タイトル: | 公開特許公報(A)_耐火物の耐損耗性評価方法 |
出願番号: | 2006120729 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | G01N 3/56,G01N 33/38 |
田中 辰児 新田 法生 JP 2007292601 公開特許公報(A) 20071108 2006120729 20060425 耐火物の耐損耗性評価方法 黒崎播磨株式会社 000170716 新日本製鐵株式会社 000006655 小堀 益 100082164 堤 隆人 100105577 田中 辰児 新田 法生 G01N 3/56 20060101AFI20071012BHJP G01N 33/38 20060101ALI20071012BHJP JPG01N3/56 HG01N33/38G01N3/56 E 2 1 OL 9 本発明は、耐火物の耐損耗性評価方法に関し、特に高炉出銑樋の内張りとして使用される耐火物(以下、樋材という。)に好適な耐損耗性評価方法に関する。 従来、耐火物の侵食試験方法として、回転式侵食試験法と高周波誘導炉侵食試験法とが知られている。回転式侵食試験法では、横断面の外形が多角形をなす筒状に組み合わせた耐火物の試料をドラムに内張りし、その中にメタル及びスラグを装入するとともに、バーナを用いてメタル及びスラグを溶融させながらドラムを回転させる。そして、一定時間経過後、試料の溶損量を測定し、測定された溶損量に基づいて耐侵食性を評価する。 高周波誘導炉侵食試験法も、加熱方法の違いを除いて回転式侵食試験法とほぼ同様である。即ち、耐火物の試料が内張りされた炉内に、メタルを装入し高周波による加熱でメタルを溶解させた後、さらにスラグを投入して溶解させる。必要に応じて炉を回転させる場合もある。そして、一定時間経過後、スラグ及びメタルを炉から排出し、試料の溶損量を測定し、測定された溶損量に基づいて耐侵食性を評価する。 特許文献1には、上記各侵食試験方法とは異なる樋材の侵食試験方法として、樋材の試料を側壁部にセットした坩堝に、メタルとしての銑鉄とスラグとを装入し、坩堝ごと電気炉内で高温加熱する技術が開示されている。この技術によると、樋材における、スラグと空気との境界部(スラグライン部)、及びメタルとスラグとの境界部(メタルライン部)の局所的な溶損をよく再現できるとされる。 ところが、上記各侵食試験方法は、専ら化学的な侵食のみを再現するものであるため、実際の使用環境に合致した耐火物の侵食を再現するには不充分である。即ち、回転侵食試験法では、試料と共に試料表面部の溶融メタルも回転するため、試料表面における溶融メタルの相対速度は小さく、溶融メタル流による磨耗を考慮に入れた溶損を再現するには不充分である。また、高周波誘導炉侵食試験法では、高周波による加熱で溶融メタルに対流が生じるものの、対流によって生じる磨耗はごく僅かであり、これによって溶融メタル流による磨耗を再現できるとは言い難い。さらに、特許文献1の技術は、マランゴンニ効果により形成されるスラグフィルムの運動は再現できるものの、溶銑流による磨耗を考慮に入れた侵食を再現することはできない。 そこで、特許文献2は、溶融メタル流による磨耗をも考慮に入れた溶損を再現すべく、耐火物の試料を溶融メタルに浸漬し、この溶融メタル中において、耐火物の試料と溶融メタルとを相対的に振動させることを教示する。この技術によると、耐火物の試料によって、強制的に溶融金属をせん断させるため、溶融メタル流に基づく場合と同様の磨耗を再現することができる。特開平8−219976号公報特開平3−291550号公報 近年における耐火物の使用環境の過酷化に伴い、耐火物の一層の高耐用化が望まれている。耐用性に優れた耐火物を開発するためには、耐火物の実際の使用環境により合致した侵食試験方法の確立が望まれる。この点、上記従来の侵食試験方法は、耐火物の試験環境を実機の使用環境に近づけることに関して改善の余地があった。 本明細書において、化学的な侵食と物理的な磨耗ないし損傷との両方を含む概念を「損耗」と表記することにする。 本発明の目的は、耐火物、特に樋材の耐損耗性につき、実際の使用環境により合致した評価を行うことが可能な耐損耗性評価方法を提供することにある。 発明者は、耐火物の試料と、溶融メタルを含む溶融物とを相対的に振動させる損耗試験法について鋭意研究を行った結果、損耗試験の過程で溶融物中のカーボン含有量が次第に減少してゆくことを見出した。カーボンの減少は、耐火物の試料と溶融物とを相対的に振動させる場合に特に著しくなる。このメカニズムは必ずしも定かではないが、振動で活性化された溶融物中の酸化鉄(FeO)がカーボンと反応することに原因の一つがあるのではないかと推定される。 損耗試験の過程で溶融物中のカーボン含有量が減少すると、カーボンを含有した耐火物を試料とする場合に、試料からカーボンだけを優先的に溶出させる作用が働いたり、あるいは溶融物の塩基度(CaO/SiO2の質量比)が試験の途中で変動する等の現象が生じてしまうことが考えられる。 一方、耐火物の現実の使用環境では、耐火物と接触する溶融物中のカーボン量はほぼ一定である。例えば、高炉出銑孔からは、カーボンがほぼ飽和量に保たれた溶銑が出銑する。このため、溶融物中のカーボン含有量が減少することは、試料の耐損耗性の評価精度の悪化の原因となる。そこで、損耗試験の過程で、適時に溶融物にカーボン質原料を補充すれば、損耗試験の環境を耐火物の実使用環境に、より近づけることができるとの着想に基づき下記発明が完成したものである。 本発明によると、(a)溶融メタルを含む溶融物に耐火物の試料を接触させ、前記試料と前記溶融物とを相対的に振動させながら前記溶融物により前記試料を損耗させる工程と、(b)前記試料の損耗量及び前記試料への溶融物の浸潤深さの少なくともいずれか一方の値を測定し、測定値に基づいて前記試料の耐損耗性を評価する工程とよりなり、前記工程(a)が、前記試料を損耗させる過程で、前記溶融物にカーボン質原料を添加する工程を含む耐火物の耐損耗性評価方法が提供される。 本発明においては、前記溶融物が溶融メタルと該溶融メタル上に載った溶融スラグとよりなって二層状をなし、前記工程(a)では、それら溶融メタルと溶融スラグとの両層にわたって前記試料を接触させた状態で、前記試料と前記溶融物とを相対的に振動させることが好ましい。また、前記試料と前記溶融物とは、該溶融物の層厚さ方向に相対的に振動させることが好ましい。 ここで溶融物と試料との接触は、例えば試料を溶融物に浸漬させることで実現できる。また、耐火物の試料で内張りされた容器に溶融物を収容することによっても実現できる。後者の場合は、内張りされた試料に対して、溶融物を振動させることが好ましい。ここで溶融物を振動させるとは、波面発生用の耐火部材によって溶融物の湯面を乱したり、あるいは容器自体を揺動又は振動させる等して、溶融物の湯面を波立たせることを含む概念とする。 試料と溶融物とを相対的に振動させるので、試料表面部における溶融物と試料との相対速度を大きくとることができるため、試料の化学的侵食のみならず、溶融メタルを含む溶融物の流動や波打ち現象等による物理的な磨耗ないし損傷も加味された損耗を再現できるとともに、従来法に比べると、溶融物の耐火物への浸潤の仕方も現実に近づけることができ、より実際の使用環境に合致した評価を行える。また、工程(a)が溶融物にカーボン質原料を添加する工程を含むので、試験の過程における溶融物中のカーボン量の減少を抑えることができ、評価精度の悪化を防止して実際の使用環境に合致した評価を行える。 図1は、本発明の一実施形態による耐損耗性評価方法を実施するための損耗試験装置の概略図である。この損耗試験装置は、溶融メタル1及び溶融スラグ2よりなる二層状の溶融物を収容する坩堝3と、坩堝3内の収容物を加熱する加熱手段としての高周波発振コイル4と、耐火物の試料Sを坩堝3内の溶融物に両層1及び2にわたって浸漬させた状態で保持する試料ホルダ5と、試料ホルダ5を坩堝3に対して上下方向に振動させる振動付与機6と、振動付与機6による振動の周波数及び振幅の少なくともいずれか一方を調整することができるコントローラ7と、坩堝3内の試料S及び溶融物に向けて非酸化性ガスを供給するガス供給管8とを備える。 まず、坩堝3内にメタル1として銑鉄塊を装入し、高周波発振コイル4による加熱でその銑鉄塊を溶融させる。銑鉄塊が溶融したら、坩堝3内に高炉スラグ2を装入する。高炉スラグ2は、溶銑1よりも比重が小さいので溶銑1上に載る。こうして坩堝3内に、上下二層状をなした溶融物が形成される。溶融物は、高周波発振コイル4によって、評価対象とする耐火物の実使用環境に対応させて、例えば1500℃〜1600℃程度の温度に保たれる。なお、本明細書において「〜」の記号は両端点を含む意味で用いるものとする。 なお、溶融スラグ2の層厚は、10mm未満では、充分なスラグが確保されないため、耐損耗性の評価精度が低下する。一方、溶融スラグ2の層厚が40mmを超えると、溶融スラグ2表層部の粘性が高くなり過ぎたり、あるいは溶融スラグ2表面が温度低下により固化する現象(以下、皮張り現象という。)が生じやすくなることで耐損耗性の評価精度が低下するとともに、高周波発振コイル4による電力の浪費を招く。このような理由から、溶融スラグ2の層厚は、坩堝3の大きさに関わらず、例えば10mm〜40mmであることが好ましい。 次に、予熱した試料Sを、溶銑1及び溶融スラグ2の両層にわたって浸漬させた状態で、振動付与機6により試料Sを上下方向に振動させる。これにより、試料Sの化学的侵食のみならず、実使用環境における溶融物の流動や湯面の波打ち現象による磨耗も同時に作用しつつ生じる損耗を再現できる。具体的には、例えば高炉出銑樋の上流部、特に高炉出銑孔から排出された溶銑の落下位置よりも約1m程度下流の位置から、その位置よりも約1m〜4m程度下流の位置までの区間における激しい湯面波動をよく再現できる。また、試料Sを振動させることにより、試料Sへの溶融物の浸潤の仕方も現実に近づけることができ、より実際の使用環境に合致した評価を行える。 また、試料Sを振動させることにより、従来法に比べると、試料Sの損耗の進行を早めることができるため、損耗試験に要する時間を節約できる利点もある。耐火物の材質改善に伴って、耐火物が溶損しにくいものとなっている近年においては、短時間で高級耐火物の耐損耗性評価を行えることの意義は大である。 なお、コントローラ7において、振動付与機6による振動の周波数及び振幅の少なくともいずれか一方を調整することにより、試料Sの損耗の仕方を制御できる。例えば、樋幅が狭い部位における樋材の溶損を再現しようとする場合、樋幅が狭い部位は溶融物の流速が大きいので、振動の周波数を高めるとよい。また、溶銑及び溶融スラグの単位時間あたりの流量等に応じて、振動の周波数又は振幅を調整できる。一具体例として、振動付与機6による振動は、評価対象とする耐火物の実使用環境に対応させて、例えば周波数が0.5Hz〜2Hz、試料Sの上下方向の振幅が5mm〜15mmとなる条件で発生させる。 また、損耗試験の過程で、ガス供給管8から、坩堝3内に非酸化性ガスを流入させることにより、溶融物や試料Sの極度な酸化を防止できるため、耐損耗性の評価精度の悪化を防止できる。即ち、現実的には高炉出銑樋には樋カバーが設けられているので、樋と樋カバーとで囲まれた内部空間は強酸化性雰囲気にならないようになっているところ、本実施形態では、ガス供給管8から非酸化性ガスを供給することにより、溶融スラグ2表面及び試料Sを取り巻く空間が強酸化性雰囲気となることを防止できるので、試験環境を実環境に近づけることができ、耐損耗性の評価精度の悪化を防止できる。 ここで、非酸化性ガスとは、大気よりも溶融物及び試料Sを酸化させにくいガスのことをいい、例えばArやHe等の希ガスの他、N2ガス等が挙げられる。 本実施形態では、損耗試験の過程で、溶融物にカーボン質原料を添加する。ここで、カーボン質原料としては、例えばカーボンブラック、コークス、ピッチ、天然黒鉛、人造黒鉛(例えば電極屑等)、炭化させた植物系材料(例えば籾藁、パルプ屑、木材屑等)が挙げられる。カーボン質原料は、例えば15〜60分毎に添加する。一回のカーボン質原料の添加量は、例えば5〜100g程度である。 カーボン質原料を溶融物に定期的に補充することにより、溶融物中のカーボン含有量の減少を抑えることができ、損耗試験の過程で溶融物を新しいものと入れ替えなくても、あるいは溶融物の入れ替えの間隔を従来よりも延ばしても、評価精度の悪化を防止して実際の使用環境に合致した評価を行える。例えば、高炉出銑口からはカーボンがほぼ飽和した溶銑が出銑するので、溶融物へのカーボン質原料の補充により、溶融物中のカーボン含有量を常にほぼ飽和状態に保つことにより、樋材の実際の使用環境に適合した損耗試験を行える。 坩堝3の材質は特に限定されないが、坩堝3中のSiO2含有量が多すぎると、溶融物へのSiO2の溶出に起因して、溶融物の粘度が高くなりすぎ、試料Sの損耗進行の遅延を招くとともに、耐損耗性の評価精度が低下する場合がある。このような理由から、坩堝3は、SiO2含有量が5質量%未満の材料、好ましくはカーボン質材料で構成するとよい。また、溶融物と接する部材のうち坩堝3及び試料S以外のもの、例えば坩堝3自体の損耗を防止すべく坩堝3内壁に耐火物を配置する場合は、その耐火物も同様に、SiO2含有量が5質量%未満の材料で構成することが好ましい。 図2は、上記損耗試験を行った後の試料Sを模式的に示す概略図である。試料Sにおける、図1の溶銑1と溶融スラグ2との境界部(メタルライン部)に対応する部位9と、溶融スラグ2と空気又は非酸化性ガスとの境界部(スラグライン部)に対応する部位10とに、局所的な損耗がよく再現される。これらの損耗量に基づいて、試料Sの耐損耗性を評価することができる。 なお、試料Sの形状は特に限定されないが、試料Sの自重による折損を防止する等の理由から、試料Sは円柱状に形成することが好ましい。具体的には、試料Sは、外径20mm〜60mm、長さ150mm〜300mmの円柱状に形成することが好ましい。また、図1及び図2には、便宜的に試料ホルダ5が2つの試料S,Sを保持した状態を示すが、試料ホルダ5による試料Sの保持数は特に2つに限られない。試料ホルダ5が、複数の試料Sを保持できるようにすることで、複数の試料Sを同一条件で同時に損耗させることができるため、試料間での耐損耗性の比較評価を容易に行えるという利点がある。 以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれらに限られない。例えば、本発明の対象とする耐火物(試料)の材質は、例えば珪石質、粘土質、ろう石質、ジルコン及びジルコニア質、高アルミナ質、炭素質、炭化珪素質、クロム質、マグネシア質、マグネシア−クロム質、ドロマイト質、マグネシア−カーボン質、アルミナ−カーボン質、アルミナ−炭化珪素−カーボン質、アルミナ−マグネシア−カーボン質等、特に限定されない。また、メタル1としては、銑鉄に限らず、鋳鉄や鋼等を用いることもできる。スラグ2としては、高炉スラグに限らず、転炉スラグ、電炉スラグ、二次精錬スラグ等、目的とする窯炉で生成される組成のスラグを用いることができる。 また、図1には、坩堝3内の収容物を加熱する加熱手段として高周波発振コイル4を示したが、加熱手段としては、バーナ、電気抵抗による加熱器、アークによる加熱器等も挙げられる。また、図1の損耗試験装置は、坩堝3の上部開口を閉塞する断熱材を備えてもよい。断熱材は、例えば断熱煉瓦、断熱ボード、又は断熱ウール等で構成され、例えば試料ホルダ5又は試料Sが挿通した状態で坩堝3に固定したり、あるいは試料ホルダ5と一体に設けられる。断熱材を設けると、溶融スラグ2表面の温度低下を抑制できるので皮張り現象を防止できる。また、溶融スラグ2表面を加熱する第2の加熱手段、例えば赤外線ランプ等を設けることによっても、皮張り現象を防止できる。 また、試料と溶融物との相対的振動は、単一の振動モードをもつ単振動として実現してもよいが、評価対象とする耐火物の実使用環境における溶融物の流動状況や湯面の乱れ状況等によっては、複数の振動モードをもつ周期的振動として実現したり、あるいは非周期的なランダム振動として実現してもよい。 表1に示す化学成分値及び物性値を有する樋材A〜Dについて耐損耗性評価試験を行った。表1中の物性値はすべて、樋材A〜Dを1450℃で3時間焼成したものについて測定した値である。なお、表1中、F.Cとは、フリーカーボン、即ちSiC中のCのように化合物の一部を構成するカーボンではなく、単体として存在するカーボンのことである。 表2に、表1に示した樋材A〜Dの耐損耗性評価試験の結果(損耗指数)を示す。 以下、表2の各項目について説明する。 振動浸漬法とは、図1に示す損耗試験装置を用いた試験のことである。樋材A〜Dの各々を、外径30mm、長さ230mmの円柱状に加圧成形し、図1の試料Sとした。メタル1として銑鉄を用い、スラグ2として高炉スラグを用いた。振動付与機6による振動は、周波数が1Hz、振幅が10mmとなる条件で発生させ、150分間にわたって損耗試験を行った。また、試験の過程で、坩堝3内にArガスを流入し続けるとともに、30分毎に50gの割合で焼き籾藁を、初期質量約200kgの溶融物に添加した。本方法により、樋材A〜Dの単位時間あたりの損耗量である損耗速度を測定し、それらの損耗速度を各々樋材Aの損耗速度で割って100倍した損耗指数を求めた。損耗指数は、値が大きいほど損耗速度が大きいことを示す。 固定浸漬法とは、上記振動浸漬法に対する比較例として、樋材A〜Dの試料と溶融物とに相対的振動を与えずに行った試験のことである。また、試験の過程で溶融物へのカーボン質原料の補充は行っていない。振動及びカーボン質原料の補充以外の試験条件は、上記振動浸漬法と同じである。本方法によっても、樋材A〜Dの単位時間あたりの損耗量である損耗速度を測定し、それらの損耗速度を各々本方法による樋材Aの損耗速度で割って100倍した損耗指数を求めた。 実機試験では、樋材A〜Dの各々を高炉出銑樋における、高炉出銑口から排出した溶銑の落下位置よりも約1〜2m下流の部分(以下、最上流部という。)に、内張り材として使用した。そして、樋材A〜Dの、溶銑の単位流量あたりの損耗量である損耗速度を測定し、それらの損耗速度を各々本実機試験による樋材Aの損耗速度で割って100倍した損耗指数を求めた。なお、本実機試験と振動浸漬法又は固定浸漬法とでは損耗速度の定義が異なるので、表2においては、同一の樋材について振動浸漬法又は固定浸漬法による溶損指数を、実機試験による溶損指数と比較することは不合理である。 試料間における耐損耗性の相対評価に着目した場合、表2に示すように、実機試験では、樋材C、樋材A、樋材D、樋材Bの順に耐損耗性が高いという結果が得られた。これに対して、振動浸漬法では、樋材A、樋材C、樋材D、樋材Bの順に耐損耗性が高いという結果が得られ、固定浸漬法では、樋材B、樋材C、樋材A、樋材Dの順に耐損耗性が高いという結果が得られた。 これらの結果から、振動浸漬法の評価結果は、固定浸漬法の評価結果よりも、実機試験の傾向とよく相関していることが分かる。これは振動浸漬法の試験条件によると、現実の高炉出銑樋における最上流部の湯面波動をよく再現でき、また溶融物に焼き籾藁を定期的に補充したことにより、カーボンがほぼ飽和した状態の溶銑をよく再現できたことによると考えられる。 本発明は、樋材をはじめとして、混銑車の内張り材、転炉の内張り材、取鍋の内張り材、タンディッシュの堰や内張り材等の各種耐火物の耐損耗性評価に利用することができ、耐火物を実機の使用状態下に近づけた状態に置くことができることによって信頼性の高い耐損耗性評価を下すことができるといった効果を奏する。一実施形態による耐損耗性評価方法の実施に使用する損耗試験装置の概略図。損耗試験後の試料を模式的に示す概略図。符号の説明 1…溶融メタル 2…溶融スラグ 3…坩堝 4…高周波発振コイル(加熱手段) 5…試料ホルダ 6…振動付与機 7…コントローラ 8…ガス供給管 9…メタルライン部 10…スラグライン部 S…試料 (a)溶融メタルを含む溶融物に耐火物の試料を接触させ、前記試料と前記溶融物とを相対的に振動させながら前記溶融物により前記試料を損耗させる工程と、(b)前記試料の損耗量及び/又は前記試料への溶融物の浸潤深さを測定し、測定値に基づいて前記試料の耐損耗性を評価する工程とよりなり、前記工程(a)が、前記試料を損耗させる過程で、前記溶融物にカーボン質原料を添加する工程を含む、耐火物の耐損耗性評価方法。 前記溶融物が、溶融メタルと該溶融メタル上に載った溶融スラグとよりなり、 前記工程(a)では、それら溶融メタルと溶融スラグとの両層にわたって前記試料を接触させた状態で、前記試料と前記溶融物とを相対的に振動させる請求項1に記載の耐損耗性評価方法。 【課題】 耐火物、特に樋材の耐損耗性につき、実際の使用環境により合致した評価を行える耐損耗性評価方法を提供する。【解決手段】 (a)溶融メタル1と該溶融メタル1上に載った溶融スラグ2とよりなる二層状の溶融物に、両層1及び2にわたって耐火物の試料Sを接触させた状態で、試料Sと溶融物1及び2とを相対的に振動させて、溶融物1及び2により試料Sを損耗させる。試料Sの損耗は、適時に溶融物1及び2にカーボン質原料を補充しつつ行う。(b)次に、試料Sの損耗量を測定し、測定された損耗量に基づいて試料Sの耐損耗性を評価する。【選択図】 図1