生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_ガスキャビテーション試験方法および装置
出願番号:2006165771
年次:2007
IPC分類:G01N 7/00


特許情報キャッシュ

藤原 龍雄 白枝 哲次 堀 哲郎 清水 勝公 JP 2007333566 公開特許公報(A) 20071227 2006165771 20060615 ガスキャビテーション試験方法および装置 清水建設株式会社 000002299 志賀 正武 100064908 高橋 詔男 100108578 渡邊 隆 100089037 青山 正和 100101465 藤原 龍雄 白枝 哲次 堀 哲郎 清水 勝公 G01N 7/00 20060101AFI20071130BHJP JPG01N7/00 B 4 1 OL 7 本発明は、ガスキャビテーションの発生条件を求めるための試験方法、およびそのための試験装置に関する。 周知のように、ポンプにおいて生じるキャビテーションには、蒸気キャビテーションとガスキャビテーションの2つの現象がある。 蒸気キャビテーションは、ある温度の液体の圧力がその温度によって決まる飽和蒸気圧より低くなると、そこで液体が蒸発して蒸気の泡が生じることに起因する現象である。ポンプやプロペラの流れは場所により加速され圧力が低くなるので、常温でも液体が蒸発し気泡となり易く、それにより蒸気キャビテーションが発生し易くなる。 一方、ガスキャビテーションは、液体中の溶存ガスが過飽和になって液体中に溶出する現象である。通常、ガスキャビテーションは蒸気キャビテーションが発生する前に生じ、サイホン切れの原因となるとこが知られている。 それら2つのキャビテーションのうち、蒸気キャビテーションは気泡の崩壊時にきわめて高い圧力が発生し、それにより固体面が破壊(壊食)されたり、振動や騒音の原因となることが古くより知られており、そのため、ポンプについての一般的な性能試験(NPSHR試験)においてもキャビテーション発生圧力についての試験が行われている。 一方、ガスキャビテーションはその現象こそ知られているが、それに関する研究はさほど進んでおらず、特に発生因子の定量的な把握はいまだできていない。従来より実施されているポンプの性能試験においてもガスキャビテーションについては全く考慮されておらず、上記のNPSHR試験においても完全脱気状態(つまり溶存ガスはない状態)で試験することが前提となっているので溶存ガスの影響を把握することはできない。 それ故、たとえば特許文献1に示されるような取水施設に設置される大規模な吸水装置等においては、ガスキャビテーションに起因するサイホン切れ等の限界を定量的に把握できておらず、したがってそのような施設の計画や設計は経験に頼って充分な安全率を見込んで行っているのが実状である。特許第3579822号公報 このように、従来においてはガスキャビテーションについての定量的な把握ができておらず、したがってガスキャビテーションに対する有効な対策技術や防止技術も確立していないことから、ガスキャビテーションが問題となることが想定されるような施設の計画・設計に当たってはポンプをはじめとする装置類の設計や仕様決定に充分な安全率を見込まざるを得ず、そのことがその種の施設の建設コスト削減を阻む一因ともなっている。 上記事情に鑑み、本発明はガスキャビテーションの発生条件を定量的に把握するためのできる簡易にして有効適切な試験方法およびそのための試験装置を提供することを目的としている。 請求項1記載の発明のガスキャビテーション試験方法は、試験水が循環可能な閉鎖循環系に、試験水を循環させるための試験ポンプを設置するとともに、該試験ポンプの吸込側に試験水中の溶存ガス飽和度を調整可能な調整槽を設置し、該調整槽と試験ポンプとの間には、循環中の試験水の状況を目視観測可能かつそこでの真空度を計測可能な気液分離器を設置しておき、前記調整槽により試験水の溶存ガス飽和度を調整して試験ポンプを運転し、循環中の試験水におけるガスキャビテーションの発生状況を前記気液分離器により確認してその時点の真空度を計測することによって、ガスキャビテーションが発生する限界の水圧を試験水中の溶存ガス飽和度をパラメータとして求めることを特徴とする。 請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明のガスキャビテーション試験方法において、試験水中の溶存ガス飽和度を設定することに加えて、試験水の水温と試験ポンプの吸込流速を設定して試験水を循環させることにより、ガスキャビテーションが発生する限界の水圧を、溶存ガス飽和度のみならず水温および吸込流速をパラメータとして求めることを特徴とする。 請求項3記載の発明のガスキャビテーション試験装置は、試験水が循環可能な閉鎖循環系に、試験水を循環させるための試験ポンプを設置するとともに、該試験ポンプの吸込側に試験水中の溶存ガス飽和度を調整可能な調整槽を設置し、該調整槽と試験ポンプとの間に、循環中の試験水の状況を目視観測可能かつそこでの真空度を計測可能な気液分離器を設置してなることを特徴とする。 請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明のガスキャビテーション試験装置において、調整槽には循環水の水温を調整し維持するための水温調整手段を備え、かつ試験ポンプの吸込流速を計測するための流速計を具備してなることを特徴とする。 本発明のガスキャビテーション試験方法および試験装置によれば、調整槽により溶存ガス飽和度を様々に変更して試験水を循環させつつ、気液分離器を目視観測してガスキャビテーションの発生の有無やその状況を確認し、ガスキャビテーションが発生する限界の水圧を測定する試験を繰り返すことにより、ガスキャビテーションの発生やその状況と溶存ガス飽和度との関係を定量的に把握することができる。また、調整槽による試験水の水温を調節可能とし、試験ポンプの流速を計測することにより、溶存ガス飽和度のみならず水温や吸込流速の影響も同様に定量的に把握することができる。したがって本発明によれば、その試験結果を取水施設における吸水装置等の計画や設計や活用することにより、過度の安全率を見込むことなく合理的かつ経済的な計画・設計が可能となる。 図1は本発明の一実施形態であるガスキャビテーション試験装置の概略構成を示す系統図である。 本実施形態の試験装置は、試験ポンプ1によって試験水を実線矢印のように循環させるための閉鎖循環系を基本構成としており、試験水の循環水量や水圧、流速等の試験条件を様々に変更して試験を繰り返すことによってガスキャビテーションの発生を再現し、その際の諸データを採取するために、試験ポンプ1の吐出圧を計測するための圧力計2、吸込圧を計測するための連成計3、吸込流速を計測するための流速計4をはじめとして、適宜のセンサ類が適所に設置されているものである。 特に本実施形態の試験装置は、ガスキャビテーションの発生に対する溶存ガス飽和度および水温の影響を把握することを主たる目的として構成されており、そのため上記の閉鎖循環系には試験水中の溶存ガス飽和度および水温を調整するための調整槽5と、試験ポンプ1の吸込側におけるガスキャビテーションの発生状況を目視観測するための気液分離器6とを設置しているものである。 調整槽5は、試験水を貯留可能な小容量(たとえば0.1m3程度)の水槽7中に、試験水に溶け込むガス(一般には大気で良い)を鎖線矢印で示すように調整弁8、エジェクタ9を介して吹き込みつつ、水槽7中の試験水を破線矢印で示すように調整用循環ポンプ10により循環させ、かつ調整弁11によりその循環水量を調節することによって溶存ガス飽和度を所望値に設定し維持するためのものである。なお、水槽7に設けられている符号12は排水管、13は給水管、14はオーバーブロー管である。 また、この調整槽5においては試験水の水温も調整可能とされていて、水温調整手段としての加熱冷却コイル15と熱源装置16(たとえば冷温水ヒートポンプが好適に採用可能である)とが付設されている。 さらに、この調整槽5には、溶存ガス飽和度の設定と維持、および水温の設定と維持のための制御装置17が付設されている。 制御装置17は、主制御部18、溶存ガス濃度取得部19、水温取得部20、状態設定部21、指令部22、およびメモリ23を有しており、状態設定部21により溶存ガス飽和度を所望値に設定し、水槽7に設置されている溶存ガスセンサ24により溶存ガス濃度を検出し、それに基づき指令部22が上記の調整弁8、11をフィードバック制御してエアの吹き込み量と循環水量を調節することによって溶存ガス飽和度を設定値に維持するようにされている。なお、溶存ガス飽和度を低下させるように制御する場合には、気液分離器6(詳細後述)に付設されている真空ポンプ28を作動させて気液分離器6内の圧力を下げ、それによって系内から脱気を行うと良い。 また、水温の設定および維持は、状態設定部21により水温を所望値に設定し、水温センサ25により水槽7内の水温を検出し、それにより指令部22が熱源装置16をフィードバック制御して水温を設定値に維持するようになっている。 上記の調整槽5によって溶存ガス飽和度と水温が調整された試験水は、試験ポンプ1により吸い込まれてこの閉鎖循環系を循環するのであるが、調整槽5と試験ポンプ1との間には上記の気液分離器6が配置されていて、調整槽5からの試験水はこの気液分離器6を通ってから試験ポンプ1により吸い込まれるようになっている。符号26はバイパス管である。 気液分離器6は内部を目視可能な透明な小容量(たとえば0.004m3程度)の縦型容器であって、試験水が試験ポンプ1に吸い込まれる直前にこの気液分離器6を通過することによって、そこでのガスキャビテーションの発生の有無やその状況(つまり、ガスキャビテーション現象の発生により溶存ガスが試験水中から気泡として発生する状況)を容易に目視観測することができ、かつ装置内の真空度を真空計27により計測することにより、ガスキャビテーションが発生する時点の水圧を定量的に把握できるようになっている。また、気液分離器6には装置内を負圧とするための真空ポンプ28も付設されている。 上記構成の試験装置による試験は、試験ポンプ1を運転して試験水を循環させた際のガスキャビテーションの発生の有無やその状況を気液分離器6で確認することで行い、その際には試験水の循環水量や吐出圧、吸込圧、吸込流速等を様々に変更して試験を繰り返すことにより、ガスキャビテーションの発生因子に関するデータを採取することを基本とするのであるが、本実施形態の試験装置では特に従来においては考慮されていなかった溶存ガス飽和度および水温の影響を把握することが可能である。 すなわち、上記装置では試験水中の溶存ガス飽和度および試験水の水温を任意に調整可能な調整槽5を備えたことにより、その調整槽5によって溶存ガス飽和度と水温を様々に変更して試験を繰り返すことによりガスキャビテーションに対する溶存ガス飽和度および水温の影響を把握することができ、ガスキャビテーションが発生する限界の水圧を溶存ガス飽和度および水温をパラメータとして定量的に求めることができる。 図2は上記試験装置による試験により得た結果の一例を示す。これは、ガスキャビテーションが発生した時点の水圧と水温との関係を溶存ガス飽和度(100%と80%の2段階)および吸込流速(1.0m/sと0.5m/sの2段階)をパラメータとして求めたものである。図中1a〜4aはガスキャビテーションが発生するものの連続運転はそのまま可能である限界、1b〜4bはガスキャビテーションが発生すると連続運転が不可能(10分程度の短時間のうちには停止してしまう)となる場合を示す。 この図から、他の条件が同じであれば、水温が低いほど、溶存ガス飽和度が低いほど、吸込流速が小さいほど、ガスキャビテーションが生じ難く、したがって安定な運転を継続し易い傾向にあることが分かり、ガスキャビテーションの発生条件や運転限界としての水温や溶存ガス飽和度、流速の値をこの図から定量的に決定することができる。 なお、上記実施形態では溶存ガス飽和度の他に水温と吸込流速もパラメータとしたが、それらの影響を特に考慮する必要がなければ溶存ガス飽和度のみをパラメータとすることでも充分に有効であり、その場合には調整槽5や制御装置17には水温調整のための手段や機構は省略して良いし、流速計4の設置やその計測も不要であれば省略して差し支えない。本発明の実施形態である試験装置の概略構成を示す系統図である。本発明の試験方法により得られた結果の一例を示す図である。符号の説明 1 試験ポンプ 2 圧力計 3 連成計 4 流速計 5 調整槽 6 気液分離器 7 水槽 8 調整弁 9 エジェクタ 10 調整用循環ポンプ 11 調整弁 15 加熱冷却コイル 16 熱源装置 17 制御装置 18 主制御部 19 溶存ガス濃度取得部 20 水温取得部 21 状態設定部 22 指令部 23 メモリ 24 溶存ガスセンサ 25 水温センサ 27 真空計 28 真空ポンプ 試験水が循環可能な閉鎖循環系に、試験水を循環させるための試験ポンプを設置するとともに、該試験ポンプの吸込側に試験水中の溶存ガス飽和度を調整可能な調整槽を設置し、該調整槽と試験ポンプとの間には、循環中の試験水の状況を目視観測可能かつそこでの真空度を計測可能な気液分離器を設置しておき、 前記調整槽により試験水の溶存ガス飽和度を調整して試験ポンプを運転し、循環中の試験水におけるガスキャビテーションの発生状況を前記気液分離器により確認してその時点の真空度を計測することによって、ガスキャビテーションが発生する限界の水圧を溶存ガス飽和度をパラメータとして求めることを特徴とするガスキャビテーション試験方法。 請求項1記載のガスキャビテーション試験方法であって、 試験水中の溶存ガス飽和度を設定することに加えて、試験水の水温と試験ポンプの吸込流速を設定して試験水を循環させることにより、ガスキャビテーションが発生する限界の水圧を、溶存ガス飽和度のみならず水温および吸込流速をパラメータとして求めることを特徴とするガスキャビテーション試験方法。 試験水が循環可能な閉鎖循環系に、試験水を循環させるための試験ポンプを設置するとともに、該試験ポンプの吸込側に試験水中の溶存ガス飽和度を調整可能な調整槽を設置し、該調整槽と試験ポンプとの間に、循環中の試験水の状況を目視観測可能かつそこでの真空度を計測可能な気液分離器を設置してなることを特徴とするガスキャビテーション試験装置。 請求項3記載のガスキャビテーション試験装置であって、 調整槽には循環水の水温を調整し維持するための水温調整手段を備え、かつ試験ポンプの吸込流速を計測するための流速計を具備してなることを特徴とするガスキャビテーション試験装置。 【課題】ガスキャビテーションの発生条件を定量的に把握可能な簡易にして有効適切な試験方法および試験装置を提供する。【解決手段】試験水が循環可能な閉鎖循環系に、試験水を循環させるための試験ポンプ1を設置するとともに、試験ポンプの吸込側に試験水中の溶存ガス飽和度を調整可能な調整槽5を設置し、調整槽と試験ポンプとの間には、循環中の試験水の状況を目視観測可能かつそこでの真空度を計測可能な気液分離器6を設置する。調整槽により試験水の溶存ガス飽和度を調整して試験ポンプを運転し、循環中の試験水におけるガスキャビテーションの発生状況を気液分離器により確認してその時点の真空度を計測し、ガスキャビテーションが発生する限界の水圧を溶存ガス飽和度をパラメータとして求める。水温および吸込流速を他のパラメータとする。【選択図】図1


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特許公報(B2)_ガスキャビテーション試験方法および装置

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_ガスキャビテーション試験方法および装置
出願番号:2006165771
年次:2011
IPC分類:G01N 7/00


特許情報キャッシュ

藤原 龍雄 白枝 哲次 堀 哲郎 清水 勝公 JP 4793645 特許公報(B2) 20110805 2006165771 20060615 ガスキャビテーション試験方法および装置 清水建設株式会社 000002299 志賀 正武 100064908 高橋 詔男 100108578 渡邊 隆 100089037 青山 正和 100101465 藤原 龍雄 白枝 哲次 堀 哲郎 清水 勝公 20111012 G01N 7/00 20060101AFI20110921BHJP JPG01N7/00 B G01N5/00−9/36 JSTPlus,JST7580 国際公開第2006/034040(WO,A1) 特表2008−514125(JP,A) 特開平04−232437(JP,A) 特開昭57−037244(JP,A) 特開昭48−095889(JP,A) 特許第3579822(JP,B2) 4 2007333566 20071227 7 20081119 樋口 宗彦 本発明は、ガスキャビテーションの発生条件を求めるための試験方法、およびそのための試験装置に関する。 周知のように、ポンプにおいて生じるキャビテーションには、蒸気キャビテーションとガスキャビテーションの2つの現象がある。 蒸気キャビテーションは、ある温度の液体の圧力がその温度によって決まる飽和蒸気圧より低くなると、そこで液体が蒸発して蒸気の泡が生じることに起因する現象である。ポンプやプロペラの流れは場所により加速され圧力が低くなるので、常温でも液体が蒸発し気泡となり易く、それにより蒸気キャビテーションが発生し易くなる。 一方、ガスキャビテーションは、液体中の溶存ガスが過飽和になって液体中に溶出する現象である。通常、ガスキャビテーションは蒸気キャビテーションが発生する前に生じ、サイホン切れの原因となるとこが知られている。 それら2つのキャビテーションのうち、蒸気キャビテーションは気泡の崩壊時にきわめて高い圧力が発生し、それにより固体面が破壊(壊食)されたり、振動や騒音の原因となることが古くより知られており、そのため、ポンプについての一般的な性能試験(NPSHR試験)においてもキャビテーション発生圧力についての試験が行われている。 一方、ガスキャビテーションはその現象こそ知られているが、それに関する研究はさほど進んでおらず、特に発生因子の定量的な把握はいまだできていない。従来より実施されているポンプの性能試験においてもガスキャビテーションについては全く考慮されておらず、上記のNPSHR試験においても完全脱気状態(つまり溶存ガスはない状態)で試験することが前提となっているので溶存ガスの影響を把握することはできない。 それ故、たとえば特許文献1に示されるような取水施設に設置される大規模な吸水装置等においては、ガスキャビテーションに起因するサイホン切れ等の限界を定量的に把握できておらず、したがってそのような施設の計画や設計は経験に頼って充分な安全率を見込んで行っているのが実状である。特許第3579822号公報 このように、従来においてはガスキャビテーションについての定量的な把握ができておらず、したがってガスキャビテーションに対する有効な対策技術や防止技術も確立していないことから、ガスキャビテーションが問題となることが想定されるような施設の計画・設計に当たってはポンプをはじめとする装置類の設計や仕様決定に充分な安全率を見込まざるを得ず、そのことがその種の施設の建設コスト削減を阻む一因ともなっている。 上記事情に鑑み、本発明はガスキャビテーションの発生条件を定量的に把握するためのできる簡易にして有効適切な試験方法およびそのための試験装置を提供することを目的としている。 請求項1記載の発明のガスキャビテーション試験方法は、試験水が循環可能な閉鎖循環系に、試験水を循環させるための試験ポンプを設置するとともに、該試験ポンプの吸込側に試験水中の溶存ガス飽和度を調整可能な調整槽を設置し、該調整槽と試験ポンプとの間には、循環中の試験水の状況を目視観測可能かつそこでの真空度を計測可能な気液分離器を設置しておき、前記調整槽により試験水の溶存ガス飽和度を調整して試験ポンプを運転し、循環中の試験水におけるガスキャビテーションの発生状況を前記気液分離器により確認してその時点の真空度を計測することによって、ガスキャビテーションが発生する限界の水圧を試験水中の溶存ガス飽和度をパラメータとして求めることを特徴とする。 請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明のガスキャビテーション試験方法において、試験水中の溶存ガス飽和度を設定することに加えて、試験水の水温と試験ポンプの吸込流速を設定して試験水を循環させることにより、ガスキャビテーションが発生する限界の水圧を、溶存ガス飽和度のみならず水温および吸込流速をパラメータとして求めることを特徴とする。 請求項3記載の発明のガスキャビテーション試験装置は、試験水が循環可能な閉鎖循環系に、試験水を循環させるための試験ポンプを設置するとともに、該試験ポンプの吸込側に試験水中の溶存ガス飽和度を調整可能な調整槽を設置し、該調整槽と試験ポンプとの間に、循環中の試験水の状況を直接目視観測可能とするための透明な容器からなり、かつそこでの真空度を計測可能な気液分離器を設置してなることを特徴とする。 請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明のガスキャビテーション試験装置において、調整槽には循環水の水温を調整し維持するための水温調整手段を備え、かつ試験ポンプの吸込流速を計測するための流速計を具備してなることを特徴とする。 本発明のガスキャビテーション試験方法および試験装置によれば、調整槽により溶存ガス飽和度を様々に変更して試験水を循環させつつ、気液分離器を目視観測してガスキャビテーションの発生の有無やその状況を確認し、ガスキャビテーションが発生する限界の水圧を測定する試験を繰り返すことにより、ガスキャビテーションの発生やその状況と溶存ガス飽和度との関係を定量的に把握することができる。また、調整槽による試験水の水温を調節可能とし、試験ポンプの流速を計測することにより、溶存ガス飽和度のみならず水温や吸込流速の影響も同様に定量的に把握することができる。したがって本発明によれば、その試験結果を取水施設における吸水装置等の計画や設計や活用することにより、過度の安全率を見込むことなく合理的かつ経済的な計画・設計が可能となる。 図1は本発明の一実施形態であるガスキャビテーション試験装置の概略構成を示す系統図である。 本実施形態の試験装置は、試験ポンプ1によって試験水を実線矢印のように循環させるための閉鎖循環系を基本構成としており、試験水の循環水量や水圧、流速等の試験条件を様々に変更して試験を繰り返すことによってガスキャビテーションの発生を再現し、その際の諸データを採取するために、試験ポンプ1の吐出圧を計測するための圧力計2、吸込圧を計測するための連成計3、吸込流速を計測するための流速計4をはじめとして、適宜のセンサ類が適所に設置されているものである。 特に本実施形態の試験装置は、ガスキャビテーションの発生に対する溶存ガス飽和度および水温の影響を把握することを主たる目的として構成されており、そのため上記の閉鎖循環系には試験水中の溶存ガス飽和度および水温を調整するための調整槽5と、試験ポンプ1の吸込側におけるガスキャビテーションの発生状況を目視観測するための気液分離器6とを設置しているものである。 調整槽5は、試験水を貯留可能な小容量(たとえば0.1m3程度)の水槽7中に、試験水に溶け込むガス(一般には大気で良い)を鎖線矢印で示すように調整弁8、エジェクタ9を介して吹き込みつつ、水槽7中の試験水を破線矢印で示すように調整用循環ポンプ10により循環させ、かつ調整弁11によりその循環水量を調節することによって溶存ガス飽和度を所望値に設定し維持するためのものである。なお、水槽7に設けられている符号12は排水管、13は給水管、14はオーバーブロー管である。 また、この調整槽5においては試験水の水温も調整可能とされていて、水温調整手段としての加熱冷却コイル15と熱源装置16(たとえば冷温水ヒートポンプが好適に採用可能である)とが付設されている。 さらに、この調整槽5には、溶存ガス飽和度の設定と維持、および水温の設定と維持のための制御装置17が付設されている。 制御装置17は、主制御部18、溶存ガス濃度取得部19、水温取得部20、状態設定部21、指令部22、およびメモリ23を有しており、状態設定部21により溶存ガス飽和度を所望値に設定し、水槽7に設置されている溶存ガスセンサ24により溶存ガス濃度を検出し、それに基づき指令部22が上記の調整弁8、11をフィードバック制御してエアの吹き込み量と循環水量を調節することによって溶存ガス飽和度を設定値に維持するようにされている。なお、溶存ガス飽和度を低下させるように制御する場合には、気液分離器6(詳細後述)に付設されている真空ポンプ28を作動させて気液分離器6内の圧力を下げ、それによって系内から脱気を行うと良い。 また、水温の設定および維持は、状態設定部21により水温を所望値に設定し、水温センサ25により水槽7内の水温を検出し、それにより指令部22が熱源装置16をフィードバック制御して水温を設定値に維持するようになっている。 上記の調整槽5によって溶存ガス飽和度と水温が調整された試験水は、試験ポンプ1により吸い込まれてこの閉鎖循環系を循環するのであるが、調整槽5と試験ポンプ1との間には上記の気液分離器6が配置されていて、調整槽5からの試験水はこの気液分離器6を通ってから試験ポンプ1により吸い込まれるようになっている。符号26はバイパス管である。 気液分離器6は内部を目視可能な透明な小容量(たとえば0.004m3程度)の縦型容器であって、試験水が試験ポンプ1に吸い込まれる直前にこの気液分離器6を通過することによって、そこでのガスキャビテーションの発生の有無やその状況(つまり、ガスキャビテーション現象の発生により溶存ガスが試験水中から気泡として発生する状況)を容易に目視観測することができ、かつ装置内の真空度を真空計27により計測することにより、ガスキャビテーションが発生する時点の水圧を定量的に把握できるようになっている。また、気液分離器6には装置内を負圧とするための真空ポンプ28も付設されている。 上記構成の試験装置による試験は、試験ポンプ1を運転して試験水を循環させた際のガスキャビテーションの発生の有無やその状況を気液分離器6で確認することで行い、その際には試験水の循環水量や吐出圧、吸込圧、吸込流速等を様々に変更して試験を繰り返すことにより、ガスキャビテーションの発生因子に関するデータを採取することを基本とするのであるが、本実施形態の試験装置では特に従来においては考慮されていなかった溶存ガス飽和度および水温の影響を把握することが可能である。 すなわち、上記装置では試験水中の溶存ガス飽和度および試験水の水温を任意に調整可能な調整槽5を備えたことにより、その調整槽5によって溶存ガス飽和度と水温を様々に変更して試験を繰り返すことによりガスキャビテーションに対する溶存ガス飽和度および水温の影響を把握することができ、ガスキャビテーションが発生する限界の水圧を溶存ガス飽和度および水温をパラメータとして定量的に求めることができる。 図2は上記試験装置による試験により得た結果の一例を示す。これは、ガスキャビテーションが発生した時点の水圧と水温との関係を溶存ガス飽和度(100%と80%の2段階)および吸込流速(1.0m/sと0.5m/sの2段階)をパラメータとして求めたものである。図中1a〜4aはガスキャビテーションが発生するものの連続運転はそのまま可能である限界、1b〜4bはガスキャビテーションが発生すると連続運転が不可能(10分程度の短時間のうちには停止してしまう)となる場合を示す。 この図から、他の条件が同じであれば、水温が低いほど、溶存ガス飽和度が低いほど、吸込流速が小さいほど、ガスキャビテーションが生じ難く、したがって安定な運転を継続し易い傾向にあることが分かり、ガスキャビテーションの発生条件や運転限界としての水温や溶存ガス飽和度、流速の値をこの図から定量的に決定することができる。 なお、上記実施形態では溶存ガス飽和度の他に水温と吸込流速もパラメータとしたが、それらの影響を特に考慮する必要がなければ溶存ガス飽和度のみをパラメータとすることでも充分に有効であり、その場合には調整槽5や制御装置17には水温調整のための手段や機構は省略して良いし、流速計4の設置やその計測も不要であれば省略して差し支えない。本発明の実施形態である試験装置の概略構成を示す系統図である。本発明の試験方法により得られた結果の一例を示す図である。符号の説明 1 試験ポンプ 2 圧力計 3 連成計 4 流速計 5 調整槽 6 気液分離器 7 水槽 8 調整弁 9 エジェクタ 10 調整用循環ポンプ 11 調整弁 15 加熱冷却コイル 16 熱源装置 17 制御装置 18 主制御部 19 溶存ガス濃度取得部 20 水温取得部 21 状態設定部 22 指令部 23 メモリ 24 溶存ガスセンサ 25 水温センサ 27 真空計 28 真空ポンプ 試験水が循環可能な閉鎖循環系に、試験水を循環させるための試験ポンプを設置するとともに、該試験ポンプの吸込側に試験水中の溶存ガス飽和度を調整可能な調整槽を設置し、該調整槽と試験ポンプとの間には、循環中の試験水の状況を目視観測可能かつそこでの真空度を計測可能な気液分離器を設置しておき、 前記調整槽により試験水の溶存ガス飽和度を調整して試験ポンプを運転し、循環中の試験水におけるガスキャビテーションの発生状況を前記気液分離器により確認してその時点の真空度を計測することによって、ガスキャビテーションが発生する限界の水圧を溶存ガス飽和度をパラメータとして求めることを特徴とするガスキャビテーション試験方法。 請求項1記載のガスキャビテーション試験方法であって、 試験水中の溶存ガス飽和度を設定することに加えて、試験水の水温と試験ポンプの吸込流速を設定して試験水を循環させることにより、ガスキャビテーションが発生する限界の水圧を、溶存ガス飽和度のみならず水温および吸込流速をパラメータとして求めることを特徴とするガスキャビテーション試験方法。 試験水が循環可能な閉鎖循環系に、試験水を循環させるための試験ポンプを設置するとともに、該試験ポンプの吸込側に試験水中の溶存ガス飽和度を調整可能な調整槽を設置し、該調整槽と試験ポンプとの間に、循環中の試験水の状況を直接目視観測可能とするための透明な容器からなり、かつそこでの真空度を計測可能な気液分離器を設置してなることを特徴とするガスキャビテーション試験装置。 請求項3記載のガスキャビテーション試験装置であって、 調整槽には循環水の水温を調整し維持するための水温調整手段を備え、かつ試験ポンプの吸込流速を計測するための流速計を具備してなることを特徴とするガスキャビテーション試験装置。


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