タイトル: | 公開特許公報(A)_クレアチン増加剤 |
出願番号: | 2006148735 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | A61K 31/122,A61K 31/215,A61K 31/232,A61K 31/231,A61P 21/00,A61P 13/12 |
岡田 裕実春 JP 2007314491 公開特許公報(A) 20071206 2006148735 20060529 クレアチン増加剤 ヤマハ発動機株式会社 000010076 南條 博道 100104673 岡田 裕実春 A61K 31/122 20060101AFI20071109BHJP A61K 31/215 20060101ALI20071109BHJP A61K 31/232 20060101ALI20071109BHJP A61K 31/231 20060101ALI20071109BHJP A61P 21/00 20060101ALI20071109BHJP A61P 13/12 20060101ALI20071109BHJP JPA61K31/122A61K31/215A61K31/232A61K31/231A61P21/00A61P13/12 2 2 OL 8 4C206 4C206AA01 4C206AA02 4C206CB25 4C206DB06 4C206DB07 4C206DB09 4C206DB52 4C206NA14 4C206ZA81 4C206ZA94 本発明は、クレアチン増加剤に関する。より詳細には、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルからなる、筋肉中でのクレアチン増加剤に関する。 クレアチンは、特に、骨格筋および高い可変的なエネルギー要求の能力を特徴とする組織(例えば、平滑筋、心筋、あるいは精子)において多量に見られる。クレアチンは、生体内でアルギニンとグリシンとから生成され、クレアチンキナーゼによりATPからリン酸を受け取り、ホスホクレアチンとして存在する。ホスホクレアチンは、筋肉などの急激に多量のエネルギーを消費する細胞において、高エネルギーリン酸結合を貯蔵する役割を果たす。ホスホクレアチンは、運動などの嫌気的条件下での筋肉収縮に際してATPを再生し、同時にクレアチンに戻るかあるいは非酵素的反応によってクレアチニンとなって尿中に排泄される。 体内でのクレアチンは、食肉中に存在するクレアチンの摂取によっても増加する。例えば、特許文献1では、無酸素的運動能力を高める目的で、急速収縮による嫌気性解糖が起こる筋肉中に見られるβ−アラニルヒスチジンジペプチドの前駆体であるβ−アラニンとともに、クレアチンを投与している。また、特許文献2では、エネルギーレベル(例えば、細胞内ATP濃度)を増加させるために、ATP前駆体であるペントース糖とともに、クレアチンを投与している(特許文献2)。このように、クレアチンを増加させるためには、クレアチンを直接摂取することが一般的であり、例えば、瞬発力を必要とするスポーツ選手などを対象とした種々のサプリメントが市販されている。しかし、摂取したクレアチンを体内で保持し得る量は、筋肉量によって制限されるので、摂取してもすべてのクレアチンが利用されるわけではない。利用されなかったクレアチンは、腎糸球体で濾過されるが、尿細管で再吸収され排出されにくい。また、クレアチンは過剰に摂取すると、その分解物であるクレアチニン濃度が血漿中で過度に増大するので、クレアチンを過剰に摂取すると、腎臓や心臓に負荷がかかる。したがって、サプリメントによるクレアチン摂取は、十分な注意と管理の下で行われなければならない。 ところで、アスタキサンチンは、筋肉機能の持続時間を改善し、筋肉障害または横紋筋融解症の治療に用いられ得ることが知られている(特許文献3)。また、アスタキサンチンが疲労回復効果を有することも報告されている(特許文献4)。しかし、アスタキサンチンとクレアチンとの関連については全く知られていない。 一方、アスタキサンチンとクレアチニンとの関連については、アスタキサンチンにより、薬物障害のモデル動物である水銀誘発腎障害ラットにおいて、血液中のクレアチニンが低下したこと(特許文献5)、ならびに、正常人におけるアスタキサンチンの連続投与により、クレアチニンの腎クリアランス値が改善されたこと(特許文献6)が報告されている。特表2000−516464号公報特表2002−518321号公報特表2001−514215号公報特開2006−16409号公報特開2002−226367号公報特開2006−8720号公報 本発明は、体内のクレアチンを増加させることが可能な新規な物質を提供することを目的とする。 本発明は、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルからなる、クレアチン増加剤を提供する。 1つの実施態様では、上記クレアチンは、筋肉中で増加される。 本発明によれば、クレアチンを直接摂取することなく、体内のクレアチンを増加させることができる新たなクレアチン増加剤が提供される。本発明のクレアチン増加剤により、細胞内でのATP利用が促進され、筋肉およびその他の組織の運動能力を高めることができる。 本発明のクレアチン増加剤に含まれるアスタキサンチンおよび/またはそのエステルは、以下の式:(ここで、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子または脂肪酸残基である)で示されるカロテノイドの一種である。アスタキサンチンのエステルとしては、特に限定されないが、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸などの飽和脂肪酸、あるいはオレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、ビスホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などの不飽和脂肪酸のモノエステルまたはジエステルが挙げられる。これらは単独でまたは適宜組み合わせて用いることができる。アスタキサンチンは、β−カロチンの骨格の両端にオキソ基とヒドロキシ基とを余分に有する構造であるため、β−カロチンとは異なり、分子の安定性が低い。これに対し、両端のヒドロキシ基が不飽和脂肪酸などでエステル化されたエステル体(例えば、オキアミ抽出物)はより安定である。 本発明に用いられるアスタキサンチンおよび/またはそのエステルは、化学的に合成されたものであっても、あるいは天然物由来のもののいずれであってもよい。後者の天然物としては、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含有する赤色酵母;ティグリオパス(赤ミジンコ)、オキアミなどの甲殻類の殻;緑藻類などの微細藻類などが挙げられる。本発明においては、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルの特性を利用できるものであれば、どのような方法で生産されたアスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含有する抽出物をも使用することができる。一般的には、これらの天然物からの抽出物が用いられ、抽出エキスの状態であっても、また必要により適宜精製したものであってもよい。本発明においては、このようなアスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含有する粗抽出物や破砕粉体物、あるいは必要により適宜精製されたもの、化学合成されたものを、単独でまたは適宜組み合わせて用いることができる。化学的安定性を考慮すると、好ましくはエステル体が用いられる。 本発明のクレアチン増加剤は、生体内においてクレアチンを増加させる。クレアチンは、そのほとんどが筋肉などに存在し、血液中にはわずかしか存在しない。血液中には、代謝産物であるクレアチニンが存在し、その量は、筋肉中のクレアチン量に比例することが知られている。そこで、一般的に、生体内のクレアチンは、血液中のクレアチニンとして検出・定量され得る。クレアチニンの検出・定量法としては、通常臨床検査で行われる方法が挙げられる。好適には、酵素法(例えば、クレアチナーゼ−ザルオキシダーゼ−POD法)が採用され得る。クレアチナーゼ−ザルオキシダーゼ−POD法では、クレアチニンをクレアチニナーゼによってクレアチンに、さらにクレアチンをクレアチナーゼによってザルコシンに加水分解し、次いでザルコシンからザルコシンオキシダーゼによって過酸化水素を生成させ、この過酸化水素とペルオキシダーゼの共存下で各種色原体より生成するキノン色素を定量する。 血液中にわずかしか存在しないクレアチンは、糸球体で濾過されるが、尿細管から再吸収されるため、ほとんど尿中に排泄されない。一方、クレアチンの代謝産物であるクレアチニンは、糸球体で濾過された後、尿細管で再吸収されない。そのため、腎機能が低下して濾過機能が低下すると、血液中のクレアチニンが高くなり、尿中のクレアチニンが低くなる。したがって、クレアチニンは、臨床検査で通常採用される腎機能の指標の1つである腎クリアランスの測定対象物質である。本発明のクレアチン増加剤は、生体内のクレアチニンを増加させる、すなわち、筋肉中でクレアチンおよび血液中でクレアチニンを増加させるが、腎機能に悪影響を与えない。 本発明のクレアチン増加剤の投与経路は、経口投与または非経口投与のいずれであってもよい。その剤形は、投与経路に応じて適宜選択される。例えば、注射液、輸液、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、腸溶剤、トローチ、内用液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、外用液剤、湿布剤、点鼻剤、点耳剤、点眼剤、吸入剤、軟膏剤、ローション剤、坐剤、経腸栄養剤などが挙げられる。これは、用途に応じてそれぞれ単独でまたは組み合わせて使用することができる。これらの製剤には、必要に応じて、賦形剤、結合剤、防腐剤、酸化安定剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤などの医薬の製剤技術分野において通常用いられる補助剤が用いられる。 本発明のクレアチン増加剤の投与量は、投与の目的や投与対象者の状況(性別、年齢、体重など)に応じて異なる。通常、成人に対して、アスタキサンチンフリー体換算で、経口投与の場合、1日あたり0.1mg〜2g、好ましくは4mg〜500mg、一方、非経口投与の場合、1日あたり0.01mg〜1g、好ましくは0.1mg〜500mgで投与され得る。 本発明のクレアチン増加剤は、上記のような医薬品としてだけでなく、医薬部外品、化粧品、機能性食品、栄養補助剤、飲食物などとして使用することができる。医薬部外品または化粧品として使用する場合、必要に応じて、医薬部外品または化粧品などの技術分野で通常用いられている種々の補助剤とともに使用され得る。あるいは、機能性食品、栄養補助剤、または飲食物として使用する場合、必要に応じて、例えば、甘味料、香辛料、調味料、防腐剤、保存料、殺菌剤、酸化防止剤などの食品に通常用いられる添加剤とともに使用してもよい。また、溶液状、懸濁液状、シロップ状、顆粒状、クリーム状、ペースト状、ゼリー状などの所望の形状で、あるいは必要に応じて成形して使用してもよい。これらに含まれる割合は、特に限定されず、使用目的、使用形態、および使用量に応じて適宜選択することができる。 (調製例1:アスタキサンチンカプセルの調製) まず、アスタキサンチンを次のように調製した。ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pulvialis)K0084株を、25℃にて光照射条件下3%CO2を含むガスを通気しながら培養した。その後、栄養ストレス(窒素源欠乏)をかけてシスト化させた。シスト化した細胞を、当業者が通常用いる手段によって破砕し、エタノールでアスタキサンチンを含む油性画分を抽出した。抽出物を減圧濃縮してエタノールを留去し、アスタキサンチンをフリー体換算で8.0%含む抽出物を調製した。 このアスタキサンチンを8.0%含有する抽出物を用いて、1カプセル当たり以下の表1に示す成分を内包するソフトカプセルを調製した。 得られたソフトカプセル1個当たりには、アスタキサンチンをフリー体換算で4.16mg含有する。 (実施例1:血中クレアチニン濃度に及ぼす効果−1) 上記調製例1で得たアスタキサンチンカプセルを、20歳代〜70歳代の男女38名の被験者に、1日1回2カプセルずつ4週間にわたり摂取させた。摂取開始日の朝食前および摂取終了日の翌日の朝食前に、各被験者から採血し、血中のクレアチニン濃度および尿素窒素を測定した。クレアチニン濃度は、上述の酵素法(クレアチナーゼ−ザルオキシダーゼ−POD法)により測定した。本実施例では、色原体として、3−ヒドロキシ−2,4,6−トリヨード安息香酸および4−アミノアンチピリンを用いる方法(CRE−ENカイノス:株式会社カイノス)によって行った。血中尿素窒素濃度の測定は、ウレアーゼ・GLDH法により行った。具体的には、尿素をウレアーゼでアンモニアと二酸化炭素とに分解し、生成したアンモニアをα−ケトグルタル酸およびNADPHの存在下でグルタミン酸脱水素酵素と反応させることにより、NADPHの減少を吸光度の減少として速度を測定することによって行った。血中クレアチニン濃度測定の結果を図1および2に示す。図1は、各被験者についてのアスタキサンチンカプセル摂取前後の血中クレアチニン濃度の変化を示し、そして図2は、平均値を示す。いずれの図においても、縦軸の数値の単位はmg/dLである。 図1からわかるように、38名の被験者のうち34名において、血中クレアチニン濃度が増加していた。また、図2からわかるように、被験者全員のクレアチニン濃度の平均値は有意に上昇していた(p<0.01)。なお、血液中のクレアチニン濃度の標準値は、男性では約0.8〜1.2mg/dLおよび女性では約0.6〜1.0mg/dL程度といわれている。特に、アスタキサンチンカプセル摂取前のクレアチニン濃度が0.7mg/dL以下であった被験者では、全員が増加しており、摂取前の値を100%とすると平均で13.4%上昇していたことにより、特にクレアチニン濃度が低い被験者において増加効果が高かったことがわかる。 腎機能の指標である尿素窒素(BUN)は、摂取前の平均値は12.21mg/dL、摂取後の平均値は12.60mg/dLであり、有意には増加していなかった(p=0.32)。このように、腎機能の低下は見られなかった。したがって、クレアチニン濃度の上昇が腎機能の低下ではなく、体内のクレアチンが増加したことによるものであることがわかる。 (実施例2:血中クレアチニン濃度に及ぼす効果−2) 上記調製例1で得たアスタキサンチンカプセルを、20歳代〜70歳代の男女18名の被験者に、1日1回5カプセルずつ4週間にわたり摂取させた。上記実施例1と同様に、摂取開始日の朝食前および摂取終了日の翌日の朝食前に、各被験者から採血し、血中のクレアチニン濃度および尿素窒素を測定した。その結果、上記実施例1の結果と同様に、被験者全員のクレアチニン濃度の平均値は有意に上昇しており(p<0.01)、尿素窒素(BUN)の有意な増加はなく、腎機能の低下は見られなかった。したがって、アスタキサンチンを大量に摂取した場合についても、クレアチニン濃度の上昇が腎機能の低下ではなく、体内のクレアチンが増加したことによるものであることがわかる。 本発明によれば、クレアチンを直接摂取することなく、体内のクレアチンを増加させることができる新たなクレアチン増加剤が提供される。本発明のクレアチン増加剤により、細胞内でのATP利用が促進され、筋肉およびその他の組織の運動能力を高めることができる。また、本発明のクレアチン増加剤の有効成分であるアスタキサンチンおよび/またはそのエステルは、筋持続力や疲労回復効果があることも知られているため、筋肉の能力の向上に非常に有用であると考えられる。 本発明のクレアチン増加剤の有効成分であるアスタキサンチンおよび/またはそのエステルは食経験が長く、毒性が非常に低いため、安全性が極めて高い。したがって、健康食品などとして日常的に予防的に用いられ得る。各被験体についてのアスタキサンチンカプセル摂取前後の血中クレアチニン濃度の変化を示すグラフである。アスタキサンチンカプセル摂取前後の被験体の血中クレアチニン濃度の平均値を示すグラフである。 アスタキサンチンおよび/またはそのエステルからなる、クレアチン増加剤。 前記クレアチンが、筋肉中で増加される、請求項1に記載のクレアチン増加剤。 【課題】体内のクレアチンを増加させることが可能な新規な物質を提供すること。【解決手段】本発明のクレアチン増加剤は、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルからなる。本発明のクレアチン増加剤により、腎機能を低下させることなく体内のクレアチンを増加させることができる。したがって、本発明のクレアチン増加剤は、安全性が高く、健康食品などとして日常的に予防的に用いられ得るので、筋肉およびその他の組織の運動能力を高めるために非常に有用である。【選択図】図2