タイトル: | 公開特許公報(A)_血圧降下剤 |
出願番号: | 2006144258 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | A61K 36/18,A61K 36/24,A61K 36/00,A61P 9/12 |
吉田 尚明 佐々木 務 JP 2007314445 公開特許公報(A) 20071206 2006144258 20060524 血圧降下剤 株式会社常磐植物化学研究所 595132360 吉田 尚明 佐々木 務 A61K 36/18 20060101AFI20071109BHJP A61K 36/24 20060101ALI20071109BHJP A61K 36/00 20060101ALI20071109BHJP A61P 9/12 20060101ALI20071109BHJP JPA61K35/78 CA61K35/78 PA61K35/78 WA61P9/12 6 OL 5 4C088 4C088AB31 4C088AB66 4C088AB99 4C088AC04 4C088AC05 4C088BA08 4C088BA11 4C088BA37 4C088MA07 4C088MA52 4C088NA05 4C088ZA42本発明は、カシスエキスとラフマエキスを組み合わせた新規な血圧降下作用を有する食品、栄養補助食品、医薬品などの組成物を提供することに関する。高血圧症は自覚症状が無いままに罹患者の体を侵していくことから‘サイレントキラー’とも呼ばれ、放置しておくと心疾患、動脈硬化、脳出血、腎硬化症などの生命に関わる合併症を生じる疾患である。日本における高血圧症の罹患者数は3000−4000万人とも言われる。世界保健機構(WHO)と国際高血圧学会(ISH)が提唱した「高血圧管理指針」によれば、高血圧症は3つのステージにわけられる。すなわち収縮期血圧180以上拡張期血圧110以上であるレベル3(重症)、収縮期血圧160〜179拡張期血圧100〜109であるレベル2(中等症)、収縮期血圧140〜149拡張期血圧90〜99であるレベル1(軽症)の3つである。これらのステージのうち早急に薬物療法を必要とされるのは、高齢や喫煙、糖尿病、高脂血症などの他の危険因子を持っていない場合で、レベル3に属する患者であり、レベル2やレベル1に属する患者は薬物療法の前に半年から1年の生活習慣の改善による治療を求められる。高血圧の治療薬として現在使用されているものは、中枢性交換神経抑制薬クロニジン、血管拡張薬カプトリル、ロサルタン、ニフェジピン、β−受容体遮断薬プロプラノール、利尿薬ヒドロクロロチアジド、フロセミド等が挙げられる。しかし上述のとおりこれらの治療薬は高血圧症が重度の場合もしくは生活習慣の改善では効果が認められない場合に処方されるものであり、軽度もしくは中程度のいわゆる高血圧症予備軍の患者が病状を改善する目的では使用されない。一方で最近では血圧降下を目的とした食品が多く開発されている。例えばわかめペプチド、杜仲葉配糖体、かつお節オリゴペプチド、ラクトトリペプチド、サーデンペプチド、ブナハリタケエキス、酢酸、γ−アミノ酪酸が配合された食品は高血圧を軽減する効果を有するものとして特定保健用食品の認可を受けている。また、その他にも血圧降下作用を示す食品または食品成分は多数報告されており、例えばカシス、ラフマが挙げられる。カシスの血圧降下作用については特許第3455528号公報に開示されており、カシス果実からアントシアニンを高含量に含むように調製したジュースを用いてその効果が示されている。これによれば、健常男性5名にカシスアントシアニン78.4mgを含むカシスジュース200g(固形分当たりのカシスアントシアニン含有量は6.4重量%)を摂取してもらい、摂取前と摂取4時間後の血圧を比較したところ、摂取4時間後の血圧に低下が見られたことが記載されている。特許第3455528号公報ラフマについては古くより血圧降下作用を有すると言われており、中国においては伝統的に血圧降下を目的としてラフマ葉のお茶または熱水抽出物が飲用されている。中薬大辞典においては、高血圧症の患者に対し1日に1〜2銭(3.75〜7.50g)のラフマ葉茶を1ヶ月以上服用させると多くの患者において改善が見られたという報告が記載されている。また、香川らは、高血圧自然発症ラットに対してラフマ葉抽出物1.25重量%、2.5重量%および5.0重量%混入した飼料を給餌した結果、5週目から用量に依存した血圧降下が見られたと報告している[T.Kagawa, et al.,Natural Medicine,58(3), 109 (2004)]。C.−Y. Kwanらは、ラフマ葉抽出物の血圧降下作用のメカニズムとしてNOに代表される血管拡張因子の誘導が挙げられることを報告している[C.-Y. Kwan, et al., Clinical and Experimnetal Pharmacology and Physiology,32, 789(2005)]。T.Kagawa,et al.,Natural Medicine, 58(3), 109(2004)C.-Y. Kwan et al., Clinical and Experimnetal Pharmacology and Physiology,32, 789 (2005)しかしながら特定保健用食品およびカシス、ラフマを始めとする食品においての血圧降下作用は作用が穏やかであることが多く、摂取者にとって十分な効果を得られない場合が多い。また効果が現れるまでに長期間の摂取を要する場合が多い。例えばカシスの場合、上述の特許第3455528号公報においては、摂取4時間に効果は現れているが、その効果は収縮期血圧で5〜8mmHgの低下、拡張期血圧で2〜13mmHgの低下であり比較的穏やかである。また同特許公報におけるカシスの摂取量はカシス由来の固形分として1回当たり1.23gと推測されるが、これは例えば錠剤、カプセル剤、散剤として配合するとなれば、錠剤量を増やさざるを得ず、気軽に摂取できる形態の食品に利用するのは困難である。また、ラフマの場合、上述の中薬大辞典に記載の報告によれば、多くの患者に効果が現れるのは摂取開始から1ヶ月が経過してからであり、香川らの報告による高血圧自然発症ラットにおいては効果が現れるまでに5週間を要する。このため、中軽度の高血圧症を有する者および高血圧症を予防したい者にとって、安全かつ日常的に摂取できる形態で、より優れた血圧降下剤の誕生が待ち望まれていた。 本発明は、安全かつ高い効果が得られる血圧降下剤を提供することにある。本発明者らは、以上のような課題を解決し、本発明目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、カシスエキスとラフマエキスを組み合わせた組成物が優れた血圧降下作用を示し、高血圧症の治療薬、予防薬とするのに適していることを見出した。驚くべきことにカシスエキスとラフマエキスを組み合わせた組成物は単独で使用するときよりも一層強い作用を示し、その作用の強さは単純にカシスエキスとラフマエキスの効力の合計からは予想できるものではなかった。本発明に使われるカシスエキスはカシスの果実その他の樹体構成物もしくはそれらの加工物のいずれかをいう。本発明においては、特開2005−117910号公報に記載されている製造方法により得られる固形分当たり30重量%以上50重量%以下のアントシアニンを含むカシスエキスを用いることができる。また、本発明に使われるラフマエキスはラフマの葉もしくは葉の加工物のいずれかをいう。本発明においては、特開2002−201139号公報に記載されている製造方法により得られる固形分当たり4重量%以上のヒペロシド、イソクエルシトリンを含むラフマエキスを用いることができる。特開2005−117910号公報特開2002−201139号公報本発明におけるカシスエキスとラフマエキスを組み合わせた組成物は、カシスエキスとラフマエキスの配合比が重量比として1対10から10対1の間、好ましくは1対1であるカシスエキスとラフマエキスを含み、組成物の1日の用量は1mgから2000mg、好ましくは配合比が1対1の組成物を50mgから200mg摂取することを特徴とする。本発明の血圧降下剤は、利用の形態は限定されないが、たとえば液状、粉末状、顆粒状などが挙げられ、食品または栄養補助品として、通常用いられる形態、たとえば液剤、懸濁剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、エリキシル剤、酒精剤に利用することができる。これより本発明を以下の実施例で詳しく説明するが、本発明はこれに限定されない。実施例で使用するカシスエキスは特開2005−117910号公報に記載されている製造方法により得られる固形分当たり30重量%以上50重量%以下のアントシアニンを含むカシスエキスであり、ラフマエキスは特開2002−201139号公報に記載されている製造方法により得られる固形分当たり4重量%以上のヒペロシド、イソクエルシトリンを含むラフマエキスである。血圧降下剤としての活性評価を行うため、ノルエピネフリンにより収縮したラット胸部大動脈に対する弛緩作用を測定した。ラット胸部より大動脈を内皮を傷つけないように注意して摘出し、螺旋状小片に切り37℃のTyrode溶液で満たした反応槽に吊るして血管標本を作製した。反応槽は常時95%O2/5%CO2ガスでバブリングした。反応槽に10−7M ノルエピネフリンを添加し、大動脈小片を収縮させ、カシスエキス、ラフマエキス、カシスエキスとラフマエキスの配合比が重量比として1対1となるように作成した組成物をそれぞれの濃度で添加し、各濃度における弛緩力をレコーダーに記録した。この結果、図1に示すとおり、カシスエキス、ラフマエキスは約50%弛緩させる濃度が1.0〜5.0μg/mlであるのに対し、本組成物はその1/10量である0.1〜5.0μg/mlで同等の活性を示した。 (図1)製剤例表1に示す量の乳糖とカシスエキスとラフマエキスを良く混合した。この混合物を直接打錠機に3角錠剤を製造した。血圧降下作用実施例2に示した3角錠剤を血圧に不安を持つボランティア11名に朝晩1錠ずつ7日間摂取してもらい、摂取前および7日間の摂取終了後の血圧を比較した。3角剤1錠当たりの重量は約250mgであり、1錠当たり約25mgのカシスエキスと約25mgのラフマエキスを含む。それぞれの血圧の測定値を表2に示す。収縮期血圧においては、11名中8名に血圧の低下が観察された。拡張期血圧においては、11名中10名に血圧の低下が観察された。11名全体の平均値±標準誤差は、収縮期血圧においては143±3.5mmHgから130±1.9mmHgへ、拡張期血圧においては87±3.5mmHgから81±2.8mmHgへと推移し、t検定の結果、収縮期血圧、拡張期血圧ともに危険率5%で有意な血圧降下作用が認められた。カシスエキスとラフマエキスを含むことを特徴とする血圧降下剤。カシスエキスが固形分当たり30重量%以上50重量%以下のアントシアニンを含むことを特徴とする請求項1に記載の血圧降下剤。カシスエキスがカシス(Ribes nigrum L.)の果実その他の樹体構成物もしくはそれらの加工物である請求項1および2に記載の血圧降下剤。ラフマエキスが固形分当たり4重量%以上のヒペロシド、イソクエルシトリンを含むことを特徴とする請求項1に記載の血圧降下剤。ラフマエキスがラフマ(Apocynum venetum L.)の葉もしくは葉の加工物である請求項1および2に記載の血圧降下剤。カシスエキスとラフマエキスの配合比が重量比として1対10から10対1の間、好ましくは1対1である請求項1に記載の血圧降下剤。 【課題】中軽度の高血圧症の改善および高血圧症の予防を目的とした、安全かつ高い効果が得られる血圧降下剤を提供する。【解決手段】カシスエキスとラフマエキスを組み合わせた組成物が優れた血圧降下作用を有することを見出した。本組成物はカシスエキス単独およびラフマエキス単独の1/10重量で、カシスエキス単独およびラフマエキス単独と同等の収縮血管弛緩活性を示す。本組成物は高血圧症の治療および予防を目的とした食品、栄養補助食品、医薬品として日常的に摂取できることを特徴とする。【選択図】なし