑性エラストマーの性質にばらつきがあったり、添加剤の含有量にばらつきがあったりすると、エラストマー原料のロットにばらつきが生じる。その結果、エラストマー原料には、同じ成形条件の下でブリードが発生し易いロットと発生し難いロットとが存在する場合がある。エラストマー原料のロットをロット単位で変更することで、成形体の表面へのブリードアウトが回避される。 成形体は、成形されてから長時間経たないとブリードアウトしない場合が多いため、従来、成形体の耐ブリード性の評価は、ブリードの発生を待って行われていた。ところが、LC/MS等を用いた本発明の評価方法によれば、採取されたブリード物質が少量であっても分析可能である。そのため、成形直後の成形体に対しても評価が行えるが、より精度を高めるためには、成形から分析を行うまでの時間をできるだけ長く設けるのが望ましい。それであっても、目視によりブリードを判別するのに比較して、短い時間でブリード物質を採取し、正確に評価し、評価結果を製造条件へフィードバックすることができる。 さらに、連続的に成形される成形体のうち少なくとも1つの成形体の少なくとも一部の物理特性を測定するとともに測定結果に応じて成形体の製造条件を制御してもよい。測定する物理特性としては、引張強度、伸び、引き裂き強度、メルトマスフローインデックス(MFR)、熱軟化点などが挙げられる。物理特性の測定は、ブリード物質の質量分析の前に行っても後に行っても、いずれでもよい。 ここで、図1は、本発明の熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性評価方法を用いた本発明の熱可塑性エラストマー成形体の製造方法の一例を示すフローチャートである。ここでは、本発明を自動車のインストルメントパネル(インパネ)の製造に適用している。インストルメントパネルは、インストルメントパネル基材(以下「インパネ基材」と略記)M2と熱可塑性ポリウレタンエラストマーからなる表皮体M1との間に発泡体を発泡成形してなる。 まず、熱可塑性ポリウレタンパウダーを主成分とするエラストマー原料M0のロットを原料粉末として用い、パウダースラッシュ成形を行う(ステップS1)。パウダースラッシュ成形により得られた成形体についてLC/MSで分析を行い(ステップS2)、ステップS2の分析結果が設定条件を満たすかを判断する(ステップS3)。分析結果が設定条件を満たさない場合(NO)には、その成形体は破棄されるとともに原料粉末を他のロットに変更して、再びスラッシュ成形を行う。分析結果が設定条件を満たす場合(YES)には、物理特性を測定するステップS4を経て、測定された物理特性が設定条件を満たすかを判断する(ステップS5)。測定された物理特性が設定条件を満たさない場合(NO)には、その成形体は破棄されるとともに原料粉末を他のロットに変更して、再びスラッシュ成形を行う。測定された物理特性が設定条件を満たす(YES)まで、連続的に得られる全ての成形体に対してステップS1〜S5を行い、ステップS5でYESとなったら、製造条件を保持した状態で、連続してスラッシュ成形を行う。スラッシュ成形により連続的に成形されたそれぞれの表皮体M1は発泡成形型の一方型に配置され、他方型にはインパネ基材M2を配置し、両者を型合わせして、表皮体M1とインパネ基材M2との間にフォーム原料M3を発泡成形する(ステップS61)。その後、インパネ取付け部品M4を取り付ける工程(ステップS62)、インパネを車体に組み付ける工程(ステップS63)を経て、自動車が出荷される。 ここで、ステップS1〜ステップS5は、ステップS5での判断がYESとなるまで繰り返し行う。図1に示すように、一旦ステップS5でYESとなったら、M0の原料粉末ロットを使い切るまで連続成形してもよいが、連続成形により得られる成形体に対して、たとえば、数個に1個または数分毎というように、間欠的にステップS1〜ステップS5を行ってもよい。また、ステップS4およびステップS5の物理特性の測定と判定は必ずしも行う必要はない。 上記実施形態に基づいて、熱可塑性エラストマー成形体を製造し、耐ブリード性の評価を行った。 [エラストマー原料の準備] エラストマー原料として、市販のスラッシュ成形用熱可塑性ポリウレタンエラストマー粉末(TPUパウダー)を含む原料粉末A〜Dを準備した。原料粉末A〜Dは、TPUパウダーや添加剤の種類や配合量が同様となるように、それぞれ調製した。ただし、用いられる市販のTPUパウダーは、同一の品番の商品であり同一の組成からなるが、原料粉末A〜Dには、それぞれロットナンバーが異なるTPUパウダーを使用した。[1H−パルスNMR分析を用いた成形体の耐ブリード性評価方法] 上記の原料粉末A〜Cを用いて、TPU表皮をパウダー−スラッシュ成形した。TPU表皮は、それぞれ同じ成形条件で成形し、原料粉末Aを用いて成形された3枚の表皮A、原料粉末Bを用いて成形された3枚の表皮Bおよび原料粉末Cを用いて成形された3枚の表皮Cを得た。 得られた表皮から、(1)NMR分析用(2)ブリード試験用の2種類の試験片を作製した。(1)の試験片は、表皮を2cm×2cmの大きさで切り取り、さらに5mm程度の小片に細分してパルスNMR用試験管に移した。(2)の試験片は、室温で保存した。 パルスNMR装置(日本電子株式会社製JNM−MU25)を用いて(1)の試験片の1H緩和時間を測定した。1H緩和時間の測定は、T2ソリッドエコー法(90°−t−90°−t)を用い、30℃、50℃および80℃で行った。なお、測定条件を以下に示す。 (i) 測定対象核 : 1H (ii) 測定地場強度 : 0.58T (iii)観測周波数 : 25MHz (iv) 90°パルス幅 : 2.2μsec (v) 遅延時間 : 8.0μsec (vi) 繰返し時間 : 1.0sec 表皮A〜表皮Cから作製されたそれぞれの試験片の30℃、50℃、80℃でのNMR分析により得られた自由誘導減衰信号を非線形最小二乗法によるカーブフィッティング処理により解析した。その結果、測定温度50℃および80℃では、スピン−スピン緩和時間(T2)の最も短いS、中間の長さのM、最も長いL、の3つのセグメントに分離された。また、測定温度30℃では、S、Lの2つのセグメントに加え、MセグメントのうちT2が最も短いMS、最も長いML、の4つのセグメントに分離された。一例として、3つの表皮Cから作製した試験片C−1、C−2およびC−3の1H−パルスNMR分析結果を表1に示す。 なお、表1において、T2[μsec]はスピン−スピン緩和時間、H[%]は各セグメントの存在比を1Hモル数換算した数値である。また、ave.は3つの試験片の平均値、st.dev.は標準偏差、c.v.は変動係数である。この分析結果より、1Hのモル数換算で計算したMセグメント量(HM)とLセグメント量(HL)との比(M/L比)を計算した。また、LセグメントのT2とMセグメントのT2との比(T2L/T2M比)を計算した。M/L比およびT2L/T2M比をLセグメントの割合とともに表2に示す。また、試験片毎のM/L比、Lセグメントの割合およびT2L/T2M比をそれぞれ図2〜図4に示す。 また、(2)の各試験片を目視で観察した。表皮Aの表面には成形から2週間後にブリードが発生したが、表皮Bおよび表皮Cには成形から1ヶ月経ってもブリードは見られなかった。 NMR分析および目視によるブリードチェックの結果から、同じ成形条件の下でM/L比、Lセグメントの割合およびT2L/T2M比において閾値を設定して、成形体の耐ブリード性を評価することが可能であることがわかった。具体的には、30℃、50℃、80℃でのM/L比がそれぞれ1.18以下、0.22以下、0.06以下であれば、使用した原料粉末のロットは耐ブリード性の優れた成形体を製造できるロットであり、所定の成形条件の下で連続成形に供することができる。したがって、たとえば、30℃、50℃、80℃でのM/L比の閾値を1.2以下、0.25以下、0.06以下と設定し、判定を行えばよい。同様に、30℃、50℃、80℃でのL[%]の閾値を40%以上、73%以上、88%以上とすればよい。また、T2L/T2M比では、30℃と50℃でほとんど差は見られない(図4)ため、80℃でのT2L/T2M比の閾値を35以上とすればよい。 なお、設定する閾値は、1つ以上であればよい。耐ブリード性によりもっとも差が大きく表れる値(たとえば、80℃でのT2L/T2M比)を1つだけ用いて判断してもよい。 また、原料粉末Dを用い、所定の成形条件で、5つのTPU表皮をパウダー−スラッシュ成形した。5つのTPU表皮は、成形後の冷却条件を変更して作製した。具体的には、成形型から取り出してから水冷するまでに行う放置処理(室温で放置)において、放置時間を0秒、60秒、480秒とした表皮(それぞれ「放置時間0秒」「放置時間60秒」「放置時間480秒」と記載)、また、成形型から取り出してから水冷するまでに行うキュア(265℃のオーブンで加熱処理)においてキュア時間を0秒、90秒とした表皮(それぞれ「キュア時間0秒」「キュア時間90秒」と記載)、とした。得られたそれぞれの表皮から、上記と同様の(1)NMR分析用(2)ブリード試験用の2種類の試験片を作成した。 (1)の試験片をNMR分析して得られたM/L比、Lセグメントの割合およびT2L/T2M比をそれぞれ図5〜図7および図9〜図11に示す。また、(2)の各試験片を目視で観察した結果を、図8および図12に示す。なお、図8および図12において、「ブリード(級)」は、ブリードが、0:観察されない、1:裏面のみ僅かに見られる、2:表裏面共に見られる、3:一部分ではあるがはっきりと見られる、4:全面にはっきりと見られる、状態を示す。 図5〜図7は、放置時間0秒、60秒および480秒の表皮のM/L比、Lセグメントの割合およびT2L/T2M比を示すグラフである。M/L比は、放置時間が長いほど小さく、Lセグメントの割合は、放置時間が長いほど大きくなる傾向にある。また、T2L/T2M比は、放置時間を変えても大きな変化は見られなかった。なお、放置時間60秒の表皮において80℃で測定した場合のT2L/T2M比は、測定誤差と考えられる。そして、図8に示すように、放置時間を長くすることで、ブリードの発生を抑制することができた。 また、図9〜図11は、キュア時間0秒および90秒の表皮のM/L比、Lセグメントの割合およびT2L/T2M比を示すグラフである。M/L比は、オーブンに放置したキュア時間90秒の表皮の方が小さく、Lセグメントの割合およびT2L/T2M比は、キュア時間90秒の方が大きい値を示した。そして、図12に示すように、オーブンに放置することで、ブリードの発生を抑制することができた。 すなわち、同じロットの原料粉末を用いても、成形条件に応じて耐ブリード性に変化が生じた。そして、成形条件に応じてNMR分析結果に差異が表れるため、NMR分析による成形体の評価により成形条件をも制御できることがわかった。したがって、成形条件を変更することで、耐ブリード性の高い成形体を成形できることがわかった。[LC/MSおよび質量分析を用いた成形体の耐ブリード性評価方法] 上記の原料粉末AおよびBを用いて、TPU表皮をパウダー−スラッシュ成形した。TPU表皮は、それぞれ同じ成形条件で成形し、原料粉末Aを用いて成形された表皮A、原料粉末Bを用いて成形された表皮Bを得た。 表皮Aおよび表皮Bからブリード物質を採取して、成分の分析を行った。ブリード物質は、室温で2週間放置した各表皮の表面から採取した。ブリード物質は、10cm×10cmに切り取った表皮の表面にアルミニウム箔を押しつけて採取した。採取したブリード物質は、有機溶媒(ヘキサン等)に溶解させて、試験管に移した。試験管に希ガス(ヘリウム等)を吹き付けることにより有機溶媒を蒸発させた後、HPLC精製されたアセトニトリル(1.0ml)に溶解して、分析試料とした。 なお、室温で保存した表皮Aおよび表皮Bの表面を目視で観察した。表皮Aの表面には成形から2週間後からブリードが発生したが、表皮Bには1ヶ月経ってもブリードは見られなかった。すなわち、ブリードアウトしなかった表皮Bから作製された分析試料は、ブランクサンプルである。 得られた分析試料を液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)により分析した。分析には、高速液体クロマトグラフィー装置(株式会社島津製作所LC1010)および質量分析装置(アプライドバイオシステムジャパン株式会社Q−Trap)を用い、表皮Aおよび表皮Bから得られた分析試料から各成分を分画するとともに各成分を質量分析装置に直接導入して質量分析を行った。なお、高速液体クロマトグラフィーの分離条件および質量分析の分析条件を以下に示す。 <高速液体クロマトグラフィー(LC)> (i) 分析カラム : インタクト株式会社製Cadenza CD−C18 (ii) カラムサイズ : カラム内径2mm、カラム長50mm (iii)カラム温度 : 40℃ (iv) 溶媒 : 0.1%酢酸水溶液(A溶媒)、0.1%酢酸アセトニトリル水溶液(B溶媒) (v) 流速 : 0.2ml/min. (vi)B溶媒の濃度勾配: 10%−100%(10分)、100%−100%(2分)、100%−10%(最大速度)、10%−10%(5分)(「%」はすべて「体積%」) (vii) サンプル量 : 4μl <質量分析(MS)> (i) イオン化方式 : エレクトロスプレー方式(ESI) (ii)Q2−Q0電圧(2次MSの衝突エネルギー) : 30V 上記の条件にしたがって、高速液体クロマトグラフィーにより分画された各成分の最大分子量(m/z値;単位は[aum](原子質量単位))に対してネガティブチャージイオン検出およびポジティブチャージイオン検出による質量分析を行った。表皮Aと表皮Bとの検出結果の差異を明確にするために、表皮Aから作製された分析試料より検出されたイオンカウント数をA、表皮Bから作製された分析試料より検出されたイオンカウント数をBとしたときのA/B比を、それぞれのm/z値に対して算出した。図13にネガティブチャージイオン検出におけるm/z値に対するA/B比を示す。なお、図14は、図13の縦軸の範囲を変更したグラフである。また、図15にポジティブチャージイオン検出におけるm/z値に対するA/B比を示す。ここで、m/z値は、イオン化物質の分子量であって、±0.1の中央値を示す。なお、図13〜図15では、比較のため、表皮Bでは検出されないが表皮Aで特異的に検出されるスペクトルを抜粋して示すが、実際には他のスペクトルも検出された。 測定誤差を考慮しても、A/B比が2以上を示した成分がオリゴマーや可塑剤からなるブリード物質であるといえる。イオン価が1である場合、イオンカウント数は物質の量を表し、m/z値はイオン化物質の分子量を示す。イオン価が5以上あることはほとんどないので、A/B比が5以上を示した成分がブリード物質であるとするのがより望ましい。また、ブリードアウトは、通常、目視による官能試験で判断される。ブリード物質の量と官能試験による定量化との間には、指数関数的な関係があると考えられるため、A/B比が10以上さらには100以上を示した成分がブリード物質であるとするのが望ましい。なお、A/B比が1に近いm/z値をもつ成分は、ブリード現象とは相関のない物質であると考えられる。 したがって、上記のA/B比において、たとえば100以上を示すm/z値(図13では665.9、726.0および736.0)をもつ成分が、TPUパウダーに起因するブリード物質(オリゴマーもしくは可塑剤)に相当すると考えられる。つまり、ネガティブチャージ検出で665.8〜666.0、725.9〜726.1、735.9〜736.1にみられるブリード現象に特徴的な値に対して判定を行うことで、成形体の耐ブリード性を評価することが可能であることがわかった。本発明の熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性評価方法を用いた本発明の熱可塑性エラストマー成形体の製造方法の一例を具体的に示すフローチャートである。異なるロットの原料粉末を用いて作製した表皮A〜Cについて、30℃、50℃および80℃におけるNMR分析結果から算出したM/L比を示すグラフである。異なるロットの原料粉末を用いて作製した表皮A〜Cについて、30℃、50℃および80℃におけるNMR分析結果から算出したL%を示すグラフである。異なるロットの原料粉末を用いて作製した表皮A〜Cについて、30℃、50℃および80℃におけるNMR分析結果から算出したT2L/T2M比を示すグラフである。成形体の放置時間を0秒、60秒および480秒として作製した表皮について、30℃、50℃および80℃におけるNMR分析結果から算出したM/L比を示すグラフである。成形体の放置時間を0秒、60秒および480秒として作製した表皮について、30℃、50℃および80℃におけるNMR分析結果から算出したL%を示すグラフである。成形体の放置時間を0秒、60秒および480秒として作製した表皮について、30℃、50℃および80℃におけるNMR分析結果から算出したT2L/T2M比を示すグラフである。成形体の放置時間を0秒、60秒および480秒として作製した表皮を室温で保存し、各表皮の表面を目視で観察した観察結果を示すグラフである。成形体のキュア時間を0秒および90秒として作製した表皮について、30℃、50℃および80℃におけるNMR分析結果から算出したM/L比を示すグラフである。成形体のキュア時間を0秒および90秒として作製した表皮について、30℃、50℃および80℃におけるNMR分析結果から算出したL%を示すグラフである。成形体のキュア時間を0秒および90秒として作製した表皮について、30℃、50℃および80℃におけるNMR分析結果から算出したT2L/T2M比を示すグラフである。成形体のキュア時間を0秒および90秒として作製した表皮を室温で保存し、各表皮の表面を目視で観察した観察結果を示すグラフである。ネガティブチャージイオン検出におけるm/z値に対するA/B比を示すグラフである。ネガティブチャージイオン検出におけるm/z値に対するA/B比を示すグラフであって、図11の縦軸の範囲を変更したグラフである。ポジティブチャージイオン検出におけるm/z値に対するA/B比を示すグラフである。熱可塑性ポリウレタンエラストマーの構造モデルを示す。符号の説明 S: Sセグメント(ハードセグメント)MS:MSセグメント(ソフトセグメント)ML:MLセグメント(ソフトセグメント) L: Lセグメント(ソフトセグメント) B:ブリード物質 主として熱可塑性エラストマーを含むエラストマー原料を加熱・成形して得られる熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性を評価する評価方法であって、 前記成形体の少なくとも一部を用いたパルスNMRによる核磁気共鳴分析により自由誘導減衰信号を得る分析工程と、 該自由誘導減衰信号を複数の成分に波形分離するとともに各成分の成分量およびスピン−スピン緩和時間を算出する分離算出工程と、 算出された成分量およびスピン−スピン緩和時間から選択される少なくとも1つの値に応じて前記成形体の耐ブリード性を判定する判定工程と、 よりなることを特徴とする熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性評価方法。 前記分析工程においてパルスNMRは、1H−パルスNMRである請求項1記載の熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性評価方法。 前記判定工程は、複数の成分のうちの2つの成分の成分量の比、2つの成分のスピン−スピン緩和時間の比および少なくとも1つの成分の存在割合から選択される少なくとも1つの値に応じて前記成形体の耐ブリード性を判定する工程である請求項1記載の熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性評価方法。 前記熱可塑性エラストマーは、熱可塑性ポリウレタンエラストマーである請求項1記載の熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性評価方法。 前記成形体は、スラッシュ成形により成形される表皮体である請求項1記載の熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性評価方法。 前記自由誘導減衰信号は、緩和時間が最も長いLセグメントと、緩和時間が最も短いSセグメントと、緩和時間が該Lセグメントと該Sセグメントの中間の長さであるMセグメントと、の3成分に波形分離される請求項1記載の熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性評価方法。 主として熱可塑性エラストマーを含むエラストマー原料を加熱・成形して成形体を連続的に成形する熱可塑性エラストマー成形体の製造方法において、 少なくとも1つの成形体を請求項1に記載の耐ブリード性評価方法により評価するとともに評価結果に応じて成形体の製造条件を制御することで、該成形体の耐ブリード性を管理することを特徴とする熱可塑性エラストマー成形体の製造方法。 前記評価方法による評価は、連続的に成形される複数の成形体に対して間欠的に行われる請求項7記載の熱可塑性エラストマー成形体の製造方法。 前記製造条件は、前記成形体の成形条件および/または前記エラストマー原料のロットを変更して制御される請求項7記載の熱可塑性エラストマー成形体の製造方法。 さらに、少なくとも1つの前記成形体の少なくとも一部の物理特性を測定するとともに測定結果に応じて該成形体の製造条件を制御する請求項7記載の熱可塑性エラストマー成形体の製造方法。 主として熱可塑性エラストマーを含むエラストマー原料を加熱・成形して得られる熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性を評価する評価方法であって、 前記成形体の表面から採取されたブリード物質を複数の成分に分離するとともに各成分を質量分析する分析工程と、 該分析工程での分析結果に応じて前記成形体の耐ブリード性を判定する判定工程と、 よりなることを特徴とする熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性評価方法。 前記分析工程は、液体クロマトグラフ質量分析、ガスクロマトグラフ質量分析またはマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析により行われる工程である請求項11記載の熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性評価方法。 前記熱可塑性エラストマーは、熱可塑性ポリウレタンエラストマーである請求項11記載の熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性評価方法。 前記成形体は、スラッシュ成形により成形される表皮体である請求項11記載の熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性評価方法。 主として熱可塑性エラストマーを含むエラストマー原料を加熱・成形して成形体を連続的に成形する熱可塑性エラストマー成形体の製造方法において、 少なくとも1つの成形体を請求項11に記載の耐ブリード性評価方法により評価するとともに評価結果に応じて前記エラストマー原料のロットを変更することで、該成形体の耐ブリード性を管理することを特徴とする熱可塑性エラストマー成形体の製造方法。 前記評価方法による評価は、少なくとも最初に成形された成形体に対して行われる請求項15記載の熱可塑性エラストマー成形体の製造方法。 前記評価方法による評価は、連続的に成形される成形体に対して間欠的に行われる請求項15記載の熱可塑性エラストマー成形体の製造方法。 さらに、少なくとも1つの前記成形体の少なくとも一部の物理特性を測定するとともに測定結果に応じて該成形体の製造条件を制御する請求項15記載の熱可塑性エラストマー成形体の製造方法。 【課題】熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性を迅速に評価することができる評価方法を提供する。【解決手段】本発明の熱可塑性エラストマー成形体の耐ブリード性評価方法は、成形体の少なくとも一部を用いたパルスNMRによる核磁気共鳴分析により自由誘導減衰信号を得る分析工程と、自由誘導減衰信号を複数の成分に波形分離するとともに各成分の成分量およびスピン−スピン緩和時間を算出する分離算出工程と、算出された成分量およびスピン−スピン緩和時間から選択される少なくとも1つの値に応じて成形体の耐ブリード性を判定する判定工程と、よりなる。 また、熱可塑性エラストマー成形体を連続的に成形する熱可塑性エラストマー成形体の製造方法において、少なくとも1つの成形体を本発明の耐ブリード性評価方法により評価するとともに評価結果に応じて成形体の製造条件を制御できる。【選択図】図1