タイトル: | 公開特許公報(A)_ホンシメジ新菌株 |
出願番号: | 2006146973 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C12N 1/14,A01H 1/00 |
河戸 哲弥 横手 豊 守谷 正明 JP 2007312708 公開特許公報(A) 20071206 2006146973 20060526 ホンシメジ新菌株 ヤマサ醤油株式会社 000006770 河戸 哲弥 横手 豊 守谷 正明 C12N 1/14 20060101AFI20071109BHJP A01H 1/00 20060101ALI20071109BHJP JPC12N1/14 FA01H1/00 Z 2 OL 10 2B030 4B065 2B030AA05 2B030AD07 2B030AD14 2B030CA01 2B030CB02 4B065AA71 4B065AC12 4B065BA21 4B065BA30 4B065BC31 4B065CA41 本発明は、ホンシメジ(Lyophyllum shimeji)の新菌株及び当該菌株を用いたホンシメジの生産方法に関するものである。 従来、ホンシメジは菌根菌に属するため、人工栽培は極めて困難と考えられてきた。しかし、滋賀県森林センターの太田氏により、大麦とおが屑を用いたホンジメジの実用的な培養法が開発され、また、人工栽培に用いることのできる優良菌株としてホンシメジYG6Lが報告された(特公平8−4427号公報、日菌報、39巻、13−20頁(1998)、特開2002−247917号公報など参照)。特公平8−4427号公報特開2002−247917号公報日菌報、39巻、13−20頁(1998) 従来公知の優良菌株であるYG6Lは、人工栽培が可能であるものの、(1)消費者に好まれる形態、詳しくは菌柄が太くならず、ホンシメジ本来の極太感がない、(2)人工栽培した場合、菌傘表面にイボが発生し易く、商品価値を損なう、(3)子実体発生が株状型でなく、収穫に手間がかかる等の問題点を有しており、商品化を念頭に考慮すると必ずしも望ましい菌株とは言えなかった。 また、YG6Lの栽培は、子実体の収穫までに120日前後の長期間の日数を要するため、収量を落とさずにより短い栽培日数で子実体を収穫できる方法が切望されていた。 本発明者らは、上記問題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、YG6Lと秋田県で採取した野生のホンシメジ株を交配させた作出した交配種を選抜した結果、ホンシメジ108株が、106日前後の栽培日数で子実体を収穫でき、かつ収量も親株と比較し格段に多いことを見出し、本発明を完成した。 したがって、本発明は、(1)ホンシメジ(Lyophyllum shimeji)108株(FERM AP−20907)、及び(2)菌床を用いた人工栽培法でホンシメジを生産する方法であって、種菌としてホンシメジ(Lyophyllum shimeji)108株(FERM AP−20907)又はその変異株を用いるホンシメジの生産法に関するものである。 本発明の新菌株は、栽培特性に優れており、YG6Lより短縮した期間(たとえば、106日前後)で子実体を収穫でき、かつ収量も極めて多い。具体的に、後述の比較試験に詳述されているように、本菌株が平均106日間で収穫できるのに対し、対照品種のYG6Lは収穫までに平均122日間も必要である。また、本菌株の平均収量は137gであるのに対し、対照菌株YG6Lの平均収量は94gであり、本菌株は、短期間の栽培にもかかわらず、従来の優良品種であるYG6Lの1.5倍の子実体を収穫することが可能である。 また、栽培特性だけでなく、本発明の新菌株は、子実体の菌柄が極太で、子実体の菌傘表面が平滑で、イボが発生しにくく、かつ子実体の発生が株状型であるという、優れた商品特性も有しており、産業的な大量栽培に適した菌株である。(1)本発明菌株 本発明の新菌株は、ホンシメジ(Lyophyllum shimeji)108株である。この菌株は、平成18年5月9日に特許生物寄託センターに寄託され、受領番号として「FERM AP−20907」が付与されている。 本発明のホンシメジ108株は、以下のような栽培特性、商品特性を有することから、産業的に有用な優良菌株である。(1)菌床を用いた人工栽培で、106日前後(100〜110日)の栽培期間で、137g前後/ビン(100〜160g/ビン)の収穫を得ることができる。(2)得られる子実体の菌柄が極太で、全長と菌柄の太さの比(全長/菌柄の太さ)が2.2前後(1.8〜2.7)である。(3)得られる子実体の菌傘表面が平滑で、イボが発生しにくい(イボの発生率が10%以下)。(4)得られる子実体の発生が株状型(1株当たり5〜10本の子実体を発生)である。 なお、「菌床を用いた人工栽培」とは、以下の(A)〜(D)工程からなるホンシメジの栽培に通常採用されている栽培方法を意味し、詳細な栽培条件等は、以下に説明したとおりである。(A)おが屑と栄養材を混合後、殺菌し、培養容器に充填する工程(B)種菌接種後、18〜28℃の温度条件下、暗室にて培養する工程(C)菌廻り完了後、覆土を行い、追加培養する工程、及び(D)(B)工程より3℃以上低い12〜18℃の温度条件下、明室にて子実体を発生させる工程 本発明の菌株は、一方の親株を公知の優良菌株であるYG6L(NBRC 100325)を用い、他方の親株として秋田県産の野生株を用い、公知の人工交配法にて作出した菌株の中から、上記特徴・形質を有するものを選抜することにより取得できる。 本発明の菌株又はその変異株を種菌として使用する本発明のホンシメジの生産法は、菌床を用いたホンシメジの公知の人工栽培法に準じて実施することができる。 すなわち、培養基としては、栄養材(きのこ栽培に常用されている穀物粉(麦類、トウモロコシ類、米類など)、ふすま、糠、サトウキビの搾り粕、乾燥おから等)とおが屑(広葉樹単独、または針葉樹との混合おが屑)を混合したものを用いることができる。 このような培養基に水を含ませて水湿潤状態とし、これを常圧又は高圧加熱により滅菌したものを培地として使用する。なお、培養基の含水率としては、50〜70重量%、好ましくは55〜65重量%が適当である。 このような培養基をナメコビンなどのキノコ栽培用の容器に充填後、上記本発明のホンシメジ菌株を接種後、18〜28℃の暗所にて第一段の培養を行ったのち、土(鹿沼土など)で培地表面を被覆し、追加培養後、子実体の発生を促すため、第一段の温度より3℃以上低い12〜18℃の温度の明所にて第二段の培養を行なうことで、ホンシメジを生産することができる。 なお、変異株とは、本発明のホンシメジ108株の胞子を変異処理あるいは交配処理して得られる株で、上記説明した栽培特性や商品特性を実質的に有しているものを意味する。このような変異株は、当業者であれば常法により容易に取得可能である。 以下、実施例に基づき、詳細に説明するが、本発明がこれに限定されないことは明らかである。(1)本発明菌株の作出・選抜 秋田県産のホンシメジN0.5株と公知の優良菌株YG6L株から胞子を分離し、対峙培養により交配株を作出・選抜を行った。その中で栽培的特性及び形態的特性の優れた菌株108株を選抜し、諸性質が安定していることを確認して、育成を完了した。(2)遺伝的特性 Potato Dextrose寒天培地(Difco社製)を使用し、25℃、30日間培養し、帯線形成及び嫌色反応の有無を観察した。なお、寒天培地のpHは5.6±0.2とし、直径9cmのシャーレを使用した。 その結果、表1に示すように、108株とYG6L株とを対峙培養した場合、帯線は形成されず、嫌色反応はコロニー間に隙間や隆起した境界を生じた。なお、判断基準は以下に示すとおりである。 帯線形成:コロニー間に、着色した線を形成する。 + コロニー間に、薄く着色した線を形成する。 ± コロニー間に、着色した線を形成しない。 − 嫌色反応:コロニー間に、明瞭な隙間や隆起した境界を生じる。 + コロニー間に、隙間や隆起した境界を生じる。 ± コロニー間に、隙間や隆起した境界を生じない。 −(3)生理的特性 ポテト・デキストロース(Potato Dextrose)寒天培地(Difco社製)を使用し、5℃,15℃,20℃,23℃,25℃,28℃の各温度帯で菌糸成長速度を測定した。なお寒天培地のpHは5.6±0.2とした。その結果、108株の最適成長温度は23℃前後であることが確認された。 次に、ポテト・デキストロース寒天培地における108株の菌叢の密度、性状、周縁部の性状、色を観察した。その結果、(a)密度は普通で、(b)菌叢表面の性状は平滑で、(c)菌叢周辺部の性状は整一で、(d)菌叢の色は普通で、(e)高温及び低温に対する耐性はなかった。なお、培養には直径9cmのシャーレを用い、70%程度伸長したときに測定観察した。 また、ポテト・デキストロース寒天培地でpHを段階的に調整するとともに、直径5mmの菌糸片を接種した後、25℃で7日間培養し、コロニーの直径を測定したところ、108株は、pH4.0〜8.0の間で菌糸は生長し、最も生長の良好なpHは5.4〜5.8であった。(4)栽培特性(試験方法) 栽培特性試験は、広葉樹おがくずまたは針葉樹おがくずとの混合物に、麦、トウモロコシ、米などの穀物粉を容量比2:1の割合で混合し、含水率を60%程度に調整した培地で行った。栽培容器は口径75mm、容量800ccのナメコワイドPPビンを用いた。培地充填量は1ビンあたり550±20gとし、ビンの肩まで詰めて高圧滅菌した。滅菌放冷後、約20mlのおがくず種菌を接種し、22±2℃で培養を行った。 菌廻り完了まで培養し、湿らせた鹿沼土を覆土してさらに同条件で10日間の追培養を行った。追加培養後、子実体の発生・生育は、15〜16℃の温度条件下、湿度95%以上、明るさ300〜500ルクス(Lux)下で行った。 発生した子実体が十分に成長し、傘が八部開き程度の状態の時にホンシメジを収穫した。なお、本栽培試験は、最低1区25本を3回繰り返し行った。(結果) 栽培試験より得られた108株と親株であるYG6L株との相違点を以下に示す。なお、もう一方の親株である秋田県産のホンシメジN0.5株は、YG6L株より更に見劣りするものであり、一部のデータは省略した。<種菌接種から子実体発生最盛期までの期間> 108株 平均106日、YG6L 平均122日、No.5 平均106日<覆土後最適温度における子実体収穫最盛期までの期間> 108株 26〜30日、YG6L 26〜30日、No.5 26〜31日<子実体の発生型> 108株 株状型、 YG6L 群状型、 No.5 群状型<子実体収量> 108株 平均137g/ビン、YG6L 平均94g/ビン、No.5 平均59g/ビン<菌傘の大きさ> 108株 平均35.7mm、 YG6L 平均31.2mm<菌傘の厚さ> 108株 平均13.6mm、 YG6L 平均15.3mm<菌柄の長さ> 108株 平均38.8mm、 YG6L 平均43.2mm<菌柄の太さ> 108株 平均24.0mm、 YG6L 平均21.7mm<菌傘の直径と菌柄の長さとの比率> 108株 平均1.1、 YG6L 平均1.4<全長と菌柄の太さとの比率> 108株 平均2.2、 YG6L 平均2.8 なお、ホンシメジの計測は、各栽培ビンから大きい子実体4本を選抜し、図1に示す各項目(1:全長、2:菌柄の太さ(最も太い部分)、3:菌傘の径、4:菌傘の厚さ、5:菌柄の長さ)について測定を行った。 このように、通常のホンジメジより短縮した期間(たとえば、106日前後)で子実体を収穫でき、かつ収量も極めて多いだけでなく、得られた子実体は、ホンシメジ特有の菌柄が太く、子実体の菌傘表面が平滑で、かすり模様を有し、イボの発生もし難く(発生頻度10%以下)、かつ子実体の発生が株状型で収穫しやすいという、優れた商品特性も有していた。<受領書>図1は、ホンシメジ子実体の測定部位を模式的に示したものである。 ホンシメジ(Lyophyllum shimeji)108株(FERM AP−20907)。 菌床を用いた人工栽培法でホンシメジを生産する方法であって、種菌として請求項1記載の菌株又はその変異株を用いることを特徴とする、ホンシメジの生産法。 【課題】 ホンシメジの新菌株及びそれを用いたホンシメジの生産法を提供する。【解決手段】ホンシメジ(Lyophyllum shimeji)108株に関する。この新菌株は、栽培特性に優れており、通常のホンジメジより培養日数が短期間で、かつ収量が多いため、産業的な大量栽培に適している。そして、本新菌株は、子実体の菌柄が極太で、子実体の菌傘表面が平滑で、イボが発生しにくい、かつ子実体の発生が株状型であるという、優れた商品特性も有している。 また、菌床を用いた人工栽培法でホンシメジを生産する方法であって、種菌として上記新菌株を用いるホンシメジの生産法も提供する。【選択図】 なし20060607A16333請求項13 ホンシメジ(Lyophyllum shimeji)108株(FERM P−20907)。A1633000073 したがって、本発明は、(1)ホンシメジ(Lyophyllum shimeji)108株(FERM P−20907)、及び(2)菌床を用いた人工栽培法でホンシメジを生産する方法であって、種菌としてホンシメジ(Lyophyllum shimeji)108株(FERM P−20907)又はその変異株を用いるホンシメジの生産法に関するものである。A1633000103(1)本発明菌株 本発明の新菌株は、ホンシメジ(Lyophyllum shimeji)108株である。この菌株は、平成18年5月9日に特許生物寄託センターに寄託され、受託番号として「FERM P−20907」が付与されている。A1633000403<受託証>