タイトル: | 再公表特許(A1)_高分子多孔質体およびその製造法 |
出願番号: | 2006126387 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C08J 9/26,B01J 20/281,G01N 30/88 |
細矢 憲 青木 濶 石塚 紀生 山本 勝也 JP WO2006126387 20061130 JP2006309313 20060509 高分子多孔質体およびその製造法 国立大学法人京都工芸繊維大学 504255685 株式会社エマオス京都 505191803 田中 光雄 100081422 山田 卓二 100101454 柴田 康夫 100083356 森住 憲一 100104592 細矢 憲 青木 濶 石塚 紀生 山本 勝也 JP 2005151077 20050524 C08J 9/26 20060101AFI20081128BHJP B01J 20/281 20060101ALI20081128BHJP G01N 30/88 20060101ALI20081128BHJP JPC08J9/26 102C08J9/26B01J20/26 LG01N30/88 201GG01N30/88 101P AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,LY,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20081225 2007517760 23 特許法第30条第1項適用申請有り 4F074 4G066 4F074AA46 4F074CB03 4F074CB17 4F074DA03 4F074DA59 4G066AB21D 4G066AC13B 4G066AC14D 4G066AC35B 4G066BA24 4G066BA26 4G066BA38 4G066EA01 4G066FA03 4G066FA09 4G066FA21 本特許出願は、日本国特許出願第2005−151077号について優先権を主張するものであり、ここに参照することによって、それらの全体が本明細書中へ組み込まれるものとする。 本発明は、液体クロマトグラフィーカラム充填用高分子分離媒体等として有用な高分子多孔質体に関する。 従来、液体クロマトグラフィー用の高分子モノリス(一体型)分離媒体の調製には、架橋性モノマーを、貧溶媒をポロゲン(細孔形成剤)として用いてカラム内でインサイチュー重合させる方法が主に用いられてきた。例えば、特許文献1には、200nm未満の直径を有するポアと、600nm以上の直径を有するポアを有する液体クロマトグラフィー用高分子充填カラムの製造方法として、疎水性のビニルモノマー、ラジカル開始剤、およびポロゲンとして当該ビニルモノマーの貧溶媒を含む重合混合物を反応させ、その後、ポロゲンを除去する方法が記載されている。 しかしながら、貧溶媒中では、モノマーから成長するポリマー分子の相互のファンデルワールス力が立体障害効果よりも大きくなるので、該ポリマー分子は凝集する傾向となる。したがって、このような系でのモノリス媒体の形成は、(1)モノマーから成長するポリマー鎖相互の絡み合いによる核生成、(2)微細な分散ミクロゲル粒子の増加による急激な系の表面エネルギーの増大、(3)該ミクロゲル粒子の凝集による表面エネルギーの低下と相分離、(4)一挙に粗大化した粒子凝集構造の発現、という過程をとって進む。したがって、ポリマー相と貧溶媒相(ポロゲン)の相分離は極めて早く進行し、この様な系で調製されるモノリスは、不均一な形態のマクロポーラスな粗大粒子の凝集体となる。このような凝集体では、マクロスルーポアの流路が迷路となり、溶質の渦流拡散が大きくなるので分離効率が低下する、機械的に脆く、充填カラムに高背圧がかかると圧縮の影響が生じ空隙率が変化する等形態安定性が低い、さらに、ナノメートル径のメソポアが少なく、ポアの比表面積が極端に小さいため、溶質の分離能が低い等の問題があった。 一方、高分子溶液の相分離の研究の近年の急速な進歩により、高分子溶液の特徴である粘弾性が相分離の速度に大きな影響を与えることが解明されている(非特許文献1)。通常、低分子の溶液では、二相が共存する不安定域まで温度クエンチ(急冷または急加温)をかけると一挙にスピノーダル分解が起こる。その結果、最終的には表面張力支配の系となって、少量成分の溶質が分散相に、多量成分の溶媒がマトリックス相となる海島の二相に相分離する。しかしながら、高分子溶液の場合、溶媒分子と高分子間に、分子ダイナミックス、すなわち、運動性に大きな差が生じる場合、高分子リッチ相が脱溶媒により急激にゲル化するため、粘弾性が生じて長い緩和時間をもった応力が発生する。その結果、該高分子リッチ相からの溶媒分子の拡散が一時的に抑制される。したがって、温度クエンチをかけても、系は直ぐには従来型の二相分離をせず、長い緩和時間を有する過渡的な三次元連続網目構造が高分子リッチ相に発現する。例えば、ガラス転移温度が100℃のポリスチレンを少量成分、ガラス転移温度が−23℃のポリビニルエーテルを多量成分とした成分分子の運動性に差をもたせた系を、室温から143℃へクエンチした場合、相分離過程で、ポリスチレン相の過渡的な三次元連続網目構造の発現が観察されている(非特許文献2)。特許第3168006号公報高分子、第52巻、第8号、第572頁、2003年フィジカルレビューレターズ、第76巻、第787頁、1996年 本発明は、液体クロマトグラフィーカラム充填用高分子分離媒体として使用した場合、優れた分離性能を発揮し得る、構造が均一で、孔の規則性を有し、移動相の通液に適当な透過率を有する高分子多孔質体を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記問題を解決するため鋭意検討し、高分子溶液に特徴的な粘弾性効果が相分離に与える影響によって、ポリマーの過渡的連続構造が発現する可能性があることに着目した。さらに、特定のポリマー溶液をポロゲンとして使用してモノマーを重合させることで、高性能なモノリス型の液体クロマトグラフィー用分離媒体等として有用な高分子多孔質体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のものを包含する。〔1〕 高分子多孔質体であって、・ポア径が少なくとも50nmであるマクロポアと、ポア径が2nmから50nm未満であるメソポアを含む双山(バイモダル)ポア径分布を有し、・該多孔質体の全ポア比表面積に対する該マクロポアの比表面積の割合が、少なくとも10%であり、・該多孔質体は、(1)モノマーを、重合開始剤の存在下、重量平均分子量が少なくとも10万であり、分子量分布Mw/Mnが1.5以下であるポリマーを該モノマーに対する良溶媒に溶解した溶液をポロゲンとして、重合反応させ、(2)得られた生成物よりポロゲンを除去することにより製造されることを特徴とする、高分子多孔質体;〔2〕 モノマーは、少なくとも1種の架橋性モノマーを含む、上記〔1〕に記載の高分子多孔質体;〔3〕 モノマーに対する良溶媒は、モノマーとの相互作用パラメータが、25℃において0.5未満である、上記〔1〕または〔2〕に記載の高分子多孔質体;〔4〕 ポリマーは、モノマーに対する良溶媒との相互作用パラメータが、25℃において0.5未満である、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の高分子多孔質体;〔5〕 透過率は、少なくとも10−15m2である、上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の高分子多孔質体;〔6〕 (1)モノマーを、重合開始剤の存在下、重量平均分子量が少なくとも10万であり、分子量分布Mw/Mnが1.5以下であるポリマーを該モノマーに対する良溶媒に溶解した溶液をポロゲンとして、重合反応させ、(2)得られた生成物よりポロゲンを除去することを特徴とする、上記〔1〕に記載の高分子多孔質体の製造法;〔7〕 上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の高分子多孔質体を含んでなる、液体クロマトグラフィーカラム充填用高分子分離媒体;〔8〕 上記〔7〕に記載の分離媒体を充填した液体クロマトグラフィーカラムであって、該分離媒体が長さ方向の少なくとも一部分で断面全体を横断している、カラム。 本発明の高分子多孔質体は、構造が均一で、孔の規則性を有し、移動相の通液に適当な透過率を有する。したがって、本発明の高分子多孔質体は、液体クロマトグラフィーカラム充填用高分子分離媒体として使用した場合、優れた分離性能を発揮し得る。図1は、実施例1で製造したGDMAゲルのポア径分布を示す。図2は、実施例2で製造したEDMAゲルのポア径分布を示す。図3は、実施例3で製造したGDMAゲルの断面のSEM写真である。図4は、比較例2で製造したGDMA充填キャピラリーの断面のSEM写真である。図5は、比較例2で製造したGDMAゲルのポア径分布を示す。図6は、実施例3および比較例1で製造したGDMA充填キャピラリーの移動相(メタノール/水=60/40(v/v))の室温での断面流量と背圧の関係を示す。図7は、実施例3で製造したGDMA充填キャピラリーによるベンゼンのクロマトグラムである。図8は、実施例5で製造したGDMA充填キャピラリー(熱重合および光重合)の断面のSEM写真である。図9は、実施例5で製造したGDMA充填キャピラリーによるウラシルのクロマトグラムにおける理論段高と線速度の関係(H−uプロット)を示す。 本発明の高分子多孔質体は、ポア径が少なくとも50nmであるマクロポアと、ポア径が2nmから50nm未満であるメソポアを含む双山(バイモダル)ポア径分布を有する。液体クロマトグラフィーカラム充填用高分子分離媒体とした場合、特に高い分離効率が得られる点等から、マクロポアのポア径は、好適には50〜10,000nm、特に好適には500〜5,000nmであり、メソポアのポア径は、好適には2〜10nmである。 本発明の高分子多孔質体における全ポア比表面積に対する該マクロポアの比表面積の割合は、少なくとも10%、好適には20%以上95%以下、特に好適には40%以上60%以下である。当該マクロポアの比表面積の割合が10%未満であると、液体クロマトグラフィーカラム充填用高分子分離媒体とした場合、移動相の送液時の背圧が過剰になり、高速の分離ができなくなる虞がある。一方、該比表面積の割合が95%を超えると、空隙率が大きくなり、スルーポア径が極端に増大し、移動相中の物質移動パスが伸びるため、物質輸送が遅くなると共に、メソポアも減少するため、分離効率が大きく低下する虞がある。特に理論段数は、強い速度依存性を示すようになり、移動相の速度増加と共に増加し、背圧の減少効果を相殺してしまう。このような現象は、例えば、極端に空孔サイズの大きくなったシリカモノリスでも報告されている(Nobuo Tanaka, et. al.、Journal of Chromatogram A, 965(2002), 35-49参照)。 本発明において、上記マクロポアのポア径および比表面積は、窒素脱吸着法(BET法;ISO9277:1995“Determination of the specific surface area of solids by gas adsorption using the BET method”)により測定することができる。 メソポアのポア径および比表面積は、水銀注入法(ASTM D4404−84(2004)“Standard Test Method for Determination of Pore Volume and Pore Volume Distribution of Soil and Rock by Mercury Intrusion Porosimetry”)により測定することができる。 また、本発明における全ポア比表面積に対する該マクロポアの比表面積の割合(%)は、上記のようにして測定したマクロポアの比表面積(m2/g)およびメソポアの比表面積(m2/g)から、式(1):に基づいて算出される値である(Fiona S. Macintyre, David C, Sherrington, Macromolecules 2004, 37, 7628-7636)。 本発明の高分子多孔質体の透過率は、好適には10−15m2以上、より好適には10−15m2以上10−9m2以下、特に好適には10−14m2以上10−10m2以下である。液体クロマトグラフィーカラム充填用高分子分離媒体とした場合、10−15m2未満の透過率では、移動相の送液速度を上昇させると背圧が極端に大きくなるので、高速での分離が困難になる虞がある。また、10−9m2を超えると、大きな径のマクロポアが増加して、空隙率の非常に高い、ほとんど中空の媒体構造となり、溶質の輸送パスの増大により物質移動の遅れが生じ、分離効率を低下させること、形態的にもろくなるなどの問題が生じる虞がある。 ここでいう透過率は、下記式(2):〔Q:媒体断面流量(m3/s)、A:媒体断面積(m2)、κ:透過率(m2)、ΔP:圧力損失(Pa)、μ:流体粘度(Pa・s)、L:媒体長さ(m)〕で示されるDarcyの式(繊維便覧 第二版(1994),2.1 繊維集合体の構造と物性,P 267、および,Dynamics of Chromatography Part 1, J.C. Giddings, P205, Marcel Dekker(1965))に従って算出される値である。 本発明の高分子多孔質体は、(1)モノマーを、重合開始剤の存在下、重量平均分子量が少なくとも10万であり、分子量分布Mw/Mnが1.5以下であるポリマーを該モノマーに対する良溶媒に溶解した溶液をポロゲンとして重合反応させ、(2)得られた生成物よりポロゲンを除去することにより製造される。 すなわち、本発明の高分子多孔質体は、特定のポリマー溶液(ポリマーポロゲン)を使用することで製造することができる。これは、次のように考えられる。 ポリマーポロゲンを使用した重合反応の場合、ポリマーポロゲンの大きな粘度効果によって、モノマーの移動度が低下し、モノマーの凝集が抑えられ、かつ、ポリマーラジカルの会合も抑えられる。したがって、重合の初期では、規則的な線状ポリマーの成長が進行する。さらに、ポリマーリッチ相の過渡的なゲル化による粘弾性効果によって、該ポリマーリッチ相からの溶媒拡散によるバルクの収縮に抗する応力も大きくなる。その結果、均一で過渡的な三次元連続網目構造の形成が促進される。そして当該網目構造は、重合の進行と共にポリマー分子間の架橋形成を通じて固定化される。 また、ポリマーポロゲンを使用することで、相分離が段階的に生じ、マクロスルーポアおよびメソポアの形成が独立して進行する。溶解した単分散ポリマー分子は、良溶媒中で数100nmの均一にサイズの揃った分子クラスターとなり、早期にポリマーリッチ相より相分離してマクロスルーポア形成に寄与する。一方、該良溶媒分子は、上記ポリマーリッチ相の粘弾性効果によって時間的に遅延してポリマーリッチ相から相分離してメソポア形成に寄与する。 以上のことから、三次元連続網目骨格構造よりなる均一な構造と、ポア径が少なくとも50nmのマクロポア域と、ポア径が2nmから50nm未満のメソポア域にそれぞれ鋭いピークを含む双山(バイモダル)ポア径分布を有する孔の規則性を有し、移動相の通液に適当な透過率を有する、本発明の高分子多孔質体が製造される。 すなわち、本発明では、高分子溶液の粘弾性効果によって相分離を制御することで、均一な構造、孔の規則性、適度な透過性を有する高分子多孔質体が得られる。一方、このような高分子溶液の粘弾性効果を相分離に利用しない貧溶媒系では、上述したように、相分離速度が制御されないため、不均一な粒子凝集状の構造となる。 本発明の高分子多孔質体の製造に使用されるモノマーは、特に限定されないが、得られる高分子多孔質体の形態安定性等の観点から、少なくとも1種の架橋性モノマーを含むことが好ましい。本発明における「架橋性モノマー」とは、重合可能であり、かつ、分子間架橋を形成し得るモノマーをいう。このような架橋性モノマーとしては、例えば、分子中にビニル基(アクリロイル基、メタクリロイル基も含む)を2個以上含有するポリビニルモノマー等が挙げられる。 上記ポリビニルモノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルピリジン、ジメタアクリレート(例えば、エチレンジメタクリレート(EDMA)等のC1−6アルキレンジメタアクリレート;1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート(HDMA)およびグリセリンジメタクリレート(GDMA)等のヒドロキシ(C1−6)アルキレンジメタクリレート;等)、トリ−もしくはテトラメタクリレート(例えば、トリメチロールプロパントリアセテート、ペンタエリスリトールテトラアセテート)、ビスアクリルアミドもしくはメタクリルアミド(例えば、メチレンビスアクリルアミド、ピペラジンジアクリルアミド)等が挙げられる。好適にはエチレンジメタクリレート(EDMA)、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート(HDMA)、グリセリンジメタクリレート(GDMA)等が挙げられる。特に好適には、水酸基を有し、シリカ系のカラム内壁等と界面接着の点で有利であることから、グリセリンジメタクリレート(GDMA)が挙げられる。また、これらは2種以上を併用することもできる。 本発明に使用される上記架橋性モノマー以外のモノマーとしては、例えば、分子中にビニル基(アクリロイル基、メタクリロイル基も含む)を1個含有するモノビニルモノマー等が挙げられる。 上記モノビニルモノマーとしては、例えば、スチレンおよびその置換体(例えば、クロロメチル、18個以下の炭素原子を有するアルキル、ヒドロキシル、t−ブチルオキシカルボニル、ハロゲン、ニトロ、アミノ基、保護されているヒドロキシル、アミノ基等で環が置換された環置換スチレン)、メタクリレート(例えば、C1〜C12のアルキル置換メタクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート)、ビニルナフタレン、アクリレート、ビニルアセテート、ビニルピロリドン等が挙げられる。また、これらは2種以上を併用することもできる。 本発明の高分子多孔質体の製造に使用される好適なモノマーとしては、少なくとも1種のポリビニルモノマーを含むモノマーであり、特に、ポリビニルモノマー、またはポリビニルモノマーとモノビニルモノマーの混合物(例えば、ポリビニルモノマーとモノビニルモノマーの混合比率が100:0〜10:90、好適には100:0〜40:60のもの)である。 本発明の高分子多孔質体の製造に使用されるポロゲンは、重量平均分子量が少なくとも10万であり、分子量分布Mw/Mnが1.5以下であるポリマーをモノマーに対する良溶媒に溶解した溶液である。すなわち、本発明においては、高分子量かつ単分散のポリマーの溶液をポロゲンとして使用する。 上記モノマーに対する良溶媒としては、例えば、下記の式(3):〔V1:溶媒モル容積(ml/mol) δ1:溶媒の溶解度パラメータ(MPa1/2) δ2:モノマーの溶解度パラメータ(MPa1/2) R:気体定数、8.31451J・mol−1・K−1 T:絶対温度(K)〕により定義されるモノマーとの相互作用パラメータ(χ)が、25℃において、0.5未満であるものが挙げられる。該相互作用パラメータは、モノマーと溶媒の親和性の点から、好適には0.4以下かつ0.34(式(3)による理論上の最小値)以上である。 上記式(3)について、モノマーがエチレンジメタクリレート(EDMA)、グリセリンジメタクリレート(GDMA)である場合を例にして説明する。 クロロベンゼンの溶解度パラメータ(δ1)は19.4MPa1/2、溶媒モル容積(V1)は101.717ml/molであり、トルエンでは、δ1は18.2MPa1/2であり、V1は106.275ml/molである。また、GDMA、EDMAの溶解度パラメータは、それぞれ、20.5と19.6MPa1/2である。したがって、GDMA/クロロベンゼンの場合、χは約0.37であり、GDMA/トルエンの場合、χは約0.57であり、EDMA/クロロベンゼンの場合、χは約0.38となる。 なお、上記式(3)における相互作用パラメータおよび溶解度パラメータの定義(後記Smallの式)は、Polymer Handbook、第4版、J. Brandrup他、Willey-Interscience、John Willey Son、1999年、第7章、第688頁が参照される。各溶媒の溶解度パラメータ(δ1)は、同文献等から得られる。溶媒モル容積(V1)は、エッセンシャルズ化学辞典、玉虫伶太他、東京化学同人、1999年等に記載の特性値、分子量(Mw)、比重(d)から、下記式(4):により得られる。 また、モノマーの溶解度パラメータ(δ2)は、次のようにして求めることができる。例えば、モノマーがGDMAの場合、Mw=227、d=1.07であり、その化学構造式は、CH2=C(CH3)-OCO-CH2CH(OH)CH2-OCO-(CH3)C=CH2である。各官能基の凝集エネルギー係数Fは、上記Polymer Handbook、第4版、J. Brandrup他、Willey-Interscience、John Willey Son、1999年等より下記の通り与えられる。1)CH3-C=CH-:724(MPA1/2・cm3/mol)2)-H:1403)-(C=O)-O-:6344)-CH2-:2725)-OH:7546)-CH-:57 したがって、下記Smallの式(5):から、δ2=1.07×(724×2+140×2+634×2+272×2+754+57)/227=20.5MPa1/2と得られる。EDMAについても同様にしてδ2を得ることができる。 したがって、上記良溶媒は、使用するモノマーおよび上記式(3)に基づいて、アルキルベンゼン(例えば、トルエン等)、ハロゲン置換ベンゼン(例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、ポリエチレングリコール等)およびそれらの混合物、ケトン(例えば、アセトン、テトラハイドロフラン等)、エーテル等の幅広い溶媒から、適宜選択することができる。 上記ポロゲンに使用されるポリマーの重量平均分子量は、少なくとも10万、好適には少なくとも50万、特に好適には少なくとも100万である。また、ポリマーの撹拌し易さや、熱・光に対する安定性から、好適には1,000万未満、特に好適には900万未満である。 また、上記ポリマーの分子量分布Mw/Mn(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、構造の均一性、孔の規則性の点から、1.5以下、好適には1.1以下である。 上記ポリマーは、上記の分子量および分子量分布を有し、かつ、上記モノマーに対する良溶媒に溶解するものであれば、特に限定されない。好適には、上記式(3)と同様に定義されるモノマーに対する良溶媒との相互作用パラメータが、25℃において、0.5未満、好適には0.4以下かつ0.34以上であるポリマーが挙げられる。このようなポリマーは、使用されるモノマーおよびその良溶媒に応じて適宜選択することができる。例えば、試験管によるポリマー溶解度の目視検査等の簡便な試験で具体的に選択することができる。このようなポリマーとしては、例えば、ポリスチレン、アクリロイル基またはメタクリロイル基含有モノマーのポリマー(例えば、ポリメチルメタクリレート等)等のビニル系ポリマーが挙げられ、好適にはポリスチレン、ポリメチルメタクリレートが挙げられる。 上記ポロゲンとして使用される溶液中のポリマーの濃度は、溶解均一性の点から、好適には1〜100mg/ml、特に好適には2〜10mg/mlである。 本発明の高分子多孔質体の製造に使用される重合開始剤としては、一般のアゾ系またはパーオキサイド系のラジカル重合開始剤、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル)バレロニトリル、ベンジルパーオキサイド等が挙げられる。好適には2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル)バレロニトリルが挙げられる。また、2,2,6,6−テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ、カリウムt−ブトキシド、n−ブチルリチウム、ベンゾフェノン、クロロチオキサントン、ジメトキシベンゾフェノン、ジエトキシベンゾフェノン等のリビング重合および光重合等の開始剤も使用することができる。なお、よく知られているように、AIBNのようなアゾ系開始剤は、光重合開始剤としても使用できる。 本発明の高分子多孔質体の製造における上記モノマーと上記ポロゲンの混合比率は、通常、体積比で10/90以上、好適には20/80〜50/50である。10/90未満の場合、ゲル化が遅く、重合時間が長くなり、さらに、得られるモノリス構造はマクロポーラス性が強く、機械的に脆弱となる虞がある。また、50/50を超えると、ポロゲンの効果が低下し、マクロスルーポアが不足する虞がある。 本発明の高分子多孔質体の製造に使用される重合開始剤の量は、上記モノマーの重合反応が開始する量であればよいが、通常、上記モノマー1mlあたり、少なくとも1mg以上、好適には5mg〜20mgである。 上記重合反応の反応条件は、一般的なラジカル重合反応、光重合反応等の条件に基づいて、使用するモノマー、重合開始剤等に応じて適宜設定することができる。例えば、反応温度は、その下限を0℃、好適には30℃、より好適には40℃、さらに好適には50℃とすることができ、その上限を100℃、好適には70℃とすることができる。また、反応時間は、その下限を1時間、好適には8時間、より好適には12時間とすることができ、その上限を48時間、好適には36時間とすることができる。 上記重合反応の反応条件は、一般的なラジカル重合反応、光重合反応等の条件に基づいて、使用するモノマー、重合開始剤等に応じて適宜設定することができる。例えば、反応温度は、その下限を0℃、好適には30℃、より好適には40℃、さらに好適には50℃とすることができ、その上限を100℃、好適には70℃とすることができる。また、反応時間は、その下限を1時間、好適には8時間、より好適には12時間とすることができ、その上限を48時間、好適には36時間とすることができる。 例えば、熱重合反応を行う場合、反応温度は、通常、40〜100℃、好適には50〜70℃とすることができ、反応時間は、通常、8〜48時間、好適には12〜36時間とすることができる。 一方、光重合反応を行う場合、反応温度は、通常、0〜100℃、好適には30〜70℃とすることができ、反応時間(光照射時間)は、通常、1〜48時間、好適には8〜36時間とすることができる。 また、光重合反応には、通常、100〜400nm、好適には250〜380nmの波長を有する紫外線が使用され、その光源としては、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、水銀キセノンランプ、メタルハライドランプなどが使用される。また、光強度は、250〜380nmの紫外線で、通常、500〜3000μW/cm2、好適には1000〜2000μW/cm2の範囲である。 上記重合反応は、例えば、以下の手順にしたがって行うことができる。 まず、上記ポリマーを上記モノマーに対する良溶媒に溶解させて得た溶液(ポロゲン)に、上記重合開始剤および上記モノマーを混合して混合液を調製する。次いで、必要に応じて不活性ガス(例えば、アルゴン)によるバブリング等により該混合液から酸素を除いた後、所定の反応条件下に重合反応を行う。 上記重合反応は、所望の用途に応じた特定の反応容器中で反応を行うこともできる。例えば、本発明の高分子多孔質体を液体クロマトグラフィーカラム充填用高分子分離媒体として用いる場合、モノマー、ポロゲンおよび開始剤を含む混合物を所定のカラムに充填し、重合反応を行うことができる。当該カラムは、液体クロマトグラフィーカラム用の管として市販されているような、断面が変形しない高い剛性をもった任意の円形や矩形の断面形状と断面積をもったカラム、例えば、金属管、石英ガラス管、溶融シリカキャピラリー、フッ素樹脂管、PEEK樹脂管等から選択できる。また、光重合反応を行う場合、特にUV透過性材料製のカラム(例えば、溶融シリカキャピラリー)とすることができる。具体例としては、内径が10μm以上の円形断面の溶融シリカキャピラリー等が挙げられる。当該溶融シリカキャピラリーはカラム内壁と分離媒体の界面接着の向上のため、シランカップリング剤等による内壁シラノール基の修飾等も容易である。 上記重合反応の終了後、適当な溶媒による洗浄等によって反応生成物からポロゲン(ポリマーおよび良溶媒)を除くことで、本発明の多孔質体が得られる。当該溶媒は、ポロゲンとして使用されたポリマーおよび良溶媒に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリマーとしてポリスチレン、良溶媒としてクロロベンゼンを使用した場合、テトラヒドロフラン(THF)、メタノール等を使用することができる。 本発明の高分子多孔質体は、液体クロマトグラフィー用の高分子モノリス分離媒体、特にカラムの断面形状やその形状、およびアスペクト比、すなわち、カラムの相当径Dと長さLの比、L/Dに特に関わらず、均一な充填モノリスカラム用の高分子分離媒体として好適に利用することができる。さらに、本発明の高分子多孔質体は、ナノメートルからマイクロメートル領域の細孔が必要とされる広範な用途、例えば、分離担体、濃縮担体、乳化膜、電極、酵素担体、触媒担体、LCチップ等の矩形マイクロ流路の充填媒体等の用途に利用できる。 また、本発明は、上記高分子多孔質体を含んでなる、液体クロマトグラフィーカラム充填用高分子分離媒体、および該分離媒体が充填された液体クロマトグラフィーカラムを提供する。当該カラムにおいて、該分離媒体は、充填カラムの長さ方向の少なくとも一部分で断面全体を横断している。すなわち、該カラムは、連続構造を有する、モノリス(一体型)分離媒体が充填されたモノリスカラムである。また、該分離媒体およびカラムは、上述したように、反応容器として上記カラムを用いた重合反応により製造することができる。 以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の実施態様はこれらの実施例に何らの制限を受けるものではない。 以下の実施例における各特性値は、以下のように測定した。1.マクロポアのポア径分布および比表面積 マクロポアのポア径および比表面積は、窒素脱吸着法(BET法;ISO9277:1995“Determination of the specific surface area of solids by gas adsorption using the BET method”)に従って測定した。2.メソポアのポア径分布および比表面積 メソポアのポア径および比表面積は、水銀注入法(ASTM D4404−84(2004)“Standard Test Method for Determination of Pore Volume and Pore Volume Distribution of Soil and Rock by Mercury Intrusion Porosimetry”)により測定した。3.透過率 透過率は、上記式(2):〔Q:媒体断面流量(m3/s)、A:媒体断面積(m2)、κ:透過率(m2)、ΔP:圧力損失(Pa)、μ:流体粘度(Pa・s)、L:媒体長さ(m)〕で示されるDarcyの式から算出した。なお、メタノール/水(60/40、v/v)、アセトニトリル/水(60/40、v/v)の二相混合移動相の粘度は、Introdution to Moderen Liquid Chromatography, 第2版およびL. R. Snyder, J.J. Kirkland, P. 838, TableII.3, John Willey & Sons (1979)から引用した。〔実施例1〕 蒸留後のクロロベンゼン(χ約0.37)1.86mlを内径10mm、長さ200mmの試験管にとった。超高分子量ポリスチレン(Mw=384万、Mw/Mn=1.04、トーソー製)のフレーク粉末55.8mgを試験管に室温で添加した。その後、スパチュラで緩く撹拌してポリスチレンフレークを分散させてから、超音波撹拌槽(Branson Ultrasonic Cleaner)に当該試験管を10分浸漬後、室温で24時間放置し透明なポリマーポロゲン溶液を調製した。 次に、該ポリマーポロゲン溶液に2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(Mw=164.21、98%、ナカライテスク)10mgを添加後、ハンドシェークして該ポリマーポロゲンに溶解した。その後、グリセリンジメタクリレート(GDMA;共栄社化学製、GP−101P、分子量227)1mlをポリマーポロゲン溶液に添加して均一な透明な重合溶液に調製した。次に、この重合溶液に対してアルゴンガスで10分間バブリングを行った後、直ちにキャップで該試験管を封止した。次いで、60℃に管理した水浴中に管長さの90%(約180mm)まで浸漬して、24時間重合を行った。 24時間後の試験管内には管底より4cmの高さで白いほぼ均一な固形物が充填していた。当該固形物は試験管内壁へ完全に接着していたため、液体窒素に試験管を投入後ハンマーで破壊して固形物片を取り出した。この固形片をテトラヒドロフラン(THF)に24時間浸漬後室温で風乾してさらに60℃で乾燥後、1時間真空で引いて試料とした。 この試料の2nmから50nm未満の範囲のメソポアおよび50nm以上の範囲のマクロポアを窒素脱吸着法(BET装置、Gemini II、micrometrics社)および水銀注入法(micrometrics社)によりそれぞれ測定した。また、その結果から全ポア比表面積に対するマクロポアの比表面積の割合(マクロポア比表面積(m2/g)/(メソポア比表面積(m2/g)+マクロポア比表面積(m2/g))×100(%))を算出した。その結果を表1に示す。また、メソポアおよびマクロポア全域にわたるポア径分布を図1に示す。メソポア域は4nmに、マクロポア域は1〜2μmの範囲に鋭いピークをもつ双山分布を示した。〔実施例2〕 GDMAをエチレンジメタクリレート(EDMA;χ約0.36、共栄社化学製、分子量198、64℃、25mmHgで蒸留)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル)バレロニトリル(Mw=248.37、95%、和光化学)とした以外は実施例1に準じて重合を行ったところ、試験管に管底より4cmの高さの白い固形物が充填された。当該固形物を実施例1に準じて乾燥試料としてメソポアおよびマクロポア測定を行った。また、その結果から全ポア比表面積に対するマクロポアの比表面積の割合を算出した。その結果を表1に示す。また、ポア径分布を図2に示す。実施例1と同じく、メソポア域は4nmに、マクロポア域は1〜2μmの範囲に鋭いピークをもつ双山分布を示した。〔実施例3〕 EDMAをGDMAに変えた以外は実施例2と同様にしてGDMAの重合液を調製し、冷蔵庫に保管した。次に、内径200μmのポリイミド被覆溶融シリカキャピラリーを約180cm巻きとしてカット後、1NのNaOH水溶液をシリンジで注入した。該キャピラリー巻きの両端を封止後、60℃、1時間水浴中で処理した。その後、該キャピラリー巻きを過剰量のアセトンと純水で順次繰り返し洗浄した。洗浄したキャピラリー巻きは、160℃、24時間熱風乾燥機で乾燥した。 次に該キャピラリー巻きに、上記保管したGDMA溶液をシリンジポンプ(Harvard Apparatus Model 11)を用いて室温で充填した。その後直ちにパラフィルムでキャピラリー巻き両端を封止した。次いで、60℃に設定した水浴中で24時間の重合を行った。同時にモニター用の試料の試験管重合も同一の水浴で実施例1と同様に行った。充填キャピラリー巻きは40cmにカット後、液クロポンプを用いてテトラヒドロフラン(THF)と100%メタノールで逐次24時間洗浄した。モニター試料は実施例1と同様にTHF浸漬後乾燥し、実施例1に準じて乾燥試料としてメソポアおよびマクロポア測定を行い、その結果から全ポア比表面積に対するマクロポアの比表面積の割合を算出した。その結果を表1に示す。また、乾燥したモニター試料を金蒸着し、走査型電子顕微鏡SEM(Hitachi S-3000N)で(倍率3,000倍)形態観察を行った。その結果、図3のように規則的な連続構造が観察された。〔実施例4〕 実施例3と同様にして内径200μm、長さ42cmのGDMA充填キャピラリーを作成した。〔比較例1〕 ポロマーポロゲンの調製を低分子量の単分散分子量ポリスチレン(Mw=5万、Mw/Mn=1.04、トーソー製)を使用して実施例1と同様に行った以外は、実施例3と同一条件で内径200μm、長さ40cmのGDMA充填キャピラリーを作成した。同時にモニター用の試料の試験管重合も同一の水浴で実施例1と同様に行った。試験管に管底より4cmの高さの白い固形物が充填された。〔比較例2〕 ポロゲンをトルエン(蒸留品、溶解度パラメータ18.2MPa1/2、χ約0.57)とした以外は、実施例3と同様にして内径250μm、長さ40cmのGDMA充填キャピラリーを作成した。同時にモニター用の試料の試験管重合も同一の水浴で実施例1と同様に行った。試験管に管底より4cmの高さの白い固形物が充填された。当該固形物を同様に実施例1に準じて乾燥試料としてメソポアおよびマクロポア測定を行った。また、その結果から全ポア比表面積に対するマクロポアの比表面積の割合を算出した。その結果を表1に示す。また、メソポア域からマクロポア域にかけてのポアサイズの分布を図5に示す。メソポア分布のピークは極めて小さく、わずかに2〜10nm付近に認識できるだけであった。また、マクロポア分布は、300nmと400nmに二山の分割ピークを有する、1,000nmから10,000nmにサイズとして1デカードに渡る極めて広いポアサイズ分布を示した。したがって、マクロスルーポアの規則性が悪いことが示唆された。また、当該キャピラリー断面をSEM観察したところ、数μmの粒子が凝集した構造を示した(図4)。〔比較例3〕 ポロゲンをクロロベンゼンのみとした以外は、実施例3と同様にして内径200μm、長さ12.5cmのGDMA充填キャピラリーを作成した。〔試験例1〕(送液流量と背圧の関係) 実施例3で製造した40cm長カット充填キャピラリーを、ナノポンプと(Dina-S、KYAテクノロジー製、送液範囲:1〜100,000nl/min)とUV検出器(JASCO製、CE-2075 plus、検出波長210nm)と組み合わせたキャピラリーへのダイレクト送液方式のマイクロHPLC(高速液体クロマトグラフィー)システムに接続して評価を行った。移動相は60%のメタノール/水(60/40、v/v)を使用した。測定は室温で行った。また、比較例1で製造したキャピラリーについて、同様にしてマイクロHPLC装置で評価を行った。 キャピラリーの送液流量と背圧を測定し、その関係を求めた。その結果、実施例3のキャピラリーでは、送液流量と背圧の関係は完全な線形性が確認された(図6)。一方、比較例1のキャピラリーでは、送液流量と背圧の関係はほぼ線形性が認められたが、同一流量での背圧は実施例3の場合の約3倍であった(図6)。 以上のことから、実施例3のキャピラリーは、比較例1のキャピラリーよりも移動相の送液効率が大幅に高いと考えられる。すなわち、実施例3のキャピラリーは、比較例1のキャピラリーよりも、移動相の通液に適当な透過率を有すると考えられる。これは、上記SEM観察の結果も考慮すると、実施例3のキャピラリーには、流動方向に規則的に配列された流動抵抗の小さいスルーポア(マクロポア)が形成されているためと考えられる。〔試験例2〕(ベンゼンのクロマトグラム) 実施例3および比較例1のキャピラリーについては、上記試験例1と同様のHPLC(高速液体クロマトグラフィー)システムに接続して、ベンゼンを溶質(1mg/ml濃度)とし、溶質クロマトグラムの測定を行った。その結果、実施例3のキャピラリーでは、流量800nl/min、背圧3.0MPa、ピークの保持時間13.7分、理論段数15,233、ピーク対称性0.83の鋭いピークを示すクロマトグラムが得られた(図7)。一方、比較例1のキャピラリーでは、流量800nl/min、背圧9.0MPaで、保持時間13.32分、理論段数1,646、対称性1.10であった。 また、比較例2で製造したキャピラリーを、抵抗管を利用してポンプ流量を1/1000に分流したスプリット法を用いて通常型のHPLC検出器(JASCO CE1575A、検出波長、210nm)に接続し、上記と同様にしてベンゼンのクロマトグラムを測定した。これは上記実施例3および比較例1のキャピラリーについての条件とほぼ同じ条件である。その結果、ポンプ流量0.8ml/minで、背圧6.0MPa、保持時間25.9分、理論段数864、対称性1.13であった。 上記SEM観察の結果および上記流動特性の結果から、実施例3のキャピラリーにおいて高い理論段数が得られたのは、迷路係数の小さい細孔(マクロポア)がキャピラリーの流動方向に多数形成されたためと考えられる。〔試験例3〕(透過率) 実施例3ならびに比較例1および2のキャピラリーを上記試験例1と同様のHPLCシステムに接続して、移動相を60%のメタノール/水(60/40、v/v)とし、透過率の評価を行った。その結果を表2に示す。 また、実施例4および比較例3のキャピラリーを上記試験例1と同様のHPLCシステムに接続して、移動相をアセトニトリル/水(60/40、v/v)とし、透過率の評価を行った。その結果を表3に示す。 以上のように、実施例のキャピラリーの透過率は、比較例のキャピラリーよりも明らかに高かった。特に、実施例4のキャピラリーの透過率は、比較例3のキャピラリーと比べて、2桁高くなった。また、実施例4のキャピラリーの背圧は、比較例3のキャピラリーの背圧に比べて大幅に低下した。〔実施例5〕 クロロベンゼンを3ml、超高分子量ポリスチレンを60mg、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルの代わりに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル)バレロニトリル10.8mgとした以外は、実施例1と同様にしてGDMAの重合液を調製した。この重合液を、実施例3に準じてUV透過シリカキャピラリー(内径100μm、長さ14cm;GL Sciences社製、製品名:フューズドシリカキャピラリーチューブ(UV透過皮膜チューブ))に充填した。次いで、UVランプ(AS ONE社、紫外線波長365nm、放電管電力8W×4本、光力1820μW/cm2)を用いて、該GDMAの重合液を充填したUV透過シリカキャピラリーに、25℃の温度条件下、光源から50mmの距離で2時間UV照射をすることで光重合を行い、GDMA充填キャピラリーを作成した(実施例5−1)。一方、実施例3と同様にして、該GDMAの重合液を熱重合したGDMA充填キャピラリー(内径100μm、長さ44cm)を作成した(実施例5−2)。 得られた各々のGDMA充填キャピラリーの断面をSEM観察したところ、光重合試料(5−1)は、熱重合試料(5−2)よりも緻密で均一な構造を有することがわかった(図8)。したがって、光重合試料(5−1)のポア径分布は、熱重合試料(5−2)よりも鋭いピークを有すると考えられる。〔試験例4〕 実施例5で得られた2本のGDMA充填キャピラリー(実施例5−1;光重合、実施例5−2;熱重合)を上記試験例1と同様のHPLCシステムに接続して、ウラシルを溶質(1mg/ml濃度)とし、60%のアセトニトリル/水(60/40、v/v)を移動相として、クロマトグラムの測定を行い、理論段高(H;μm)と線速度(u;mm/sec)の関係をプロットした(H−uプロット)。その結果を図9に示す。 図9に示すように、理論段高は、熱重合で作成したGDMA充填キャピラリー(実施例5−2)に比べて、光重合で作成したGDMA充填キャピラリー(実施例5−1)の方がはるかに低くなった。これは、光重合試料(5−1)が熱重合試料(5−2)よりも緻密で均一な構造を有するため、溶質のバンドの広がりが抑制されたためと考えられる。したがって、光重合で作成したGDMA充填キャピラリーは、熱重合で作成したものよりも、タンパク質の分離等、一度に多成分を含有する混合試料の分離に有用であると考えられる。 高分子多孔質体であって、・ポア径が少なくとも50nmであるマクロポアと、ポア径が2nmから50nm未満であるメソポアを含む双山(バイモダル)ポア径分布を有し、・該多孔質体の全ポア比表面積に対する該マクロポアの比表面積の割合が、少なくとも10%であり、・該多孔質体は、(1)モノマーを、重合開始剤の存在下、重量平均分子量が少なくとも10万であり、分子量分布Mw/Mnが1.5以下であるポリマーを該モノマーに対する良溶媒に溶解した溶液をポロゲンとして、重合反応させ、(2)得られた生成物よりポロゲンを除去することにより製造されることを特徴とする、高分子多孔質体。 モノマーは、少なくとも1種の架橋性モノマーを含む、請求項1に記載の高分子多孔質体。 モノマーに対する良溶媒は、モノマーとの相互作用パラメータが、25℃において0.5未満である、請求項1または2に記載の高分子多孔質体。 ポリマーは、モノマーに対する良溶媒との相互作用パラメータが、25℃において0.5未満である、請求項1〜3のいずれかに記載の高分子多孔質体。 透過率は、少なくとも10−15m2である、請求項1〜4のいずれかに記載の高分子多孔質体。 (1)モノマーを、重合開始剤の存在下、重量平均分子量が少なくとも10万であり、分子量分布Mw/Mnが1.5以下であるポリマーを該モノマーに対する良溶媒に溶解した溶液をポロゲンとして、重合反応させ、(2)得られた生成物よりポロゲンを除去することを特徴とする、請求項1に記載の高分子多孔質体の製造法。 請求項1〜5のいずれかに記載の高分子多孔質体を含んでなる、液体クロマトグラフィーカラム充填用高分子分離媒体。 請求項7に記載の分離媒体を充填した液体クロマトグラフィーカラムであって、該分離媒体が長さ方向の少なくとも一部分で断面全体を横断している、カラム。 本発明は、高分子多孔質体であって、ポア径が少なくとも50nmであるマクロポアと、ポア径が2nmから50nm未満であるメソポアを含む双山(バイモダル)ポア径分布を有し;該多孔質体の全ポア比表面積に対する該マクロポアの比表面積の割合が、少なくとも10%であり;該多孔質体は、(1)モノマーを、重合開始剤の存在下、重量平均分子量が少なくとも10万であり、分子量分布Mw/Mnが1.5以下であるポリマーを該モノマーに対する良溶媒に溶解した溶液をポロゲンとして、重合反応させ、(2)得られた生成物よりポロゲンを除去することにより製造される;ことを特徴とする、高分子多孔質体に関する。