タイトル: | 特許公報(B2)_機能改変フェニルアラニン脱水素酵素、およびこの酵素を用いた生体試料中のアミノ酸の分析方法 |
出願番号: | 2006243967 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C12N 15/09,C12N 1/15,C12N 1/19,C12N 1/21,C12N 5/10,C12N 9/04,C07K 19/00,C12Q 1/32 |
浅野 泰久 橘 信二郎 JP 4228121 特許公報(B2) 20081212 2006243967 20060908 機能改変フェニルアラニン脱水素酵素、およびこの酵素を用いた生体試料中のアミノ酸の分析方法 富山県 000236920 財団法人富山県新世紀産業機構 503117829 特許業務法人特許事務所サイクス 110000109 浅野 泰久 橘 信二郎 20090225 C12N 15/09 20060101AFI20090205BHJP C12N 1/15 20060101ALI20090205BHJP C12N 1/19 20060101ALI20090205BHJP C12N 1/21 20060101ALI20090205BHJP C12N 5/10 20060101ALI20090205BHJP C12N 9/04 20060101ALI20090205BHJP C07K 19/00 20060101ALI20090205BHJP C12Q 1/32 20060101ALI20090205BHJP JPC12N15/00 AC12N1/15C12N1/19C12N1/21C12N5/00 AC12N9/04 ZC07K19/00C12Q1/32 C12N 15/00−15/90 C12N 9/00−9/99 BIOSIS/MEDLINE/WPIDS/CAplus(STN) PubMed JSTPlus(JDreamII) 特開2006−271379(JP,A) 日本農芸化学会大会要旨集, 2006.03.05, Vol. 2006, p. 299,3C32a08 Biochemistry, 2002, Vol. 41, p. 11390-11397 18 2008061590 20080321 25 20071012 千葉 直紀 本発明は、フェニルアラニン脱水素酵素(EC 1.4.1.20)のメチオニンに対する基質特異性を改善するように、少なくとも3つのアミノ酸が修飾された改変酵素に関する。さらに本発明は、この改変酵素を用いる、生体試料中に含まれるL-メチオニン等のアミノ酸の分析方法に関する。 本発明によれば、特に、先天性代謝異常症であるホモシスチン尿症、フェニルケトン尿症およびメープルシロップ尿症等の疾患において、早期発見のための新生児マス・スクリーニング、あるいは当該患者の定期健康診断について利用可能な検査方法を提供できる。さらに、本発明の分析方法は、食品あるいは環境中に含まれるL-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-ロイシン、L-イソロイシンあるいはL-バリンなどの検出、定量に用いることもできる。 先天性代謝異常症の早期発見を目的とする新生児マス・スクリーニングの世界的な普及は、フェニルケトン尿症(Phenylketonuria; PKU)の治療法の発見と、乾燥ろ紙血液中のL-フェニルアラニン(L-Phe)の半定量法がGuthrieら(Pediatrics, Vol. 32, p. 338-343 (1963)、非特許文献1)によって開発されたことに始まる。先天性代謝異常症は現在までに約500種類もの症例が報告されており、中でも特に治療法が確立され適切な治療が行われることによって正常な生育が期待される疾患7種から22種類の症例について全国的に新生児に対してマス・スクリーニングが行われている。 フェニルケトン尿症のスクリーニングについては、酵素法(Screening, Vol. 1, p. 63 (1992)、非特許文献2、医学と薬学、Vol. 31, p. 1237 (1994)、非特許文献3)あるいはマイクロプレート蛍光法(Clinical Chemistry, Vol. 35, p. 1962 (1989)、非特許文献4)と呼ばれる酵素反応とそれに続く蛍光反応をマイクロプレートで行い、蛍光強度から検体中のL-フェニルアラニンを定量するキットが開発された(医学と薬学、Vol. 37, p. 1211 (1997)、非特許文献5)。また、メープルシロップ尿症のスクリーニングについても、前記フェニルケトン尿症のスクリーニング方法と同様にL-ロイシン特異的脱水素酵素を用いたマイクロプレート蛍光法が開発された。 一方、ホモシスチン尿症のスクリーニング方法については、メチオニン γ-lyaseを用いるホモシスチン尿症のマス・スクリーニング法の開発(平成5年度厚生省心身障害研究「マス・スクリーニングシステムの評価方法に関する研究」pp. 237-240 (1993)、非特許文献6)が報告されている。本法は、L-メチオニン γ-lyaseの酵素反応によってL-メチオニンから遊離されるアンモニア(NH3)を、o-フタルアルデヒド(OPA)と2-メルカプトエタノール(2ME)の中性域での特異蛍光を利用して測定する方法である。 これらのマイクロプレート蛍光定量法は、検体処理能力の高さに加え、従来法では困難とされていた検査結果の客観的判定である定量化や記録化が容易にできる利点を有している。さらに、検体の前処理を含めて3時間程度で検査結果を得ることが可能であり、迅速性や利便性、さらに作業効率などの点でも従来法に比べて大幅に改善されている。Pediatrics, vol. 32, p. 338 (1963)Screening, vol. 1, p. 63 (1992)医学と薬学、vol. 31, p. 1237 (1994)Clinical Chemistry, vol. 35, p. 1962 (1989)医学と薬学、vol. 37, p. 1211 (1997)平成5年度厚生省心身障害研究「マス・スクリーニングシステムの評価方法に関する研究」pp. 237-240 (1993) ホモシスチン尿症以外の重要先天性代謝異常症疾患(フェニルケトン尿症、ガラクトース血症およびメープルシロップ尿症等)のマイクロプレートを用いた酵素蛍光法によるマス・スクリーニングでは、各測定項目に特異的な脱水素酵素を用い、測定の手順、試薬組成および検出蛍光波長等において共通しており、多検体同時測定が可能なシステムとなっている。一方、前記ホモシスチン尿症のスクリーニング法、すなわちL-メチオニン γ-リアーゼを用いたアンモニアの蛍光定量による間接的血中メチオニンの定量法では、測定手順、試薬組成および検出蛍光波長等において他の先天性代謝異常症疾患の測定方法とは大きく異なっている。また、この方法では、環境中のアンモニアなどによる試料の汚染等に敏感であり、細心の注意を払う必要があった。このため、診断項目毎に検体を分別しなければならないことから、スクリーニングを行う際の作業効率を改善する必要性があった。 本発明では、ホモシスチン尿症以外の重要先天性代謝異常症疾患と同様にL-メチオニン特異的な脱水素酵素を進化分子工学的手法により作出し、血液試料中のL-メチオニン濃度を酵素蛍光法により定量できるようにするとともに、測定手順、試薬組成および検出蛍光波長等において他の先天性代謝異常症疾患の診断キットと同様な仕様にすることでスクリーニング作業効率の大幅な改善を提供することを目的とする。 より具体的には、本発明の目的は、L-メチオニンに対して基質特異性を有するフェニルアラニン脱水素酵素を進化分子工学的手法により作出して、メチオニンの酵素蛍光定量法に適した機能改変アミノ酸脱水素酵素を提供することにある。さらに、本発明は、作出した機能改変アミノ酸脱水素酵素を用いた、被検試料(血液試料)に含まれるL-メチオニンの分析方法を提供することも目的とする。 また、本発明ではL-フェニルアラニン、L-ロイシン、L-バリン、L-イソロイシンおよびL-メチオニンに対して基質特異性が広いアミノ酸脱水素酵素を作出することによって、これらアミノ酸の血中異常濃度が確認されている先天性代謝異常症および前記アミノ酸の血中異常濃度が確認され得る疾病の検出あるいは1次スクリーニングの手法として適当な手段を提供するものである。 上記課題を解決し、本発明の目的を達成するための本発明は以下の通りである。[1] Bacillus sphaericus R79a由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列(配列表の配列番号4に記載)の66番目のアミノ酸残基をシステイン(Cys)、124番目のアミノ酸残基をセリン(Ser)、145番目のアミノ酸残基をメチオニン(Met)、295番目のアミノ酸残基をアスパラギン(Asn)に置換し、且つ310番目のアミノ酸残基をプロリン(Pro)、アルギニン(Arg)またはグリシン(Gly)に置換した改変酵素。[2] 310番目のアミノ酸残基をプロリン(Pro)に置換した請求項1に記載の改変酵素。[3] Bacillus sphaericus R79a由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列(配列表の配列番号4に記載)の66 番目のアミノ酸残基をシステイン(Cys)、124番目のアミノ酸残基をセリン(Ser)、145番目のアミノ酸残基をメチオニン(Met)、295番目のアミノ酸残基をアスパラギン(Asn)に置換した改変酵素。[4] Bacillus sphaericus R79a由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列(配列表の配列番号4に記載)の124番目のアミノ酸残基をセリン(Ser)、145番目のアミノ酸残基をロイシン(Lue)に置換し、且つ310番目のアミノ酸残基をスレオニン(Thr)に置換した改変酵素。[5] [1]〜[4]のいずれかに記載の酵素のN末端側に1〜12個のヒスチジンから成るオリゴペプチド(ヒスチジン・タグ)を融合したタンパク質。[6] [1]〜[4] のいずれかに記載の酵素または[5]に記載の融合タンパク質をコードする塩基配列を有するDNA。[7] 下記いずれかのDNA。(1)配列表の配列番号3に記載の塩基配列を有するDNAであって、196〜198番目のctgがtgtあるいはtgc、370〜372番目のggtがagt、agc、tct、tcc、tcaあるいはtcg、433〜435番目のaacがatg、883〜885番目のctaがaatあるいはaac、且つ928〜930番目のgttがcct、ccc、ccaあるいはccgであるDNA、(2)(1)のDNAに相補的な塩基配列を有するDNA。[8] 下記いずれかのDNA。(11)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列であって、124番目のアミノ酸がセリン(Ser)であり、310番目のアミノ酸がプロリン(Pro)であり、66番目のアミノ酸がシステイン(Cys)であり、145番目のアミノ酸がメチオニン(Met)であり、及び295番目のアミノ酸がアスパラギン(Asn)である、アミノ酸配列をコードするDNA、(12)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列であって、124番目のアミノ酸がセリン(Ser)であり、66番目のアミノ酸がシステイン(Cys)であり、145番目のアミノ酸がメチオニン(Met)であり、及び295番目のアミノ酸がアスパラギン(Asn)である、アミノ酸配列をコードするDNA、(13)(11)及び(12)のいずれかのDNAに相補的な塩基配列を有するDNA。[9] [6]〜[8]のいずれかに記載のDNAを含むベクター。[10] [6]〜[8]のいずれかに記載のDNAのいずれかの末端側に1〜12個のヒスチジンからなるオリゴペプチドをコードするDNAをさらに含む[9]に記載のベクター。[11] [9]または[10]に記載のベクターで宿主を形質転換した形質転換体。[12] [11]に記載の形質転換体を培養し、培養物からフェニルアラニン脱水素酵素(EC 1.4.1.20)のメチオニンに対する基質特異性を改善するように、少なくとも3つのアミノ酸が修飾された改変酵素を採取する改変酵素の調製方法。[13] 採取される改変酵素が、[1]〜[4]のいずれかに記載の酵素または[5]に記載の融合タンパク質である[12]に記載の調製方法。[14] [1]〜[4]のいずれかに記載の酵素または[5]に記載の融合タンパク質を用いて、被検試料に含まれるL-メチオニンを分析する方法。[15] L-ロイシン、L-イソロイシン、L-バリンおよびL-フェニルアラニンの少なくとも1つを併せて分析する[14]に記載の方法。[16] 被検試料をレサズリン、ジアホラーゼおよびニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)と混合し、発色を検出することを含む、[14]または[15]に記載の方法。[17] 被検試料とレサズリン、ジアホラーゼおよびニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)との混合をマイクロプレートのウェル中で行う[16]に記載の方法。[18] 被検試料が血液試料である[14]〜[17]のいずれかに記載の方法。 本発明によれば、L-メチオニンに対して特異的なフェニルアラニン脱水素酵素の改変酵素を提供することができ、且つ本発明による改変酵素を用いることで、被検試料に含まれるL-メチオニンの分析をレサズリン、ジアホラーゼおよびNADを用いる酵素蛍光発色法により行うことができる。 本発明は、フェニルアラニン脱水素酵素(EC 1.4.1.20)のメチオニンに対する基質特異性を改善するように、少なくとも3つのアミノ酸が修飾された改変酵素に関する。本発明において、改変の対象であるフェニルアラニン脱水素酵素(EC 1.4.1.20)は、L-フェニルアラニンのアミノ基に対して、特異的に酸化的脱アミノ化反応を触媒する酵素である。フェニルアラニン脱水素酵素の例としては、例えば、Bacillus badius IAM11059、Bacillus sphaericus R79a、Sporosarcina ureae R04、Bacillus halodurans、Geobacillus kaustophilus、Oceanobacillus iheyensis、Rhodococcus sp. M-4またはThermoactinomyces intermediusに由来するフェニルアラニン脱水素酵素を挙げることができる。 Bacillus badius IAM11059由来するフェニルアラニン脱水素酵素は、L-フェニルアラニンに対する基質特異性が極めて高く、フェニルケトン尿症の血中L-フェニルアラニン濃度の定量に最適な酵素として同疾患のマス・スクリーニングにおいてマイクロプレートを用いた酵素蛍光定量法の酵素剤として用いられている。また、本酵素は、補酵素としてニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(酸化型;NAD+)を要求する。本酵素による酸化反応は可逆的であり、中性付近から弱アルカリ性のpH領域においてアンモニウムイオンとニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(還元型;NADH)存在下で還元的アミノ化反応も触媒する酵素である。Bacillus badius IAM11059由来するフェニルアラニン脱水素酵素の塩基配列およびアミノ酸配列は、Yamada A, Dairi T, Ohno Y, Huang XL and Asano Y. Nucleotide sequencing of フェニルアラニン dehydrogenase gene from Bacillus badius IAM 11059 Biosci. Biotechnol. Biochem. 59(10). 1994-1995 (1995)に記載され、配列番号1および2として記載する。 Bacillus sphaericus R79a由来のフェニルアラニン脱水素酵素(EC 1.4.1.20)は、L-フェニルアラニンあるいはL-チロシンのアミノ基に対して、特異的に酸化的脱アミノ化反応を触媒する酵素である。本酵素は、L-フェニルアラニンとともにL-チロシンに対しても基質特異性が高く、L-アミノ酸の酵素的合成反応において利用されている。また、本酵素は、補酵素として前記B. badius IAM11059由来のフェニルアラニン脱水素酵素同様にニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)を要求する。本酵素による酸化反応は可逆的であり、中性付近から弱アルカリ性のpH領域において前記Bacillus badius IAM11059由来のフェニルアラニン脱水素酵素と同様にアンモニウムイオンとニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(還元型;NADH)の存在下で還元的アミノ化反応も触媒する酵素である。Bacillus sphaericus R79a由来のフェニルアラニン脱水素酵素の塩基配列およびアミノ酸配列は、N. Okazaki, Y. Hibino, Y. Asano, M. Ohmori, N. Numao and K. Kondo. Cloning and nucleotide sequencing of フェニルアラニン dehydrogenase gene of Bacillus sphaericus. Gene. 63. 337-341 (1988) に記載され、配列番号3および4として記載する。 Sporosarcina ureae R04由来のフェニルアラニン脱水素酵素の塩基配列およびアミノ酸配列は、DDBJ/EMBL/GenBank databases(Accession No. AB001031)に記載され、配列番号5および6として記載する。 Bacillus haloduransに由来するフェニルアラニン脱水素酵素の塩基配列およびアミノ酸配列は、GenBank Database(Accession No. NC_002570)およびNCBI Protein Database(Accession No. NP_241084)に記載され、配列番号7および8として記載する。 Geobacillus kaustophilusに由来するフェニルアラニン脱水素酵素の塩基配列およびアミノ酸配列は、GenBank Database(Accession No. BA000043.1)およびNCBI Protein Database(Accession No. BAD76316)に記載され、配列番号9および10として記載する。 Oceanobacillus iheyensisに由来するフェニルアラニン脱水素酵素の塩基配列およびアミノ酸配列は、GenBank(Accession No. BA000028)およびNCBI Protein Database(Accession No. BAC14834)に記載され、配列番号11および12として記載する。 Rhodococcus sp. M-4に由来するフェニルアラニン脱水素酵素の塩基配列およびアミノ酸配列は、以下の文献に記載され、配列番号13および14として記載する。Brunhuber N. M., Banerjee A., Jacobs W. R. Jr., Blanchard J. S. Cloning, sequencing, and expression of Rhodococcus L-フェニルアラニン dehydrogenase. Sequence comparisons to amino-acid dehydrogenases. J. Biol. Chem., 269. 16203-16211 (1994) Thermoactinomyces intermediusに由来するフェニルアラニン脱水素酵素の塩基配列およびアミノ酸配列は、以下の文献に記載され、配列番号15および16として記載する。Takada H., Yoshimura T., Ohshima T., Esaki N., Soda K. Thermostable フェニルアラニン dehydrogenase of Thermoactinomyces intermedius; cloning, expression, and sequencing of its gene. J. Biochem., 109. 371-376 (1991) 野生型のフェニルアラニン脱水素酵素は、L-フェニルアラニンに対する基質特異性が極めて高く、Bacillus badius IAM 11059、Bacillus sphaericus R79aあるいはSporosarcina ureae R04由来の酵素などにおいてL-フェニルアラニンに対する相対活性を100とすると、L-メチオニンやL-ロイシン、L-イソロイシンあるいはL-バリンなどの天然アミノ酸の基質に対しての相対活性は10以下となっている。 本発明においては、上記のようにL-メチオニンに対する基質特異性が極めて低いフェニルアラニン脱水素酵素を改変し、L-メチオニンに対する基質特異性を格段に向上させた変異型酵素である。具体的には、野生型フェニルアラニン脱水素酵素の少なくとも3つのアミノ酸をL-メチオニンに対する基質特異性が向上するように修飾した改変酵素である。基質特異性の改善は、例えば、L-メチオニンに対する相対活性を100としたときにL-フェニルアラニンに対する相対活性が100以下であることが好ましく、60以下であることがより好ましく、40以下であることが最も好ましい。さらには、例えば、L-メチオニンに対する相対活性を100としたときにロイシンに対する相対活性が100以下であることが好ましく、60以下であることがより好ましく、40以下であることが最も好ましい。さらには、例えば、L-メチオニンに対する相対活性を100としたときにバリンに対する相対活性が100以下であることが好ましく、60以下であることがより好ましく、40以下であることが最も好ましい。さらには、例えば、L-メチオニンに対する相対活性を100としたときにフェニルアラニン、ロイシンおよびバリンのいずれに対しても相対活性が100以下であることが好ましく、60以下であることがより好ましく、40以下であることが最も好ましい。 メチオニンに対する基質特異性を改善する修飾は、具体的には、野生型フェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の114〜125番目の範囲にあるスレオニン(Thr)グリシン(Gly)の連続した配列 (但し、前記グリシン(Gly)が114〜125番目の範囲にある)におけるグリシン(Gly)のセリン(Ser)への置換である。野生型フェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列中のスレオニン(Thr)グリシン(Gly)の連続した配列(グリシン(Gly)が114〜125番目の範囲にある)におけるグリシン(Gly)の位置は酵素の由来によって異なり、以下の表に示す位置にある。 さらにメチオニンに対する基質特異性を改善する修飾は、具体的には、野生型フェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の297〜310番目の範囲にあるグルタミン(Gln)バリン(Val)の連続した配列 (但し、前記バリン(Val)が297〜310番目の範囲にある)におけるバリン(Val)のアルギニン(Arg)、スレオニン(Thr)、グリシン(Gly)あるいはプロリン(Pro)への置換である。野生型フェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列中のグルタミン(Gln)バリン(Val)の連続した配列(バリン(Val)が297〜310番目の範囲にある)におけるバリン(Val)の位置は酵素の由来によって異なり、以下の表に示す位置にある。 さらにメチオニンに対する基質特異性を改善する修飾は、具体的には、野生型フェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の135〜146番目の範囲にあるイソロイシン(Ile)、バリン(Val)/アスパラギン(Asn)およびグリシン(Gly)の連続した配列 (但し、前記バリン(Val)/アスパラギン(Asn)が135〜146番目の範囲にある)におけるバリン(Val)/アスパラギン(Asn)のアラニン(Alal)、ロイシン(Leu)あるいはメチオニン(Met)への置換である。野生型フェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列中のイソロイシン(Ile)、バリン(Val)/アスパラギン(Asn)およびグリシン(Gly)の連続した配列(バリン(Val)/アスパラギン(Asn)が135〜146番目の範囲にある)におけるバリン(Val)/アスパラギン(Asn)の位置は酵素の由来によって異なり、以下の表に示す位置にある。 本発明の改変酵素は、野生型フェニルアラニン脱水素酵素の少なくとも3つのアミノ酸をL-メチオニンに対する基質特異性が向上するように修飾した改変酵素であるが、この少なくとも3つのアミノ酸は、上記表1〜3に示されるアミノ酸であることが好ましい。以下の表4及び5に、さらに、修飾すべき野生型フェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸を示すが、これらのアミノ酸は、野生型フェニルアラニン脱水素酵素の由来によっては、修飾が不要な場合がある。修飾することが好ましい野生型フェニルアラニン脱水素酵素の由来を表4及び5に示す。 さらにメチオニンに対する基質特異性を改善する修飾は、具体的には、野生型フェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の280〜295番目の範囲にあるグリシン(Gly)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、チロシン(Tyr)、アラニン(Ala)、プロリン(Peo)およびアスパラギン酸(Asp)の連続した配列 (但し、前記ロイシン(Leu)が280〜295番目の範囲にある)におけるロイシン(Leu)のアスパラギン(Asn)への置換である。野生型フェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列中のグリシン(Gly)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、チロシン(Tyr)、アラニン(Ala)、プロリン(Peo)およびアスパラギン酸(Asp)の連続した配列(ロイシン(Leu)が280〜295番目の範囲にある)におけるロイシン(Leu)の位置は酵素の由来によって異なり、以下の表に示す位置にある。 メチオニンに対する基質特異性を改善する修飾は、具体的には、野生型フェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列の53〜67番目の範囲にあるアラニン(Ala)、ロイシン(Leu)の連続した配列 (但し、前記ロイシン(Leu)が53〜67番目の範囲にある)におけるロイシン(Leu)のシステイン(Cys)への置換である。野生型フェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列中のアラニン(Ala)、ロイシン(Leu)の連続した配列(ロイシン(Leu)が53〜67番目の範囲にある)におけるロイシン(Leu)の位置は酵素の由来によって異なり、以下の表に示す位置にある。 さらに本発明は、本発明の改変酵素のアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、メチオニンに対する基質特異性を改善したフェニルアラニン脱水素酵素活性を有するアミノ酸配列を有する改変酵素を包含する。但し、欠失及び/又は置換されるアミノ酸に、セリン(Ser)が114〜125番目の範囲にあるスレオニン(Thr) セリン(Ser)の連続した配列のセリン(Ser)は含まない。置換、挿入または欠落をさらに有する改変酵素は、野生型酵素に比べて、メチオニンに対する基質特異性を改善したものであり、基質特異性の改善は、前記と同様である。 即ち、例えば、L-メチオニンに対する相対活性を100としたときにL-フェニルアラニンに対する相対活性が100以下であることが好ましく、60以下であることがより好ましく、40以下であることが最も好ましい。さらには、例えば、L-メチオニンに対する相対活性を100としたときにロイシンに対する相対活性が100以下であることが好ましく、60以下であることがより好ましく、40以下であることが最も好ましい。さらには、例えば、L-メチオニンに対する相対活性を100としたときにバリンに対する相対活性が100以下であることが好ましく、60以下であることがより好ましく、40以下であることが最も好ましい。さらには、例えば、L-メチオニンに対する相対活性を100としたときにフェニルアラニン、ロイシンおよびバリンのいずれに対しても相対活性が100以下であることが好ましく、60以下であることがより好ましく、40以下であることが最も好ましい。 本明細書で言う「1から数個の塩基の欠失、置換及び/又は付加を有する塩基配列」における「1から数個」の範囲は特には限定されないが、例えば、1から40個、好ましくは1から30個、より好ましくは1から20個、より好ましくは1から10個、さらに好ましくは1から5個、特に好ましくは1から3個程度を意味する。以下においても同様である。 以下に本発明の改変酵素の具体例(実施例に示す)として、Bacillus sphaericus R79a由来酵素を例に、メチオニンに対する相対活性を100としたときのフェニルアラニンに対する相対活性を一覧表にして示す。 本発明の改変酵素(タンパク質)の取得方法は特に制限されず、化学合成により合成したタンパク質でもよいし、遺伝子組換え技術により作製した組換えタンパク質であってもよい。改変酵素(組換えタンパク質)を作製する場合には、先ず、後述するように、当該改変酵素(タンパク質)をコードする遺伝子(DNA)を取得する。このDNAを適当な発現系に導入することにより、本発明の改変酵素を産生することができる。発現系でのタンパク質の発現については本明細書中に後記する。 本発明のDNAの取得方法は特に限定されない。本明細書中の配列表の配列番号1から16に記載したアミノ酸配列及び塩基配列の情報に基づいて適当なブローブやプライマーを調製し、それらを用いて前記で挙げたフェニルアラニン脱水素酵素を含む菌のcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより本発明の遺伝子を単離することができる。cDNAライブラリーは、本発明の遺伝子を発現している菌から常法により作製することができる。 PCR法により本発明の遺伝子を取得することもできる。上記した菌由来のDNAライブラリー又はcDNAライブラリーを鋳型として使用し、配列番号1、3、5、7、9、11、13または15に記載した塩基配列を増幅できるように設計した1対のプライマーを用いてPCRを行う。PCRの反応条件は適宜設定することができ、例えば、94℃で30秒間(変性)、55℃で30秒〜1分間(アニーリング)、72℃で2分間(伸長)からなる反応工程を1サイクルとして、例えば30サイクル行った後、72℃で7分間反応させる条件などを挙げることができる。次いで、増幅されたDNA断片を、大腸菌等の宿主で増幅可能な適切なベクター中にクローニングすることができる。 上記したプローブ又はプライマーの調製、cDNAライブラリーの構築、cDNAライブラリーのスクリーニング、並びに目的遺伝子のクローニングなどの操作は当業者に既知であり、例えば、Molecular Cloning: A laboratory Mannual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY.,1989(以下、モレキュラークローニング第2版と略す)、Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley & Sons (1987-1997)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)等に記載の方法に準じて行うことができる。 また、配列表の配列番号2、4、6、8、10、12、14または16に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、配糖化酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;並びに配列表の配列番号5または6に記載の塩基配列において1から数個の塩基の欠失、置換及び/又は付加を有する塩基配列を有し、配糖化酵素をコードする塩基配列を有する遺伝子(以下、これらの遺伝子を変異遺伝子と称する)については、配列番号1〜16に記載のアミノ酸配列および塩基配列の情報に基づいて、化学合成、遺伝子工学的手法又は突然変異誘発などの当業者に既知の任意の方法で作製することができる。 例えば、配列表の配列番号1、3、5、7、9、11、13または15に記載の塩基配列を有するDNAに対し、変異原となる薬剤と接触作用させる方法、紫外線を照射する方法、遺伝子工学的手法等を用いて行うことができる。遺伝子工学的手法の一つである部位特異的変異誘発法は特定の位置に特定の変異を導入できる手法であることから有用であり、モレキュラークローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー等に記載の方法に準じて行うことができる。[本発明のベクター] 本発明は、上記本発明のいずれかのDNAを含むベクターに関する。上記本発明のいずれかのDNAを乗せるベクターは特に制限はないが、例えば、自立的に複製するベクター(例えばプラスミド等)でもよいし、あるいは、宿主細胞に導入された際に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、組み込まれた染色体と共に複製されるものであってもよい。好ましくは、本発明で用いるベクターは発現ベクターである。発現ベクターにおいて本発明の遺伝子は、転写に必要な要素(例えば、プロモーター等)が機能的に連結されている。プロモータは宿主細胞において転写活性を示すDNA配列であり、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。 細菌細胞で作動可能なプロモータとしては、バチルス・ステアロテルモフィルス・マルトジェニック・アミラーゼ遺伝子(Bacillus stearothermophilus maltogenic amylase gene)、バチルス・リケニホルミスαアミラーゼ遺伝子(Bacillus licheniformis alpha-amylase gene)、バチルス・アミロリケファチエンス・BANアミラーゼ遺伝子(Bacillus amyloliquefaciens BAN amylase gene)、バチルス・サブチリス・アルカリプロテアーゼ遺伝子(Bacillus Subtilis alkaline protease gene)もしくはバチルス・プミルス・キシロシダーゼ遺伝子(Bacillus pumilus xylosldase gene)のプロモータ、またはファージ・ラムダのPR若しくはPLプロモータ、大腸菌の lac、trp若しくはtacプロモータなどが挙げられる。 哺乳動物細胞で作動可能なプロモータの例としては、SV40プロモータ、MT−1(メタロチオネイン遺伝子)プロモータ、またはアデノウイルス2主後期プロモータなどがある。昆虫細胞で作動可能なプロモータの例としては、ポリヘドリンプロモータ、P10プロモータ、オートグラファ・カリホルニカ・ポリヘドロシス塩基性タンパクプロモータ、バキュウロウイルス即時型初期遺伝子1プロモータ、またはバキュウロウイルス39K遅延型初期遺伝子プロモータ等がある。酵母宿主細胞で作動可能なプロモータの例としては、酵母解糖系遺伝子由来のプロモータ、アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子プロモータ、TPI1プロモータ、ADH2-4cプロモータなどが挙げられる。糸状菌細胞で作動可能なプロモータの例としては、ADH3プロモータまたはtpiAプロモータなどがある。 また、本発明のDNAは必要に応じて、適切なターミネータに機能的に結合されてもよい。本発明の組み換えベクターは更に、ポリアデニレーションシグナル(例えばSV40またはアデノウイルス5E1b領域由来のもの)、転写エンハンサ配列(例えばSV40エンハンサ)などの要素を有していてもよい。 本発明の組み換えベクターは更に、該ベクターが宿主細胞内で複製することを可能にするDNA配列を具備してもよく、その一例としてはSV40複製起点(宿主細胞が哺乳類細胞のとき)が挙げられる。 本発明の組み換えベクターはさらに選択マーカーを含有してもよい。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)またはシゾサッカロマイセス・ポンベTPI遺伝子等のようなその補体が宿主細胞に欠けている遺伝子、または例えばアンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシン若しくはヒグロマイシンのような薬剤耐性遺伝子を挙げることができる。本発明の遺伝子、プロモータ、および所望によりターミネータおよび/または分泌シグナル配列をそれぞれ連結し、これらを適切なベクターに挿入する方法は当業者に周知である。[本発明の形質転換体、それを用いた改変酵素の製造] 本発明のDNA(遺伝子)又は組み換えベクターを適当な宿主に導入することによって形質転換体を作製することができる。本発明の遺伝子または組み換えベクターを導入される宿主細胞は、本発明の遺伝子を発現できれば任意の細胞でよく、細菌、酵母、真菌および高等真核細胞等が挙げられる。 細菌細胞の例としては、バチルスまたはストレプトマイセス等のグラム陽性菌又は大腸菌等のグラム陰性菌が挙げられる。これら細菌の形質転換は、プロトプラスト法、または公知の方法でコンピテント細胞を用いることにより行えばよい。 哺乳類細胞の例としては、HEK293細胞、HeLa細胞、COS細胞、BHK細胞、CHL細胞またはCHO細胞等が挙げられる。哺乳類細胞を形質転換し、該細胞に導入されたDNA配列を発現させる方法も公知であり、例えば、エレクトロポーレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等を用いることができる。 酵母細胞の例としては、サッカロマイセスまたはシゾサッカロマイセスに属する細胞が挙げられ、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevis1ae)またはサッカロマイセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)等が挙げられる。酵母宿主への組み換えベクターの導入方法としては、例えば、エレクトロポレーション法、スフェロブラスト法、酢酸リチウム法等を挙げることができる。 他の真菌細胞の例は、糸状菌、例えばアスペルギルス、ニューロスポラ、フザリウム、またはトリコデルマに属する細胞である。宿主細胞として糸状菌を用いる場合、DNA構築物を宿主染色体に組み込んで組換え宿主細胞を得ることにより形質転換を行うことができる。DNA構築物の宿主染色体への組み込みは、公知の方法に従い、例えば相同組換えまたは異種組換えにより行うことができる。 昆虫細胞を宿主として用いる場合には、組換え遺伝子導入ベクターおよびバキュロウイルスを昆虫細胞に共導入して昆虫細胞培養上清中に組換えウイルスを得た後、さらに組換えウイルスを昆虫細胞に感染させ、タンパク質を発現させることができる(例えば、Baculovirus Expression Vectors, A Laboratory Manua1;及びカレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、Bio/Technology, 6, 47(1988)等に記載)。 バキュロウイルスとしては、例えば、ヨトウガ科昆虫に感染するウイルスであるアウトグラファ・カリフォルニカ・ヌクレアー・ポリヘドロシス・ウイルス(Autographa californica nuclear polyhedrosis virus)等を用いることができる。 昆虫細胞としては、Spodoptera frugiperdaの卵巣細胞であるSf9、Sf21〔バキュロウイルス・エクスプレッション・ベクターズ、ア・ラボラトリー・マニュアル、ダブリュー・エイチ・フリーマン・アンド・カンパニー(W. H. Freeman and Company)、ニューヨーク(New York)、(1992)〕、Trichoplusia niの卵巣細胞であるHiFive(インビトロジェン社製)等を用いることができる。 組換えウイルスを調製するための、昆虫細胞への組換え遺伝子導入ベクターと上記バキュロウイルスの共導入方法としては、例えば、リン酸カルシウム法又はリポフェクション法等を挙げることができる。 より具体的には、例えば、Bacillus badius IAM11059あるいはBacillus sphaericus R79a由来のフェニルアラニン脱水素酵素遺伝子(pdh)を鋳型として部位特異的変異プライマーを用いてPCR反応によって増幅された部位特異的変異導入遺伝子および/またはその相補配列を作製し、この部位特異的変異導入遺伝子および/またはその相補鎖を、例えば、大腸菌(Escherichia coli)あるいはその他の組換え可能な宿主細胞(例えば動物細胞、植物細胞、昆虫細胞など)で発現させて、本発明の改変酵素を得ることができる。 本発明は上記本発明の形質転換体を培養し、培養物からフェニルアラニン脱水素酵素(EC 1.4.1.20)のメチオニンに対する基質特異性を改善するように、少なくとも3つのアミノ酸が修飾された改変酵素を採取する改変酵素の調製方法を包含する。 上記の形質転換体は、導入されたDNAの発現を可能にする条件下で適切な栄養培地中で培養する。形質転換体の培養物から、本発明の改変酵素を単離精製するには、通常の改変酵素の単離、精製法を用いればよい。 例えば、本発明の改変酵素が、細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後、細胞を遠心分離により回収し水系緩衝液に懸濁後、超音波破砕機等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られた上清から、通常のタンパク質の単離精製法、即ち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)セファロース等のレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S-Sepharose FF(ファルマシア社製)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィ一法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を単独あるいは組み合わせて用い、精製標品を得ることができる。[L-メチオニン分析方法] 本発明は、上記本発明の改変酵素またはタンパク質を用いて、被検試料に含まれるL-メチオニンを分析する方法に関する。 本発明のL-メチオニン分析法は、具体的には、被検試料をレサズリン、ジアホラーゼおよびニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)と混合し、発色、好ましくは蛍光発色を検出することを含む。被検試料とレサズリン、ジアホラーゼおよびニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)との混合は、例えば、マイクロプレートのウェル中で行うことができる。 さらに本発明のL-メチオニン分析法は、(1)被検試料とニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)を混合し、還元されたNADHの吸光値の増大を測定すること、(2) 被検試料とニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)にフェナジンメトスルフェート(PMS)等の電子キャリヤーを媒体として被検試料と還元系発色試薬であるイント(INT)を混合し、フォルマザン生成発色を検出すること、あるいは(3) 被検試料とニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)に1-メトキシ-フェナジンメトスルフェート(1-Methoxy PMS)等の電子キャリヤーを介して金属イオン(例えばCo3+など)を還元し、キレート指示薬である5-Br-PAPS等と反応せしめ、発色した吸光値を測定して検出すること等の方法によっても実施することができる。上記(1)〜(3)の方法においても、試薬の混合は、マイクロプレートのウェル中で行うことかできる。 本発明において、被検試料は、例えば、血液試料であることができる。 本発明においては、L-メチオニン分析と並行して、L-ロイシン、L-イソロイシン、L-バリンおよびL-フェニルアラニンの少なくとも1つも併せて分析することができる。これは、本発明の方法で用いる本発明の改変酵素またはタンパク質が、L-メチオニンのみならず、L-ロイシン、L-イソロイシン、L-バリンおよびL-フェニルアラニンの少なくとも1つに対しても、基質特異性を有するからである。実施例1[フェニルアラニン脱水素酵素の分子モデリング] Bacillus sphaericus R79a由来フェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列(Swiss-Prot accession No. P23307)を鋳型とし、カナダCCG社製統合計算化学システムプログラム(MOE)を用いてタンパク質のホモロジーモデリングを行った。相同性タンパク質の検索を行い、幾つかのアミノ酸脱水素酵素タンパク質を抽出した。前記で得られたアミノ酸配列をもとに多重配列アラインメントを行った。立体構造既知のアミノ酸脱水素酵素で最も相同性の高い値を示したBacillus sphaericus由来ロイシン脱水素酵素の立体構造座標(PDB accession No. 1LEH、相同性:47.2%)を鋳型として構造保持領域解析を同上プログラムで行い、Bacillus sphaericus R79a由来フェニルアラニン脱水素酵素の予測立体構造を構築した。構築された予測立体構造をMOEプログラムに含まれるAMBER '89/'94、CHARMM22およびEngh-Huber力場の各理論によるエネルギー極小化計算を行うことによって立体構造の最適化を行った。[補酵素NADの座標抽出と転写] フェニルアラニン脱水素酵素の結晶構造解析はRhodococcus sp. M4由来の酵素で報告されている(Biochemistry, 38. 2326-2339 (1999);非特許文献3、Biochemistry, 39. 9174-9187 (2000);非特許文献4)。Rhodococcus sp. M4由来フェニルアラニン脱水素酵素の立体構造解析では、酵素タンパク質、補酵素(NAD+)および反応生成物(フェニルピルビン酸)の複合体での座標が解析されている(PDB accession No. 1BW9)。NAD+の座標を前記PDBデータから抽出し、上記予測立体構造データに転写した。前記参考文献に記述されているNAD+とタンパク質が相互作用するアミノ酸残基をB. sphaericus由来フェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列とのアラインメントから探索し、アミノ酸残基195番目のバリン(Val)、214番目のアスパラギン酸(Asp)、254番目のアラニン(Ala)および277番目のアスパラギン(Asn)を抽出した。MOEプログラムを用いて、前記アミノ酸残基とNAD+が相互作用する原子間距離に拘束をかけ、同上プログラムを用いてエネルギー極小化計算を行い、予測立体構造においてNAD+が最も安定する空間座標を導き出した。[基質L-フェニルアラニンの座標抽出と転写] 前記NAD+と同様にして、基質L-フェニルアラニンの座標をRhodococcus sp. M4の立体構造座標(PDB accession No. 1C1D)から抽出し、上記で構築したB. sphaericus R79a由来フェニルアラニン脱水素酵素の予測立体構造データの座標上に転写した。前記同様の手順に従って酵素タンパク質とL-Pheが相互作用するアミノ酸残基として53番目のグリシン、79番目のリジン、91番目のリジンおよび126番目のアスパラギン酸と基質L-フェニルアラニンの原子間距離に拘束をかけてエネルギー極小化計算を行い、予測立体構造においてL-Pheが最も安定する空間座標を導き出した。[変異アミノ酸残基候補の抽出] 前記で構築されたB. sphaericus由来フェニルアラニン脱水素酵素のタンパク質・NAD+・L-フェニルアラニン複合予測立体構造をPDBデータ形式で出力し、分子モデル表示ソフト(PyMOL, DeLano Scientific LLC, South San Francisco, CA, USA)を使って描画した。基質(L-フェニルアラニン)リガンドとタンパク質分子表面が接触可能なアミノ酸残基を描画した立体構造で確認しながら抽出した。さらに、Rhodococcus sp. M4由来フェニルアラニン脱水素酵素(非特許文献1,2)が基質(L-フェニルアラニン)と相互作用するアミノ酸残基をB. sphaericus由来フェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列からアミノ酸配列アラインメントによって抽出した。前記操作により合計28個のアミノ酸残基を候補として選択した。選択したアミノ酸残基は以下の表7に示すとおりである。(1;鋳型pdh遺伝子の調製) 鋳型として用いたBacillus sphaericus R79a由来のフェニルアラニン脱水素酵素遺伝子(pdh)およびその相補配列を組み込んだ大腸菌(Escherichia coli JM109 /pPDH-DBL; Gene, vol. 63. 337-341 (1988))よりアルカリSDS法にてプラスミドDNA(pPDH-DBL)を抽出した。Bacillus sphaericus R79a由来のpdh遺伝子配列およびアミノ酸配列を配列番号3と4にそれぞれ示した。得られたプラスミドDNA 0.1 mlに対し、5 mg/mlに調整したRNase溶液(SIGMA社製)を加えて処理した。前記処理反応液を定法に従いフェノール・クロロホルム処理した。前記処理反応液をポリエチレングリコール沈澱処理し、精製鋳型プラスミドDNA溶液(pPDH-DBL)を得た。[飽和変異によるスクリーニング] 前記28個のアミノ酸残基候補に対し、各々20種類のアミノ酸に飽和変異させるためにプライマーを作成(表1参照)し、Stratagene社製のQuikChange( Multi Site-Directed Mutagenesis Kitを用い同社プロトコールに従ってPCR法によって変異を導入した。本実施例においては、表8に示すプライマーの組み合わせを用い、B. sphaericus R79a由来フェニルアラニン脱水素酵素遺伝子を鋳型としてPCRを行った。得られたPCR反応液を定法に従ってE. coli JM109に形質転換し、50 (g/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布して37℃、10時間培養した。得られたコロニーを96穴ディーププレート(NUNC社製、80 (g/mlのアンピシリンを含むLB培地;300 (L)に植菌し1000 rpm、37℃で12〜18時間培養した。[1次スクリーニング〜ホルマザン比色法〜] 形質転換した大腸菌(E. coli JM109)のコロニーを、予め50 μg/mlのアンピシリンを含むLB培地300 μLを分注した96穴ディープウェルプレートに植菌し、37℃、毎分1,000 回転にて16時間以上振とう培養した。得られた培養液150 μLを96穴丸底マイクロプレートに分取し、遠心分離により集菌した。遠心上清をデカンテーションにより除去した。沈澱菌体に対し、10 μLのリゾチーム溶液(10 mg/mlとなるように10 mM EDTAを含む0.1 M リン酸緩衝液、pH 7.0に調製した溶液)を添加し、懸濁させて37℃で1時間保持した。前記処理したプレートを-80℃のディープフリーザーにて30分間凍結させた後、37℃のインキュベータ内にて1時間保持する凍結融解操作を2回繰り返した。 前記処理プレートの各ウェルに対し、予め冷却した5 mM 塩化マグネシウムを含む10 mM リン酸緩衝液、pH 7.0を100 μLずつ分注し、シェーカーで10分間撹拌し、無細胞抽出液の抽出を行った。遠心分離で得られた上澄みを無細胞抽出液として1次スクリーニングに用いた。 酵素活性の1次スクリーニングには、ホルマザン比色法を用いた。すなわち、前記で得られた無細胞抽出液10 μLを384穴プレートのウェルにそれぞれ分注し、反応液20 μL(0.1 M グリシン-KCl-KOH緩衝液、pH 10.4、2.5 mM NAD、0.1 mM 1-Methoxy-PMS(またはPMS)、0.1 mM INTおよび10 mM 基質(フェニルアラニン、ロイシンまたはメチオニン))を加えて37℃の暗所で反応させ、赤紫色の発色を目視することにより判定した。1次スクリーニングでは、メチオニンの基質に対する発色が良好な組換え体を選抜した。その結果、5菌株を取得することができた(表9参照(Bacillus sphaericus R79a由来酵素))。[2次スクリーニング〜NAD吸収〜] 前記1次スクリーニングで得られた組換え体を3 mLのLB試験管培地(50 μg/mlのアンピシリンを含む)で37℃12時間振とう培養し、超音波破砕により菌体を破砕した。遠心分離で得られた無細胞抽出液を用いてダブルビーム分光光度計によるレートアッセイを行った。反応液は1mlとし、NADの340 nmにおける吸光度の増加から酵素活性を算出した。L-フェニルアラニン、L-メチオニンおよびL-ロイシンのそれぞれの基質に対する酵素活性を測定し、L-フェニルアラニンに対する酵素活性を100としたときの相対活性をそれぞれL-メチオニンおよびL-ロイシンについて算出した(表9参照)。その結果、メチオニンに対する基質特異性が改善された菌株は、変異酵素名BS124S145M66C295N、BS124S145M66C295N310R、BS124S145M66C295N310G、BS124S145M66C295N310PおよびBS124S145L310Tの5菌株であった。前記5菌株の中で、L-メチオニンに対する基質特異性の改善が良く、比活性の高い菌株はBS124S145M66C295N310Pであった。[変異型フェニルアラニン脱水素酵素の調製] Bacillus sphaericus R79a由来フェニルアラニン脱水素酵素のL-メチオニンに対する反応を改変した変異型酵素遺伝子を含むプラスミドを導入した宿主大腸菌(Escherichia coli JM109)を50 μg/mlのアンピシリンを含むLB液体培地を用いて37℃で12時間培養した後、最終濃度0.5 mMとなるようにイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加して30℃でさらに12時間培養した。培養液を遠心分離(8,000 x g, 10分,4℃)して菌体を集め、生理的食塩水で洗浄した。洗浄菌体は使用するまで-30℃で保存した。 菌体重量に対して5倍容量の20 mMトリス塩酸緩衝液(pH 8.0、0.3 M NaCl、20 mM イミダゾールおよび5 mM 2-メルカプトエタノールを含む)に懸濁し、超音波破砕器(KUBOTA INSONATOR model 201M、久保田社製)にて20分間破砕した。遠心分離(28,400 x g, 20分, 4℃)により上澄み液(無細胞抽出液)を得た。予めニッケルを充填し、同上緩衝液にて平衡化したメタルキレートアフィニティー樹脂(Chelating-Sepharose FF:2 mL)に前記無細胞抽出液を添加した。50 mM イミダゾールを含む同上緩衝液にて樹脂を洗浄した後、500 mM イミダゾールを含む同上緩衝液にて活性画分を溶出した。得られた活性画分は、20 mM トリス塩酸緩衝液(pH 8.0、0.1 mM EDTAおよび5 mM 2-メルカプトエタノールを含む)にて透析し、酵素標品とした。[基質特異性] フェニルアラニン脱水素酵素の活性測定は、浅野らの方法(Eur. J. Biochem. (1987)168(1), 153-159)に従ってダブルビーム分光光度計(PharmaSpec UV-1700、島津社製)を用い、光路長1 cmのPMMA製キュベット(BRAND社製)で測定した。反応液の組成は以下のとおりとした。1 M Glycine-NaCl-NaOH buffer, pH 10.4を0.1 ml、25 mM NAD+(オリエンタル酵母社製)溶液を0.1 ml、0.1 M L-フェニルアラニン(日本理化学薬品社製)もしくはL-ロイシン(日本理化学薬品社製)あるいはL-メチオニン(日本理化学薬品社製)などの水溶液(酵素の性質によって基質特異性が異なるので、その都度適切な基質を選択する)を0.1 mlおよび適量の酵素溶液を加えて反応液総量を1.0 mlとした。補酵素NAD+の分子吸光係数(()は6,220 l・mol-1・cm-1とし、340 nmにおける吸光度の増加から単位時間(分)あたりの吸光度の変化率((340 nm / min)を求め、活性を算出した。本発明における酵素活性1単位(U)は、1分間に1 (molのNADHを生成する酵素量とした。比活性(U / mg)は、タンパク質1 mgあたりの酵素活性(U)として定義した。[5点変異型フェニルアラニン脱水素酵素の基質特異性] B. sphaericus由来PheDHの5箇所のアミノ酸残基を置換した変異型酵素のアミノ酸置換残基をMOEで構築した予測立体構造から抽出し、その配座(赤いBall&stickで表示されたアミノ酸残基)を図1に示す。予測したフェニルアラニン脱水素酵素の酵素タンパク質・基質・NAD+複合体立体構造から抽出したアミノ酸残基の飽和変異を行った結果、フェニルアラニンおよびロイシンに対する活性(10mM濃度測定時における)がメチオニンと比べて抑制された変異株をスクリーニングした。その結果、Gly-124、Asn-145、Val-310、Leu-295およびLeu-66の5残基にアミノ酸置換が認められた(BS124S145M66C295N310P)。Gly-124、Asn-145およびVal-310の3残基は基質フェニルアラニンのベンゼン環近傍に配座していた。Leu-295は基質から離れた位置に配座しており、予測される基質との相互作用は基質よりもむしろNAD+と関連していると考えられる。このとき、Leu-295の側鎖はサブユニット表面に露出した状態となっていた。一方、Leu-66残基に関しては、サブユニットのN末端ドメインの分子表面に位置し、基質およびNAD+との直接の相互作用は考えられ難い。 また、本酵素の芳香族アミノ酸ならびに脂肪族アミノ酸に対する基質特異性を表10に示す。本変異酵素は、L-ノルロイシンに対して最も良好な酸化的脱アミノ化反応を触媒した。続いてL-メチオニンに対して反応し、L-フェニルアラニンやL-ロイシンおよびL-バリンに対してはL-メチオニンを基準にしたときにそれぞれ50%以下に抑制されていた。血液試料中のアミノ酸を定量する場合、L-ノルロイシンやL-ノルバリンはほとんど含まれていないことから、酵素反応による蛍光定量に全く影響しない。すなわち、血液試料中の分岐鎖アミノ酸(L-ロイシン、L-イソロイシンおよびL-バリン)を適切に処理することができれば、ろ紙血液中のL-メチオニンに関して本酵素を用いた蛍光定量が可能となることが期待できる。 本酵素のL-メチオニンおよびNAD+に対するカイネティックパラメータについて調べた(表11)。本酵素のL-メチオニンに対するKm値は、0.33 ± 0.014 mMであり、このときのVmax値は1.73 ± 0.18 U/mgであった。本酵素の分子量は、SDS-PAGEにより45,000、推定アミノ酸配列より45,150と算出され、ゲルろ過法により分子量約400,000と算出されていることから、ホモ型の8量体構造を形成していると考えられる。従って、本酵素のkcatは1.4 ± 0.15 s-1となり、L-メチオニンに対するkcat/Kmは4.1 ± 0.38 s-1 mM-1となった。一方、NAD+に対するKm値は、L-メチオニン濃度を2 mMに固定したときに0.16 ± 0.012 mMであった。B. sphaericus由来野生型酵素のNAD+に対するKm値は、L-フェニルアラニンを基質として1 mM濃度固定条件下において0.24 mM、B. badius由来野生型酵素のKm値は0.15 mMである。本変異型酵素のNAD+に対するKm値は、B. sphaericus由来PheDHよりもむしろB. badius由来PheDHのNAD+に対するKm値と近い値を有していた。NAD+に対するKm値の向上はLeu-295のアミノ酸置換が影響したものと考えられる。実施例2[変異型酵素のアミノ酸蛍光定量] 96穴ブラックマイクロプレートウェル内に既知濃度のL-フェニルアラニンおよびL-メチオニンをそれぞれ0.04ml分注し、40μMレサズリンを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH 8.9)0.08mlを加えて撹拌し、0.04mlの酵素混合溶液(10mU 変異型フェニルアラニン脱水素酵素(BS124S145M66C295N310P)、4mM β-NAD+、0.03mg/mlジアホラーゼ(オリエンタル酵母社製)を含む)を加えて室温にて1時間インキュベーションした。得られた蛍光は蛍光・吸光・発光マイクロプレートリーダー(テカン社製、ジェニオス)を用いて励起波長545 nm、蛍光波長590 nmのフィルターにて測定した。得られたデータはLS-PATE manager2001(和光純薬工業社製)を用いて解析した。解析結果から検量線を作成し、図2に示す。さらにこの検量線から定量結果を得た(表12)。BS124S145M66C295N310Pを用いて作成した検量線から、コントロール中に含まれるL-メチオニン濃度を定量することができた。このとき、これまでの改変型酵素ではL-フェニルアラニン濃度の影響の為、L-メチオニンの定量は困難であったが、BS124S145M66C295N310P 酵素を用いることでL-フェニルアラニンの共雑濃度に関係なくL-メチオニンを定量することができた。5点変異型フェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸残基と推定配座。変異型酵素(BS124S145M66C295N310P)によるアミノ酸蛍光定量検量線。Bacillus sphaericus R79a由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列(配列表の配列番号4に記載)の66 番目のアミノ酸残基をシステイン(Cys)、124番目のアミノ酸残基をセリン(Ser)、145番目のアミノ酸残基をメチオニン(Met)、295番目のアミノ酸残基をアスパラギン(Asn)に置換し、且つ310番目のアミノ酸残基をプロリン(Pro)、アルギニン(Arg)またはグリシン(Gly)に置換した改変酵素。310番目のアミノ酸残基をプロリン(Pro)に置換した請求項1に記載の改変酵素。Bacillus sphaericus R79a由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列(配列表の配列番号4に記載)の66 番目のアミノ酸残基をシステイン(Cys)、124番目のアミノ酸残基をセリン(Ser)、145番目のアミノ酸残基をメチオニン(Met)、295番目のアミノ酸残基をアスパラギン(Asn)に置換した改変酵素。Bacillus sphaericus R79a由来のフェニルアラニン脱水素酵素のアミノ酸配列(配列表の配列番号4に記載)の124番目のアミノ酸残基をセリン(Ser)、145番目のアミノ酸残基をロイシン(Lue)に置換し、且つ310番目のアミノ酸残基をスレオニン(Thr)に置換した改変酵素。請求項1〜4のいずれか1項に記載の酵素のN末端側に1〜12個のヒスチジンから成るオリゴペプチド(ヒスチジン・タグ)を融合したタンパク質。請求項1〜4のいずれか1項に記載の酵素または請求項5に記載の融合タンパク質をコードする塩基配列を有するDNA。下記いずれかのDNA。(1)配列表の配列番号3に記載の塩基配列を有するDNAであって、196〜198番目のctgがtgtあるいはtgc、370〜372番目のggtがagt、agc、tct、tcc、tcaあるいはtcg、433〜435番目のaacがatg、883〜885番目のctaがaatあるいはaac、且つ928〜930番目のgttがcct、ccc、ccaあるいはccgであるDNA、(2)(1)のDNAに相補的な塩基配列を有するDNA。下記いずれかのDNA。(11)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列であって、124番目のアミノ酸がセリン(Ser)であり、310番目のアミノ酸がプロリン(Pro)であり、66番目のアミノ酸がシステイン(Cys)であり、145番目のアミノ酸がメチオニン(Met)であり、及び295番目のアミノ酸がアスパラギン(Asn)である、アミノ酸配列をコードするDNA、(12)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列であって、124番目のアミノ酸がセリン(Ser)であり、66番目のアミノ酸がシステイン(Cys)であり、145番目のアミノ酸がメチオニン(Met)であり、及び295番目のアミノ酸がアスパラギン(Asn)である、アミノ酸配列をコードするDNA、(13)(11)及び(12)のいずれかのDNAに相補的な塩基配列を有するDNA。請求項6〜8のいずれかに記載のDNAを含むベクター。請求項6〜8のいずれかに記載のDNAのいずれかの末端側に1〜12個のヒスチジンからなるオリゴペプチドをコードするDNAをさらに含む請求項13に記載のベクター。請求項9または10に記載のベクターで宿主を形質転換した形質転換体。請求項11に記載の形質転換体を培養し、培養物からフェニルアラニン脱水素酵素(EC 1.4.1.20)のメチオニンに対する基質特異性を改善するように、少なくとも3つのアミノ酸が修飾された改変酵素を採取する改変酵素の調製方法。採取される改変酵素が、請求項1〜4のいずれかに記載の酵素または請求項5に記載の融合タンパク質である請求項12に記載の調製方法。請求項1〜4のいずれか1項に記載の酵素または請求項5に記載の融合タンパク質を用いて、被検試料に含まれるL-メチオニンを分析する方法。L-ロイシン、L-イソロイシン、L-バリンおよびL-フェニルアラニンの少なくとも1つを併せて分析する請求項14に記載の方法。被検試料をレサズリン、ジアホラーゼおよびニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)と混合し、発色を検出することを含む、請求項14または15に記載の方法。被検試料とレサズリン、ジアホラーゼおよびニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)との混合をマイクロプレートのウェル中で行う請求項16に記載の方法。被検試料が血液試料である請求項14〜17のいずれか1項に記載の方法。配列表