タイトル: | 公開特許公報(A)_パップ剤用基剤および膏体 |
出願番号: | 2006156101 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | A61K 9/70,A61K 47/32,C08F 220/04 |
伊藤 賢司 青山 武嗣 松本 宏恵 相宮 良一 JP 2007320939 公開特許公報(A) 20071213 2006156101 20060605 パップ剤用基剤および膏体 東亞合成株式会社 000003034 日本純薬株式会社 390039974 幸田 全弘 100069903 伊藤 賢司 青山 武嗣 松本 宏恵 相宮 良一 A61K 9/70 20060101AFI20071116BHJP A61K 47/32 20060101ALI20071116BHJP C08F 220/04 20060101ALI20071116BHJP JPA61K9/70 405A61K47/32C08F220/04 8 OL 15 4C076 4J100 4C076AA74 4C076BB31 4C076DD24A 4C076DD26A 4C076DD27A 4C076DD38A 4C076EE11A 4C076FF36 4C076FF68 4J100AJ02P 4J100AK08Q 4J100CA04 4J100JA51 この発明は、薬効成分や水分などからなる含水ゲル状膏体を、不織布、織編物などの支持体に施してなるパップ剤において、パップ剤を構成するための基剤およびこの基剤を用いた膏体に関するもので、パップ剤の製造技術に関するものである。 不織布、織編物などの支持体上に、薬効成分、水分やその他の成分を混合して塗布してなるパップ剤は、従来、ポリアクリル酸やポリメタアクリル酸(以下、アクリルとメタアクリルを合わせて(メタ)アクリルという。)あるいは、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム等のポリ(メタ)アクリル酸塩等のカルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸系重合体が使用されている。 特に、ポリアクリル酸のカルボキシル基の一部を、水酸化ナトリウムなどで中和したポリアクリル酸部分中和物は、パップ剤としての保水性に優れ、使用時の皮膚への密着性、使用後の剥離性などにおいて幾多の長所を有するため、広く用いられている。 例えば、皮膚への密着性、使用後の剥離性、保水性に優れたパップ剤用基剤を得るために、α,β−不飽和カルボン酸もしくはその塩の重合又は共重合において、多官能性架橋剤を単量体の総量に対して10−4 〜10−2 モル%、反応開始温度を−5〜40℃、重合触媒量を単量体の総量に対して10−5 〜10−1 重量%という条件で共重合することで得られるpH8以下で、かつ10〜70重量%の水可溶部分を有するポリカルボン酸系架橋共重合体を有効成分として、その0.5〜15重量%をパップ剤に添加する技術が、特開昭58−21612号公報(特許文献1)に記載されている。 また、特開昭61−260014号公報(特許文献2)においては、含水率20〜80重量%、化学量論的中和率が50〜100%、重量平均分子量が1×106 のポリアクリル酸一価塩に、アルミニウム塩と多価アルコールとを含有させることで、ゲル状膏体の骨格が強靭となり、高温時における優れた保形性を有し、かつ保水性にも富み、皮膚に対する接着性も良好とする基剤を提供する技術が記載されている。 また、特開平6−135828号公報(特許文献3)では、粘着力、凝集力が高く、経時安定性に優れ、かつ皮膚安全性の高い経皮吸収製剤として、10%水溶液粘度が100〜1000cpsの固形又は粉末状ポリアクリル酸を必須成分とし、水溶性高分子、多価アルコール、水からなるもの、さらに薬物を含有したものが開示されている。 さらに、特開平10−237110号公報(特許文献4)には、ゲルにした際、不溶解物が少なく、中和率が40〜60%で、0.2%粘度が500〜800mPa・sであるポリアクリル酸部分中和物が巴布剤の増粘剤として優れていると例示されている。特開昭58−021612号公報 (特許請求の範囲)特開昭61−260014号公報 (特許請求の範囲)特開平 6−135828号公報 (特許請求の範囲)特開平10−237110号公報 (特許請求の範囲) パップ剤に用いられる基剤あるいは膏体に求められる条件は、(1)支持体である不織布、織編物などの背面から膏体の滲み出しがないこと(2)保水性に優れていること(3)使用時の皮膚への密着性、使用後の剥離性に優れていること(4)経時安定性に優れていること(5)安全性に優れていること(6)均一な架橋状態が形成でき、かつ大量生産可能なものであることなどである。 しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載の発明における重合体を用いたものは、パップ剤としての保水性に優れ、使用時の皮膚への密着性、使用後の剥離性などにおいて長所を有するものの、使用時の粘着性を十分に確保することが困難である。加えて、アルミニウム化合物等の種類や架橋剤量の調整により、膏体を柔らかくすることで粘着性を向上させることも試みられているが、膏体を柔らかくすると、膏体の滲み出しやダレの問題が生じ、製造時の保型性を満足する膏体とすることができない。 また、特許文献3に記載の発明は、粉末状のポリアクリル酸を、ポリアクリル酸部分中和物と併用することで接着力を向上させるものであるが、膏体の経時安定性が不十分で、時間の経過につれて接着の状態やゲル状の膏体自体の状態変化が生じ、支持体への膏体の滲み出しや粘着性の悪化という問題を生じることがあり、未だ根本的な解決策とはなり得ていない。 さらに、特許文献4に記載のポリアクリル酸部分中和物をパップ剤の基剤とした場合、パップ剤の滲み出しは良好なものの、接着力の良好な膏体が得られがたく、完全なものとは云えないものである。 この発明はかかる現状に鑑み、保水性および賦形性に優れ、支持体への膏体の滲み出しがなく、粘着性が優れているにもかかわらず剥離性も良好で、経時安定性および安全性に優れたパップ剤用の基剤および膏体を提供せんとするものである。 さらに、この発明の他の目的は、このように高性能なパップ剤を製造する際して、均一な架橋状態で、かつ、生産性を飛躍的に向上させ得るパップ剤用の基剤および膏体を提供せんとするものである。 上記課題を解決するために、この発明の請求項1に記載の発明は、 アクリル酸又はメタクリル酸、およびそれらの塩が主たる構成単量体であり、 酸と塩の構成割合が、モル比で40/60〜70/30、温度20℃における0.2質量%水溶液の粘度が200〜450mPa・sである共重合体からなることを特徴とするパップ剤用基剤である。 また、この発明の請求項2に記載の発明は、 請求項1記載のパップ剤用基剤において、 前記共重合体を構成する酸と塩の割合が、 モル比で、50/50〜60/40であることを特徴とするものである。 また、この発明の請求項3に記載の発明は、 請求項1又は2に記載のパップ剤用基剤において、 前記共重合体の温度20℃における0.2質量%水溶液の粘度が、 300〜400mPa・sであることを特徴とするものである。 また、この発明の請求項4に記載の発明は、 請求項1〜3のいずれかに記載のパップ剤用基剤において、 前記共重合体が、 光重合により調製されたものであることを特徴とするものである。 また、この発明の請求項5の発明は、 アクリル酸又はメタクリル酸、およびそれらの塩が主たる構成単量体であり、 酸と塩の構成割合が、モル比で40/60〜70/30、温度20℃における0.2質量%水溶液の粘度が200〜450mPa・sである共重合体と、多価金属化合物からなることを特徴とするパップ剤用膏体である。 また、この発明の請求項6に記載の発明は、 請求項5に記載のパップ剤用膏体において、 前記多価金属は、 硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテートより選ばれたアルミニウム化合物であることを特徴とするものである。 また、この発明の請求項7に記載の発明は、 請求項5又は6に記載のパップ剤用膏体において、 保水剤として、多価アルコールを含有することを特徴とするものである。 また、この発明の請求項8に記載の発明は、 請求項7に記載のパップ剤用膏体において、 前記多価アルコールが、 グリセリンであることを特徴とするものである。 この発明のパップ剤用基剤、さらにはこの基剤にアルミ化合物や多価アルコールの添加された膏体は、基剤を構成する、特定の部分中和されたポリ(メタ)アクリル酸構造を有する共重合体が、バランスのよい架橋構造を形成するため、保水性、接着性、賦形性に優れ、支持体への膏体滲み出しや粘着性の低下がなく、経時安定性にも優れたゲル状の膏体の調製を可能とするため、それらの特性を有する、優れたパップ剤の調製を可能とするものである。また、前記共重合体中に含まれる未反応単量体や低重合物の含有量は、極少量とされているため、この発明のパップ剤用基剤を用いたパップ剤は、高い安全性も併せ持つものである。 また、この発明における特定の共重合体からなるパップ剤用基剤は、単独でも接着性を有するため、膏体にする際、増粘剤や接着付与剤の添加が不要となる。したがって、膏体の調整時間の短縮、および製造工程数を減らすことを可能とし、延いてはパップ剤の生産性を飛躍的に向上させることを可能とするものである。 以下、この発明のパップ剤用基剤および膏体を実施例に基づいて詳細に説明するが、この発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、この発明の要旨を変更しない限りにおいて、適宜変更実施可能なものである。 なお、この発明のパップ剤用基剤を構成する共重合体は、ポリ(メタ)アクリル酸の一部をアルカリで中和した構造を有するもので、直鎖状又は分岐状の分子構造を有する水溶性の共重合体であって、当該共重合体を構成する主たる単量体は(メタ)アクリル酸およびその塩で、(メタ)アクリル酸とその塩を用いて共重合しても、(メタ)アクリル酸を重合した後、これを部分的に中和しても得られるものである。 その際、この発明の目的とする効果を阻害しない範囲で、他の単量体を共重合して得られる共重合体も、この発明の基剤として有効に用いることが可能である。 かかる単量体として、例えば、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などに代表される不飽和カルボン酸およびそれらの誘導体、そして2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸などの不飽和スルホン酸およびその誘導体などが挙げられる。これらは、必要により1種又は2種以上を、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸塩の合計量に対して、10モル%以下の範囲内で加えることが可能である。 なお、保水性や使用時の皮膚への密着性、使用後の剥離性等の、パップ剤としての基本性能を考慮すると、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸塩の共重合体が好ましく、アクリル酸とアクリル酸塩の共重合体が最も好ましい。 塩としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩などが挙げられるが、この発明にとり好ましいのはナトリウム塩である。 この発明の共重合体を得る重合方法としては、水溶液重合法、スラリー重合法、逆相懸濁重合法、乳化重合法等の、公知の各種ラジカル重合法が挙げられるが、溶剤除去、溶剤の安全性、界面活性剤の混入等を考慮すると、水溶液重合法によることが望ましい。 水溶液重合法は、例えば、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸塩等の重合性単量体水溶液を所定の濃度に調整し、反応系内の溶存酸素を十分に不活性ガスで置換した後、ラジカル重合開始剤を添加し、必要により、適度に加熱や光(紫外線)照射をすることによって重合反応を行なう、という方法である。 加熱して重合反応を行なう場合は、比較的熱に弱い熱重合開始剤を熱分解し、生じたラジカルを開始剤として重合させる方法で、低重合物やゲル物、残存単量体の低減は余り見込めない。 一方、光(紫外線)照射による重合反応は、光重合開始剤を光(紫外線)により励起させることでラジカル化させ、生じたラジカルを開始剤として重合反応を行なう方法で、低温でも重合反応は可能で、反応進行率も良好であって、低重合物やゲル物を低減することができ、この発明にとり好ましい方法である。 光(紫外線)照射を行なって(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸塩の水溶液を共重合反応させると、重合反応の進行に伴なって反応液が粘度を増し、重合反応が完了するときは、通常、含水ゲル状物となる。得られた含水ゲル状物は、裁断した後に熱風、減圧、間接加熱又はそれらを組合わせた各種乾燥法によって乾燥され、さらに、粉砕することによって粉末状の重合体とすることができる。 また、共重合体をパップ剤用基剤として、架橋剤により架橋させて膏体として使用するとき、当該共重合体を構成する(メタ)アクリル酸が、当該共重合体の40モル%以下では、架橋後のゲル状の膏体は固くなり、架橋剤の量をかなり減らさないと十分な接着力を得ることができない。しかしながら、架橋剤の量を減らすと、養生時間を長く取らなければならなくなるので生産性が落ちる。 一方、構成単量体である(メタ)アクリル酸のモル比が、当該共重合体の70モル%を超えると、架橋後のゲル状膏体は柔らかくなり、接着性は向上するものの、膏体からの滲み出しが生じ易くなってしまう。 したがって、共重合体を構成する(メタ)アクリル酸の構成量は、当該共重合体において40〜70モル%でなければならず、50〜60モル%の範囲が好ましい。 この共重合体中に含まれる構成単量体として、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸塩以外の単量体を使用する場合、その構成単量体の使用量は、当該共重合体を構成する全単量体の10モル%以下であることが好ましい。 かかる場合においても、(メタ)アクリル酸とその塩の構成比は、(メタ)アクリル酸:(メタ)アクリル酸塩で40/60〜70/30モル%であることが必要である。 また、共重合体の0.2質量%水溶液の粘度が、温度20℃において450mPa・sより高いと、溶解性、分散性が悪くなる。よって、架橋速度が遅くなり、均一な架橋状態が得られなくなるので、それによる膏体は、性状にバラツキが生じ、接着性および賦形性に優れたパップ剤の調製を困難にし、さらには、架橋型パップ剤に要求される接着性および基剤強度のバランスを崩し、得られるパップ剤の皮膚への貼付を難しくし、また、皮膚への膏体残りや糸引き現象が発生したりするパップ剤を形成することになる。 さらに、ゲル状の膏体の硬化速度も遅くなるため、パップ剤の製造における律速工程である、ゲル状膏体の硬化工程に時間を取られることになる。すなわち、硬化速度の遅延でパップ剤の生産性を著しく低下させることになる。 0.2質量%水溶液の粘度が、温度20℃において、200mPa・s未満の共重合体を用いた膏体だと、ゲル状の膏体の凝集力が低下し、皮膚への膏体残りや糸引き現象が発生することがあり、支持体である不織布、織編物などの背面から膏体の滲み出しが生じ易くなる。 したがって、この発明において、パップ剤用基剤に用いられる共重合体は、温度20℃における0.2質量%水溶液の粘度が、200〜450mPa・sの範囲にあるもので、好ましくは、300〜400mPa・sの粘度を有するものである。 かかる範囲の粘度を有する共重合体をパップ剤の基剤として用いれば、パップ剤の生産性を著しく向上させることが可能となる。 さらに、この発明の共重合体としては、共重合体中に残存する未反応の単量体の量を、5000ppm以下にすることが好ましく、さらに好ましくは、3000ppm以下にすることである。 共重合体に含まれる未反応単量体が5000ppm以上だと、その共重合体を用いたゲル状膏体からなるパップ剤を貼り付けた皮膚が、炎症を起こし易くなる。 なお、残存単量体量が5000ppm以上であるポリアクリル酸部分中和物は、公知技術により、すなわち、光重合や重合後の後処理、すなわち重合開始剤の添加や、重合体の加熱などにより残存単量体量を5000ppm以下にすることができる。 また、この発明の共重合体としては、「医薬品添加物規格」に定められた方法によって分析される低重合物が、10質量%を超えると、ゲル状膏体の凝集力が低下し、皮膚への膏体残りや糸引き現象が発生したり、支持体である不織布、織編物などの背面からの膏体の滲み出しが生じやすくなる。 したがって、共重合体に含まれる低重合物は、10質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは、5質量%以下である。 なお、低重合物の含有量が10質量%以下である共重合体は、光重合や、重合後の後処理、すなわち、洗浄や分級等の公知技術によって得ることができる。 上記のようにして得られた共重合体は、パップ剤の基剤として優れたもので、この基剤に対して、水、架橋剤としての多価金属化合物、さらには保水剤としての多価アルコールを配合し、混合してゲル状の膏体とすることができる。 なお、この発明のパップ剤の膏体には、当然のことではあるが、上記の必須成分以外にも、無機粉末等の添加物や、薬効成分を混合することが可能で、各成分が所定の配合比率となるように一括もしくは逐次添加・混合した後、混練して得られる。 この発明の共重合体からなるパップ剤用基剤を用いて、ゲル状の膏体を調製する際の配合比率としては、通常、膏体全量に対して、共重合体からなるパップ剤用基剤5〜20質量%、グリセリンなどの保水剤1〜50質量%、水酸化アルミニウムなどの多価金属化合物0.001〜2質量%、カオリンなどの無機添加物は1〜10質量%、薬効成分0.01〜10質量%、水分30〜80質量%である。 このパップ剤用基剤が、膏体全量に対して5質量%未満では、粘着性、増粘性、賦形性が低下し、20質量%を超えると増粘し過ぎるため混練が難しくなり、均一な混練ができなくなる。したがって、通常、5〜20質量%、好ましくは7〜12質量%である。 膏体の調製の際に用いられる多価金属化合物は、架橋剤として機能するものであり、具体的には、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム・マグネシウム、アルミニウムグリシネート等に代表されるアルミニウム化合物、塩化カルシウム、硫酸第二鉄などの、2価以上の価数を有する金属を含む化合物(多価金属化合物)などであれば特段の制限はないが、上記した多価金属の中では、アルミニウム化合物が好ましい。 これらの多価金属は、単独で用いても複数を組合わせて用いてもよく、水溶性であっても疎水性であっても用いることが可能である。 また、多価金属化合物の配合量は、共重合体の重合度および配合量、多価金属化合物の種類や他の配合物等の影響によって異なるが、通常は、膏体全量に対して0.001〜2質量%が好ましく、さらに好ましくは0.01〜1質量%である。 この発明のパップ剤用基剤や膏体を用いてパップ剤を調製する際、上記成分の他に外用剤に一般に用いられる添加物、すなわち、製造時の適性や使用時の品質をより改善させることを目的として、ゼラチン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセリン、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム等の水溶性高分子を、増粘剤や粘着付与剤として配合してもよい。 また、保水剤として、例えばグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、ブチレングルコール等の多価アルコールを用いることができる。 但し、エチレングリコールのような人体に有害とされる物質を用いる際には、格別な注意が必要である。 さらに、カオリン、酸化チタン、無水ケイ酸等を粉末無機充填剤、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等を酸化防止剤、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル等を防腐剤等として用いることができ、必要により1種又は2種以上を膏体に配合することができる。 また、パップ剤に配合される、その他の薬効成分の具体例としては、例えば、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、メントール、カンフル、チモール、ハッカ油、ボルオネール、グリチルリチン酸等の抗ヒスタミン剤、インドメタシン、フルルビプロフェン等の消炎鎮痛剤、塩酸ジブカイン、リドカイン等の局所麻酔薬等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、経皮吸収薬として臨床用または研究用として用いることができる薬効成分を有する天然物や合成化学物質等であれば、特段の制限はない。 これらは必要により1種又は2種以上用いることができ、このような薬効成分の配合量は、通常、膏体全量に対して0.1〜10質量%が好ましい。 パップ剤は、以上のように調整したゲル状の膏体を、不織布等の支持体面に塗布延展したのち、この塗布面を剥離性のフィルムで覆って保護したものを裁断、包装して完成される。 以下、実施例、比較例を挙げてこの発明をさらに具体的に説明する。また、実施例、比較例に用いた物性試験方法も併せて記載する。 <実施例1> 共重合体(A−1)の調製 ステンレスの反応容器に、単量体濃度が30質量%、全量が1kgで、アクリル酸とアクリル酸ナトリウムの組成がそれぞれ60モル%、40モル%となるように、アクリル酸水溶液、アクリル酸ナトリウム水溶液およびイオン交換水を仕込み、窒素ガスを反応系内に導入しながら攪拌し、脱気処理を行なった。 つぎに、総仕込み単量体(アクリル酸とアクリル酸ナトリウムの全量)に対して、重合開始剤として、2,2’−アゾビス(2―メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩を900ppm、さらに、連鎖移動剤として2−メルカプトエタノールを10ppm加えた。 ついで、室温にて、波長が300〜450nmのUV光を連続照射しながら60分間重合反応を行ない、ゲル状重合物を得た。 反応容器から取出したゲル状重合物を、小型チョッパーに投入して挽肉状に細断処理をしたのち、温度110℃で熱風乾燥を5時間行なった。 得られた乾燥物を粉砕することで、粉末状のこの発明のパップ剤用基剤となる共重合体(A−1)を得た。 <実施例2> 共重合体(A−2)の調製 共重合体(A−1)の調製における、アクリル酸とアクリル酸ナトリウムの仕込みモル比を、51/49に変更した以外は、すべて実施例1と同様の操作を行なって、この発明のパップ剤用基剤となる共重合体(A−2)を得た。 <実施例3> 共重合体(A−3)の調製 反応容器に、単量体濃度が30質量%、全量が1kgで、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸の組成がそれぞれ58モル%、40モル%、2モル%となるように、アクリル酸水溶液、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸水溶液を仕込んだ以外は、すべて実施例1と同様の操作を行なって、この発明のパップ剤用基剤となる共重合体(A−3)を得た。 <実施例4> 共重合体(A−4)の調製 ステンレス製のデュアー瓶に、アクリル酸、アクリル酸ナトリウムを、それぞれ60モル%、40モル%の組成で全量を1kg、単量体濃度を30質量%になるようにイオン交換水を加えた。 単量体水溶液の温度を10℃に調整した後、窒素を導入して60分間脱気した。 つぎに、総仕込み単量体に対して、重合開始剤として、アゾビスアミジノプロパン塩酸塩を500ppm、t−ブチルハイドロパーオキサイドを100ppm、過硫酸ナトリウムを200ppm、およびエリソルビン酸ナトリウムを150ppm添加して重合を開始し、8時間後、重合が完了して得られたゲル状重合体を取出し、小型チョッパーに投入して挽肉状に細断処理した。 得られた細断ゲルを、温度110℃の熱風乾燥機中で5時間乾燥し、乾燥物を粉砕して粉末状の、この発明のパップ剤用基剤となる共重合体(A−4)を得た。 <比較例1> 共重合体(A−5)の調製 実施例4における単量体の組成を、アクリル酸、アクリル酸ナトリウムそれぞれ45モル%、55モル%に、2−メルカプトエタノールを200ppmに変更した以外は、実施例4と同様に実施して、粉末状の共重合体(A−5)を得た。 <比較例2> 共重合体(A−6)の調製 実施例4における重合開始剤の量を、t−ブチルハイドロパーオキサイドを40ppm、過硫酸ナトリウムを200ppm、エリソルビン酸ナトリウムを40ppmに変更した以外は、実施例4と同様に実施して、粉末状の共重合体(A−6)を得た。 以上のようにして得られた6種類の共重合体(A−1〜A−6)の物性(粘度、pH、未反応単量体含有量、低重合物含有量、及び含有ゲル物の量)を、以下の方法で測定し、その結果を表1に示す。 <粘 度> 500mlコニカルビーカーに純水400gを入れ、マグネティックスターラーで攪拌しながら、正確に秤量した共重合体0.8gを投入し、1時間攪拌し、0.2質量%濃度の共重合体水溶液を作製し、温度20℃における粘度をブルックフィールド型粘度計(ローター番号:No.2、回転数:30rpm、測定時間:90秒後)にて測定した。 <pH> 共重合体0.2gを純水100mlに溶かした時のpHを測定した。 <未反応単量体含有量> 共重合体を純水に溶解して、1.0質量%濃度(固形分換算)の共重合体水溶液を作成し、この共重合体水溶液2gを20mlのメタノール中に投入後、30分間スターラー攪拌して共重合体を沈殿させる。30分後に上澄み液を採取し、高速液体クロマトグラフィーにて残存単量体を測定した。 カラム:日立HPLCパックドカラム♯3056、溶離液:0.1%リン酸緩衝液、検出器:UV195nm <低重合物含有量> あらかじめガラス濾過器(G4)を温度105℃で30分間乾燥し、デシケーター中で放冷した後、その重量を精密に量る。 ついで、共重合体約2gを精密に量り、純水200mlを加え、時々振り混ぜて溶かしたのち、この液をかき混ぜながら塩酸50mlを加え、かき混ぜながら温度約40℃で30分間加温した後、温度20℃で24時間放置した。 この液を濾過し、濾液にフェーノールフタレイン試液1滴を加え、液が微赤色を呈するまで水酸化ナトリウム溶液(2→5)を加えた後、薄めた塩酸(1→30)を滴加し、pHを8.0〜8.3に調整する。 つぎに、純水200mlを加え、激しくかき混ぜながら塩化カルシム試液25mlを滴加した後、激しくかき混ぜながら温度約40℃で30分間加温する。この液を、先のガラス濾過を用いて吸引濾過し、残留物を純水10mlずつで3回洗い、温度105℃で3時間乾燥し、デシケーター中で放冷した後、その質量を精密に量り、次式により低重合物の量を求めた。 <ゲル物> 500mlコニカルビーカーに純水400gを入れ、マグネティックスターラーで攪拌しながら、共重合体0.8gを投入し、1時間攪拌した。 つぎに、攪拌を停止し、温度20℃で24時間放置した。その後、1時間再攪拌した調製液を140メッシュのJIS標準篩(篩目開106μm)上に投入し、当該篩上に残ったゲル物の量(ml)を測定した。 <実施例5〜10及び比較例3〜6> 以上のようにして得られた6種類の共重合体(A−1〜A−5)および市販品のポリアクリル酸20質量%水溶液(日本純薬株式会社製「商品名;ジュリマーAC−10H」以下B−1とする)を用い、以下のように膏体を調製し、その特性を測定した。 膏体の調製と評価 表2に示した処方に従って、グリセリンに共重合体と水酸化アルミニウム、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテートと酸化チタンを均一にドライブレンドしたのち、あらかじめ酒石酸を溶解した水を加えて均一に攪拌混合し、ニーダーで混練して膏体を得た。 この膏体を、ポリエステル製の不織布(日本バイリーン株式会社製 貼付薬用基布)に塗布展延した後、塗布面にポリプロピレンフィルムを貼りあわせ、所定の大きさに裁断して試験片とし、以下に示す性能評価を行ない、その結果を表2にまとめ示した。 <硬 さ> 膏体を一定の厚みになるように、シャーレに詰め、作製してから30日後の硬さを、レオメータにより測定した。 測定条件 測定速度:60mm/分 測定深度:2mm アダプタ:ベークライト <接着性> 作製してから30日後の試験片を、被着体(ベークライト)に貼付し、ローラー(荷重60g)を1往復させて圧着させた。 圧着させてから1日後の90度剥離強度を、引っ張り試験機により、JIS Z 0237に準拠して測定した。 <プローブタックについて> 作製してから30日後の試験片に、円形プローブを接触させた時の接着力を、プローブタック測定装置により測定した。 測定条件 プローブ直径:5mm 接触速さおよび引き剥がし速度:10mm/秒 接触荷重:0.98N/cm2 接触時間:1秒 <滲み出しについて> 作製してから30日後の、試験片の膏体の不織布への滲み出しの有無を、目視により以下のように、4段階で評価を行なった。 ◎:滲み出し全くなし ○:滲み出しほとんどなし △:滲み出しあり ×:滲み出し顕著にあり 表2で明らかように、比較例3〜6の膏体は硬さがあって、賦形性が比較的良好であるものの、滲み出しがあり、膏体性状が不安定であった。 それに対し、実施例5〜10の膏体は、粘着力が高く、賦形性があり、裏滲みのない優れた性能を有するもので、パップ剤の膏体として最適なものであった。 この発明にかかるパップ剤用基剤は、膏体にしたとき、優れた粘着力(接着力)、剥離性、滲み出し性が極めて低く、そして生産性が極めて高いので、パップ剤の基剤に好適に用いることができ、パップ剤業界で広く利用される可能性の高いものである。 アクリル酸またはメタクリル酸、およびそれらの塩が主たる構成単量体であり、酸と塩の構成割合がモル比で40/60〜70/30、温度20℃における0.2質量%水溶液の粘度が200〜450mPa・sである共重合体からなることを特徴とするパップ剤用基剤。 前記共重合体を構成する酸と塩の割合が、 モル比で、50/50〜60/40であることを特徴とする請求項1記載のパップ剤用基剤。 前記共重合体の温度20℃における0.2質量%水溶液の粘度が、 300〜400mPa・sであることを特徴とする請求項1または2に記載のパップ剤用基剤。 前記共重合体が、 光重合により調製されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のパップ剤用基剤。 アクリル酸またはメタクリル酸およびそれらの塩が主たる構成単量体であり、酸と塩の構成割合がモル比で40/60〜70/30、温度20℃における0.2質量%水溶液の粘度が200〜450mPa・sである共重合体と多価金属化合物からなることを特徴とするパップ剤用膏体。 前記多価金属は、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテートより選ばれたアルミニウム化合物であることを特徴とする請求項5に記載のパップ剤用膏体。 保水剤として、多価アルコールを含有することを特徴とする請求項5または6に記載のパップ剤用膏体。 前記多価アルコールが、グリセリンであることを特徴とする請求項7に記載のパップ剤用膏体。 【課題】 パップ剤に用いられる基剤として、当該基剤を用いてゲル状の膏体を得たとき、保水性や経時安定性に優れ、滲み出しがなく、皮膚への密着性や剥離性にも優れたものとする基剤、および該基剤を用いた膏体を提供する。【解決手段】 ポリアクリル酸とポリアクリル酸ナトリウムを主たる構成単量体とし、それらのモル比が、40/60〜70/30であり、0.2質量%水溶液の粘度が温度20℃において200〜450mPa・sであるアクリル酸系共重合体を、パップ剤の基剤に用い、また該共重合体を用いて膏体とする。【選択図】 なし