タイトル: | 公開特許公報(A)_間葉系幹細胞及びインスリン様成長因子−1(IGF−1)を用いた新規疾患治療法 |
出願番号: | 2006187079 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | A61L 27/00,A61K 35/12,A61K 38/27,A61P 9/10,A61P 21/00,A61P 29/00,A61P 9/04,A61P 9/08 |
宮武 邦夫 永谷 憲歳 宮原 義典 盛 英三 清遠 純夫 JP 2007014780 公開特許公報(A) 20070125 2006187079 20060706 間葉系幹細胞及びインスリン様成長因子−1(IGF−1)を用いた新規疾患治療法 国立循環器病センター総長 591108880 アステラス製薬株式会社 000006677 高島 一 100080791 宮武 邦夫 永谷 憲歳 宮原 義典 盛 英三 清遠 純夫 US 60/696,781 20050707 A61L 27/00 20060101AFI20061222BHJP A61K 35/12 20060101ALI20061222BHJP A61K 38/27 20060101ALI20061222BHJP A61P 9/10 20060101ALI20061222BHJP A61P 21/00 20060101ALI20061222BHJP A61P 29/00 20060101ALI20061222BHJP A61P 9/04 20060101ALI20061222BHJP A61P 9/08 20060101ALI20061222BHJP JPA61L27/00 QA61L27/00 ZA61K35/12A61K37/36A61P9/10A61P21/00A61P29/00A61P9/04A61P9/08 9 OL 16 4C081 4C084 4C087 4C081AB12 4C081AB13 4C081AB18 4C081BA12 4C081BB07 4C081BB08 4C081BC01 4C081BC02 4C081CD29 4C081CD34 4C084AA02 4C084BA01 4C084BA08 4C084BA23 4C084BA44 4C084DB58 4C084MA02 4C084NA06 4C084NA14 4C084ZA362 4C084ZA392 4C084ZA452 4C084ZA542 4C084ZB112 4C087AA01 4C087AA02 4C087BB64 4C087CA04 4C087CA16 4C087MA02 4C087MA67 4C087NA06 4C087NA14 4C087ZA36 4C087ZA39 4C087ZA45 4C087ZA54 4C087ZB11 本発明は、間葉系幹細胞の移植及びインスリン様成長因子−1(IGF-1)の投与を用いて損傷組織を再生し、且つ、該組織の機能を改善するための新規方法に関する。より具体的には、本発明は、従来法を用いることによっては完全には治療し得なかった疾患を有する患者内への間葉系幹細胞の移植、及び、IGF-1の投与を用いた新規複合療法に関する。 心、脳、肺、肝、腎等の多様な疾患の中には、該疾患を引き起こす損傷組織が該組織の機能が改善するまで完全には再生又は修復できない難治性疾患が多く存在する。 例えば、心筋梗塞においては、冠状動脈の閉塞により心筋が壊死し、次いで心筋の壊死が慢性心不全を引き起こす。これまで、心筋梗塞の再発及び動脈硬化症の進行を防止し、慢性心不全を治療するために薬物療法が用いられてきたが、壊死性の心筋組織を回復させるための効果的な治療法は未だ確立されていない。脳血栓症又は脳卒中においては、血液供給が失われた部位の脳細胞は短時間に壊死性になり、当該壊死性脳細胞は回復し得ず、たとえ患者の生命が助かったとしても、該患者の余生には後遺症が残ることとなる。 心筋梗塞等の多様な難治性心血管疾患を治療するためには、該疾患を引き起こす損傷した組織を再生及び修復し、該組織の機能を回復することが重要である。しかしながら、今日においては、該損傷した組織を再生し且つ修復することにより、そのような疾患を治療するための効果的な治療法は存在しない。脳血管疾患を治療するためには、虚血性神経細胞死を防ぐことが重要である。なぜなら、ひとたびそれが発生すると、短期間のうちに回復不可能となるからである。しかしながら、虚血性神経細胞死の発生過程は非常に複雑であることから、虚血性神経細胞死の予防を適用し、脳梗塞等の脳血管疾患を治療することは未だ成功していない。そのような疾患を治療するための自然治癒力の改善、新規治療法の開発及び損傷した機能の再確立は、患者のQOLの改善及び治療コストの削減につながる。 最近、サイトカイン又はケモカインを用いて骨髄の幹細胞を末梢組織内に動員し、その細胞を血管内皮又は心筋に病巣部位に局所的に分化させることによる、組織を再生するための新たなアプローチが存在する。しかしながら、そのような幹細胞療法は、損傷した組織を減少又は再生して該組織の機能を十分に改善するのには、未だ十分に効果的であるとはいえない。 間葉系幹細胞(MSC)は、骨髄微小環境内に存在する多能性の成体幹細胞である(非特許文献1)。MSCは、骨芽細胞、軟骨細胞、神経、及び骨格筋細胞のみならず、血管内皮細胞(非特許文献2)及び心筋細胞(非特許文献3、4)にも分化することができる。梗塞を起こした心筋内に直接注入されたMSCが心筋の再生を誘導し、心機能を改善することが示されている(非特許文献5)。それゆえに、これらの仮想のMSCは、虚血性心筋症を含む末期心不全のための細胞性心筋形成術の自家性の細胞供給源として注目されている。しかしながら、移植されたMSCの辺縁での生存率が主要な限界の1つである(非特許文献4〜7)。例えば、ヒト間葉系幹細胞をヌードマウスの左心室に移植すると、移植された該間葉系幹細胞の95%超が、移植後4日で死んでしまった(非特許文献3)。 インスリン様成長因子−1(IGF-1)は、広範な分布で見出されるポリペプチドであり、肥大症の成長、増殖、アポトーシスからの保護、及び多様な組織への分化を含む多面的な細胞反応を制御する(非特許文献8)。IGF-1は、直接的効果を通して心筋肥大を促進し、且つ、心筋細胞のアポトーシスを阻害する(非特許文献9)。最近の研究で、IGF-1は、心筋梗塞の動物モデルにおいて、ホスファチジルイノシトール 3−キナーゼ(PI3K)経路の活性化を通じた抗アポトーシス効果によって、心筋機能を保護することが明らかとなった(非特許文献10、11)。さらに、マイトジェン−活性化蛋白質キナーゼキナーゼ(MEK1)経路も、独立して心筋細胞における抗アポトーシスシグナル伝達に関連していることが示されている(非特許文献12、13)。しかしながら、IGF-1注入及びMSC移植の組み合わせの治療効果に関する知見はほとんどない。Makino S. et al, J Clin Invest 103: 697-705, 1999Reyes M. et al, J Clin Invest 109: 337-346, 2002Toma C. et al, Circulation 105: 93-98, 2002Wang JS. et al, J Thorac Cardiovasc Surg 120: 999-1005, 2000Shake JG. et al, Ann Thorac Surg 73: 1919-1925, 2002Zhang, M. et al, J. Mol. Cell. Cardiol. 33, 907-921 (2001)Reinecke, H. et al, Circulation 100, 193-202 (1999)LeRoith D. et al, Ann NY Acid Sci. 1993 Aug 27; 692: 1-9Buerke M. et al, Proc Natl Acad Sci USA. 1995; 92: 8031-8035Li Q. et al, J Clin Invest. 1997; 100: 1991-1999Mehrhof FB. et al, Circulation. 2001 Oct 23; 104(17): 2088-94Nisikimi T. et al, Am J Physiol Regulatory Integrative Comp Physiol 1998; 262: R198-R203、Pittenger MF. et al, Science 284: 143147, 1999 本発明は、心筋梗塞等の多様な難治性心血管疾患を引き起こす損傷した組織を再生し且つ修復することにより、そのような疾患を治療するための効果的な治療方法を提供することを目的とする。 本発明者らは、患者の損傷した組織におけるMSCの増殖、生存、及び分化に対するIGF-1の効果により、IGF-1の投与がMSC移植の治療効果を増強するという新たな知見に基づいて本発明を完成させた。 すなわち本発明は、以下の通りである。[1]間葉系幹細胞とIGF-1とを組み合わせてなる、損傷した組織を再生し、患者の該組織の機能を改善するための医薬。[2]間葉系幹細胞が患者から採集された自家細胞である、[1]記載の医薬。[3]間葉系幹細胞が患者の損傷した組織の部位内に導入される、[1]記載の医薬。[4]間葉系幹細胞が患者への導入前に培養中で増幅される、[1]記載の医薬。[5]損傷した組織が心組織及び/又は血管組織である、[1]記載の医薬。[6]患者が、心筋梗塞、心筋症、心筋炎、心不全、狭心症、虚血性心疾患、閉塞性動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、末梢動脈疾患、冠状動脈疾患、脳血栓症、脳塞栓症、脳梗塞、及び脳卒中からなる群より選ばれる疾患に罹患している、[5]記載の医薬。[7]損傷した組織が心組織である、[5]記載の医薬。[8]患者が、心筋梗塞、心筋症、心筋炎、心不全、狭心症、及び虚血性心疾患からなる群より選ばれる疾患に罹患している、[1]記載の医薬。[9]疾患が心筋梗塞である、[7]記載の医薬。[10]患者内へ間葉系幹細胞を導入すること及び該患者へ治療的有効量のIGF-1を投与することを含む、損傷した組織を再生し、該患者の該組織の機能を改善するための方法。[11]間葉系幹細胞が患者から採集された自家細胞である、[10]記載の方法。[12]間葉系幹細胞が患者の損傷した組織の部位内に導入される、[10]記載の方法。[13]間葉系幹細胞が患者への導入前に培養中で増幅される、[10]記載の方法。[14]損傷した組織が心組織及び/又は血管組織である、[10]記載の方法。[15]患者が、心筋梗塞、心筋症、心筋炎、心不全、狭心症、虚血性心疾患、閉塞性動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、末梢動脈疾患、冠状動脈疾患、脳血栓症、脳塞栓症、脳梗塞、及び脳卒中からなる群より選ばれる疾患に罹患している、[14]記載の方法。[16]損傷した組織が心組織である、[14]記載の方法。[17]患者が、心筋梗塞、心筋症、心筋炎、心不全、狭心症、及び虚血性心疾患からなる群より選ばれる疾患に罹患している、[10]記載の方法。[18]疾患が心筋梗塞である、[16]記載の方法。 一局面において、本発明は、患者内へ間葉系幹細胞を導入すること及び治療的に有効量のIGF-1を該患者に投与することを含む、損傷した組織を再生し、且つ、該患者における該組織の機能を改善するための方法を提供する。一実施態様において、本発明は、患者へ間葉系幹細胞を導入すること及び治療的に有効量のIGF-1を該患者に投与することを含む、損傷した心組織及び/又は血管組織を再生し、且つ、該患者における該組織の機能を改善するための方法を提供する。 本発明は、損傷した組織を再生及び修復し、該組織の機能を改善するために用いることができ、種々の器官の障害を効果的に治療する新規治療法として有望である。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明の方法により再生され得る損傷した組織としては、限定されないが、心、血管、脳、神経、肝、腎等における多様な損傷した組織が含まれ、そのような損傷した組織による多様な疾患が本発明の方法により治療され得る。例えば、本発明の方法により治療され得る該疾患として、限定されないが、心筋梗塞、心筋症、心筋炎、心不全、狭心症、虚血性心疾患、閉塞性動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化、末梢動脈疾患、冠状動脈疾患、脳血栓症、脳塞栓症、脳梗塞、脳卒中、パーキンソン病、肝不全、腎不全、及び糖尿病があげられる。一実施態様において、本発明の方法により再生され得る損傷した組織は、心組織及び/又は血管組織である。本明細書において、血管組織とは、体内のあらゆる血管を意味し、限定されないが、心組織に属する血管(例えば、大動脈、大静脈、冠状血管)、及び、脳、肝、肺、腎等の他の器官内に伸びる血管があげられるが、これらに限られない。本発明において、間葉系幹細胞の移植とIGF-1の投与との組み合わせが、血管平滑筋及び血管の内膜の発生又は再生をもたらし、その結果、血管の機能を改善し、血管損傷による多様な器官障害を治療することができる。本発明の方法によって治療され得る、損傷した心及び/又は血管組織による疾患としては、限定されないが、心筋梗塞、心筋症、心筋炎、心不全、狭心症、虚血性心疾患、閉塞性動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化、末梢動脈疾患、冠状動脈疾患、脳血栓症、脳塞栓症、脳梗塞、及び脳卒中があげられる。好ましい実施態様において、本発明の方法により再生され得る損傷した組織は心組織であり、本発明の方法により治療され得る、損傷した心組織による疾患としては、限定されないが、心筋梗塞、心筋症、心筋炎、心不全、狭心症、虚血性心疾患等の心疾患があげられる。より好ましい実施態様において、本発明の方法により効果的に治療され得る疾患は、心筋梗塞である。 本発明の方法で用いられる間葉系幹細胞(MSC)は、骨芽細胞、軟骨細胞、神経細胞、骨格筋細胞、血管内皮細胞、及び心筋細胞等へ分化する能力を有する多能性細胞を含む。MSCは一般に骨髄に存在し、当業者であれば当該分野で公知の方法を用いて、骨髄微小環境から容易に採集できる(例えば、Chien YW. et al, Am J Physiol 254: R185-191, 1988を参照)。MSCの採集後、患者内に導入する前にMSCを必要量まで増幅してもよい。なぜなら、MSCは高い増殖能力を有し、細胞培養物中で容易に増幅することができることからである。MSCを培養する多様な方法が、当業者に公知である(例えば、Pittenger MF. et al, Science. 1999 Apr 2; 284(5411): 143-7、及びChien YW. et al,前記、を参照)。該患者にMSCを導入する場合、注入されたMSCは損傷した組織へ動員される傾向があるので、MSCを静脈内へ注入してもよく、あるいは、損傷した組織の部位内へ直接導入してもよい。好ましくは、MSCは該患者中の損傷した組織の部位内、又は、損傷した組織の周辺部位内へ導入され得る。非自己細胞の拒絶の抑制又は倫理的問題に鑑みて、該患者から採集された自家MSCを導入することが好ましい。 本発明に有用なIGF-1として、限定されないが、ヒトIGF-1及びそのアナログがあげられる。好ましくは、本発明に有用なIGF-1は、組換えIGF-1メカセルミン(ソマゾン(登録商標)、アステラス製薬株式会社、東京、日本)である。 IGF-1の投与期間及びIGF-1の投与回数は、疾患、症状、患者の年齢及び体重(body weight)、投与経路等を考慮して、医師の指示に従って増減してもよい。例えば、本発明における投与のための期間は短期間(例、約1週間から1ヶ月、好ましくは約2週間)であり得る。IGF-1の投与回数は、例えば、該期間において、約1日3回から週に1回であり、好ましくは約1日2回である。 本発明の方法において用いられる治療上有効な量のIGF-1とは、損傷した組織を再生し、患者の該組織の機能を改善するために必要なIGF-1の量を意味し、好ましくは、約0.1mg/kg/日から約10mg/kg/日であり、より好ましくは約1.0mg/kg/日から約5mg/kg/日であり、最も好ましくは約2mg/kg/日である。しかしながら、疾患、症状、該患者の年齢及び体重(body mass)、投与経路等を考慮して、医師の指示に従って、患者に投与するIGF-1の量は増減し得る。 本発明の方法において用いられるIGF-1の投与経路としては、限定されないが、皮下、筋肉内、静脈内、経鼻、経口、経皮又はそれらの組み合わせがあげられる。好ましくは、該投与経路は皮下である。 患者に投与されるIGF-1を含む組成物は、例えば、活性成分としてIGF-1を含有する液状、固形状、半固形状の形態、皮下、筋肉内、静脈内、経鼻、経口、経皮、非経口又は他の任意の医薬適用に適した、有機若しくは無機の担体又は賦形剤との混合物といった、当該分野で周知の任意の医薬製剤の形態を有する。IGF-1は、例えば、液体、溶液、乳剤、懸濁剤、注射剤、リポソーム封入剤、粉剤、カプセル剤、丸剤、錠剤、及び使用に適した任意の他の剤形のための、通常の非毒性で、薬剤的に許容される担体とともに製剤化することができる。使用することのできる該担体は、助剤、安定化剤、及び等張化剤等の付加的添加物を含む又は含まない、液状、固形状又は半固形状の形態の製剤の製造における使用に適した、水、生理食塩水、蝋、糖、及び他の担体である。 本発明の方法において、IGF-1を他の薬物と組み合わせて、同時に、別々に、又は連続的に、同一又は異なった投与経路を通して、患者に投与してもよい。例えば、本発明の方法において、IGF-1の血糖降下作用によるグルコースレベルの低下を補正するために、IGF-1を、グルコース、スクロース、マルトース、ラクトース、及びオリゴ糖等の糖と組み合わせて投与してもよく、あるいは、IGF-1を、成長ホルモン、血管拡張剤、ACE阻害剤、βブロッカー、カルシウム拮抗剤、抗不整脈剤、強心剤、及び利尿剤等の患者の状態を改善するための他の公知の薬物と組み合わせて投与してもよい。 以下の実施例は、MSC及びIGF-1を用いた心筋梗塞モデルの治療を説明するが、添付した特許請求の範囲における本発明を何ら制限するものではない。(方法)心筋梗塞のモデル 本発明者らは、体重が160から180gの雄ルイスラット(Japan SLC Inc.)64匹を用いた。既報のように、左心室結紮により、心筋梗塞が作製された(Douglas PS. et al, J Am Coll Cardiol. 1987 Apr; 9(4): 945-51)。簡潔に説明すると、ラットをペントバルビタールナトリウム(30mg/kg)で麻酔した後、容量調節人工呼吸器で人工呼吸した。心臓を左開胸術により露出させた。次いで、6−0プロリン縫合糸を用いて、左冠状動脈を、肺動脈コーヌスと左心房との間のその始点から2−3mmで結紮した。冠血管結紮後60分以内の死亡率は28%であった。最後に、心臓を正常な位置に戻し、閉胸した。実験プロトコールは、国立循環器病センター研究所の動物実験倫理委員会ガイドラインに従って行われた。骨髄MSCの調製 MSC増幅が、既報の方法に従って行われた(Chien YW. et al, Am J Physiol 254: R185-191, 1988)。簡潔に説明すると、本発明者らは、雄ルイスマウスを屠殺し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を大腿骨及び脛骨腔に勢いよく流すことにより、骨髄を回収した。骨髄細胞を100mmディッシュに移し、10%FCS及び抗生物質を補充したα−MEM中で培養した。少数の紡錘状細胞が、肉眼で観察可能な対称コロニーを5から7日までに発生した。非接着造血細胞を除去し、培地を交換した。接着細胞集団は、最初の培養後約4から5代継代で、5千万細胞個超に増幅した。MSC移植及びIGF-1投与 冠血管結紮から60分後、以下の処置を生存した46匹のラットにランダムに施した。PBS中に懸濁した5×106のMSCを、虚血性左心室(LV)の境界域(border zone)の5つの部位内に27ゲージ注射針を用いて投与した。組換えヒトIGF-1(アステラス製薬株式会社)を14日間、2mg/kg/日で1日2回皮下注入した。対照として、PBSを同様の方法で梗塞ラットに投与した。この対照により、4つの群が作製された:1)IGF-1投与に加えてMSC移植(MSC−IGF-1群、n=12)、2)IGF-1投与に加えてPBS注入(IGF-1群、n=12)、3)ベヒクル投与に加えてMSC移植(MSC群、n=12)、4)ベヒクル投与に加えてPBS投与(対照群、n=10)。フローサイトメトリー解析 4から5代継代の接着細胞を、蛍光励起細胞分取(FACS)(FACS SCAN flow cytometer, Becton Dickinson)により解析した。ラットCD34(clone ICO-115, Santa Cruz)、CD45(clone OX-1)、及びCD90(clone OX-7)(Becton Dickinson)に対するFITC結合マウスモノクローナル抗体とともに、細胞を30分間4℃でインキュベートした。FITC結合ハムスター抗ラットCD29モノクローナル抗体(clone Ha2/5, Becton Dickinson)及びウサギ抗ラットc-kitポリクローナル抗体(clone C-19, Santa Cruz)が用いられた。アイソタイプが同一の抗体が対照として用いられた。心エコー試験 冠血管結紮から4週間後に心エコー観察を行った。7.5MHzフェーズアレイ変換器を備えた心エコーシステム(HP SONOS 5500; Hewlett Packard Company)を用いて、乳頭筋レベルでMモード追跡が得られた。前部及び後部の拡張終期及び収縮終期の壁厚、LV拡張終期径及び収縮終期径、並びにLV短縮率を、連続する3心周期から、心エコーのアメリカ学会の最先端の方法により測定した。LV経線壁圧は、0.344×LV圧力×{LV径/(1+PWT/LV径)}で推定した。ここで、PWTは後部壁厚である。血行力学試験 冠血管結紮から4週間後に心エコーの後、血行力学試験を行った。ペントバルビタールナトリウムによる麻酔の後、1.5Fマイクロ圧力計を先端につけたカテーテルを右総頸動脈を通じて左心室に挿入した。血行力学変数を、ポリグラフに接続された圧力変換器により測定した。測定完了後、左心室、右心室、及び肺を切除し、重量を測定した。以前に報告されたように、梗塞サイズをLV領域全体に占める百分率として測定した(各群、n=6)。組織学的試験 心筋細胞における線維症を検出するために、LV心筋(各群、n=6)を10%ホルマリン中で固定し、横方向に切断し、パラフィルム中に包埋し、マッソントリクロムで染色した。IGF-1が、移植されたMSCの血管内皮細胞及び心筋細胞への分化を促進するかどうか検討するため、本発明者らはGFP発現トランスジェニックラット(SD-Tg[Act-EGFP]CZ-004; Japan SLC Inc.)の骨髄からのGFP発現MSCを用いた。冠血管結紮から60分後に、該GFP発現MSCをSurague-Dawleyラット中に移植し(n=6)、組換えヒトIGF-1を上述したように投与した。これにより、2つの亜群が作られた(MSC群、n=3; MSC-IGF-1群、n=3)。移植から4週間後、LV心筋を摘出し、OCTコンパウンド中に包埋し、液体窒素中で迅速凍結し、基部から頂部まで6μm切片に切断した。ポリクローナルウサギ抗フォンヴィルブランド因子抗体(Dako)及びモノクローナルマウス抗心臓トロポニンT抗体(NeoMarkers)を用いて、免疫蛍光染色を行った。核をDAPIで対比染色した。GFP陽性細胞又はGFP/各マーカーの二重陽性細胞の数を、蛍光顕微鏡下で各ラットにつき10視野でカウントした。この形態解析は、処置を伏せられた(blind)2人の実験者により行われた。血漿ANFレベルの測定 冠血管結紮から4週間後に血液検体を得た。血漿心房性ナトリウム利尿因子(ANF)を酵素免疫法(Peninsula Laboratories Inc.)により測定した。RT-PCRアッセイ MSCがIGF-1受容体(IGF-1R)を発現しているかどうかを調べるために、過去に報告のように、発明者らは逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を行った。簡潔に説明すると、MSCの全量RNAをグアニジンイソチオシアネート(RNeasy Mini Kit, Qiagen)により抽出した。次いで、以下のプライマーセットを用いて、逆転写された一本鎖cDNAをPCRに供した。IGF-1R(Applied Biosystems)フォワード: 5'-ATTACGCACTGGTCATCTTC-3'(配列番号1)リバース: 5'-AAGCCATCTGAGTCACTGCT-3'(配列番号2)G3PDH(Clontech laboratories, Inc.)フォワード: 5'-TGAAGGTCGGTGTCAACGGATTTGGC-3'(配列番号3)リバース: 3'-CATGTAGGCCATGAGGTCCACCAC-5'(配列番号4)ウエスタンブロット解析 IGF-1によるMSC上のAkt及びERK1/2のリン酸化を確認するために、市販されているキット(PhosphoPlus Akt [Ser473] antibody kit, Phospho-p44/42 Map Kinase [Thr202/Tyr204] Antibody and p44/42 MAP Kinase Antibody, Cell Signaling)を用いてウエスタンブロッティングを行った。血清不含培養培地中でMSCを24時間培養した後、細胞をIGF-1(10nM)とともに15分間インキュベートした。該MSCを500μl溶解緩衝液中で氷上でホモジナイズして、透明上清をウエスタンブロット解析に用いた。それぞれの蛋白質抽出物50μgをサンプルバッファー中に移し、7.5%SDS-ポリアクリルアミドゲルに乗せ、湿式ブロッティングシステムでニトロセルロース膜上にブロットした。60分間ブロックした後、膜を、ブロッキング緩衝液中の一次抗体(1:500)と、4℃で一晩インキュベートした。膜を、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(Cell Signaling)が結合した二次抗体(終希釈 1:2000)とともにインキュベートした。シグナルはLumiGLO化学発光試薬(Cell Signaling)により検出した。MTSアッセイ MSCに対するIGF-1の増殖効果を評価するために、細胞を96ウェルプレートに播種し(5×103 細胞/ウェル)、通常の成長培地中で維持した。24時間後、細胞を1%FCS含有低血清培地にダウンシフトした。次いで、PI3K抑制剤であるウォルトマンニン(50nM、 Sigma)、及びMEK抑制剤であるPD98059(10μM、 Calbiochem)を単独で、あるいは、組み合わせてIGF-1添加15分前に培養培地に加えた。24時間培養後、MTS試薬(Cell Titer 96 Aqueous, Promega)を各ウェルに加え、37℃で2時間インキュベートした。細胞数は、ELISAプレートリーダーにより490nmにおける吸光度で示した。TUNELアッセイ MSCに対するIGF-1の抗アポトーシス効果を検討するために、tdt UTP nick end-labeling(TUNEL)により断片化DNAのin situ標識を行った。細胞を、12ウェルプレートに入れたスライド上に播種し(2×104細胞/ウェル)、通常の成長培地で正常酸素圧下、24時間培養した。次いで、細胞を、IGF-1添加又は未添加の血清不含培地中で1% O2、5% CO2、及び94% N2から構成される低酸素条件下で、37℃で36時間培養した。ウォルトマンニン(50nM)及びPD98059(10μM)を単独で、あるいは組み合わせて、IGF-1添加15分前に加えた。最後に、細胞を4%緩衝ホルマリンで固定した。TUNEL染色は、市販のキット(Apop Tag Plus, Chemicon)により、製造者の指示書に従って行った。核をDAPIで対比染色した。細胞全体に対するTUNEL陽性細胞の比率を計算するのに、ランダムに選択した10の顕微鏡視野が評価された。統計的解析 数値は、平均±SEMで表した。4群間のパラメーターの比較は、一元配置分散分析(one-way ANOVA)を行った後に、ニューマンクール検定(Newman-Keul's test)で行った。2群間の比較は、対応のないスチューデントt検定(unpaired Student's t test)により行った。P<0.05で有意差ありとした。(結果)培養MSCの特徴 最初の培養後約4から5代継代時に、大多数の接着細胞がCD29及びCD90を発現していた(両方において90%超)。対照的に、大部分の接着細胞がCD34及びCD45陰性であった。一部の少数の接着細胞はc-Kitを発現していた(10±1%)。したがって、接着細胞の大部分がMSCであることが確認された。体重及び心構造 冠血管結紮から4週間後の体重は、対照及びMSC群よりも、IGF-1及びMSC-IGF-1群において有意に高かった(表1)。冠血管結紮後、対照群において、中から大の梗塞が観察された。しかしながら、MSC移植及びIGF-1投与は同程度に、梗塞サイズ及びLV拡張終期径(LVDD)を減少させ、心拡張期における後部壁厚を増大させた(図1B及び図1C、表2)。特に、IGF-1及びMSCの組み合わせにより処置されたラットは、最小の梗塞サイズ及びLVDDを示した(図1B)。MSC-IGF-1群における右心室及び肺の重量は、IGF-1群及びMSC群のそれよりも、有意に低かった(表1)が、LV重量は4群間で差がなかった。前壁及び後壁の厚さ及び肥厚はMSC-IGF-1群でより高くなる傾向にあったが、その変化は統計学的有意までには至らなかった(表2)。心機能 LV短縮率はMSC-IGF-1群で最も高く、続いてIGF-1群、MSC群、及び対照群の順であった(図2A)。MSC-IGF-1群においては、LV最大dP/dtも対照群、MSC群、及びIGF-1群より高かった(図2C)。MSC-IGF-1群におけるLV拡張終期圧、LV拡張壁圧、及びLV最小dP/dtは、対照群、MSC群、及びIGF-1群のそれより有意に小さかった(図2B及び図2D、表2)。さらに、血漿ANFの上昇が、MSC、IGF-1、及びMSC-IGF-1群において減弱した(表1)。MSC分化に対するIGF-1の効果 GFP発現MSCの移植から4週間後、MSC-IGF-1群において移植されたGFP陽性細胞がより頻繁に観察された(20±1.2% vs. 13±0.4%, p<0.05, 図3A及び図3B)。GFP陽性細胞のいくつかはvWF及び心臓トロポニンT陽性であり、移植されたMSCの血管内皮細胞及び心筋細胞への分化が示唆された。分化した細胞の数は、MSC群よりもMSC-IGF-1群において有意に多かった(図3C及び図3D)が、GFP陽性細胞全体に対するGFP/vWF及びGFP/トロポニンT両陽性細胞の比率は該2群間で差がなかった。Akt及びERKのリン酸化 RT-PCRにより、MSCはIGF-1受容体を発現していることが実証された(図4A)。ウエスタンブロット解析により、IGF-1が、PI3K及びMEK1経路の下流の主要な酵素であるAkt(図4B)及びERK1/2(図4C)のリン酸化を増強することが確認された。MSCに対するIGF-1の増殖効果 MTSアッセイにより、IGF-1は用量依存的にMSC増殖を増強することが明らかとなった(図5A)。PI3K抑制剤であるウォルトマンニン及びMEK抑制剤であるPD98059は、10nM IGF-1の増殖効果をそれぞれ39%及び45%まで拮抗した(図5B)。ウォルトマンニンとPD98059との組み合わせにより、該効果を96%まで完全に遮断した。これらの結果より、PI3K及びMEK1経路双方の活性化を通じて、IGF-1がMSCに対して増殖因子として作用することが示唆された。IGF-1のMSCに対する抗アポトーシス効果 TUNELアッセイによって、IGF-1の補充により、低酸素及び血清枯渇により誘導されるアポトーシス細胞の数が用量依存的に減少することが明らかとなった(図6B)。ウォルトマンニンは100nM IGF-1の抗アポトーシス効果を41%減少させ、PD98059は52%減少させた(図6C)。さらに、両経路の同時(parallel)阻害は、抗アポトーシス効果を84%顕著に減少した。これらの結果より、PI3K及びMEK1経路双方の活性化を通じて、IGF-1がMSCに対して生存因子として作用することが示唆された。(考察) 本試験において、本発明者らは、1)MSC移植に随伴するIGF-1投与は、移植されたMSCの数を増加させ、IGF-1投与単独又はMSC移植単独よりも、心構造及び心機能の強力な改善をもたらすことを実証した。また、本発明者らは、2)PI3K-Akt及びMEK1-ERK1/2経路の活性化を通じて、IGF-1が培養MSCの増殖を促進し、アポトーシスを抑制することを実証した。したがって、IGF-1及びMSCの組み合わせは、心筋梗塞を有するラットにおいて有益な効果を有し得る。 細胞心筋形成術は、最近、心筋を再生するという虚血性心疾患に対する有望な戦略として登場したが、移植された細胞の低い生存率により制限されていた。成長ホルモン介在因子であるIGF-1は、心筋及び骨格筋成長において重要な役割を担う。IGF-1の投与が、心筋成長の増強を通じて、心筋梗塞後の心機能を改善することも示されている。その保護的及び抗アポトーシス特性は、心筋虚血及び心筋梗塞の異なるモデルにおいて実証されている。本試験において、本発明者らは、心筋梗塞に対する、MSC移植に随伴するIGF-1投与が、心筋細胞のみならず、移植されたMSCをもアポトーシス細胞死から保護し、MSC移植の治療的強度の増強をもたらすかどうかについて検討した。 本発明者らは、in vivoで、MSC移植又はIGF-1投与が単独で心筋梗塞後の梗塞サイズを縮小させることを実証した。さらに、LVEDP及びLVDDの有意な減少、並びに、FS及びLV最大dP/dtの有意な増加によって示されるように、それぞれの処置は、心構造及び心機能を同程度に改善した。これらの結果は以前の研究結果と一致している。重要なことには、IGF-1投与及びMSC移植の組み合わせが、それぞれ単独の処置の場合と比較して、心構造及び心機能に関する大部分のパラメーターのさらなる改善をもたらした。これらの結果は、組み合わせ療法が、おそらくIGF-1及びMSCの付加的心保護効果を介して、心機能に対して有益な効果を有し得ることを示唆する。 本組み合わせ療法の根底にある機序は未だ分からない。全GFP陽性細胞に対するGFP/vWF及びGFP/トロポニンT両陽性細胞の比率が不変であることで示されるように、定量的解析は、IGF-1がMSCの血管内皮細胞及び心筋細胞への分化を促進しないことを実証した。それにもかかわらず、IGF-1投与は、心筋へ移植されたMSCの数を増加させていて、このことは心臓再生に利用可能なMSCの量が増加したことを示唆している。 本発明者らは、in vitroで、IGF-1がMSCに対して、幾つかの有益な相互作用を有することを実証した。最初に、本発明者らは、MSCがIGF-1受容体を発現していることをRT-PCRにより確認した。次に、本発明者らは、IGF-1が、PI3K及びMEK1経路の下流の主要な酵素であるAkt及びERK1/2の大規模なリン酸化を引き起こすことを実証した。MTSアッセイによって、IGF-1が培養MSCに対して増殖効果を有することが明らかとなった。TUNELアッセイによって、IGF-1が低酸素及び血清枯渇により誘導されるMSCのアポトーシスを用量依存的に阻害することが示された。さらに、PI3K経路に加えて、IGF-1の抗アポトーシス効果におけるMEK1経路の関与が最近報告されている。これらのシグナル経路がIGF-1介在性のMSC増殖及びMSCのアポトーシス抑制に寄与するかどうかを確認するために、ウォルトマンニン及びPD98059を、それぞれのアッセイにおけるPI3K及びMEK1活性の薬理学的阻害のために使用した。それぞれの阻害剤はMSCに対するIGF-1の増殖及び抗アポトーシス効果を遮断することができた。さらに、両阻害剤の組み合わせは、それぞれのアッセイにおいて、付加的な阻害効果を示した。過去の研究が、他の細胞種におけるこれらの経路間のクロストークを否定したことを考慮すると、PI3K-Akt及びMEK1-ERK1/2経路は独立して、IGF-1のMSCに対する増殖及び抗アポトーシス特性に寄与した。 MSCは多能性を有し、且つ、十分な細胞数を得やすいことから、自家MSCは細胞心筋形成術の有望な供給源である。さらに、IGF-1の全身投与は単純かつ非侵襲的な処置であり、すでにある種の成長ホルモン欠損や小人症において臨床的成功を収めている。従って、IGF-1投与及びMSC移植を用いた組み合わせ療法は、心筋梗塞による心不全治療のための新しい治療戦略である。(結論) IGF-1の補充はMSC移植の治療的効力を増強し、心筋梗塞を有するラットにおける心機能を改善する。IGF-1の有益な効果は、PI3K-Akt及びMEK1-ERK1/2経路を介してMSCの増殖及び生存を促進するIGF-1の能力により介在され得る。したがって、IGF-1及びMSC移植の組み合わせは、心筋梗塞による心不全治療のための新しい治療戦略である。 本発明は、損傷した組織を再生及び修復し、該組織の機能を改善するために用いることができ、種々の器官の障害を効果的に治療する新規治療法として有望である。Aは、冠血管結紮から4週間後のLV心筋の横断切片のマッソントリクロム染色の代表的な例を示す。B及びCは、梗塞のサイズ及びLV拡張終期径(LVDD)の定量的解析結果を示す。MSC-IGF-1群の梗塞領域及びLVDDは、他のグループのそれよりも有意に小さかった。データは平均値±SEMである。*P<0.05 vs. 対照; †P<0.05 vs. MSC; ‡P<0.05 vs. IGF-1。図2は、IGF-1及びMSC移植の心エコー及び血行力学パラメーターに対する効果を示す。LVEDP、LV拡張終期圧; FS、短縮率; Max dP/dt、最大 dP/dt; Min dP/dt、最小 dP/dt。データは平均値±SEMである。*P<0.05 vs. 対照; †P<0.05 vs. MSC; ‡P<0.05 vs. IGF-1。Aは、移植されたMSCの心筋細胞及び血管内皮細胞内への分化を評価するための免疫蛍光染色の代表的な写真を示す。GFP陽性移植MSC(緑)、心臓トロポニンT(赤)及びフォンヴィルブランド因子(赤)。Bは、移植されたMSC数の定量的解析結果を示す。C及びDは、分化したMSC数の定量的解析結果を示す。データは平均値±SEMである。*P<0.05 vs. MSC。スケールバー=20μm。Aは、MSC上のIGF-1受容体の発現を示す。B及びCは、10nMのIGF-1が、PI3K及びMEK1経路における下流の鍵となる酵素であるAkt及びERK1/2のリン酸化をもたらすことを表すウエスタンブロットである。培養したMSCに対するIGF-1の増殖効果を、MTSアッセイによって定量的に解析したものである。Aは、1nM及び10nMのIGF-1が、他の濃度よりも有意に高いMSCに対する増殖能力を示すことを表す。Bは、ウォルトマンニン及びPD98059がIGF-1の増殖効果を有意に阻害し、また、両抑制剤の組み合わせが、各抑制剤単独よりも有意に高い抑制効果を示すことを表す。*P<0.05 vs. 対照; †P<0.05 vs. IGF-1単独; ‡P<0.05 vs. IGF-1+各抑制剤。Aは、TUNEL染色の代表的な写真を示す。核をDAPIで染色した;緑色蛍光はTUNEL陽性細胞を示す。TUNEL陽性細胞はIGF-1の注入により減少したが、ウォルトマンニン及びPD98059の存在下では頻繁に観察された。WM、ウォルトマンニン; PD、PD98059。スケールバー=20μm。B及びCは、TUNELアッセイによる、培養したMSCに対するIGF-1の抗アポトーシス効果の定量的解析結果を示す。MSCのアポトーシスが低酸素及び血清枯渇により誘導された。Bは、MSCに対するIGF-1の抗アポトーシス効果の用量依存性を示す。Cは、ウォルトマンニン及びPD98059の両方がIGF-1の抗アポトーシス効果を有意に抑制し、また、両抑制剤の組み合わせが各抑制剤単独より有意に高い抑制効果を示すことを表す。*P<0.05 vs. 低酸素単独; †P<0.05 vs. IGF-1とともに低酸素; ‡P<0.05 vs. IGF-1とともに低酸素+各抑制剤。 間葉系幹細胞とIGF-1とを組み合わせてなる、損傷した組織を再生し、患者の該組織の機能を改善するための医薬。 間葉系幹細胞が患者から採集された自家細胞である、請求項1記載の医薬。 間葉系幹細胞が患者の損傷した組織の部位内に導入される、請求項1記載の医薬。 間葉系幹細胞が患者への導入前に培養中で増幅される、請求項1記載の医薬。 損傷した組織が心組織及び/又は血管組織である、請求項1記載の医薬。 患者が、心筋梗塞、心筋症、心筋炎、心不全、狭心症、虚血性心疾患、閉塞性動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、末梢動脈疾患、冠状動脈疾患、脳血栓症、脳塞栓症、脳梗塞、及び脳卒中からなる群より選ばれる疾患に罹患している、請求項5記載の医薬。 損傷した組織が心組織である、請求項5記載の医薬。 患者が、心筋梗塞、心筋症、心筋炎、心不全、狭心症、及び虚血性心疾患からなる群より選ばれる疾患に罹患している、請求項1記載の医薬。 疾患が心筋梗塞である、請求項7記載の医薬。 【課題】心筋梗塞等の多様な難治性心血管疾患を引き起こす損傷した組織を再生し且つ修復することにより、そのような疾患を治療するための効果的な治療方法を提供すること。【解決手段】本発明は、間葉系幹細胞の移植を利用することによる種々の疾患を治療するための新規方法を提供する。より具体的には、本発明は、従来法を用いては治療し得なかった疾患を有する患者内への間葉系幹細胞の移植、及び、インスリン様成長因子−1(IGF-1)の投与を用いる、複合療法を提供する。【選択図】なし配列表