タイトル: | 公開特許公報(A)_アミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)またはその塩、およびこれらの用途 |
出願番号: | 2006128657 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C08G 69/48,A61K 38/00,A61K 8/64,A61Q 19/00,A61Q 17/00,A61P 17/16,A61P 31/04,G02C 13/00 |
中井 史郎 森 康子 安澤 幹人 JP 2007297559 公開特許公報(A) 20071115 2006128657 20060502 アミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)またはその塩、およびこれらの用途 ロート製薬株式会社 000115991 国立大学法人徳島大学 304020292 三枝 英二 100065215 掛樋 悠路 100076510 中野 睦子 100108084 中井 史郎 森 康子 安澤 幹人 C08G 69/48 20060101AFI20071019BHJP A61K 38/00 20060101ALI20071019BHJP A61K 8/64 20060101ALI20071019BHJP A61Q 19/00 20060101ALI20071019BHJP A61Q 17/00 20060101ALI20071019BHJP A61P 17/16 20060101ALI20071019BHJP A61P 31/04 20060101ALI20071019BHJP G02C 13/00 20060101ALI20071019BHJP JPC08G69/48A61K37/02A61K8/64A61Q19/00A61Q17/00A61P17/16A61P31/04G02C13/00 12 OL 24 2H006 4C083 4C084 4J001 2H006DA08 2H006DA09 4C083AC012 4C083AC072 4C083AC122 4C083AC302 4C083AC422 4C083AC432 4C083AC482 4C083AD352 4C083AD411 4C083AD412 4C083BB51 4C083CC02 4C083CC04 4C083CC05 4C083CC31 4C083DD23 4C083DD31 4C083EE11 4C084AA01 4C084AA02 4C084AA03 4C084BA02 4C084BA10 4C084BA23 4C084MA16 4C084MA28 4C084MA58 4C084MA63 4C084NA14 4C084ZA89 4C084ZA90 4C084ZA92 4J001DA01 4J001DB04 4J001DC12 4J001DD07 4J001DD13 4J001EA14 4J001EA34 4J001FA06 4J001GE02 4J001JA20 4J001JB01 本発明は、γ−ポリグルタミン酸を親水性アミノ酸で修飾することによって、新たな機能を有するアミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)に関する。 γ−ポリグルタミン酸は、グルタミン酸エステル−Nカルボン酸無水物の重合体から誘導されるか、またはバチルス属の微生物の発酵によって製造される、複数のグルタミン酸がγ−グルタミル結合で連結してなる水溶性の生分解性ポリマーである。当該γ−ポリグルタミン酸の塩は保湿性に優れていることから、保湿性が求められる各種の製品(靴クリーム、塗料、紙製品、食品、化粧料など)の保湿剤として、特にポリグルタミン酸塩が皮膚のNMF(天然保湿因子)の成分であるポリペプチドの一種であることから、化粧料用保湿剤としての用途が提案されている(特許文献1参照)。 一方、γ−ポリグルタミン酸は、グルタミン酸のα-カルボキシル基に由来するカルボキシル基を側鎖に有するため、当該側鎖カルボキシル基に各種の官能基を導入することによって、γ−ポリグルタミン酸にさらに新たな機能を付与した修飾(γ−ポリグルタミン酸)が多数提案されている。例えば、γ−ポリグルタミン酸の側鎖カルボキシル基に、スルホアルキルアミノ基を有するタウリンを結合させて新たな機能を付与した化合物(特許文献2)、ポリオキシエチレン鎖やアルキル基を結合させてミセル形成能を付与したもの(特許文献3)、アミノアルコールを結合させて温度応答性を付与したもの(非特許文献1)、アルキル基を結合して新たな機能を付与したもの(非特許文献2)、およびL-フェニルアラニン誘導体を結合させて疎水性を上げ、ナノ粒子に応用したもの(非特許文献3)などを挙げることができる。 ところで、保湿作用は、皮膚外用剤や皮膚化粧料などの皮膚適用剤や毛髪ケア製品にとって重要な機能の一つである。従来使用されている保湿剤は、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトールなどを中心とする多価アルコール類が主流であるが、最近では天然保湿因子NMF(natural moisturizing factor)の主成分であるピロリドンのカルボン酸塩や乳酸塩、およびヒアルロン酸ナトリウムなども使用されるようになっている。しかし、多価アルコール系の保湿剤は、保湿性は比較的良好であるものの、ベタツキを生じやすく使用感に難点がある。ピロリドンのカルボン酸塩や乳酸塩は、乳化阻害を起こしやすく、乳液やクリームなどの乳化形態に適用できないという難点がある。またヒアルロン酸ナトリウムは原料が高いことに加え、鶏冠由来、微生物生産、遺伝子組換えと様々な製法で作られ、安全性面に注意を要する点も多い。特開昭59−209635号公報特開2002−80593号公報特開2003−342367号公報Tachibana et al., Polymer Preprints Japan 53(1), IIIPc125 (2004)M. Morillo et al., Polymer 44, 7557 (2003)M. Matsuzaki et al., Chemistry Letters 33(4) 398 (2004) 本発明の目的は、γ−ポリグルタミン酸に新たな機能を付与した新規γ−ポリグルタミン酸誘導体〔修飾−(γ−ポリグルタミン酸)またはその塩〕を提供することである。特にγ−ポリグルタミン酸塩よりも有意に保湿性に優れた修飾(γ−ポリグルタミン酸)塩を提供することを目的とする。また本発明の目的は、当該修飾(γ−ポリグルタミン酸)またはその塩の製造方法、ならびに当該修飾(γ−ポリグルタミン酸)またはその塩の用途を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行っていたところ、γ−ポリグルタミン酸の側鎖のα−カルボキシル基に親水基を有するアミノ酸のアミノ基をアミド結合させて調製したアミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)の塩が、γ−ポリグルタミン酸よりも優れた保湿性を有し、また皮膚への黄色ブドウ球菌の付着を有意に抑制する作用を有することを見出し、各種製品の保湿剤としてのみならず、化粧料、並びにアトピー性皮膚炎などの黄色ブドウ球菌の感染が一原因となっている皮膚疾患に対する皮膚外用剤として有用であることを確信した。さらに、本発明者らは、γ−ポリグルタミン酸および上記のアミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)の塩には、コンタクトレンズに対する細菌の付着を抑制する作用を有することを見出し、これらの化合物が、コンタクトレンズ洗浄剤、保存剤、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズ装着時用点眼剤などの各種のコンタクトレンズ用組成物の配合成分として、有用であることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて開発されたものである。 すなわち、本発明には下記に掲げる態様が含まれる。(1)アミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)またはその塩(1-1) γ−ポリグルタミン酸の側鎖α−カルボキシル基の一部または全てと、親水性アミノ酸のアミノ基とがアミド結合してなる、アミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)またはその塩。(1-2) 一般式(I)〔式中、Rは下式(II)で示される親水性基であって、(式(II)中、R1は低級アルキレン基、R2はヒドロキシル基で置換されていてもよい低級アルキレン基、およびR3は水素原子、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を意味する。xおよびyは、同一または異なって、0または1を示す。)mは0または1以上の整数、lはmと合わせて6〜15000となる整数を意味し、各繰り返し単位はランダムに存在、または部分的にブロックを形成する。〕で示される(1-1)記載のアミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)またはその塩。(1-3) 親水性基(II)が、グリシン、セリン、アスパラギン酸およびグルタミン酸からなる群から選択される少なくとも1つの親水性アミノ酸からアミノ基を除いた基である、(1-2)記載のアミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)またはその塩。(1-4) 分子量が1000〜500万である(1-1)乃至(1-3)のいずれかに記載のアミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)またはその塩。 (2)アミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)またはその塩の製造方法(2-1) γ−ポリグルタミン酸と親水性アミノ酸のアルキルエステルを、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩の存在下で反応させる工程を有する、(1-1)乃至(1-4)のいずれかに記載する、アミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)またはその塩の製造方法。(2-2) γ−ポリグルタミン酸と親水性アミノ酸のアルキルエステルを、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩と4-ジメチルアミノピリジンの存在下で反応させることを特徴とする、(2-1)に記載するアミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)またはその塩の製造方法。 (3)保湿剤(3-1) (1-1)乃至(1-4)のいずれかに記載するアミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)またはその塩を有効成分とする保湿剤。 (4)黄色ブドウ球菌または緑膿菌の付着阻害剤(4-1) γ−ポリグルタミン酸、(1-1)乃至(1-4)のいずれかに記載のアミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)、およびこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を有効成分とする、黄色ブドウ球菌または緑膿菌の付着抑制剤。 (5)皮膚外用剤(5-1) (1-1)乃至(1-4)のいずれかに記載するアミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)またはその塩を含有する皮膚外用剤。 (6)化粧料(6-1) (1-1)乃至(1-4)のいずれかに記載するアミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)またはその塩を含有する化粧料。 (7)ヘアケア用剤(7-1) (1-1)乃至(1-4)のいずれかに記載するアミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)またはその塩を含有するヘアケア用剤。 (8)コンタクトレンズ用組成物(7-1) γ−ポリグルタミン酸、(1-1)乃至(1-4)のいずれかに記載のアミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)、およびこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含有する、コンタクトレンズ用組成物。(1)アミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)およびその塩 本発明のアミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)〔以下、「アミノ酸修飾−γPGA」ともいう〕は、多数のグルタミン酸がγ−グルタミル結合で連結してなるγ−ポリグルタミン酸の側鎖α−カルボキシル基の全部またはその一部が親水性アミノ酸のアミノ基とアミド結合してなる構造を有するものである。 本発明が対象とする親水性アミノ酸は、アミノ基とカルボキシル基の両方の官能基を有し、全体として親水性を有するものである。かかる特性を有するものであれば、蛋白質を構成するα−アミノ酸に限らず、例えばそのアルキル基の一部または全てがヒドロキシル基で置換されてなるものであってもよい。なお、親水性のα−アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、2−アミノアジピン酸、2−アミノズベリン酸、および2−アミノピメリン酸などを挙げることができる。好ましくは、グリシン、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸および2−アミノズベリン酸を挙げることができる。また本発明が対象とするアミノ酸は、カルボキシル基が結合している炭素(α-C)を基準として3位および4位にアミノ基が結合しているβ−アミノ酸およびγ−アミノ酸であってもよい。β−アミノ酸として、具体的には3−アミノアジピン酸、3−アミノズベリン酸、および3−アミノピメリン酸などを、またγ−アミノ酸として、具体的には4−アミノズベリン酸および4−アミノピメリン酸などを例示することができる。また、これらのα−、β−またはγ−アミノ酸は、そのアルキル基の一部または全てがヒドロキシル基で置換されてなるものであってもよく、具体的にはβ−ヒドロキシアスパラギン酸、γ−ヒドロキシアスパラギン酸などを例示することができる。 なお、本発明が対象とするアミノ酸はD体、L体のどちらでもよい。好ましくはL体である。 これらのアミノ酸で修飾された本発明のアミノ酸修飾−γPGAは、具体的には下記の一般式(I)で表すことができる。一般式(I)ここで、Rは下式(II)で示される親水性基を意味する。 当該式(II)中、R1は低級アルキレン基、R2はヒドロキシル基で置換されていてもよい低級アルキレン基、およびR3は水素原子、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を意味する。なお、xおよびyは、同一または異なって(互いに独立して)、0または1の整数を意味する。xが0である場合、2位の炭素(α-C)(上記式中、*で示す)はカルボキシル基と直接結合し、またyが0である場合、2位の炭素(α-C)はR3と直接結合することになる。以下、便宜上、xが0のときを「R1が直接結合」、yが0のときを「R2が直接結合」ともいう。 ここで低級アルキレン基としては、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキレン基を挙げることができるが、好ましくは直鎖状のアルキレン基である。具体的には、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基およびヘキサメチレン基を挙げることができる。好ましくはメチレン基およびエチレン基である。 R2で示す低級アルキレン基はヒドロキシル基で置換されていてもよい。ヒドロキシル基で置換されるアルキレン鎖の部位は任意であり、特に制限されない。具体的には、低級アルキレン基の長さに応じて、カルボキシル基がR1を介して結合している炭素(α-C)(2位)を基準に2位、3位、4位、5位、6位、7位および8位のいずれかの炭素原子にヒドロキシル基が結合したものを例示することができる。置換するヒドロキシル基の数も1〜6の範囲で適宜選択することができる。好ましくはヒドロキシル基で置換されていないか、または1のヒドロキシル基で置換された炭素数1〜6の低級アルキレン基である。 R1、R2およびR3の各種組み合わせは、特に制限されないが、上記式(II)で表される親水性基(II)が、アミノ基(-NH2)を結合して前述する親水性アミノ酸となるような組み合わせが好ましい。 例えば、xとyがいずれも0(R1とR2がいずれも直接結合の場合)、R3が水素原子である組み合わせ(グリシンの-NH2を除いた基);xが0(R1が直接結合)、R2がメチレン基、R3がヒドロキシル基である組み合わせ(セリンの-NH2を除いた基):xが0(R1が直接結合)、R2がメチレン基、R3がカルボキシル基である組み合わせ(アスパラギン酸の-NH2を除いた基):xが0(R1が直接結合)、R2がヒロドキシメチレン基、R3がカルボキシル基である組み合わせ(β−ヒドロキシアスパラギン酸の-NH2を除いた基):xが0(R1が直接結合)、R2がエチレン基、R3がカルボキシル基である組み合わせ(グルタミン酸の-NH2を除いた基):xが0(R1が直接結合)、R2がヒドロキシエチレン基、R3がカルボキシル基である組み合わせ(β−またはγ−ヒドロキシアスパラギン酸の-NH2を除いた基):xが0(R1が直接結合)、R2がトリメチレン基、R3がカルボキシル基である組み合わせ(2−アミノアジピン酸の-NH2を除いた基):R1がメチレン基、R2がエチレン基、R3がカルボキシル基である組み合わせ(3−アミノアジピン酸の-NH2を除いた基):xが0(R1が直接結合)、R2がペンタメチレン基、R3がカルボキシル基である組み合わせ(2−アミノズベリン酸の-NH2を除いた基):R1がメチレン基、R2がテトラメチレン基、R3がカルボキシル基である組み合わせ(3−アミノズベリン酸の-NH2を除いた基):R1がエチレン基、R2がトリメチレン基、R3がカルボキシル基である組み合わせ(4−アミノズベリン酸の-NH2を除いた基):xが0(R1が直接結合)、R2がテトラメチレン基、R3がカルボキシル基である組み合わせ(2−アミノピメリン酸の-NH2を除いた基):R1がメチレン基、R2がトリメチレン基、R3がカルボキシル基である組み合わせ(3−アミノピメリン酸の-NH2を除いた基):R1がエチレン基、R2がエチレン基、R3がカルボキシル基である組み合わせ(4−アミノピメリン酸の-NH2を除いた基)を挙げることができる。 好ましくは、xとyがいずれも0(R1とR2がいずれも直接結合の場合)、R3が水素原子である組み合わせ(グリシンの-NH2を除いた基);xが0(R1が直接結合)、R2がメチレン基、R3がヒドロキシル基である組み合わせ(セリンの-NH2を除いた基):xが0(R1が直接結合)、R2がメチレン基、R3がカルボキシル基である組み合わせ(アスパラギン酸の-NH2を除いた基):xが0(R1が直接結合)、R2がエチレン基、R3がカルボキシル基である組み合わせ(グルタミン酸の-NH2を除いた基)、R2がヒドロキシメチレン基、R3がカルボキシル基である組み合わせ(β−ヒドロキシアスパラギン酸の-NH2を除いた基)、xが0(R1が直接結合)、R2がペンタメチレン基、R3がカルボキシル基である組み合わせ(2−アミノズベリン酸の-NH2を除いた基):R1がメチレン基、R2がテトラメチレン基、R3がカルボキシル基である組み合わせ(3−アミノズベリン酸の-NH2を除いた基):R1がエチレン基、R2がトリメチレン基、R3がカルボキシル基である組み合わせ(4−アミノズベリン酸の-NH2を除いた基)である。 さらに好ましくは、xとyがいずれも0(R1とR2がいずれも直接結合の場合)、R3が水素原子である組み合わせ(グリシンの-NH2を除いた基);xが0(R1が直接結合)、R2がメチレン基、R3がヒドロキシル基である組み合わせ(セリンの-NH2を除いた基):xが0(R1が直接結合)、R2がメチレン基、R3がカルボキシル基である組み合わせ(アスパラギン酸の-NH2を除いた基):xが0(R1が直接結合)、R2がエチレン基、R3がカルボキシル基である組み合わせ(グルタミン酸の-NH2を除いた基)である。 一般式(I)中、「γ−グルタミン酸残基」の繰り返し数を意味するmと、「アミノ酸結合−γ−グルタミン酸残基」の繰り返し数を意味するlとの合計は、6〜15000、好ましくは15〜7000の整数である。mは0または1以上の整数(但し、15000を越えない)であり、lは上記mとlとの合計からmの整数を除いた整数である。アミノ酸修飾−γPGAの分子量は、特に制限されないが、通常1000〜500万、好ましくは2000〜300万、より好ましくは3000〜200万であり、かかる分子量になるように、上記繰り返し単位の数(m、l)を適宜設定することができる。なお、各繰り返し単位は、部分的にブロックを形成していてもよいし、またランダムに存在していてもよい。 本発明のアミノ酸修飾−γPGAの塩としては、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属塩、カルシウムやマグネシウムなどのアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩などの塩基性アミン酸塩を挙げることができる。好ましくはナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属塩である。 本発明のアミノ酸修飾−γPGAは、γ−ポリグルタミン酸(単に「γ−PGA」ともいう)に、修飾するアミノ酸の全てのカルボキシル基をエステル化によって保護したアミノ酸エステルを、1−エチル-3-(3ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミドの存在下で反応させることによって製造することができる。 出発原料として使用するγ−PGAは、合成法または発酵法など、その製造方法の別は問わないが、分子量が1000〜500万、好ましくは2000〜300万、より好ましくは3000〜200万の範囲にあるγ−PGAであることが望ましい。かかる分子量を有するγ−PGAは、特公昭43-24472号公報や特開平1-174397号公報の記載を参考にして、後述する参考例に記載する方法で、バチルス属の微生物から製造することができるし、また市販のγ−PGAを用いることができる(例えば、日本ポリグリ(株)、一丸ファルコス(株)、(株)明治フードマテリアルなど)。 アミノ酸エステルとしては、アミノ酸の炭素数1〜6の低級アルキルエステル、好ましくは炭素数1〜3の低級アルキルを挙げることができ、アミノ酸のメチルエステルまたはエチルエステルを好適に例示される。なお、アミノ酸エステルは有機酸または無機酸との酸塩、具体的には塩酸塩として用いることが好ましい。また1−エチル-3-(3ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミドも有機酸または無機酸との酸塩、具体的には塩酸塩として用いることが好ましい。 ここで反応に供するγPGAとアミノ酸エステルとの割合は、γ−PGAの繰り返しユニットであるグルタミン酸1モルに対して、アミノ酸エステルを1〜1.5モル、好ましくは1.1〜1.2モルの割合を挙げることができる。またこの場合、反応系に1−エチル-3-(3ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミドまたはその酸塩を、1〜1.5モルモル、好ましくは1.2〜1.3モルモルで配合しておくことが望ましい。 本発明のアミノ酸修飾−γPGAの収率を上げるために、上記反応を1−エチル-3-(3ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミドまたはその酸塩に加えて、さらに4-ジメチルアミノピリジンの存在下で行うことが好ましい。4-ジメチルアミノピリジンは、反応系に、γPGAの繰り返しユニットであるグルタミン酸1モルあたり、0.05〜0.15モル、好ましくは0.07〜0.12モルとなるような割合で配合しておくことが望ましい。 これらの各成分を配合した後、最初の2時間程度は0〜4℃の低温で攪拌反応させ、次いで室温で半日または1日程度、攪拌しながら反応することによって、アミノ酸修飾−γPGAのエステル塩が生成する。斯くして生成したエステル塩を、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属塩の水溶液で加水分解することによって、アミノ酸修飾−γPGAのアルカリ金属塩を得ることができる。また、アミノ酸修飾−γPGAのアンモニウム塩または塩基性アミン酸塩(例えば、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩など)は、後述する方法で調製されるアミノ酸修飾−γPGA(カルボン酸型)にアンモニウムまたは塩基性アミンを反応させることによって調製することができる。なお、かかる反応は両者を共存させることによって生じるため特に制限されないが、例えばアミノ酸修飾−γPGA(カルボン酸型)を含む水溶液にアンモニアを通じたり、アンモニア水、エタノールアミン、ジエタノールアミンまたはトリエタノールアミンなどの塩基性アミンを添加し濃縮する方法、エタノールアミン、ジエタノールアミンまたはトリエタノールアミンなどの塩基性アミンなどを結合した陽イオン交換樹脂に、アミノ酸修飾−γPGA(カルボン酸型)を含む水溶液を通液して溶出液を回収する方法などを挙げることができる。 なお、この場合、皮膚に適した弱酸性pHのアミノ酸修飾−γPGAの塩を調製するには、加水分解後、pH5程度になるように塩酸等で酸処理を行ってもよい。 さらに、アミノ酸修飾−γPGA(カルボン酸型)は、上記で得られたアミノ酸修飾−γPGAの塩を酸処理、好ましくはpH2以下の強酸で処理することにより調製することができる。 斯くして得られるアミノ酸修飾−γPGAおよびその塩は、必要に応じて透析などの精製処理を施し、凍結乾燥して粉末形態として取得することができる。 (2)保湿剤、および当該保湿剤の皮膚外用剤、化粧料またはヘアケア用剤への適用 前述する本発明のアミノ酸修飾−γPGAおよびその塩は、後述する実験例1に示すように、優れた保湿作用を有している。実験例1によれば、アミノ酸修飾−γPGAの中でも、グルタミン酸やセリンで修飾されたγ−PGAの塩の保湿作用はヒアルロン酸などの従来公知の保湿剤よりも有意に優れており、またグリシン修飾−γPGAの塩や、アスパラギン酸修飾−γPGAおよびその塩の保湿作用は、ヒアルロン酸に増して保湿作用の高いアセチルヒアルロン酸やγ−ポリグルタミンよりも優れた保湿作用を有している。 このため本発明のアミノ酸修飾−γPGAおよびその塩は、保湿剤として有用である。当該保湿剤は、本発明のアミノ酸修飾−γPGAまたはその塩100重量%からなるものであってよく、皮膚外用剤、化粧料またはヘアケア用剤に配合して用いることができる。ここで皮膚外用剤は、各種の有効成分および/または添加剤を含有する組成物であって、主として医薬用途で身体の外部に用いられるものをいう。また化粧料とは、各種の有効成分および/または添加剤を含有する組成物であって、主として皮膚の手入れや化粧用途で身体の外部に用いられるものをいう。さらにヘアケア用剤としては、各種の有効成分および/または添加剤を含有する組成物であって、主として毛髪または頭皮を手入れする目的または毛髪を化粧する用途で毛髪または頭皮に用いられるものをいう。これらの皮膚外用剤、化粧料またはヘアケア用剤は、主として中に配合する有効成分によって分類される。このため、製品形態からは明確に区別することはできないものの、例えば皮膚外用剤としては、液剤、軟膏、クリーム、ローション、乳液、貼付剤およびパップ剤などを;化粧料としては洗顔料(クリーム、フォーム、ローション、乳液)、ボディーシャンプー、クレンジング料(クリーム、フォーム、ローション、乳液)、マーサージクリーム、コールドクリーム、美容液、化粧水、乳液、保湿クリーム、パック、ファンデーション、口紅、リップクリーム、リップジェル剤、メークアップ剤、アフターシェービングクリーム、日焼け止めクリーム、ネイル剤(マニュキュア、ペディキュアなど)、ハンドクリーム、ボディーローション(またはクリームやフォーム)、入浴剤、フキトリシート、および制汗剤など;ヘアケア用剤としては、チック、ヘアリキッド、ヘアセットローション、ヘアスプレー、ヘアカラー、ヘアブリーチ、パーマネント剤、ヘアシャンプー、ヘアリンス、ヘアトリートメント、ヘアクリーム、養毛料、および育毛剤などを挙げることができる。 これらの皮膚外用剤、化粧料またはヘアケア用剤は、上記するように、用途に応じて任意の形態(例えば、クリーム、ゲル、軟膏、液剤、乳液、フォーム、噴霧剤、パウダーなど)に調製することができる。さらに、入浴剤の場合は、前記形態に加えて、錠剤、粉末剤または顆粒剤の形態を備えることができる。 本発明の保湿剤を上記各種製品に配合すると、その添加量に応じて当該上記各種製品に保湿作用を付与することができる。保湿剤の配合割合としては、制限はされないが、好ましくは本発明のアミノ酸修飾−γPGAまたはその塩の割合に換算して、通常0.0001〜15重量%、好ましくは0.001〜10重量%、より好ましくは0.01〜5重量%である。 なお、上記各種の皮膚外用剤、化粧料またはヘアケア用剤には、本発明のアミノ酸修飾−γPGAまたはその塩の他に、本発明の効果を妨げない範囲で、他の保湿剤を配合することもできる。かかる保湿剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ブドウ糖、ショ糖、果糖、キシリトール、乳糖、マルトース、マルチトール等の多価アルコール;ヒアルロン酸ナトリウム、アセチルヒアルロン酸、γ−ポリグルタミン酸、ヘパリン類似物質、コンドロイチン硫酸ナトリウム、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等の生体高分子;グリシン、アスパラギン酸、アルギニン等のアミノ酸;乳酸ナトリウム、尿素、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等の天然保湿因子;セラミド、コレステロール、リン脂質等の脂質類;ラベンダーエキス、ユーカリエキス、ペパーミントエキス等の植物抽出物等を例示することができる。 また皮膚外用剤、化粧料またはヘアケア用剤には、上記保湿剤に加えて、医薬品、化粧料または医薬部外品の目的や用途に応じて、例えば抗炎症剤、ビタミン剤、抗菌剤、局所麻酔剤、美白剤など、他の薬効成分を配合することができる。 制限はされないが、抗炎症剤としては、グリチルリチン酸並びにグリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム等のグリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸又はその誘導体、アラントイン又はその誘導体、ε−アミノカプロン酸、カンゾウ抽出物、メントール、カンフルなどを例示することができる。 またビタミン剤としては、レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール等のレチノール誘導体(ビタミンA類)、レチナール、レチノイン酸、レチノイン酸メチル、レチノイン酸エチル、レチノイン酸レチノール、ビタミンA油、ビタミンA脂肪酸エステル等のビタミンA類、α−カロチン、β−カロチン、γ−カロチン、δ−カロチン、リコピン、ゼアキサンチン、クリプトキサンチン、エキネノン等のプロビタミンA類、dl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロールカルシウム等のビタミンE類、リボフラビン、フラビンモノヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチド、リボフラビン酪酸エステル、リボフラビンテトラ酪酸エステル、リボフラビン5’−リン酸エステルナトリウム、リボフラビンテトラニコチン酸エステル等のビタミンB2類、ニコチン酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸メチル、ニコチン酸β−ブトキシエチル、ニコチン酸1−(4−メチルフェニル)エチル等のニコチン酸類、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、デヒドロアスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、ジパルミチン酸L−アスコルビルなどの等のアスコルビン酸誘導体またはビタミンC類、メチルヘスペリジン、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロールなどのビタミンD類、フィロキノン、ファルノキノン等のビタミンK類、γ−オリザノール、ジベンゾイルチアミン、ジベンゾイルチアミン塩酸塩、チアミン塩酸塩、チアミンセチル塩酸塩、チアミンチオシアン酸塩、チアミンラウリル塩酸塩、チアミン硝酸塩、チアミンモノリン酸塩、チアミンリジン塩、チアミントリリン酸塩、チアミンモノリン酸エステルリン酸塩、チアミンモノリン酸エステル、チアミンジリン酸エステル、チアミンジリン酸エステル塩酸塩、チアミントリリン酸エステル、チアミントリリン酸エステルモノリン酸塩等のビタミンB1類、塩酸ピリドキシン、酢酸ピリドキシン、塩酸ピリドキサール、5’−リン酸ピリドキサール、塩酸ピリドキサミン等のビタミンB6類、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、デオキシアデノシルコバラミン等のビタミンB12類、葉酸、プテロイルグルタミン酸等の葉酸類、ニコチン酸、ニコチン酸アミドなどのニコチン酸類、パントテン酸、パントテン酸カルシウム、パントテニルアルコール(パンテノール)、D−パンテサイン、D−パンテチン、補酵素A、パントテニルエチルエーテル等のパントテン酸類、ビオチン、ビオチシン等のビオチン類、そのほか、カルニチン、フェルラ酸、α−リポ酸、オロット酸等のビタミン様作用因子等を例示することができる。 抗菌剤としては、イソプロピルメチルフェノール、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、および塩化セチルピリジニウム等を例示することができる。また局所麻酔剤としては、ユーカリ油、オイゲノール、メントール、カンフル、およびハッカ油等を例示することができる。 さらに、皮膚外用剤、化粧料またはヘアケア用剤には、本発明のアミノ酸修飾−γPGAまたはその塩の他に、本発明の効果を妨げない範囲で、その種類やその形態に応じて通常使用される基剤または添加剤を配合することができる。かかる基剤や添加剤としては、色素、香料、防腐剤、pH調整剤、金属封鎖剤、高級アルコール、浸透促進剤、抗酸化剤などを例示することができる。なお、これら製剤のpHは、皮膚刺激のないpHであれば制限されないが、pH4〜7、好ましくは弱酸性領域であるpH5〜6の範囲である。 (3)黄色ブドウ球菌付着阻害剤および当該抑制剤の皮膚外用剤または化粧料への適用 また前述する本発明のアミノ酸修飾−γPGAの塩およびγ−PGAの塩は、後述する実験例2に示すように、黄色ブドウ球菌の皮膚付着を阻害する作用を有している。 このため本発明のアミノ酸修飾−γPGAの塩ならびにγ−PGAの塩は、黄色ブドウ球菌の皮膚付着阻害剤として用いることができる。当該黄色ブドウ球菌皮膚付着阻害剤は、例えば、アトピー性皮膚炎のような、掻き傷から滲出してきた血漿成分を介して黄色ブドウ球菌が皮膚表面に付着して増殖することで障害が発生・悪化する皮膚疾患の予防に有用である。また、血漿成分が体外に滲出して、上記黄色ブドウ球菌による障害の悪化が懸念される擦り傷、掻き傷、切り傷といった外傷に対しても有用である。 当該黄色ブドウ球菌の皮膚付着阻害剤は、本発明のアミノ酸修飾−γPGAの塩またはγ−PGAの塩100重量%からなるものであってよい。かかる阻害剤は、実用的には、皮膚外用剤、化粧料またはスキンケア用剤に配合して、黄色ブドウ球菌の皮膚への付着を阻害してアトピー性皮膚炎を改善し予防するための、または創傷の化膿を予防するための皮膚外用剤または化粧料として実用に供することができる。皮膚外用剤または化粧料の各種形態については前述の通りである。 皮膚外用剤または化粧料として製剤化するに際、当該製剤におけるアミノ酸修飾−γPGAまたはγ−PGAの塩の含有量は、本発明の効果を奏する限り限定されないが、製剤全量を基準として、通常0.0001〜15重量%、好ましくは0.001〜10重量%、より好ましくは0.01〜5重量%である。 その適用方法は、一般的な皮膚外用剤 、化粧料またはスキンケア用剤などの適用方法に準じればよく、一日1回〜数回、適量を皮膚などの外皮に塗布するなどして用いることができる。 当該皮膚外用剤または化粧料には、アミノ酸修飾−γPGAまたはγ−PGAの塩以外の薬効成分を配合することで、本発明の効果を高めたり、さらなる効果を付与したりすることができる。かかる薬効成分は、皮膚や粘膜に対して薬効を発揮する成分であれば特に限定されるものではなく、皮膚や粘膜に生じる炎症・損傷の治癒や改善、皮膚の保護などあらゆる好ましい効果をもたらす成分をいう。このような薬効成分としては、具体的には、抗炎症剤、ビタミン剤、保湿剤 、抗菌剤、局所麻酔剤などを例示することができる。その具体例については前述のものを同様に挙げることができる。 また当該皮膚外用剤または化粧料には、本発明の効果を妨げない範囲で、これらの製品の種類や形態に応じて、色素、香料、防腐剤、界面活性剤、植物抽出液、pH調整剤、金属封鎖剤、油分、ゲル化剤、多価アルコール、高級アルコール、炭化水素、浸透促進剤、顔料、抗酸化剤等の、各種の基剤や添加剤を配合することもできる。なお、本発明の黄色ブドウ球菌皮膚付着阻害剤を、皮膚外用剤または化粧料に製剤化する場合の当該製剤のpHは、皮膚刺激のないpHであればよいが、通常pH4〜7、好ましくは弱酸性〜中性のpH5〜7の範囲である。 (4)緑膿菌付着阻害剤および当該抑制剤のコンタクトレンズ用組成物への適用 さらに前述する本発明のアミノ酸修飾−γPGA、γ−PGA、またはこれらの塩は、後述する実験例3に示すように、緑膿菌のコンタクトレンズへの付着を阻害する作用を有している。なかでもγ−PGA、ならびにグリシンやアスパラギン酸で修飾されたγ−PGAの塩は顕著に優れた緑膿菌付着阻害作用を有している。 このため本発明のアミノ酸修飾−γPGAまたはγ−PGAの塩は、緑膿菌のコンタクトレンズ付着阻害剤として用いることができる。かかる緑膿菌のコンタクトレンズ付着阻害剤は、コンタクトレンズに対する緑膿菌汚染を防止し、コンタクトレンズの使用に伴う緑膿菌感染によって生じる眼疾患(例えば、角膜腫瘍)を予防することができる。 当該緑膿菌のコンタクトレンズ付着阻害剤は、本発明のアミノ酸修飾−γPGAまたはγPGAの塩100重量%からなるものであってよい。かかる阻害剤は、実用的には、コンタクトレンズ用組成物に配合することで、コンタクトレンズへの緑膿菌付着阻害作用を備えた抗菌性の高いコンタクトレンズ用組成物として実用に供することができる。 ここで、コンタクトレンズ用組成物としては、コンタクトレンズ用の消毒剤、保存剤、洗浄剤、洗浄保存剤、蛋白除去剤、コンタクトレンズ装着剤、コンタクトレンズ装用時の点眼または洗眼剤を挙げることができる。なお、コンタクトレンズの種類は問わず、ハードコンタクトレンズ、酸素透過性コンタクトレンズ、およびソフトコンタクトレンズなどのいずれのコンタクトレンズに適用することができる。 これらのコンタクトレンズ用組成物に対する緑膿菌のコンタクトレンズ付着阻害剤の配合割合は、緑膿菌の付着を阻害する作用を発揮する限り、特に制限されないが、例えば、コンタクトレンズ用組成物が、コンタクトレンズ用の消毒剤、保存剤、洗浄剤、洗浄保存剤、または蛋白除去剤の場合は、アミノ酸修飾−γPGAまたはγ−PGAの塩の割合に換算して通常0.0001〜2重量%、好ましくは0.001〜1重量%、より好ましくは0.01〜0.1重量%の範囲、コンタクトレンズ用組成物が、コンタクトレンズ装着剤、またはコンタクトレンズ装用時の点眼剤もしくは洗眼剤の場合は、アミノ酸修飾−γPGAまたはγ−PGAの塩の割合に換算して通常0.0001〜1重量%、好ましくは0.001〜0.5重量%、より好ましくは0.01〜0.1重量%の範囲を例示することができる。 本発明のコンタクトレンズ用組成物には、本発明の目的に反しない範囲で、コンタクトレンズ用組成物の種類やその用途に応じて、他の成分を配合することができる。 例えば、コンタクトレンズ用組成物がコンタクトレンズ用の消毒剤、保存剤、洗浄剤、洗浄保存剤、蛋白除去剤である場合、基剤(例えば、蒸留水、滅菌精製水、生理食塩水)に加えて、殺菌剤、緩衝剤、等張化剤、界面活性剤、キレート剤、粘稠剤、湿潤剤、洗浄力向上剤、香料等を配合することができる。 殺菌剤としては、ハードコンタクトレンズ、酸素透過性ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズの各コンタクトレンズ のタイプにもよるが、本発明の目的に反しない限り、例えば塩化ベンゼトニウム、ポリヘキサメチレンビグアニド、塩化ポリドロニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、ソルビン酸及びその塩、チメロサール、クロロブタノール、フェネチルアルコール、p−オキシ安息香酸エステル類などが挙げられる。 緩衝剤は、本発明のコンタクトレンズ用剤のpHが約4〜10、好ましくは5〜9、より好ましくは6〜8の範囲となるように用いられる。緩衝剤としては、酸とその塩、塩基とその塩を常法により、所望のpHとなるように組み合わせて用いることができ、例えばホウ酸、ホウ砂、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、酒石酸ナトリウム、グルコン酸、グルコン酸ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウム、リン酸、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、各種アミノ酸等又はそれらの組み合わせが挙げられる。 等張化剤としては、水溶性で眼刺激性などの悪影響を示さないものであれば、特に限定はない。例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、グリセリン、ソルビトール、グルコース、マンニトール、プロピレングリコールなどが挙げられる。 界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、両性界面活性剤、陽イオン界面活性剤のいずれもが使用可能である。界面活性剤は、殺菌剤、洗浄力向上剤等として使用されるものである。陰イオン界面活性剤としては、例えばラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、ミリスチルサルコシンナトリウム等が挙げられ、両性界面活性剤としては、例えばラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、塩酸アルキルジアミノグリシン等が挙げられ、非イオン界面活性剤としては、例えばポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等が挙げられ、陽イオン界面活性剤としては、例えば塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム等が挙げられる。 キレート剤としては、例えばエデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、縮合リン酸ナトリウム等が挙げられる。 粘稠剤としては、例えばヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。 湿潤剤としては、例えばグリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。 洗浄力向上剤としては、蛋白分解酵素、脂質分解酵素、多糖類分解酵素、過酸化塩、界面活性剤等が挙げられる。蛋白分解酵素としては、例えばパパイン、パンクレアチン、トリプシン、ブロメライン等が挙げられる。脂質分解酵素としては、ホスホリパーゼ、膵リパーゼ等が挙げられる。多糖類分解酵素としては、キトサン分解酵素、ムチン分解酵素、リゾチーム、ヘパリナーゼ、ヒアルロニダーゼ等が、過酸化塩としては、過炭酸塩、過ホウ酸塩、過酸化水素等が挙げられる。 香料としては、例えばメントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール等が挙げられる。これらはd体、l体、dl体のいずれでもよく、精油などの形で配合されてもよい。 またコンタクトレンズ用組成物がコンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズ装着時の点眼または洗眼剤である場合、上記緑膿菌のコンタクトレンズ付着阻害剤の他、基剤(例えば、蒸留水、滅菌精製水、生理食塩水)に加えて、薬効成分、湿潤剤、安定化剤、懸濁化剤、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、粘稠剤および香料等を配合することができる。 ここで薬効成分としてはビタミン(例えば、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、酢酸トコフェロール等)、血管収縮剤(例えば、塩酸ナファゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン等)、抗炎症剤(例えば、グリチルリチン酸二カリウム、アズレンスルホン酸ナトリウム等)、アミノ酸(例えば、イプシロンアミノカプロン酸、アミノエチルスルホン酸、アルパラギン酸またはその塩等)、および抗ヒスタミン剤などの抗アレルギー剤(例えば、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、クロモグリク酸ナトリウム等)などを挙げることができる。 溶解補助剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリソルベート80等が挙げられる。保存剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロロブタノール、ベンジルアルコール、ソルビン酸又はその塩、グルコン酸クロルヘキシジン、デヒドロ酢酸ナトリウム、塩化セチルピリジニウム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等が挙げられる。また安定化剤としては、例えばアスコルビン酸、エデト酸ナトリウム、シクロデキストリン、縮合リン酸又はその塩、亜硫酸塩、クエン酸又はその塩等が挙げられる。さらに懸濁化剤としては、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール等が挙げられる。また香料としては、前述のものを同様に例示することができる。 なお、コンタクトレンズ装用時の点眼剤として用いる場合、当該点眼剤の投与量は、例えば成人の場合、1回量2〜3滴を1日5〜6回の割合で投与することが好ましい。 コンタクトレンズ用組成物は、使用時に液状をとりうるものであれば特に制限はなく、たとえば液剤、用時溶解して用いる固形剤が挙げられる。固形剤としては、錠剤、顆粒剤、散剤並びに凍結乾燥品が挙げられるが、溶解の早さ並びに無菌、組成物の均一面等を考えると凍結乾燥品が好ましい。これらは常法によって製造することができる。なお、上記の、γ−PGAまたはアミノ酸修飾−γPGAの塩の配合量、pHは、固形剤の場合には、用時の液状に調整した場合の配合量およびpHを意味する。 本発明のコンタクトレンズ用組成物が、例えばコンタクトレンズの消毒剤である場合、装用後のコンタクトレンズをこの消毒液に入れ、1〜12時間浸漬することにより使用される。また本発明のコンタクトレンズ用組成物が、例えばコンタクトレンズの洗浄保存である場合、脱着後のコンタクトレンズを当該洗浄保存剤で擦り洗いし、また洗浄保存剤に1〜12時間浸漬することにより使用される。なお、コンタクトレンズは、コンタクトレンズ装着時に、水または目に適用可能なコンタクトレンズ用液剤ですすぎ洗いすることによって使用することができる。 γ−PGAまたはアミノ酸修飾−γPGAの塩を含有する本発明のコンタクトレンズ用組成物は、緑膿菌に対して優れた付着阻害力を有する。 次に、参考例、実施例および処方例によって本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例等によって何ら限定されるものではない。なお、下記において特に言及しない限り、各成分の配合量は重量%で示されるものとする。 参考例1 γ−ポリグルタミン酸およびその塩の製造 (1)γ-ポリグルタミン酸 特公昭43-24472号公報の記載に従ってγ-ポリグルタミン酸を製造した。 具体的には、5%グルコ−ス、0.3% K2HPO4、0.15% MgSO4、0.002% MnSO4、および0.002% FeSO4を含有する合成培地(pH7)を調製し、その100mLを500mL坂口フラスコに分注して、120℃で10分間蒸気殺菌した。これに別に殺菌しておいた尿素を0.55%濃度となるように加えた。これにバチルス・ズブチルス5E株を0.5%酵母エキスで予め前培養しておいたものを2%接種し、30〜31℃で72時間振騰培養した。培養につれて液は粘稠性を呈した。以上のようにして得られる培養液を1L回収し、NaCl 30gを加えて溶解させ、これにエタノ−ル1.5Lを加えた。析出したガム状固体を回収して、これに水を加え、0.5%濃度の水溶液を調製した。そこへNaCl を3g/100mLの割合で加え、6N-NaOHでpH9〜10に調整し、14000rpmで30分間遠心分離することにより上清を得た。 得られた上清に60容量%になるようエタノールを加え、再度ガム状物質を得た。この物質を水に溶かし(0.5%濃度)、6N 塩酸を加えてpH2以下に調整後、透析チューブ(カット分子量:wt.2000)に充填し、外液を精製水として2日間透析して精製した。回収した透析液は凍結乾燥することにより、白色粉末として分子量約100万のγ-ポリグルタミン酸(約15g)を得た。 (2)γ-ポリグルタミン酸のナトリウム塩 上記のγ-ポリグルタミン酸に、10%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH10に調整後、これを透析チューブ(カット分子量:wt.2000)に充填し、外液を精製水5Lとして2日間透析した。透析後、チューブ内部のγ-ポリグルタミン酸水溶液を凍結乾燥して、γ−ポリグルタミン酸のナトリウム塩を調製する。 実施例1 グリシン修飾−(γ−ポリグルタミン酸)の塩の製造(1)グリシン修飾−(γ−ポリグルタミン酸)のナトリウム塩 分子量80万〜100万のγ−ポリグルタミン酸(γ−ポリグルタミン酸TYPE-H、日本ポリグル(株)製:以下の実施例においても同じ)(1294.7mg)、グリシンメチルエステル塩酸塩(1205.3mg:9.6mmol)、および4-ジメチルアミノピリジン(97.7mg:0.8mmol)を水80mLに攪拌しながら溶解した。これにさらに1-エチル-3-(3-ジメトルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(1993.7mg:10.4mmol)を加え、0℃で2時間攪拌し、その後室温で1夜攪拌した。得られた溶液中に、水酸化ナトリウム5.5gを30mLの水に溶解したNaOH水溶液を、冷却下(0℃)で添加し、さらに室温で1夜攪拌した。次いで、6Nの塩酸水溶液を加えて溶液を酸性(約pH5)とし、室温で1時間攪拌した。斯くして調製した溶液を、透析チューブ(カット分子量:wt.2000)に充填し、外液を精製水(5L)として、毎日外液を交換しながら3日間透析して精製した。透析後、内容液を回収して凍結乾燥することにより、白色粉末としてグリシン修飾−(γ−ポリグルタミン酸)のナトリウム塩(約1056mg)を取得した(収率:63.8%)。当該粉末の同定は、IR(KBr法)(VALOR-III:日本分光(株)製)、1H−NMR(JEOL JNM-EX400 FTNMR SYSTEM)および元素分析(N含量)により行った。また1H−NMRの結果から、得られたグリシン修飾−(γ−ポリグルタミン酸)Naは、グリシン修飾−(γ−ポリグルタミン酸)を構成するグルタミン酸の全α-カルボキシル基のうち65%に、グリシンがアミド結合していると考えられた。なお、当該グリシン修飾−(γ−ポリグルタミン酸)Naは、一般式(I)においてmが2000〜2700、lが4000〜5000のアミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)のナトリウム塩である。 IR(KBr法)cm-1:2940(-CH2-)、3300、3080、1647(CONH)、1598(CO2-)1H-NMR(ppm):2.01&2.13(1H&1H, COCH2CH2CH, m)、3.71(65% of 2H, NHCH2, m)、4.19(1H, COCH2CH2CHNH, m)N含量:測定値11.12%(65%の修飾率として、理論値11.99%)。分子量:100万〜130万。 (2)上記(1)において、4-ジメチルアミノピリジン(97.7mg:0.8mmol)を使用しないで、それ以外は同様にして、グリシン修飾−(γ−ポリグルタミン酸)を製造した。その結果、生成収率は22.5%であり、4-ジメチルアミノピリジンを使用した場合よりも41.3%収率が低かった。このことから、4-ジメチルアミノピリジンを使用することで、グリシン修飾−(γ−ポリグルタミン酸)の製造収率が増加することがわかった。 実施例2 アスパラギン酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)およびその塩の製造(1)アスパラギン酸−修飾(γ−ポリグルタミン酸)のナトリウム塩 実施例1(1)において、グリシンメチルエステル塩酸塩(1205.3mg:9.6mmol)に代えて、L-アスパラギン酸ジメチル塩酸塩(1897.2mg:9.6mmol)を用い、それ以外は同様に処理して、白色粉末からなるアスパラギン酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)のナトリウム塩(約1037mg)を取得した(収率:51.4%)。当該粉末の同定結果を下記に示す。1H−NMRの結果から、得られたアスパラギン酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)Naは、それを構成するグルタミン酸の全α-カルボキシル基のうち57%に、アスパラギン酸がアミド結合していると考えられた。なお、当該アスパラギン酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)Naは、一般式(I)においてmが2600〜3300、lが3500〜4100のアミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)のナトリウム塩である。 IR(KBr法)cm-1:2945(-CH2-)、3300、3078、1646(CONH)、1600(CO2-)1H-NMR(ppm):1.88&2.02(1H&1H, COCH2CH2CH, m)、2.30(2H, COCH2CH2CH, m)、2.73(57% of 2H, CH2CO2H, m)、4.10(1H, COCH2CH2CHNH, m)、4.45(57% of 1H, NH-CH-)N含量:測定値9.58%(57%の修飾率として、理論値9.53%)。分子量:120万〜160万。 (2)アスパラギン酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)のカルボン酸型 さらに(1)で得られたナトリウム塩を水に溶解し、6N-HClを用いて、溶液のpHを酸性(約2以下)に調整し、一夜攪拌した。次いで、これを透析チューブ(カット分子量:wt.2000)に充填し、外液を精製水(5L)として、毎日外液を交換しながら3日間透析して精製した。透析後、内容液を回収して凍結乾燥することにより、白色粉末としてアスパラギン酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)のカルボン酸型(約765mg)を得た(収率:45.9%)。当該粉末の同定結果を下記に示す。 IR(KBr法)cm-1:2945(-CH2-)、3300、3075、1647(CONH)、1729(CO2-)1H-NMR(ppm):1.96&2.21(1H&1H, COCH2CH2CH, m&m)、2.40(2H, COCH2CH2CH, m)、2.82(57% of 2H, CH2CO2H, m)、4.28(1H, COCH2CH2CHNH, m)、4.65(57% of 1H, NH-CH-)N含量:測定値11.03%(57%の修飾率として、理論値11.21%)分子量:120万〜160万。 (3)上記(1)において、4-ジメチルアミノピリジン(97.7mg:0.8mmol)を使用しないで、それ以外は同様にして、アスパラギン酸−修飾(γ−ポリグルタミン酸)Naを製造した。その結果、生成収率は20.7%であり、4-ジメチルアミノピリジンを使用した場合よりも25.2%収率が低かった。このことから、4-ジメチルアミノピリジンを使用することで、アスパラギン酸−修飾(γ−ポリグルタミン酸)の製造収率が増加することが確認された。 実施例3 グルタミン酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)の塩の製造(1)グルタミン酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)のナトリウム塩 実施例1(1)において、グリシンメチルエステル塩酸塩(1205.3mg:9.6mmol)に代えて、L-グルタミン酸ジエチル塩酸塩(2301.1mg:9.6mmol)を用い、それ以外は同様にして、白色粉末からなるグルタミン酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)のナトリウム塩(約1137mg)を取得した(収率:53.4%)。当該粉末の同定結果を下記に示す。1H−NMRの結果から、得られたグルタミン酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)Naは、それを構成するグルタミン酸の全α-カルボキシル基のうち60%に、グルタミン酸がアミド結合していると考えられた。なお、当該グルタミン酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)Naは、一般式(I)においてmが2400〜3100、lが3600〜4700のアミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)のナトリウム塩である。 IR(KBr法)cm-1:2943(-CH2-)、3300、3075、1650(CONH)、1600(CO2-)1H-NMR(ppm):1.88&2.05(1H&1H, COCH2CH2CH, m&m)、2.13(60% of 2H, COCH2CH2CO2H, m)、2.31(60% of 4H, COCH2CH2CH, CH2CO2H, m)、4.14(60% of 1H, NH-CH-, m)、4.23(1H, COCH2CH2CHNH, m)N含量:測定値9.20%(60%の修飾率として、理論値9.27%)分子量:140万〜180万。 (2)上記(1)において、4-ジメチルアミノピリジン(97.7mg:0.8mmol)を使用しないで、それ以外は同様にして、グルタミン酸−修飾(γ−ポリグルタミン酸)Naを製造した。その結果、生成収率は19.8%であり、4-ジメチルアミノピリジンを使用した場合よりも33.6%収率が低かった。このことから、4-ジメチルアミノピリジンを使用することで、グルタミン酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)の製造収率が増加することがわかった。 実施例4 セリン修飾−(γ−ポリグルタミン酸)の塩の製造(1)セリン修飾−(γ−ポリグルタミン酸)のナトリウム塩 実施例1(1)において、グリシンメチルエステル塩酸塩(1205.3mg:9.6mmol)に代えて、セリンメチル塩酸塩(1493.6mg:9.6mmol)を用い、それ以外は同様にして、白色粉末からなるセリン修飾−(γ−ポリグルタミン酸)のナトリウム塩(約1219mg)を取得した(収率:68.1%)。当該粉末の同定結果を下記に示す。1H−NMRの結果から、得られたセリン修飾−(γ−ポリグルタミン酸)Naは、それを構成するグルタミン酸の全α-カルボキシル基のうち60%に、セリンがアミド結合していると考えられた。なお、当該セリン修飾−(γ−ポリグルタミン酸)Naは、一般式(I)においてmが2400〜3100、lが3600〜4700のアミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)のナトリウム塩である。 IR(KBr法)cm-1:2944(-CH2-)、3300、3080、1645(CONH)、1597(CO2-)1H-NMR(ppm):1.86&2.04(1H&1H, COCH2CH2CH, m&m)、2.28(2H, COCH2CH2CH, m)、3.78(60% of 2H, CH2OH, m)、4.08(60% of 1H, NHCH-, m)、4.23(1H, COCH2CH2CHNH, m)N含量:測定値10.14%(60%の修飾率として、理論値10.77%)分子量:120万〜150万。 (2)上記(1)において、4-ジメチルアミノピリジン(97.7mg:0.8mmol)を使用しないで、それ以外は同様にして、セリン−修飾(γ−ポリグルタミン酸)Naを製造した。その結果、生成収率は20.3%であり、4-ジメチルアミノピリジンを使用した場合よりも47.8%収率が低かった。このことから、4-ジメチルアミノピリジンを使用することで、セリン−修飾(γ−ポリグルタミン酸)の製造収率が増加することがわかった。 実験例1 保湿試験 ケラチン末を用いて、下記の方法により、実施例1〜4で製造したアミノ酸−修飾(γ−ポリグルタミン酸)またはその塩について、水分保持能力を測定した。<水分保持能力の測定>(1) 被験試料として表1に記載する試料を用いて、5%の被験水溶液を調製する。(2) Φ2.5cmのビーカーにケラチン末(東京化成(株)製)を1g入れ、これに(1)で用意した5%の被験水溶液を200μL滴下する。(3) これを35℃の恒温器に入れて、1時間後の重量を測定し、恒温器に入れる前の重量との差から水分蒸発量を算出する。 結果を表1に示す。なお、表中、相対的な水分蒸発率(%)は、被験試料として水を使用した場合の水分蒸発量を100%とした場合の水分蒸発率(%)を示す。表1中、被験試料として比較例3で使用したγ-ポリグルタミン酸は、実施例1〜4の出発原料として使用した分子量80万〜100万のγ−ポリグルタミン酸(γ−ポリグルタミン酸TYPE-H、日本ポリグル(株)製)であり(以下の実験例においても同じ)、比較例1で使用したLipidure(登録商標) Lipidure PMB (ph10)(日本油脂(株)製)は、細胞膜を構成するホスファチジルコリンの極性基と同一の構造をもつ2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸ブチルを構成単位とする水溶性ポリマーであり、保湿性を有することが知られている製品である。また比較例2で使用したアセチルヒアルロン酸(資生堂製)はヒアルロン酸の2倍の保湿力を有することからスーパーヒアルロン酸とも称されている製品である。 この結果からわかるように、γ−ポリグルタミン酸は、ヒアルロン酸の2倍の保湿力を有するアセチルヒアルロン酸とほぼ同等の水分保持能力(保湿作用)を有するものの、グリシン修飾−(γ−ポリグルタミン酸)の塩(実施例1)、アスパラギン酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)およびその塩(実施例2)は、いずれも当該γ−グルタミン酸よりも優れた水分保持能力(保湿作用)を有していた。また、グルタミン酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)の塩(実施例3)およびセリン修飾−(γ−ポリグルタミン酸)の塩(実施例4)は、γ−ポリグルタミン酸には劣るものの、保湿性があると言われているLipidure PMB (ph10)よりも優れた水分保持能力(保湿作用)を有していた。このことから、本発明のアミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)および塩には優れた保湿性があることがわかる。 実験例2 黄色ブドウ球菌付着抑制作用(1)表皮への黄色ブドウ球菌付着抑制作用 下記の方法により、実施例1〜4で製造したアミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)またはその塩について、表皮に対する黄色ブドウ球菌付着抑制抑制作用を評価した。 (1) 被験試料として表2に記載する試料を、滅菌精製水に溶解して2%濃度の被験水溶液を調製する。なお、表2中、γ−ポリグルタミン酸Naは、分子量80万〜100万のγ−ポリグルタミン酸(γ−ポリグルタミン酸TYPE-H、日本ポリグル(株)製)を、参考例1(2)に記載する方法に従って処理して調製したものである(分子量:90万〜110万)((2)においても同じ)。(2) 両面テープを付着させたスライドガラスを用いて、30代女性の上腕部から角質細胞を採取する。(3) スライドガラスの角質細胞上に、(1)で用意した2%の被験水溶液を500μL滴下し、20分間クリーンベンチ内で乾燥させる。(4) これに、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus ATCC6538)107 CFU/MmL菌液を20μL塗布し、20分間乾燥する。(5) 1mL 生理食塩水で5回洗浄する。(6) 黄色ブドウ球菌を塗布した部位を、コンタクトプレート法(微生物検出培地シート「サニ太くん微生物検出培地シート」、チッソ(株)製)により採取し、培養後、黄色ブドウ球菌数を計測する。(7) 各被験試料の黄色ブドウ球菌付着抑制率(%)は、まず被験試料としてリン酸塩緩衝生理食塩水〔PBS(-)〕を使用した場合(対照例)の黄色ブドウ球菌数と比較して減少数を求め、当該減少数から、対照例(黄色ブドウ球菌付着抑制率0%)に対する抑制率を算出する。 結果を表2に示す。 この結果からわかるように、γ−ポリグルタミン酸の塩、およびそのアミノ酸修飾体〔アミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)の塩〕は、皮膚への黄色ブドウ球菌の付着を顕著に抑制した。 (2)表皮ブドウ球菌(皮膚常在菌)に対する付着抑制作用 上記(1)において、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus ATCC6538)に代えて、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidirmidis ATCC12228)を用いて、それ以外同様にして、皮膚への表皮ブドウ球菌の付着に対する各被験試料の抑制作用を評価した。なお、表皮ブドウ球菌は、健康な皮膚の表面に通常に存在する皮膚常在菌で、アクネ菌とともに皮脂を分解しながら肌を弱酸性に保ち、外界からの悪玉菌などの侵入から防ぐ役割を持っている。すこやかな肌を維持するためには、表皮ブドウ球菌が優位な肌状態を保つことが大切とされている。 結果を表3に示す。 この結果からわかるように、γ−ポリグルタミン酸の塩、およびそのアミノ酸修飾体〔アミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)の塩〕は、表皮ブドウ球菌とは異なって、皮膚常在菌(善玉菌)に対する付着抑制作用は弱く、細菌の種類に応じて皮膚への付着をコントロールして健やかな皮膚を維持するのに有効である。 実験例3 コンタクトレンズに対する緑膿菌付着抑制作用 下記の方法により、実施例1〜2で製造したアミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)またはその塩について、コンタクトレンズに対する緑膿菌付着抑制抑制作用を評価した。(1) 被験試料として表4に記載する試料を滅菌精製水に溶解して、4Nの塩酸または水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pH7.5の0.1%濃度の被験水溶液を調製する。(2) 約100mLの被験水溶液を、ポリエチレン製の容器に充填し、これにソフトコンタクトレンズ(2ウィークアキュビュー グループIV、ジョンソンアンドジョンソン製)を入れて、2週間浸漬する。なお、被験水溶液は1週間おきに新鮮なものと交換する。(3) 2週間後、コンタクトレンズを被験水溶液から取りだし、これを緑膿菌(Psudomonas aeruginosa ATCC9027)の108 CFU/MmL菌液5mLに1分間浸漬する。(4) 1分後、レンズを菌液から取りだし、生理食塩水(5mL)に入れ、1分間軽く手で振った後、新鮮な生理食塩水(5mL)中に入れ換え、3分間超音波(超音波洗浄機、Sono Cleaner 200R Kaijo)にかけた。(5) 超音波処理後、当該生理食塩水中の菌数を、SCDLP寒天塗抹法により測定する(n=3)。 結果を表4に示す。 この結果からわかるように、γ−ポリグルタミン酸、およびそのアミノ酸修飾体〔アミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)の塩〕は、コンタクトレンズに対する緑膿菌の付着を顕著に抑制した。 処方例1 皮膚用クリーム(pH6) アスパラギン酸修飾−(γPGA)Na(実施例2) 2.0(%) 白色ワセリン 10.0 ステアリルアルコール 2.0 モノステアリン酸グリセリル 1.0 ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油 2.0 グルセリン 5.0 1,3-ブチレングリコール 10.0 キサンタンガム 0.4 乳酸または乳酸ナトリウム 適 量 メチルパラベン 0.1 精製水 残 部 合 計 100.0%。 処方例2 化粧水(pH5) グルタミン酸修飾−(γPGA)Na(実施例3) 2.0(%) 1,3-ブチレングリコール 10.0 グルセリン 5.0 ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油 0.5 メチルパラベン 0.05 乳酸または乳酸ナトリウム 適 量 精製水 残 部 合 計 100.0%。 処方例3 コンタクトレンズ装用時用点眼剤(pH7) アスパラギン酸修飾−(γPGA)Na(実施例2) 2.0(%) ポリソルベート80 0.05 l−メントール 0.005 ヒドロキシエチルセルロース 0.07 塩化ナトリウム 0.5 ホウ酸 1.0 ホウ砂 0.2 pH調整剤(塩酸または水酸化ナトリウム) pH7に調整 精製水 残 部 合 計 100.0%。 処方例4 コンタクトレンズ保存洗浄液(pH7.2) アスパラギン酸修飾−(γPGA)Na(実施例2) 0.02(%) ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油 0.02 ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.1 ポリヘキサメチレンビグアニド 0.0001 塩化ナトリウム 0.7 リン酸水素ナトリウム 0.2 リン酸二水素ナトリウム 0.015 pH調整剤(塩酸または水酸化ナトリウム) pH7.2に調整 精製水 残 部 合 計 100.0%。 γ−ポリグルタミン酸の側鎖α−カルボキシル基の一部または全てと、親水性アミノ酸のアミノ基とがアミド結合してなる、アミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)またはその塩。 一般式(I)〔式中、Rは下式(II)で示される親水性基であって、(式(II)中、R1は低級アルキレン基、R2はヒドロキシル基で置換されていてもよい低級アルキレン基、およびR3は水素原子、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を意味する。xおよびyは、同一または異なって、0または1を示す。)mは0または1以上の整数、lはmと合わせて6〜15000となる整数を意味し、各繰り返し単位はランダムに存在、または部分的にブロックを形成する。〕で示される請求項1記載のアミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)またはその塩。 親水性基(II)が、グリシン、セリン、アスパラギン酸、およびグルタミン酸からなる群から選択される少なくとも1つの親水性アミノ酸からアミノ基を除いた基である、請求項2記載のアミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)またはその塩。 分子量が1000〜500万である請求項1乃至3のいずれかに記載のアミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)またはその塩。 γ−ポリグルタミン酸と親水性アミノ酸のアルキルエステルを、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩の存在下で反応させる工程を有する、請求項1乃至4のいずれかに記載する、アミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)またはその塩の製造方法。 γ−ポリグルタミン酸と親水性アミノ酸のアルキルエステルを、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩に加えて4-ジメチルアミノピリジンの存在下で反応させることを特徴とする、請求項5に記載するアミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)またはその塩の製造方法。 請求項1乃至4のいずれかに記載するアミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)またはその塩を有効成分とする保湿剤。 γ−ポリグルタミン酸、請求項1乃至4のいずれかに記載のアミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)、およびこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を有効成分とする、黄色ブドウ球菌または緑膿菌の付着阻害剤。 請求項1乃至4のいずれかに記載するアミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)またはその塩を含有する皮膚外用剤。 請求項1乃至4のいずれかに記載するアミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)またはその塩を含有する化粧料。 請求項1乃至4のいずれかに記載するアミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)またはその塩を含有するヘアケア用剤。 γ−ポリグルタミン酸、請求項1乃至4のいずれかに記載のアミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)、およびこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含有する、コンタクトレンズ用組成物。 【課題】保湿性が高く、新たな機能を有するアミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)およびその塩を提供する。また当該化合物の製造方法と用途を提供する。【解決手段】γ−ポリグルタミン酸の側鎖α−カルボキシル基の一部または全てと、親水性アミノ酸のアミノ基とがアミド結合してなる、アミノ酸修飾−(γ−ポリグルタミン酸)またはその塩。【選択図】なし