タイトル: | 再公表特許(A1)_潰瘍性大腸炎または間質性肺炎の病期判定方法並びにそのための試薬キット |
出願番号: | 2006118004 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | G01N 33/88,G01N 33/53 |
藤原 睦憲 岡安 勲 林 裕造 JP WO2006118004 20061109 JP2006307939 20060414 潰瘍性大腸炎または間質性肺炎の病期判定方法並びにそのための試薬キット 藤原 睦憲 595098251 岡安 勲 505140111 林 裕造 505140122 富士レビオ株式会社 306008724 松下 亮 100123674 藤原 睦憲 岡安 勲 林 裕造 JP 2005117521 20050414 G01N 33/88 20060101AFI20081121BHJP G01N 33/53 20060101ALI20081121BHJP JPG01N33/88G01N33/53 S AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,LY,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20081218 2007514572 16 2G045 2G045AA25 2G045BB46 2G045CB03 2G045DA42 2G045DA59 2G045DA77 2G045FB03 2G045JA01 2G045JA02 本発明は、潰瘍性大腸炎または間質性肺炎の病期判定方法およびそのための試薬キットに関する。 潰瘍性大腸炎は難治性炎症疾患として知られ、患者数(特定疾患受給者)は、平成14年度77,073人であり、毎年約5,000人づつ増加していることが報告されている。前記潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる大腸の炎症性疾患である。この疾患の原因は、腸内細菌の関与や免疫機能が正常に機能しない自己免疫反応の異常、あるいは食生活の変化の関与などが考えられているが、未だ明らかにはなっていない。特徴的な症状としては、下血を伴う又は伴わない下痢とよく起こる腹痛である。病変は直腸から連続的に、そして上行性(口側)に広がる性質があり、最大で直腸から結腸全体に広がる。この疾患は病変の広がりや経過などにより下記のように分類されている。(1)病変の広がりによる分類:全大腸炎、左側大腸炎、直腸炎(2)病期の分類:活動期、寛解期(3)重要度による分類:軽症、中等症、重症、劇症(4)臨床経過による分類:再燃寛解型、慢性持続型、急性劇症型、初回発作型 前記潰瘍性大腸炎の診断には、臨床症状として持続性又は反復性の粘血、血便、あるいはその既往により行い、更に結腸又はS状結腸内の内視鏡検査と生検を併用し、必要に応じて高度でしかも多大な費用を要する注腸X線検査や全大腸内視鏡検査を行っている。まず、臨床症状から得られたデータを解析し、手術の要否、治療薬の選択、治療薬投与の中止決定など最適な治療方法の選択が行われる。更に病態を確認するため内視鏡検査が行われるが、前記潰瘍性大腸炎の活動期には穿孔や腸管粘膜の損傷による出血の危険も伴い、度重なる検査は、医療経済上における多大な負担に加え、検査患者への負担と苦痛を伴う方法であった。 また、プロスタグランディン類(以下PGsという)やその誘導体は、生体内でさまざまな病態との関係が報告され、簡便な操作で微量のPGsを定量する方法が知られている。この測定法としては、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)、放射免疫測定法(RIA)、酵素免疫測定法(EIA)などである。プロスタグランディンE2(PGE)は、生体内の炎症反応に関与する重要なケミカルメディエーターとして知られ、その尿中の主要代謝物(PGE Main Urinary Metabolite、以下「PGE−MUM」という。)を競合法によって酵素免疫法で測定する方法が報告されている(特許文献1)。 加えて、前記潰瘍性大腸炎患者から得た尿検体から前記PGE−MUMを測定した値と前記潰瘍性大腸炎患者の複数の臨床症状(臨床疾患活性)を数値化したスコアの合計スコア(改訂タルスタッドスコア)とを関係づけようとする試みが本発明者らによってなされている(非特許文献1)。 一方、難治性炎症疾患の一つとして間質性肺炎が知られている。 この間質性肺炎は間質の炎症に伴い肺胞の線維化を最終的に引き起こす症例の総称であり、特発性肺線維症、非特異的間質性肺炎、特発性器質化肺炎等の症例が知られている。 この間質性肺炎はその発生のメカニズムが十分に解明されておらず、その診断には高度な経験が要求され、個々の症例について患者の症例、各種採取データの検査結果等を総合的に判断しなければならないという困難が伴う。 この問題を解決するために、血漿中のオステオポンチン量を測定した値と前記間質性肺炎の症状とを関連付けようとする検討もなされている(特許文献2)。 またこの間質性肺炎の症状を判断するマーカーとして、サーファクタントプロテインD(SP−D)、サーファクタントプロテインA(SP−A)、シアル化糖鎖抗原KL−6等が知られている。 しかしこれらのマーカーは、前記間質性肺炎の症状が進行してしまった後にその結果として検出されることから、前記間質性肺炎の病期の段階を判定する手段としてこれらのマーカーに依存する方法は必ずしも適切なものではないことが判明している。特開昭61−11664号公報特開2005−030852号公報Digestion 2000; 61: 201-206 まず前記潰瘍性大腸炎については、これまでの潰瘍性大腸炎は病期によって、以下のように大きく2つの期に分類されていた。 活動期(Active phase):血便を訴え、内視鏡的に血管透見像の消失、易出血性、びらん、又は潰瘍などを認める状態。 寛解期(Remission phase):血便が消失し、内視鏡的には活動期の所見が消失し、血管透見像が出現した状態。 しかしながら、前記潰瘍性大腸炎について前記活動期と前記寛解期との間には寛解直前期(Pre-remission phase)と呼ばれる移行病期があり、病理学的には前記活動期に近い寛解直前期から前記寛解期に近い寛解直前期に至る広い範囲の病像が観察される。前記寛解期に近い症例では、客観性をもって判断することが難しく、臨床的には症状が消失しているものの、投薬を中止するか否かの判断には、内視鏡による観察所見と生体から採取した10箇所以上の病理組織標本の解析を行い、全ての組織標本を以下に示すマッツ(Matts)分類によってスコア化し、スコアの平均値を求め、長年の経験により判断をしていた。もし前記寛解直前期を寛解したと判断し投薬を中止すると、前記潰瘍性大腸炎の再発のみならず、大腸癌への移行のリスクなど様々な問題を生ずることが知られている。 前記非特許文献1においては、前記PGE−MUMを測定した結果と、前記潰瘍性大腸炎の病態の活動期と寛解期とを表す改訂タルスタッドスコアとが相関することが示され、内視鏡検査を行わずに病期を判断する基準は示されているものの、改訂タルスタッドスコアで寛解期と判断される症例の中には投薬の継続を要する本発明で示す前記寛解直前期の症例が含まれる場合があり、区別することができなかった。改訂タルスタッドスコアで判定に用いられる項目としては、下痢、体温、頻脈、赤血球沈降速度、ヘモグロビン、白血球、血小板、総タンパク質、アルブミン、鉄などであり、測定した各項目の数値をスコア化し、このスコアを合計して改訂タルスタッドスコアを求めていた。 一方、間質性肺炎についても活動期と非活動期との判断が難しく、これらの病期を判定するためには前記間質性肺炎の患者に対する聴診、X線検査等に加え、肺組織の生検による病理組織学的診断等が必要であった。特に前記肺組織の生検を実施するためには前記患者の気道に内視鏡を挿入する等して前記肺組織の生検に必要な量の肺組織を実際に前記患者の体内から採取する必要があり、前記患者に対する身体的、精神的負担は多大なるものがあった。 さらに前記間質性肺炎の病期を非活動期と判断し投薬を中止すると、前記間質性肺炎が再発し、さらに進行するのみならず肺癌への移行のリスクなど様々な問題を生ずることも知られている。 また先の特許文献2による方法についても前記間質性肺炎の患者の血漿または血清を採取し、多段階の操作を経てこれらに含まれるオステオポンチン量を定量する必要があった。 本発明は、活動期と寛解期の間に存在する前記潰瘍性大腸炎の寛解直前期の病期を詳細に客観的に分類する方法を提供し、これまで内視鏡による観察所見や生体より採取した組織標本の解析によっても判断が難しかった前記潰瘍性大腸炎の病期について判定するための簡便な病期判定方法を提供することを目的とする。 また本発明は、前記間質性肺炎の活動期と前記間質性肺炎の非活動期との病期を詳細に客観的に分類する方法を提供し、これまで判断することが難しかった前記間質性肺炎の病期について判定するための簡便な病期判定方法を提供することを目的とする。 本発明者らは鋭意研究した結果、潰瘍性大腸炎の寛解期にあると診断された患者から尿を採取し、その尿に含まれる前記PGE−MUM濃度の値を基礎値として事前に把握しておき、前記患者の前記PGE−MUM濃度がこの基礎値を超え前記基礎値の3倍以下の値の範囲を示すときは、前記患者の病期は前記潰瘍性大腸炎の寛解直前期に対応することを見出した。 さらに本発明者らは、間質性肺炎の非活動期にあると診断された患者から尿を採取し、その尿に含まれる前記PGE−MUM濃度の値を基礎値として事前に把握しておき、前記患者の前記PGE−MUM濃度がこの基礎値を超える範囲を示すときは、前記患者の病期は前記間質性肺炎の活動期に対応することをも見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は以下の(1)から(10)を提供する。(1)消炎剤投与を伴う治療管理下において、潰瘍性大腸炎の寛解期にあると診断された患者の尿中に含まれるプロスタグランディン主要代謝物(PGE−MUM)を測定することにより得られた前記尿中のPGE−MUM濃度の値を基礎値とし、 前記患者の尿中のPGE−MUM濃度の値がこの基礎値を超え前記基礎値の3倍以下の範囲にあるときを潰瘍性大腸炎の寛解直前期(Pre-remission phase)と判定し、 前記患者の尿中のPGE−MUM濃度の値がこの基礎値以下の範囲にあるときを潰瘍性大腸炎の寛解期(Remission phase)と判定することを特徴とする、 前記潰瘍性大腸炎の寛解直前期と、前記潰瘍性大腸炎の寛解期との病期判定方法。(2)前記潰瘍性大腸炎の寛解直前期は、潰瘍性大腸炎の病理学的スコア(マッツ分類)が2〜3の範囲にある場合とし、 前記潰瘍性大腸炎の寛解期は、前記マッツ分類が2未満の範囲にある場合とすることを特徴とする上記(1)に記載の病期判定方法。(3)消炎剤投与を伴う治療管理下において、間質性肺炎の患者の尿中に含まれるプロスタグランディン主要代謝物(PGE−MUM)を測定することによる、間質性肺炎の活動期(Active phase)と、前記間質性肺炎の非活動期(Non-active phase)との病期判定方法。(4)前記間質性肺炎の非活動期にあると診断された患者の尿中に含まれるPGE−MUMを測定することにより得られた前記尿中のPGE−MUM濃度の値を基礎値とし、 前記患者の尿中のPGE−MUM濃度の値がこの基礎値を超える範囲にあるときを間質性肺炎の活動期と判定し、 前記患者の尿中のPGE−MUM濃度の値がこの基礎値以下の範囲にあるときを間質性肺炎の非活動期と判定することを特徴とする、上記(3)に記載の病期判定方法。(5)前記PGE−MUMを抗PGE−MUM抗体により免疫測定することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の病期判定方法。(6)標識されたPGE−MUM試薬、及び抗PGE−MUM抗体試薬とを含む検体中のPGE−MUM測定による、潰瘍性大腸炎の病理学的スコア(マッツ分類)によって分類された潰瘍性大腸炎の寛解直前期(Pre-remission phase)と潰瘍性大腸炎の寛解期(Remission phase)との病期判定用試薬キット。(7)標識されたPGE−MUM試薬、及び抗PGE−MUM抗体試薬とを含む検体中のPGE−MUM測定による、間質性肺炎の活動期(Active phase)と間質性肺炎の非活動期(Non-active phase)との病期判定用試薬キット。(8)抗PGE−MUM抗体が抗PGE−MUMポリクローナル抗体である上記(6)又は(7)のいずれかに記載の病期判定用試薬キット。(9)抗PGE−MUM抗体が抗PGE−MUMモノクローナル抗体である上記(6)又は(7)のいずれかに記載の病期判定用試薬キット。(10)更に抗PGE−MUM抗体と反応する抗イムノグロブリン抗体試薬を含む上記(6)〜(9)のいずれかに記載の病期判定用試薬キット。 本発明によれば、尿中の前記PGE−MUMを定量測定することにより前記潰瘍性大腸炎の寛解直前期と前記潰瘍性大腸炎の寛解期との病期を簡便に判別することが可能になった。また、尿中の前記PGE−MUMを定量測定することにより前記間質性肺炎の活動期と前記間質性肺炎の非活動期との病期を簡便に判別することが可能になった。 加えて本発明の方法によれば、従来使用されていた熟練を要し、しかも高額な検査費用を要する内視鏡等による観察や生体より採取した病理組織標本の解析による判定方法を本発明の方法に代替することができることから、前記潰瘍性大腸炎の患者や前記間質性肺炎の患者の体内に内視鏡を挿入する等の検査や前記患者の体内組織等を採取する施術等に伴う身体的、精神的負担を前記患者に一切与えることもなく、検査を実施する医師等の判断の個人差に結果が依存することもなく、前記潰瘍性大腸炎または前記間質性肺炎について容易にその病期を判定することができることから、治療薬の選択、投薬中止などの判断が容易となるばかりか、治療効果の判定が容易となり、患者のQOL(Quality of Life) の向上や医療費の削減が可能となる。寛解期の潰瘍性大腸炎患者病理写真を示す。いくらかの炎症性細胞浸潤を示す細胞の核が黒い点として観察される。寛解直前期の潰瘍性大腸炎患者病理写真を示す。多くの炎症性細胞浸潤を示す細胞の核が黒い点として観察される。活動期の潰瘍性大腸炎患者病理写真を示す。多くの炎症性細胞浸潤を示す細胞の核が黒い点として、また活動期の特徴である細胞浸潤による陰窩膿瘍が観察される。 本発明の方法により測定されるPGE−MUM(7alpha-hydroxy-5,11-diketotetranor-prosta-1,16-dioic acid)は、PGE1とE2、殊にPGE2の尿中への主要代謝物として見出される。前記PGE−MUMの濃度の値を測定するに際しては、検体として尿を用いて、例えばGC−MS、HPLC、抗PGE−MUM抗体を用いた免疫測定法などによって実施することができる。前記PGE−MUMの濃度の値の測定は、多量の検体を同時に簡便に測定することができるため、免疫測定法で実施することが好ましく、水酸化ナトリウム等によるアルカリ処理を加えて化学的に安定なビシクロ体とする測定法により実施することが好ましい。前記免疫測定法に用いる抗PGE−MUM抗体としては、例えば、前記抗体に関してはポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体等を挙げることができる。本発明に使用する抗体は、ビシクロ化したPGE−MUM(以下ビシクロPGE-MUMという)に特異的に反応する抗体であるポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体等であれば好ましい。前記抗体に関しては、例えば特開昭61−11664号(特許文献1)に記載の方法に従いポリクローナル抗体を製造することができる。前記抗体の製造にあたっては、前記PGE−MUMがハプテンであるので、まず前記PGE−MUMをアルカリ処理によりPGE−MUMのビシクロ体とし、適当なタンパク質、例えば牛血清アルブミン(BSA)、グロブリン、サイログロブリン、ヘモシアニンなどと結合させた後、適当なアジュバントと懸濁混合して動物(ラット、マウス、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギなど)に投与間隔を空けて投与し、所定期間経過後動物の血清を採取し、公知の方法で処理をすることにより、ポリクローナル抗体を取得することができる。 また、モノクローナル抗体は、前記ポリクローナルの作成時に用いたPGE−MUMのビシクロ体を、前記した適当なタンパク質と結合させて免疫原として用いて動物を免疫し、脾臓より得られるモノクローナル抗体産生細胞と腫瘍細胞とを細胞融合することによって作成されるハイブリドーマより産生させることができる。 前記ハイブリドーマは、次の方法で得ることができる。上述のようにして得たPGE−MUMのビシクロ体結合タンパク質をフロイントの完全アジュバンドとともに、数回に分けて、マウスなどの動物に、2〜3週間おきに、腹腔内又は静脈投与することによって免疫する。次いで、脾臓などに由来する抗体産生細胞と、骨髄腫ラインからの細胞(ミエローマ細胞)などの試験管内で増殖可能な腫瘍細胞とを融合させる。融合方法としては、ケーラーとミルシュタインの常法(ネーチャー(Nature)、256巻、495頁、1975年)に従ってポリエチレングリコールによって行うことができ、又はセンダイウイルスなどによって行うこともできる。 上記方法により得られる抗PGE−MUM抗体を用いて、前記PGE−MUMの免疫測定を実施する。この免疫測定法としては、測定対象物質の前記PGE−MUMに対する周知の競合法による免疫測定法で行うことが好ましく、標識物質で分類した酵素免疫測定法(EIA)、蛍光免疫測定法、発光免疫測定法、放射免疫測定法(RIA)などを挙げることができる。 通常、競合法には標識された抗原が用いられる。標識物質としては、例えば、酵素、蛍光物質、発光物質、放射性同位元素などである。標識物と抗原との結合方法は、公知の共有結合又は非共有結合を作る方法を利用して製造することができる。結合の方法には、例えば縮合剤を用いて共有結合を作成する方法、各種架橋剤を用いる方法などを挙げることができる(例えば「蛋白質核酸酵素」別冊31号、37〜45頁(1985)参照)。共有結合による方法では、抗原に存在する官能基を用いることができる他、例えばチオール基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基などの官能基を常法により導入したのち、前記結合法により標識抗原を製造することができる。また非共有結合による方法としては物理吸着法などを挙げることができる。 前記PGE−MUMの測定は、例えば以下に記載の免疫測定法で実施することが好ましい。所定量の前記標識されたPGE−MUM、前記抗PGE−MUM抗体、測定実施するPGE−MUMを含有する検体とを競合的に反応させ、前記抗体と結合した又は結合しなかった標識された抗原の量から前記検体中の前記PGE−MUMを定量する。 先に説明した通り、前記PGE−MUMとしては、例えばビシクロ化したPGE−MUM(ビシクロPGE−MUM)を使用することが好ましく、前記抗PGE−MUM抗体としては、例えば抗ビシクロPGE−MUMを使用することが好ましい。 前記抗体と結合した標識された抗原を結合しなかったものと分離するためには、更に抗イムノグロブリン抗体とを加えて、沈殿させて分離して、複合体に結合している標識物質又は結合していない標識物質を測定することにより実施することができる。この方法は二抗体法と呼ばれ、チャーコールフィルターを用いた方法などによっても実施することもできる。前記抗イムノグロブリン抗体は、固相に結合させた抗イムノグロブリン抗体、固相に結合した標識物質又は結合していない標識物質を測定することによっても実施される。前記抗イムノグロブリン抗体は、周知の方法、例えば物理吸着法、架橋剤又は共有結合を利用した化学結合法、アビジン−ビオチン結合を利用した結合法などにより固相に結合させることができる。前記標識物質の測定にあたっては前記標識物質に対応して選択することは言うまでもない。 本発明の病期判定用試薬キットには、前記標識されたPGE−MUM試薬、前記抗PGE−MUM抗体試薬が含まれる。より好ましくは、前記ビシクロPGE−MUM試薬、前記抗ビシクロPGE−MUM抗体試薬が含まれる。更にキットには、前記抗PGE−MUM抗体と結合する抗イムノグロブリン抗体試薬のほか、必要に応じて検体希釈液、試薬希釈液、既知濃度の標準PGE−MUM等、EIAにあっては、基質、停止液等を加えて構成される。 本発明に使用する前記PGE−MUMの測定を実施する検体としては、例えばヒト、動物などから採取される尿を挙げることができる。 中でも、前記潰瘍性大腸炎の寛解直前期と前記潰瘍性大腸炎の寛解期との病期判定に使用する検体としては、消炎剤投与を伴う治療管理下において採取された前記潰瘍性大腸炎患者の尿を使用する。 また、前記間質性肺炎の活動期と非活動期との病期判定に使用する検体としては、消炎剤投与を伴う治療管理下において採取された前記間質性肺炎患者の尿を使用する。 本発明に使用する消炎剤としては、例えば、ステロイド皮質ホルモン、非ステロイド系消炎鎮痛剤(non-steroidal anti-inflammatory drug、NSAID)等を例示することができる。 これらの消炎剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。 前記検体は、一日分を蓄尿した検体を用いるが、蓄尿せず採取した検体用いて測定を行うこともできる。採取した尿は測定に用いるまで低温、マイナス20℃以下で保存することが好ましい。 また、前記検体に含まれる前記PGE−MUM濃度の値の測定は、採取される前記検体全量を基準として実施してもよいし、採取される前記検体の一部について、クレアチニンによる補正を考慮して実施してもよい。 操作の簡便性から、前記検体に含まれる前記PGE−MUM濃度の値の測定は、採取される前記検体の一部について、クレアチニンによる補正を考慮して実施することが好ましい。 次に本発明に使用する基礎値について説明する。 前記潰瘍性大腸炎患者の基礎値については、消炎剤投与を伴う治療管理下において潰瘍性大腸炎の寛解期にあると診断された患者の尿中に含まれるPGE−MUM濃度の値を上記に説明した方法により測定することにより得ることができる。 また前記間質性肺炎患者の基礎値についても、消炎剤投与を伴う治療管理下において間質性肺炎の非活動期にあると診断された患者の尿中に含まれるPGE−MUM濃度の値を上記に説明した方法により測定することにより得ることができる。 前記基礎値を求めるときは、前記寛解期あるいは前記非活動期と診断された患者に対して消炎剤等の投与を施行した上で、一日蓄尿あるいは定められた時刻等に尿を採取することが好ましい。 また前記基礎値を定めるに際しては予め試験評価して見積もられた前記PGE−MUMを測定する試薬の測定間誤差等を考慮して定めることが好ましい。 前記潰瘍性大腸炎の病期を判定する方法には、マッツ分類(Matts Classification)による病理学的スコアを用いることができる。マッツ分類は、内視鏡により生体から採取した複数の組織標本の解析を行い、全ての組織標本について1〜5にスコア化し、スコアの平均値を求めて判断される。マッツ分類を表1に示す。 前記潰瘍性大腸炎の病態を判断するためのマッツ分類によれば、病理学的スコアの平均値が2未満を前記潰瘍性大腸炎の寛解期、2以上3未満を前記潰瘍性大腸炎の寛解直前期、3以上を前記潰瘍性大腸炎の活動期と分類した。病理学的判断によって、通常、前記潰瘍性大腸炎の寛解直前期と前記潰瘍性大腸炎の活動期では、投薬治療を継続すると判断される。 前記間質性肺炎の病期を判定する方法は、前記間質性肺炎の患者の尿中に含まれる前記PGE−MUMを測定することにより実施される。 前記PGE−MUMの測定方法は、先に説明した前記潰瘍性大腸炎の場合と全く同様である。 消炎剤投与を伴う治療管理下において、前記間質性肺炎の非活動期にあると診断された間質性肺炎の患者の尿中に含まれるPGE−MUM濃度の値を基礎値とし、 前記尿中のPGE−MUM濃度の値がこの基礎値を超える範囲にあるときは間質性肺炎の活動期(Active phase)と判定され、 前記尿中のPGE−MUM濃度の値がこの基礎値以下の範囲にあるときを間質性肺炎の非活動期(Non-active phase)と判定される。 本発明は、検体中のPGE−MUMの濃度の値を測定することにより前記潰瘍性大腸炎の病期判定を容易に行う方法を提供する。 さらに本発明は、検体中のPGE−MUMの濃度の値を測定することにより前記間質性肺炎の病期判定を容易に行う方法を提供する。 また、本発明で測定される前記PGE−MUMは、各種の炎症性疾患においてPGE及び/又はPGE−MUM産生亢進に起因し尿中に排出されるため、例えば炎症性腸疾患、大腸癌又は大腸腺腫による粘膜固有層の炎症、肺癌等の診断マーカーになりうる。 更に、PGE−MUM測定は、プロスタグランディン合成酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX−2)の活性やCOX−2インヒビターなどの薬剤の作用を確認するマーカーともなる。 以下実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明が実施例に限定されるものではない。実施例1 PGE−MUMの測定 潰瘍性大腸炎の症状を示す患者に対し、消炎剤としてステロイド皮質ホルモンおよびサザロピリンを投与した。 これらの患者の尿中PGE−MUMの抽出、定量にはInagawaらの液相二抗体法によるRIA測定法(Adv.PG.TX.LT.Res.,11,191-196(1983))で行った。すなわち、測定前まで-80℃で保存した各病期の前記潰瘍性大腸炎患者の尿(一日分蓄尿)100μlを反応容器に分注し、同量の2N NaOHを添加し、1時間室温に放置し前記PGE−MUMをビシクロ体化した後、2N HCl 100μlを加えて中和した。次に、0.1M NaClと0.1%ゼラチンを含む0.1Mリン酸緩衝液(pH7.3)を700μl添加して測定用サンプルとした。反応操作法としては、尿又は各濃度の標準試料液(PGE−MUMのビシクロ体含有)100μlに125I標識PGE−MUM溶液及び希釈第1抗体溶液(ウサギ抗ヒトPGE−MUM抗体;特開昭61−11664号(特許文献1)参照)を各々100μl加えて混合し、37℃、60分間インキュベートした。 その後、各サンプルに正常ウサギ血清(50倍希釈;第一ラジオアイソトープ社製)及び第2抗体(10倍希釈したヒツジ抗ウサギIgG抗体;第一ラジオアイソトープ社製)を各々100μl加えて4℃にて更に一晩インキュベートした。次に、4℃、3000rpmで10分間遠心分離を行い、上清を取り除き沈殿物の放射活性をオート ウエル カウンターRAW-300(島津製作所社製)で測定し、尿中PGE−MUMを測定した。同様に標準試料液について測定を行い、検量線を作成した。また、各尿についての測定結果と、前記検量線からPGE−MUMの濃度を求めた。 潰瘍性大腸炎患者は、生体から採取した複数(10箇所以上)の組織標本について病理学的スコア(マッツ分類)を求め寛解期、寛解直前期又は活動期に分類し、その患者尿についてPGE−MUMの測定を行った。その結果を表2に示す。 消炎剤投与を伴う治療管理下に置かれた基礎値は各個人差があるものの、概ね前記PGE−MUM濃度として10ng/mlであった。 表2に示す通り、マッツの分類により、病理学的スコアが2未満で寛解期と判断された患者試料について試料A-3および試料A-4以外については、いずれも前記PGE−MUM濃度が10ng/ml未満であり、病理学的判断と前記PGE−MUM濃度とが相関をしていた。また、マッツの分類で、病理学的スコアが2以上3未満の寛解直前期と判別された患者試料について試料B-4以外の試料については、いずれも、前記PGE−MUM濃度が基礎値である10ng/mlを超え、基礎値の3倍である30ng/ml以下であり、病理学的判断と前記PGE−MUM濃度とがよい相関を示した。 また、マッツ分類により寛解期、寛解直前期又は活動期の各病期と判断をされた前記潰瘍性大腸炎患者の病理写真を図1〜3に示す。各病期とPGE−MUM濃度との関係もよく相関していることが、病理写真からも確認することができる。 実施例1の場合における各病期の前記潰瘍性大腸炎患者の尿に替えて、各病期の前記間質性肺炎患者の尿を使用した他は、実施例1の場合と全く同様の操作により前記PGE−MUMの濃度を求めた。 なお患者に対し、消炎剤として、ステロイド皮質ホルモンおよび非ステロイド系消炎鎮痛剤を投与した。 結果を表3に示す。 ここで前記間質性肺炎の活動期とは、患者の間質の炎症が進行したり、患者の肺胞の繊維化が進行したりする病期を意味する。 聴診、X線検査、および生検材料による病理学的検査等により前記間質性肺炎の非活動期と診断された各患者の基礎値は概ね10ng/ml以下であったのに対し、前記間質性肺炎の活動期と診断された各患者の尿中のPGE−MUM濃度は、試料D-2以外は10ng/mlを超えるものであった。 この様に前記間質性肺炎の場合においても病理学的判断と前記PGE−MUM濃度とがよく相関を示した。[比較例1] 急性胃炎または慢性胃炎の症状を示す患者について、実施例1の場合と全く同様の操作により前記PGE−MUMの濃度を求めたところ、前記急性胃炎または慢性胃炎の症状を示す患者から得られた尿中の前記PGE−MUMの濃度と、前記患者の症状の進行度との間に有意な相関は認められなかった。[比較例2] GPT(=ALT)の値が200IU/L以下の症状を示すC型肝炎の症状を示す患者について、実施例1の場合と全く同様の操作により前記PGE−MUMの濃度を求めたところ、前記C型肝炎の症状を示す患者から得られた尿中の前記PGE−MUMの濃度と、前記患者の症状の進行度との間に有意な相関は認められなかった。 B型肝炎の症状を示す患者の場合も、上記と同様に前記患者の症状の進行度との間に有意な相関は認められなかった。[比較例3] 甲状腺炎の症状を示す患者について、実施例1の場合と全く同様の操作により前記PGE−MUMの濃度を求めたところ、前記甲状腺炎の症状を示す患者から得られた尿中の前記PGE−MUMの濃度と、前記患者の症状の進行度との間に有意な相関は認められなかった。[比較例4] 直径2cm以下の化膿性病変が生じた患者について、実施例1の場合と全く同様の操作により前記PGE−MUMの濃度を求めたところ、前記化膿性病変が生じた患者から得られた尿中の前記PGE−MUMの濃度と、前記患者の症状の進行度との間に有意な相関は認められなかった。 上記実施例1〜2および比較例1〜4の結果に示される通り、本発明は前記潰瘍性大腸炎に関する病期判定および前記間質性肺炎に関する病期判定に対して特に有用な方法であることが分かる。 本明細書は、2005年4月14日出願の特願2005−117521に基づく。この内容はすべてここに含めておく。 消炎剤投与を伴う治療管理下において、潰瘍性大腸炎の寛解期にあると診断された患者の尿中に含まれるプロスタグランディン主要代謝物(PGE−MUM)を測定することにより得られた前記尿中のPGE−MUM濃度の値を基礎値とし、 前記患者の尿中のPGE−MUM濃度の値がこの基礎値を超え前記基礎値の3倍以下の範囲にあるときを潰瘍性大腸炎の寛解直前期(Pre-remission phase)と判定し、 前記患者の尿中のPGE−MUM濃度の値がこの基礎値以下の範囲にあるときを潰瘍性大腸炎の寛解期(Remission phase)と判定することを特徴とする、 前記潰瘍性大腸炎の寛解直前期と、前記潰瘍性大腸炎の寛解期との病期判定方法。 前記潰瘍性大腸炎の寛解直前期は、潰瘍性大腸炎の病理学的スコア(マッツ分類)が2〜3の範囲にある場合とし、 前記潰瘍性大腸炎の寛解期は、前記マッツ分類が2未満の範囲にある場合とすることを特徴とする請求項1に記載の病期判定方法。 消炎剤投与を伴う治療管理下において、間質性肺炎の患者の尿中に含まれるプロスタグランディン主要代謝物(PGE−MUM)を測定することによる、間質性肺炎の活動期(Active phase)と、前記間質性肺炎の非活動期(Non-active phase)との病期判定方法。 前記間質性肺炎の非活動期にあると診断された患者の尿中に含まれるPGE−MUMを測定することにより得られた前記尿中のPGE−MUM濃度の値を基礎値とし、 前記患者の尿中のPGE−MUM濃度の値がこの基礎値を超える範囲にあるときを間質性肺炎の活動期と判定し、 前記患者の尿中のPGE−MUM濃度の値がこの基礎値以下の範囲にあるときを間質性肺炎の非活動期と判定することを特徴とする、請求項3に記載の病期判定方法。 前記PGE−MUMを抗PGE−MUM抗体により免疫測定することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の病期判定方法。 標識されたPGE−MUM試薬、及び抗PGE−MUM抗体試薬とを含む検体中のPGE−MUM測定による、潰瘍性大腸炎の病理学的スコア(マッツ分類)によって分類された潰瘍性大腸炎の寛解直前期(Pre-remission phase)と潰瘍性大腸炎の寛解期(Remission phase)との病期判定用試薬キット。 標識されたPGE−MUM試薬、及び抗PGE−MUM抗体試薬とを含む検体中のPGE−MUM測定による、間質性肺炎の活動期(Active phase)と間質性肺炎の非活動期(Non-active phase)との病期判定用試薬キット。 抗PGE−MUM抗体が抗PGE−MUMポリクローナル抗体である請求項6又は7のいずれか1項に記載の病期判定用試薬キット。 抗PGE−MUM抗体が抗PGE−MUMモノクローナル抗体である請求項6又は7のいずれか1項に記載の病期判定用試薬キット。 更に抗PGE−MUM抗体と反応する抗イムノグロブリン抗体試薬を含む請求項6ないし9のいずれか1項に記載の病期判定用試薬キット。 従来潰瘍性大腸炎や間質性肺炎の病期の判定に使用されていた内視鏡による熟練を要した粘膜病変の観察や生体より採取した病理組織標本の解析による判定方法とは異なり、容易に病態を判別することができ、治療薬の選択、治療効果の程度、投薬中止などを判断することができる方法であって、尿中に含まれる物質を数値化することにより定量的に病期を判定する方法を提供する。 尿中のプロスタグランディンE主要代謝物(PGE−MUM)の濃度の値を測定し、潰瘍性大腸炎の寛解直前期(Pre-remission phase)と潰瘍性大腸炎の寛解期(Remission phase)との病期を判定する。 また尿中の前記PGE−MUMの濃度の値を測定し、間質性肺炎の活動期と間質性肺炎の非活動期との病期を判定する。