タイトル: | 公開特許公報(A)_カーボンブラックの定量方法 |
出願番号: | 2006232883 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | G01N 5/04 |
橋本 直樹 JP 2008058041 公開特許公報(A) 20080313 2006232883 20060830 カーボンブラックの定量方法 住友金属鉱山株式会社 000183303 田中 増顕 100087583 橋本 直樹 G01N 5/04 20060101AFI20080215BHJP JPG01N5/04 Z 6 OL 11 本発明は、カーボンブラックと分散剤と有機溶剤を含む組成物中のカーボンブラックの定量方法に関するものである。更に詳しくは、有機元素分析法を用いて、カーボンブラックを精確に定量する分析方法に関するものである。 カーボンブラックと分散剤と有機溶剤を含む組成物は、熱線遮蔽用のインクなどに汎用的に用いられている。特にインク中のカーボンブラックの含有率(wt%)は、有機溶剤の分散度合やインクを塗布したときのレベリング性に影響するため、インク中のカーボンブラックの含有率を精確に品質管理することが必要である。 これまで、カーボンブラックの定量方法としては、加硫ゴム中のカーボンブラックの定量方法が、JIS K 6530−1976(非特許文献1)に規格として採用されており、また、上記定量方法については、新版高分子ハンドブック(非特許文献2)や特開平11−281556号公報(特許文献1)にも記載されている。しかし、カーボンブラックと分散剤と有機溶剤を含む組成物であるインク中のカーボンブラックの定量方法は、未だ規格として確立されたものはない。 例えば、上記の非特許文献1および非特許文献2に記載されている加硫ゴム中のカーボンブラックの定量方法として、熱分解法、硝酸分解法および熱重量分析法がある。上記定量方法はいずれも熱減量を測定することを基本原理とした方法である。熱分解法と硝酸分解法の違いは、ゴム成分の種類によって、前処理方法が異なるだけである。また、熱重量分析法では、ゴム成分の種類に関係なく、加硫ゴム中のカーボンブラックの定量が可能である。 熱分解法および硝酸分解法と熱重量分析法の違いは、熱減量の測定方法が異なるだけである。熱分解法や硝酸分解法では、熱減量測定を天秤で測定するのに対し、熱重量分析法では、熱天秤で熱減量を測定するため、リアルタイムで熱減量が測定でき、また、自動測定が可能である。したがって、現状では、熱重量分析法で加硫ゴム中のカーボンブラックを定量するのが、最も一般的である。 代表的な例として、熱重量分析法について述べれば、試料中のゴム成分と有機添加剤成分を窒素雰囲気下で熱分解して除去したのち、更にカーボンブラックを空気雰囲気下に変えて、完全燃焼し、その完全燃焼したときの熱減量を元に試料中のカーボンブラックの含有率を算出する方法である。特開平11−281556号公報JIS K 6530−1976新版高分子ハンドブック(紀伊國屋書店) しかし、上記方法(熱分解法および硝酸分解法と熱重量分析法)を、カーボンブラックと分散剤と有機溶剤を含む組成物であるインク中のカーボンブラックの定量に適用しても精確な分析値が得られない。その理由として、上記方法では、試料採取時にインク中の有機溶剤が揮散してしまい、精確な試料重量を秤量することが困難なことがある。また、インク中の分散剤成分の種類によっては、窒素雰囲気下での熱分解では完全に分散剤を除去できないため、空気雰囲気下に変えて、カーボンブラックを燃焼したとき残留する分散剤も一緒に燃焼されてしまい、カーボンブラックの定量値に正の誤差が生じるためである。 本発明は、上記問題を解決し、カーボンブラックと分散剤と有機溶剤を含む組成物中のカーボンブラックの定量について、精確な分析値を得ることができる定量分析法を提供することを目的とする。 本発明者は、上記課題を解決するため、カーボンブラックと分散剤と有機溶剤を含む組成物の重量を秤量(W1)したのち、秤量した当該組成物を減圧乾燥して、当該組成物中の有機溶剤を揮散除去し、得られた乾燥物の重量を秤量(W2)し、秤量した乾燥物と、当該組成物に使用されている分散剤単体のそれぞれについて、有機元素分析法を用いて、当該乾燥物中の炭素(C1)および水素(H1)、ならびに分散剤単体の炭素(C2)および水素(H2)の含有率(wt)をそれぞれ算出し、下記の式1によって、当該乾燥物中の分散剤由来の炭素(C3)の含有率を算出し、下記の式2によって、当該乾燥物中のカーボンブラック由来の炭素(C4)の含有率を算出し、下記の下記の式3によって、当該組成物中のカーボンブラックの含有率(C5)を算出するカーボンブラックの定量方法を用いることによって、カーボンブラックと分散剤と有機溶剤を含む組成物中のカーボンブラックを精確に定量できることを見出し、本発明に至った。 式1:C3=C2×(H1/H2) 式2:C4=C1−C3 式3:C5=(W2×C4/100)×100/W1 すなわち、本発明の第1の発明は、カーボンブラックと分散剤と有機溶剤を含む組成物のカーボンブラックの定量方法において、カーボンブラックと分散剤と有機溶剤を含む組成物の重量を秤量(W1)したのち、秤量した当該組成物を減圧乾燥して、当該組成物中の有機溶剤を揮散除去し、得られた乾燥物の重量を秤量(W2)し、秤量した乾燥物と、当該組成物に使用されている分散剤単体を有機元素分析法で、当該乾燥物中の炭素(C1)および水素(H1)ならびに分散剤単体の炭素(C2)および水素(H2)の含有率(wt)をそれぞれ算出し、下記の式1によって、当該乾燥物中の分散剤由来の炭素(C3)の含有率を算出し、下記の式2によって、当該乾燥物中のカーボンブラック由来の炭素(C4)の含有率を算出し、下記の式3によって、当該組成物中のカーボンブラックの含有率(C5)を算出する、 式1:C3=C2×(H1/H2) 式2:C4=C1−C3 式3:C5=(W2×C4/100)×100/W1ことを特徴とするカーボンブラックの定量方法を提供する。 本発明の第2の発明は、分散剤が、1成分からなることを特徴とする第1の発明に記載のカーボンブラックの定量方法を提供する。 本発明の第3の発明は、カーボンブラックと分散剤と有機溶剤を含む組成物のカーボンブラックの定量方法において、分散剤が、分散剤1と分散剤2の2成分からなり、分散剤1が炭素と水素と窒素からなる分散剤であり、分散剤2が炭素と水素と硫黄からなる分散剤であって、カーボンブラックと前記分散剤2成分と有機溶剤を含む組成物の重量を秤量(W3)したのち、秤量した当該組成物を減圧乾燥して、当該組成物中の有機溶剤を揮散除去し、得られた乾燥物の重量を秤量(W4)し、秤量した当該乾燥物と、当該組成物に使用されている分散剤単体を有機元素分析法で、当該乾燥物中の炭素(C6)と窒素(N1)と硫黄(S1)ならびに分散剤1の炭素(C7)と窒素(N2)および分散剤2の炭素(C8)と硫黄(S2)の含有率(wt)をそれぞれ算出し、下記の式4によって、当該乾燥物中の分散剤1由来の炭素(C9)の含有率を算出し、下記の式5によって、当該乾燥物中の分散剤2由来の炭素(C10)の含有率を算出し、下記の式6によって、当該乾燥物中のカーボンブラック由来の炭素(C11)の含有率を算出し、下記の式7によって、当該組成物中のカーボンブラックの含有率(C12)を算出する、 式4:C9=C7×(N1/N2) 式5:C10=C8×(S1/S2) 式6:C11=C6−(C9+C10) 式7:C12=(W4×C11/100)×100/W3ことを特徴とするカーボンブラックの定量方法を提供する。 本発明の第4の発明は、試料採取容器が、密閉容器であることを特徴とする第1の発明または第3の発明に記載のカーボンブラックの定量方法を提供する。 本発明の第5の発明は、有機元素分析法が、燃焼部とガスクロマトグラフ部からなる有機元素分析法であることを特徴とする第1の発明または第3の発明に記載のカーボンブラックの定量方法を提供する。 本発明の第6の発明は、有機溶剤の沸点が130°C以下であることを特徴とする第1の発明または第3の発明に記載のカーボンブラックの定量方法を提供する。 本発明のカーボンブラックの定量方法は、カーボンブラックと分散剤と有機溶剤を含む組成物の重量を秤量(W1)したのち、秤量した当該組成物を減圧乾燥して、当該組成物中の有機溶剤を揮散除去し、得られた乾燥物の重量を秤量(W2)し、秤量した乾燥物と、当該組成物に使用されている分散剤単体を有機元素分析法で、当該乾燥物中の炭素(C1)および水素(H1)ならびに分散剤単体の炭素(C2)および水素(H2)の含有率(wt)をそれぞれ算出し、下記の式1によって、当該乾燥物中の分散剤由来の炭素(C3)の含有率を算出し、下記の式2によって、当該乾燥物中のカーボンブラック由来の炭素(C4)の含有率を算出し、下記の式3によって、当該組成物中のカーボンブラックの含有率(C5)を算出することによって、カーボンブラックを定量するものであり、カーボンブラックと分散剤と有機溶剤を含む組成物中のカーボンブラックの含有率を精確に定量することができる。 式1:C3=C2×(H1/H2) 式2:C4=C1−C3 式3:C5=(W2×C4/100)×100/W1 このため、本発明のカーボンブラックの定量方法は、インクや塗料などの工業的な生産分野の品質管理に有効である。 本発明のカーボンブラックの定量方法は、カーボンブラックと分散剤と有機溶剤を含む組成物の重量を秤量(W1)したのち、秤量した当該組成物を減圧乾燥して、当該組成物中の有機溶剤を揮散除去し、得られた乾燥物の重量を秤量(W2)し、秤量した乾燥物と、当該組成物に使用されている分散剤単体を有機元素分析法で、当該乾燥物中の炭素(C1)および水素(H1)ならびに分散剤単体の炭素(C2)および水素(H2)の含有率(wt)をそれぞれ算出し、下記の式1によって、当該乾燥物中の分散剤由来の炭素(C3)の含有率を算出し、下記の式2によって、当該乾燥物中のカーボンブラック由来の炭素(C4)の含有率を算出し、下記の式3によって、当該組成物中のカーボンブラックの含有率(C5)を算出するという方法を用いることによって、カーボンブラックと分散剤と有機溶剤を含む組成物中のカーボンブラック量を精確に定量することができる。 式1:C3=C2×(H1/H2) 式2:C4=C1−C3 式3:C5=(W2×C4/100)×100/W1 以下に本発明のカーボンブラックと分散剤と有機溶剤を含む組成物中のカーボンブラックの定量手順を説明する。・ 組成物の採取 カーボンブラックと分散剤と有機溶剤を含む組成物中の有機溶剤には、一般的にトルエン、酢酸ブチルやブタノールなどの揮発性の溶剤を使用している。このため、当該組成物の採取時には、当該組成物中の有機溶剤が揮散しないように密閉容器に採取し、当該組成物の重量を秤量することが好ましい。 秤量する天秤については、100μgまで秤量でき、かつ、小数点以下4桁を秤量できる天秤を使用することが好ましい。当該組成物の採取量としては、溶媒が揮散しても分析誤差範囲内になる程度、具体的には、0.2g〜0.5g採取することが好ましい。(2)組成物の減圧乾燥 秤量した当該組成物の入った容器の蓋を外して、真空デシケータ内で減圧乾燥し、当該組物中の有機溶剤を揮散除去する。このとき、試料容器をビーカーに入れ、ビーカーの上部を時計皿で蓋することによって、減圧乾燥時の当該組成物の突沸を防ぐことができる。 また、本減圧乾燥は、当該組成物中の有機溶剤の沸点が130°C以下のものに適用することが好ましい。これは、沸点が130°Cを超える有機溶剤の場合、減圧乾燥のみでは完全に有機溶剤を揮発除去できないことがあるからである。但し、突沸が発生しないように加熱乾燥すれば、沸点が130°Cを超える有機溶剤でも揮発除去は可能である。(3)分散剤単体の減圧乾燥 当該組成物中の分散剤には、不揮発性の高分子分散剤が一般的に使用されている。このため、原則として、当該組成物に使用されている分散剤(分散剤単体)を減圧乾燥する必要はないが、万が一、分散剤単体中に揮発性の有機溶剤が含まれている場合には、当該組成物と同様に減圧乾燥する必要がある。これは、有機元素分析法でCおよびHの含有率を測定する際に正の誤差となるためである。(4)乾燥物の秤量 上記方法で減圧乾燥され得られた乾燥物の重量を秤量し、有機元素分析測定用の試料とする。このとき、当該乾燥物の重量が変化する場合、当該乾燥物中の有機溶剤が完全に揮散していないことが考えられるため、再度、減圧乾燥し、当該乾燥物の重量変化がなくなるまで減圧乾燥を繰り返すことが必要である。この操作によって、当該組成物中の有機溶剤と、カーボンブラック及び分散剤とに完全に分離することができる。(5)有機元素分析 上記のカーボンブラック及び分散剤からなる有機元素分析測定用の試料と分散剤単体とについて、それぞれ個別に、燃焼部とガスクロマトグラフ部からなる有機元素分析装置で、CおよびHの含有率を測定する。 元素分析装置としては、C、H、NおよびSの含有率を定量可能な装置であれば良く、例えば、ThemoFinnigan社製FlashEA1112やパーキンエルマ製CHNS−2400の有機元素分析装置などが適用可能である。 有機元素分析の測定条件としては、特に限定はされないが、メーカーが推奨する測定条件、すなわち、燃焼部の温度は900°C〜1200°C程度が好ましく、ガスクロマトグラフ部の温度は65°C程度が好ましい。キャリアーガスとしては、Heを使用し、Heガス流量は140ml/minが好ましい。 燃焼ガスとしては、酸素ガスを使用し、酸素ガス流量は250ml/minで5秒間が好ましい。 元素分析時の試料の採取については、1mg〜2mg程度が好ましい。これは、定量の精確さに影響するためである。 秤量する天秤については、1μgまで秤量でき、かつ、小数点4桁を秤量することができるマイクロ天秤を使用する必要がある。これは、元素分析時のC、H、NおよびSの定量の精確さに影響するためである。 元素分析によるC、H、NおよびS定量用の標準試料については、メーカーが推奨するC、H、NおよびSの含有率が既知である、例えば、スルファニルアミドを使用することが好ましい。(6)カーボンブラックの定量−1(分散剤が1成分の場合) 上記の(1)〜(5)の操作によって得られた当該組成物の重量(W1)、当該乾燥物の重量(W2)、当該乾燥物中の炭素(C1)および水素(H1)ならびに分散剤単体の炭素(C2)および水素(H2)の含有率(wt)を用いて、当該組成物中のカーボンブラックの含有率を算出する。以下に当該組成物中カーボンブラックの含有率の算出手順について説明する。 当該乾燥物の炭素含有率は、カーボンブラック及び分散剤の炭素含有率であり、カーボンブラック及び分散剤の炭素含有率のうち、分散剤の炭素含有率が算出できれば、当該組成物中のカーボンブラックの含有率を算出することができる。 カーボンブラックの構成元素は、炭素のみであるのに対して、分散剤の構成元素は、炭素と水素である。したがって、乾燥物中の水素含有率(H1)は、当該乾燥物中の分散剤由来の水素含有率であり、分散剤単体の炭素(C2)と水素(H2)の含有率を用いて下記の式1で計算することによって、当該乾燥物中の分散剤由来の炭素含有率(C3)を算出できる。 式1:C3=C2×(H1/H2) 次に、下記の式2によって、当該乾燥物中炭素含有率(C1)から当該乾燥物中の分散剤由来の炭素含有率(C3)を差し引き、当該乾燥物中のカーボンブラック由来の炭素(C4)の含有率を算出する。 式2:C4=C1−C3 最後に当該組成物の重量(W1)、当該乾燥物の重量(W2)、当該乾燥物中のカーボンブラック由来の炭素含有率(C4)を下記の式3によって計算し、当該組成物中のカーボンブラック含有率(C5)を算出する。 式3:C5=(W2×C4/100)×100/W1(7)カーボンブラックの定量−2(分散剤が2成分の場合) カーボンブラック、分散剤および有機溶剤を含む組成物中の分散剤が、分散剤1と分散剤2の2成分から構成されており、かつ、分散剤1が炭素と水素と窒素からなる分散剤であり、分散剤2が炭素と水素と硫黄からなる分散剤の場合の当該組成物中のカーボンブラックの定量操作について、以下に説明する。 上記の(1)〜(5)の操作と同様の操作を行って得られた当該組成物の重量(W3)、当該乾燥物の重量(W4)、当該乾燥物中の炭素(C6)、窒素(N1)および硫黄(S1)、ならびに分散剤単体1の炭素(C7)、窒素(N2)の含有率および分散剤2の炭素(C8)、硫黄(S2)の含有率を用いて、当該組成物中のカーボンブラックの含有率を算出する。以下に当該組成物中カーボンブラックの含有率の算出手順について説明する。 当該乾燥物の炭素含有率は、カーボンブラック及び分散剤1と分散剤2の炭素含有率であり、カーボンブラック及び分散剤1と分散剤2の炭素含有率のうち、分散剤1と分散剤2の炭素含有率が算出できれば、当該組成物中のカーボンブラックの含有率を算出することができる。 分散剤1の構成元素は、炭素、水素および窒素であり、分散剤2の構成元素は、炭素、水素および硫黄であるので、乾燥物中の窒素含有率(N1)は、当該乾燥物中の分散剤1由来の窒素含有率であり、分散剤単体1の炭素(C7)とN(N2)の含有率を下記の式4で計算することによって、当該乾燥物中の分散剤1由来の炭素含有率(C9)を算出できる。 式4:C9=C7×(N1/N2) また、乾燥物中の硫黄含有率(S1)は、当該乾燥物中の分散剤2由来の硫黄含有率であり、分散剤単体2の炭素(C8)と硫黄(S2)の含有率を下記の式5で計算することによって、当該乾燥物中の分散剤2由来の炭素含有率(C10)を算出できる。 式5:C10=C8×(S1/S2) 次に下記の式6によって、当該乾燥物中炭素含有率炭素(C6)から当該乾燥物中の分散剤1由来の炭素含有率(C9)と分散剤2由来の炭素含有率を差し引き、当該乾燥物中のカーボンブラック由来の炭素(C11)の含有率を算出する。 式6:C11=C6−(C9+C10) 最後に当該組成物の重量(W3)、当該乾燥物の重量(W4)、当該乾燥物中のカーボンブラック由来の炭素含有率(C11)を下記の式7によって計算し、当該組成物中のカーボンブラック含有率(C12)を算出する。 式7:C12=(W4×C11/100)×100/W3 上記のように、本発明のカーボンブラックの定量方法を用いれば、カーボンブラックと分散剤と有機溶剤を含む組成物について、重量秤量、減圧乾燥の一般的な操作を行い、有機元素分析法で、炭素、水素ならびに、分散剤2種にそれぞれに窒素、硫黄が含有されている場合は、さらに窒素、硫黄を分析し、上記した計算式によって、カーボンブラックを定量するものであり、カーボンブラックと分散剤と有機溶剤を含む組成物中のカーボンブラックの含有率を精確に定量することができる。 このため、本発明のカーボンブラックの定量方法は、インクや塗料などの工業製品の生産の品質管理に好適に用いることができる。 本発明のカーボンブラックの定量方法の精確さを調査するため、下記の表1に示す模擬組成物1、模擬組成物2および模擬組成物3を作製し、各組成物の試料量を0.2g、0.3gおよび0.4gと重さを変えて、それぞれ、採取したのち、以下の条件を用いて、各組成物中のカーボンブラックの定量分析を実施した。(実施例1) 沸点130付近の酢酸ブチル(沸点127°C)を有機溶剤に使用し、模擬組成物1、模擬組成物2を作製し、カーボンブラックの仕込み値を変えたときの定量値の正確さを調査した。 模擬組成物1を20mlのガラス瓶に採取して蓋をし、METTLER社製のAB−204−S型の電子天秤で試料量を秤量した。 引き続き、秤量した模擬組成物1の入ったガラス瓶の蓋を外して、100mlのビーカーに移入し、ビーカーの上部を時計皿で蓋をした状態で真空デシケータ内に移し、日立製作所製のUSW−20型の真空ポンプを用いて、3時間、減圧乾燥し、模擬試料1中の有機溶剤を完全に揮散除去した後、得られた乾燥物を上記電子天秤で秤量した。 更に前記乾燥物および模擬組成物1に含有する分散剤単体を、それぞれ、1mg錫箔コンテナに採取して、Sartorius社製のマイクロ天秤で秤量したのち、下記の表2に示す条件を用いて、ThemoFinnigan社製のFlashEA1112型の有機元素分析装置で前記乾燥物中の炭素と水素を分析し、上記式1〜式3を用いて模擬組成物1中のカーボンブラックの定量値を算出した。 同様に、模擬組成物2についても上記操作を行い、定量分析を行った。有機元素分析を行い、上記式1〜式3を用いて得られたカーボンブラックの定量分析結果を下記の表3に示す。(実施例2)分散剤に、表1に示す窒素系と硫黄系の2成分の分散剤使用した模擬組成物3を作製し、定量値の正確さを調査した。 模擬組成物3を20mlのガラス瓶に採取して蓋をし、METTLER社製のAB−204−S型の電子天秤で試料量を秤量した。 引き続き、秤量した模擬組成物3の入ったガラス瓶の蓋を外して、100mlのビーカーに移入し、ビーカーの上部を時計皿で蓋をした状態で真空デシケータ内に移入し、日立製作所製のUSW−20型の真空ポンプを用いて、3時間、減圧乾燥し、模擬試料1中の有機溶剤を完全に揮散除去した後、得られた乾燥物を上記電子天秤で秤量した。更に前記乾燥物、模擬組成物3に含有する窒素系分散剤および硫黄系分散剤単体を、それぞれ、1mg錫箔コンテナに採取して、Sartorius社製のマイクロ天秤で秤量したのち、表2に示す条件を用いて、ThemoFinnigan社製のFlashEA1112型の有機元素分析装置で炭素、窒素および硫黄を分析し、上記式4〜式7を用いて模擬組成物3中のカーボンブラックの定量値を算出した。その結果を表3に示す。(比較例) 従来法のカーボンブラックの定量値の精確さを調査するため、模擬組成物1を減圧乾燥したものを10mg採取したのち、下記の表4に示す条件で熱重量分析法による定量分析を実施した。その結果を下記の表5に示す。「評価」 表3は、各模擬組成物中のカーボンブラックの定量結果である。各組成物のRSD値から、各模擬組成物の定量精度は1%以下であり、また、各組成物のカーボンブラックの平均値と各組成物の仕込み値とが良く一致しており、良好な結果が得られた。したがって、本発明のカーボンブラックの定量方法は、極めて精確な定量方法であることが分かる。 表5は、従来法で模擬組成物1中のカーボンブラックを定量した結果である。模擬組成物1のRSD値が1.47%であり、従来法の定量精度は、本発明のカーボンブラックの定量精度よりも悪いことが分かった。また、模擬組成物1の仕込み値(9.00wt%)に対して、実測値が(平均値:9.92wt%)であり、仕込み値よりも1割程度、高めの値を示すことが分かった。これは、分散剤の熱分解条件では、分散剤が完全に分解せずにカーボンブラックと一緒に残存しているため、高めの値を示したと考えられる。したがって、従来法では、上記組成物を精確に定量することが困難であることが分かる。 カーボンブラックと分散剤と有機溶剤を含む組成物のカーボンブラックの定量方法において、カーボンブラックと分散剤と有機溶剤を含む組成物の重量を秤量(W1)したのち、秤量した当該組成物を減圧乾燥して、当該組成物中の有機溶剤を揮散除去し、得られた乾燥物の重量を秤量(W2)し、秤量した乾燥物と、当該組成物に使用されている分散剤単体を有機元素分析法で、当該乾燥物中の炭素(C1)および水素(H1)ならびに分散剤単体の炭素(C2)および水素(H2)の含有率(wt)をそれぞれ算出し、下記の式1によって、当該乾燥物中の分散剤由来の炭素(C3)の含有率を算出し、下記の式2によって、当該乾燥物中のカーボンブラック由来の炭素(C4)の含有率を算出し、下記の式3によって、当該組成物中のカーボンブラックの含有率(C5)を算出する、 式1:C3=C2×(H1/H2) 式2:C4=C1−C3 式3:C5=(W2×C4/100)×100/W1 ことを特徴とするカーボンブラックの定量方法。 分散剤が、1成分からなることを特徴とする請求項1に記載のカーボンブラックの定量方法。 カーボンブラックと分散剤と有機溶剤を含む組成物のカーボンブラックの定量方法において、分散剤が、分散剤1と分散剤2の2成分からなり、分散剤1が炭素と水素と窒素からなる分散剤であり、分散剤2が炭素と水素と硫黄からなる分散剤であって、カーボンブラックと前記分散剤2成分と有機溶剤を含む組成物の重量を秤量(W3)したのち、秤量した当該組成物を減圧乾燥して、当該組成物中の有機溶剤を揮散除去し、得られた乾燥物の重量を秤量(W4)し、秤量した当該乾燥物と、当該組成物に使用されている分散剤単体を有機元素分析法で、当該乾燥物中の炭素(C6)と窒素(N1)と硫黄(S1)ならびに分散剤1の炭素(C7)と窒素(N2)および分散剤2の炭素(C8)と硫黄(S2)の含有率(wt)をそれぞれ算出し、下記の式4によって、当該乾燥物中の分散剤1由来の炭素(C9)の含有率を算出し、下記の式5によって、当該乾燥物中の分散剤2由来の炭素(C10)の含有率を算出し、下記の式6によって、当該乾燥物中のカーボンブラック由来の炭素(C11)の含有率を算出し、下記の式7によって、当該組成物中のカーボンブラックの含有率(C12)を算出する、 式4:C9=C7×(N1/N2) 式5:C10=C8×(S1/S2) 式6:C11=C6−(C9+C10) 式7:C12=(W4×C11/100)×100/W3ことを特徴とするカーボンブラックの定量方法。 試料採取容器が、密閉容器であることを特徴とする請求項1または請求項3に記載のカーボンブラックの定量方法。 有機元素分析法が、燃焼部とガスクロマトグラフ部からなる有機元素分析法であることを特徴とする請求項1または請求項3に記載のカーボンブラックの定量方法。 有機溶剤の沸点が130°C以下であることを特徴とする請求項1または請求項3に記載のカーボンブラックの定量方法。 【課題】カーボンブラックと分散剤と有機溶剤を含む組成物中のカーボンブラックの定量について、精確な分析値を得ることができる定量分析法を提供する。【解決手段】カーボンブラックと分散剤と有機溶剤を含む組成物のカーボンブラックの定量方法として、カーボンブラックと分散剤と有機溶剤を含む組成物の重量を秤量(W1)したのち、秤量した当該組成物を減圧乾燥して、当該組成物中の有機溶剤を揮散除去し、得られた乾燥物の重量を秤量(W2)し、秤量した乾燥物と、当該組成物に使用されている分散剤単体を有機元素分析法で、当該乾燥物中の炭素(C1)および水素(H1)ならびに分散剤単体の炭素(C2)および水素(H2)の含有率(wt)をそれぞれ算出し、当該乾燥物中の分散剤由来の炭素(C3)の含有率、当該乾燥物中のカーボンブラック由来の炭素(C4)の含有率を算出して、これらをもとにカーボンブラックの含有率(C5)を算出する。【選択図】 なし