生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_ロイコ色素の安定化方法
出願番号:2006201859
年次:2007
IPC分類:C12Q 1/37,G01N 33/72,C12Q 1/28


特許情報キャッシュ

谷口 由利子 西尾 朋久 牛澤 幸司 JP 2007029094 公開特許公報(A) 20070208 2006201859 20060725 ロイコ色素の安定化方法 第一化学薬品株式会社 390037327 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 的場 ひろみ 100101317 守屋 嘉高 100121153 大野 詩木 100134935 松田 政広 100130683 野中 信宏 100140497 谷口 由利子 西尾 朋久 牛澤 幸司 US 60/702,630 20050727 C12Q 1/37 20060101AFI20070112BHJP G01N 33/72 20060101ALI20070112BHJP C12Q 1/28 20060101ALI20070112BHJP JPC12Q1/37G01N33/72 AC12Q1/28 12 OL 11 2G045 4B063 2G045BB29 2G045BB39 2G045BB51 2G045BB54 2G045DA48 2G045DB21 2G045FB01 2G045FB11 4B063QA01 4B063QQ03 4B063QR02 4B063QR16 4B063QR66 4B063QS26 4B063QS28 4B063QX01 本発明は、生体中の微量成分測定に使用するロイコ色素の安定化方法、及び安定化試薬に関するものである。 血液や尿などに含まれる生体成分の測定は、その変動が疾病と大きく関連しているため、疾患の診断、病態の解明、治療経過の判定を行う上で必須なものとなっている。例えば、血液中のコレステロール、トリグリセライド、グルコース、尿酸、リン脂質、胆汁酸、モノアミンオキシダーゼ等をはじめ、非常に多種類の微量成分の測定法が開発され、疾病の診断に役立っている。 現在、血清成分の測定法としては、目的成分に特異的に作用する酵素を作用させ、この生成物を測定して目的成分量を求める酵素法が広く普及している。なかでも、目的成分に特異的に作用する酸化酵素を作用させて過酸化水素を生成させ、これをパーオキシダーゼ(POD)及び発色成分である被酸化性呈色試薬を用いて発色系に導き、その呈色を比色定量することにより目的成分量を求める方法が一般的である。この方法で用いられる被酸化性呈色試薬としては、例えば、PODの存在下で4-アミノアンチピリン(4-AA)、3-メチル-2-ベンゾチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)等のカップラーとフェノール系、アニリン系又はトルイジン系の色原体との酸化縮合により色素を生成するトリンダー試薬類が知られている。しかし、このような被酸化性呈色試薬を用いる発色系は、微量成分の定量においては感度が低く、また吸収極大が短波長域にあるため測定試料中のヘモクロビンやビリルビン等の影響を受け易いという欠点がある。近年、このような欠点を解消する被酸化性呈色試薬として、PODの存在下で直接酸化呈色するトリフェニルメタン系等のロイコ色素を用いる方法が数多く報告されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。これらのトリフェニルメタン系等のロイコ色素は測定感度が非常に高く、微量成分の定量に好適であり、用いられる緩衝剤もリン酸塩やグッド緩衝液等が使用可能であることが開示されている(特許文献2)。 しかしながら、ロイコ色素は溶液中で保存安定性が充分ではなく保存中に徐々に着色してくるという問題がある。この問題に対処するため、トリフェニルメタン系のロイコ色素であるN,N,N',N',N''N''-ヘキサ-3-スルホプロピル-4,4',4''-トリアミノトリフェニルメタン(TPM-PS:同仁化学社製)をグッド緩衝液等により安定化し、非特異的発色を防止する安定化方法も報告されている(特許文献3)が、実際、実用に供する期間への適用は難しく、現に実用化された例はいまだ知られておらず、溶液状態で保存中に生じる経時的な非特異的発色が問題として残っていた。特開昭60−184400号公報特開平3−206896号公報特開2005−110507号公報 従って、本発明は、被酸化性呈色試薬、特にロイコ色素の保存安定化方法、及びその安定化試薬を提供することにある。 本発明者らは、かかる実情に鑑み鋭意研究を行った結果、ロイコ色素をpH6付近の溶液中、プロテアーゼ蛋白共存下で保存することにより、長期間にわたって安定に保存できることを見出し、本発明を完成させた。 すなわち、本発明は、ロイコ色素を溶液中でプロテアーゼ蛋白共存下にて保存することを特徴とするロイコ色素の安定化方法を提供するものである。 また、本発明は、少なくともプロテアーゼ蛋白を含むロイコ色素溶液を提供するものである。 また、本発明は、プロテアーゼ蛋白をロイコ色素の安定化剤として使用する方法を提供するものである。 さらに本発明は、次の工程を含むヘモグロビンAlc(HbA1c)を測定する方法を提供するものである。a.界面活性剤を用いて血球を溶血させる工程、b.ロイコ色素と共存するプロテアーゼによって、ヘモグロビンA1cよりβ鎖アミノ基末端のフルクトシルアミノ酸、あるいはフルクトシルジペプチドを切り出す工程、c.該フルクトシルアミノ酸、あるいは該フルクトシルジペプチドに特異的な酸化酵素を作用させて過酸化水素を発生させる工程、d.パーオキシダーゼの存在下で該過酸化水素によりロイコ色素を酸化して発色させる工程。 さらに本発明は、次の工程を含むヘモグロビンAlcを測定する方法に使用する試薬を提供するものである。a.界面活性剤を用いて血球を溶血させる工程、b.ロイコ色素と共存するプロテアーゼによって、ヘモグロビンA1cよりβ鎖アミノ基末端のフルクトシルアミノ酸、あるいはフルクトシルジペプチドを切り出す工程、c.該フルクトシルアミノ酸、あるいは該フルクトシルジペプチドに特異的な酸化酵素を作用させて過酸化水素を発生させる工程、d.パーオキシダーゼの存在下で該過酸化水素によりロイコ色素を酸化して発色させる工程。 本発明の安定化方法によれば、ロイコ色素を溶液中で長期間安定に保存することができる。また、本発明のロイコ色素溶液を用いると、生体試料中の微量成分、特にヘモグロビンAlcを高感度で測定することができ、本発明のロイコ色素溶液は臨床検査の分野において極めて有用である。 本発明のロイコ色素溶液は、ロイコ色素を発色成分として用いる酸化性物質の定量方法において、共存させるプロテアーゼ蛋白により、実質的な不都合を生じないものであれば、如何なるものにも使用できる。当該酸化性物質としては、例えば過酸化水素が挙げられる。本発明のロイコ色素溶液は、基質又は酵素反応により生成した物質に酸化酵素を作用させ、生成する過酸化水素を定量することにより行う生体試料中の微量成分の測定に特に有用である。 生体試料中の微量成分としては、酵素反応により過酸化水素を生成する系に導くことが可能な生体成分は全て該当する。例えば、糖化蛋白質、糖化ペプチド、糖化アミノ酸、コレステロール、グルコース、グリセリン、トリグリセライド、遊離脂肪酸、尿酸、リン脂質、シアル酸、胆汁酸、ピルビン酸、無機リン、クレアチニン、クレアチン、GOT、GPT、モノアミンオキシダーゼ、グアナーゼ、コリンエステラーゼ、D,L-アミノ酸等が挙げられる。糖化蛋白質としては、糖化ヘモグロビンが好適であり、中でもヘモグロビンA1cが好適である。 本発明におけるロイコ色素としては、例えば、トリフェニルメタン系ロイコ色素などが挙げられる。トリフェニルメタン系ロイコ色素としては、特開平3−206896号公報、特開平6−197795号公報等に記載の水溶性の高い化合物が使用できる。これらの中で、N,N,N',N',N'',N''-ヘキサ-3-スルホプロピル-4,4',4''-トリアミノトリフェニルメタン(TPM-PS:同仁化学社製)等が好ましい。 共存させるプロテアーゼとしては、バチルス属、アスペルギルス属、ストレプトマイセス属等の微生物由来のものが好適に挙げられる。その他、セリンプロテアーゼ、例えばキモトリプシンも好ましい。その中でも、本発明のロイコ色素をヘモグロビンA1cの測定に適用する場合のプロテアーゼとしては、ヘモグロビンA1cのβ鎖アミノ基末端のフルクトシル化されたアミノ酸であるフルクトシルバリンあるいはジペプチドであるフルクトシルバリルヒスチジンを切り出すものが好適であり、その例としては、バチルス属由来の酵素であればズブチリシン(Subtilisin)[市販品の例としてはプロチンPC10F(Bacillus subtilis由来、大和化成社製)、プロチンNC25(Bacillus subtilis由来、大和化成社製))等]が、アスペルギルス属由来の酵素であればアスペルギロペプシンI(Aspergillopepsin I)[市販品の例としてはモルシン(Aspergillus saitoi由来、キッコーマン社製)等]、プロテアーゼtypeXXIII(Aspergillus oryzae由来、シグマ社製)が、ストレプトマイセス属由来の酵素であればマイコリシン(Mycolysin)[市販品の例としてはアクチナーゼAS、アクチナーゼAF、アクチナーゼE(いずれもStreptomyces griseus由来、科研製薬社製)、プロテアーゼType-XIV(Streptomyces griseus由来、シグマ社製)等]が挙げられる。また、微生物由来のプロテアーゼだけでなく、キモトリプシン等にもロイコ色素の安定化効果が認められる。更に、プロテアーゼは、そのまま共存させても良いが、不活性化処理したものを共存させても良い。不活性化処理の方法は、一般的な酵素活性の不活性化処理を用いればよいが、簡便な方法としては、蛋白が凝固しないような70℃で10〜20分程度の加熱処理をすればよい。 本発明のロイコ色素をHbA1cの測定に適用する場合、使用するプロテアーゼ蛋白の濃度としては、前記β鎖アミノ末端のフルクトシルバリン、或いはフルクトシルバリルヒスチジンの切り出しに使用する酵素濃度であれば特に制限はないが、それぞれの比活性などを考慮し、ロイコ色素の濃度に合わせて設定することが可能である。例えば、0.001〜10mg/mL、好ましくは0.01〜10mg/mLに設定できる。より具体的には例えば、ロイコ色素として25μMのTPM-PS、プロテアーゼとしてプロチンPC10Fを使用する場合には、0.01〜10mg/mLが好ましく、0.05〜5mg/mLがより好ましい。 緩衝液は、pHを5〜7付近に維持可能なものであればいずれも使用でき、硫酸、リン酸等の無機酸、グリシン、フタル酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、シュウ酸、酒石酸、酢酸、乳酸等の有機酸、グッド緩衝液類が使用できる。緩衝液の濃度は特に制限されないが、0.1〜1000mMが好ましく、特に5〜500mMが好ましい。またpHは、5〜7であればよいが、特にpH6付近が好ましい。 ロイコ色素液中のロイコ色素の濃度は、その発色感度を考量して適宜決定すればよいが、0.001〜10mM、好ましくは、0.01〜1mM、特に0.05〜0.5mMが好ましい。 本発明のロイコ色素溶液には、他に陰イオン性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤;血液中の夾雑成分を処理する酵素;反応調整剤;安定化剤;アルブミン等の蛋白質類;塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、フェロシアン化カリウム等の塩;リジン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸、ペプチド、ポリアミノ酸類;還元性物質の影響回避のためのテトラゾリウム塩;抗生物質、アジ化ナトリウム、ホウ酸等の防腐剤;陽イオン性界面活性剤等も添加できる。これらの使用量は、ロイコ色素を用いる公知の酵素的定量法に準じて適宜選択すればよい。 本発明のロイコ色素溶液は、ガラスビン、プラスチック容器等への充填の形態で提供することができるが、これらの容器を遮光することがより望ましい。 次に、上記の如く安定化されたロイコ色素溶液を用いた、ヘモグロビンAlcの測定法について説明する。ヘモグロビンAlcの測定は、次の工程を含む方法である。a.界面活性剤を用いて血球を溶血させる工程、b.ロイコ色素と共存するプロテアーゼによって、ヘモグロビンA1cよりβ鎖アミノ基末端のフルクトシルアミノ酸、あるいはフルクトシルジペプチドを切り出す工程、c.該フルクトシルアミノ酸、あるいは該フルクトシルジペプチドに特異的な酸化酵素を作用させて過酸化水素を発生させる工程、d.パーオキシダーゼの存在下で該過酸化水素によりロイコ色素を酸化して発色させる工程。 工程aは、界面活性剤を用いて血球を溶血させる工程である。ここで血球としては、赤血球が挙げられる。界面活性剤としては、ポリオキシエチレン構造を有する非イオン系界面活性剤又はポリオキシエチレン構造を有する陰イオン系界面活性剤が好ましい。非イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン縮合物類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン多環型界面活性剤等が挙げられ、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類が好ましい。陰イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸類、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸塩類等が挙げられ、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩類又はアルキルスルホコハク酸類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩類が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩類が特に好ましい。 界面活性剤の使用量は、反応液中、0.0001〜10質量%が好ましく、特に0.001〜10質量%が好ましい。 工程bは、ロイコ色素と共存するプロテアーゼによって、ヘモグロビンA1cよりβ鎖アミノ基末端のフルクトシルアミノ酸(つまりフルクトシルバリン)、あるいはフルクトシルジペプチド(つまりフルクトシルバリルヒスチジン)を切り出す工程である。ここで、ロイコ色素及びプロテアーゼは前記のものが使用できる。反応条件は、工程c,dを行うのに必要な量のフルクトシルアミノ酸、あるいはフルクトシルジペプチドをヘモグロビンA1cのβ鎖アミノ基末端より切り出すことができる条件を適宜選択することができる。好適な反応条件の一つとして、37℃、5分間を例示することができる。 工程cは、該フルクトシルアミノ酸、あるいは該フルクトシルジペプチドに特異的な酸化酵素を作用させて過酸化水素を発生させる工程である。ここで、用いられる酸化酵素としては、過酸化水素生成オキシダーゼ、すなわち、フルクトシルペプチド等の糖化ペプチド又はフルクトシルアミノ酸等の糖化アミノ酸を代謝できるものであれば特に制限されず、微生物由来、動物由来、植物由来等のいずれでもよく、また該微生物の遺伝子組み換えによって産生されるものでもよい。また、化学修飾の有無も問わない。具体的には、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(特開2003−79386号公報及び国際公開第97/20039号パンフレット)、ケトアミンオキシダーゼ(特開平5−192193号公報)、フルクトシルペプチドオキシダーゼ(特開2001−95598号公報及び特開2003−235585号公報)等が挙げられ、フルクトシルペプチドオキシダーゼが特に好ましい。フルクトシルペプチドオキシダーゼとしては、コリネバクテリウム属菌の産生するフルクトシルアミノ酸オキシダ−ゼを改変した酵素(特開2001−95598号公報)、糸状菌由来のフルクトシルペプチドオキシダーゼ(特開2003−235585号公報)等が挙げられる。FPOX−CE又はFPOX−EE(ともにキッコーマン社製)が特に好適である。これらの過酸化水素生成オキシダーゼは、溶液状態でも乾燥状態でもよく、不溶性担体に保持又は結合されていてもよく、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。 過酸化水素生成オキシダーゼの使用量は、酵素の種類にもよるが、0.001〜1000単位/mLが好ましく、特に0.1〜500単位/mLが好ましい。作用させるときのpHは、使用する酵素の至適pHを考慮し、pH4〜9となるように緩衝液を用いて調整する。作用温度は、通常の酵素反応に用いられる温度であり、10〜40℃が好ましい。緩衝液としては前記記載のものを使用することができる。緩衝液の濃度も特に制限されないが、0.00001〜2mol/Lが好ましく、0.001〜1mol/Lが特に好ましい。 上記オキシダーゼは、必要に応じて、他の酵素、補酵素等と組み合わせて使用することができる。他の酵素としては、ジアホラーゼ又はフルクトシルバリンを基質としないアミノ酸代謝酵素などが挙げられ、アスコルビン酸オキシダーゼ、ビリルビンオキシダーゼ等の血液中の夾雑成分を処理するための酵素も使用できる。補酵素としては、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド還元型(NADH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド還元型リン酸(NADPH)、チオNAD、チオNADP等が挙げられる。 工程dは、パーオキシダーゼの存在下で該過酸化水素によりロイコ色素を酸化して発色させる工程である。 パーオキシダーゼは、西洋ワサビ、微生物等由来のものを0.01〜100単位/mLの濃度で使用することが好ましい。 過酸化水素は、パーオキシダーゼとロイコ色素を用いる酵素的方法によって、短時間にかつ簡便に測定できる。過酸化水素の測定は、通常、過酸化水素生成オキシダーゼを作用させて過酸化水素を発生させる工程に連続して行われるが、過酸化水素の測定溶液は、前記記載の緩衝液を用いてpH5〜8に調整することが好ましい。発色の程度(吸光度変化量)は、分光光度計により測定し、標準とする濃度既知のフルクトシルジペプチド、フルクトシルアミノ酸等の吸光度と比較して、試料中のヘモグロビンAlcを測定することができる。測定には、通常の自動分析装置を用いることができる。 以下実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。[実施例1] TPM-PSの安定化 100μMのTPM-PSを含む PIPES緩衝液(pH6.0)に、表1に示した種々のプロテアーゼ蛋白を共存させ、37℃で保存し、日立7150形自動分析装置を用いて、波長600nmにおける吸光度を比較測定した。表1に、0時間後、1週間保存後の吸光度を示す。 尚、不活性化処理とは、使用前に70℃で4時間加温処理したことを意味する。 表1から明らかなように、TPM-PSは、pH6付近の溶液中でプロチンを添加しないものと比較して添加することで非特異的な発色が約1/2に抑制され、安定であることが分かった。また、不活性化処理したプロチンにおいても非特異的な発色が抑制され、安定であることが分かった。 同様にProteaseTypeXXIIIを用いた場合も、非特異的な発色が抑制され、安定であることが分かった。 不活性化処理したアクチナーゼEでも非特異的な発色が抑制され、安定であることが分かった。[実施例2] HbA1c濃度の測定<溶血試薬> 2% エマール20C(花王社製)<試薬(1)> 50mM PIPES液(pH6) 2mM 塩化カルシウム 1.5mg/mL プロチンPC10F 25μM TPM-PS(同仁化学社製)<試薬(2)> 50mM クエン酸緩衝液(pH6) 10単位/mL POD(東洋紡社製) 6単位/mL FPOX-CE(キッコーマン社製)(1)溶血試料の調製 ヒト血球試料30例を用いて、各血球試料12μLに各溶血試薬450μLを加え溶血試料を調製した。(2)測定 溶血試料15μLに試薬(1)180μLを加え37℃で5分間加温後、主波長600nm、副波長700nmの吸光度差を測定しヘモグロビン濃度に依存した測定値(samp Hb)を求めた。更に、この反応液に試薬(2)60μLを加え、37℃で5分反応させた。主波長600nm、副波長700nmの吸光度差の変化量を測定し、HbA1c濃度に依存した測定値(samp A1)を求め、これらとHbA1c濃度(%)既知試料を用いて同様に操作した場合のヘモグロビン濃度に依存した測定値(std Hb)とHbA1c濃度に依存した測定値(std A1)から、下記式によりHbA1c値(%)を算出した。測定は日立7170型自動分析装置を用いた。 HbA1c(%)=std HbA1×(std Hb/std A1)×(samp A1/samp Hb)(std HbA1;HbA1c濃度既知試料のHbA1c(%)値) 免疫学的測定方法に基づく市販キット「デタミナーHbA1c」(協和メデックス社製)により測定したHbA1c値(%)(参照例)(表2)との相関性を図1に示した。なお参照例の値は、下記計算式により、JDS(%)値からIFCC値に換算したもので表示した。 計算式 IFCC値(%)=1.0681x-1.7407(糖尿病;46(9),2002より)参照例(市販キット使用)と実施例2によるHbA1c値(%)の相関性を示す図である。 ロイコ色素を溶液中でプロテアーゼ蛋白共存下にて保存することを特徴とするロイコ色素の安定化方法。 ロイコ色素が、トリフェニルメタン系ロイコ色素である請求項1記載の方法。 ロイコ色素が、N,N,N',N',N'',N''-ヘキサ-3-スルホプロピル-4,4',4''-トリアミノトリフェニルメタンである請求項2記載の方法。 プロテアーゼ蛋白が、バチルス属由来の酵素、アスペルギルス属由来の酵素及びストレプトマイセス属由来の酵素から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の方法。 バチルス属由来の酵素が、ズブチリシンである請求項4項記載の方法。 アスペルギルス属由来の酵素が、アスペルギロペプシンI又はプロテアーゼtypeXXIIIである請求項4記載の方法。 ストレプトマイセス属由来の酵素が、マイコリシンである請求項4項記載の方法。 少なくともプロテアーゼ蛋白を含むロイコ色素溶液。 請求項8記載のロイコ色素溶液を構成試薬として含む過酸化水素測定用試薬キット。 プロテアーゼ蛋白をロイコ色素の安定化剤として使用する方法。 次の工程を含むヘモグロビンA1cを測定する方法:a.界面活性剤を用いて血球を溶血させる工程、b.ロイコ色素と共存するプロテアーゼによって、ヘモグロビンA1cよりβ鎖アミノ基末端のフルクトシルアミノ酸、あるいはフルクトシルジペプチドを切り出す工程、c.該フルクトシルアミノ酸、あるいは該フルクトシルジペプチドに特異的な酸化酵素を作用させて過酸化水素を発生させる工程、d.パーオキシダーゼの存在下で該過酸化水素によりロイコ色素を酸化して発色させる工程。 次の工程を含むヘモグロビンA1cを測定する方法に使用するための試薬:a.界面活性剤を用いて血球を溶血させる工程、b.ロイコ色素と共存するプロテアーゼによって、ヘモグロビンA1cよりβ鎖アミノ基末端のフルクトシルアミノ酸、あるいはフルクトシルジペプチドを切り出す工程、c.該フルクトシルアミノ酸、あるいは該フルクトシルジペプチドに特異的な酸化酵素を作用させて過酸化水素を発生させる工程、d.パーオキシダーゼの存在下で該過酸化水素によりロイコ色素を酸化して発色させる工程。 【課題】ロイコ色素の安定化方法の提供。【解決手段】ロイコ色素を溶液中でプロテアーゼ蛋白共存下にて保存することを特徴とするロイコ色素の安定化方法。【選択図】なし


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特許公報(B2)_ロイコ色素の安定化方法

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タイトル:特許公報(B2)_ロイコ色素の安定化方法
出願番号:2006201859
年次:2012
IPC分類:C09B 67/00,C12Q 1/37,C12Q 1/28


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谷口 由利子 西尾 朋久 牛澤 幸司 JP 4889396 特許公報(B2) 20111222 2006201859 20060725 ロイコ色素の安定化方法 積水メディカル株式会社 390037327 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 的場 ひろみ 100101317 守屋 嘉高 100121153 大野 詩木 100134935 松田 政広 100130683 野中 信宏 100140497 谷口 由利子 西尾 朋久 牛澤 幸司 US 60/702,630 20050727 20120307 C09B 67/00 20060101AFI20120216BHJP C12Q 1/37 20060101ALN20120216BHJP C12Q 1/28 20060101ALN20120216BHJP JPC09B67/00 LC12Q1/37C12Q1/28 C12Q 1/00−3/00 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) PubMed CAplus/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) 国際公開第2002/021142(WO,A1) 特開2005−110507(JP,A) 国際公開第03/033601(WO,A1) 国際公開第2005/049857(WO,A1) 6 2007029094 20070208 10 20090408 高山 敏充 本発明は、生体中の微量成分測定に使用するロイコ色素の安定化方法、及び安定化試薬に関するものである。 血液や尿などに含まれる生体成分の測定は、その変動が疾病と大きく関連しているため、疾患の診断、病態の解明、治療経過の判定を行う上で必須なものとなっている。例えば、血液中のコレステロール、トリグリセライド、グルコース、尿酸、リン脂質、胆汁酸、モノアミンオキシダーゼ等をはじめ、非常に多種類の微量成分の測定法が開発され、疾病の診断に役立っている。 現在、血清成分の測定法としては、目的成分に特異的に作用する酵素を作用させ、この生成物を測定して目的成分量を求める酵素法が広く普及している。なかでも、目的成分に特異的に作用する酸化酵素を作用させて過酸化水素を生成させ、これをパーオキシダーゼ(POD)及び発色成分である被酸化性呈色試薬を用いて発色系に導き、その呈色を比色定量することにより目的成分量を求める方法が一般的である。この方法で用いられる被酸化性呈色試薬としては、例えば、PODの存在下で4-アミノアンチピリン(4-AA)、3-メチル-2-ベンゾチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)等のカップラーとフェノール系、アニリン系又はトルイジン系の色原体との酸化縮合により色素を生成するトリンダー試薬類が知られている。しかし、このような被酸化性呈色試薬を用いる発色系は、微量成分の定量においては感度が低く、また吸収極大が短波長域にあるため測定試料中のヘモクロビンやビリルビン等の影響を受け易いという欠点がある。近年、このような欠点を解消する被酸化性呈色試薬として、PODの存在下で直接酸化呈色するトリフェニルメタン系等のロイコ色素を用いる方法が数多く報告されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。これらのトリフェニルメタン系等のロイコ色素は測定感度が非常に高く、微量成分の定量に好適であり、用いられる緩衝剤もリン酸塩やグッド緩衝液等が使用可能であることが開示されている(特許文献2)。 しかしながら、ロイコ色素は溶液中で保存安定性が充分ではなく保存中に徐々に着色してくるという問題がある。この問題に対処するため、トリフェニルメタン系のロイコ色素であるN,N,N',N',N''N''-ヘキサ-3-スルホプロピル-4,4',4''-トリアミノトリフェニルメタン(TPM-PS:同仁化学社製)をグッド緩衝液等により安定化し、非特異的発色を防止する安定化方法も報告されている(特許文献3)が、実際、実用に供する期間への適用は難しく、現に実用化された例はいまだ知られておらず、溶液状態で保存中に生じる経時的な非特異的発色が問題として残っていた。特開昭60−184400号公報特開平3−206896号公報特開2005−110507号公報 従って、本発明は、被酸化性呈色試薬、特にロイコ色素の保存安定化方法、及びその安定化試薬を提供することにある。 本発明者らは、かかる実情に鑑み鋭意研究を行った結果、ロイコ色素をpH6付近の溶液中、プロテアーゼ蛋白共存下で保存することにより、長期間にわたって安定に保存できることを見出し、本発明を完成させた。 すなわち、本発明は、ロイコ色素を溶液中でプロテアーゼ蛋白共存下にて保存することを特徴とするロイコ色素の安定化方法を提供するものである。 また、本発明は、少なくともプロテアーゼ蛋白を含むロイコ色素溶液を提供するものである。 また、本発明は、プロテアーゼ蛋白をロイコ色素の安定化剤として使用する方法を提供するものである。 さらに本発明は、次の工程を含むヘモグロビンAlc(HbA1c)を測定する方法を提供するものである。a.界面活性剤を用いて血球を溶血させる工程、b.ロイコ色素と共存するプロテアーゼによって、ヘモグロビンA1cよりβ鎖アミノ基末端のフルクトシルアミノ酸、あるいはフルクトシルジペプチドを切り出す工程、c.該フルクトシルアミノ酸、あるいは該フルクトシルジペプチドに特異的な酸化酵素を作用させて過酸化水素を発生させる工程、d.パーオキシダーゼの存在下で該過酸化水素によりロイコ色素を酸化して発色させる工程。 さらに本発明は、次の工程を含むヘモグロビンAlcを測定する方法に使用する試薬を提供するものである。a.界面活性剤を用いて血球を溶血させる工程、b.ロイコ色素と共存するプロテアーゼによって、ヘモグロビンA1cよりβ鎖アミノ基末端のフルクトシルアミノ酸、あるいはフルクトシルジペプチドを切り出す工程、c.該フルクトシルアミノ酸、あるいは該フルクトシルジペプチドに特異的な酸化酵素を作用させて過酸化水素を発生させる工程、d.パーオキシダーゼの存在下で該過酸化水素によりロイコ色素を酸化して発色させる工程。 本発明の安定化方法によれば、ロイコ色素を溶液中で長期間安定に保存することができる。また、本発明のロイコ色素溶液を用いると、生体試料中の微量成分、特にヘモグロビンAlcを高感度で測定することができ、本発明のロイコ色素溶液は臨床検査の分野において極めて有用である。 本発明のロイコ色素溶液は、ロイコ色素を発色成分として用いる酸化性物質の定量方法において、共存させるプロテアーゼ蛋白により、実質的な不都合を生じないものであれば、如何なるものにも使用できる。当該酸化性物質としては、例えば過酸化水素が挙げられる。本発明のロイコ色素溶液は、基質又は酵素反応により生成した物質に酸化酵素を作用させ、生成する過酸化水素を定量することにより行う生体試料中の微量成分の測定に特に有用である。 生体試料中の微量成分としては、酵素反応により過酸化水素を生成する系に導くことが可能な生体成分は全て該当する。例えば、糖化蛋白質、糖化ペプチド、糖化アミノ酸、コレステロール、グルコース、グリセリン、トリグリセライド、遊離脂肪酸、尿酸、リン脂質、シアル酸、胆汁酸、ピルビン酸、無機リン、クレアチニン、クレアチン、GOT、GPT、モノアミンオキシダーゼ、グアナーゼ、コリンエステラーゼ、D,L-アミノ酸等が挙げられる。糖化蛋白質としては、糖化ヘモグロビンが好適であり、中でもヘモグロビンA1cが好適である。 本発明におけるロイコ色素としては、例えば、トリフェニルメタン系ロイコ色素などが挙げられる。トリフェニルメタン系ロイコ色素としては、特開平3−206896号公報、特開平6−197795号公報等に記載の水溶性の高い化合物が使用できる。これらの中で、N,N,N',N',N'',N''-ヘキサ-3-スルホプロピル-4,4',4''-トリアミノトリフェニルメタン(TPM-PS:同仁化学社製)等が好ましい。 共存させるプロテアーゼとしては、バチルス属、アスペルギルス属、ストレプトマイセス属等の微生物由来のものが好適に挙げられる。その他、セリンプロテアーゼ、例えばキモトリプシンも好ましい。その中でも、本発明のロイコ色素をヘモグロビンA1cの測定に適用する場合のプロテアーゼとしては、ヘモグロビンA1cのβ鎖アミノ基末端のフルクトシル化されたアミノ酸であるフルクトシルバリンあるいはジペプチドであるフルクトシルバリルヒスチジンを切り出すものが好適であり、その例としては、バチルス属由来の酵素であればズブチリシン(Subtilisin)[市販品の例としてはプロチンPC10F(Bacillus subtilis由来、大和化成社製)、プロチンNC25(Bacillus subtilis由来、大和化成社製))等]が、アスペルギルス属由来の酵素であればアスペルギロペプシンI(Aspergillopepsin I)[市販品の例としてはモルシン(Aspergillus saitoi由来、キッコーマン社製)等]、プロテアーゼtypeXXIII(Aspergillus oryzae由来、シグマ社製)が、ストレプトマイセス属由来の酵素であればマイコリシン(Mycolysin)[市販品の例としてはアクチナーゼAS、アクチナーゼAF、アクチナーゼE(いずれもStreptomyces griseus由来、科研製薬社製)、プロテアーゼType-XIV(Streptomyces griseus由来、シグマ社製)等]が挙げられる。また、微生物由来のプロテアーゼだけでなく、キモトリプシン等にもロイコ色素の安定化効果が認められる。更に、プロテアーゼは、そのまま共存させても良いが、不活性化処理したものを共存させても良い。不活性化処理の方法は、一般的な酵素活性の不活性化処理を用いればよいが、簡便な方法としては、蛋白が凝固しないような70℃で10〜20分程度の加熱処理をすればよい。 本発明のロイコ色素をHbA1cの測定に適用する場合、使用するプロテアーゼ蛋白の濃度としては、前記β鎖アミノ末端のフルクトシルバリン、或いはフルクトシルバリルヒスチジンの切り出しに使用する酵素濃度であれば特に制限はないが、それぞれの比活性などを考慮し、ロイコ色素の濃度に合わせて設定することが可能である。例えば、0.001〜10mg/mL、好ましくは0.01〜10mg/mLに設定できる。より具体的には例えば、ロイコ色素として25μMのTPM-PS、プロテアーゼとしてプロチンPC10Fを使用する場合には、0.01〜10mg/mLが好ましく、0.05〜5mg/mLがより好ましい。 緩衝液は、pHを5〜7付近に維持可能なものであればいずれも使用でき、硫酸、リン酸等の無機酸、グリシン、フタル酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、シュウ酸、酒石酸、酢酸、乳酸等の有機酸、グッド緩衝液類が使用できる。緩衝液の濃度は特に制限されないが、0.1〜1000mMが好ましく、特に5〜500mMが好ましい。またpHは、5〜7であればよいが、特にpH6付近が好ましい。 ロイコ色素液中のロイコ色素の濃度は、その発色感度を考量して適宜決定すればよいが、0.001〜10mM、好ましくは、0.01〜1mM、特に0.05〜0.5mMが好ましい。 本発明のロイコ色素溶液には、他に陰イオン性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤;血液中の夾雑成分を処理する酵素;反応調整剤;安定化剤;アルブミン等の蛋白質類;塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、フェロシアン化カリウム等の塩;リジン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸、ペプチド、ポリアミノ酸類;還元性物質の影響回避のためのテトラゾリウム塩;抗生物質、アジ化ナトリウム、ホウ酸等の防腐剤;陽イオン性界面活性剤等も添加できる。これらの使用量は、ロイコ色素を用いる公知の酵素的定量法に準じて適宜選択すればよい。 本発明のロイコ色素溶液は、ガラスビン、プラスチック容器等への充填の形態で提供することができるが、これらの容器を遮光することがより望ましい。 次に、上記の如く安定化されたロイコ色素溶液を用いた、ヘモグロビンAlcの測定法について説明する。ヘモグロビンAlcの測定は、次の工程を含む方法である。a.界面活性剤を用いて血球を溶血させる工程、b.ロイコ色素と共存するプロテアーゼによって、ヘモグロビンA1cよりβ鎖アミノ基末端のフルクトシルアミノ酸、あるいはフルクトシルジペプチドを切り出す工程、c.該フルクトシルアミノ酸、あるいは該フルクトシルジペプチドに特異的な酸化酵素を作用させて過酸化水素を発生させる工程、d.パーオキシダーゼの存在下で該過酸化水素によりロイコ色素を酸化して発色させる工程。 工程aは、界面活性剤を用いて血球を溶血させる工程である。ここで血球としては、赤血球が挙げられる。界面活性剤としては、ポリオキシエチレン構造を有する非イオン系界面活性剤又はポリオキシエチレン構造を有する陰イオン系界面活性剤が好ましい。非イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン縮合物類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン多環型界面活性剤等が挙げられ、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類が好ましい。陰イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸類、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸塩類等が挙げられ、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩類又はアルキルスルホコハク酸類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩類が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩類が特に好ましい。 界面活性剤の使用量は、反応液中、0.0001〜10質量%が好ましく、特に0.001〜10質量%が好ましい。 工程bは、ロイコ色素と共存するプロテアーゼによって、ヘモグロビンA1cよりβ鎖アミノ基末端のフルクトシルアミノ酸(つまりフルクトシルバリン)、あるいはフルクトシルジペプチド(つまりフルクトシルバリルヒスチジン)を切り出す工程である。ここで、ロイコ色素及びプロテアーゼは前記のものが使用できる。反応条件は、工程c,dを行うのに必要な量のフルクトシルアミノ酸、あるいはフルクトシルジペプチドをヘモグロビンA1cのβ鎖アミノ基末端より切り出すことができる条件を適宜選択することができる。好適な反応条件の一つとして、37℃、5分間を例示することができる。 工程cは、該フルクトシルアミノ酸、あるいは該フルクトシルジペプチドに特異的な酸化酵素を作用させて過酸化水素を発生させる工程である。ここで、用いられる酸化酵素としては、過酸化水素生成オキシダーゼ、すなわち、フルクトシルペプチド等の糖化ペプチド又はフルクトシルアミノ酸等の糖化アミノ酸を代謝できるものであれば特に制限されず、微生物由来、動物由来、植物由来等のいずれでもよく、また該微生物の遺伝子組み換えによって産生されるものでもよい。また、化学修飾の有無も問わない。具体的には、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(特開2003−79386号公報及び国際公開第97/20039号パンフレット)、ケトアミンオキシダーゼ(特開平5−192193号公報)、フルクトシルペプチドオキシダーゼ(特開2001−95598号公報及び特開2003−235585号公報)等が挙げられ、フルクトシルペプチドオキシダーゼが特に好ましい。フルクトシルペプチドオキシダーゼとしては、コリネバクテリウム属菌の産生するフルクトシルアミノ酸オキシダ−ゼを改変した酵素(特開2001−95598号公報)、糸状菌由来のフルクトシルペプチドオキシダーゼ(特開2003−235585号公報)等が挙げられる。FPOX−CE又はFPOX−EE(ともにキッコーマン社製)が特に好適である。これらの過酸化水素生成オキシダーゼは、溶液状態でも乾燥状態でもよく、不溶性担体に保持又は結合されていてもよく、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。 過酸化水素生成オキシダーゼの使用量は、酵素の種類にもよるが、0.001〜1000単位/mLが好ましく、特に0.1〜500単位/mLが好ましい。作用させるときのpHは、使用する酵素の至適pHを考慮し、pH4〜9となるように緩衝液を用いて調整する。作用温度は、通常の酵素反応に用いられる温度であり、10〜40℃が好ましい。緩衝液としては前記記載のものを使用することができる。緩衝液の濃度も特に制限されないが、0.00001〜2mol/Lが好ましく、0.001〜1mol/Lが特に好ましい。 上記オキシダーゼは、必要に応じて、他の酵素、補酵素等と組み合わせて使用することができる。他の酵素としては、ジアホラーゼ又はフルクトシルバリンを基質としないアミノ酸代謝酵素などが挙げられ、アスコルビン酸オキシダーゼ、ビリルビンオキシダーゼ等の血液中の夾雑成分を処理するための酵素も使用できる。補酵素としては、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド還元型(NADH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド還元型リン酸(NADPH)、チオNAD、チオNADP等が挙げられる。 工程dは、パーオキシダーゼの存在下で該過酸化水素によりロイコ色素を酸化して発色させる工程である。 パーオキシダーゼは、西洋ワサビ、微生物等由来のものを0.01〜100単位/mLの濃度で使用することが好ましい。 過酸化水素は、パーオキシダーゼとロイコ色素を用いる酵素的方法によって、短時間にかつ簡便に測定できる。過酸化水素の測定は、通常、過酸化水素生成オキシダーゼを作用させて過酸化水素を発生させる工程に連続して行われるが、過酸化水素の測定溶液は、前記記載の緩衝液を用いてpH5〜8に調整することが好ましい。発色の程度(吸光度変化量)は、分光光度計により測定し、標準とする濃度既知のフルクトシルジペプチド、フルクトシルアミノ酸等の吸光度と比較して、試料中のヘモグロビンAlcを測定することができる。測定には、通常の自動分析装置を用いることができる。 以下実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。[実施例1] TPM-PSの安定化 100μMのTPM-PSを含む PIPES緩衝液(pH6.0)に、表1に示した種々のプロテアーゼ蛋白を共存させ、37℃で保存し、日立7150形自動分析装置を用いて、波長600nmにおける吸光度を比較測定した。表1に、0時間後、1週間保存後の吸光度を示す。 尚、不活性化処理とは、使用前に70℃で4時間加温処理したことを意味する。 表1から明らかなように、TPM-PSは、pH6付近の溶液中でプロチンを添加しないものと比較して添加することで非特異的な発色が約1/2に抑制され、安定であることが分かった。また、不活性化処理したプロチンにおいても非特異的な発色が抑制され、安定であることが分かった。 同様にProteaseTypeXXIIIを用いた場合も、非特異的な発色が抑制され、安定であることが分かった。 不活性化処理したアクチナーゼEでも非特異的な発色が抑制され、安定であることが分かった。[実施例2] HbA1c濃度の測定<溶血試薬> 2% エマール20C(花王社製)<試薬(1)> 50mM PIPES液(pH6) 2mM 塩化カルシウム 1.5mg/mL プロチンPC10F 25μM TPM-PS(同仁化学社製)<試薬(2)> 50mM クエン酸緩衝液(pH6) 10単位/mL POD(東洋紡社製) 6単位/mL FPOX-CE(キッコーマン社製)(1)溶血試料の調製 ヒト血球試料30例を用いて、各血球試料12μLに各溶血試薬450μLを加え溶血試料を調製した。(2)測定 溶血試料15μLに試薬(1)180μLを加え37℃で5分間加温後、主波長600nm、副波長700nmの吸光度差を測定しヘモグロビン濃度に依存した測定値(samp Hb)を求めた。更に、この反応液に試薬(2)60μLを加え、37℃で5分反応させた。主波長600nm、副波長700nmの吸光度差の変化量を測定し、HbA1c濃度に依存した測定値(samp A1)を求め、これらとHbA1c濃度(%)既知試料を用いて同様に操作した場合のヘモグロビン濃度に依存した測定値(std Hb)とHbA1c濃度に依存した測定値(std A1)から、下記式によりHbA1c値(%)を算出した。測定は日立7170型自動分析装置を用いた。 HbA1c(%)=std HbA1×(std Hb/std A1)×(samp A1/samp Hb)(std HbA1;HbA1c濃度既知試料のHbA1c(%)値) 免疫学的測定方法に基づく市販キット「デタミナーHbA1c」(協和メデックス社製)により測定したHbA1c値(%)(参照例)(表2)との相関性を図1に示した。なお参照例の値は、下記計算式により、JDS(%)値からIFCC値に換算したもので表示した。 計算式 IFCC値(%)=1.0681x-1.7407(糖尿病;46(9),2002より)参照例(市販キット使用)と実施例2によるHbA1c値(%)の相関性を示す図である。 ロイコ色素を溶液中でプロテアーゼ蛋白共存下にて保存することを特徴とするロイコ色素の安定化方法であって、該ロイコ色素が、N,N,N',N',N'',N''-ヘキサ-3-スルホプロピル-4,4',4''-トリアミノトリフェニルメタンである、方法。 プロテアーゼ蛋白が、バチルス属由来の酵素、アスペルギルス属由来の酵素及びストレプトマイセス属由来の酵素から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の方法。 バチルス属由来の酵素が、ズブチリシンである請求項2記載の方法。 アスペルギルス属由来の酵素が、アスペルギロペプシンI又はプロテアーゼtypeXXIIIである請求項2記載の方法。 ストレプトマイセス属由来の酵素が、マイコリシンである請求項2記載の方法。 プロテアーゼ蛋白をN,N,N',N',N'',N''-ヘキサ-3-スルホプロピル-4,4',4''-トリアミノトリフェニルメタンの安定化剤として使用する方法。


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