タイトル: | 特許公報(B2)_鉄の定量方法 |
出願番号: | 2006246302 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | G01N 31/00,G01N 31/22,G01N 21/78 |
光本 洋幸 亀松 貴久美 JP 4797900 特許公報(B2) 20110812 2006246302 20060912 鉄の定量方法 三浦工業株式会社 000175272 市川 恒彦 100099841 光本 洋幸 亀松 貴久美 20111019 G01N 31/00 20060101AFI20110929BHJP G01N 31/22 20060101ALI20110929BHJP G01N 21/78 20060101ALI20110929BHJP JPG01N31/00 TG01N31/22 122G01N21/78 Z G01N 31/00−31/22 G01N 33/18 JSTPlus(JDreamII) CAplus(STN) 特開平11−344490(JP,A) 特表2002−528624(JP,A) 特表平07−503403(JP,A) 特開昭64−015655(JP,A) 特表2005−536738(JP,A) 特開昭62−247884(JP,A) 特開2005−321691(JP,A) 特開平01−301678(JP,A) 2 2008070121 20080327 8 20090624 草川 貴史 本発明は、鉄の定量方法、特に、試料水中に含まれる鉄の定量方法に関する。 ボイラへの給水として用いられる水道水などの原水は、通常、ボイラ内での腐食やスケールの発生を防止するために、溶存酸素を除去する脱酸素処理および硬度分、すなわちカルシウムやマグネシウムを除去する軟水化処理が施されている。ここで、脱酸素処理は、通常、分離膜を用いて原水を処理することで実施されている。また、軟水化処理は、通常、イオン交換樹脂を用いて原水を処理することで実施されている。 ところで、水道水などの原水は、鉄分を含む場合が多い。この鉄分は、脱酸素処理で用いる分離膜を目詰まりさせ、原水の脱酸素処理効率を損なう可能性があり、また、軟水化処理で用いるイオン交換樹脂に吸着し、原水の軟水化を妨げる可能性がある。このため、ボイラ給水として用いられる原水は、通常、脱酸素処理および軟水化処理される前段階での鉄分濃度の管理が重要である。また、ボイラにおいては、ボイラ水に含まれる鉄分量がボイラ缶体での腐食進行やスケールの発生傾向を示す指標として有意なことから、ボイラ水における鉄分の正確な定量が重要である。そこで、ボイラシステムにおいては、原水やボイラ水に含まれる鉄の定量が実施されている。 原水やボイラ水などの水中において、鉄分は、イオン状、コロイド状および酸化鉄や水酸化鉄等の沈殿物状などの種々の状態で存在している。このため、水中に含まれる鉄分の全量を正確に定量するためには、分析対象となる水(試料水)において、コロイド状や沈殿物状の鉄分を水中へイオンとして溶解し、水中の鉄イオンを定量する必要がある。ここで、鉄イオンの定量は、通常、フェナントロリン吸光光度法、フレーム原子吸光法、電気加熱原子吸光法若しくはICP発光分光分析法により実施される。因みに、フェナントロリン吸光光度法を実施する場合は、水中に含まれる三価の鉄イオンを予め二価の鉄イオンに還元しておく必要もある。 非特許文献1は、このような鉄の定量方法において適用可能な試料水の前処理方法を規定している。この前処理方法は、試料水に対して塩酸、硝酸および硫酸等の鉱酸の一種若しくは二種を添加して煮沸した後に放冷し、純水で薄めて試料水量を調整している。しかし、このような前処理方法は、試料水に対する鉱酸の添加、試料水の煮沸および試料水量の調整という数段階の工程を経る必要があるため、作業が煩雑で長時間を要する。 一方、水分析においては、場合によっては数百から数千に達する多数の試料水を迅速に分析する必要があることから、試料水の分取、前処理および分析という一連の分析作業を分析機器において自動的に実行する連続流れ分析が主流になりつつある。ところが、試料水中の鉄の定量は、上述のような煩雑で長時間を要する前処理が必要になるため、連続流れ分析での実施が実質的に困難である。日本工業規格 JIS K0101:1998、6−8頁 本発明の目的は、試料水中に含まれる鉄の全量を容易に定量できるようにすることにある。 本発明に係る鉄の定量方法は、試料水中に含まれる鉄の定量方法であり、試料水に亜二チオン酸塩および銅のマスキング剤を添加する工程と、亜二チオン酸塩および銅のマスキング剤が添加された試料水に対して発色剤を添加し、吸光光度法により試料水中の鉄を定量する工程とを含んでいる。ここで用いられる銅のマスキング剤は、チオ硫酸ナトリウムおよびイミダゾールのうちの少なくとも一つである。 この定量方法において、試料水に添加した亜二チオン酸塩は、試料水中に含まれているコロイド状および沈殿状の鉄分をイオン化して水中に溶解し、また、試料水中に含まれる三価の鉄イオンを二価の鉄イオンへ還元する。このため、亜二チオン酸塩が添加された試料水に対して発色剤を添加すると、試料水は、発色剤と二価の鉄イオンとの反応により発色する。この発色強度は、試料水に含まれる二価の鉄イオン濃度に応じて高まる。したがって、発色剤の添加による試料水の発色強度を吸光光度法により測定すると、試料水に含まれる鉄の全量を正確に定量することができる。 ここで、試料水中に銅が含まれる場合、この銅は、亜二チオン酸塩に由来の硫黄と反応して硫化銅を生成し、発色剤による試料水の発色強度を変動させる可能性がある。そして、このような発色強度の変動は、定量結果の信頼性を損なう原因になる。しかし、この定量方法は、試料水に対して銅のマスキング剤を添加しているため、このマスキング剤が試料水中の銅に作用して錯体を生成し、硫化銅の生成を阻止することができるため、試料水の発色強度が安定化され、定量結果の信頼性を高めることができる。 本発明の定量方法では、通常、亜二チオン酸塩および銅のマスキング剤が添加された試料水のpHを発色剤が発色可能な範囲に設定してから、試料水に対して発色剤を添加する。 本発明に係る鉄の定量方法は、試料水に亜二チオン酸塩および銅のマスキング剤を添加してから試料水に対して発色剤を添加し、吸光光度法により試料水中の鉄を定量しているので、試料水中に含まれる鉄の全量を容易に定量することができる。 本発明に係る鉄の定量方法では、先ず、試料水に対し、亜二チオン酸塩および銅のマスキング剤(以下、「銅マスキング剤」と云う)を添加する。 試料水は、分析対象となる水であって特に制限されるものではなく、水道水、工業用水、地下水、河川水、湖沼水、ボイラ水、ボイラ等の熱機器からの復水などの各種の水である。 ここで用いられる亜二チオン酸塩は、通常、亜二チオン酸とアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、亜鉛およびカドミウム等との塩であり、水溶性のものである。また、亜二チオン酸塩は、無水物であってもよいし、水和物であってもよい。このうち、本発明では、一般に市販されており、入手が容易なことから、亜二チオン酸のアルカリ金属塩の一種である亜二チオン酸ナトリウムの無水塩を用いるのが好ましい。 試料水に対する亜二チオン酸塩の添加量は、通常、試料水の種類に応じた経験則等から予測される、試料水中に含まれる鉄分量に対して十分な量に設定する。特に、試料水中に含まれるコロイド状の鉄分および水酸化鉄や酸化鉄等の沈殿状の鉄分の全量を試料水中に溶解することができ、しかも、これらの鉄分の溶解後に試料水中に存在する三価の鉄イオンを二価の鉄イオンへ還元するのに必要な十分な量に設定するのが好ましい。具体的には、試料水中に含まれるものと予測される鉄分量に対し、モル比で5〜500倍当量に設定するのが好ましい。 但し、一般には、試料水10ミリリットルに対して少なくとも30mg、好ましくは100mg以上の亜二チオン酸塩を添加すれば十分である。 一方、ここで用いる銅マスキング剤は、試料水に含まれる可能性がある銅、特に銅イオンに作用して錯体を生成可能なものであり、例えば、チオ硫酸ナトリウム、チオ尿素若しくはイミダゾールである。これらの銅マスキング剤は、二種以上のものが併用されてもよい。 試料水に対する銅マスキング剤の添加量は、通常、試料水の種類に応じた経験則等から予測される、試料水中に含まれる銅の分量に対して十分な量に設定する。具体的には、予測される銅の分量に対し、500〜1,000倍モルに設定するのが好ましく、600〜800倍モルに設定するのがより好ましい。但し、一般には、試料水10ミリリットルに対して少なくとも60mg、通常は80〜120mgの銅マスキング剤を添加すれば十分である。 亜二チオン酸塩および銅マスキング剤を添加した試料水は、通常、振り混ぜた後に10〜20分程度放置する。これにより、試料水中に含まれるコロイド状および沈殿状の鉄分と亜二チオン酸塩とが反応し、当該鉄分がイオン化して試料水中に溶解するとともに、試料水中に存在する三価の鉄イオンが二価の鉄イオンへ還元される。すなわち、試料水中に含まれる鉄分の全量は、二価の鉄イオンの状態で試料水中に溶解した状態になる。 また、試料水中に含まれる銅は、銅マスキング剤の作用によりマスクされる。この結果、試料水において、亜二チオン酸塩に由来の硫黄原子と銅との反応が阻止され、後述する吸光光度法の実施において発色剤による試料水の発色強度を変動させる可能性がある硫化銅の生成が防止される。 この工程では、亜二チオン酸塩および銅マスキング剤を添加した試料水を加熱すると、上記の各反応が促進され易くなり、試料水をより迅速に次の分析工程へ移行させることができる。また、亜二チオン酸塩および銅マスキング剤を添加する試料水は、予めpHが4.2以下、好ましくは3.5以下になるよう調整されていてもよい。この場合、試料水は、上述の通り加熱することもできる。試料水のpHをこのように調整すると、試料水中に含まれるコロイド状および沈殿状の鉄分と亜二チオン酸塩との反応がより促進され易くなり、試料水をより迅速に次の分析工程へ移行させることができる。試料水のpHは、通常、試料水に対して塩酸などの鉱酸を添加して調整するのが好ましい。この際、試料水のpHは、酢酸アンモニウム水溶液等の緩衝液を添加し、微調整することもできる。試料水を加熱したり、試料水のpHを上述のように調整したりした場合は、通常、亜二チオン酸塩および銅マスキング剤を添加した試料水の放置時間を3〜10分程度まで短縮することができる。 但し、試料水のpHを上述のように調整した場合、亜二チオン酸塩および銅マスキング剤の添加により、試料水に濁り、特に白濁が生じ、後述する吸光度の測定に不都合が生じる場合がある。このため、試料水のpHは、実質的には、4.2〜5.5の範囲に設定するのが好ましい。 次に、上述のようにして処理された試料水に対し、鉄分、すなわち、二価の鉄の定量分析を吸光光度法により実施する。ここでは、先ず、試料水に対し、所定の発色剤を添加する。ここで用いられる発色剤は、二価の鉄イオンと反応して発色するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、発色pH条件が広範囲で安価な1,10−フェナントロリンおよびその水和物、発色感度が良好で比較的安価な2,4,6−トリス(2−ピリジル)−1,3,5−トリアジン(略称:TPTZ)並びに発色pH条件が広範囲で発色強度が良好な4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンジスルホン酸(略称:バソフェナントロリンスルホン酸)およびそのアルカリ金属塩などである。このうち、1,10−フェナントロリン若しくはその水和物またはTPTZを用いるのが好ましい。発色剤は、通常、水溶液の状態やアルコール溶液等の水溶性有機溶媒溶液の状態で試料水に対して添加するのが好ましい。 発色剤としてTPTZを用いる場合、試料水は、TPTZを添加する前にエタノールを添加しておくのが好ましい。ボイラ水のような、スケール発生防止のための分散剤としてポリアクリル酸ナトリウムを含む水が試料水の場合は、TPTZを添加したときに浮遊物が生成し、この浮遊物が吸光光度法の実施の妨げになる可能性がある。試料水にエタノールを添加しておくと、このような浮遊物の生成が抑制され、吸光光度法を安定に実施することができる。エタノールの添加量は、通常、試料水10ミリリットルに対し、2〜5ミリリットルに設定するのが好ましい。 次に、発色剤が添加された試料水について、発色剤による発色の吸光度を測定し、その測定結果から試料水中に含まれる二価の鉄イオン量を定量する。ここでは、使用する発色剤の種類に応じた発色波長の吸光度と試料水中の二価の鉄イオン量との関係を予め調べて検量線を作成しておき、測定した吸光度から当該検量線に基づいて試料水中に含まれる二価の鉄イオン量を判定する。この際、試料水の濁りによる測定誤差を軽減するために、発色波長の吸光度は、予め、亜二チオン酸塩および銅マスキング剤を添加する前の試料水についてのブランク若しくは亜二チオン酸塩および銅マスキング剤を添加後かつ発色剤を添加前の試料水についてのブランクを測定し、この測定値を利用して補正するのが好ましい。因みに、先に挙げた各発色剤の発色波長は次の通りである。1,10−フェナントロリンおよびその水和物:510nmTPTZ:595nmバソフェナントロリンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩:535nm ところで、発色剤は、その種類毎に発色可能なpHの範囲が異なる。このため、発色剤を添加する前の試料水は、必要に応じ、発色剤の種類に応じて下記の範囲にpHを調整しておくのが好ましい。試料水のpHは、通常、塩酸または硝酸のような酸性液や酢酸アンモニウムのような緩衝液の添加により調整することができる。1,10−フェナントロリンおよびその水和物:pH2〜9TPTZ:pH3.0〜5.8バソフェナントロリンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩:pH2〜9 ボイラ水のような、スケール生成原因となる硬度分、すなわち、カルシウムおよびマグネシウムに対するマスキング剤であるエチレンジアミン四酢酸およびその塩を含む水が試料水の場合、発色剤としてTPTZを用いると、試料水中の二価の鉄イオンとエチレンジアミン四酢酸およびその塩とが反応し、発色強度が変動する場合がある。これに対し、試料水のpHを下げると、試料水中の二価の鉄イオンとエチレンジアミン四酢酸およびその塩との反応が進行しにくくなり、試料水中の二価の鉄イオンは発色剤と反応し易くなる。そこで、この発色剤を用いるときは、発色剤を添加する前に、試料水のpHを上述の発色可能な範囲の下限付近(すなわち、低pH側)に設定するのが好ましい。具体的には、試料水のpHを3.0〜3.4に設定するのが好ましい。試料水のpHをこのように設定すると、TPTZは、試料水において既述のような濁りが生じない限り、エチレンジアミン四酢酸およびその塩を含む試料水においても安定な発色強度が得られ、吸光光度法を円滑に実施することができる。 本発明に係る鉄の定量方法は、試料水に対して亜二チオン酸塩および銅マスキング剤を添加して所要時間放置するだけで、試料水に対して発色剤を添加して吸光光度法を実施することができるため、従来の煩雑な前処理が必要な定量方法に比べて短時間で試料水中に含まれる鉄分の全量を容易に定量することができる。したがって、吸光光度法を実施可能な分析機器においてこの定量方法を採用すれば、試料水中の鉄を当該分析機器を用いて自動的に定量分析することができ、水分析において主流となりつつある連続流れ分析を実現することができる。 本発明の定量方法を上述のような連続流れ分析において適用する場合、全ての試料水についてブランクを測定して吸光度の補正をすると非常に手間と時間が掛かり、実質的に連続流れ分析を実現するのが困難になる可能性がある。そこで、本発明の定量方法は、連続流れ分析において適用するような場合、簡略法により吸光度を補正することができる。具体的には、発色剤の種類に応じた発色波長のピークおよびその裾部分以外における吸光度を補正値として利用し、発色波長の吸光度からこの補正値を差し引いた値に基づいて二価の鉄イオン量を判定する。因みに、先に挙げた各発色剤について、補正用の吸光度を得るための好ましい波長は次の通りである。1,10−フェナントロリンおよびその水和物:650nmTPTZ:800nmバソフェナントロリンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩:700nm 以下の実施例および比較例においては、下記のいずれかの試料水を用いた。試料水A 鉄イオン濃度が1,000mg/リットルの原子吸光用標準液(和光純薬工業株式会社製)0.1ミリリットルに対し、純水を加えて全量が100ミリリットルになるよう希釈したもの。試料水B 鉄イオン濃度が1,000mg/リットルの原子吸光用標準液(和光純薬工業株式会社製)0.1ミリリットルに対し、銅イオン濃度が1,000mg/リットルの原子吸光用標準液(和光純薬工業株式会社製)0.5ミリリットルと純水とを加えて全量が100ミリリットルになるよう希釈したもの。比較例1 JIS K0101:1998に規定のフェナントロリン吸光光度法に従い、試料水Aに含まれる鉄量を測定した。具体的には、試料水A10ミリリットルに対して8重量%塩酸水溶液1ミリリットルと25重量%酢酸アンモニウム水溶液1ミリリットルとを添加し、試料水AのpHを4.2に調整した。続いて、この試料水Aに対し、10重量%塩化ヒドロキシルアンモニウム水溶液0.4ミリリットルと0.5重量%1,10−フェナントロリンエタノール溶液(1,10−フェナントロリンを10重量%エタノール水溶液に溶解したもの)0.4ミリリットルとを添加し、10分間放置した。この結果、試料水Aは、鉄(II)錯体によるだいだい赤色を呈した。この試料水Aについて、分光光度計(株式会社日立製作所製の“U−2010”)を用いてだいだい赤色に対応する波長(510nm)の吸光度を測定し、この吸光度から650nmの吸光度を差し引いた補正値を求めた。予め作成しておいた検量線に基づいて、この補正値から試料水A中に含まれる鉄を定量した。比較例2 比較例1と同様にして、試料水Bに含まれる鉄量を測定した。実施例1 試料水B10ミリリットルに対して8重量%塩酸水溶液1ミリリットルと25重量%酢酸アンモニウム水溶液2.5ミリリットルとを添加し、試料水BのpHを5.1に調整した。続いて、この試料水Bに対し、亜二チオン酸ナトリウム無水塩粉末(和光純薬工業株式会社製の化学用)100mgおよびチオ硫酸ナトリウム粉末(和光純薬工業株式会社製の試薬一級)100mgをこの順で添加して振り混ぜ、10分間放置した。 次に、放置後の試料水Bに対して0.5重量%1,10−フェナントロリンエタノール溶液(1,10−フェナントロリンを10重量%エタノール水溶液に溶解したもの)を0.4ミリリットル添加し、5分間放置した。この結果、試料水Bは、鉄(II)錯体によるだいだい赤色を呈した。この試料水Bについて、分光光度計(株式会社日立製作所製の“U−2010”)を用いてだいだい赤色に対応する波長(510nm)の吸光度を測定し、この吸光度から650nmの吸光度を差し引いた補正値を求めた。予め作成しておいた検量線に基づいて、この補正値から試料水B中に含まれる鉄を定量した。比較例3 試料水B10ミリリットルに対して8重量%塩酸水溶液1ミリリットルと25重量%酢酸アンモニウム水溶液2.5ミリリットルとを添加し、試料水BのpHを5.1に調整した。続いて、この試料水Bに対し、亜二チオン酸ナトリウム無水塩粉末(和光純薬工業株式会社製の化学用)100mgを添加して振り混ぜ、10分間放置した。 次に、放置後の試料水Bに対して0.5重量%1,10−フェナントロリンエタノール溶液(1,10−フェナントロリンを10重量%エタノール水溶液に溶解したもの)を0.4ミリリットル添加し、5分間放置した。そして、この試料水Bについて、実施例1と同じく、分光光度計(株式会社日立製作所製の“U−2010”)を用いて510nmの吸光度を測定し、この吸光度から650nmの吸光度を差し引いた補正値を求めた。予め作成しておいた検量線に基づいて、この補正値から試料水B中に含まれる鉄を定量した。評価 比較例1〜3および実施例1の定量結果を表1に示す。表1には、比較例1の定量結果を基準値とした場合の相対値(%)を併せて表示している。表1によると、実施例1は、比較例1、2と略同等の結果が得られており、信頼性が高いことがわかる。 試料水中に含まれる鉄の定量方法であって、 前記試料水に亜二チオン酸塩および銅のマスキング剤を添加する工程と、 前記亜二チオン酸塩および前記マスキング剤が添加された前記試料水に対して発色剤を添加し、吸光光度法により前記試料水中の鉄を定量する工程とを含み、 前記マスキング剤としてチオ硫酸ナトリウムおよびイミダゾールのうちの少なくとも一つを用いる、鉄の定量方法。 前記亜二チオン酸塩および前記マスキング剤が添加された前記試料水のpHを前記発色剤が発色可能な範囲に設定してから、前記試料水に対して前記発色剤を添加する、請求項1に記載の鉄の定量方法。