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タイトル:特許公報(B2)_新規なアセトアセチルCoA合成酵素、それをコードするDNA配列、当該酵素の製造方法および当該酵素を利用したメバロン酸の製造方法
出願番号:2006239457
年次:2012
IPC分類:C12N 15/09,C12N 9/00,C12P 7/42,C12N 1/21


特許情報キャッシュ

葛山 智久 JP 4986547 特許公報(B2) 20120511 2006239457 20060904 新規なアセトアセチルCoA合成酵素、それをコードするDNA配列、当該酵素の製造方法および当該酵素を利用したメバロン酸の製造方法 株式会社ADEKA 000000387 羽鳥 修 100076532 葛山 智久 20120725 C12N 15/09 20060101AFI20120705BHJP C12N 9/00 20060101ALI20120705BHJP C12P 7/42 20060101ALI20120705BHJP C12N 1/21 20060101ALI20120705BHJP JPC12N15/00 AC12N9/00C12P7/42C12N1/21 C12N 15/00−15/90 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) UniProt/GeneSeq PubMed Science Direct Biosynthesis of Fatty Acids,1963年,Vol.2, No.1,p.191-194 Streptomyces sp. CL190株由来の新規Acetoacetyl CoA Thiolaseの機能解析,日本農芸化学会2006年度(平成18年度)大会,2006年 3月27日,3C35p02 放線菌におけるメバロン酸経路の新規初発酵素,2006年度日本放線菌学会大会,2006年 7月13日,P-25 Studies on the malonyl CoA-CO2 exchange reaction.,Fed. Proc.,1961年,Vol.20, No.1, Pt.1,p.273 13 2008061506 20080321 22 20090727 特許法第30条第1項適用 平成18年3月27日京都女子大学において開催された社団法人日本農芸化学会主催の「日本農芸化学会2006年度(平成18年度)大会」において文書をもって発表 特許法第30条第1項適用 平成18年7月13日千葉県木更津かずさアカデミアホールで開催された日本放線菌学会主催の「2006年度日本放線菌学会大会」において文書をもって発表 吉森 晃 本発明は、新規なアセトアセチルCoA合成酵素、それをコードするDNA配列、当該酵素の製造方法および当該酵素を利用したメバロン酸の製造方法に関する。 アセトアセチルCoA(アセトアセチル・コエンザイムA)は、生理活性物質群であるテルペノイドの重要な生合成中間体である。また、生理的なエネルギー源であるケトン体(アセト酢酸、D-3-ヒドロキシ酪酸等)の中間体でもある。 テルペノイドの生合成は、メバロン酸を経由するメバロン酸経路と、メバロン酸を経由しないMEP経路(2-C-methyl-D-erythritol 4-phosphate経路)の全く異なる二つの生合成経路が知られているが、アセトアセチルCoAを経由するのは、メバロン酸経路だけである。 メバロン酸経路では、生理的にはエネルギー代謝、脂肪酸合成、テルペノイド合成の3大代謝経路で重要な役割を演じるアセチルCoAを出発物質として、〔図1〕に記載のスキーム1の反応によりイソペンテニル二リン酸(IPP)が生成することが知られている。 これらの反応はそれぞれ、アセトアセチルCoA合成酵素、HMG CoA合成酵素、HMG CoA還元酵素、メバロン酸キナーゼ、ホスホメバロン酸キナーゼ、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼが触媒する。なお、個々の酵素反応は(→)で示しているが脱炭酸反応以外は基本的に可逆反応であり、順次反応が進んで基質が消費されていくため反応が進行する。 即ち、これまで知られているアセトアセチルCoA合成酵素(以下タイプ1)は、本発明者らによるアセトアセチルCoA合成酵素(たとえば特許文献1参照)を含めてアセチルCoA二分子からアセトアセチルCoAを生成する反応を触媒する酵素であるが、当該発明の酵素、即ちアセチルCoAとマロニルCoAを基質としてアセトアセチルCoAを生成する反応を触媒する酵素(以下タイプ2)は全く知られていなかった。 一方、大腸菌等の細菌中の脂肪酸合成では、当該発明と類似の〔図2〕に記載のスキーム2の反応経路で進行することが知られている。このスキーム2のうち、反応3を触媒する酵素が脂肪酸合成酵素(KAS III)である。 しかしこの反応経路ではアセチルCoA、マロニルCoAは、一旦アセチル-ACP、マロニル-ACPとなり、ACP上で反応が進行するため、遊離型のアセトアセチルCoAは中間体として存在しせず、当該発明のアセトアセチルCoA合成酵素(タイプ2)とは全く異なる。また、ヒト等の真核生物では上記ACPが関与する部分が多機能酵素複合体となっていることが知られている。 テルペノイドは、炭素数5のイソプレン単位を基本骨格に持つ一群の有機化合物の総称であり、イソペンテニルピロリン酸(IPP)の重合によって生合成される。(C5H8)nの不飽和炭化水素以外に、それらの酸化還元生成物(アルコール、ケトン、酸等)、炭素の脱離した化合物などが多くの植物及び動物体内に見いだされている。テルペノイドは、炭素数によりヘミテルペン(C5)、モノテルペン(C10)、セスキテルペン(C15)、ジテルペン(C20)、セスタテルペン(C25)、トリテルペン(C30)、テトラテルペン(C40、カロチノイド)及びその他のポリテルペンに分類することができる。 また、テルペノイドの中には、アブシジン酸、幼若ホルモン、ジベレリン、フォルスコリン、ホルボールなど生理活性を示す化合物も多い。また、構造の一部にイソプレン構造を有する複合テルペンとしてクロロフィル、ビタミンK、ユビキノン、tRNA等があり、これらも有用な生理活性を示す。 例えば、テルペノイド化合物の一種であるユビキノンは、電子伝達系の必須成分として、生体内で重要な機能を果たしており、心疾患に効果のある医薬品として使用されているほか、欧米および日本で健康食品としての需要が増大している。また、ビタミンKは血液凝固系に関与する重要なビタミンであり、止血剤として利用されているほか、最近では骨代謝への関与が示唆され、骨粗鬆症治療への応用が期待されており、フィロキノンとメナキノンは医薬品として許可されている。 また、ユビキノンやビタミンK類には船体や橋脚等の建造物への貝類の付着阻害作用が在り、貝類付着防止塗料への応用が期待される。さらに、カロチノイドには抗酸化作用があり、β−カロチン、アスタキサンチン、クリプトキサンチン等、がん予防や免疫賦活活性を有するものとして期待されているものもある。このように、テルペノイドには生体にとって有用な物質が含まれているが、これらの化合物は全て基本骨格単位であるイソペンテニルピロリン酸(IPP)を経由して生合成されることが知られている。 大腸菌などの原核生物では、従来技術で述べたようにMEP経路、即ち、ピルビン酸とグリセルアルデヒド-3-リン酸が縮合して生じる1-デオキシ-D-キシルロース 5-リン酸を経由してIPPが生合成される経路が発見されており(非特許文献1参照)、13Cラベル化基質を使った実験から1-デオキシ-D-エリスリトール 4-リン酸を経由してIPPへと転換されることが証明されている。(非特許文献2、3参照)。特に大腸菌ではIPPは非メバロン酸経路でのみ合成されることが実証されている(非特許文献4参照)。 一方、放線菌Streptomyces sp. CL190株(非特許文献5参照)は、MEP経路に加えてメバロン酸経由でIPPを合成していることが分っており(非特許文献6,7参照)、本発明者等はこれまでに放線菌Streptomyces sp. CL190株からメバロン酸経路上の一つの反応を触媒する酵素であるHMG CoA還元酵素をコードする遺伝子 (hmgr) (非特許文献8参照)、およびメバロン酸経路に関与する6種の酵素、即ち、ホスホメバロン酸キナーゼ、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ、メバロン酸キナーゼ、イソペンテニル 2-リン酸イソメラーゼ、HMG CoA還元酵素、HMG CoA合成酵素、を含むメバロン酸経路遺伝子クラスターを既にクローニングした(特許文献2、及び、非特許文献9、10参照)。 本発明者等は先に述べた放線菌Streptomyces sp. CL190株のメバロン酸経路遺伝子クラスターのすぐ下流に、機能未知のORF (オープン・リーディング・フレーム) が存在することを見いだし、このORFがアセトアセチルCoA合成酵素活性を持つのではないかと検討を重ねた。その結果、驚くべきことに、当該酵素は二分子のアセチルCoAを基質とする既知のアセトアセチルCoA合成酵素活性(タイプ1)は全く示さないが、アセチルCoAとマロニルCoAの両方を基質とする場合にアセトアセチルCoAを生成する(タイプ2)ことを見いだし本発明に至った。特開2004-236618号公報特開2001-161370号公報Biochem. J, 295, 517(1993)Tetrahedron Lett. 38, 4769(1997)Tetrahedron Lett. 39, 4509,(1998)Rohmer, M. In Comprehensive Natural Products Chemistry, Vol. 2: Isoprenoids Including Carotenoids and Steroids; Barton, D. Nakanishi, K. Eds. Elsevier: Amsterdam, 1999; pp. 45-67J. Antibiot. 43: 444(1990)Tetrahedron Lett. 31: 6025(1990)Tetrahedron Lett. 37: 7979(1996)J. Bacteriol. 181: 1256(1999)J. Bacteriol. 182: 4153(2000)Proc. Natl. Acad. Sci.. USA, 98: 932(2001) 従って本発明の目的は、新規なアセトアセチルCoA合成酵素(タイプ2)を提供し、さらに当該酵素を利用したメバロン酸の製造方法を提供することにある。 本発明者等は、これまで機能未知のタンパク質をコードするDNA配列(オープン・リーディング・フレーム=ORF)が全く新しいタイプの反応(新規機能)を触媒する酵素遺伝子であることを見いだし本発明に至った。 即ち、本願の第1の発明は、新規アセトアセチルCoA合成酵素である。また、本願の第2の発明は、該新規アセトアセチルCoA合成酵素活性を有するアミノ酸配列である。さらに、本願の第3の発明は、該酵素を機能させるのに必要な配列をすべてコートする塩基配列である。そして、本願の第4の発明は、該塩基配列を含むベクターである。また、本願の第5の発明は、該ベクターを含有する形質転換体である。さらに、本願の第6の発明は該形質転換体を培養することを特徴とする新規アセトアセチルCoA合成酵素の製造方法である。最後に、本願の第7の発明は、該新規アセトアセチルCoA合成酵素を利用したメバロン酸の製造方法である。 本発明によれば、新規なアセトアセチルCoA合成酵素を提供することが出来る。さらに、本発明のアセトアセチルCoA合成酵素を利用して天然型のメバロン酸を提供することが出来る。 以下、本発明の新規なアセトアセチルCoA合成酵素、それをコードするDNA配列、当該酵素の製造方法および当該酵素を利用したメバロン酸の製造方法を具体的に示す。 本明細書において「1から数個の塩基が欠失、置換、付加及び/または挿入されている」とは、例えば1〜20個、好ましくは1〜15個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個の任意の数の塩基が欠失、置換、付加及び/または挿入されていることを意味する。本明細書においては、「1から数個のアミノ酸が欠失、置換、付加及び/または挿入されている]とは、例えば1〜20個、好ましくは1〜15個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個の任意の下図のアミノ酸が欠失、置換、付加及び/または挿入されていることを意味する。 本明細書において「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる」とは、DNAをプローブとして使用し、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAを意味し、具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAまたは該DNAの断片を固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍程度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるDNAをあげることができる。 ハイブリダイゼーションは、モレキュラー・クローニング 第二版等に記載されている方法に準じて行うことができる。ストリンジェントな条件でハイブリダイズすることができるDNAとしては、プローブとして使用するDNAの塩基配列と一定以上の相同性を有するDNAが挙げられ、相同性は、例えば60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、もっとも好ましくは98%以上である。 本発明は、A) 放線菌Streptomyces sp. CL190株のメバロン酸経路の遺伝子クラスターのすぐ下流にあるアセトアセチルCoA合成酵素(タイプ2)をコードするDNAの取得、B) アセトアセチルCoA合成酵素(タイプ2)タンパク質をコードするDNAを有する形質転換体の作製と、C) 該酵素蛋白質をコードするDNAを有する形質転換体での該酵素蛋白質の発現、D) 該酵素蛋白質の機能の確認、即ちアセトアセチルCoA合成酵素(タイプ2)の基質および反応生成物の同定、E) 該酵素蛋白質をコードするDNA、HMG CoA 合成酵素蛋白質をコードするDNA、HMG CoA 還元酵素蛋白質をコードするDNAの三種をクローニングした放線菌の形質転換体によるメバロン酸生産、よりなる。 まず、上記A) 放線菌Streptomyces sp. CL190株のメバロン酸経路の遺伝子クラスターのすぐ下流にある本発明のアセトアセチルCoA合成酵素(タイプ2)をコードするDNAの取得について詳述する。 放線菌Streptomyces sp. CL190株を適当な培地、例えばグルコース2%、可溶性でんぷん2.5%、大豆粉1.5%、ドライイースト0.2%、炭酸カルシウム0.4%、pH 6.2より成るKG培地で適当な温度(例えば30℃)で数日間培養する。培養後、得られた培養液より遠心分離により菌体を取得し、菌体より常法(モレキュラー・クローニング 第二版)に従い染色体DNAを単離精製する。 PCR法により配列番号2の塩基配列を有するDNAを取得するためには、放線菌Streptomyces sp. CL190株の染色体DNAを鋳型として使用し、配列番号3と配列番号4からなる1対のプライマーDNAを使用して、TaKaRa LA-PCRTM Kit Ver.2(宝酒造社製)またはExpandTM High-Fidelity PCR System(ベーリンガー・マンハイム社製)等を用い、DNAThermal Cycler(パーキンエルマージャパン社製)でPCRを行う。なお、後のクローニング操作を容易にするために、プライマーには適当な制限酵素部位を付加させておくことが好ましい。 PCRの条件として、95℃で30秒間(変性)、55℃で30秒〜1分間(アニーリング)、72℃で1分間〜2分間(伸長)からなる反応工程を1サイクルとして、例えば、30サイクル行った後、72℃で10分間反応させる条件をあげることができる。次いで、増幅されたDNA断片を、大腸菌で増幅可能な適切なベクター中にクローニングすることができる。クローニングは、常法、例えば、モレキュラー・クローニング 第二版、Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley & Sons (1987-1997)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)、DNA Cloning 1: Core Techniques, A PracticalApproach, Second Edition, Oxford University Press (1995)等に記載された方法、あるいは市販のキット、例えばSuperScript Plasmid System for cDNASynthesis and Plasmid Cloning(ライフ・テクノロジーズ社製)やZAP-cDNA Synthesis Kit〔ストラタジーン(Staratagene)社製〕を用いて行うことが出来る。 クローニングベクターとしては、大腸菌K12株中で自律複製できるものであれば、ファージベクター、プラスミドベクター等いずれでも使用できる、大腸菌の発現用ベクターをクローニングベクターとして用いてもよい。具体的には、ZAP Express〔ストラタジーン社製、Strategies, 5, 58 (1992)〕、pBluescript II SK(+)〔Nucleic Acids Research,17, 9494 (1989)〕、Lambda ZAP II(ストラタジーン社製)、λgt10、λgt11〔DNA Cloning, A Practical Approach, 1, 49 (1985)〕、λTriplEx(クローンテック社製)、λExCell(ファルマシア社製)、pT7T318U(ファルマシア社製)、pcD2〔H.Okayama and P.Berg;Mol. Cell. Biol., 3, 280 (1983)〕、pMW218(和光純薬社製)、pUC118(宝酒造社製)、pEG400〔J. Bac.,172, 2392 (1990)〕、pQE-30(QIAGEN社製)等をあげることができる。 得られた形質転換株より、目的とするDNAを含有したプラスミドを常法、例えば、モレキュラー・クローニング 第二版、Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley & Sons (1987-1997)、DNA Cloning 1: Core Techniques, A Practical Approach, Second Edition, Oxford University Press (1995)等に記載された方法により取得することができる。上記方法により、配列番号2を有するDNAを取得することができる。 また、配列番号2において、1から数個の塩基が欠失、置換、付加及び/または挿入されている塩基配列であって、アセトアセチルCoA合成酵素(タイプ2)をコードする塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列であって、アセトアセチル合成酵素活性(タイプ2)を有する酵素蛋白質をコードする塩基配列も本発明の範囲内である。 例えば、配列番号2の塩基配列を有する放線菌由来のDNA断片の塩基配列を利用し、他の微生物等より、該DNAのホモログを適当な条件下でスクリーニングすることにより単離することができる。あるいは、上記したように変異DNAは化学合成、遺伝子工学的手法、突然変異誘発などの当業者が既知の任意の方法で作製することもできる。具体的には配列番号2の塩基配列を有するDNAを利用し、これらDNAに変異を導入することにより変異DNAを取得することができる。 例えば、配列番号2の塩基配列を有するDNAに対し、変異源となる薬剤と接触作用させる方法、紫外線を照射する方法、遺伝子工学的手法を用いて行う方法がある。遺伝子工学的手法の一つである部位特異的変異誘発方法は特定の位置に特定の変異を導入できる手法であることから有用であり、モレキュラー・クローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、Nucleic Acids Research,10,6487(1982) 、Nucleic Acids Research,12,9441(1984) 、Nucleic Acids Research,13,4431(1985) 、Nucleic Acids Research,13,8749(1985) 、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,79,6409(1982) 、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,82,488(1985) 、Gene,102,67(1991)等に記載の方法に準じて行うことができる。 以上により得られた、本発明のアセトアセチルCoA合成酵素(タイプ2)遺伝子の塩基配列はアセトアセチルCoA合成酵素(タイプ1)の塩基配列(特開平2004-236618)と全く相同性が無い。また、本発明のアセトアセチルCoA合成酵素(タイプ2)遺伝子の塩基配列がコードするアミノ酸配列はアセトアセチルCoA合成酵素(タイプ1)の塩基配列(特開平2004-236618)がコードするアミノ酸配列と全く相同性が無い。 次に、上記B)本発明のアセトアセチルCoA合成酵素(タイプ2)タンパク質をコードするDNAを有する形質転換体の作製について詳述する。 以下では、放線菌を例に示しながら説明するが、本発明は該菌株由来の酵素遺伝子以外でも、放線菌や微生物、動物細胞、植物細胞由来等メバロン酸経路を持つ生物由来の酵素遺伝子を形質転換してよい。 本発明のアセトアセチルCoA合成酵素(タイプ2)遺伝子は、実質的にアセトアセチルCoA合成酵素(タイプ2)、即ち、1)配列番号2の塩基配列、あるいは、2)配列番号2において1〜数個の塩基配列が欠失、置換、付加及び/または挿入されている塩基配列であって、本発明のアセトアセチルCoA合成酵素を機能させるために必要な配列をすべてコードする塩基配列、あるいは、3)配列番号2の塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズすることができる塩基配列であって、本発明のアセトアセチルCoA合成酵素(タイプ2)を機能させるのに必要な配列をすべてコードする塩基配列である。 本発明のアセトアセチルCoA合成酵素(タイプ2)遺伝子は、いかなる生物由来であっても構わないが、宿主細胞中で酵素遺伝子から産生される酵素蛋白質の発現効率が高いことが好ましい。また発現した酵素蛋白質が高い触媒機能を発現できる細胞との組合せが好ましい。この点から、細胞としてメバロン酸経路を持たない宿主細胞を用いる場合はこの宿主細胞のメバロン酸経路クラスター近傍にある酵素遺伝子が好ましく、さらに宿主細胞は、放線菌が好ましい。宿主細胞として放線菌を用いる場合は、放線菌由来のアセトアセチルCoA合成酵素(タイプ2)遺伝子が好ましい。アセトアセチルCoA合成酵素(タイプ2)遺伝子の好ましい1例として配列番号2が挙げられる。 得られた酵素遺伝子を含むDNA断片を宿主細胞中で発現させるためにはまず目的とする該DNA断片を制限酵素あるいはDNA分解酵素で該遺伝子を含む適当な長さのDNA断片とした後、発現ベクター中においてプロモーターの下流に挿入し、次いで上記DNAを挿入した発現ベクターを、発現ベクターに適合した宿主細胞中に導入する。 本発明で使用する宿主細胞としては、非メバロン酸経路を利用している(メバロン酸経路を有しない)宿主細胞として、グラム陽性菌であるAlicyclobacillus属、Corynebacterium属、Brevibacterium属、Mycobacterium属、Bacillus属、Clostridium属、Deinococcus属、多くのStreptomyces属、グラム陰性菌であるEscherichia属、Salmonella属、Agrobacterium属、Azotobacter属、Methylobacterium属、Pseudomonas属、Rhodopseudomonas属、Zymomonas属、光合成グラム陰性細菌であるChromatium属、Rhodospirillum属、藍藻であるAnabaena属、Anacystis属、Phormidium属、Synnecoccus属、緑藻であるChlorella属、Scenedesmun属、等に属する生物をあげることが出来る。 ちなみに、メバロン酸経路を利用している(メバロン酸経路を有している)宿主細胞では、動物細胞、真菌、酵母、グラム陽性菌であるActinoplanes属、 Lactobacillus属、 Mycoplasma属、Staphylococcu属、Enterococcus属、Streptococcus属、一部のStreptomyces属、グラム陰性菌であるChloropseudomonas属、Flavobacterium属、Myxococcus属、Nannocystis属、Borrelia属、古細菌であるArchaeoglobus属、Methanobacterium属、Methanococcus属、Pyrococcus属、 Cardarella属、 Halobacterium属、 Sulfolobus属、などが知られている。 また、一部のStreptomyces属はメバロン酸経路と非メバロン酸の両方を利用していることが知られている。 本発明で使用する宿主細胞は、メバロン酸経路を有しない微生物であり、特に好ましくはメバロン酸経路を有しない放線菌、例えばStreptomyces lividans、Streptomyces chromofuscus、Streptomyces exfoliatus、Streptomyces argenteorus、等が好ましい。 発現ベクターとしては、上記宿主細胞において自立複製可能ないしは染色体中への組込みが可能で、上記目的とするDNAを転写できる位置にプロモーターを含有しているものが用いられる。細菌等を宿主細胞として用いる場合は、上記DNAを発現させるための発現ベクターは該微生物中で自立複製可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、上記DNAおよび転写終結配列より構成された組換えベクターであることが好ましい。プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。 発現ベクターとしては、例えば、pBTrp2、pBTac1、pBTac2(いずれもベーリンガーマンハイム社より市販)、pKK233-2(Pharmacia社製)、pSE280(Invitrogen社製)、pGEMEX-1(Promega社製)、pQE-8(QIAGEN社製)、pQE-30(QIAGEN社製)、pKYP10(特開昭58-110600)、pKYP200〔Agricultural Biological Chemistry, 48, 669 (1984)〕、pLSA1〔Agric. Biol. Chem., 53, 277 (1989)〕、pGEL1〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 4306 (1985)〕、pBluescriptII SK+、pBluescriptII SK(-)(Stratagene社製)、pTrS30(FERMBP-5407)、pTrS32(FERM BP-5408)、pGEX(Pharmacia社製)、pET-3(Novagen社製)、pTerm2(US4686191、US4939094、US5160735)、pSupex、pUB110、pTP5、pC194、pUC18〔gene, 33, 103 (1985)〕、pUC19〔Gene, 33, 103 (1985)〕、pSTV28(宝酒造社製)、pSTV29(宝酒造社製)、pUC118(宝酒造社製)、pPA1(特開昭63-233798号公報)、pEG400〔J. Bacteriol., 172, 2392(1990)〕等を例示することができる。 プロモーターとしては、宿主細胞中で発現できるものであればいかなるものでもよい。例えば、trpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター(Plac)、PLプロモーター、PRプロモーター、PSEプロモーター等の、大腸菌やファージ等に由来するプロモーター、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーター等をあげることができる。またPtrpを2つ直列させたプロモーター(Ptrpx2)、tacプロモーター、letIプロモーター、lacT7プロモーターのように人為的に設計改変されたプロモーター等も用いることができる。 リボソーム結合配列としては、宿主細胞中で発現できるものであればいかなるものでもよいが、シャイン−ダルガノ(Shine-Dalgarno)配列と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6〜18塩基)に調節したプラスミッドを用いることが好ましい。 組換えベクターの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69, 2110 (1972)〕、プロトプラスト法(特開昭63-2483942号公報)、またはGene, 17, 107 (1982)やMolecular & General Genetics, 168, 111 (1979)に記載の方法等をあげることができる。 3番目に、上記C)該酵素蛋白質をコードするDNAを有する形質転換体での該酵素蛋白質の発現について詳述する。 上記DNAを組み込んだ組換え体DNAを保有する形質転換体を培地に培養し、培養物中に本発明のアセトアセチルCoA合成酵素(タイプ2)タンパク質を生成させることができる。 発明の形質転換体が大腸菌、放線菌等の原核生物、酵母菌等の真核生物である場合、これら微生物を培養する培地は、該微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれでもよい。 本発明の形質転換体は、酵素タンパク質を効率的に発現できる能力を有する宿主細胞であればどのような細胞でも構わないが、大腸菌、パン酵母、放線菌(Streptomyces属)が好ましく、大腸菌がもっとも好ましい。また、得られた酵素タンパク質の精製・活性発現供に容易であるため得られた酵素タンパク質は水溶性であることが好ましいが、水不溶性であっても何らかの方法、例えば界面活性剤添加等、で可溶化しても良い。 本発明の形質転換体により調製した酵素タンパク質は他のタンパク質との融合タンパク質であっても良いが、融合部分がない構造が好ましい。 炭素源としては、それぞれの微生物が資化し得るものであればよく、グルコース、フラクトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノールなどのアルコール類が用いられる。 窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、等の各種無機酸や有機酸のアンモニウム塩、その他含窒素化合物、並びに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体およびその消化物等が用いられる。 無機物としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等が用いられる。 培養は、振盪培養または深部通気攪拌培養などの好気的条件下で行う。培養温度は15〜40℃がよく、培養時間は、通常16時間〜7日間である。培養中pHは、3.0〜9.0に保持する。pHの調整は、無機あるいは有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニアなどを用いて行う。 また培養中必要に応じて、アンピシリンやテトラサイクリン、チオストレプトン等の抗生物質を培地に添加してもよい。 プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸(IAA)等を培地に添加してもよい。 以上により得られた酵素タンパク質は菌体内生産の場合は宿主細胞を破壊し塩析、透析、アフィニティクロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィー、分子篩クロマトグラフィー、有機溶剤処理、加熱処理等公知のタンパク質精製方法の組み合わせにより、必要な精製度まで精製する。また、反応や反応産物に支障がなければ菌体そのものや菌体を破壊した溶液、破壊溶液の可溶性画分でも良い。 次に、上記D)該酵素蛋白質の機能の確認、即ち本発明のアセトアセチルCoA合成酵素の基質および反応生成物の同定について詳述する。(1) アセトアセチルCoA合成酵素の酵素活性の測定 アセトアセチルCoA合成酵素の酵素活性の測定は、通常の酵素の活性測定法に準じて行うことができる。 即ち、活性測定の反応液に用いる緩衝液のpHは、目的とする酵素の活性を阻害しないpH範囲であればよく、最適pHを含む範囲のpHが好ましい。 例えば、アセトアセチルCoA合成酵素においては、pH5〜10、好ましくは6〜9である。 緩衝液としては、酵素活性を阻害せず、上記pHを達成できるものであればいずれの緩衝液も用いることができる。該緩衝液として、トリス塩酸緩衝液やリン酸緩衝液、硼酸緩衝液、HEPES緩衝液、MOPS緩衝液、炭酸水素緩衝液などを用いることができる。アセトアセチルCoA合成酵素においては、例えば、トリス塩酸緩衝液が好適に用いられる。 緩衝液の濃度は酵素活性に阻害を及ぼさない限りどのような濃度でも用いることができるが、好適には1mMから1Mである。 反応液には、目的とする酵素の基質を添加する。例えば、アセトアセチルCoA合成酵素(タイプ2)においては、アセチルCoAとマロニルCoAを添加する。 基質の濃度は反応に支障のない限りどのような濃度でも用いることができるが、好適には反応液中の濃度は0.01mM〜0.2Mである。 反応に用いる酵素濃度に特に制限はないが、通常0.001mg/mlから100mg/mlの濃度範囲で反応を行う。 用いる酵素は必ずしも単一にまで精製されている必要はなく、反応を妨害しない限り、他の侠雑蛋白質が混入した標品であってもよい。 反応温度は、目的とする酵素の活性を阻害しない温度範囲であればよく、最適温度を含む範囲の温度が好ましい。即ち、反応温度は、10℃から60℃、より好ましくは30℃から40℃である。 活性の検出は、反応に伴う基質の減少、あるいは反応生成物の増加の変化を測定できる方法を用いて行うことができる。 該方法として、例えば、必要に応じて薄相クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー法(HPLC)等により目的物質を分離定量する方法をあげることができる。また反応の進行に伴ってMg2+イオンをキレートして複合体を形成する場合には、反応液の303nmの吸光度を測定することで活性を直接測定することができる。例えば、アセトアセチルCoA合成酵素においては、生成するアセトアセチルCoAとMg2+イオンからなる複合体のもつ303 nmの吸光の増加を分光光度計で測定することにより、反応の進行に伴い増加するアセトアセチルCoAを定量し活性を検出することができる。なお、この方法は、アセトアセチルCoAの定量だけではなく、3−オキソペンタノイルCoAのような1,3-ジケトン構造を有する化合物の定量にも利用できる。 反応産物の同定には、薄相クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー法(HPLC)等により目的物質を分離した後、標品と保持時間を比較する方法、核磁気共鳴吸収装置や質量分析計を用いる方法を用いることができる。 最後に、上記E) 本発明のアセトアセチルCoA合成酵素、HMG CoA合成酵素及びHMG CoA還元酵素の3種類の酵素タンパク質を生成させ、本発明のアセトアセチルCoA合成酵素(タイプ2)タンパク質、HMG CoA合成酵素タンパク質およびHMG CoA還元酵素タンパク質の機能によりメバロン酸を蓄積させることを特徴とする新規なメバロン酸の製造方法について詳述する。 本発明では、メバロン酸の生合成に関与する酵素蛋白質をコードするDNAとして、本発明のタイプ2のアセトアセチルCoA合成酵素遺伝子、HMG CoA合成酵素遺伝子およびHMG CoA還元酵素遺伝子の3種類の遺伝子を形質転換することが必須である。 以下では、放線菌を例に示しながら説明するが、本発明は該菌株由来の酵素遺伝子以外でも、放線菌や微生物、動物細胞、植物細胞由来等メバロン酸経路を持つ生物由来の酵素遺伝子を形質転換してよい。 本発明で使用するHMG CoA合成酵素遺伝子は、実質的にHMG CoA合成酵素、すなわちアセトアセチルCoAとアセチルCoAからHMG CoAを生成する反応を触媒する活性をもつ酵素蛋白質をコードするDNA配列であればよい。また、酵素反応にNADPH等の補助因子を必要としてもしなくても構わない。 また、本発明で使用するHMG CoA還元酵素遺伝子は、実質的にHMG CoA還元酵素、すなわちHMG CoAからメバロン酸を生成する反応を触媒する活性をもつ酵素蛋白質をコードするDNA配列であればよい。また、酵素反応にNADPH等の補助因子を必要としてもしなくても構わない。 本発明のアセトアセチルCoA合成酵素遺伝子、HMG CoA合成酵素遺伝子およびHMG CoA還元酵素遺伝子は、いかなる生物由来であっても構わないが、宿主である放線菌細胞中で酵素遺伝子から産生される酵素蛋白質の発現効率が高いことが好ましい。また発現した酵素蛋白質が高い触媒機能を発現できる細胞との組合せが好ましい。この点から、細胞としてメバロン酸経路を持たない微生物を用いる場合は微生物のメバロン酸経路由来の酵素遺伝子が好ましく、さらに放線菌由来が好ましい。特に放線菌由来の本発明のアセトアセチルCoA合成酵素遺伝子及び、放線菌由来のメバロン酸経路から得たHMG CoA合成酵素遺伝子およびHMG CoA還元酵素遺伝子との3種類の組合せが好ましい。 得られた3種類の酵素遺伝子を含むDNA断片を放線菌細胞中で発現させるためにはまず目的とする該DNA断片を制限酵素あるいはDNA分解酵素で該遺伝子を含む適当な長さのDNA断片とした後、発現ベクター中においてプロモーターの下流に挿入し、次いで上記DNAを挿入した発現ベクターを、発現ベクターに適合した放線菌細胞中に導入する。 本発明で使用する宿主細胞は、メバロン酸経路を有しない放線菌、例えばStreptomyces lividans、Streptomyces chromofuscus、Streptomyces exfoliatus、Streptomyces argenteorus、等が好ましい。 発現ベクターとしては、上記宿主である放線菌細胞において自立複製可能ないしは染色体中への組込みが可能で、上記目的とするDNAを転写できる位置にプロモーターを含有しているものが用いられる。上記DNAを発現させるための発現ベクターは該微生物中で自立複製可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、上記DNAおよび転写終結配列より構成された組換えベクターであることが好ましい。プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。 発現ベクターとしては、例えば、pBTrp2、pBTac1、pBTac2(いずれもベーリンガーマンハイム社より市販)、pKK233-2(Pharmacia社製)、pSE280(Invitrogen社製)、pGEMEX-1(Promega社製)、pQE-8(QIAGEN社製)、pQE-30(QIAGEN社製)、pKYP10(特開昭58-110600)、pKYP200〔Agricultural Biological Chemistry, 48, 669 (1984)〕、pLSA1〔Agric. Biol. Chem., 53, 277 (1989)〕、pGEL1〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 4306 (1985)〕、pBluescriptII SK+、pBluescriptII SK(-)(Stratagene社製)、pTrS30(FERMBP-5407)、pTrS32(FERM BP-5408)、pGEX(Pharmacia社製)、pET-3(Novagen社製)、pTerm2(US4686191、US4939094、US5160735)、pSupex、pUB110、pTP5、pC194、pUC18〔gene, 33, 103 (1985)〕、pUC19〔Gene, 33, 103 (1985)〕、pSTV28(宝酒造社製)、pSTV29(宝酒造社製)、pUC118(宝酒造社製)、pPA1(特開昭63-233798号公報)、pEG400〔J. Bacteriol., 172, 2392(1990)〕等を例示することができる。 プロモーターとしては、宿主である放線菌細胞中で発現できるものであればいかなるものでもよい。例えば、trpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター(Plac)、PLプロモーター、PRプロモーター、PSEプロモーター等の、大腸菌やファージ等に由来するプロモーター、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーター等をあげることができる。またPtrpを2つ直列させたプロモーター(Ptrpx2)、tacプロモーター、letIプロモーター、lacT7プロモーターのように人為的に設計改変されたプロモーター等も用いることができる。 リボソーム結合配列としては、宿主である放線菌細胞中で発現できるものであればいかなるものでもよいが、シャイン−ダルガノ(Shine-Dalgarno)配列と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6〜18塩基)に調節したプラスミドを用いることが好ましい。 組換えベクターの導入方法としては、上記宿主である放線菌細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69, 2110 (1972)〕、プロトプラスト法(特開昭63-2483942号公報)、またはGene, 17, 107 (1982)やMolecular & General Genetics, 168, 111 (1979)に記載の方法等をあげることができる。 上記DNAを組み込んだ組換え体DNAを保有する形質転換体を培地に培養し、培養物中に、本発明のアセトアセチルCoA合成酵素タンパク質、HMG CoA合成酵素タンパク質及びHMG CoA還元酵素タンパク質を生成させ、これらの酵素タンパク質の作用により該培養物からメバロン酸を生成蓄積させ、該培養物よりメバロン酸を採取することにより、メバロン酸を製造することができる。 本発明の、メバロン酸の生合成能力を付与させた形質転換体を培地に培養する方法は、宿主である放線菌の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。 本発明の形質転換体である放線菌を培養する培地は、該微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれでもよい。 炭素源としては、放線菌が資化し得るものであればよく、グルコース、フラクトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノールなどのアルコール類が用いられる。 窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、等の各種無機酸や有機酸のアンモニウム塩、その他含窒素化合物、並びに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体およびその消化物等が用いられる。 無機物としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等が用いられる。 培養は、振盪培養または深部通気攪拌培養などの好気的条件下で行う。培養温度は15〜40℃がよく、培養時間は、通常16時間〜7日間である。培養中pHは、3.0〜9.0に保持する。pHの調整は、無機あるいは有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニアなどを用いて行う。 また培養中必要に応じて、アンピシリンやテトラサイクリン、チオストレプトン等の抗生物質を培地に添加してもよい。 プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した放線菌を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した放線菌を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した放線菌を培養するときにはインドールアクリル酸(IAA)等を培地に添加してもよい。 本発明の形質転換体の培養物からメバロン酸を単離精製するには、通常のメバロン酸ないしメバロン酸の分子内エステルであるメバロノラクトンの単離精製方法、すなわち菌体分離、抽出、蒸留、クロマトグラフィー、再結晶等を適宜組み合わせることにより得ることが出来る。 メバロン酸は分子量(mw:148)が小さいことから、多くの場合形質転換体の細胞膜を透過できるため培養ろ液中に蓄積し、菌体中で検出されるメバロン酸は比較的僅かである。このため、培養ろ液を得るために菌体を遠心分離やろ過を用いて除去することが好ましい。ただし、形質転換体の細胞内に蓄積する場合は菌体もしくは菌体を含めた培養ろ液から抽出してもよい。 メバロン酸の抽出方法は、通常の酸性有機物の抽出方法に従って行うことが出来る。すなわち、培養物を有機酸ないし無機酸を用いてpH 1.0〜4.0とした後、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、アセトン等の有機溶媒を用いて抽出できる。また、必要に応じて培養物に塩化ナトリウム等の電解質を溶解させてもよい。さらに抽出液中に含有する水分を減らす必要があれば無水硫酸ナトリウム等で脱水してもよい。得られた抽出液は蒸留や減圧下で抽出溶媒を留去し抽出物を得ることが出来る。ただし、メバロン酸は有機溶媒で抽出すると容易に分子内エステル化(ラクトン化、メバロノラクトン)する。メバロノラクトンをメバロン酸として使用したい場合はメバロノラクトンと等モル量の水酸化ナトリウム等のアルカリを用いて中和することが出来る。 抽出物はシリカゲルクロマト等のカラムクロマトグラフィーに吸着させヘキサン/酢酸エチル等の溶媒を用いて溶出することで精製することが可能である。また、蒸留により直接メバロノラクトンを精製することも可能である。また、適当な溶媒を用いることにより結晶化することも可能である。 以上より、形質転換した宿主細胞で発現した本発明のアセトアセチルCoA合成酵素(タイプ2)は、アセチルCoAおよびマロニルCoAからアセトアセチルCoAを生成する反応を触媒する。当該酵素は脂肪酸合成酵素(KAS III)(Annu. Rev. Biochem. 74: 791 (2005))とは、40%程度と比較的高い相同性があるが、一方KAS IIIはアセチル-CoAおよびマロニル-ACPからアセトアセチル-ACPを生成する反応を触媒するため、異なる酵素であることが明らかである。 本発明のアセトアセチルCoA合成酵素(タイプ2)は、効率的なアセトアセチルCoAの生産に利用可能である。アセトアセチルCoAの利用としては、研究用試薬があげられる。この場合、溶液中に当該酵素に加えて、アセチルCoAとマロニルCoAを添加することで容易に調製可能である。 また、本発明は宿主にアセトアセチルCoA以降の生合成に関する酵素遺伝子を形質転換することによりさまざまなアセトアセチルCoAから生合成される生理活性物質の生産が可能である。 この方法により生産される生理活性物質群としてはテルペノイドがあげられる。例えばテルペノイドの重要な生合成中間体であり化粧品原料でもあるメバロン酸を生産する(特開平2004-187531、特開平2004-236618)ためには、メバロン酸経路を持たない宿主に当該酵素をコードするDNA配列に加えて、HMG CoA(3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルコエンザイムA)合成酵素をコードするDNA配列、HMG CoA還元酵素をコードするDNA配列、の3種類を形質転換することで効率的に生産可能となる。また、メバロン酸以降の生理活性物質、例えば、生合成研究の重要な試薬であるファルネシル二リン酸の生産に使用することも本発明の範疇であり、以下の手順となる。 即ちメバロン酸生産で使用した3種のDNA配列に加えてメバロン酸キナーゼをコードするDNA配列、ホスホメバロン酸キナーゼをコードするDNA配列、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼをコードするDNA配列、イソペンテニル二リン酸異性化酵素をコードするDNA配列、ファルネシル二リン酸合成酵素をコードするDNA配列の計9種を形質転換する。一方、宿主は遺伝子欠損株でない限りイソペンテニル二リン酸以降の生合成遺伝子を自身の生命維持のために持っているため、二系統の反応触媒(酵素)群が並立することとなる。 上記のようにメバロン酸生産は、本発明の応用範囲であり、DNAを含むベクターを宿主に形質転換して作製した形質転換体を培養して培養物中にアセトアセチルCoAを生成させる工程、培養物中のアセトアセチルCoAからアセトアセチルCoAに由来する化合物を生成させる工程、及び該培養物からメバロン酸を採取する工程、により効率的にメバロン酸を製造することができる。 以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。〔実施例1〕 (配列番号5のDNA断片がコードする組換え酵素タンパク質の調製)a)放線菌Streptomyces sp. CL 190株から、配列番号2の全長を含むN末側にBamHIサイト(GGATCC)を、C末側にEcoRI(GAATTC)サイトを付加した配列番号5のDNA断片の取得、該DNA断片を含む大腸菌用発現ベクターpHIS8ORFnの調製及びこの発現ベクターを用いた大腸菌の形質転換 アセトアセチルCoA合成酵素(タイプ2)タンパク質をコードする遺伝子(ORFn)を十分発現させるような組換え体プラスミドをPCR法〔Science,230,1350 (1985)〕を用いて下記方法により構築した。 配列番号3に示した配列を有するセンスプライマーおよび配列番号4に示した配列を有するアンチセンスプライマーをDNA合成機を用いて合成した。 該センスプライマーの5’末端にはBamHI制限酵素サイトを、アンチセンスプライマーの5’末端にはEcoRIの制限酵素サイトを付加させた。 放線菌Streptomyces sp. CL 190株の染色体DNAを鋳型として、これらプライマーおよびTaq DNA polymerase(ベーリンガー社製)を用い、DNA Thermal Cycler(パーキンエルマージャパン社製)でPCRを行うことによりORFnを増幅した。 PCRは、95℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で1分間からなる反応工程を1サイクルと30サイクル行った後、72℃で10分間反応させる条件で行った。 増幅されたDNA断片をアガロースゲル電気泳動によって精製した。 精製された断片とpT7Blueベクター(Novagen社製)を混合した後エタノール沈殿を行い、得られたDNA沈殿物を5μlの蒸留水に溶解し、ライゲーション反応を行うことにより組換え体DNAを取得した。 該組換え体DNAを用い、E. coli DH5α株を常法に従って形質転換後、該形質転換体をアンピシリン50μg/mlを含むLB寒天培地に塗布し、37℃で一晩培養した。 該形質転換体より定法に従って組換えDNAを含むプラスミドを単離した。 該組換え体DNAがORFnであることをDNA配列を決定することによって確認した。 該組換え体から抽出したプラスミドを、制限酵素制限酵素BamHIとEcoRIとで消化した後、アガロースゲル電気泳動を行いBamHIとEcoRI処理ORFn含有DNA断片を取得した。 pHIS8(Biochemistry 39: 890 (2000))を制限酵素BamHIとEcoRIで消化後、アガロースゲル電気泳動を行いBamHIとEcoRI処理pHIS8断片を取得した。 上記で取得されたBamHIとEcoRI処理ORFn遺伝子含有DNA断片をBamHIとEcoRI消化pHIS8断片と混合した後、エタノール沈殿を行い、得られたDNA沈殿物を5μlの蒸留水に溶解し、ライゲーション反応を行うことにより組換え体DNAを取得した。 該組換え体DNAを用い、E. coli DH5α株を常法に従って形質転換後、該形質転換体をカナマイシン50μg/mlを含むLB寒天培地に塗布し、37℃で一晩培養した。 上記と同様の方法で、該形質転換体よりプラスミドを単離した。 上記同様、該方法により単離したプラスミドを各種制限酵素で切断して構造を調べ、目的のDNA断片が挿入されているプラスミドであることを確認した。このプラスミドをpHISORFnと命名した。b)大腸菌発現プラスミドpHISORFnを含む大腸菌BL21(DE3)株からの組換え酵素タンパク質の調製 上記a)で作成したpHISORFnを常法によりDE3を有するE. coli BL21(DE3)株(Novagen社製)に導入し、カナマイシン50μg/mlに耐性を示すBL21(DE3)/ pHISORFn株を得た。 BL21(DE3)/ pHISORFn株をカナマイシン50μg/mlを含むTB液体培地100ml中、37℃で培養し、660nmの濁度が1.5に達した時点で、培養液を10分間氷冷した後、イソプロピルチオガラクトシドを終濃度0.1mMになるように添加した。さらに18℃で18時間培養した後、遠心分離(3000rpm、10分間)によって培養上清を除いた。この菌体を100mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)6mlに懸濁し、超音波破砕機(SONIFIER,BRANSON社製)を用いて氷冷しつつ破砕した。得られた菌体破砕液を遠心分離(10,000rpm、20分間、4℃)にかけ、上清を回収した。この細胞抽出液遠心上清をNi-NTAレジンカラム(QIAGEN社製)に通し、20mlの洗浄緩衝液〔100mM トリス塩酸(pH8.0)、50mM イミダゾール、0.5% Tween20〕で洗浄した。 ついで溶出緩衝液〔100mM トリス塩酸(pH8.0)、200mM イミダゾール〕10mlを通塔し、溶出液を1mlづつ分画した。 各分画について蛋白量を測定(BioRad社の蛋白量定量キット使用)し、蛋白質を含む画分を精製蛋白画分とした。 実験例1 (実施例1で得た組換え酵素タンパク質の性状) SDS-アクリルアミドゲル電気泳動により、分子量は34 kDaであった。 HiLoad 26/60 Superdex 200 prep grade (アマシャム社製)カラムを用いたゲル濾過による分子量測定の結果、63 kDaであったことから、本酵素は、2量体であることが分かった。 実験例2 (実施例1で得た組換え酵素タンパク質(ORFn)の、チオラーゼ活性(=逆反応)の測定) 50 mM Tris-HCl (pH 8.0)、5 mM MgCl2、100 μM アセトアセチルCoA、100 μM CoA、20 μg ORF-nを含む反応液1 mlを調製し、30度で保温しながら303 nmの吸光度の変化をUV可視測定装置UV-1600PC(島津社製)で観察した。その結果、303 nmの吸光度の変化は観察されなかった(図3、アセトアセチルCoA分解活性)。このことは、実施例1で得た組換え酵素タンパク質(ORFn)には、アセトアセチルCoAを分解して、アセチルCoAを生成するチオラーゼ活性を有しないことを示している。 実験例3 (実施例1で得た組換え酵素の、本発明のアセトアセチルCoA合成酵素活性(=正反応)の確認) 次に、まず、本アセトアセチルCoA合成酵素がアセチルCoAからアセトアセチルCoAが生成するかどうか以下の反応条件で調べた。 50 mM Tris-HCl (pH 8.0)、5 mM MgCl2、1 mM アセチルCoA、20 μg ORF-nを含む反応液1 mlを調製し、30度で保温しながら303 nmの吸光度の変化をUV可視測定装置UV-1600PC(島津社製)で観察した。その結果、303 nmの吸光度の変化は観察されなかった(図3、アセトアセチルCoA合成活性)。このことは、実施例1で得た組換え酵素タンパク質(ORFn)には、アセチルCoAからアセトアセチルCoAを生成する本アセトアセチルCoA合成酵素活性を有しないことを示している。 そこで次に、本アセトアセチルCoA合成酵素がアセチルCoAとマロニルCoAとからアセトアセチルCoAが生成するかどうか以下の反応条件で調べた。 50 mM Tris-HCl (pH 8.0)、5 mM MgCl2、100 μM アセチルCoA、100 μM マロニルCoA、1 μg ORF-nを含む反応液1 mlを調製し、30度で保温しながら303 nmの吸光度の変化をUV可視測定装置UV-1600PC(島津社製)で観察した。その結果、303 nmの吸光度の変化が観察された(図4)。このことは、実施例1で得た組換え酵素タンパク質(ORFn)が、アセチルCoAとマロニルCoAとからアセトアセチルCoAを生成することを示しており、本酵素タンパク質が、アセトアセチルCoA合成酵素であることを示している。 次に、本アセトアセチルCoA合成酵素がマロニルCoAからアセトアセチルCoAが生成するかどうか以下の反応条件で調べた。 50 mM Tris-HCl (pH 8.0)、5 mM MgCl2、100 μM マロニルCoA、20 μg ORF-nを含む反応液1 mlを調製し、30度で保温しながら303 nmの吸光度の変化をUV可視測定装置UV-1600PC(島津社製)で観察した。その結果、303 nmの吸光度の変化は観察されなかった(図6)。このことは、実施例1で得た組換え酵素タンパク質(ORFn)には、マロニルCoAからアセトアセチルCoAを生成する本アセトアセチルCoA合成酵素活性を有しないことを示している。 本アセトアセチルCoA合成酵素の酵素学的パラメーターは以下のように算出された。 アセチルCoAとマロニルCoAに対するKm値は、それぞれ、75.2±1.4 μM、14.8±0.5 μMであり、kcatは158±1 s-1であった。 本組換え酵素タンパク質(ORFn)が、プロピオニルCoAとマロニルCoAとから3−オキソペンタノイルCoAを生成するかどうか以下の反応条件で調べた。 50 mM Tris-HCl (pH 8.0)、5 mM MgCl2、50 μM プロピオニルCoA、50 μM マロニルCoA、50 μg ORF-nを含む反応液1 mlを調製し、30度で保温しながら303 nmの吸光度の変化をUV可視測定装置UV-1600PC(島津社製)で観察した。その結果、303 nmの吸光度の変化が観察された(図5)。このことは、実施例1で得た組換え酵素タンパク質(ORFn)が、プロピオニルCoAとマロニルCoAとから3−オキソペンタノイルCoAを生成する酵素活性も持っていることを示している。 ORF-nがアセチルCoAとマロニルCoAとからアセトアセチルCoAを生成するならば、それに伴いCoAの放出が起こると考えられる。そこで、ORF-nによる反応に伴い生成するCoAの検出を試みた。CoAの検出法としては呈色試薬2, 6-dichroloindophenol (DCIP)による検出法を用いた。この方法は反応により生成したCoAのスルフヒドリル基がDCIPを還元することによって、DCIP由来の600 nmにおける吸光度が減少することを利用した検出法である。 50 mM Tris-HCl (pH 8.0)、5 mM MgCl2、100 μM アセチルCoA、100 μM マロニルCoA、100 μM DCIP、1 μg ORF-nを含む反応液1 mlを調製し、30度で保温しながら600 nmの吸光度の変化をUV可視測定装置UV-1600PC(島津社製)で観察した。 その結果、アセチルCoAとマロニルCoAの両基質が存在する場合のみ600 nmにおける吸光度が減少した(図6)。すなわちORF-nによるアセトアセチルCoAの生成に伴い、CoAが生成していることが明らかとなった。 HPLCと質量分析計を組み合わせたLC-MSを用いた分析によって、ORFnのアセトアセチルCoA合成活性を以下のように検出した。 50 mM Tris-HCl (pH 8.0)、5 mM MgCl2、1 mM アセチルCoA、1 mM マロニルCoA、10 μg ORF-nを含む反応液1 mlを調製し、30度で1時間保温した。 この反応液(以下、反応液(酵素有り))のうち10 μlをLC-MS分析装置TSQ7000(Finnigan社製)に供した。HPLCの条件は、0分から20分まで0.1 %ヘプタフルオロ酪酸水溶液から0.1 %ヘプタフルオロ酪酸を含む40 %アセトニトリル水溶液までアセトニトリル濃度を2%/分の割合で変化させて展開した。HPLCカラムは、Develosil AR-5 (2.0 X 150 mm)(野村化学社製)を使用した。流速は0.4 ml/minで、検出は254 nmで行った。 まず、アセトアセチルCoAの標品(Sigma社製)を上記条件で分析した。その結果7.8分にシグナルAが得られた。反応液(酵素有り)も同様に分析したところ、6.8分にシグナルEと7.8分にシグナルBが得られた。反応液(酵素有り)のORFnの代わりに熱処理を施したORFnを添加した反応液(熱処理酵素)も同様に分析したところ、7.3分にシグナルDと7.7分にシグナルCが得られた(図7)。 シグナルAとシグナルBとは保持時間がともに7.8分であり、さらにそれらの質量分析の結果、ともに、アセトアセチルCoAに由来するm/z=852.1のシグナルが得られたことから、シグナルBはアセトアセチルCoAであると同定した。シグナルCは、m/z=820.1が観察されることからアセチルCoAであり、シグナルDは、m/z=854.1が観察されることからマロニルCoAである。シグナルEは、m/z=768.1が観察されることから、CoAと同定できた(図8)。 以上の測定結果からも、ORF-nは、アセチルCoAとマロニルCoAからアセトアセチルCoAとCoAを生成することが明らかになった。 すなわち、ORFnは以下の反応を触媒する。 アセチルCoA + マロニルCoA ( アセトアセチルCoA + CoA + CO2〔実施例2〕 (CL190株由来の配列番号8の本発明のアセトアセチルCoA合成酵素遺伝子とその上流領域、及びHMG CoA合成酵素遺伝子、並びにHMG CoA還元酵素遺伝子の3種を組込んだ放線菌Streptomyces lividans TK23株用発現ベクターpSEMV25ORFnの調製、及び発現ベクターpSEMV25ORFnを用いたTK23株の形質転換) 放線菌用発現プラスミド、pSEMV25(Biosci. Biotech. Biochem. 68: 931 (2004))にはCL190株のメバロン酸経路遺伝子クラスターから取得したHMG CoA合成酵素遺伝子、並びにHMG CoA還元酵素遺伝子がクローニングされている。 このプラスミドのHMG CoA合成酵素遺伝子の上流にある制限酵素サイトXbaIとEcoRIの間に、以下のように、アセトアセチルCoA合成酵素遺伝子(タイプ2)(ORFn)及びそのプロモーター配列を含むと考えられる上流領域をクローニングした。該上流域は、上記HMG CoA合成酵素遺伝子の終止コドンの直後の塩基からORFnの開始コドンの直前の配列(96塩基)までとした。 配列番号6に示した配列を有するセンスプライマーおよび配列番号7に示した配列を有するアンチセンスプライマーをDNA合成機を用いて合成した。 該センスプライマーの5’末端にはXbaI制限酵素サイトを、アンチセンスプライマーの5’末端にはEcoRIの制限酵素サイトを付加させた。 放線菌Streptomyces sp. CL 190株の染色体DNAを鋳型として、これらプライマーおよびTaq DNA polymerase(ベーリンガー社製)を用い、DNA Thermal Cycler(パーキンエルマージャパン社製)でPCRを行うことによりORFn及びそのプロモーター配列を含むと考えられる上流領域を増幅した。 PCRは、95℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で2分間からなる反応工程を1サイクルと30サイクル行った後、72℃で10分間反応させる条件で行った。 増幅されたDNA断片をアガロースゲル電気泳動によって精製した。 精製された断片とpT7Blueベクター(Novagen社製)を混合した後エタノール沈殿を行い、得られたDNA沈殿物を5μlの蒸留水に溶解し、ライゲーション反応を行うことにより組換え体DNAを取得した。 該組換え体DNAを用い、E. coli DH5α株を常法に従って形質転換後、該形質転換体をアンピシリン50μg/mlを含むLB寒天培地に塗布し、37℃で一晩培養した。 該形質転換体より定法に従って組換えDNAを含むプラスミドを単離した。 該組換え体DNAがORFn及びそのプロモーター配列を含むと考えられる上流領域であることをDNA配列を決定することによって確認した。 該組換え体からプラスミドを抽出し、制限酵素制限酵素XbaIとEcoRIとで消化後、アガロースゲル電気泳動を行いXbaIとEcoRI処理ORFn及びそのプロモーター配列を含むと考えられる上流領域含有DNA断片を取得した。 pSEMV25を制限酵素XbaIとEcoRIで消化後、アガロースゲル電気泳動を行いXbaIとEcoRI処理pSEMV25断片を取得した。 上記で取得されたXbaIとEcoRI処理ORFn遺伝子及びそのプロモーター配列を含むと考えられる上流含有DNA断片をXbaIとEcoRI消化pSEMV25断片と混合した後、エタノール沈殿を行い、得られたDNA沈殿物を5μlの蒸留水に溶解し、ライゲーション反応を行うことにより組換え体DNAを取得した。 該組換え体DNAを用い、E. coli DH5α株を常法に従って形質転換後、該形質転換体をアンピシリン50μg/mlを含むLB寒天培地に塗布し、37℃で一晩培養した。 上記と同様の方法で、該形質転換体よりプラスミドを単離した。 上記同様、該方法により単離したプラスミドを各種制限酵素で切断して構造を調べ、目的のDNA断片が挿入されているプラスミドであることを確認した。このプラスミドをpSEMV25ORFnと命名した。 pSEMV25ORFnを用い、S. lividans TK23株を常法に従って形質転換体を得た。該形質転換体をS. lividans TK23 (pSEMV25ORFn)株と命名した。〔実施例3〕 (メバロン酸の生産) S. lividans TK23 (pSEMV25ORFn)株を、チオストレプトン5μg/mlを含む10 ml のSK-II液体培地(Biosci. Biotech. Biochem. 68: 931 (2004))に1白金耳植菌し、振とう培養器で30℃、120 rpmで2日間培養を行った。得られた培養液を各2 mlずつ、チオストレプトン5μg/mlを含むKG液体培地100 mlを入れた坂口フラスコに分注し、さらに10日間培養を継続した。得られた培養液を3500 rpmで10分遠心分離を行い培養ろ液を得た。 この培養ろ液100 mlに85%リン酸を滴下してpHを2.0とした後、無水硫酸ナトリウム50 gを添加し飽和溶液とする。この飽和溶液を、酢酸エチル100 mlを用いて抽出を行った。抽出は3回行い、酢酸エチル層を無水硫酸ナトリウムで脱水後、ロータリーエバポレーターで乾固し油状物質を得た。得られた油状物質をイソプロパノール1 mlに溶解し下記分析例に示す条件で分析を行った。その結果、培養液中のメバロン酸濃度は8 μg/mlであった。 分析例 (メバロノラクトンのHPLCによる分析) メバロン酸は培養液から抽出の過程で環化してラクトン体となることが公知であることから、メバロノラクトンとして分析を行った。メバロノラクトンの分析は下記のように行った。 カラム:ヌクレオジル5N(CH3)2 (ドイツ、M. ナーゲル社製)、サイズ直径4.6 mm × 長さ250 mm、4 0 ℃ 移動層:N-ヘキサン/イソプロパノール=9/1、流速1.0 ml/分 検出:示差屈折計 ((株)日立ハイテクノロジーズ製、L-2490型)、注入量 0.01 ml図1は、メバロン酸経路における、イソペンテニル二リン酸(IPP)の生成経路を示す。図2は、大腸菌等の細菌中の脂肪酸合成経路を示す。図3は、ORFnのアセトアセチルCoA分解・合成活性の測定結果を示す。図4は、ORFnのアセトアセチルCoA合成活性の測定結果、および酵素学的パラメーターを示す。図5は、ORFnの3−オキソペンタノイルCoA合成活性の測定結果を示す。図6は、DCIPによるCoA生成の検出反応、およびORFnによる反応に伴うCoA生成の検出結果を示す。図7は、LC-MSを用いたORFnの反応生成物の検出結果(HPLCパート)を示す。図8は、LC-MSを用いたORFnの反応生成物の検出結果(質量分析パート)を示す。 配列番号2の塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列がコードするタンパク質であって、アセチルCoAとマロニルCoAの両方を基質としてアセトアセチルCoAを生成する反応を触媒する新規なアセトアセチルCoA合成酵素。 アセトアセチルCoA合成酵素が、メバロン酸経路をもつ放線菌のメバロン酸経路遺伝子クラスター中に含まれるアセトアセチルCoA合成酵素遺伝子がコードするタンパク質である、請求項1記載のアセトアセチルCoA合成酵素。 配列番号1のアミノ酸配列を持つポリペプチド。 配列番号1において、1から数個のアミノ酸が欠失、置換、付加及び/または挿入されているアミノ酸配列であって、アセトアセチルCoA合成酵素活性を有するアミノ酸配列を持つポリペプチド。 配列番号2の塩基配列を持つDNA。 配列番号2において、1〜数個の塩基配列が欠失、置換、付加及び/または挿入されている塩基配列であって、アセトアセチルCoA合成酵素を機能させるために必要な配列をすべてコードする塩基配列を持つDNA。 配列番号2の塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズすることができる塩基配列であって、アセトアセチルCoA合成酵素を機能させるのに必要な配列をすべてコードする塩基配列を持つDNA。 請求項5〜7の何れか1項に記載の塩基配列を持つDNAを含むベクター。 請求項8に記載のベクターを有する形質転換体。 大腸菌である、請求項9に記載の形質転換体。 請求項9又は10に記載の形質転換体を培養することを特徴とするアセトアセチルCoA合成酵素の製造方法。 少なくとも、請求項1又は2に記載のアセトアセチルCoA合成酵素をコードする塩基配列又は請求項5〜7の何れか1項に記載の塩基配列を持つDNAを含むベクターで宿主を形質転換し、当該形質転換体内に少なくともアセトアセチルCoA合成酵素タンパク質を生成させ、少なくともアセトアセチルCoA合成酵素タンパク質の機能により、アセトアセチルCoAから生合成される生理活性物質を蓄積させることを特徴とする生理活性物質の製造方法。 請求項1又は2に記載のアセトアセチルCoA合成酵素をコードする塩基配列、又は請求項5〜7の何れか1項に記載の塩基配列、3−ハイドロキシ−3−メチルグルタリルコエンザイムA合成酵素をコードする塩基配列及び3−ハイドロキシ−3−メチルグルタリルコエンザイムA還元酵素をコードする塩基配列の3種類の塩基配列を持つDNAを含むベクターで放線菌を形質転換し、該形質転換体の放線菌細胞中にアセトアセチルCoA合成酵素、3−ハイドロキシ−3−メチルグルタリルコエンザイムA合成酵素及び3−ハイドロキシ−3−メチルグルタリルコエンザイムA還元酵素の3種類の酵素タンパク質を生成させ、アセトアセチルCoA合成酵素タンパク質、3−ハイドロキシ−3−メチルグルタリルコエンザイムA合成酵素タンパク質および3−ハイドロキシ−3−メチルグルタリルコエンザイムA還元酵素タンパク質の機能によりメバロン酸を蓄積させることを特徴とする新規なメバロン酸の製造方法。配列表


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